JP2003025112A - 切粉に対する表面潤滑性にすぐれた表面被覆超硬合金製切削工具 - Google Patents

切粉に対する表面潤滑性にすぐれた表面被覆超硬合金製切削工具

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JP2003025112A JP2001213269A JP2001213269A JP2003025112A JP 2003025112 A JP2003025112 A JP 2003025112A JP 2001213269 A JP2001213269 A JP 2001213269A JP 2001213269 A JP2001213269 A JP 2001213269A JP 2003025112 A JP2003025112 A JP 2003025112A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 切粉に対する表面潤滑性にすぐれた表面被覆
超硬合金製切削工具を提供する。 【解決手段】 表面被覆超硬合金製切削工具が、炭化タ
ングステン基超硬合金基体または炭窒化チタン系サーメ
ット基体の表面に、(a)組成式:(Ti1-XAlX)N
および同(Ti1-XAlX)C1-YY(ただし、原子比
で、Xは0.1〜0.7、Yは0.5〜0.99を示
す)を有するTiとAlの複合窒化物層およびTiとA
lの複合炭窒化物層のうちのいずれかの単層、または両
方の複層からなり、かつ0.1〜10μmの平均層厚を
有する下側硬質層、(b)酸化アルミニウム層からな
り、かつ0.5〜15μmの平均層厚を有する上側硬質
層、(c)窒化アルミニウム層からなり、かつ0.5〜
15μmの平均層厚を有する表面潤滑層、以上(a)〜
(c)で構成された耐摩耗被覆層を物理蒸着してなる。

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、切粉に対する表
面潤滑性にすぐれ、したがって特にステンレス鋼や軟鋼
などのきわめて粘性が高く、かつ切粉が切刃表面に溶着
し易い難削材の高速切削加工に用いた場合にも、切刃に
欠けやチッピング(微小欠け)などの発生なく、すぐれ
た切削性能を長期に亘って発揮する表面被覆超硬合金製
切削工具(以下、被覆超硬工具という)に関するもので
ある。 【0002】 【従来の技術】一般に、切削工具には、各種の鋼や鋳鉄
などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部
に着脱自在に取り付けて用いられるスローアウエイチッ
プ、前記被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリ
ルやミニチュアドリル、さらに前記被削材の面削加工や
溝加工、肩加工などに用いられるソリッドタイプのエン
ドミルなどがあり、また前記スローアウエイチップを着
脱自在に取り付けて前記ソリッドタイプのエンドミルと
同様に切削加工を行うスローアウエイエンドミル工具な
どが知られている。 【0003】また、一般に、上記の切削工具として、上
記超硬基体の表面に、(a)耐摩耗被覆層の下側硬質層
として、例えば図1に概略説明図で示される物理蒸着装
置の1種であるアークイオンプレーティング装置を用
い、ヒータで装置内を、例えば1.3×10-3Paの真
空雰囲気として、650℃の温度に加熱した状態で、ア
ノード電極と所定組成を有するTi−Al合金がセット
されたカソード電極(蒸発源)との間に、例えば電圧:
35V、電流:90Aの条件でアーク放電を発生させ、
同時に装置内に反応ガスとして窒素ガス、または窒素ガ
スとメタンガスを導入し、一方炭化タングステン(以
下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以
下、TiCNで示す)基サーメットからなる基体(以
下、これらを総称して超硬基体と云う)には、例えばー
200Vのバイアス電圧を印加した条件で、前記超硬基
体の表面に、組成式:(Ti1-XAlX)Nおよび同(T
1-XAlX)C1-YY(ただし、原子比で、Xは0.1
〜0.7、Yは0.5〜0.99を示す)を有するTi
とAlの複合窒化物[以下、(Ti,Al)Nで示す]
層および複合炭窒化物[以下、(Ti,Al)CNで示
す]層のうちのいずれかの単層、または両方の複層を
0.1〜10μmの平均層厚で形成し、(b)さらに、
上記下側硬質層の表面に、同じアークイオンプレーティ
ング装置にて、カソード電極(蒸発源)として金属Al
を用い、かつ装置内に導入される反応ガスを酸素とし、
パルスバイアス電圧を印加する以外は上記下側硬質層の
蒸着形成条件と実質的に同じ条件で、酸化アルミニウム
(以下、Al23で示す)層からなる上側硬質層を0.
5〜15μmの平均層厚で形成してなる、被覆超硬工具
が知られている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】近年の切削加工装置の
FA化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化お
よび省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに
伴い、切削工具には1種類の工具でできるだけ多くの材
種の被削材を切削加工できる汎用性が求められると共
に、切削加工も高速化の傾向にあるが、上記の従来被覆
超硬工具においては、これを鋼や鋳鉄などの通常の条件
での切削加工に用いた場合には問題はないが、これをき
わめて粘性の高いステンレス鋼や軟鋼などの被削材の高
速切削に用いた場合には、これら被削材の切粉は、耐摩
耗被覆層を構成するAl23層や、(Ti,Al)N層
および(Ti,Al)CN層に対する親和性が高いため
に、切刃表面に溶着し易く、この溶着現象は切削加工が
高速化すればするほど顕著に現れるようになり、この溶
着現象が原因で切刃に欠けやチッピングが発生し、この
結果比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。 【0005】 【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等は、
上述のような観点から、特にステンレス鋼や軟鋼などの
高速切削加工に用いた場合にも、切刃表面に切粉の溶着
し難い被覆超硬工具を開発すべく、特に上記の従来被覆
超硬工具に着目し、研究を行った結果、上記の従来被覆
超硬工具の表面に、通常の物理蒸着装置を用い、窒化ア
ルミニウム(以下、AlNで示す)層を形成すると、こ
の結果の被覆超硬工具においては、前記TiN層の被削
材、特にステンレス鋼や軟鋼などの粘性の高い難削材に
対する親和性がきわめて低く、これは高い発熱を伴う高
速切削加工でも変わらず、この結果切刃に切粉が溶着す
ることがない、すなわち前記TiN層がすぐれた表面潤
滑性を発揮することから、切刃に欠けやチッピングの発
生がなくなり、耐摩耗被覆層を構成する上記上側硬質層
および下側硬質層によってもたらされるすぐれた耐摩耗
性と相俟って、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮す
るようになる、という研究結果を得たのである。 【0006】この発明は、上記の研究結果に基づいてな
されたものであって、超硬基体の表面に、 (a)組成式:(Ti1-XAlX)Nおよび同(Ti1-X
AlX)C1-YY(ただし、原子比で、Xは0.1〜
0.7、Yは0.5〜0.99を示す)を有する(T
i,Al)N層および(Ti,Al)CN層のうちのい
ずれか単層、あるいは両方の複層からなり、かつ0.1
〜10μmの平均層厚を有する下側硬質層、(b)Al
23層からなり、かつ0.5〜15μmの平均層厚を有
する上側硬質層、(c)AlN層からなり、かつ0.5
〜15μmの平均層厚を有する表面潤滑層、以上(a)
〜(c)で構成された耐摩耗被覆層を物理蒸着してな
る、切粉に対する表面潤滑性にすぐれた被覆超硬工具に
特徴を有するものである。 【0007】つぎに、この発明の被覆超硬工具におい
て、これの耐摩耗被覆層の構成層について、上記の通り
数値限定した理由を説明する。 (1)表面潤滑層 表面潤滑層を構成するAlN層には、上記の通り特に粘
性の高いステンレス鋼や軟鋼などの被削材に対してすぐ
れた潤滑性を発揮する作用があるが、その平均層厚が
0.5μm未満では所望のすぐれた表面潤滑性を確保す
ることができず、一方この表面潤滑性付与作用は15μ
mまでの平均層厚で十分であることから、その平均層厚
を0.5〜15μmと定めた。 【0008】(2)上側硬質層 上側硬質層を構成するAl23層は、すぐれた高温硬さ
と耐熱性を有し、上記の下側硬質層と共存した状態で耐
摩耗被覆層の耐摩耗性を一段と向上させる作用がある
が、その平均層厚が0.5μmでは所望のすぐれた耐摩
耗性を確保することができず、一方その平均層厚が15
μmを越えると、耐摩耗被覆層にチッピングが発生し易
くなることから、その平均層厚を0.5〜15μmと定
めた。 【0009】(3)下側硬質層 下側硬質層を構成する(Ti,Al)N層および(T
i,Al)CN層には、耐摩耗被覆層に硬さと靭性を付
与せしめ、もってチッピングの発生なく、すぐれた耐摩
耗性を上側硬質層との共存において発揮する作用があ
る。すなわち前記下側硬質層におけるAlは高靭性を有
するTiNに対して硬さを高め、もって耐摩耗性を向上
させるために固溶するものであり、したがって組成式:
(Ti1-XAlX)Nおよび同(Ti1-XAlX)C1-YY
のX値が0.1未満では所望の硬さ向上効果が得られ
ず、一方その値が0.7を越えると、耐摩耗被覆層にチ
ッピングが発生し易くなると云う理由によりX値を0.
1〜0.7(原子比)と定めたものであり、また、(T
i,Al)CN層におけるC成分には、さらに硬さを向
上させる作用があるので、(Ti,Al)CN層は上記
(Ti,Al)N層に比して相対的に高い硬さをもつ
が、この場合C成分の割合が0.01未満、すなわちY
値が0.99を越えると所定の硬さ向上効果が得られ
ず、一方C成分の割合が0.5を越える、すなわちY値
が0.5未満になると靭性が急激に低下するようになる
ことから、Y値を0.5〜0.99、望ましくは0.5
5〜0.9と定めたのである。また、この場合その平均
層厚が0.1μm未満では所望のすぐれた耐摩耗性を確
保することができず、一方その層厚が10μmを越える
と、耐摩耗被覆層にチッピングが発生し易くなることか
ら、その平均層厚を0.1〜10μmと定めた。 【0010】 【発明の実施の形態】つぎに、この発明の被覆超硬工具
を実施例により具体的に説明する。 (実施例1)原料粉末として、いずれも1〜3μmの平
均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、V
C粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3 C2 粉末、T
iN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これ
ら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボー
ルミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、100MP
a の圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6P
aの真空中、温度:1400℃に1時間保持の条件で焼
結し、焼結後、切刃部分にR:0.05のホーニング加
工を施してISO規格・CNMG120408のチップ
形状をもったWC基超硬合金製の超硬基体A1〜A10
を形成した。 【0011】また、原料粉末として、いずれも0.5〜
2μmの平均粒径を有するTiCN(重量比でTiC/
TiN=50/50)粉末、Mo2 C粉末、ZrC粉
末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、お
よびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示さ
れる配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合
し、乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス
成形し、この圧粉体を2kPaの窒素雰囲気中、温度:
1500℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃
部分にR:0.03のホーニング加工を施してISO規
格・CNMG120408のチップ形状をもったTiC
N系サーメット製の超硬基体B1〜B6を形成した。 【0012】ついで、これら超硬基体A1〜A10およ
びB1〜B6を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した
状態で、それぞれ図1に例示される通常のアークイオン
プレーティング装置に装入し、一方カソード電極(蒸発
源)として種々の成分組成をもったTi−Al合金を装
着し、装置内を排気して1.3×10-3Paの真空に保
持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した
後、Arガスを装置内に導入して2.5PaのAr雰囲
気とし、この状態で超硬基体に−800vのバイアス電
圧を印加して超硬基体表面をArガスボンバート洗浄
し、ついで装置内を1.3×10-3Paの真空に保持し
ながら、ヒーターで装置内を600〜700℃の範囲内
の所定の温度に加熱した状態で、装置内に反応ガスとし
て窒素ガス、または窒素ガスとメタンガスを導入して
2.8Paの反応雰囲気とすると共に、前記超硬基体に
印加するバイアス電圧を−150vに下げて、前記カソ
ード電極とアノード電極との間にアーク放電を発生さ
せ、もって前記超硬基体A1〜A10およびB1〜B6
のそれぞれの表面に、表3、4に示される目標組成およ
び目標層厚の(Ti,Al)N層および(Ti,Al)
CN層のうちのいずれかの単層、あるいは両方の複層で
構成された下側硬質層を形成し、つぎにカソード電極
(蒸発源)として金属Alを用い、アノード電極との間
にアーク放電を発生させ、装置内に反応ガスとして酸素
を導入して1.3Paの反応雰囲気とすると共に、前記
超硬基体に印加するパルスバイアス電圧を−300vと
する以外は前記下側硬質層形成条件と同一の条件で、前
記下側硬質層の表面に、同じく表3、4に示される目標
層厚のAl23層を上側硬質層として形成し、さらに装
置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して3Paの反応
雰囲気とすると共に、前記超硬基体に印加するパルスバ
イアス電圧を−280vとする以外は前記上側硬質層形
成条件と同一の条件で、前記上側硬質層の表面に、同じ
く表3、4に示される目標層厚のAlN層を表面潤滑層
として形成することにより、図2(a)に概略斜視図
で、同(b)に概略縦断面図で示される形状を有する本
発明被覆超硬工具としての本発明表面被覆超硬合金製ス
ローアウエイチップ(以下、本発明被覆超硬チップと云
う)1〜24をそれぞれ製造した。 【0013】また、比較の目的で、表5,6に示される
通り、表面潤滑層の形成を行なわない以外は、それぞれ
上記の本発明被覆超硬チップ1〜24の形成条件と同じ
条件で同じく図2に示される形状をもった比較被覆超硬
工具としての比較表面被覆超硬合金製スローアウエイチ
ップ(以下、比較被覆超硬チップと云う)1〜24をそ
れぞれ製造した。 【0014】つぎに、上記本発明被覆超硬チップ1〜2
4および比較被覆超硬チップ1〜24について、これを
いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止
めした状態で、 被削材:JIS・SUS304の丸棒、 切削速度:300m/min.、 切り込み:1.8mm、 送り:0.25mm/rev.、 切削時間:10分、 の条件でのステンレス鋼の乾式高速連続旋削加工試験、 被削材:JIS・SUS304の長さ方向等間隔4本縦
溝入り丸棒、 切削速度:200m/min.、 切り込み:1.5mm、 送り:0.25mm/rev.、 切削時間:3分、 の条件でのステンレス鋼の乾式高速断続旋削加工試験、
さらに、 被削材:JIS・S15Cの長さ方向等間隔4本縦溝入
り丸棒、 切削速度:270m/min.、 切り込み:1.5mm、 送り:0.3mm/rev.、 切削時間:5分、 の条件での軟鋼の乾式高速断続旋削加工試験を行い、い
ずれの旋削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定し
た。この測定結果を表7,8に示した。 【0015】 【表1】 【0016】 【表2】【0017】 【表3】 【0018】 【表4】 【0019】 【表5】【0020】 【表6】 【0021】 【表7】【0022】 【表8】 【0023】(実施例2)原料粉末として、平均粒径:
5.5μmを有する中粗粒WC粉末、同0.8μmの微
粒WC粉末、同1.3μmのTaC粉末、同1.2μm
のNbC粉末、同1.2μmのZrC粉末、同2.3μ
mのCr3C2粉末、同1.5μmのVC粉末、同1.0
μmの(Ti,W)C粉末、および同1.8μmのCo
粉末を用意し、これら原料粉末をそれぞれ表9に示され
る配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン
中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、10
0MPaの圧力で所定形状の各種の圧粉体にプレス成形
し、これらの圧粉体を、6Paの真空雰囲気中、7℃/
分の昇温速度で1370〜1470℃の範囲内の所定の
温度に昇温し、この温度に1時間保持後、炉冷の条件で
焼結して、直径が8mm、13mm、および26mmの
3種の超硬基体形成用丸棒焼結体を形成し、さらに前記
の3種の丸棒焼結体から、研削加工にて、表9に示され
る組合せで、切刃部の直径×長さがそれぞれ6mm×1
3mm、10mm×22mm、および20mm×45m
mの寸法をもった超硬基体(エンドミル)a〜hをそれ
ぞれ製造した。 【0024】ついで、これらの超硬基体(エンドミル)
a〜hの表面に、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した
状態で、同じく図1に例示される通常のアークイオンプ
レーティング装置に装入し、上記実施例1と同じ条件
で、表10に示される目標組成および目標層厚をもった
(Ti,Al)N層および(Ti,Al)CN層のうち
のいずれかの単層、あるいは両方の複層からなる下側硬
質層、Al23層からなる上側硬質層、およびAlN層
からなる表面潤滑層で構成された耐摩耗被覆層を形成す
ることにより、図3(a)に概略正面図で、同(b)に
切刃部の概略横断面図で示される形状を有する本発明被
覆超硬工具としての本発明表面被覆超硬合金製エンドミ
ル(以下、本発明被覆超硬エンドミルと云う)1〜8を
それぞれ製造した。 【0025】また、比較の目的で、表11に示される通
り、表面潤滑層の形成を行なわない以外は、それぞれ上
記の本発明被覆超硬エンドミル1〜8の製造条件と同じ
条件で同じく図3に示される形状をもった比較被覆超硬
工具としての比較表面被覆超硬合金製エンドミル(以
下、比較被覆超硬エンドミルと云う)1〜8をそれぞれ
製造した。 【0026】つぎに、上記本発明被覆超硬エンドミル1
〜8および比較被覆超硬エンドミル1〜8のうち、本発
明被覆超硬エンドミル1〜3および比較被覆超硬エンド
ミル1〜3については、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5
0mmのJIS・SUS304の板材、 切削速度:65m/min.、 溝深さ(切り込み):3mm、 テーブル送り:130mm/分、 の条件でのステンレス鋼の湿式高速溝切削加工試験(水
溶性切削油使用)、本発明被覆超硬エンドミル4〜6お
よび従来被覆超硬エンドミル4〜6については、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5
0mmのJIS・S15C板材、 切削速度:78m/min.、 溝深さ(切り込み):5mm、 テーブル送り:120mm/分、 の条件での軟鋼の乾式高速溝切削加工試験、本発明被覆
超硬エンドミル7,8および従来被覆超硬エンドミル
7,8については、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5
0mmのJIS・SUS304の板材、 切削速度:55m/min.、 溝深さ(切り込み):8mm、 テーブル送り:60mm/分、 の条件でのステンレス鋼の湿式高速溝切削加工試験(水
溶性切削油使用)、をそれぞれ行い、いずれの溝切削加
工試験でも切刃部先端面の直径が使用寿命の目安とされ
る0.1m減少するまでの切削溝長を測定した。この測
定結果を表10,11にそれぞれ示した。 【0027】 【表9】 【0028】 【表10】【0029】 【表11】 【0030】(実施例3)上記の実施例2で製造した直
径が8mm(超硬基体a〜c形成用)、13mm(超硬
基体d〜f形成用)、および26mm(超硬基体g、h
形成用)の3種の丸棒焼結体を用い、この3種の丸棒焼
結体から、研削加工にて、溝形成部の直径×長さがそれ
ぞれ4mm×13mm(超硬基体a´〜c´)、8mm
×22mm(超硬基体d´〜f´)、および16mm×
45mm(超硬基体g´、h´)の寸法をもった超硬基
体(ドリル)a´〜h´をそれぞれ製造した。 【0031】ついで、これらの超硬基体(ドリル)a´
〜h´の表面に、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した
状態で、同じく図1に例示される通常のアークイオンプ
レーティング装置に装入し、上記実施例1と同じ条件
で、表12に示される目標組成および目標層厚をもった
(Ti,Al)N層および(Ti,Al)CN層のうち
のいずれかの単層、あるいは両方の複層からなる下側硬
質層、Al23層からなる上側硬質層、およびAlN層
からなる表面潤滑層で構成された耐摩耗被覆層を形成す
ることにより、図4(a)に概略正面図で、同(b)に
溝形成部の概略横断面図で示される形状を有する本発明
被覆超硬工具としての本発明表面被覆超硬合金製ドリル
(以下、本発明被覆超硬ドリルと云う)1〜8をそれぞ
れ製造した。 【0032】また、比較の目的で、表13に示される通
り、表面潤滑層の形成を行なわない以外は、それぞれ上
記の本発明被覆超硬ドリル1〜8の製造条件と同じ条件
で同じく図4に示される形状をもった比較被覆超硬工具
としての比較表面被覆超硬合金製ドリル(以下、比較被
覆超硬ドリルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。 【0033】つぎに、上記本発明被覆超硬ドリル1〜8
および比較被覆超硬ドリル1〜8のうち、本発明被覆超
硬ドリル1〜3および比較被覆超硬ドリル1〜3につい
ては、 被削材:平面寸法:100mm×250厚さ:50mm
のJIS・SUS304板材、 切削速度:48m/min.、 送り:0.15mm/rev、 の条件でのステンレス鋼の湿式高速穴あけ切削加工試
験、本発明被覆超硬ドリル4〜6および従来被覆超硬ド
リル4〜6については、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5
0mmのJIS・SUS304の板材、 切削速度:52m/min.、 送り:0.20mm/rev、 の条件でのステンレス鋼の湿式高速穴あけ切削加工試
験、本発明被覆超硬ドリル7,8および従来被覆超硬ド
リル7,8については、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5
0mmのJIS・S15Cの板材、 切削速度:110m/min.、 送り:0.25mm/rev、 の条件での軟鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験、をそれ
ぞれ行い、いずれの湿式(水溶性切削油使用)高速穴あ
け切削加工試験でも先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.3
mmに至るまでの穴あけ加工数を測定した。この測定結
果を表12,13にそれぞれ示した。 【0034】 【表12】 【0035】 【表13】 【0036】なお、この結果得られた本発明被覆超硬工
具としての本発明被覆超硬チップ1〜24、本発明被覆
超硬エンドミル1〜8、および本発明被覆超硬ドリル1
〜8、さらに比較被覆超硬工具としての比較被覆超硬チ
ップ1〜24、比較被覆超硬エンドミル1〜8、および
比較被覆超硬ドリル1〜8の耐摩耗被覆層について、そ
の構成層のそれぞれの厚さ方向中央部の組成をオージェ
分光分析装置を用いて測定すると共に、前記耐摩耗被覆
層の構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて断面測
定したところ、いずれも目標組成および目標層厚と実質
的に同じ値を示した。 【0037】 【発明の効果】表3〜13に示される結果から、表面潤
滑層としてのAlN層を形成した本発明被覆超硬工具
は、いずれもステンレス鋼や軟鋼の切削加工を高い発熱
を伴う高速で行っても、前記AlN層が高温加熱の切粉
との親和性がきわめて低く、切粉が前記AlN層に溶着
することがなく、切刃は常にすぐれた表面潤滑性を維持
することから、切刃への切粉溶着が原因のチッピングが
切刃に発生することがなく、同じく構成層として共存す
る上側硬質層と下側硬質層の作用と相俟って、すぐれた
耐摩耗性を発揮するのに対して、前記AlN層の形成の
ない比較被覆超硬工具においては、切粉が耐摩耗被覆層
に溶着し易く、これが原因で耐摩耗被覆層が局部的に剥
がし取られることから、切刃にチッピングが発生し、比
較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。上述
のように、この発明の被覆超硬工具は、各種の鋼や鋳鉄
などの通常の条件での切削加工は勿論のこと、特に粘性
が高く、切粉が切刃表面に溶着し易いステンレス鋼や軟
鋼などの高速切削加工でも切粉に対してすぐれた表面潤
滑性を発揮し、汎用性のある切削性能を示すものである
から、切削加工装置のFA化並びに切削加工の省力化お
よび省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応でき
るものである。
【図面の簡単な説明】 【図1】アークイオンプレーティング装置の概略説明図
である。 【図2】(a)は被覆超硬チップの概略斜視図、(b)
は被覆超硬チップの概略縦断面図である。 【図3】(a)は被覆超硬エンドミル概略正面図、
(b)は同切刃部の概略横断面図である。 【図4】(a)は被覆超硬ドリルの概略正面図、(b)
は同溝形成部の概略横断面図である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】 【提出日】平成13年9月17日(2001.9.1
7) 【手続補正1】 【補正対象書類名】明細書 【補正対象項目名】0005 【補正方法】変更 【補正内容】 【0005】 【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等は、
上述のような観点から、特にステンレス鋼や軟鋼などの
高速切削加工に用いた場合にも、切刃表面に切粉の溶着
し難い被覆超硬工具を開発すべく、特に上記の従来被覆
超硬工具に着目し、研究を行った結果、上記の従来被覆
超硬工具の表面に、通常の物理蒸着装置を用い、窒化ア
ルミニウム(以下、AlNで示す)層を形成すると、こ
の結果の被覆超硬工具においては、前記AlN層の被削
材、特にステンレス鋼や軟鋼などの粘性の高い難削材に
対する親和性がきわめて低く、これは高い発熱を伴う高
速切削加工でも変わらず、この結果切刃に切粉が溶着す
ることがない、すなわち前記AlN層がすぐれた表面潤
滑性を発揮することから、切刃に欠けやチッピングの発
生がなくなり、耐摩耗被覆層を構成する上記上側硬質層
および下側硬質層によってもたらされるすぐれた耐摩耗
性と相俟って、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮す
るようになる、という研究結果を得たのである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田中 裕介 兵庫県明石市魚住町金ヶ崎西大池179番地 1 エムエムシーコベルコツ−ル株式会社 内 (72)発明者 一宮 夏樹 兵庫県明石市魚住町金ヶ崎西大池179番地 1 エムエムシーコベルコツ−ル株式会社 内 (72)発明者 近藤 暁裕 兵庫県明石市魚住町金ヶ崎西大池179番地 1 エムエムシーコベルコツ−ル株式会社 内 Fターム(参考) 3C037 CC02 CC04 CC09 3C046 FF03 FF10 FF13 FF16 FF19 FF25 4K029 AA02 AA04 BA54 BA58 BC00 BC02 BD05 CA04 DD06 EA01

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】 炭化タングステン基超硬合金基体または
    炭窒化チタン系サーメット基体の表面に、 (a)組成式:(Ti1-XAlX)Nおよび同(Ti1-X
    AlX)C1-YY(ただし、原子比で、Xは0.1〜
    0.7、Yは0.5〜0.99を示す)を有するTiと
    Alの複合窒化物層およびTiとAlの複合炭窒化物層
    のうちのいずれかの単層、または両方の複層からなり、
    かつ0.1〜10μmの平均層厚を有する下側硬質層、 (b)酸化アルミニウム層からなり、かつ0.5〜15
    μmの平均層厚を有する上側硬質層、 (c)窒化アルミニウム層からなり、かつ0.5〜15
    μmの平均層厚を有する表面潤滑層、以上(a)〜
    (c)で構成された耐摩耗被覆層を物理蒸着してなる、
    切粉に対する表面潤滑性にすぐれた表面被覆超硬合金製
    切削工具。
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