JP3478276B2 - 高速重切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具 - Google Patents
高速重切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具Info
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Description
どの切削加工を、高送りや高切込みなどの重切削条件
で、かつ高速で行った場合に、切刃部がすぐれた耐チッ
ピング性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具(以
下、被覆超硬工具という)に関するものである。 【0002】 【従来の技術】一般に、切削工具には、各種の鋼や鋳鉄
などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部
に着脱自在に取り付けて用いられるスローアウエイチッ
プ、前記被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリ
ルやミニチュアドリル、さらに前記被削材の面削加工や
溝加工、肩加工などに用いられるソリッドタイプのエン
ドミルなどがあり、また前記スローアウエイチップを着
脱自在に取り付けて前記ソリッドタイプのエンドミルと
同様に切削加工を行うスローアウエイエンドミル工具な
どが知られている。 【0003】また、一般に、例えば図1に概略説明図で
示される物理蒸着装置の1種であるアークイオンプレー
ティング装置を用い、基本的に、ヒータで装置内を、例
えば雰囲気を1.3×10-3Paの真空として、500
℃の温度に加熱した状態で、アノード電極と所定組成を
有するTi−Al合金がセットされたカソード電極(蒸
発源)との間に、例えば電圧:35V、電流:100A
の条件でアーク放電を発生させ、同時に装置内に反応ガ
スとして窒素ガスを導入し、一方炭化タングステン(以
下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以
下、TiCNで示す)基サーメットからなる基体(以
下、これらを総称して超硬基体と云う)には、例えば−
100Vのバイアス電圧を印加した条件で、前記超硬基
体の表面に、例えば特開昭62−56565号公報に記
載されるように、TiとAlの複合窒化物[以下、(T
i,Al)Nで示す]で構成された硬質被覆層を0.8
〜15μmの平均層厚で蒸着することにより被覆超硬工
具を製造することが知られている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】近年の切削加工装置の
高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化
および省エネ化、さらに低コスト化の要求も強く、これ
に伴い、切削加工は、高送りや高切込みなどの重切削条
件で、かつ高速で行なわれる傾向にあるが、上記の従来
被覆超硬工具においては、これを鋼や鋳鉄などの通常の
条件での切削加工に用いた場合には問題はないが、これ
を特に高送りや高切込みなどの重切削条件での高速切削
加工に用いた場合には、切刃部にチッピング(微小欠
け)が発生し易く、これが原因で比較的短時間で使用寿
命に至るのが現状である。 【0005】 【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等は、
上述のような観点から、特に鋼や鋳鉄などの高速重切削
加工に用いた場合にも、すぐれた耐チッピング性を発揮
する被覆超硬工具を開発すべく研究を行った結果、 (a)例えば原料粉末として、Ti粉末およびAl粉
末、さらに窒化アルミニウム(以下、AlNで示す)粉
末を用い、これら原料粉末を所定の配合割合に配合し、
混合した後、圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を、通
常の条件、例えば真空雰囲気中、500〜600℃の範
囲内の所定の温度に所定時間保持の条件で焼結して、所
定の組成をもった焼結体を形成し、この焼結体をカソー
ド電極(蒸発源)として用いて、例えばアークイオンプ
レーティング装置にて、反応ガスとして窒素ガスを導入
して、上記超硬基体表面に硬質被覆層を形成すると、形
成された硬質被覆層は、(Ti,Al)Nの素地にAl
N相が分散分布した組織をもつものとなること。 (b)上記(a)で得られた被覆超硬工具の硬質被覆層
の素地を、組成式:(Ti1-XAlX)Nで表わした場
合、原子比で、X:0.45〜0.75を満足する組成
に特定した上で、かつ前記素地に分散分布するAlN相
の割合をオージェ分光分析装置による面分析で5〜40
面積%とすると、この結果の硬質被覆層には前記素地に
よってすぐれた靭性と高温硬さ、そして前記AlN相に
よってすぐれた高温強度(高温靭性)と耐熱性が確保さ
れることから、前記被覆超硬工具は、これを特に高温強
度および耐熱性が要求される高速重切削加工に用いても
切刃にチッピングの発生なく、すぐれた耐摩耗性を長期
に亘って発揮するようになること。 以上(a)および(b)に示される研究結果を得たので
ある。 【0006】この発明は、上記の研究結果に基づいてな
されたものであって、超硬基体の表面に、組成式:(T
i1-XAlX)N(ただし、原子比で、Xは0.45〜
0.75)を有する(Ti,Al)Nからなる素地に、
AlN相が、オージェ分光分析装置による面分析で5〜
40面積%の割合で分散分布した組織を有する硬質被覆
層を0.8〜15μmの平均層厚で物理蒸着してなる、
高速重切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮する被
覆超硬工具に特徴を有するものである。 【0007】なお、この発明の被覆超硬工具において、
硬質被覆層の素地を構成する(Ti,Al)Nにおける
AlはTiNに対して高温硬さを向上させるために固溶
するものであり、したがって組成式:(Ti1-XAlX)
NのX値が原子比で0.45未満では所望の高温硬さを
確保することができず、一方その値が同0.75を越え
ると、TiNによってもたらされるすぐれた靭性が急激
に低下するようになり、切刃部にチッピングが発生し易
くなるという理由で、X値を原子比で0.45〜0.7
5、望ましくは0.5〜0.7と定めた。 【0008】また、硬質被覆層の素地に分散分布するA
lN相は、上記の通り硬質被覆層にすぐれた高温強度
(高温靭性)と耐熱性を付与し、もって高い発熱を伴な
う、高速重切削でも硬質被覆層がすぐれた耐チッピング
性を発揮するようにする作用をもつが、硬質被覆層にお
けるAlN相の割合が、オージェ分光分析装置による面
分析で5面積%未満では前記作用に所望の効果が得られ
ず、一方同割合が40面積%を超えると素地によっても
たらされる高温硬さが急激に低下し、摩耗進行が促進す
るようになることから、AlN相の硬質被覆層における
割合を5〜40面積%、望ましくは10〜30面積%と
定めた。 【0009】さらに、硬質被覆層の平均層厚を0.8〜
15μmとしたのは、その層厚が0.8μmでは所望の
すぐれた耐摩耗性を長期に亘って確保することができ
ず、一方その層厚が15μmを越えると、切刃部にチッ
ピングが発生し易くなるという理由によるものである。 【0010】 【発明の実施の形態】つぎに、この発明の被覆超硬工具
を実施例により具体的に説明する。 (実施例1)原料粉末として、いずれも1〜3μmの平
均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、V
C粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3 C2 粉末、T
iN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これ
ら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボー
ルミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、100MP
a の圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6P
aの真空中、温度:1400℃に1時間保持の条件で焼
結し、焼結後、切刃部分にR:0.05のホーニング加
工を施してISO規格・CNMG120408の形状を
もったWC基超硬合金製のチップ超硬基体A1〜A10
を形成した。 【0011】また、原料粉末として、いずれも0.5〜
2μmの平均粒径を有するTiCN(重量比でTiC/
TiN=50/50)粉末、Mo2 C粉末、ZrC粉
末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、お
よびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示さ
れる配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合
し、乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス
成形し、この圧粉体を2kPaの窒素雰囲気中、温度:
1500℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃
部分にR:0.03のホーニング加工を施してISO規
格・CNMG120408の形状をもったTiCN系サ
ーメット製のチップ超硬基体B1〜B6を形成した。 【0012】さらに、原料粉末として、Ti粉末および
Al粉末、さらにAlN粉末を用い、これら原料粉末を
所定の配合組成に配合し、ボールミルで72時間湿式混
合し、乾燥した後、100MPa の圧力で圧粉体にプ
レス成形し、この圧粉体を6Paの真空中、500〜6
00℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で焼結
して、Ti、Al、およびAlNの含有割合を所定の含
有割合とした種々のカソード電極用焼結体(本発明硬質
被覆層形成用)を製造した。また、別途従来硬質被覆層
形成用カソード電極として、TiとAlの含有割合が異
なる各種のTi−Al合金も用意した。 【0013】ついで、これらチップ超硬基体A1〜A1
0およびB1〜B6を、アセトン中で超音波洗浄し、乾
燥した状態で、それぞれ図1に例示される通常のアーク
イオンプレーティング装置に装入し、一方カソード電極
(蒸発源)用の焼結体またはTi−Al合金を装着し、
装置内を排気して1.3×10-3Paの真空に保持しな
がら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、Ar
ガスを装置内に導入して2.5PaのAr雰囲気とし、
この状態で超硬基体に−800Vのバイアス電圧を印加
して超硬基体表面をArガスボンバート洗浄し、ついで
装置内を2.5Paの窒素ガス(反応ガス)の雰囲気と
すると共に、前記超硬基体に印加するバイアス電圧を−
100Vに下げて、前記カソード電極とアノード電極と
の間にアーク放電を発生させ、もって前記超硬基体A1
〜A10およびB1〜B6のそれぞれの表面に、表3、
4に示される目標組成および目標層厚の硬質被覆層を蒸
着することにより、本発明被覆超硬工具としての本発明
表面被覆超硬合金製スローアウエイチップ(以下、本発
明被覆超硬チップと云う)1〜20、および従来被覆超
硬工具としての従来表面被覆超硬合金製スローアウエイ
チップ(以下、従来被覆超硬チップと云う)1〜19を
それぞれ製造した。 【0014】なお、この結果得られた本発明被覆超硬チ
ップ1〜20および従来被覆超硬チップ1〜19の硬質
被覆層について、その厚さ断面中央部をオージェ分光分
析装置を用いて、素地のX値およびAlN相の分布割合
を測定したところ、それぞれ表3、4に示される素地の
目標X値およびAlN相の目標割合と実質的に同じ値を
示し、また、その厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて断
面測定したところ、いずれも同じく表3、4に示される
目標層厚と実質的に同じ平均値(5点測定の平均値)を
示した。 【0015】つぎに、上記本発明被覆超硬チップ1〜2
0および従来被覆超硬チップ1〜19について、これを
工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状
態で、本発明被覆超硬チップ1〜12および従来被覆超
硬チップ1〜12ついては、 被削材:JIS・SCM440の丸棒、 切削速度:200m/min.、 切り込み:4mm、 送り:0.35mm/rev.、 切削時間:10分、 の条件での合金鋼の乾式高速高切込み連続旋削加工試
験、 被削材:JIS・SUS304の長さ方向等間隔4本縦
溝入り丸棒、 切削速度:180m/min.、 切り込み:1.5mm、 送り:0.36mm/rev.、 切削時間:3分、 の条件でのステンレス鋼の乾式高速高送り断続旋削加工
試験を行い、また本発明被覆超硬チップ13〜20およ
び従来被覆超硬チップ13〜19ついては、 被削材:JIS・S45Cの丸棒、 切削速度:210m/min.、 切り込み:2.0mm、 送り:0.6mm/rev.、 切削時間:10分、 の条件での炭素鋼の乾式高速高送り連続旋削加工試験、 被削材:JIS・SCM440の長さ方向等間隔4本縦
溝入り丸棒、 切削速度:200m/min.、 切り込み:2.5mm、 送り:0.2mm/rev.、 切削時間:3分、 の条件での合金鋼の乾式高速高切込み断続旋削加工試験
を行い、いずれの旋削加工試験でも切刃部の逃げ面摩耗
幅を測定した。この測定結果を表3、4に示した。 【0016】 【表1】 【0017】 【表2】 【0018】 【表3】【0019】 【表4】【0020】(実施例2)原料粉末として、平均粒径:
5.5μmを有する中粗粒WC粉末、同0.8μmの微
粒WC粉末、同1.3μmのTaC粉末、同1.2μm
のNbC粉末、同1.2μmのZrC粉末、同2.3μ
mのCr3C2粉末、同1.5μmのVC粉末、同1.0
μmの(Ti,W)C粉末、および同1.8μmのCo
粉末を用意し、これら原料粉末をそれぞれ表5に示され
る配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン
中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、10
0MPaの圧力で所定形状の各種の圧粉体にプレス成形
し、これらの圧粉体を、6Paの真空雰囲気中、7℃/
分の昇温速度で1370〜1470℃の範囲内の所定の
温度に昇温し、この温度に1時間保持後、炉冷の条件で
焼結して、直径が8mm、13mm、および26mmの
3種の超硬基体形成用丸棒焼結体を形成し、この3種の
丸棒焼結体から、研削加工にて、表5に示される組み合
わせで、切刃部の直径×長さが、それぞれ6mm×13
mm、10mm×22mm、および20mm×45mm
の寸法をもった6枚刃スクエア形状のエンドミル超硬基
体a〜hをそれぞれ製造した。 【0021】ついで、これらのエンドミル超硬基体a〜
hのそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した
状態で、同じく図1に例示される通常のアークイオンプ
レーティング装置に装入し、上記実施例1と同一の条件
で、表6、7に示される目標組成および目標層厚をもっ
た硬質被覆層を蒸着することにより、本発明被覆超硬工
具としての本発明表面被覆超硬合金製エンドミル(以
下、本発明被覆超硬エンドミルと云う)1〜16および
従来被覆超硬工具としての従来表面被覆超硬合金製エン
ドミル(以下、従来被覆超硬エンドミルと云う)1〜8
をそれぞれ製造した。 【0022】また、この結果得られた本発明被覆超硬エ
ンドミル1〜16および従来被覆超硬エンドミル1〜8
の硬質被覆層について、その厚さ断面中央部をオージェ
分光分析装置を用いて、素地のX値およびAlN相の分
布割合を測定したところ、それぞれ表6、7に示される
素地の目標X値およびAlN相の目標割合と実質的に同
じ値を示し、また、その厚さを、走査型電子顕微鏡を用
いて断面測定したところ、いずれも同じく表6、7に示
される目標層厚と実質的に同じ平均値(5点測定の平均
値)を示した。 【0023】つぎに、上記本発明被覆超硬エンドミル1
〜16および従来被覆超硬エンドミル1〜8のうち、本
発明被覆超硬エンドミル1〜6および従来被覆超硬エン
ドミル1〜3ついては、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5
0mmのJIS・SCM440の板材、 切削速度:300m/min.、 半径方向切込み:0.3mm、 軸方向切込み:9mm、 テーブル送り:8m/分、 形態:乾式(エアーブロー)、 の条件での合金鋼の高速高送り側面切削加工試験、本発
明被覆超硬エンドミル7〜12および従来被覆超硬エン
ドミル4〜6については、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5
0mmのJIS・SKD61(HRC52)の板材、 切削速度:300m/min.、 半径方向切込み:0.6mm、 軸方向切込み:15mm、 テーブル送り:6m/分、 形態:乾式(エアーブロー)、 の条件での焼入れ鋼の高速高切込み側面切削加工試験、
本発明被覆超硬エンドミル13〜16、および従来被覆
超硬エンドミル7〜8については、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5
0mmのJIS・SKD11(HRC60)の板材、 切削速度:30m/min.、 軸方向切込み:1.2mm×10回での溝加工、 テーブル送り:0.070m/分、 形態:乾式(エアーブロー)、 の条件での焼入れ鋼の高速高切込み溝切削加工試験、を
それぞれ行い、いずれの切削加工試験でも外周刃の逃げ
面摩耗幅が使用寿命の目安とされる0.1mmに至るま
での切削長を測定した。この測定結果を表6、7にそれ
ぞれ示した。 【0024】 【表5】 【0025】 【表6】【0026】 【表7】 【0027】(実施例3)上記の実施例2で製造した直
径が8mm(超硬基体a〜c形成用)、13mm(超硬
基体d〜f形成用)、および26mm(超硬基体g、h
形成用)の3種の丸棒焼結体を用い、この3種の丸棒焼
結体から、研削加工にて、溝形成部の直径×長さがそれ
ぞれ4mm×13mm(超硬基体a’〜c’)、8mm
×22mm(超硬基体d’〜f’)、および16mm×
45mm(超硬基体g’、h’)の寸法をもったドリル
超硬基体a’〜h’をそれぞれ製造した。 【0028】ついで、これらのドリル超硬基体a’〜
h’のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥し
た状態で、同じく図1に例示される通常のアークイオン
プレーティング装置に装入し、上記実施例1と同一の条
件で、表8、9に示される目標組成および目標層厚をも
った硬質被覆層を蒸着することにより、本発明被覆超硬
工具としての本発明表面被覆超硬合金製ドリル(以下、
本発明被覆超硬ドリルと云う)1〜16、および従来被
覆超硬工具としての従来表面被覆超硬合金製ドリル(以
下、従来被覆超硬ドリルと云う)1〜8をそれぞれ製造
した。 【0029】さらに、この結果得られた本発明被覆超硬
ドリル1〜16および従来被覆超硬ドリル1〜8の硬質
被覆層についても、その厚さ断面中央部をオージェ分光
分析装置を用いて、素地のX値およびAlN相の分布割
合を測定したところ、それぞれ表8、9に示される素地
の目標X値およびAlN相の目標割合と実質的に同じ値
を示し、また、その厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて
断面測定したところ、いずれも同じく表8、9に示され
る目標割合および目標層厚と実質的に同じ平均値(5点
測定の平均値)を示した。 【0030】つぎに、上記本発明被覆超硬ドリル1〜1
6および従来被覆超硬ドリル1〜8のうち、本発明被覆
超硬ドリル1〜6および従来被覆超硬ドリル1〜3につ
いては、 被削材:平面寸法:100mm×250厚さ:8mmの
JIS・S55Cの板材、 切削速度:200m/min.、 送り:0.16mm/rev、 の条件での炭素鋼の湿式高速高送り穴あけ切削加工試験
(水溶性切削油使用)、本発明被覆超硬ドリル7〜12
よび従来被覆超硬ドリル4〜6については、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:1
6mmのJIS・SCM440の板材、 切削速度:150m/min.、 送り:0.20mm/rev、 の条件での合金鋼の湿式高速高送り穴あけ切削加工試験
(水溶性切削油使用)、本発明被覆超硬ドリル13〜1
6および従来被覆超硬ドリル7、8については、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:3
2mmのJIS・SS400の板材、 切削速度:150m/min.、 送り:0.30mm/rev、 の条件での構造用鋼の湿式高速高送り穴あけ切削加工試
験(水溶性切削油使用)、をそれぞれ行い、いずれの湿
式高速高送り穴あけ切削加工試験でも先端切刃面の逃げ
面摩耗幅が0.3mmに至るまでの穴あけ加工数を測定
した。この測定結果を表8、9にそれぞれ示した。 【0031】 【表8】 【0032】 【表9】【0033】 【発明の効果】表3〜9に示される結果から、(Ti,
Al)Nの素地にAlN相が分散分布した組織を有する
硬質被覆層を形成してなる本発明被覆超硬工具は、いず
れも鋼の切削加工を高い発熱を伴う高速重切削条件で行
っても、切刃部にチッピングの発生なく、すぐれた耐摩
耗性を示すのに対して、硬質被覆層が(Ti,Al)N
だけで構成された従来被覆超硬工具においては、高速重
切削加工では切刃部にチッピングの発生は避けられず、
この結果比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかで
ある。上述のように、この発明の被覆超硬工具は、各種
の鋼や鋳鉄などの通常の条件での切削加工は勿論のこ
と、特に高送りや高切込みなどの重切削条件で、かつ高
速で切削加工を行なってもすぐれた切削性能を長期に亘
って発揮するものであるから、切削加工装置の高性能
化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低
コスト化に十分満足に対応できるものである。
である。
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 炭化タングステン基超硬合金基体または
炭窒化チタン系サーメット基体の表面に、組成式:(T
i1-XAlX)N(ただし、原子比で、Xは0.45〜
0.75を示す)を有するTiとAlの複合窒化物から
なる素地に、窒化アルミニウム相が、オージェ分光分析
装置による面分析で5〜40面積%の割合で分散分布し
た組織を有する硬質被覆層を0.8〜15μmの平均層
厚で物理蒸着してなる高速重切削加工ですぐれた耐チッ
ピング性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具。
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