JP2003136305A - 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具 - Google Patents

高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具

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JP2003136305A JP2001337458A JP2001337458A JP2003136305A JP 2003136305 A JP2003136305 A JP 2003136305A JP 2001337458 A JP2001337458 A JP 2001337458A JP 2001337458 A JP2001337458 A JP 2001337458A JP 2003136305 A JP2003136305 A JP 2003136305A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗
性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具を提供する。 【解決手段】 表面被覆超硬合金製切削工具が、炭化タ
ングステン基超硬合金基体または炭窒化チタン系サーメ
ット基体の表面に、(a)0.05〜0.5μmの平均
層厚を有し、組成式:(Ti1-XCrX)N(ただし、原
子比で、Xは0.05〜0.20を示す)を満足し、さ
らにCu−Kα線を用いたX線回折装置による測定で、
(200)面に最高ピークが現われ、かつ前記最高ピー
クの半価幅が2θで0.9度以下であるX線回折パター
ンを示すTi−Cr複合窒化物層からなる結晶配向履歴
層を介して、(b)0.5〜7μmの平均層厚を有し、
組成式:(Cr1-YY)N(ただし、原子比で、Yは
0.4〜0.7を示す)を満足し、同じくCu−Kα線
を用いたX線回折装置による測定で、(200)面に最
高ピークが現われ、かつ前記最高ピークの半価幅が2θ
で0.9度以下であるX線回折パターンを示すCrとV
の複合窒化物層からなる硬質被覆層を物理蒸着してな
る。

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、硬質被覆層がす
ぐれた高温特性を有し、したがって特に焼入れ鋼や合金
鋼などの高硬度鋼、さらに高硬度を有する各種Ti合金
などの被削材の高熱発生を伴う高速切削加工で、すぐれ
た耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具(以
下、被覆超硬工具という)に関するものである。 【0002】 【従来の技術】一般に、切削工具には、各種被削材の旋
削加工や平削り加工にバイトの先端部に着脱自在に取り
付けて用いられるスローアウエイチップ、被削材の穴あ
け切削加工などに用いられるドリルやミニチュアドリ
ル、さらに被削材の面削加工や溝加工、肩加工などに用
いられるソリッドタイプのエンドミルなどがあり、また
前記スローアウエイチップを着脱自在に取り付けて前記
ソリッドタイプのエンドミルと同様に切削加工を行うス
ローアウエイエンドミル工具などが知られている。 【0003】また、切削工具として、炭化タングステン
(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン
(以下、TiCNで示す)基サーメットからなる基体
(以下、これらを総称して超硬基体と云う)の表面に、
組成式:(Cr1-YY)N(ただし、原子比で、Yは
0.4〜0.7を示す)を満足するCrとVの複合窒化
物[以下、(Cr,V)Nで示す]層からなる硬質被覆
層を2〜10μmの平均層厚で物理蒸着してなる被覆超
硬工具が知られており、これが特に焼入れ鋼や合金鋼な
どの高硬度鋼、さらに高硬度を有する各種Ti合金など
の被削材の連続切削や断続切削加工に用いられることも
良く知られるところである。 【0004】さらに、上記の被覆超硬工具が、例えば図
3に概略説明図で示される物理蒸着装置の1種であるア
ークイオンプレーティング装置に上記の超硬基体を装入
し、ヒータで装置内を、例えば450℃の温度に加熱し
た状態で、アノード電極と所定組成を有するCr−V合
金がセットされたカソード電極(蒸発源)との間に、例
えば電圧:30V、電流:80Aの条件でアーク放電を
発生させ、同時に装置内に反応ガスとして窒素ガスを導
入して、2Paの反応雰囲気とし、一方上記超硬基体に
は、例えば−300Vのバイアス電圧を印加した条件
で、前記超硬基体の表面に、上記(Cr,V)N層から
なる硬質被覆層を蒸着することにより製造されることも
知られている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】近年の切削加工装置の
高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化
および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これ
に伴い、切削加工は高速化の傾向にあるが、上記の従来
被覆超硬工具においては、これを通常の切削加工条件で
用いた場合には問題はないが、これを高い発熱を伴う高
速切削条件で用いた場合には、硬質被覆層の摩耗進行が
促進され、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状であ
る。 【0006】 【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等は、
上述のような観点から、高速切削加工ですぐれた耐摩耗
性を発揮する被覆超硬工具を開発すべく、特に上記の従
来被覆超硬工具を構成する硬質被覆層に着目し、研究を
行った結果、 (a)上記の従来被覆超硬工具を構成する(Cr,V)
N層からなる硬質被覆層は、Cu−Kα線を用いたX線
回折装置による測定で、図2に例示される通り(20
0)面に最高ピークが現われ、かつ前記最高ピークの半
価幅が2θで1.2度以上であるX線回折パターンを示
すが、この硬質被覆層を超硬基体表面に物理蒸着形成す
るに先だって、予め組成式:(Ti1-XCrX)N(ただ
し、原子比で、Xは0.05〜0.20を示す)を満足
するTi−Cr複合窒化物[以下、(Ti,Cr)Nで
示す]層をきわめて薄い0.05〜0.5μmの平均層
厚で蒸着形成しておくと、前記(Ti,Cr)N層は、
(200)面に高配向し、前記(200)面のピークの
半価幅が2θで0.9度以下のX線回折パターンを示す
ので、これの上に物理蒸着された、本来X線回折パター
ンの(200)面におけるピークの半価幅が1.2度以
上であるX線回折パターンを示す前記(Cr,V)N層
も前記(Ti,Cr)N層による結晶配向履歴効果によ
って前記(200)面のピークの半価幅が図1に例示さ
れる通り2θで0.9度以下の高配向X線回折パターン
を示すようになること。 【0007】(b)X線回折パターンの(200)面に
おけるピークの半価幅が2θで0.9度以下を示す高配
向の(Cr,V)N層は、同ピークの半価幅が1.2度
以上の(Cr,V)N層に比して高温特性(高温耐酸化
性および高温硬さ)にすぐれているので、前記高配向の
(Cr,V)N層からなる硬質被覆層を超硬基体表面に
物理蒸着してなる被覆超硬工具は、高い発熱を伴う高硬
度鋼やTi合金などの被削材の高速切削加工ですぐれた
耐摩耗性を発揮するようになること。以上(a)および
(b)に示される研究結果を得たのである。 【0008】この発明は、上記の研究結果に基づいてな
されたものであって、超硬基体の表面に、(a)0.0
5〜0.5μmの平均層厚を有し、かつ、組成式:(T
1-XCrX)N(ただし、原子比で、Xは0.05〜
0.20を示す)を満足満足し、さらに、Cu−Kα線
を用いたX線回折装置による測定で、(200)面に最
高ピークが現われ、かつ前記最高ピークの半価幅が2θ
で0.9度以下であるX線回折パターンを示す(Ti,
Cr)N層からなる結晶配向履歴層を介して、(b)
0.5〜7μmの平均層厚を有し、組成式:(Cr1-Y
Y)N(ただし、原子比で、Yは0.4〜0.7を示
す)を満足し、同じくCu−Kα線を用いたX線回折装
置による測定で、(200)面に最高ピークが現われ、
かつ前記最高ピークの半価幅が2θで0.9度以下であ
るX線回折パターンを示す(Cr,V)N層からなる硬
質被覆層を物理蒸着してなる、高速切削加工で硬質被覆
層がすぐれた耐摩耗性を発揮する被覆超硬工具に特徴を
有するものである。 【0009】つぎに、この発明の被覆超硬工具におい
て、これを構成する結晶配向履歴層および硬質被覆層の
組成および平均層厚を上記の通りに限定した理由を説明
する。 (a)結晶配向履歴層[(Ti,Cr)N層] (Ti,Cr)N層におけるCr成分には、層の(20
0)面を切刃のすくい面および逃げ面に対して垂直方向
に配向する作用があるが、Crの割合がTiとの合量に
占める割合(原子比)で0.05未満では、(200)
面への配向効果が不十分で、(200)面に現われる最
高ピークの半価幅を2θで0.9度以下に高配向させる
ことができず、一方その割合が同じく0.20を越えて
も、結晶配向が乱れるようになって、(200)面を高
配向させることが困難になることから、その割合を0.
05〜0.20と定めた。また、その平均層厚が0.0
5μm未満では、(Ti,Cr)N層の本来有する(2
00)面の高配向性を硬質被覆層に転化する結晶配向履
歴効果を十分に発揮させることができず、一方この結晶
配向履歴効果は0.5μmまでの平均層厚で十分である
ことから、その平均層厚を0.05〜0.5μmと定め
た。 【0010】(b)硬質被覆層[(Cr,V)N層] (Cr,V)N層のV成分には、靭性を有するCrNに
高硬度を付与し、もって層の耐摩耗性を向上させる作用
があるが、その割合がCrとの合量に占める割合(原子
比)で0.4未満では所望の硬さ向上効果が得られず、
一方その割合が同じく0.7を越えると、切刃にチッピ
ング(微小欠け)などが発生し易くなることから、その
割合を0.4〜0.7と定めた。また、その平均層厚が
0.5μm未満では、所望の耐摩耗性を確保することが
できず、一方その平均層厚が7μmを越えると、切刃に
チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を
0.5〜7μmと定めた。さらに、X線回折パターンの
(200)面に現われる最高ピークの半価幅:2θで
0.9度以下は、試験結果に基づいて経験的に定めたも
のであり、したがって前記半価幅が2θで0.9度以下
の場合に、特に高速切削加工ですぐれた耐摩耗性を発揮
し、前記半価幅が同0.9度を越えて大きくなる、すな
わち(200)面の配向性が低下するようになると、所
望の耐摩耗性を確保することができなくなる、という理
由によるものである。 【0011】 【発明の実施の形態】つぎに、この発明の被覆超硬工具
を実施例により具体的に説明する。 (実施例1)原料粉末として、いずれも1〜3μmの平
均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、V
C粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3 2 粉末、T
iN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これ
ら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボー
ルミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、100MP
a の圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6P
aの真空中、温度:1400℃に1時間保持の条件で焼
結し、焼結後、切刃部分にR:0.03のホーニング加
工を施してISO規格・CNMG120408のチップ
形状をもったWC基超硬合金製の超硬基体A1〜A10
を形成した。 【0012】また、原料粉末として、いずれも0.5〜
2μmの平均粒径を有するTiCN(重量比でTiC/
TiN=50/50)粉末、Mo2 C粉末、ZrC粉
末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、お
よびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示さ
れる配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合
し、乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス
成形し、この圧粉体を2kPaの窒素雰囲気中、温度:
1500℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃
部分にR:0.03のホーニング加工を施してISO規
格・CNMG120408のチップ形状をもったTiC
N系サーメット製の超硬基体B1〜B6を形成した。 【0013】ついで、これら超硬基体A1〜A10およ
びB1〜B6を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した
状態で、それぞれ図3に例示される通常のアークイオン
プレーティング装置に装入し、一方カソード電極(蒸発
源)として種々の成分組成をもった結晶配向履歴層形成
用Ti−Cr合金および硬質被覆層形成用Cr−V合金
を装着し、装置内を排気して0.5Paの真空に保持し
ながら、ヒーターで装置内を700℃に加熱した後、A
rガスを装置内に導入して10PaのAr雰囲気とし、
この状態で超硬基体に−800vのバイアス電圧を印加
して超硬基体表面をArガスボンバート洗浄し、ついで
装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して4Paの反
応雰囲気とすると共に、前記超硬基体に印加するバイア
ス電圧を−30vに下げて、前記カソード電極とアノー
ド電極との間にアーク放電を発生させ、もって前記超硬
基体A1〜A10およびB1〜B6のそれぞれの表面
に、表3,4に示される目標組成および目標層厚の結晶
配向履歴層[(Ti,Cr]および硬質被覆層[(C
r,V)N層]を蒸着することにより、図4(a)に概
略斜視図で、同(b)に概略縦断面図で示される形状を
有する本発明被覆超硬工具としての本発明表面被覆超硬
合金製スローアウエイチップ(以下、本発明被覆超硬チ
ップと云う)1〜20をそれぞれ製造した。また、比較
の目的で、表5,6に示される通り上記結晶配向履歴層
[(Ti,Cr)N層]の形成を行なわない以外は同一
の条件で従来被覆超硬工具としての従来表面被覆超硬合
金製スローアウエイチップ(以下、従来被覆超硬チップ
と云う)1〜20をそれぞれ製造した。 【0014】つぎに、上記本発明被覆超硬チップ1〜2
0および従来被覆超硬チップ1〜20について、これを
工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状
態で、 被削材:JIS・SKD61(硬さ:HRC45) の
丸棒、 切削速度:80m/min.、 切り込み:1.5mm、 送り:0.2mm/rev.、 切削時間:3分、 の条件での焼入れ鋼の湿式高速連続旋削加工試験(水溶
性切削油使用)、 被削材:JIS・SNCM439(硬さ:HB295)
の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、 切削速度:330m/min.、 切り込み:3.2mm、 送り:0.38mm/rev.、 切削時間:5分、 の条件での合金鋼の湿式高速断続旋削加工試験(水溶性
切削油使用)、さらに、被削材:Ti−6%Al−4%
V(質量%)の組成を有するTi合金の丸棒、 切削速度:100m/min.、 切り込み:2.8mm、 送り:0.3mm/rev.、 切削時間:8分、 の条件でのTi合金の湿式高速連続旋削加工試験(水溶
性切削油使用)を行い、いずれの旋削加工試験でも切刃
の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表7、8に
示した。 【0015】 【表1】 【0016】 【表2】【0017】 【表3】 【0018】 【表4】 【0019】 【表5】【0020】 【表6】 【0021】 【表7】【0022】 【表8】 【0023】(実施例2)原料粉末として、平均粒径:
5.5μmを有する中粗粒WC粉末、同0.8μmの微
粒WC粉末、同1.3μmのTaC粉末、同1.2μm
のNbC粉末、同1.2μmのZrC粉末、同2.3μ
mのCr32粉末、同1.5μmのVC粉末、同1.0
μmの(Ti,W)C粉末、および同1.8μmのCo
粉末を用意し、これら原料粉末をそれぞれ表9に示され
る配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン
中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、10
0MPaの圧力で所定形状の各種の圧粉体にプレス成形
し、これらの圧粉体を、6Paの真空雰囲気中、7℃/
分の昇温速度で1370〜1470℃の範囲内の所定の
温度に昇温し、この温度に1時間保持後、炉冷の条件で
焼結して、直径が8mm、13mm、および26mmの
3種の超硬基体形成用丸棒焼結体を形成し、さらに前記
の3種の丸棒焼結体から、研削加工にて、表9に示され
る組合せで、切刃部の直径×長さがそれぞれ6mm×1
3mm、10mm×22mm、および20mm×45m
mの寸法をもった超硬基体(エンドミル)a〜hをそれ
ぞれ製造した。 【0024】ついで、これらの超硬基体(エンドミル)
a〜hの表面に、ホーニングを施し、アセトン中で超音
波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図3に例示される通
常のアークイオンプレーティング装置に装入し、上記実
施例1と同一の条件で、表10に示される目標組成およ
び目標層厚をもった結晶配向履歴層[(Ti,Cr)N
層]および硬質被覆層[(Cr,V)N層]を蒸着する
ことにより、図5(a)に概略正面図で、同(b)に切
刃部の概略横断面図で示される形状を有する本発明被覆
超硬工具としての本発明表面被覆超硬合金製エンドミル
(以下、本発明被覆超硬エンドミルと云う)1〜8をそ
れぞれ製造した。また、比較の目的で、表11に示され
る通り上記結晶配向履歴層[(Ti,Cr)N層]の形
成を行なわない以外は同一の条件で従来被覆超硬工具と
しての従来表面被覆超硬合金製エンドミル(以下、従来
被覆超硬エンドミルと云う)1〜8をそれぞれ製造し
た。 【0025】つぎに、上記本発明被覆超硬エンドミル1
〜8および従来被覆超硬エンドミル1〜8のうち、本発
明被覆超硬エンドミル1〜3および従来被覆超硬エンド
ミル1〜3については、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5
0mmのJIS・SNCM439の板材、 切削速度:280m/min.、 軸方向切込み:6mm、 径方向切込み:0.2mm テーブル送り:2000mm/分、 の条件での合金鋼の湿式高速側面切削加工試験、本発明
被覆超硬エンドミル4〜6および従来被覆超硬エンドミ
ル4〜6については、 被削材:平面寸法:100mm×250mmにして、厚
さ:50mm、組成:Ti−6%Al−4%V(質量
%)の板材、 切削速度:120m/min.、 軸方向切込み:5mm、 径方向切込み:0.2mm テーブル送り:800mm/分、 の条件でのTi合金の湿式高速側面切削加工試験、本発
明被覆超硬エンドミル7,8および従来被覆超硬エンド
ミル7,8については、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5
0mmのJIS・SKD61の板材、 切削速度:100m/min.、 軸方向切込み:10mm、 径方向切込み:0.2mm、 テーブル送り:3000mm/分、 の条件での焼入れ鋼の湿式高速側面切削加工試験(いず
れの試験も水溶性切削油使用)、をそれぞれ行い、いず
れの溝切削加工試験でも切刃部先端面の直径が使用寿命
の目安とされる0.1mm減少するまでの切削長を測定
した。この測定結果を表10、11にそれぞれ示した。 【0026】 【表9】 【0027】 【表10】【0028】 【表11】 【0029】(実施例3)上記の実施例2で製造した直
径が8mm(超硬基体a〜c形成用)、13mm(超硬
基体d〜f形成用)、および26mm(超硬基体g、h
形成用)の3種の丸棒焼結体を用い、この3種の丸棒焼
結体から、研削加工にて、溝形成部の直径×長さがそれ
ぞれ4mm×13mm(超硬基体a´〜c´)、8mm
×22mm(超硬基体d´〜f´)、および16mm×
45mm(超硬基体g´、h´)の寸法をもった超硬基
体(ドリル)a´〜h´をそれぞれ製造した。 【0030】ついで、これらの超硬基体(ドリル)a´
〜h´の表面に、ホーニングを施し、アセトン中で超音
波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図3に例示される通
常のアークイオンプレーティング装置に装入し、上記実
施例1と同一の条件で、表12に示される目標組成およ
び目標層厚をもった結晶配向履歴層[(Ti,Cr)N
層]および硬質被覆層[(Cr,V)N層]を蒸着する
ことにより、図6(a)に概略正面図で、同(b)に溝
形成部の概略横断面図で示される形状を有する本発明被
覆超硬工具としての本発明表面被覆超硬合金製ドリル
(以下、従来被覆超硬ドリルと云う)1〜8をそれぞれ
製造した。また、比較の目的で、表13に示される通り
上記結晶配向履歴層[(Ti,Cr)N層]の形成を行
なわない以外は同一の条件で従来被覆超硬工具としての
従来表面被覆超硬合金製ドリル(以下、従来被覆超硬ド
リルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。 【0031】つぎに、上記本発明被覆超硬ドリル1〜8
および従来被覆超硬ドリル1〜8のうち、本発明被覆超
硬ドリル1〜3および従来被覆超硬ドリル1〜3につい
ては、 被削材:平面寸法:100mm×250mmにして、厚
さ:50mm、組成:Ti−6%Al−4%V(質量
%)の板材、 切削速度:38m/min.、 送り:0.11mm/rev、 の条件でのTi合金の湿式高速穴あけ切削加工試験、本
発明被覆超硬ドリル4〜6および従来被覆超硬ドリル4
〜6については、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5
0mmのJIS・SKD61の板材、 切削速度:45m/min.、 送り:0.15mm/rev、 の条件での焼入れ鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験、本
発明被覆超硬ドリル7,8および従来被覆超硬ドリル
7,8については、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5
0mmのJIS・SNCM439の板材、 切削速度:150m/min.、 送り:0.25mm/rev、 の条件での合金鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験、をそ
れぞれ行い、いずれの湿式高速穴あけ切削加工試験(水
溶性切削油使用)でも先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.
3mmに至るまでの穴あけ加工数を測定した。この測定
結果を表12、13にそれぞれ示した。 【0032】 【表12】 【0033】 【表13】 【0034】なお、この結果得られた本発明被覆超硬工
具としての本発明被覆超硬チップ1〜20、本発明被覆
超硬エンドミル1〜8、および本発明被覆超硬ドリル1
〜8の結晶配向履歴層[(Ti,Cr)N層]および硬
質被覆層[(Cr,V)N層]、並びに従来被覆超硬工
具としての従来被覆超硬チップ1〜20、従来被覆超硬
エンドミル1〜8、および従来被覆超硬ドリル1〜8の
硬質被覆層[(Cr,V)N層]の組成について、その
厚さ方向中央部をオージェ分光分析装置を用いて測定し
たところ、それぞれ目標組成と実質的に同じ組成を示し
た。また、これらの本発明被覆超硬工具、並びに従来被
覆超硬工具の上記構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を
用いて断面測定したところ、いずれも目標層厚と実質的
に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。さら
に、これらの本発明被覆超硬工具、並びに従来被覆超硬
工具の上記構成層をCu−Kα線を用いたX線回折装置
にて切刃のすくい面および/または逃げ面を観察し、こ
の結果得られたX線回折パターンから(200)面に現
われたピークの半価幅を測定し(この場合正確な測定が
困難な場合には、上記の実施例時にアークイオンプレー
ティング装置に同時に装入した測定ピースのX線回折パ
ターンを用いて測定した)、この測定結果を表3〜6お
よび表10〜13にそれぞれ示した。 【0035】 【発明の効果】表3〜13に示される結果から、結晶配
向履歴層の介在によって硬質被覆層の(200)面が高
配向し、これによってすぐれた高温特性(高温耐酸化性
および高温硬さ)を具備すようになる本発明被覆超硬工
具は、いずれも高硬度鋼やTi合金の切削加工を高い発
熱を伴う高速で行っても、すぐれた耐摩耗性を発揮する
のに対して、硬質被覆層の(200)面の配向性の低い
従来被覆超硬工具においては、高温を伴う高速切削加工
では切刃の摩耗進行が速く、比較的短時間で使用寿命に
至ることが明らかである。上述のように、この発明の被
覆超硬工具は、特に焼入れ鋼や高炭素鋼などの高硬度
鋼、さらに高硬度を有する各種Ti合金などの被削材の
高速切削加工でもすぐれた耐摩耗性を発揮し、長期に亘
ってすぐれた切削性能を示すものであるから、切削加工
装置の高性能化、並びに切削加工の省力化および省エネ
化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものであ
る。
【図面の簡単な説明】 【図1】本発明被覆超硬チップ3の硬質被覆層が示すX
線回折パターンである。 【図2】従来被覆超硬チップ3の硬質被覆層が示すX線
回折パターンである。 【図3】アークイオンプレーティング装置の概略説明図
である。 【図4】(a)は被覆超硬チップの概略斜視図、(b)
は被覆超硬チップの概略縦断面図である。 【図5】(a)は被覆超硬エンドミル概略正面図、
(b)は同切刃部の概略横断面図である。 【図6】(a)は被覆超硬ドリルの概略正面図、(b)
は同溝形成部の概略横断面図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田代 安彦 茨城県那珂郡那珂町向山1002−14 三菱マ テリアル株式会社総合研究所那珂研究セン ター内 (72)発明者 藤澤 隆史 茨城県結城郡石下町大字古間木1511番地 三菱マテリアル株式会社筑波製作所内 Fターム(参考) 3C037 CC02 CC04 CC09 CC11 3C046 FF03 FF05 FF10 FF11 FF16 FF19 FF25 4K029 AA02 BA02 BA07 BA17 BA58 BB02 BC02 BD05 CA00

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】 炭化タングステン基超硬合金基体または
    炭窒化チタン系サーメット基体の表面に、 (a)0.05〜0.5μmの平均層厚を有し、 組成式:(Ti1-XCrX)N(ただし、原子比で、Xは
    0.05〜0.20を示す)を満足し、 さらに、Cu−Kα線を用いたX線回折装置による測定
    で、(200)面に最高ピークが現われ、かつ前記最高
    ピークの半価幅が2θで0.9度以下であるX線回折パ
    ターンを示すTi−Cr複合窒化物層からなる結晶配向
    履歴層を介して、 (b)0.5〜7μmの平均層厚を有し、 組成式:(Cr1-YY)N(ただし、原子比で、Yは
    0.4〜0.7を示す)を満足し、 同じくCu−Kα線を用いたX線回折装置による測定
    で、(200)面に最高ピークが現われ、かつ前記最高
    ピークの半価幅が2θで0.9度以下であるX線回折パ
    ターンを示すCrとVの複合窒化物層からなる硬質被覆
    層を物理蒸着してなる、高速切削加工で硬質被覆層がす
    ぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工
    具。
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