JP2003127003A - 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具 - Google Patents
高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具Info
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Abstract
性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具を提供する。 【解決手段】 表面被覆超硬合金製切削工具が、炭化タ
ングステン基超硬合金基体または炭窒化チタン系サーメ
ット基体の表面に、(a)0.05〜0.5μmの平均
層厚を有し、組成式:(Ti1-XAlX)N(ただし、原
子比で、Xは0.05〜0.25を示す)を満足し、さ
らにCu−Kα線を用いたX線回折装置による切刃のす
くい面および逃げ面の測定で、(200)面に最高ピー
クが現われ、かつ前記最高ピークの半価幅が2θで0.
4度以下であるX線回折パターンを示すTi基複合窒化
物層からなる結晶配向履歴層を介して、(b)2〜10
μmの平均層厚を有し、組成式:(Ti1-YAlY)N
(ただし、原子比で、Yは0.4〜0.7を示す)を満
足し、(a)と同一結果を示すTiとAlの複合窒化物
層からなる硬質被覆層を物理蒸着してなる。
Description
ぐれた高温特性を有し、したがって各種の鋼や鋳鉄など
の高熱発生を伴う高速切削加工で、すぐれた耐摩耗性を
発揮する表面被覆超硬合金製切削工具(以下、被覆超硬
工具という)に関するものである。 【0002】 【従来の技術】一般に、切削工具には、各種の鋼や鋳鉄
などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部
に着脱自在に取り付けて用いられるスローアウエイチッ
プ、前記被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリ
ルやミニチュアドリル、さらに前記被削材の面削加工や
溝加工、肩加工などに用いられるソリッドタイプのエン
ドミルなどがあり、また前記スローアウエイチップを着
脱自在に取り付けて前記ソリッドタイプのエンドミルと
同様に切削加工を行うスローアウエイエンドミル工具な
どが知られている。 【0003】また、切削工具として、炭化タングステン
(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン
(以下、TiCNで示す)基サーメットからなる基体
(以下、これらを総称して超硬基体と云う)の表面に、
組成式:(Al1-YTiY)N(ただし、原子比で、Yは
0.4〜0.7を示す)を満足するTiとAlの複合窒
化物[以下、(Ti,Al)Nで示す]層からなる硬質
被覆層を2〜10μmの平均層厚で物理蒸着してなる被
覆超硬工具が知られており、これが各種の鋼や鋳鉄など
の連続切削や断続切削加工に用いられることも良く知ら
れるところである。 【0004】さらに、上記の被覆超硬工具が、例えば図
3に概略説明図で示される物理蒸着装置の1種であるア
ークイオンプレーティング装置に上記の超硬基体を装入
し、ヒータで装置内を、例えば550℃の温度に加熱し
た状態で、アノード電極と所定組成を有するTi−Al
合金がセットされたカソード電極(蒸発源)との間に、
例えば電圧:30V、電流:150Aの条件でアーク放
電を発生させ、同時に装置内に反応ガスとして窒素ガス
を導入して、4Paの反応雰囲気とし、一方上記超硬基
体には、例えば−40Vのバイアス電圧を印加した条件
で、前記超硬基体の表面に、上記(Ti,Al)N層か
らなる硬質被覆層を蒸着することにより製造されること
も知られている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】近年の切削加工装置の
高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化
および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これ
に伴い、切削加工は高速化の傾向にあるが、上記の従来
被覆超硬工具においては、これを通常の切削加工条件で
用いた場合には問題はないが、これを高い発熱を伴う高
速切削条件用いた場合には、硬質被覆層の摩耗進行が促
進され、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状であ
る。 【0006】 【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等は、
上述のような観点から、高速切削加工ですぐれた耐摩耗
性を発揮する被覆超硬工具を開発すべく、特に上記の従
来被覆超硬工具を構成する硬質被覆層に着目し、研究を
行った結果、(a)上記の従来被覆超硬工具を構成する
(Ti,Al)N層からなる硬質被覆層は、Cu−Kα
線を用いたX線回折装置による測定で、、図2に例示さ
れる通り(200)面に最高ピークが現われ、かつ前記
最高ピークの半価幅が2θで0.7度以上であるX線回
折パターンを示すが、この硬質被覆層を超硬基体表面に
物理蒸着形成するに先だって、予め組成式:(Ti1-X
AlX)N(ただし、原子比で、Xは0.05〜0.2
5を示す)を満足するTi基複合窒化物[以下、(Ti
−al)Nで示す]層をきわめて薄い0.05〜0.5
μmの平均層厚で蒸着形成しておくと、前記(Ti−a
l)N層は、(200)面に高配向し、前記(200)
面のピークの半価幅が2θで0.4度以下のX線回折パ
ターンを示すので、これの上に物理蒸着された、本来X
線回折パターンの(200)面におけるピークの半価幅
が0.7度以上であるX線回折パターンを示す前記(T
i,Al)N層も前記(Ti−al)N層による結晶配
向履歴効果によって前記(200)面のピークの半価幅
が図1に例示される通り2θで0.4度以下の向配向X
線回折パターンを示すようになること。 【0007】(b)X線回折パターンの(200)面に
おけるピークの半価幅が2θで0.4度以下を示す高配
向の(Ti,Al)N層は、同ピークの半価幅が0.7
度以上の(Ti,Al)N層に比して高温特性(高温耐
酸化性および高温硬さ)にすぐれているので、前記高配
向の(Ti,Al)N層からなる硬質被覆層を超硬基体
表面に物理蒸着してなる被覆超硬工具は、高い発熱を伴
う鋼や軟鋼などの高速切削加工ですぐれた耐摩耗性を発
揮するようになること。以上(a)および(b)に示さ
れる研究結果を得たのである。 【0008】この発明は、上記の研究結果に基づいてな
されたものであって、超硬基体の表面に、(a)0.0
5〜0.5μmの平均層厚を有し、かつ、 組成式:(Ti1-XAlX)N(ただし、原子比で、Xは
0.05〜0.25を示す)を満足満足し、さらに、C
u−Kα線を用いたX線回折装置による測定で、(20
0)面に最高ピークが現われ、かつ前記最高ピークの半
価幅が2θで0.4度以下であるX線回折パターンを示
す(Ti−al)N層からなる結晶配向履歴層を介し
て、(b)2〜10μmの平均層厚を有し、 組成式:(Ti1-YAlY)N(ただし、原子比で、Yは
0.4〜0.7を示す)を満足し、同じくCu−Kα線
を用いたX線回折装置による測定で、(200)面に最
高ピークが現われ、かつ前記最高ピークの半価幅が2θ
で0.4度以下であるX線回折パターンを示す(Ti,
Al)N層からなる硬質被覆層を物理蒸着してなる、高
速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する
被覆超硬工具に特徴を有するものである。 【0009】つぎに、この発明の被覆超硬工具におい
て、これを構成する結晶配向履歴層および硬質被覆層の
組成および平均層厚を上記の通りに限定した理由を説明
する。 (a)結晶配向履歴層[(Ti−al)N層] (Ti−al)N層におけるAl成分には、層の(20
0)面を切刃のすくい面および逃げ面に対して垂直方向
に配向する作用があるが、Alの割合がTiとの合量に
占める割合(原子比)で0.05未満では、(200)
面への配向効果が不十分で、(200)面に現われる最
高ピークの半価幅を2θで0.4度以下に高配向させる
ことができず、一方その割合が同じく0.25を越えて
も、結晶配向が乱れるようになって、(200)面を高
配向させることが困難になることから、その割合を0.
05〜0.25と定めた。また、その平均層厚が0.0
5μm未満では、(Ti−al)N層の本来有する(2
00)面の高配向性を硬質被覆層にに転化する結晶配向
履歴効果を十分に発揮させることができず、一方この結
晶配向履歴効果は0.5μmまでの平均層厚で十分であ
ることから、その平均層厚を0.05〜0.5μmと定
めた。 【0010】(b)硬質被覆層[(Ti,Al)N層] (Ti,Al)N層のAl成分は、高靭性を有するTi
N層に高温硬さおよび耐熱性を付与し、もって耐摩耗性
を向上させる目的で含有するが、その割合がTiとの合
量に占める割合(原子比)で0.4未満では所望の耐摩
耗性向上効果が得られず、一方その割合が同じく0.7
を越えると、切刃にチッピング(微小欠け)などが発生
し易くなることから、その割合を0.4〜0.7と定め
た。また、その平均層厚が2μm未満では、所望の耐摩
耗性を確保することができず、一方その平均層厚が10
μmを越えると、切刃にチッピングが発生し易くなるこ
とから、その平均層厚を2〜10μmと定めた。さら
に、X線回折パターンの(200)面に現われる最高ピ
ークの半価幅:2θで0.4度以下は、試験結果に基づ
いて経験的に定めたものであり、したがって前記半価幅
が2θで0.4度以下の場合に、特に高速切削加工です
ぐれた耐摩耗性を発揮し、前記半価幅が同0.4度を越
えて大きくなる、すなわち(200)面の配向性が低下
するようになると、所望の耐摩耗性を確保することがで
きなくなる、という理由によるものである。 【0011】 【発明の実施の形態】つぎに、この発明の被覆超硬工具
を実施例により具体的に説明する。 (実施例1)原料粉末として、いずれも1〜3μmの平
均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、V
C粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3 C2 粉末、T
iN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これ
ら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボー
ルミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、100MP
a の圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6P
aの真空中、温度:1400℃に1時間保持の条件で焼
結し、焼結後、切刃部分にR:0.03のホーニング加
工を施してISO規格・CNMG120408のチップ
形状をもったWC基超硬合金製の超硬基体A1〜A10
を形成した。 【0012】また、原料粉末として、いずれも0.5〜
2μmの平均粒径を有するTiCN(重量比でTiC/
TiN=50/50)粉末、Mo2 C粉末、ZrC粉
末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、お
よびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示さ
れる配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合
し、乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス
成形し、この圧粉体を2kPaの窒素雰囲気中、温度:
1500℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃
部分にR:0.03のホーニング加工を施してISO規
格・CNMG120408のチップ形状をもったTiC
N系サーメット製の超硬基体B1〜B6を形成した。 【0013】ついで、これら超硬基体A1〜A10およ
びB1〜B6を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した
状態で、それぞれ図3に例示される通常のアークイオン
プレーティング装置に装入し、一方カソード電極(蒸発
源)として種々の成分組成をもったTi−al合金およ
びTi−Al合金を装着し、装置内を排気して0.5P
aの真空に保持しながら、ヒーターで装置内を550℃
に加熱した後、Arガスを装置内に導入して10Paの
Ar雰囲気とし、この状態で超硬基体に−800vのバ
イアス電圧を印加して超硬基体表面をArガスボンバー
ト洗浄し、ついで装置内に反応ガスとして窒素ガスを導
入して4Paの反応雰囲気とすると共に、前記超硬基体
に印加するバイアス電圧を−40vに下げて、前記カソ
ード電極とアノード電極との間にアーク放電を発生さ
せ、もって前記超硬基体A1〜A10およびB1〜B6
のそれぞれの表面に、表3,4に示される目標組成およ
び目標層厚の結晶配向履歴層[(Ti−al)N層]お
よび硬質被覆層[(Ti,Al)N層]を蒸着すること
により、図4(a)に概略斜視図で、同(b)に概略縦
断面図で示される形状を有する本発明被覆超硬工具とし
ての本発明表面被覆超硬合金製スローアウエイチップ
(以下、本発明被覆超硬チップと云う)1〜20をそれ
ぞれ製造した。また、比較の目的で、表5,6に示され
る通り上記結晶配向履歴層[(Ti−al)N層]の形
成を行なわない以外は同一の条件で従来被覆超硬工具と
しての従来表面被覆超硬合金製スローアウエイチップ
(以下、従来被覆超硬チップと云う)1〜20をそれぞ
れ製造した。 【0014】つぎに、上記本発明被覆超硬チップ1〜2
0および従来被覆超硬チップ1〜20について、これを
工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状
態で、 被削材:JIS・SNCM439の丸棒、 切削速度:250m/min.、 切り込み:1mm、 送り:0.2mm/rev.、 切削時間:10分、 の条件での合金鋼の乾式高速連続旋削加工試験、 被削材:JIS・S45Cの長さ方向等間隔4本縦溝入
り丸棒、 切削速度:250m/min.、 切り込み:1.5mm、 送り:0.2mm/rev.、 切削時間:15分、 の条件での炭素鋼の乾式高速断続旋削加工試験、さら
に、 被削材:JIS・FC300の長さ方向等間隔4本縦溝
入り丸棒、 切削速度:350m/min.、 切り込み:1mm、 送り:0.25mm/rev.、 切削時間:15分、 の条件での鋳鉄の乾式高速断続旋削加工試験を行い、い
ずれの旋削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定し
た。この測定結果を表7、8に示した。 【0015】 【表1】 【0016】 【表2】【0017】 【表3】 【0018】 【表4】 【0019】 【表5】【0020】 【表6】 【0021】 【表7】【0022】 【表8】 【0023】(実施例2)原料粉末として、平均粒径:
5.5μmを有する中粗粒WC粉末、同0.8μmの微
粒WC粉末、同1.3μmのTaC粉末、同1.2μm
のNbC粉末、同1.2μmのZrC粉末、同2.3μ
mのCr3C2粉末、同1.5μmのVC粉末、同1.0
μmの(Ti,W)C粉末、および同1.8μmのCo
粉末を用意し、これら原料粉末をそれぞれ表9に示され
る配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン
中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、10
0MPaの圧力で所定形状の各種の圧粉体にプレス成形
し、これらの圧粉体を、6Paの真空雰囲気中、7℃/
分の昇温速度で1370〜1470℃の範囲内の所定の
温度に昇温し、この温度に1時間保持後、炉冷の条件で
焼結して、直径が8mm、13mm、および26mmの
3種の超硬基体形成用丸棒焼結体を形成し、さらに前記
の3種の丸棒焼結体から、研削加工にて、表9に示され
る組合せで、切刃部の直径×長さがそれぞれ6mm×1
3mm、10mm×22mm、および20mm×45m
mの寸法をもった超硬基体(エンドミル)a〜hをそれ
ぞれ製造した。 【0024】ついで、これらの超硬基体(エンドミル)
a〜hの表面に、ホーニングを施し、アセトン中で超音
波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図3に例示される通
常のアークイオンプレーティング装置に装入し、上記実
施例1と同一の条件で、表10に示される目標組成およ
び目標層厚をもった結晶配向履歴層[(Ti−al)N
層]および硬質被覆層[(Ti,Al)N層]を蒸着す
ることにより、図5(a)に概略正面図で、同(b)に
切刃部の概略横断面図で示される形状を有する本発明被
覆超硬工具としての本発明表面被覆超硬合金製エンドミ
ル(以下、本発明被覆超硬エンドミルと云う)1〜8を
それぞれ製造した。また、比較の目的で、表11に示さ
れる通り上記結晶配向履歴層[(Ti−al)N層]の
形成を行なわない以外は同一の条件で従来被覆超硬工具
としての従来表面被覆超硬合金製エンドミル(以下、従
来被覆超硬エンドミルと云う)1〜8をそれぞれ製造し
た。 【0025】つぎに、上記本発明被覆超硬エンドミル1
〜8および従来被覆超硬エンドミル1〜8のうち、本発
明被覆超硬エンドミル1〜3および従来被覆超硬エンド
ミル1〜3については、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5
0mmのJIS・SKD61の板材、 切削速度:80m/min.、 溝深さ(切り込み):3mm、 テーブル送り:300mm/分、 の条件での工具鋼の湿式高速溝切削加工試験(水溶性切
削油使用)、本発明被覆超硬エンドミル4〜6および従
来被覆超硬エンドミル4〜6については、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5
0mmのJIS・SCM440の板材、 切削速度:100m/min.、 溝深さ(切り込み):5mm、 テーブル送り:500mm/分、 の条件での合金鋼の湿式高速溝切削加工試験、本発明被
覆超硬エンドミル7,8および従来被覆超硬エンドミル
7,8については、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5
0mmのJIS・SUS304の板材、 切削速度:130m/min.、 溝深さ(切り込み):4mm、 テーブル送り:500mm/分、 の条件でのステンレス鋼の湿式高速溝切削加工試験(い
ずれの試験も水溶性切削油使用)、をそれぞれ行い、い
ずれの溝切削加工試験でも切刃部先端面の直径が使用寿
命の目安とされる0.2mm減少するまでの切削溝長を
測定した。この測定結果を表10、11にそれぞれ示し
た。 【0026】 【表9】 【0027】 【表10】 【0028】 【表11】【0029】(実施例3)上記の実施例2で製造した直
径が8mm(超硬基体a〜c形成用)、13mm(超硬
基体d〜f形成用)、および26mm(超硬基体g、h
形成用)の3種の丸棒焼結体を用い、この3種の丸棒焼
結体から、研削加工にて、溝形成部の直径×長さがそれ
ぞれ4mm×13mm(超硬基体a´〜c´)、8mm
×22mm(超硬基体d´〜f´)、および16mm×
45mm(超硬基体g´、h´)の寸法をもった超硬基
体(ドリル)a´〜h´をそれぞれ製造した。 【0030】ついで、これらの超硬基体(ドリル)a´
〜h´の表面に、ホーニングを施し、アセトン中で超音
波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図3に例示される通
常のアークイオンプレーティング装置に装入し、上記実
施例1と同一の条件で、表12に示される目標組成およ
び目標層厚をもった結晶配向履歴層[(Ti−al)N
層]および硬質被覆層[(Ti,Al)N層]を蒸着す
ることにより、図6(a)に概略正面図で、同(b)に
溝形成部の概略横断面図で示される形状を有する本発明
被覆超硬工具としての本発明表面被覆超硬合金製ドリル
(以下、従来被覆超硬ドリルと云う)1〜8をそれぞれ
製造した。また、比較の目的で、表13に示される通り
上記結晶配向履歴層[(Ti−al)N層]の形成を行
なわない以外は同一の条件で従来被覆超硬工具としての
従来表面被覆超硬合金製ドリル(以下、従来被覆超硬ド
リルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。 【0031】つぎに、上記本発明被覆超硬ドリル1〜8
および従来被覆超硬ドリル1〜8のうち、本発明被覆超
硬ドリル1〜3および従来被覆超硬ドリル1〜3につい
ては、 被削材:平面寸法:100mm×250厚さ:50mm
のJIS・SNCM439の板材、 切削速度:50m/min.、 送り:0.20mm/rev、 の条件での合金鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験、本発
明被覆超硬ドリル4〜6および従来被覆超硬ドリル4〜
6については、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5
0mmのJIS・FC300の板材、 切削速度:70m/min.、 送り:0.35mm/rev、 の条件での鋳鉄の湿式高速穴あけ切削加工試験、本発明
被覆超硬ドリル7,8および従来被覆超硬ドリル7,8
については、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5
0mmのJIS・SUS304の板材、 切削速度:30m/min.、 送り:0.25mm/rev、 の条件でのステンレス鋼の湿式高速穴あけ切削加工試
験、をそれぞれ行い、いずれの湿式高速穴あけ切削加工
試験(水溶性切削油使用)でも先端切刃面の逃げ面摩耗
幅が0.3mmに至るまでの穴あけ加工数を測定した。
この測定結果を表12、13にそれぞれ示した。 【0032】 【表12】【0033】 【表13】 【0034】なお、この結果得られた本発明被覆超硬工
具としての本発明被覆超硬チップ1〜20、本発明被覆
超硬エンドミル1〜8、および本発明被覆超硬ドリル1
〜8の結晶配向履歴層[(Ti−al)N層]および硬
質被覆層[(Ti,Al)N層]、並びに従来被覆超硬
工具としての従来被覆超硬チップ1〜20、従来被覆超
硬エンドミル1〜8、および従来被覆超硬ドリル1〜8
の硬質被覆層[(Ti,Al)N層]の組成について、
その厚さ方向中央部をオージェ分光分析装置を用いて測
定したところ、それぞれ目標組成と実質的に同じ組成を
示した。また、これらの本発明被覆超硬工具、並びに従
来被覆超硬工具の上記構成層の厚さを、走査型電子顕微
鏡を用いて断面測定したところ、いずれも目標層厚と実
質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。さ
らに、これらの本発明被覆超硬工具、並びに従来被覆超
硬工具の上記構成層をCu−Kα線を用いたX線回折装
置にて切刃のすくい面および/または逃げ面を観察し、
この結果得られたX線回折パターンから(200)面に
現われたピークの半価幅を測定し(この場合正確な測定
が困難な場合には、上記の実施例時にアークイオンプレ
ーティング装置に同時に装入した測定ピースのX線回折
パターンを用いて測定した)、この測定結果を表3〜6
および表10〜13にそれぞれ示した。 【0035】 【発明の効果】表3〜13に示される結果から、結晶配
向履歴層の介在によって硬質被覆層の(200)面が高
配向し、これによってすぐれた高温特性(高温耐酸化性
および高温硬さ)を具備すようになる本発明被覆超硬工
具は、いずれも鋼や鋳鉄の切削加工を高い発熱を伴う高
速で行っても、すぐれた耐摩耗性を発揮するのに対し
て、硬質被覆層の(200)面の配向性の低い従来被覆
超硬工具においては、高温を伴う高速切削加工では切刃
の摩耗進行が速く、比較的短時間で使用寿命に至ること
が明らかである。上述のように、この発明の被覆超硬工
具は、特に各種の鋼や鋳鉄などの高速切削加工でもすぐ
れた耐摩耗性を発揮し、長期に亘ってすぐれた切削性能
を示すものであるから、切削加工装置の高性能化、並び
に切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化
に十分満足に対応できるものである。
X線回折パターンである。 【図2】従来被覆超硬チップ の硬質被覆層が示すX
線回折パターンである。 【図3】アークイオンプレーティング装置の概略説明図
である。 【図4】(a)は被覆超硬チップの概略斜視図、(b)
は被覆超硬チップの概略縦断面図である。 【図5】(a)は被覆超硬エンドミル概略正面図、
(b)は同切刃部の概略横断面図である。 【図6】(a)は被覆超硬ドリルの概略正面図、(b)
は同溝形成部の概略横断面図である。
【手続補正書】 【提出日】平成13年10月23日(2001.10.
23) 【手続補正1】 【補正対象書類名】明細書 【補正対象項目名】図面の簡単な説明 【補正方法】変更 【補正内容】 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明被覆超硬チップ8の硬質被覆層が示すX
線回折パターンである。 【図2】従来被覆超硬チップ8の硬質被覆層が示すX線
回折パターンである。 【図3】アークイオンプレーティング装置の概略説明図
である。 【図4】(a)は被覆超硬チップの概略斜視図、(b)
は被覆超硬チップの概略縦断面図である。 【図5】(a)は被覆超硬エンドミル概略正面図、
(b)は同切刃部の概略横断面図である。 【図6】(a)は被覆超硬ドリルの概略正面図、(b)
は同溝形成部の概略横断面図である。
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 【請求項1】 炭化タングステン基超硬合金基体または
炭窒化チタン系サーメット基体の表面に、 (a)0.05〜0.5μmの平均層厚を有し、 組成式:(Ti1-XAlX)N(ただし、原子比で、Xは
0.05〜0.25を示す)を満足し、 さらに、Cu−Kα線を用いたX線回折装置による測定
で、(200)面に最高ピークが現われ、かつ前記最高
ピークの半価幅が2θで0.4度以下であるX線回折パ
ターンを示すTi基複合窒化物層からなる結晶配向履歴
層を介して、 (b)2〜10μmの平均層厚を有し、 組成式:(Ti1-YAlY)N(ただし、原子比で、Yは
0.4〜0.7を示す)を満足し、 同じくCu−Kα線を用いたX線回折装置による測定
で、(200)面に最高ピークが現われ、かつ前記最高
ピークの半価幅が2θで0.4度以下であるX線回折パ
ターンを示すTiとAlの複合窒化物層からなる硬質被
覆層を物理蒸着してなる、高速切削加工で硬質被覆層が
すぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工
具。
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