JP2003145317A - 耐摩耗被覆層がすぐれた密着性および耐チッピング性を有する表面被覆超硬合金製切削工具 - Google Patents
耐摩耗被覆層がすぐれた密着性および耐チッピング性を有する表面被覆超硬合金製切削工具Info
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Abstract
ピング性を有する表面被覆超硬合金製切削工具。 【解決手段】 アークイオンプレーティング表面処理
で、表面から1〜50nmの範囲内に非晶質化層を形成
した炭化WC基超硬合金基体の表面に、(a)窒化チタ
ン層からなり、0.1〜5μmの平均層厚を有する下地
靭性層、(b)組成式:(Ti 1-XAlX)Nおよび同
(Ti1-XAlX)C1-YNY、(但し、原子比で、Xは
0.15〜0.65、Yは0.5〜0.99を示す)、
を満足する複合窒化物層及び複合炭窒化物層の単層、ま
たは複層からなり、かつ0.5〜15μmの平均層厚を
有する表面硬質層、(c)酸化Al層、及び酸化Alの
素地に酸化ジルコニウム相が分散分布してなる酸化Al
−酸化ジルコニウム混合層のうちの単層、または複層か
らなり、0.5〜10μmの平均層厚を有する上側硬質
層、(a)〜(c)で構成された耐摩耗被覆層を物理蒸
着してなる。
Description
が、炭化タングステン基超硬合金基体(以下、超硬基体
という)表面に対する密着性にすぐれると共に、耐チッ
ピング性にもすぐれ、したがって特に各種の鋼や鋳鉄な
どの断続切削を、高い機械的および熱的衝撃の加わる高
切込みおよび高送りなどの重切削条件で行った場合に
も、前記耐摩耗被覆層に剥離やチッピング(微小欠け)
の発生なく、すぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮する
表面被覆超硬合金製切削工具(以下、被覆超硬工具とい
う)に関するものである。 【0002】 【従来の技術】一般に、切削工具には、各種の鋼や鋳鉄
などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部
に着脱自在に取り付けて用いられるスローアウエイチッ
プ、前記被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリ
ルやミニチュアドリル、さらに前記被削材の面削加工や
溝加工、肩加工などに用いられるソリッドタイプのエン
ドミルなどがあり、また前記スローアウエイチップを着
脱自在に取り付けて前記ソリッドタイプのエンドミルと
同様に切削加工を行うスローアウエイエンドミル工具な
どが知られている。 【0003】また、一般に、上記の切削工具として、上
記超硬基体の表面に、(a)耐摩耗被覆層の下側硬質層
として、例えば図1に概略説明図で示される物理蒸着装
置の1種であるアークイオンプレーティング装置を用
い、ヒータで装置内を、例えば雰囲気を0.5Paの真
空として、500℃の温度に加熱した状態で、アノード
電極と所定組成を有するTi−Al合金がセットされた
カソード電極(蒸発源)との間に、例えば電圧:35
V、電流:90Aの条件でアーク放電を発生させ、同時
に装置内に反応ガスとして窒素ガス、または窒素ガスと
メタンガスを導入し、一方超硬基体には、例えば−20
0Vのバイアス電圧を印加した条件で、例えば特開昭6
2−56565号公報に記載されるように、組成式:
(Ti1-XAlX)Nおよび同(Ti1-XAlX)C1-YNY
(ただし、原子比で、Xは0.15〜0.65、Yは
0.5〜0.99を示す)を満足するTiとAlの複合
窒化物[以下、(Ti,Al)Nで示す]層および複合
炭窒化物[以下、(Ti,Al)CNで示す]層のうち
のいずれかの単層、あるいは両方の複層を、0.5〜1
5μmの平均層厚で物理蒸着し、(b)さらに、同上側
硬質層として、通常の化学蒸着装置を用い、酸化アルミ
ニウム(以下、Al2O3で示す)層、および例えば特開
昭57−39168号公報や特開昭61−201778
号公報に記載されるAl2O3の素地に酸化ジルコニウム
(以下、ZrO2で示す)相が分散分布してなるAl2O
3−ZrO2混合層(以下、Al2O3−ZrO2混合層と
云う)のいずれか、または両方を、0.5〜10μmの
平均層厚で化学蒸着してなる、被覆超硬工具が知られて
おり、これが各種の鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削
に用いられることもよく知られるところである。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】近年の切削加工装置の
高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化
および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これ
に伴い、切削工具には切削条件にできるだけ影響を受け
ない汎用性が要求される傾向にあるが、上記の従来被覆
超硬工具においては、これを鋼や鋳鉄などの通常の条件
での連続切削や断続切削に用いた場合には問題はない
が、これを切刃が断続切削形態をとるエンドミルやドリ
ルによる切削加工、さらにスローアウエイチップにあっ
ては断続旋削加工など(以下、これらを総称して「断続
切削」という)を高切込みおよび高送りなどの重切削条
件で行なう切削加工に用いた場合には、切削時に発生す
る高い機械的および熱的衝撃によって、前記耐摩耗被覆
層が超硬基体表面から剥離し易くなり、また前記耐摩耗
被覆層を構成する下側硬質層および上側硬質層とも、き
わめて硬質であるために高い機械的および熱的衝撃を伴
う重切削条件での断続切削では、前記耐摩耗被覆層にチ
ッピングも発生し易く、この結果比較的短時間で使用寿
命に至るのが現状である。 【0005】 【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等は、
上述のような観点から、上記の従来被覆超硬工具を構成
する耐摩耗被覆層の超硬基体表面に対する一段の密着性
向上および靭性向上を図るべく研究を行った結果、 (a)上記の超硬基体をアークイオンプレーティング装
置に装着し、まず、カソード電極を用いずに、 装置内雰囲気温度(超硬基体温度):300〜500
℃、 雰囲気ガス:Ar、 雰囲気圧力:1〜10Pa、 アーク放電電流:(アーク電源−OFF)、 超硬基体印加バイアス電圧:−800〜−1000V、 処理時間:2〜10分、 の条件で上記超硬基体の表面を前処理した後で、さらに
超硬基体表面に、カソード電極として、例えば金属Ti
を用い、 装置内雰囲気温度:450〜550℃、 雰囲気ガス:Ar、 雰囲気圧力:1〜10Pa、 アーク放電電流:100〜200A、 超硬基体印加バイアス電圧:−900〜1200V、 の条件でアークイオンプレーティング表面処理を施す
と、上記超硬基体の表面上には、蒸着層としての金属T
i層の形成はなく、前記超硬基体自体の表面部に、透過
型電子顕微鏡を用いて組織観察した結果に基く判別で、
非晶質化層の形成が確認されること。なお、アークイオ
ンプレーティング装置を用いての金属Ti層の蒸着形成
は、 装置内雰囲気温度:300〜500℃、 雰囲気ガス:(使用せず)、 雰囲気圧力:0.1Pa以下の真空、 カソード電極:金属Ti、 アーク放電電流:50〜100A、 超硬基体印加バイアス電圧:−30〜−100V、 の条件で一般に行われていること。 【0006】(b)上記の表面部に非晶質化層が形成さ
れた超硬基体表面に、前記非晶質化層を表面から1〜5
0nmの範囲内の平均深さに亘って形成した状態で、上
記の従来被覆超硬工具の耐摩耗硬質層の下側硬質層を構
成する(Ti,Al)N層および(Ti,Al)CN層
を、同じくアークイオンプレーティング装置を用いて、
きわめて靭性に富んだ窒化チタン(以下、TiNで示
す)層を介して形成し、さらに同じく上側硬質層のAl
2O3層および/またはAl2O3−ZrO2混合層を、例
えば化学蒸着法にて形成すると、前記非晶質化層は高い
活性を有し、反応性の高いものであることから、前記T
iN層の蒸着形成時に、これと反応して前記超硬基体表
面と前記TiN層との間にはきわめて強固な密着性が確
保され、この強固な密着性は前記TiN層と前記下側硬
質層、および前記下側硬質層と前記上側硬質層の間にも
確保されること。 【0007】(c)したがって、この結果形成された被
覆超硬工具においては、これを高い機械的および熱的衝
撃を伴なう、重切削条件での断続切削加工に用いた場合
にも、前記耐摩耗被覆層には剥離の発生がなくなり、か
つ前記耐摩耗被覆層自体の靭性が前記TiN層の介在に
よって著しく向上し、耐摩耗被覆層のチッピング発生も
抑制できることから、前記耐摩耗被覆層のもつすぐれた
耐摩耗性が十分に発揮されるようになること。以上
(a)〜(c)に示される研究結果を得たのである。 【0008】この発明は、上記の研究結果に基づいてな
されたものであって、アークイオンプレーティング表面
処理で、表面から1〜50nmの範囲内の平均深さに亘
って非晶質化層を形成してなる超硬基体の表面に、
(a)TiN層からなり、かつ0.1〜5μmの平均層
厚を有する下地靭性層、 (b)組成式:(Ti1-XAlX)Nおよび同(Ti1-X
AlX)C1-YNY、 (但し、原子比で、Xは0.15〜0.65、Yは0.
5〜0.99を示す)、を満足する(Ti,Al)N層
および(Ti,Al)CN層のうちのいずれかの単層、
または両方の複層からなり、かつ0.5〜15μmの平
均層厚を有する下側硬質層、(c)Al2O3層、および
Al2O3の素地にZrO2相が分散分布してなるAl2O
3−ZrO2混合層のうちのいずれかの単層、または両方
の複層からなり、かつ0.5〜10μmの平均層厚を有
する上側硬質層、以上(a)〜(c)で構成された耐摩
耗被覆層を物理蒸着および/または化学蒸着してなる、
耐摩耗被覆層がすぐれた密着性および耐チッピング性を
有する被覆超硬工具に特徴を有するものである。 【0009】つぎに、この発明の被覆超硬工具におい
て、超硬基体の表面部に形成された非晶質化層、並びに
耐摩耗被覆層について、上記の通り数値限定した理由を
説明する。 (1)超硬基体の表面部の非晶質化層 非晶質化層には、上記の通り耐摩耗被覆層(下地靭性
層)との間にすぐれた密着性を形成する作用があるが、
その深さが1nm未満では所望のすぐれた密着性を下地
靭性層であるTiN層との間に確保することができず、
一方超硬基体表面に対するTiN層の密着性向上効果は
表面からの平均深さが50nmで十分であることから、
その平均深さを1〜50nmと定めた。 【0010】(2)下地靭性層 下地靭性層には、上記の通り耐摩耗被覆層の靭性を向上
させ、高い機械的および熱的衝撃を伴う重切削条件での
断続切削でも、前記耐摩耗被覆層にチッピングが発生す
るのを著しく抑制する作用があるが、その平均層厚が
0.1μm未満では耐摩耗被覆層に所望の靭性を確保す
ることができず、一方その平均層厚が5μmを越える
と、重切削条件での断続切削では前記耐摩耗被覆層に偏
摩耗の原因となる塑性変形が発生し易くなることから、
その平均層厚を0.1〜5μmと定めた。 【0011】(3)下側硬質層 下側硬質層を構成する(Ti,Al)N層および(T
i,Al)CN層には、耐摩耗被覆層に硬さと靭性を付
与せしめ、もってチッピングの発生なく、すぐれた耐摩
耗性を上側硬質層との共存において発揮する作用があ
る。すなわち前記下側硬質層におけるAlは高靭性を有
するTiNに対して硬さを高め、もって耐摩耗性を向上
させるために固溶するものであり、したがって組成式:
(Ti1-XAlX)Nおよび同(Ti1-XAlX)C1-YNY
のX値が0.15未満では所望の硬さ向上効果が得られ
ず、一方その値が0.65を越えると、耐摩耗被覆層に
チッピングが発生し易くなると云う理由によりX値を
0.15〜0.65(原子比)と定めたものであり、ま
た、(Ti,Al)CN層におけるC成分には、さらに
硬さを向上させる作用があるので、(Ti,Al)CN
層は上記(Ti,Al)N層に比して相対的に高い硬さ
をもつが、この場合C成分の割合が0.01未満、すな
わちY値が0.99を越えると所定の硬さ向上効果が得
られず、一方C成分の割合が0.5を越える、すなわち
Y値が0.5未満になると靭性が急激に低下するように
なることから、Y値を0.5〜0.99、望ましくは
0.55〜0.9と定めたのである。また、この場合そ
の平均層厚が0.5μm未満では所望のすぐれた耐摩耗
性を確保することができず、一方その層厚が15μmを
越えると、耐摩耗被覆層にチッピングが発生し易くなる
ことから、その平均層厚を0.5〜15μmと定めた。 【0012】(4)上側硬質層 上側硬質層を構成するAl2O3層およびAl2O3−Zr
O2混合層は、すぐれた高温硬さと耐熱性を有し、上記
の下側硬質層と共存した状態で耐摩耗被覆層の耐摩耗性
を一段と向上させる作用があるが、その平均層厚が0.
5μmでは所望のすぐれた耐摩耗性を確保することがで
きず、一方その平均層厚が10μmを越えると、耐摩耗
被覆層にチッピングが発生し易くなることから、その平
均層厚を0.5〜10μmと定めた。 【0013】 【発明の実施の形態】つぎに、この発明の被覆超硬工具
を実施例により具体的に説明する。 (実施例1)原料粉末として、いずれも1〜3μmの平
均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、V
C粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3 C2 粉末、T
iN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これ
ら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボー
ルミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、100MP
a の圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6P
aの真空中、温度:1400℃に1時間保持の条件で焼
結し、焼結後、切刃部分にR:0.05のホーニング加
工を施して、いずれもスローアウエイチップ形状をもっ
たISO規格・SNGA120412の超硬基体A−1
〜A−10をそれぞれ形成した。 【0014】ついで、これら超硬基体A−1〜A−10
を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、それ
ぞれ図1に例示される通常のアークイオンプレーティン
グ装置に装入し、前記超硬基体A−1〜A−10のそれ
ぞれの表面に、まず、 装置内雰囲気温度(超硬基体温度):400℃、 雰囲気ガス:Ar、 雰囲気圧力:3Pa、 カソード電極:(使用せず)、 アーク放電電流:(アーク電源−OFF)、 超硬基体印加バイアス電圧:−900V、 処理時間:3分、 の条件で前処理した後で、さらに、 装置内雰囲気温度:500℃、 雰囲気ガス:Ar、 雰囲気圧力:3Pa、 カソード電極:金属Ti、 アーク放電電流:150A、 超硬基体印加バイアス電圧:−1000V、 の条件でアークイオンプレーティング表面処理を施すこ
とにより、上記超硬基体A−1〜A−10の表面部に非
晶質化層を形成した。なお、前記非晶質化層の表面から
の形成深さは上記の条件でのアークイオンプレーティン
グ表面処理の処理時間を調整することにより行った。さ
らに、上記超硬基体A−1〜A−10の表面部に形成さ
れた非晶質化層を、透過型電子顕微鏡を用いて組織観察
(倍率:50万倍)し、この観察結果に基づいて判別お
よび測定したところ、それぞれ表3,5に示される表面
からの平均深さ(5点測定の平均値)を示した。 【0015】引き続いて、同じアークイオンプレーティ
ング装置にて、まず、(a)まず、下地靭性層として、 装置内雰囲気温度:500℃、 雰囲気ガス:窒素ガス、 雰囲気圧力:6Pa、 カソード電極:金属Ti、 アーク放電電流:70A、 超硬基体印加バイアス電圧:−50V、 の条件で、上記の表面部に非晶質化層が形成された超硬
基体A−1〜A−10のそれぞれの表面に、表3,5に
示される目標層厚のTiN層を蒸着形成し、(B)つい
で、下側硬質層として、 装置内雰囲気温度:500℃、 雰囲気ガス:窒素ガス、または窒素ガスとメタンガスの
所定割合の混合ガス、 雰囲気圧力:6Pa、 カソード電極:種々の成分組成をもったTi−Al合
金、 アーク放電電流:70A、 超硬基体印加バイアス電圧:−90V、 の条件で、上記のTiN層の表面に、それぞれ表3,5
に示される目標組成および目標層厚の(Ti,Al)N
層および(Ti,Al)CN層のうちのいずれかの単
層、または両方の複層を蒸着形成し、(C)さらに、上
記下側硬質層の表面に、上側硬質層として、通常の化学
蒸着装置を用い、表2に示される条件で同じく表4、6
に示される目標層厚のα型またはκ型結晶構造のAl2
O3層、またはAl2O3−ZrO2混合層を蒸着形成する
ことにより、図2(a)に概略斜視図で、同(b)に概
略縦断面図で示される形状を有する本発明被覆超硬工具
としての本発明表面被覆超硬合金製スローアウエイチッ
プ(以下、本発明被覆超硬チップ)1〜20をそれぞれ
製造した。 【0016】また、比較の目的で、表7〜10に示され
る通り、アークイオンプレーティング装置での上記超硬
基体A−1〜A−10の表面に対する上記条件での前処
理およびアークイオンプレーティング表面処理を行わ
ず、したがって、上記超硬基体A−1〜A−10の表面
部に非晶質化層の形成を行わず、さらに下地靭性層であ
るTiN層の形成も行なわない以外は、同一の条件で従
来被覆超硬工具としての従来表面被覆超硬合金製スロー
アウエイチップ(以下、従来被覆超硬チップ)1〜20
をそれぞれ製造した。 【0017】つぎに、上記本発明被覆超硬チップ1〜2
0および従来被覆超硬チップ1〜20について、これを
工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状
態で、 被削材:JIS・SNCM439の長さ方向等間隔4本
縦溝入り丸棒、 切削速度:130m/min.、 切り込み:5mm、 送り:0.19mm/rev.、 切削時間:5分、 の条件での合金鋼の乾式高切り込み断続切削試験、 被削材:JIS・SKD61の長さ方向等間隔4本縦溝
入り丸棒、 切削速度:35m/min.、 切り込み:1.6mm、 送り:0.45mm/rev.、 切削時間:5分、 の条件でのダイス鋼の乾式高送り断続切削試験、さら
に、 被削材:JIS・FCD500の長さ方向等間隔4本縦
溝入り丸棒、 切削速度:160m/min.、 切り込み:7mm、 送り:0.15mm/rev.、 切削時間:5分、 の条件でのダクタイル鋳鉄の乾式高切り込み断続切削試
験を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を
測定した。この測定結果を表4,6,8,10に示し
た。 【0018】 【表1】 【0019】 【表2】【0020】 【表3】【0021】 【表4】【0022】 【表5】【0023】 【表6】【0024】 【表7】 【0025】 【表8】【0026】 【表9】【0027】 【表10】【0028】(実施例2)原料粉末として、平均粒径:
5.5μmを有する中粗粒WC粉末、同0.8μmの微
粒WC粉末、同1.3μmのTaC粉末、同1.2μm
のNbC粉末、同1.2μmのZrC粉末、同2.3μ
mのCr3C2粉末、同1.5μmのVC粉末、同1.0
μmの(Ti,W)C粉末、および同1.8μmのCo
粉末を用意し、これら原料粉末をそれぞれ表11に示さ
れる配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセト
ン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、1
00MPaの圧力で所定形状の各種の圧粉体にプレス成
形し、これらの圧粉体を、6Paの真空雰囲気中、7℃
/分の昇温速度で1370〜1470℃の範囲内の所定
の温度に昇温し、この温度に1時間保持後、炉冷の条件
で焼結して、直径が8mm、13mm、および26mm
の3種の超硬基体形成用丸棒焼結体を形成し、さらに前
記の3種の丸棒焼結体から、研削加工にて、表8に示さ
れる組合せで、切刃部の直径×長さがそれぞれ6mm×
13mm、10mm×22mm、および20mm×45
mmの寸法をもったエンドミル用超硬基体B−1〜B−
8をそれぞれ製造した。 【0029】ついで、これらの超硬基体B−1〜B−8
を、それぞれアセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態
で、同じく図1に示されるアークイオンプレーティング
装置に装入し、これらの表面に上記実施例1と同一の条
件で、前処理およびアークイオンプレーティング表面処
理を施して、上記超硬基体B−1〜B−8の表面部に非
晶質化層を形成した。なお、前記非晶質化層の表面から
の形成深さは同じくアークイオンプレーティング表面処
理の処理時間を調整することにより行なった。また、上
記超硬基体B−1〜B−8の表面部に形成された非晶質
化層を、透過型電子顕微鏡を用いて組織観察(倍率:5
0万倍)し、この観察結果に基づいて判別および測定し
たところ、それぞれ表12,14に示される表面からの
平均深さ(5点測定の平均値)を示した。 【0030】引き続いて、同じアークイオンプレーティ
ング装置にて、これらの表面に、いずれも上記実施例1
と同一の条件で、まず、下地靭性層として表12,14
に示される目標層厚のTiN層を蒸着形成し、ついで下
側硬質層として同じく表12,14に示される目標組成
および目標層厚の(Ti,Al)N層および(Ti,A
l)CN層のうちのいずれかの単層、または両方の複層
を蒸着形成し、さらに前記下側硬質層の表面に、上側硬
質層として、通常の化学蒸着装置を用い、同じく表2に
示される条件で同じく表13,15に示される目標層厚
のα型またはκ型結晶構造のAl2O3層、またはAl2
O3−ZrO2混合層を蒸着形成することにより、図3
(a)に概略正面図で、同(b)に切刃部の概略横断面
図で示される形状を有する本発明被覆超硬工具としての
本発明表面被覆超硬合金製エンドミル(以下、本発明被
覆超硬エンドミルと云う)1〜16をそれぞれ製造し
た。また、比較の目的で、表16〜19に示される通
り、アークイオンプレーティング装置での上記超硬基体
B−1〜B−8の表面に対する上記条件での前処理およ
びアークイオンプレーティング表面処理を行わず、した
がって、上記超硬基体B−1〜B−8の表面部に非晶質
化層が存在せず、さらに下地靭性層であるTiN層の形
成も行なわない以外は、同一の条件で従来被覆超硬工具
としての従来表面被覆超硬合金製エンドミル(以下、従
来被覆超硬エンドミルと云う)1〜16をそれぞれ製造
した。 【0031】つぎに、上記本発明被覆超硬エンドミル1
〜16および従来被覆超硬エンドミル1〜16のうち、
本発明被覆超硬エンドミル1〜3および9〜11、従来
被覆超硬エンドミル1〜3および9〜11については、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5
0mmのJIS・FC300の板材、 回転速度:5300min-1、 軸方向切り込み:12mm、 径方向切り込み:1.6mm、 送り:585mm/min、 の条件での鋳鉄の湿式高切り込み側面切削加工試験、本
発明被覆超硬エンドミル4〜6および12〜14、従来
被覆超硬エンドミル4〜6および12〜14について
は、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5
0mmのJIS・SNCM439の板材、 回転速度:2100min-1、 軸方向切り込み:20mm、 径方向切り込み:2.6mm、 送り:250mm/min、 の条件での合金鋼の湿式高切り込み側面切削加工試験、
本発明被覆超硬エンドミル7,8および15,16、従
来被覆超硬エンドミル7,8および15,16について
は、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5
0mmのJIS・SKD61(硬さ:HRC52)の板
材、 回転速度:650min-1、 軸方向切り込み:26mm、 径方向切り込み:1.4mm、 送り:68mm/min、 の条件での焼入れ鋼の湿式高切り込み側面切削加工試
験、をそれぞれ行い、いずれの側面切削加工試験(いず
れの試験も水溶性切削油使用)でも外周刃の逃げ面摩耗
量が使用寿命の目安とされる0.1mmに至るまでの切
削長を測定した。この測定結果を表13,15にそれぞ
れ示した。 【0032】 【表11】 【0033】 【表12】【0034】 【表13】【0035】 【表14】【0036】 【表15】【0037】 【表16】 【0038】 【表17】 【0039】 【表18】【0040】 【表19】 【0041】(実施例3)上記の実施例2で製造した直
径が8mm(超硬基体B−1〜B−3形成用)、13m
m(超硬基体B−4〜B−6形成用)、および26mm
(超硬基体B−7、B−8形成用)の3種の丸棒焼結体
を用い、この3種の丸棒焼結体から、研削加工にて、溝
形成部の直径×長さがそれぞれ4mm×13mm(超硬
基体C−1〜C−3)、8mm×22mm(超硬基体C
−4〜C−6)、および16mm×45mm(超硬基体
C−7、C−8)の寸法をもったドリル用超硬基体C−
1〜C−8をそれぞれ製造した。 【0042】ついで、これらの超硬基体C−1〜C−8
を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じ
く図1に示されるアークイオンプレーティング装置に装
入し、これら超硬基体の表面に、これらの表面に上記実
施例1と同一の条件で、前処理およびアークイオンプレ
ーティング表面処理を施して、上記超硬基体C−1〜C
−8の表面部に非晶質化層を形成した。なお、前記非晶
質化層の表面からの形成深さは同じくアークイオンプレ
ーティング表面処理の処理時間を調整することにより行
なった。また、上記超硬基体C−1〜C−8の表面部に
形成された非晶質化層を、透過型電子顕微鏡を用いて組
織観察(倍率:50万倍)し、この観察結果に基づいて
判別および測定したところ、それぞれ表20,22に示
される表面からの平均深さ(5点測定の平均値)を示し
た。 【0043】引き続いて、同じアークイオンプレーティ
ング装置にて、これらの表面に、いずれも上記実施例1
と同一の条件で、まず、下地靭性層として表20,22
に示される目標層厚のTiN層を蒸着形成し、ついで下
側硬質層として同じく表20,22に示される目標組成
および目標層厚の(Ti,Al)N層および(Ti,A
l)CN層のうちのいずれかの単層、または両方の複層
を蒸着形成し、さらに上側硬質層として、通常の化学蒸
着装置を用い、同じく表2に示される条件で同じく表2
1,23に示される目標層厚のα型またはκ型結晶構造
のAl2O3層、またはAl2O3−ZrO2混合層を蒸着
形成することすることにより、図4(a)に概略正面図
で、同(b)に溝形成部の概略横断面図で示される形状
を有する本発明被覆超硬工具としての本発明表面被覆超
硬合金製ドリル(以下、本発明被覆超硬ドリルと云う)
1〜16をそれぞれ製造した。また、比較の目的で、表
24〜27に示される通り、アークイオンプレーティン
グ装置での上記超硬基体C−1〜C−8の表面に対する
上記条件での前処理およびアークイオンプレーティング
表面処理を行わず、したがって、上記超硬基体C−1〜
C−8の表面部に非晶質化層が存在せず、さらに下地靭
性層であるTiN層の形成も行なわない以外は、同一の
条件で従来被覆超硬工具としての従来表面被覆超硬合金
製ドリル(以下、従来被覆超硬ドリルと云う)1〜16
をそれぞれ製造した。 【0044】つぎに、上記本発明被覆超硬ドリル1〜1
6および従来被覆超硬ドリル1〜16のうち、本発明被
覆超硬ドリル1〜3および9〜11、従来被覆超硬ドリ
ル1〜3および9〜11については、 被削材:平面寸法:100mm×250厚さ:50mm
のJIS・FC300の板材、 切削速度:48m/min.、 送り:0.40mm/rev、 の条件での鋳鉄の湿式高送り穴あけ切削加工試験、本発
明被覆超硬ドリル4〜6および12〜14、従来被覆超
硬ドリル4〜6および12〜14については、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5
0mmのJIS・SNCM439の板材、 切削速度:50m/min.、 送り:0.38mm/rev、 の条件での合金鋼の湿式高送り穴あけ切削加工試験、本
発明被覆超硬ドリル7,8および15,16、従来被覆
超硬ドリル7,8および15,16については、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5
0mmのJIS・SKD61(硬さ:HRC53)の板
材、 切削速度:30m/min.、 送り:0.34mm/rev、 の条件での焼入れ鋼の湿式高送り穴あけ切削加工試験、
をそれぞれ行い、いずれの湿式高送り穴あけ切削加工試
験(いずれの試験も水溶性切削油使用)でも先端切刃面
の逃げ面摩耗幅が0.3mmに至るまでの穴あけ加工数
を測定した。この測定結果を表21、23、25、およ
び27にそれぞれ示した。 【0045】 【表20】【0046】 【表21】【0047】 【表22】【0048】 【表23】【0049】 【表24】【0050】 【表25】【0051】 【表26】【0052】 【表27】【0053】また、この結果得られた本発明被覆超硬工
具としての本発明被覆超硬チップ1〜20、本発明被覆
超硬エンドミル1〜16、および本発明被覆超硬ドリル
1〜16、並びに従来被覆超硬工具としての従来被覆超
硬チップ1〜20、従来被覆超硬エンドミル1〜16、
および従来被覆超硬ドリル1〜16の硬質被覆層の組成
および層厚を、エネルギー分散型X線測定装置およびオ
ージェ分光分析装置、さらに走査型電子顕微鏡を用いて
測定したところ、表3〜27の目標組成および目標層厚
と実質的に同じ組成および平均層厚(任意5ヶ所測定の
平均値との比較)を示した。 【0054】 【発明の効果】表3〜27に示される結果から、本発明
被覆超硬工具は、いずれもきわめて高い熱的および機械
的衝撃を伴なう鋼および鋳鉄の重切削条件での断続切削
加工でも、超硬基体表面部に形成された非晶質化層によ
って前記超硬基体表面と耐摩耗被覆層の間には強固な密
着性が確保され、かつ前記耐摩耗被覆層自体がすぐれた
靭性を具備することから、前記耐摩耗被覆層に密着性お
よび靭性不足が原因の剥離やチッピングの発生はなく、
耐摩耗被覆層は上側硬質層および下側硬質層の共存と相
俟ってすぐれた耐摩耗性を発揮するのに対して、前記非
晶質化層および下地靭性層の形成がない従来被覆超硬工
具においては、前記重切削条件での断続切削では耐摩耗
被覆層の密着性および靭性不足が原因で剥離やチッピン
グが発生し、比較的短時間で使用寿命に至ることが明ら
かである。上述のように、この発明の被覆超硬工具は、
各種の鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削や断続切
削加工は勿論のこと、特に高い機械的および熱的衝撃を
伴なう、重切削条件での断続切削加工に用いた場合に
も、耐摩耗被覆層が超硬基体表面に対してすぐれた密着
性を示し、かつすぐれた靭性も保持し、長期に亘ってす
ぐれた切削性能を発揮するものであるから、切削加工の
汎用性に十分満足に対応でき、切削加工のさらに一段の
省力化および省エネ化、さらに低コスト化を可能とする
ものである。
である。 【図2】(a)は被覆超硬チップの概略斜視図、(b)
は被覆超硬チップの概略縦断面図である。 【図3】(a)は被覆超硬エンドミルの概略正面図、
(b)は同切刃部の概略横断面図である。 【図4】(a)は被覆超硬ドリルの概略正面図、(b)
は同溝形成部の概略横断面図である。
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 【請求項1】 アークイオンプレーティング表面処理
で、表面から1〜50nmの範囲内の平均深さに亘って
非晶質化層を形成してなる炭化タングステン基超硬合金
基体の表面に、 (a)窒化チタン層からなり、かつ0.1〜5μmの平
均層厚を有する下地靭性層、 (b)組成式:(Ti1-XAlX)Nおよび同(Ti1-X
AlX)C1-YNY、(但し、原子比で、Xは0.15〜
0.65、Yは0.5〜0.99を示す)、を満足する
TiとAlの複合窒化物層およびTiとAlの複合炭窒
化物層のうちのいずれかの単層、または両方の複層から
なり、かつ0.5〜15μmの平均層厚を有する下側硬
質層、 (c)酸化アルミニウム層、および酸化アルミニウムの
素地に酸化ジルコニウム相が分散分布してなる酸化アル
ミニウム−酸化ジルコニウム混合層のうちのいずれかの
単層、または両方の複層からなり、かつ0.5〜10μ
mの平均層厚を有する上側硬質層、 以上(a)〜(c)で構成された耐摩耗被覆層を物理蒸
着および/または化学蒸着してなる、耐摩耗被覆層がす
ぐれた密着性および耐チッピング性を有する表面被覆超
硬合金製切削工具。
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