JP4015177B2 - フェリチンの選択的配置方法 - Google Patents

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Description

本発明は、フェリチンの選択的配置方法に関する。
基材に配置したタンパク質及び無機物からなる微粒子(無機粒子)は、触媒、センサー、バイオチップ、トランジスター、半導体レーザー、磁気ディスク、ディスプレイ等の工業分野で、注目されている。特に、工業的に無機粒子を応用する際には、無機粒子を特定の領域に選択的に配置したり、ナノサイズの微小な領域に規則的に配置したりするパターニング技術が求められている。また、近年では、バイオセンサーをはじめとする総合的な分析システムの微小化を目的に、微小化学物質分析システム(Micro Total Analysis System (μTAS))への応用も注目されている。その背景には、生体適合性の向上、大量生産による低コスト化やその場での計測(ポータブル)を可能とするなどの利点があげられる。
固体表面上にタンパク質や無機粒子を選択的に配置することは極めて困難な技術である。即ち、タンパク質や無機物の表面に自己認識機能を持たせることが極めて困難だからである。生体分子であるタンパク質を用いて微細パターンを形成する方法としては、フォトリソグラフィーを応用した方法(非特許文献1参照)、マイクロコンタクトプリンティング(非特許文献2参照)、ディップペンナノリソグラフィー(非特許文献3参照)等の方法が知られている。しかし、量産性とコストの観点から、ナノサイズ領域で微粒子をパターニングする技術が要求されている。
また、タンパク質分子で囲むナノサイズの微粒子を規則的に配置する方法は、特許文献1に開示されている。これら方法には選択的に微粒子を配置するためにSAM膜(自己組織化単分子膜)やLB膜(単分子累積膜)等の表面に加工を施し、さらにフォトリソグラフィー等を組み合わせて、微粒子のパターニングを行ったり、AFM(Atmic Force Microscope:原子間力顕微鏡)等のナノプローブで基材にパターンを直接描画する等して、選択的に無機粒子を配置する領域を基材表面に形成した後に、無機粒子を配置する手段が用いられている。
ここで、従来法(特許文献1)によるLB膜(PBLH膜)を用いた無機粒子の配置方法を、図1(a)〜(h)に示す。
まず、図1(a)に示す工程において、テフロン(登録商標)製の水槽10にバッファ11を貯め、このバッファに無機粒子20を内包する天然フェリチン21を分散させる。
次に、図1(b)に示す工程において、溶液の液面にPBLH膜30を張り、適当な酸・アルカリ溶液でpH調整を行う。PBLH膜表面が正電荷を帯びているために、負電荷を帯びた天然フェリチン21は、PBLH膜に付着する。
次に、図1(c)に示す工程において、疎水性表面処理を施した基材(シリコン基板)40を、PBLH膜30を張った液面に浮かべて、基材に天然フェリチン21が付着したPBLH膜30を貼り付ける。
次に、図1(d)に示す工程において、天然フェリチン21が付着したPBLH膜30を貼り付けたシリコン基板40を水槽から取り出す。
次に、図1(e)に示す工程において、天然フェリチン21の付着した表面を緩衝溶液11で覆った後、適当なマスクパターン50を用いて、紫外線照射を行う。紫外線照射された領域の天然フェリチンは分解され、溶液中に分散する。
次に、図1(f)に示す工程において、図1 (e) に示すパターニングを行ったシリコン基板40を水洗する。
次に、図1(g)に示す工程において、シリコン基板40を乾燥させ、無機粒子を内包する天然フェリチンフェリチンのパターン配置を得る。
その後、図1(h)に示す工程において、不活性ガス60中(例えば窒素中)で500℃の熱処理を行い、無機粒子を内包する天然フェリチン21及びPBLH膜30を焼失させ、基材表面に無機粒子を二次元的にパターン配置する。この構造は、さらに前述したデバイスに必要な構造に加工される。
特開平11−204774号公報 A. S. Blawas, W. M. Reichert, Biomaterials, 19, 595 (1998) A. Bernard, J. P. Renault, B. Michel, H. R. Bosshard, E. Delamarche, Adv. Mater., 12, 1067 (2000) K. B. Lee, S. J. Park, C. A. Mirkin, J. C. Smith, M. Mrksick, Science, 295, 1702 (2002)
しかし、上記従来方法では、基材側にSAM膜を形成し、該SAM膜に紫外線を用いてパターニングしたり、無機粒子の吸着膜であるLB膜を基材との中間層として利用するため、工程が複雑になったり、SAM膜やLB膜の構成物質又は溶液に含まれる不純物が、無機粒子の配置表面に残ってデバイスへの悪影響を引き起こす可能性がある。
そこで、本発明の目的は、高い量産性と低いコスト下で、無機粒子側に基材認識性を持たせることで、特に、直径が数〜数十ナノメートル程度の無機粒子を、必要な領域に必要な量だけ選択的、規則的に配置する技術を提供することにある。
上記目的を達成するために、本願第一発明は、フェリチンと基板上の無機材料との結合力を、非イオン性界面活性剤によって制御することを特徴とする。非イオン性界面活性剤は、基本的にタンパク質と無機物である基板上の基材との界面に作用して、両者の結合力を弱める働きを有するが、この働きによりフェリチンと基材間の結合力を制御することが可能である。
すなわち、この手法により、配置が必要な部分と不必要な部分に吸着するフェリチンの比率(選択性)を制御したり、配置が必要な部分におけるフェリチンの吸着量を制御することが可能となる。この制御とは、基板とフェリチンが本来持つ結合力を強めたり、逆に弱めたりする能力(自己認識能力)を、フェリチン自身に持たせることを意味する。
この自己認識能力により、無機粒子配置が必要な基板上の特定無機材料部分に、フェリチンを配置すること、及び該フェリチンが内包する無機粒子を配置することが可能となる。
一方、フェリチンに無機粒子を内包させなければ、基板上の無機材料部分には無機粒子が配置されず、フェリチンで該特定部分を保護することが可能となる。
ここで、図2に従来のフェリチン(天然又はリコンビナントフェリチン(かご状タンパク質))の構造を示す。フェリチンは、24個のサブユニットが結合して内部に空孔(直径約7nm)を有する球状粒子(直径約12nm)である。この空孔内には、各種の無機材料粒子(コア)を取り込むことが可能である。一つのサブユニットは、図2中央に示すような特定の立体構造を持っており、αヘリックスとβシートの二次構造の組み合せから成ることがX線解析等から詳しく解析されている。
このタンパク質の骨組み(ポリペプチド主鎖の折たたまれ方)からアミノ酸側鎖が様々な方向に突き出しており、このアミノ酸残基の配列は、それぞれのタンパク質に独自の化学的特性を持たせている。フェリチン表面は、この突き出たアミノ酸残基の特徴を反映し、タンパク質全体の化学的特性(基材間、タンパク質間相互作用)が決定される。
本願第二発明は、このフェリチンのN末端部に、ペプチド(N末端修飾ペプチド)を修飾することにより、フェリチン表面に該ペプチドを突き出させ、フェリチンの化学的特性を変化させることを特徴とする。そして、このN末端修飾ペプチドによる修飾により、フェリチンと無機基材との結合力をコントロールする。
ここで、「フェリチンのN末端部をペプチドで修飾する」とは、フェリチンのN末端にN末端修飾ペプチドを付加すること、及びフェリチンのN末端のアミノ酸残基(メチオニン残基)の次に、N末端修飾ペプチドを挿入することの両方を含む。
また、本願第三発明は、フェリチンのN末端を修飾するペプチド(N末端修飾ペプチド)が1つ以上の極性電荷アミノ基を有することを特徴とする。極性荷電アミノ基としては、リジン(K)、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)が挙げられる。図3に、極性電荷アミノ基としてアルギニン(R)残基の構造を示す。N末端部を修飾するペプチドは、柔軟性を持つ構造不定の主鎖であり、フェリチンの表面にこの柔軟性を有する主鎖が突き出した構造となっているため(図3の中央図及び右図)、電荷を持つアミノ基は、無機材料表面に局在する電荷を認識して吸着力のコントロールの作用の要因となる。
具体的に、本発明は、
第1の無機材料からなる第1の部分と、前記第1の無機材料と異なる第2の無機材料からなる第2の部分とを表面に有する基板に、第1のフェリチン及び非イオン性界面活性剤を含む溶液を滴下し、それによって第1のフェリチンを選択的に前記第1の部分に配置する第1配置工程とを有し、
前記第1の部分がチタンまたは窒化シリコンからなり、
前記第2の部分が白金または酸化シリコンからなる、
フェリチンの選択的配置方法に関する。
フェリチンは、基板上の無機材料に非選択的に吸着するが、本願発明者は、非イオン性界面活性剤を共存させることにより、特定の無機材料に選択的に吸着することを初めて見出した。
前記第1の部分及び第2の部分は、それぞれチタン及び白金、チタン及び酸化シリコン、窒化シリコン及び酸化シリコンから構成される3つの組み合わせから選択されるいずれか1つの組み合わせからなることが好ましい。
前記第1の部分及び第2の部分は、それぞれチタン及び白金の組み合わせからなることがより好ましい。
前記第1の部分及び第2の部分は、それぞれチタン及び酸化シリコンの組み合わせからなることがより好ましい。
前記第1の部分及び第2の部分は、それぞれ窒化シリコン及び酸化シリコンの組み合わせからなることがより好ましい。
非イオン性界面活性剤の濃度は、0.01 v/v%以上10 v/v%以下であることが好ましい。
前記第1のフェリチンのサブユニットN末端部は、配列番号:4に記載のペプチドによって修飾されていることが好ましい。
前記第1のフェリチンは、無機粒子を内包してもよい。
前記第1配置工程の後に、非イオン性界面活性剤を含まないが第2のフェリチンを含む溶液を前記基板に滴下し、それによって前記第2のフェリチンを、前記第2の部分に配置する第2配置工程をさらに有することが好ましい。
この場合、前記第2のフェリチンは、無機粒子を内包してもよい。また、前記第1のフェリチンは、無機粒子を内包しなくてもよい。
上記フェリチンの配置方法を用いて、基板上の第1の部分又は第2の部分にフェリチン又は無機粒子を選択的に配置することにより、デバイスを作成することも可能である。
本発明の上記目的、他の目的、特徴及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
本発明のフェリチンの配置方法によれば、フェリチン及びそれが内包する無機粒子を基材表面へ配置及び固定する際に、フェリチンと基材表面に形成された無機材料部分との物理的吸着力を、非イオン性界面活性剤を添加することにより制御可能であり、基板上へのフェリチンの2次元的な規則配置も可能となる。本発明のフェリチンの配置方法は、高い量産性とコストパフォーマンスで、必要な領域に必要な量の無機粒子を配置させたり、高精度で規則的に無機粒子を基板上に配置させたりすることができる。
以下に、本発明の実施の形態について、適宜図面を参照しながら説明する。なお、本発明はこれらに限定されない。
(本発明の概念)
最初に、本発明の概念を説明する。ここでは、フェリチン及びフェリチンが内包する無機粒子の基板への配置方法を説明する。
[フェリチンの配置方法]
図4は、本発明のフェリチンの配置方法を概念的に示すフローチャートである。
図4に示すように、本発明のフェリチンの配置方法は、ステップS1〜S3の3つの工程を有している。
まず、ステップS1の工程において、フェリチンを含む溶液を準備する。
次に、ステップS2の工程において、ステップS1で調製した溶液に非イオン性界面活性剤を添加する。
次に、ステップS3の工程において、表面に2種類以上の無機材料部分が形成された基板上に、ステップS2で調製した溶液を滴下する。それにより、フェリチンと基板上の無機材料部分との結合力が、非イオン性界面活性剤の添加により変化し、その結果、どちらか一方の無機材料部分へフェリチンを選択的に配置することが可能となる。
ステップS1で用いるフェリチンとして、後述する本発明の実施の形態においては、ペプチド修飾フェリチンと、従来のリコンビナントフェリチンとを使用した。
なお、ここではステップS1とステップS2を、それぞれ独立した工程として説明しているが、ステップS1とステップS2を同時に一つの工程として行うことも可能である。以下、これらのフェリチンの製造方法を説明する。
<リコンビナントフェリチンの製造方法>
まず、ペプチドでN末端を修飾しないリコンビナントフェリチンの製造方法について説明する。
天然フェリチン(ウマ脾臓由来)は、24個のサブユニットが集合してできあがっているが、サブユニットにはわずかに構造の異なるL型とH型があるため、天然フェリチンは、一定の構造を有さない。以下の実施の形態においては、L型サブユニットのみから構成されるリコンビナントフェリチンを使用した。
まず、L型のフェリチンをコードするDNA(配列番号:1、528塩基対)を、PCR法を用いて増幅し、多量のL型フェリチンDNAを用意した。次に、このL型フェリチンDNAを、制限酵素EcoRI及びHind IIIが特異的に切断する部位(制限酵素サイト)で切断した。この切断処理により、EcoRI及びHind IIIの制限酵素サイトを有するL型フェリチンDNA断片の溶液を調製した。この溶液にDNA電気泳動を行い、L型フェリチンをコードするDNA断片だけを回収、精製した。
その後、このL型フェリチン DNA断片と、EcoRI - Hind IIIの制限酵素で処理したベクタープラスミド (pMK-2) をインキュベートしてライゲーションを行った。これによりpMK-2プラスミドのマルチクローニングサイト (MSC) にL型フェリチンDNAが入ったベクタープラスミド pMK-2-fer-0 を作製した。使用したベクタープラスミドのpMK-2は、プロモーターに Tac プロモーターを有し、多コピープラスミドとしてコピー数が多いという特徴を持つため、大量のフェリチンを得るのに有利であることから選択した。作製したプラスミド (pMK-2-fer-0) を宿主(ホスト)である大腸菌株 E. coli Nova Blue (Novagen ) に導入(形質転換)し、リコンビナントL型フェリチン株 (fer-0 ) を作製した。なお、L型フェリチンサブユニットのプラスミドの主要構成と、大腸菌へのプラスミドの取り込みを模式化した図を、図5に示した。
そして、後述する基板上への無機粒子の配置方法においては、このようにして作製したリコンビナントフェリチンの内部に、デバイスに必要な無機粒子を内包させた。上記方法によって作製されたリコンビナントフェリチン(fer-0)の熱安定性は、アミノ末端へのペプチド付加により向上することが示された。天然フェリチンの耐熱温度が55℃程度であることに対し、fer-0は95℃であった。この耐熱性により、従来不可能であった高温でのかご状タンパク質利用ナノ粒子合成が可能となった。
<ペプチドで修飾したフェリチンの製造方法>
次に、配列番号:4に示すアミノ酸配列のペプチドを、N末端残基の次に挿入したフェリチン(配列番号:2)の製造方法について説明する。
フェリチンを構成するサブユニットのアミノ末端(N末端)をペプチドで修飾すると、図3に示したように、フェリチン粒子の外側に該ペプチドが突き出した構造となる。そのため、このN末端部分に、任意のペプチドを付加又は挿入することにより、フェリチン微粒子の表面を該ペプチドで修飾することが可能である。
ここで、配列番号:2に示すアミノ酸配列のフェリチンの具体的な製造方法を示す。天然フェリチン(ウマ脾臓由来)のLタイプのサブユニットの全長遺伝子を、配列番号:1に示した。N末端からの24塩基から合成されるアミノ残基のうちの7残基は、自然界においてはプロセスされ欠失していることが報告されている。すなわち、配列番号:1のDNAからは、配列番号:2に示すアミノ酸配列のフェリチンが合成されるはずであるが、N末端から2番目〜8番目までの7つのアミノ酸残基までが欠失するため、実際には配列番号:3に示すアミノ酸配列のフェリチンとなる。
そこで、N末端の7つのアミノ酸配列(配列番号:4)を欠失させずに合成し、フェリチン粒子の外側に、柔軟性を持つ構造不定のペプチドを突き出させることにより、フェリチンの化学的特性を変化させ、このペプチドで修飾されたフェリチンの無機材料への吸着を、非イオン性界面活性剤の存在下に制御する方法を見出した。
サブユニットN末端のメチオニン残基の次に、配列番号:4に示すペプチド配列を挿入したペプチド修飾フェリチンをコードする塩基配列(DNA)をデザインして、上記リコンビナントフェリチンの製造方法と同様にPCR法で用いて多量のDNAを用意した。合成に必要なこのDNAの断片をベクタープラスミドに導入する。こうして作製したベクタープラスミドを大腸菌内に導入して増殖(形質転換)し、ペプチドで修飾したリコンビナントフェリチン(ペプチド修飾フェリチン)を合成した。
なお、本発明において、リコンビナントフェリチンのN末端部を修飾するペプチドの種類は、特に限定されるものではないが、以下に記載する実施の形態においては、N末端修飾ペプチドとして、配列番号:4に示すアミノ酸配列のペプチドを、N末端のメチオニン残基の次に挿入したリコンビナントフェリチン、すなわち、アミノ酸配列が配列番号:2であるリコンビナントフェリチンを使用した。
以上に説明したように、本発明のフェリチンの配置方法によれば、フェリチンと基板表面の特定無機材料部分との結合力を、非イオン性界面活性剤を添加するだけで制御することが可能であるため、工程が非常に単純化される。
[基板上への無機粒子の配置方法]
次に、本発明の無機粒子の配置方法を、図6(a)及び図6(b)を用いて説明する。ここでは、無機粒子として、酸化第二鉄(Fe2O3)を用いた例を示す。
図6(a)に示す工程において、無機粒子配置が必要な領域81を持つ基板80に、Fe2O375を内包した従来フェリチン85の溶液に、非イオン性界面活性剤83を添加した溶液を滴下し、一定時間インキュベートした後、純水を用いて基板を洗浄した。
次に、図6(b)に示す工程において、従来フェリチンは、基板80上の特定領域81に吸着されるため、内包されるFe2O375も特定領域81に配置することができる。その結果、Fe2O375の微粒子が、選択的に特定領域にのみ配置した基板82を作製することができる。
また、上記方法の変形例として、従来フェリチンの替わりにペプチド修飾フェリチンを用いると、特定領域81への無機粒子吸着量が著しく増加するが、相互作用の小さい基板80上への吸着を抑制することができる。すなわち、より高い選択配置が可能となる。
以下に記載する実施の形態においては、水洗後、基板を窒素ガス中、500℃で熱処理を行うことにより、Fe2O3を内包していたフェリチンを焼失させ、Fe2O3を特定領域81に固定させた。なお、窒素ガスの替わりに不活性ガスや酸素ガス、水素ガス等を用いることもできる。
次に、上述のフェリチンへの無機粒子の導入について説明する。
<フェリチンへの無機粒子の導入>
本発明において、リコンビナントフェリチンに内包させる無機粒子の種類は、特に限定されないが、上述の説明及び後述する実施の形態においては、無機粒子として酸化第二鉄(Fe2O3)を用いた。ペプチド修飾フェリチンへのFe2O3コアの導入は、以下のようにして行った。
反応溶液として、0.5mg/ml のペプチド修飾フェリチン/100mM HEPES-NaOH (pH7.0)を調製し、ここに5mM 酢酸アンモニウム鉄を添加した。25℃で一晩反応させ、反応後の溶液からFe2O3のコアが形成されたペプチド修飾フェリチンを、遠心分離とゲルろ過により分子精製して回収した。遠心分離は、1,600G、10分及び10,000G 、30分の 条件で行って、段階的にフェリチン以外の不要部分を沈殿として除去し、最後に残った上清よりFe2O3コアを形成したペプチド修飾フェリチンを、230,000G、1時間の超遠心分離によってペレットとして回収した。得られたペプチド修飾フェリチンを、HPLCを用いたゲルろ過[カラム:TSK-GEL G4000SWXL PEEK /流速:1ml/min /バッファ:50mM Tris-HCl (pH8.0)+150mM NaCl] を行い、24量体(約480kDa)のピークを分取した。分取したペプチド修飾フェリチン溶液は、限外ろ過膜を用いて濃縮し、Fe2O3を内包したペプチド修飾フェリチンを得た。
なお、ペプチドでN末端を修飾していないリコンビナントフェリチンに上記と同様の操作を行うことにより、Fe2O3を内包したリコンビナントフェリチンを得た。また、天然フェリチン(ウマ脾臓由来)に上記と同様の操作を行うことにより、Fe2O3を内包した天然フェリチンを得た。
以下、本発明の具体的な実施の形態を順次説明する。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1は、フェリチン及び無機粒子の基板上への配置方法を例示している。本実施の形態では、基板上に2種類の無機材料部分としてPt部分及びTi部分が形成されている。
以下、本実施の形態の具体例を実施例として示し、その効果を、比較例を挙げて説明する。なお、下記比較例1及び2、並びに参考例においては、非イオン性界面活性剤は、使用していない。
[比較例1]
比較例1として、以下のようにして、基板上へ無機粒子を配置した。
まず、Fe2O3を内包した天然フェリチン(シグマ社製、ウマ脾臓由来)をバッファ溶液(10mM Tris-HCl, pH8.0)を用いて2mg/mlの濃度に調整した。表面の一部に白金膜(Pt膜)を形成したTi基板上に、該天然フェリチン溶液を滴下して、1時間室温で放置した後、純水で洗浄した。洗浄後、基板を上述した方法で加熱処理し、Fe2O3を基板上に固定させた。
その後、基板表面の走査型電子顕微鏡写真を撮影し、Ti基板及びPt膜上に配置されたFe2O3数を200nm□内でカウントすると、Ti基板上は79個、Pt膜上は76個であり、その選択配置比は1.0であった。
ここで、選択配置比とは、Pt膜上に吸着したFe2O3の数N(Pt)に対するTi基板上に吸着したFe2O3の数N(Ti)の比、すなわち、N(Ti)/N(Pt)を意味する。
[比較例2]
比較例2として、Fe2O3を内包したリコンビナントフェリチンについて、比較例1と同様の操作を行った。
図7(a)は、Fe2O3を内包したリコンビナントフェリチンを、表面の一部にPt膜を形成したTi基板上へ配置させた実験における基板表面の走査型電子顕微鏡写真を示す。
図7(a)において、Ti基板及びPt膜上に配置されたFe2O3数を200nm□内でカウントすると、Ti基板上は200個であるのに対しPt膜上は195個であり、その選択配置比は1.0であった。
[参考例]
参考例として、Fe2O3を内包したペプチド修飾フェリチンについて、比較例1と同様の操作を行った。
図7(b)は、Fe2O3を内包したペプチド修飾フェリチンを、表面の一部にPt膜を形成したTi基板上へ配置させた実験における基板表面の走査型の電子顕微鏡写真を示す。
図7(b)において、200nm□内のFe2O3吸着数は、Ti基板上が116個、Pt膜上が100個であり、その選択配置比は1.2であった。従って、従来フェリチンを用いる場合と比較して、ペプチド修飾フェリチンを用いる場合には、選択配置比が20%増加し、Pt膜上よりもTi基板上に、よりフェリチンが吸着しやくなることが確認された。
[実施例1]
実施例1として、Fe2O3を内包した天然フェリチンを調製する際に、非イオン界面活性剤としてICI社製Tween20を0.5v/v%添加した溶液を用いて、参考例と同様の操作を行った。
Ti基板及びPt膜上に配置されたFe2O3数を200nm□内でカウントすると、Ti基板上は79個、Pt膜上は12個であり、その選択配置比は6.6であった。すなわち、非イオン性界面活性剤を0.5v/v%添加することにより、天然フェリチンをTi膜上に選択的に配置することが可能であった。
[実施例2]
実施例2として、Fe2O3を内包したリコンビナントフェリチンを調製する際に、非イオン界面活性剤としてICI社製Tween20を0.5v/v%添加した溶液を用いて、参考例と同様の操作を行った。
図8(a)に、Fe2O3を内包したリコンビナントフェリチンを、非イオン性界面活性剤の存在下、表面の一部にPt膜を形成したTi基板上へ配置させた実験における基板表面の走査型電子顕微鏡写真を示す。
[実施例3]
実施例3として、Fe2O3を内包したペプチド修飾フェリチンを調製する際に、非イオン界面活性剤としてICI社製Tween20を0.5v/v%添加した溶液を用いて、参考例と同様の操作を行った。
図8(b)に、Fe2O3を内包したペプチド修飾フェリチンを、非イオン性界面活性剤の存在下、表面の一部にPt膜を形成したTi基板上へ配置させた実験における基板表面の走査型の電子顕微鏡写真を示す。
図8を見ると、図7と比較して、Fe2O3がTi基板及びPt膜上に吸着数の大きな差をもって配置されていることがわかる。図8(a)において、200nm□内のFe2O3吸着数は、Ti基板上が150個であるのに対しPt膜上が3個であり、その選択配置比は50.0であった。また、図8(b)において、200nm□内のFe2O3吸着数は、Ti基板上が146個、Pt膜上が1個であり、その選択配置比は146.0と選択性が著しく向上することが確認された。
このように、天然フェリチン、リコンビナントフェリチン及びペプチド修飾フェリチンのいずれを用いた場合であっても、非イオン性界面活性剤の添加により、Ti基板に対する選択吸着性が向上することが検証された。特に、フェリチンと無機基材との吸着力を、フェリチン表面のペプチド修飾により制御することが可能であった。
なお、実施例2の選択配置比は50.0であり、実施例1の選択配置比6.6よりも高かったことから、非イオン性界面活性剤の添加による無機基材(Ti基板)に対する選択的性向上効果は、天然フェリチンよりもリコンビナントフェリチンの方が高いことが示された。
[実施例4]
実施例4として、非イオン性界面活性剤を天然フェリチン溶液に直接添加せず、非イオン性界面活性剤を含む溶液を基板に滴下した後、非イオン性界面活性剤を含まない天然フェリチン溶液を基板に滴下する配置方法を試みたが、天然フェリチン溶液に非イオン界面活性剤を添加した実施例1と、ほぼ同程度の吸着数と選択性が得られることが検証された。
[実施例5]
実施例5として、非イオン性界面活性剤をリコンビナントフェリチン溶液に直接添加せず、非イオン性界面活性剤を含む溶液を基板に滴下した後、非イオン性界面活性剤を含まないリコンビナントフェリチン溶液を基板に滴下する配置方法を試みたが、リコンビナントフェリチン溶液に非イオン界面活性剤を添加した実施例2と、ほぼ同程度の吸着数と選択性が得られることが検証された。
[実施例6]
実施例6として、非イオン性界面活性剤をペプチド修飾フェリチン溶液に直接添加せず、非イオン性界面活性剤を含む溶液を基板に滴下した後、非イオン性界面活性剤を含まないペプチド修飾フェリチン溶液を基板に滴下する配置方法も試みたが、ペプチド修飾フェリチン溶液に非イオン界面活性剤を添加した実施例3と、ほぼ同程度の吸着数と選択性が得られることが検証された。
なお、実施例5の選択配置比は50.0であり、実施例4の選択配置比6.0よりも高かったことから、基板を非イオン性界面活性剤で処理する場合においても、無機基材(Ti基板)に対する選択的性向上効果は、天然フェリチンよりもリコンビナントフェリチンの方が高いことが示された。
なお、比較例1〜2、参考例及び実施例1〜6の実験結果を、表1にまとめた。
さらに、非イオン性界面活性剤としてICI社製Tween80を0.5v/v%添加した場合にも、全て表1と同じ結果が得られた。参考までに、実施例3において、Tween20又はTween80を0.5v/v%添加した場合の基板表面の走査型電子顕微鏡写真を、それぞれ、図9(a)及び(b)に示す。
このようにフェリチンと基板表面のTi基板及びPt膜との吸着力を、非イオン性界面活性剤を添加することにより制御することが可能であり、特に、ペプチド修飾フェリチンに非イオン性界面活性剤を併用することにより、相乗的な吸着制御が可能であった。
添加する非イオン性界面活性剤の濃度を0.006 v/v%未満にすると、従来フェリチン及びペプチド修飾フェリチンに対する吸着制御性が低くなり、選択配置比が低下した。一方、非イオン性界面活性剤の濃度を10v/v%超にすると、Ti基板への吸着量が低下した。よって実用性から判断して、本発明におけるフェリチンを含む溶液中の非イオン性界面活性剤は、0.006 v/v%以上 10 v/v%以下の濃度範囲とすることが好ましく、0.01 v/v%以上 1 v/v%以下の濃度範囲とすることがさらに好ましい。
なお、今回用いた非イオン性界面活性剤であるTween20及びTween80は、ポリオキシエチレンソルビタン(Polyoxyethylene sorbitan alkyl ester)類で、特に低温で溶解しやすく、水溶液中でイオンに解離する基を持たず、親水性を調整できる特徴を持つ物質である。Tween20及びTween80の一般的構造式を、以下に示す。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2は、フェリチン及び無機粒子の基板上への配置方法を例示したものである。本実施の形態では、SiO2基板上の一部にTi膜を形成した基板と、SiO2基板上の一部にSiN膜を形成した基板の2種類を用いている。
以下、本実施の形態の具体例を実施例として示し、その効果を、比較例を挙げて説明する。
[実施例7]
実施例7として、図10(a)に、Fe2O3301を内包したペプチド修飾フェリチン300を、表面の一部にチタン膜(Ti膜)200を形成した酸化シリコン(SiO2)基板100上に配置させた実験結果の模式図を示す。
Fe2O3301を内包するペプチド修飾フェリチン300を、バッファ溶液(10mM Tris-HCl, pH8.0)を用いて2mg/mlの濃度に調整し、さらに非イオン性界面活性剤として、ICI社製Tween20を0.5v/v%添加した。表面の一部にTi膜200を形成したSiO2基板100上に、該ペプチド修飾フェリチン溶液を滴下して、1時間室温で放置した後、純水で洗浄した。洗浄後、基板を上述した方法で加熱処理し、Fe2O3301を基板上に固定した。
図10(b)は、図10(a)に対応する、上記Fe2O3301を固定させた後の基板表面の走査型電子顕微鏡写真である。Fe2O3301は、SiO2基板100上にはほとんど配置されず、Ti膜200上に選択的に配置されていたことから、ペプチド修飾フェリチン300は、非イオン性界面活性剤共存下ではSiO2基板100には吸着せず、Ti膜200に特異的に吸着することが検証された。
[比較例3]
比較例3として、Tween20を添加しないこと以外、実施例5と同様の操作を行い、基板上へ無機粒子を配置した。
図11は、比較例3の基板表面の走査型電子顕微鏡写真である。図11(a)は、Ti膜表面、図11(b)は、SiO2基板表面の写真である。SiO2基板表面及びTi膜表面の両方にFe2O3が同程度配置され、基材に対して全く選択性が認められなかった。すなわち、非イオン性界面活性剤が共存しない状態では、ペプチド修飾フェリチンは、Ti膜及びSiO2基板に対して選択的吸着性を示さなかった。
このように、ペプチド修飾フェリチンと基板表面のSiO2基板及びTi膜との吸着力を、非イオン性界面活性剤を添加することにより制御することが可能であった。ここでは、非イオン性界面活性剤としてTween20を用いたが、これに限定されるものではなく、例えば、ICI社製Tween80を同じ濃度で添加した場合にも、同様の実験結果が得られた。
[実施例8]
実施例8として、表面の一部に窒化シリコン膜(SiN膜)を形成した酸化シリコン(SiO2)基板上に、Fe2O3を内包するペプチド修飾フェリチンを配置させる実験を、実施例7と同様に行った。使用したバッファ、非イオン性界面活性剤及びそれらの濃度等も、実施例7と同じである。
図12は、実施例8の基板表面の走査型電子顕微鏡写真である。図12(a)は、SiO2基板表面、図12(b)は、SiN膜表面の写真である。Fe2O3は、SiO2基板上には配置されず、SiN膜上のみに選択的に配置されていたことから、ペプチド修飾フェリチンは、非イオン性界面活性剤存在下ではSiO2基板上には吸着せず、SiN膜上に特異的に吸着することが検証された。
[比較例4]
比較例4として、Tween20を添加しないこと以外、実施例8と同様の操作を行い、基板上へ無機粒子を配置した。
図13は、比較例4の基板表面の走査型電子顕微鏡写真である。図13(a)は、SiO2基板表面、図13(b)は、SiN膜表面の写真である。SiO2基板表面及びSiN膜表面の両方にFe2O3が配置され、基材に対して全く選択性が認められなかった。すなわち、非イオン性界面活性剤が存在しない状態では、ペプチド修飾フェリチンは、SiO2基板及びSiN膜に対して選択的吸着性を示さなかった。このように、ペプチド修飾フェリチンと基板表面のSiO2膜及びSiN膜との吸着力を、非イオン性界面活性剤を添加することにより制御することが可能であった。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3は、フェリチン及び無機粒子の基板上への逆選択的配置方法を例示したものである。
<アポフェリチンを用いた無機粒子の逆選択配置方法>
実施の形態1及び2では、フェリチンが特異的に吸着する領域へのフェリチン及び無機粒子の配置方法を説明した。逆に、フェリチンが特異的に吸着する領域以外の領域へのフェリチン及び微粒子の配置方法を、図14(a)〜(e)を参照しながら説明する。
まず、図14(a)に示す工程において、表面の一部に特定無機材料で構成される特定領域81を形成した基板80に、Fe2O3を内包しないペプチド修飾フェリチン(アポフェリチン)84と非イオン性界面活性剤を含む溶液を滴下する。そして、一定時間インキュベートした後、純水を用いて基板を洗浄する。
次に、図14(b)に示す工程において、アポフェリチン84は、特定領域81にのみ吸着し、選択的に配置された基板80が得られる。
次に、図14(c)に示す工程において、無機粒子を内包するフェリチン85を含む溶液を基板80に滴下して、上記と同様の操作を行う。このとき、非イオン性界面活性剤は使用しない。
次に、図14(d)に示す工程において、無機粒子を内包するフェリチン85は、既にアポフェリチン84が吸着している特定領域81以外の領域である無機粒子配置必要領域86にのみ吸着する。
その後、図14(e)に示す工程において、基板80を上述した方法によって熱処理すると、特定領域81以外の領域に対して逆選択的に無機粒子88を配置した基板87が得られる。
無機粒子を内包するタンパク質としては、フェリチンに限定されず、他の種類のタンパク質を使用することができる。また、無機粒子を内包するフェリチンの替わりに、無機粒子を内包しないタンパク質を逆選択的に配置することも可能である。この技術は、例えば、特定の機能を有する酵素を、基板上の特定領域に配置してバイオセンサーを製造する場合等に有用となる。
なお、上記実施の形態では無機粒子としてFe2O3を内包したフェリチンを用いて、基板上の特定領域にFe2O3を選択的に配置するが、無機粒子を内包しないフェリチンを用いても、全く同じ結果が得られるはずである。
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。したがって、上記説明は例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造および/または機能の詳細を実質的に変更できる。
本発明は、高い量産性とコストパフォーマンスで、基板表面にフェリチン又は無機粒子を配置する方法に関するものであり、特に、直径が数〜数十ナノメートル程度の無機粒子を必要な領域に選択的に配置したり、ナノ領域に規則的に配置したりする技術を提供するものである。この技術により、ナノスケールで自己選択的に必要な基材に無機材料の微粒子を配置することが可能となり、触媒、センサー、バイオチップ、トランジスター、半導体レーザー、磁気ディスク、ディスプレイ等の工業分野の製造工程で応用できる。
従来の無機粒子の配置方法の工程説明図である。 従来のフェリチンの構造等の説明図である。 N末端にペプチド修飾したフェリチンの構造等の説明図である。 本発明のフェリチンの配置方法の原理を説明する図である。 L型フェリチンサブユニットのプラスミドの主要構成と、大腸菌へのプラスミドの取り込みを模式化した図である。 本発明の無機粒子の配置方法の原理を説明する図である。 (a)は、比較例2の基板表面の走査型電子顕微鏡写真である。(b)は、実施例1の基板表面の走査型電子顕微鏡写真である。 (a)は、実施例2の基板表面の走査型電子顕微鏡写真である。(b)は、実施例3の基板表面の走査型電子顕微鏡写真である。 (a)は、実施例3の基板表面の走査型電子顕微鏡写真である。(b)は、実施例3において、Tween80を0.5v/v%添加した場合の基板表面の走査型電子顕微鏡写真である。 (a)は、実施例7を説明する模式図である。(b)は、実施例7の基板表面の走査型電子顕微鏡写真である。 (a)は、比較例3のTi膜表面の走査型電子顕微鏡写真である。(b)は、比較例3のSiO2基板表面の走査型電子顕微鏡写真である。 (a)は、実施例8のSiO2基板表面の走査型電子顕微鏡写真である。(b)は、実施例8のSiN膜表面の走査型電子顕微鏡写真である。 (a)は、比較例4のSiO2基板表面の走査型電子顕微鏡写真である。(b)は、比較例4のSiN膜表面の走査型電子顕微鏡写真である。 本発明の実施の形態3における、無機粒子を逆選択的に配置する方法を説明する図である。
符号の説明
10 テフロン(登録商標)製の水槽
11 バッファ
20 無機粒子
21 天然フェリチン
30 PBLH膜
40 シリコン基板
50 マスクパターン
60 不活性ガス(熱処理槽)
75,89,301 Fe2O3微粒子
80 基板
81 フェリチン配置が必要な特定領域
82 フェリチンを選択的に特定領域にのみ配置した基板
83 非イオン性界面活性剤
84 無機粒子を内包しないペプチド修飾フェリチン
85 無機粒子を内包する従来フェリチン
86 無機粒子配置が必要な特定領域以外の領域
87 無機粒子配置が必要でない特定領域
88 特定領域以外の領域に対して逆選択的に無機粒子を配置した基板
100 SiO2基板
200 Ti膜
300 ペプチド修飾フェリチン

Claims (11)

  1. 第1の無機材料からなる第1の部分と、前記第1の無機材料と異なる第2の無機材料からなる第2の部分とを表面に有する基板に、第1のフェリチン及び非イオン性界面活性剤を含む溶液を滴下し、それによって第1のフェリチンを選択的に前記第1の部分に配置する第1配置工程とを有し、
    前記第1の部分がチタンまたは窒化シリコンからなり、
    前記第2の部分が白金または酸化シリコンからなる、
    フェリチンの選択的配置方法。
  2. 前記第1の部分及び第2の部分が、それぞれチタン及び白金、チタン及び酸化シリコン、窒化シリコン及び酸化シリコンから構成される3つの組み合わせから選択されるいずれか1つの組み合わせからなる、請求項1に記載のフェリチンの選択的配置方法。
  3. 前記第1の部分及び第2の部分が、それぞれチタン及び白金の組み合わせからなる、請求項2に記載のフェリチンの選択的配置方法。
  4. 前記第1の部分及び第2の部分が、それぞれチタン及び酸化シリコンの組み合わせからなる、請求項2に記載のフェリチンの選択的配置方法。
  5. 前記第1の部分及び第2の部分が、それぞれ窒化シリコン及び酸化シリコンの組み合わせからなる、請求項2に記載のフェリチンの選択的配置方法。
  6. 前記非イオン性界面活性剤の濃度が、0.01 v/v%以上10 v/v%以下である請求項1に記載のフェリチンの選択的配置方法。
  7. 前記第1のフェリチンのサブユニットN末端部が、配列番号:4に記載のペプチドによって修飾されている、請求項1に記載のフェリチンの選択的配置方法。
  8. 前記第1のフェリチンが、無機粒子を内包する請求項1に記載のフェリチンの選択的配置方法。
  9. 前記第1配置工程の後に、非イオン性界面活性剤を含まないが第2のフェリチンを含む溶液を前記基板に滴下し、それによって前記第2のフェリチンを、前記第2の部分に配置する第2配置工程をさらに有する、請求項1に記載のフェリチンの選択的配置方法。
  10. 前記第2のフェリチンが無機粒子を内包する、請求項9に記載のフェリチンの選択的配置方法。
  11. 前記第1のフェリチンが無機粒子を内包しない、請求項10に記載のフェリチンの選択的配置方法。
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