JP2003027170A - 室温時効抑制と低温時効硬化能に優れたアルミニウム合金材 - Google Patents
室温時効抑制と低温時効硬化能に優れたアルミニウム合金材Info
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Abstract
化能に優れた過剰Si型6000系Al合金材であって、更に、
各用途に要求される、プレス成形性、ヘム加工性などの
諸特性を兼備したAl合金材を提供することを目的とす
る。 【解決手段】 Si:0.4〜1.3%、Mg:0.4〜1.2%、Mn:0.0
1 〜0.65% 、Cu:0.001〜1.0%を含み、かつSi/Mg が1 以
上であるAl-Mg-Si系アルミニウム合金材であって、該ア
ルミニウム合金材の溶体化および焼き入れ処理を含む調
質処理後の示差走査熱分析曲線において、Si/ 空孔クラ
スター(GPII) の溶解に相当する150 〜250℃の温度範囲
におけるマイナスの吸熱ピーク高さが1000μW 以下であ
り、かつMg/Si クラスター(GPI) の析出に相当する250
〜300 ℃の温度範囲におけるプラスの発熱ピーク高さが
2000μW 以下としたことである。
Description
温時効硬化能に優れたAl-Mg-Si系アルミニウム合金材
(以下、アルミニウムを単にAlと言う)に関するもので
ある。
どの輸送機、家電製品、建築、構造物の部材や部品用と
して、成形加工性 (以下、単に成形性と言う) に優れた
Al-Mg系のAA乃至JIS 5000系や、成形性や焼付硬化性に
優れたAl-Mg-Si系のAA乃至JIS6000系 (以下、単に5000
系乃至6000系と言う) のAl合金材(圧延板材、押出形
材、鍛造材などの各アルミニウム合金展伸材を総称す
る)が使用されている。
して、自動車などの輸送機の車体の軽量化による燃費の
向上が追求されている。このため、特に、自動車の車体
に対し、従来から使用されている鋼材に代わって、Al合
金材の適用が増加しつつある。
フェンダー、ドア、ルーフなどのパネル構造体の、特
に、外板 (アウターパネル) や内板 (インナーパネル)
に使用されるAl合金パネル材を例にとると、板厚が1.0m
m 以下の薄肉化した上での高強度Al合金材として、JIS
乃至AA規格に規定された(JIS乃至AA規格を満足する) 、
過剰Si型の6000系のAl合金パネル(板)材の使用が検討
されている。
に、Si:0.4〜1.3% (質量% 、以下同じ) 、Mg:0.4〜1.2%
を含み、かつSi/Mg が1 以上である、Al-Mg-Si系アルミ
ニウム合金である。そして、この過剰Si型6000系Al合金
は、特に優れた時効硬化能を有しているため、プレス成
形や曲げ加工時には低耐力化により成形性を確保すると
ともに、成形後の焼付塗装処理などの人工時効処理時の
加熱により時効硬化して耐力が向上し、必要な強度を確
保できる利点がある。
Mg量などの合金量が多い、他の5000系のAl合金などに比
して、合金元素量が比較的少ない。このため、これら60
00系Al合金材のスクラップを、Al合金溶解材 (溶解原
料) として再利用する際に、元の6000系Al合金鋳塊が得
やすく、リサイクル性にも優れている。
途分野では、外板では加工条件の厳しいフラットヘミン
グ (フラットヘム) 加工と呼ばれる180 °曲げ加工等の
厳しい曲げ成形が、内板では深絞りや張出し等の厳しい
プレス成形が複合して施される。
的な要求特性として、高強度、高耐食性、高溶接性も要
求される。したがって、この種パネル構造体の外板や内
板のパネルには、高成形性、高ヘム加工性、高強度 (高
時効硬化性) 、高耐食性、高溶接性を兼備することが要
求される。
の温度は、省エネルギー化の要求と塗料改善とによっ
て、益々低温短時間化される傾向にあり、従来低温短時
間化の常識的であった、170 ℃×20分の処理から、150
℃×20分の低温短時間処理条件などに、益々低温化する
傾向にある。
塗装焼き付け処理が、150 ℃×20分の低温短時間化して
も、従来の170 ℃×20分の塗装焼き付け処理で得られ
る、180MPa以上の耐力とすることが求められる。しか
し、このように人工時効処理が低温した場合、過剰Si型
6000系Al合金パネル材をもってしても、その時効硬化能
には限界があるため、塗装焼き付け処理後の耐力を180M
Pa以上とすることは、非常に難しい課題である。
金材は、その優れた時効硬化能ゆえに、Al合金材自体の
製造後、前記各用途に使用されるまでの間に、室温 (常
温)時効が生じるという大きな問題があった。そして、
この室温時効の傾向は、特に、本発明が対象とする過剰
Si型6000系Al合金材で強い。例えば、この室温時効によ
って、過剰Si型6000系Al合金材自体の製造後2 週間経過
後でも、20% 程度以上耐力が上昇するとともに、逆に伸
びが10% 程度以上低下するような現象も生じる。
合、製造直後には、過剰Si型6000系Al合金材が前記各用
途の要求特性を満足したとしても、一定時間の経過後
に、実際の用途に使用される際には、要求特性を満足せ
ずに、パネル材であれば、前記プレス成形性やヘム加工
性、また、前記低温での時効硬化性を著しく低下させる
こととなる。
室温時効抑制と低温時効硬化能向上の課題に対しては、
従来から、特開平10-219382 号、特開2000-273567 号等
の公報などが公知である。これらの公報は、6000系Al合
金材の低温時効硬化能を阻害している要因は、溶体化お
よび焼入れ処理後の室温放置中に形成されるMg-Si クラ
スター [本発明で言うSi/ 空孔クラスター、以下GPI (I
はローマ数字で1 を意味する) と言う] であるとしてい
る。即ち、この形成されたGPI が、塗装焼き付け時に析
出することで、強度上昇に寄与するGPゾーン (Mg2Si 析
出相) の側の析出を阻害することであるとしている。
温時効抑制と低温時効硬化能を阻害するGPI の生成量を
規制するために、T4材 (溶体化処理後自然時効) の示差
走査熱分析曲線において、GPI の溶解に相当する150 〜
250 ℃の温度範囲における吸熱ピークがないことを規定
している。また、これらの公報では、このGPI の生成を
抑制乃至制御するために、溶体化および室温まで焼入れ
処理した後に、前記70〜150 ℃で0.5 〜50時間程度保持
する低温熱処理を施している。
-219382 号や特開2000-273567 号等の公報の通り、溶体
化および焼入れ処理後室温放置中に形成されたGPI は、
塗装焼き付け時に崩壊し、マトリックスの溶質濃度が低
下するため、強度上昇に寄与するGPゾーン (Mg2Si 析出
相) の側の析出を阻害し、低温時効硬化能が阻害され
る。また、このGPIの形成は強度上昇も招き、室温時効
抑制を阻害する。したがって、このGPI の形成を抑制す
れば、室温時効抑制と低温時効硬化能が向上する。
GPI の形成を抑制するだけでは、近年要求されている室
温時効抑制と低温時効硬化能の特性向上のためには、今
だ不十分である。
00-273567 号公報で開示されている低温時効硬化能は、
前記特公平6-74480 号公報と同じく、175 ℃×30分乃至
170℃×20分の人工時効処理条件のレベルであって、前
記した、最近の150 ℃×20分などの低温人工時効硬化処
理 (塗装焼き付け処理) 条件ではない。
は、溶体化および焼入れ処理後の前記70〜150 ℃の低温
熱処理を施しても、実施例で示されているAl合金パネル
材の塗装焼き付け処理後の耐力は、170 ℃×30分の塗装
焼き付け条件では、最大でも168MPa程度であり、前記15
0 ℃×20分などの低温時効硬化処理条件では、耐力が到
底、この種パネル材用途に要求される180MPa以上となら
ない。
時効抑制効果として、製造後100 日放置した後のAl合金
パネル材の伸びが30% 以上、エリクセン値が10mm以上を
もって、成形性が良く、室温時効が抑制されているとし
ている。
Al合金パネル材の耐力は、最大でも109MPa程度の低いレ
ベルである。これは、室温時効が抑制されたこともある
が、製造直後のAl合金パネル材の耐力が元々相当に低い
レベルであったとも言える。そして、仮に室温時効の方
が抑制されたとしても、前記150 ℃×20分などの低温時
効硬化処理条件では、前記低い耐力レベルでは、到底こ
の種パネル材用途に要求される180MPa以上とならない。
ネル材の室温時効抑制とより低温での時効硬化能向上
は、これまでの高成形性化と高強度化との課題と同様
に、相矛盾する技術課題であって、両立させることは中
々難しい。このため、従来から種々提案されている晶出
物や析出物の制御技術や、Cuなどを多量に添加する技術
をもってしても、室温時効抑制と低温時効硬化能向上と
を同時に達成することはかなり難しい技術課題となる。
ともに、前記低温時効硬化能に優れた過剰Si型6000系Al
合金材であって、更に、各用途に要求される、プレス成
形性、ヘム加工性などの諸特性を兼備した過剰Si型6000
系Al合金材は、これまでに無かったのが実情である。
ものであって、その目的は、基本的に、室温時効が抑制
されるとともに低温時効硬化能に優れた過剰Si型6000系
Al合金材であって、更に、各用途に要求される、プレス
成形性、ヘム加工性などの諸特性を兼備したAl合金材を
提供しようとするものである。
に、室温時効抑制と低温時効硬化能に優れたアルミニウ
ム合金材の請求項1 の要旨は、Si:0.4〜1.3%、Mg:0.4〜
1.2%、Mn:0.01 〜0.65% 、Cu:0.001〜1.0%を含み、かつ
Si/Mg が1 以上であるAl-Mg-Si系アルミニウム合金材で
あって、該アルミニウム合金材の溶体化および焼き入れ
処理を含む調質処理後の示差走査熱分析曲線において、
Si/ 空孔クラスター(GP I)の溶解に相当する150 〜250
℃の温度範囲におけるマイナスの吸熱ピーク高さが1000
μW 以下であり、Mg/Si クラスター(GP II) の析出に相
当する250 〜300 ℃の温度範囲におけるプラスの発熱ピ
ーク高さが2000μW 以下である、室温時効抑制と低温時
効硬化能に優れたことである。
材、パネル材を押出形材、鍛造材などの各種Al合金展伸
材を含み、かつ総称する。
なる向上のためには、請求項2 のように、前記Si/ 空孔
クラスターの溶解に相当するピーク高さが500 μW 以下
であり、Mg/Si クラスターの析出に相当するピーク高さ
が1000μW 以下であることが好ましい。
いて、まず、溶体化および焼き入れ処理後の室温時効抑
制と低温時効硬化能を阻害する、GPI とも言われる、Si
/ 空孔/(Mg) クラスターの生成を抑制する。
れ時に凍結される原子間空孔( ベーカンシー) の存在に
よって形成が促進される。即ち、この凍結空孔の存在に
よって、Mg、Siの室温における拡散が加速され、空孔を
多く含むGPI が生成しやすくなり、室温時効を促進し
て、強度上昇の主因となる。また、このGPI は塗装焼き
付け処理などの人工時効処理によっても、安定なMg2Si
相 (β" とも言う) とはなりにくく、強度が上昇せず、
低温時効硬化能が劣ることとなる。
号や特開2000-273567 号公報とは異なり、溶体化および
焼き入れ処理後の過剰Si型6000系Al合金材に、GPゾー
ン、GPII (IIはローマ数字で 2を意味する) とも言われ
る、Mg/Si クラスターを積極的に析出させることによ
り、室温時効抑制と低温時効硬化能を向上させる。
型6000系Al合金材を溶体化後の焼き入れ処理をするに際
し、300 ℃での焼き入れた中断や、70℃以上に焼き入れ
た場合、または焼き入れ後直ちに70℃以上の温度に保持
した場合など、特別の熱処理を行った場合に、空孔を含
まない乃至空孔が少ないMg/Si クラスターとして生成す
る。このGPIIは、前記GPI と相違し、室温時効を抑制す
るとともに、低温の人工時効硬化処理の際の、安定なMg
2Si 相 (β" とも言う) の核生成サイトとなり、低温時
効硬化能を向上させる。
き入れ処理後の過剰Si型6000系Al合金材の組織として、
室温時効抑制と低温時効硬化能を阻害するGPI を抑制す
るとともに、室温時効抑制と低温時効硬化能を向上させ
るGPIIを積極的に析出させることを基本とする。
特開平10-219382 号や特開2000-273567 号公報と同じ示
差走査熱分析曲線を用いる。GPI やGPIIは、それ自体の
直接の同定や定量化は困難であるものの、前記示差走査
熱分析による特定温度範囲の吸熱および発熱ピークは、
これらクラスターの存在量と各々良く対応する。
後の過剰Si型6000系Al合金材の示差走査熱分析曲線の一
例を図1に示す。図1 の示差走査熱分析曲線において、
GPIの溶解 (存在量) に相当するのは150 〜250 ℃の温
度範囲におけるマイナスの吸熱ピークB の高さh1であ
り、GPIIの析出 (存在量) に相当するのは、250 〜300
℃の温度範囲におけるプラスの発熱ピークC のh2であ
る。なお、A はGPI 析出の発熱ピーク、D は中間相析出
の発熱ピークを各々示す。また、吸熱ピークB の高さh1
と発熱ピークC の高さh2は、図1 に示す示差走査熱分析
曲線の基準線から各々のピークまでの距離 (μW)であ
る。この基準線は、図1 に示すように、示差走査熱分析
曲線の100 ℃以下の温度範囲において共通して生じる水
平な直線部分Eに沿って引き出した水平な直線とする。
したがい、示差走査熱分析曲線において、150 〜250 ℃
の温度範囲におけるマイナスの吸熱ピークB があるの
は、示差走査熱分析の際の加熱前に、即ち、溶体化およ
び焼き入れ処理後の過剰Si型6000系Al合金材自体に、元
々GPI が存在し、示差走査熱分析の際の加熱により、前
記温度範囲で固溶したことを示す。また、その吸熱ピー
クB の高さh1はGPI の存在量を示す。
マイナスの吸熱ピークB が相当量ある事実は、溶体化お
よび焼き入れ処理後の過剰Si型6000系Al合金材自体に、
室温時効抑制と低温時効硬化能を阻害するGPI の生成要
因となる凍結空孔が多く存在することも示している。
は生成せず、90℃以上の比較的高温で生成する。したが
い、示差走査熱分析曲線において、250 〜300 ℃の温度
範囲におけるGPIIのプラスの発熱ピークC があるのは、
示差走査熱分析の際の加熱によって生じたGPIIが、発熱
ピークC の高さh2分だけ存在することを意味する。
よって、GPIIの発熱ピークC が生じるのは、示差走査熱
分析の際の加熱前、即ち、溶体化および焼き入れ処理後
の過剰Si型6000系Al合金材自体には、元々GPIIがあまり
存在しないことを示している。言い換えると、溶体化お
よび焼き入れ処理後の過剰Si型6000系Al合金材に、GPII
が元々多く存在する場合には、示差走査熱分析の際の加
熱によって生成するGPII自体は少なくなり、前記GPIIの
発熱ピークC は逆に小さくなる。
の技術的傾向に基づき、本発明では、溶体化および焼き
入れ処理後の過剰Si型6000系Al合金材の組織として、室
温時効抑制と低温時効硬化能を阻害するGPI を抑制する
ための指標として、示差走査熱分析曲線において、GPI
の溶解に相当する150 〜250 ℃の温度範囲におけるマイ
ナスの吸熱ピークB の高さh1を1000μW 以下に規制す
る。
上させるGPIIの溶体化および焼き入れ処理後の析出量を
確保するための指標として、示差走査熱分析曲線におけ
る250 〜300 ℃の温度範囲におけるプラスの発熱ピーク
C の高さh2を、2000μW 以下と低く規制する。
-273567 号等の公報でも、溶体化および焼き入れ処理後
の過剰Si型6000系Al合金材の組織として、室温時効抑制
と低温時効硬化能を阻害するSi/ 空孔クラスターを制御
するために、前記示差走査熱分析曲線における、Si/ 空
孔クラスター(GP I)の溶解に相当する150 〜250 ℃の温
度範囲におけるマイナスの吸熱ピークB の高さh1を制御
している。
時効硬化能を向上させるMg/Si クラスター(GP II) の方
の確保乃至制御の観点がない。このため、各公報で示さ
れている発明例の示差走査熱分析曲線における250 〜30
0 ℃の温度範囲におけるプラスの発熱ピークC の高さh2
は、必然的に、本発明の上限である 2000 μW を越えて
高くなっている [各公報のピーク高さのmcal/sec単位は
本発明の(1/4.2) ×10 -3μW に相当する] 。このため、
溶体化および焼き入れ処理後のGPIIの析出量を確保でき
ていない。この結果、実施例における170 ℃×30分の塗
装焼き付け条件では、最大でも168MPa程度で、150 ℃×
20分などの低温時効硬化処理条件では、耐力が到底180M
Pa以上とならない。
硬化能をより向上させるためには、請求項2 の要旨のよ
うに、前記GPI の溶解に相当するピークB の高さh1が50
0 μW 以下であり、GPIIの析出に相当するピークC 高さ
h2が1000μW 以下であることが好ましい。
低温時効硬化能に優れるため、請求項3 の要旨のよう
に、前記調質処理処理後少なくとも 4カ月間の室温時効
後の特性として、耐力が110 〜160MPaの範囲であり、か
つ前記調質処理直後との耐力差が15MPa 以内、伸びが28
% 以上であり、更に2%ストレッチ付与後150 ℃×20分の
低温時効処理であっても、180MPa以上の高耐力化が可能
である。
ル材として、前記調質処理後 4カ月の室温時効後の特性
として、限界絞り比(LDR) が1.9 以上、平面ひずみ張出
高さ(LDH0)が20mm以上とすることが可能である。
材であって、Si:0.4〜1.0%、Mg:0.4〜1.0%を含み、前記
調質処理後 4カ月の室温時効後の特性として、耐力が11
0 〜140MPaであり、10% のストレッチを行った後、JIS
Z 2248に規定されるVブロック法により、先端半径0.3m
m 、曲げ角度60度の押金具で60度に曲げた後、更に厚み
0.6mm のAl合金板を挟んで、180 度に曲げた際に曲げ部
の割れをなくすることが可能である。
金材の組織の規定について説明する。前記示差走査熱分
析曲線に基づき、本発明では、溶体化および焼き入れ処
理後の過剰Si型6000系Al合金材の組織として、室温時効
抑制と低温時効硬化能を阻害する前記GPI を抑制するた
めに、GPI の溶解に相当する150 〜250 ℃の温度範囲に
おけるマイナスの吸熱ピークB の高さh1を1000μW 以
下、好ましくは500 μW以下に規制する。吸熱ピークB
の高さh1が1000μW を越えた場合、より厳密には500 μ
W を越えた場合、溶体化および焼き入れ処理後の過剰Si
型6000系Al合金材自体に、GPI の要因となる凍結空孔が
多くなり、室温中でGPI が生成して、室温時効抑制と低
温時効硬化能を低下させる。
上させる前記GPIIの溶体化および焼き入れ処理後の析出
量を確保するための指標として、示差走査熱分析曲線に
おける250 〜300 ℃の温度範囲におけるプラスの発熱ピ
ークC の高さh2を2000μW 以下、好ましくは1000μW 以
下と低く規制する。発熱ピークC の高さh2が2000μWを
越える場合、より厳密には1000μW を越えた場合、溶体
化および焼き入れ処理後の過剰Si型6000系Al合金材のGP
II析出量が不足し、室温時効抑制と低温時効硬化能を低
下させる。
質としては、測定対象Al合金材よりも融点の十分高い金
属を選択する。そして、この基準物質の種類により、測
定示差温度は大きく変化することはないものの、測定の
再現性を考慮して、本発明では、基準物質として、白金
を選択する。
示差熱分析計は、評価に必要な測定温度域の示差温度を
正確かつ再現性よく測定可能であれば、市販の示差熱分
析計を適宜選択することができる。
は、溶体化および焼き入れ処理後少なくとも4カ月間の
室温時効後の耐力 (σ0.2)を、110 〜160MPa、好ましく
は110MPaから160MPaの範囲とすることが好ましい。耐力
が160MPaを越えた場合、特にヘム加工性などの曲げ加工
性やプレス成形性が低下する。一方、耐力が110 MPa 未
満では、目的とする低温時効硬化能が得られず、2%スト
レッチ付与後150 ℃×20分の低温時効処理時の耐力が18
0MPa以上とならない。
学成分組成について説明する。本発明のAl合金材は、過
剰Si型6000系Al合金材として、特に、自動車等の輸送機
のパネル構造体などとして、室温時効が抑制されるとと
もに低温時効硬化能に優れ、更に、各用途に要求され
る、プレス成形性、ヘム加工性、耐食性、溶接性などの
諸特性を兼備させる (満足する) 必要がある。したがっ
て、本発明Al合金における、基本的なSi、Mgの各元素の
含有量の臨界的な意義はこの観点から規定される。
、Fe、Zn、Ni、V などのその他の合金元素は、基本的
には不純物元素である。しかし、前記6000系合金のリサ
イクルの観点から、溶解材として、高純度Al地金だけで
はなく、6000系合金や、その他のAl合金スクラップ材、
低純度Al地金などを溶解材として使用する場合を含む。
このような場合には、これら他の合金元素は必然的に含
まれることとなる。したがって、本発明では、目的とす
る前記諸特性向上効果を阻害しない範囲で、これら他の
合金元素が、JIS 乃至AAの規格内で含有されることを許
容する。
述する製造条件によって、Siとともに、主としてGPIIを
形成し、室温時効を抑制するとともに、プレス成形や曲
げ加工などの成形性を確保する。そして、更に、成形後
の人工時効処理(塗装焼き付け処理) によって、β" 相
(Mg2Si安定相) を形成して、高耐力 (高強度) 化する低
温時効硬化能を発揮するための必須の元素である。
るため、時効処理時に、SiとともにGPIIやβ" 相を形成
できない。この結果、室温時効抑制効果と低温時効硬化
能を発揮できない。
レス成形性や曲げ加工性 (ヘム加工性) 等の成形性が著
しく阻害される。したがって、Mgの含有量は、0.4 〜1.
2%の範囲で、かつSi/Mg が1.0 以上となるような量とす
る。また、後述する用途に応じたSiの上限量に対応し
て、Siの上限量が0.9%の場合は上限を0.9%、Siの上限量
が1.0%の場合は上限を1.0%とする。
理後に、後述する亜時効処理などの時効処理 (促進処
理) によって、Mgとともに、主としてGPIIを形成し、室
温時効を抑制するとともに、プレス成形や曲げ加工など
の成形性を確保する。そして、更に、成形後の人工時効
処理 (塗装焼き付け処理) によって、β"相を形成し
て、高耐力 (高強度) 化する低温時効硬化能を発揮する
ための必須の元素である。
入れ処理後 4カ月間の室温時効後の特性として、2%スト
レッチ付与後150 ℃×20分の低温時効処理時の耐力を18
0MPa以上という、優れた低温時効硬化能を発揮させるた
めに、Si/Mg を1.0 以上とし、SiをMgに対し過剰に含有
させた過剰Si型6000系Al合金組成とする。
果や低温時効硬化能、更には、各用途に要求される、プ
レス成形性、ヘム加工性、耐食性、溶接性などの諸特性
を兼備することができない。
体化および焼き入れ処理後の組織として、室温時効抑制
と低温時効硬化能を阻害する、空孔やGPI が多くなり、
時効処理を行っても、前記室温時効抑制効果が小さくな
る。この結果、Al合金材の溶体化および焼き入れ処理後
1カ月間の室温時効後の特性として、前記調質処理直後
との耐力差を5MPa以内とし、かつ伸びを27% 以上とし、
また、前記調質処理直後から 4カ月間の室温時効後の特
性として、時効処理直後との耐力差を15MPa 以内とし、
かつ伸びを25% 以上とすることが期待できない。更に、
溶接性を著しく阻害する。
Si含有量範囲が若干異なる。より具体的には、プレス成
形性が重視される、自動車内板用パネル材などの場合に
は、Si含有量は上記0.4 〜1.3%の範囲であることが好ま
しい。この範囲の場合に、前記時効処理後 4カ月室温時
効後の特性として優れたプレス成形性が得られる。即
ち、限界絞り比(LDR) が1.9 以上、平面ひずみ張出高さ
(LDH0)が20mm以上の特性が得られる。一方、Si含有量が
上記0.4 〜1.3%の範囲を外れた場合には、上記成形性は
得られない。
板用などのパネル材の場合には、Si含有量は0.4 〜1.1%
と、上限値がより低めの範囲であることが好ましい。Si
含有量がこの範囲にある場合、Al合金パネル材のヘム加
工性は良好となる。
記した通り、時効処理直後のAl合金材耐力が140MPaを越
えて高くなり、溶体化後の焼き入れ時に粒界へSiが析出
しやすくなり、特にヘム加工性が低下し、時効処理後 4
カ月室温時効後の特性として、前記JIS に規定されるV
ブロック法により曲げた際に、曲げ部の割れが生じる可
能性がある。
重視される用途の場合には、Si含有量は0.4 〜0.9%の、
上限値が更により低めの範囲であることが好ましい。Si
含有量が0.9%を越えた場合、溶接条件の工夫によって
も、溶接割れなどの溶接欠陥が生じる可能性がより高く
なる。
で、Al合金材組織の結晶粒内へのGPIIやβ" 相析出を促
進させる効果や、時効処理状態で固溶したCuは成形性を
向上させる効果もある。0.001%未満ではこの効果がな
い。一方、1.0%を越えると、耐応力腐食割れ性や、塗装
後の耐蝕性の内の耐糸さび性、また溶接性を著しく劣化
させる。このため、耐応力腐食割れ性が重視される構造
材用途などの場合には0.8%以下、自動車外板用などのパ
ネル材用途などの場合には、耐糸さび性の発現が顕著と
なる0.1%以下のできるだけ少ない量とすることが好まし
い。しかし、前記耐食性が問題とならず、むしろプレス
成形性の方が重視される、自動車内板用パネル材などの
場合には、0.001 〜0.8%の範囲の量とすることが好まし
い。
し、これらの分散粒子には再結晶後の粒界移動を妨げる
効果があるため、微細な結晶粒を得ることができる効果
がある。そして、例えば、本発明におけるAl合金材のプ
レス成形性やヘム加工性はAl合金組織の結晶粒が微細な
ほど向上する。この点、0.01% 未満では、これらの効果
が無く、一方、0.65% を越えた場合、溶解、鋳造時に粗
大なAl-Fe-Si-(Mn、Cr、Zr) 系の金属間化合物や晶析出
物を生成しやすく、Al合金材の機械的性質を低下させる
原因となる。このため、特に、Al合金パネル材の場合に
は、Mn:0.01 〜0.15% の範囲とすることが好ましい。
時に分散粒子 (分散相) を生成し、これらの分散粒子に
は再結晶後の粒界移動を妨げる効果があるため、微細な
結晶粒を得ることができる効果がある。しかし、Cr、Zr
は、溶解、鋳造時に粗大なAl-Fe-Si-(Mn、Cr、Zr) 系の
金属間化合物や晶析出物を生成しやすく、Al合金材の機
械的性質を低下させる原因となる。この点、Cr:0.25%以
下、Zr:0.15%以下までは許容する。
と、粗大な晶出物を形成し、成形性を低下させる。但
し、Ti、B には微量の含有で、鋳塊の結晶粒を微細化
し、プレス成形性を向上させる効果もある。したがっ
て、Ti:0.1% 以下、B:300ppm以下までの含有は許容す
る。
u2Fe、Al12(Fe,Mn)3Cu 2 、(Fe,Mn)Al6などの晶出物を生
成する。これらの晶出物は、破壊靱性および疲労特性更
には成形性を著しく劣化させる。特に、Feの含有量が0.
50% を越えると顕著にこれらの特性が劣化するため、好
ましくは、Feの含有量 (許容量) を0.50% 以下とする。
る。したがって、Znの含有量は好ましくは0.1%以下とす
る。
Si型6000系Al合金材は、常法により製造が可能である。
但し、本発明Al合金材組織と特性を得るための、常法に
よる各工程中と、前記時効処理などの好ましい工程条件
や製造条件があり、この条件から外れた場合に、本発明
Al合金材組織と特性が得られない場合がある。この点を
含め, 製造方法につき、以下に説明する。
発明成分規格範囲内に溶解調整された、過剰Al合金溶湯
を、連続鋳造圧延法、半連続鋳造法(DC鋳造法)等の通
常の溶解鋳造法を適宜選択して鋳造する。
処理を施した後、熱間圧延- 冷間圧延 (必要により、熱
延- 冷延の間、冷延の間にバッチ式あるいは連続式の中
間焼鈍なども施しながら) 、または押出、鍛造などの塑
性加工を行い、コイル状、板状などパネル材、長手方向
に渡って断面形状が同じ押出形材、ニアネットシェイプ
の鍛造材などの所望Al合金展伸材の形状に加工する。
加工後の6000系Al合金展伸材は、調質処理として、必須
に乃至最低限溶体化および焼入れ処理(T4 処理) され
る。溶体化および焼入れ処理は、Al合金材の成形性や機
械的特性を調整するために、また、後の人工時効処理に
より、GPIIやβ" 相を十分粒内に析出させるための前段
階として重要な工程である。この効果を出すための溶体
化処理は480 〜550 ℃の温度範囲で行う。
内板用パネル材などの場合には、溶体化処理条件は、53
0 〜550 ℃のより高温側の方が好ましい。
板用などのパネル材の場合には、溶体化処理条件は、48
0 〜530 ℃のより低温側の方が好ましい。
度は300 ℃/ 分以上の急冷とすることが好ましい。冷却
速度が300 ℃/ 分未満の遅い場合には、焼入れ後の強度
が低くなり、低温短時間の塗装焼き付けでの時効硬化能
が不足し、180MPa以上の高耐力を確保できない。また、
溶体化後の焼き入れ時に粒界上にSi、MgSiなどが析出し
やすくなり、プレス成形やヘム加工時の割れの起点とな
り易く、これら成形性が低下する。この冷却速度を確保
するために、焼入れ処理は、ファンなどの空冷でもよい
が、ミスト、スプレー、浸漬等の水冷手段から選択して
行うことが好ましい。
凍結空孔の生成を抑制するために、溶体化処理後の焼入
れを200 〜300 ℃の温度範囲で一旦中断し、この温度範
囲で数秒〜数十秒間保持後、更に、室温乃至所定温度ま
で急冷して焼入れ処理を行うことが好ましい。GP I の
要因となるAl中の凍結空孔の濃度は温度依存性が高いた
め、溶体化処理後に室温まで一気に焼入れ処理した場
合、凍結空孔の濃度が高くなる。この点、焼入れを200
〜300 ℃の温度範囲で一旦中断し、この温度範囲で保持
することにより、焼入れ処理後の凍結空孔の濃度を減少
させることができる。
生成を抑制するために、溶体化処理後の焼入れ終了後、
予備時効処理を行うことが好ましい。予備時効処理は、
溶体化処理後の焼入れ終了温度を50〜100 ℃と高くした
後に、直ちに再加熱乃至そのまま保持して行う。あるい
は、溶体化処理後常温までの焼入れ処理の後に、直ちに
50〜100 ℃に再加熱して行う。
度範囲に、1 〜24時間の必要時間保持することが好まし
い。また、予備時効処理後の冷却速度は、1 ℃/hr 以下
であることが好ましい。予備時効処理温度が50℃未満で
は、また保持時間が不足した場合には、GPI 自体の生成
を抑制できない可能性がある。一方、100 ℃を越える温
度では、また、保持時間が長過ぎると、時効が進み過
ぎ、強度が高くなりすぎるため、成形性が著しく低下す
る可能性がある。
効の温度範囲で焼入れ処理を終了し、そのままの高温で
コイルに巻き取るなどして行う。なお、コイルに巻き取
る前に再加熱しても、巻き取り保後に保温しても良い。
また、常温までの焼入れ処理の後に、前記温度範囲に再
加熱して高温で巻き取るなどしてもよい。
生成を抑制するために、溶体化処理後の焼入れ終了後、
板をレベラーにかけるかストレッチして、板に歪みを導
入し、転位によって凍結空孔を吸収して空孔を無くすよ
うにしても良い。但し、歪み導入による強度上昇が不可
避であるので、歪み導入量には注意を要する。
を積極的に生成させるために、前記予備時効処理後に、
時間的な遅滞無く、比較的低温での時効処理を行い、よ
り安定なGPIIとβ" 相 (主としてGPII) を生成させるこ
とが好ましい。前記時間的な遅滞があった場合、予備時
効処理後でも、時間の経過とともに室温時効 (自然時
効) が生じ、この室温時効が生じた後では、時効処理に
よる効果が発揮しにくくなる。
前記組成範囲において、時効処理温度を80〜120 ℃の亜
時効処理範囲とし、時効処理時間は必要時間、好ましく
は1〜24時間の範囲とし、この範囲の中から、前記組成
に応じて、時効処理効果が得られる温度と時間を選択す
ることが好ましい。また、この時効処理後の冷却速度
は、1 ℃/hr 以下であることが好ましい。時効処理温度
が80℃未満では、また、保持時間が短過ぎると、より安
定なGPIIとβ" 相を生成させることができない。このた
め、目的とする室温時効抑制効果や低温時効硬化能が得
られない。一方、120 ℃を越える温度では通常の時効処
理と大差なくなり、GPI が析出して時効が進み過ぎ、強
度が高くなりすぎる。そして、この結果、成形性が著し
く低下する。この点は、時効処理の保持時間が長過ぎて
も同じである。なお、前記予備時効処理温度を、後述す
る時効処理並に高めとし、時効処理と合わせた乃至連続
した熱処理としても良い。
効処理と時効処理とを併用することで、Al合金材の組織
を、GPI が無い乃至少ない、主として、安定なGPII、
β" 相と過飽和固溶体からなるミクロ組織とすることが
出来る。このミクロ組織は、前記した通り、室温での時
効硬化が起きにくいという優れた特性を有する。その一
方で、このミクロ組織は、150 ℃×20分の低温時効硬化
処理条件など、その後の焼き付け塗装などの加熱 (時効
処理) 温度が低くても、β" 相の核生成サイトとなり、
低温時効処理能が高いという優れた特性も有する。
温の時効処理や安定化処理を行い、より高耐力化などを
図ることも勿論可能である。
意義を証明する。表1 に示す、本発明組成範囲および本
発明組成範囲から外れた各成分組成のAl合金板を作成し
た。Al合金板の作製は、50mm厚の鋳塊を、DC鋳造法によ
り溶製後、540 ℃×4 時間の均質化熱処理を施し、終了
温度300 ℃で厚さ2.5mm まで熱間圧延した。この熱間圧
延板を、更に、厚さ1.0mm まで冷間圧延した。
〜5)および比較例組成 (合金略号6〜8)の冷延板を各試
験片サイズに切断後、硝石炉で510 〜530 ℃×45秒の溶
体化処理後70℃まで水冷する (焼入れ停止温度が70℃)
焼入れ処理を行った。
の生成を抑制するために、溶体化処理後の水焼入れを
200 〜300 ℃の温度範囲で一旦中断し、この温度範囲で
30秒保持後、更に、前記70℃まで水冷する焼入れ処理、
前記水焼入れを行った後にローラーレベラーに通板し
て2%の歪みを与える、前記焼入れ停止温度(70 ℃)に2
時間保持するか、70℃で焼入れ停止後90℃の温度に加
熱して2 時間保持する予備時効処理の、3 つの手段を選
択的に、あるいは組み合わせて行った。
生成を促進するために、100 ℃×6時間 (加熱速度40℃/
hr 、冷却速度1 ℃/hr 以下) の条件での亜時効処理を
選択的に行った。これらの処理条件を表2 、3 に示す。
なお、表2 、3 において、〇をつけたもの乃至数値条件
を記入したものが該当する処理や手段を用いたことを示
す。
(時効処理をしない場合は焼き入れ処理直後、以下同じ)
の示差走査熱分析曲線を測定し、GPI の溶解に相当す
る150〜250 ℃の温度範囲におけるマイナスの吸熱ピー
ク高さとGPIIの析出に相当する250 〜300 ℃の温度範囲
におけるプラスの発熱ピーク高さとを各々測定した。こ
れらの結果を表2 、3 に示す。
効果を確認するため、前記各時効処理直後 (時効処理を
しない場合は焼き入れ処理直後、以下同じ) の各試験材
の耐力A 、伸び、各時効処理後 4カ月間(120日間) の室
温時効後の、各試験材の耐力B 、伸びを測定した。ま
た、各時効処理直後との耐力差 (Δ耐力、A-B)とを求め
た。
行うとともに、試験片形状はJIS 5号試験片で行い、試
験片長手方向が圧延方向と一致するように作製した。ま
た、クロスヘッド速度は5mm/分で、試験片が破断するま
で一定の速度で行った。
のAl合金材を、150 ℃×20分の低温時効硬化処理した後
の耐力(BH 耐力) を測定し、低温時効処理能を調査し
た。
ような長期間放置した後に、自動車パネル材としてプレ
ス成形やヘム加工されることを模擬して、各時効処理後
4カ月間の室温時効後のAl合金材を成形試験した。より
具体的には、各試験材の平面ひずみ張出高さ(LDH0)試
験、曲げ試験を行い、成形性を評価した。これらの結果
も表2 、3 に示す。
件は、幅100mm ×長さ180mm の試験片を用い、試験片長
手方向が圧延方向と直角方向に一致するように作製し
た。そして、パンチ (玉頭、100mm φ) とダイス (ビー
ド付き) を用い、しわ押さえ力200kN 、潤滑油R-303 、
成形速度20mm/ 分、の条件で3 回行い、最も低い張出高
さをLDH0値とした。なお、1 回でも破断した試験材はLD
H0値を求めなかった (表3 の比較例No. 14、15、20、2
1) 。
ットヘム加工されることを模擬して、試験材の10% のス
トレッチを行った後、曲げ試験を行った。試験片条件
は、JIS Z 2204に規定される3 号試験片 (幅30mm×長さ
200mm)を用い、試験片長手方向が圧延方向と一致するよ
うに作製した。曲げ試験は、JIS Z 2248に規定されるV
ブロック法により、フラットヘム加工を模擬して、先端
半径0.3mm 、曲げ角度60度の押金具で60度に曲げた後、
更に厚み0.6mm のAl合金板を挟んで、180 度に曲げた。
試験後の曲げ部 (湾曲部) の割れの発生状況を観察し、
割れがないものを〇、割れがあるものを×と評価した。
範囲内のAl合金材 (表1 のNo.1〜5)であって、Al合金材
の前記各時効処理直後の示差走査熱分析曲線において、
GPIの溶解に相当する150 〜250 ℃の温度範囲における
マイナスの吸熱ピーク高さが1000μW 以下であり、GPII
の析出に相当する250 〜300 ℃の温度範囲におけるプラ
スの発熱ピーク高さが2000μW 以下である発明例No.1〜
13は、目的とする室温時効抑制効果や低温時効硬化能が
得られている。
カ月間の室温時効後の特性として、時効処理直後との耐
力差が15MPa 以内であり、かつ伸びが28% 以上である。
また、2%ストレッチ付与後150 ℃×20分の低温時効処理
時のBH耐力も180MPa以上とすることができる。
のでも、ヘム加工性が良好で、平面ひずみ張出高さ(LDH
0)が20mm以上のプレス成形性も満足する。
パネル材製造後長期間放置した後の優れた強度、成形性
などの諸特性を兼備し、特に自動車などのパネル材とし
て好適に用いることができる。
合金材No.6〜8 を使用) は、GPI の生成を抑制乃至GPII
の生成を促進する処理を施したため、示差走査熱分析曲
線において、GPI の溶解に相当する150 〜250 ℃の温度
範囲におけるマイナスの吸熱ピーク高さが1000μW 以下
であり、GPIIの析出に相当する250 〜300 ℃の温度範囲
におけるプラスの発熱ピーク高さが2000μW 以下であ
る。しかし、比較例No.14 はAl合金材No.6のSi量が高過
ぎるため、ヘム加工性が劣る。比較例No.15 はAl合金材
No.7のSi量が少な過ぎるため、特に2%ストレッチ付与後
150 ℃×20分の低温時効処理時のBH耐力が180MPa未満で
ある。また、比較例No.16 もAl合金材No.8のSi/Mg が1
未満であり、特に2%ストレッチ付与後150 ℃×20分の低
温時効処理時のBH耐力が180MPa未満である。
組成範囲内のAl合金材 (表1 のNo.1〜5)を用いているも
のの、GPI の生成を抑制乃至GPIIの生成を促進する処理
を施さなかったため、示差走査熱分析曲線において、GP
I の溶解に相当する150 〜250 ℃の温度範囲におけるマ
イナスの吸熱ピーク高さが1000μW を越え、GPIIの析出
に相当する250 〜300 ℃の温度範囲におけるプラスの発
熱ピーク高さが2000μW を越えている。このため、目的
とする室温時効抑制効果と低温時効硬化能のいずれか、
または両方が得られていない。また、パネル材製造後 4
ケ月間放置したものでは、ヘム加工性が劣り、プレス成
形性も劣る。したがって、これら比較例では、成形され
るパネル構造体用としては不適である。
とともに低温時効硬化能に優れた過剰Si型6000系Al合金
材であって、更に、各用途に要求される、プレス成形
性、ヘム加工性などの諸特性を兼備したAl合金材の製造
方法、およびAl合金材をを提供することができる。した
がって、Al合金材の自動車などの輸送機などへの用途の
拡大を図ることができる点で、多大な工業的な価値を有
するものである。
ある。
Claims (3)
- 【請求項1】 Si:0.4〜1.3%、Mg:0.4〜1.2%、Mn:0.01
〜0.65% 、Cu:0.001〜1.0%を含み、かつSi/Mg が1 以上
であるAl-Mg-Si系アルミニウム合金材であって、該アル
ミニウム合金材の溶体化および焼き入れ処理を含む調質
処理後の示差走査熱分析曲線において、Si/ 空孔クラス
ター(GP I)の溶解に相当する150 〜250 ℃の温度範囲に
おけるマイナスの吸熱ピーク高さが1000μW 以下であ
り、かつMg/Si クラスター(GP II) の析出に相当する25
0 〜300 ℃の温度範囲におけるプラスの発熱ピーク高さ
が2000μW 以下である、室温時効抑制と低温時効硬化能
に優れたアルミニウム合金材。 - 【請求項2】 前記Si/ 空孔クラスターの溶解に相当す
るピーク高さが500μW 以下であり、Mg/Si クラスター
の析出に相当するピーク高さが1000μW 以下である請求
項1に記載の室温時効抑制と低温時効硬化能に優れたア
ルミニウム合金材。 - 【請求項3】 前記調質処理後少なくとも 4カ月間の室
温時効後の特性として、耐力が110 〜160MPaの範囲であ
り、かつ前記調質処理直後との耐力差が15MPa 以内、伸
びが28% 以上であり、更に2%ストレッチ付与後150 ℃×
20分の低温時効処理時の耐力が180MPa以上である請求項
1または2に記載の室温時効抑制と低温時効硬化能に優
れたアルミニウム合金材。
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