JP2013046957A - 耐摩耗性と切り屑排出性にすぐれた表面被覆ドリル - Google Patents

耐摩耗性と切り屑排出性にすぐれた表面被覆ドリル Download PDF

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Abstract

【課題】合金鋼の湿式高速穴あけ加工条件においても、長期間にわたり高い耐摩耗性と切り屑排出性を維持する表面被覆ドリルを提供する。
【解決手段】超硬合金焼結体あるいは高速度鋼からなるドリル基体の上に、直接または中間層を介し、最表面に組成硬度制御層を形成した表面被覆ドリルにおいて、組成硬度制御層が、(Ti1−xAl)Nの成分系および層厚0.3〜5.0μmからなり、かつ、成分系のうち、金属元素全体に対するAlの含有割合をxとしたとき、ドリル先端におけるAlの含有割合がx=0.3〜0.5、かつ、ドリル先端からドリル直径の3倍の位置のマージン部におけるAlの含有割合がx=0.5〜0.7に存在し、かつ、Alの含有割合xがドリル先端からドリル直径の3倍の位置まで漸次増加することにより、上記の課題を解決する。
【選択図】なし

Description

本発明は、ドリル本体の先端部外周に切屑排出溝が形成されるとともに、この切屑排出溝のドリル回転方向を向く内周面の先端に切刃が設けられ、主として金属材よりなる加工物に穴明け加工をするのに用いられる長期間に亘りすぐれた耐摩耗性と切り屑排出性を維持する表面被覆ドリルに関するものである。
このようなドリルとしては、軸線を中心として軸線回りにドリル回転方向に回転される概略円柱状のドリル本体の先端側が切刃部とされ、この切刃部の外周に一対の切屑排出溝が、軸線に関して互いに対称となるように、切刃部の先端面、すなわちドリル本体の先端逃げ面から後端側に向かうに従い軸線回りにドリル回転方向の後方側に捩れる螺旋状に形成され、これらの切屑排出溝の内周面のうちドリル回転方向を向く部分の先端側の先端逃げ面との交差稜線部に切刃が形成された、いわゆる2枚刃のソリッドドリルが知られている。従って、このようなソリッドドリルでは、切屑排出溝内周面のドリル回転方向を向く部分の先端側がこの切刃のすくい面となり、切刃によって生成された切屑は、このすくい面から切屑排出溝の内周面を摺接しつつ、切屑排出溝の捩れによって後端側に送り出されて排出されることとなる。そして、さらにこのようなドリルでは、ドリル本体の耐摩耗性の向上のために種々の方法が採用されている。
例えば、特許文献1においては、Ti、AlおよびNによって構成されるTiAl1−xNおよびTiAl1−yN(0≦x<0.5、0.5<y≦1)なる2種類の化合物(A、B)を交互に繰り返し積層し、その繰り返しの積層周期λを0.5nm〜20nmとし、全体の膜厚が0.5〜10μmとした超薄膜積層体を基材の表面に被覆した超薄膜積層体が開示されている。さらに、この超薄膜積層体において、ビッカース硬度が荷重25gfで3500kgf/mm以上のものについても開示されている。
また、特許文献2においては、被腹膜が(Al1−x)(xは、0.24以上0.45以下)の窒化物、炭窒化物、窒酸化物および炭窒酸化物のいずれかであって、厚みが0.5〜15μmであって、硬さ(18〜55GPa)または応力(−8〜0GPa)が膜厚方向に向けて連続的または段階的に増加あるいは低下していることを特徴としている被覆切削工具が開示されている。
また、特許文献3においては、基材の表面にTiAl化合物膜からなる被膜が被覆された被覆部材において、エッジ稜線の近接部におけるTiAl化合物膜は、Ti/Al原子比がTiAl化合物膜内で最大となる第1膜層と、該第1膜層に対しTi/Al原子比が小さい第2層とを含む少なくとも2層の多層膜からなり、エッジ稜線の近接部を除いたTiAl化合物膜表面の中心部におけるTiAl化合物膜は、Ti/Al原子比が一定である単層膜からなる被覆部材が開示されている。
また、特許文献4においては、基体表面に、TiとAlの複合窒化物層、TiとAlの複合炭窒化物層、TiとAlの複合炭化物層の内の1種の単層または2層以上の複数層からなるTiとAlの複合化合物層(以下、これらをTiAl複合化合物層という)を被覆してなる硬質層被覆切削工具において、基体表面に被覆されたTiAl複合化合物層は、Ti/Alの比が基体表面方向に変化しておりかつエッジ部において最も高くなっていることを特徴とする硬質層被覆切削工具が開示されている。
また、特許文献5においては、少なくとも先端切れ刃の先端部から外周コーナー部と溝長部の一部まで耐摩耗層が被覆され、耐摩耗層の最外層の硬さが20〜80GPaを有し、溝長部の残りに、最外層が摩擦係数0.6以下の潤滑層を被覆したことを特徴とする被覆ドリルが開示されている。また、この耐摩耗層は、外周コーナー部から軸方向にD/2(Dは、被覆ドリルの直径)以下の長さ被覆することも開示されている。
特開平7−97679号公報 特開2005−271106号公報 特開2003−113463号公報 特開平8−267306号公報 特開2007−290051号公報
近年のドリル加工装置の自動化はめざましく、加えてドリル加工に対する省力化、省エネ化、低コスト化さらに効率化の要求も強く、これに伴い、高送り、高切り込みなどより高効率の深穴用ドリル加工が要求される傾向にあるが、前記従来表面被覆ドリルにおいては、各種の鋼や鋳鉄を通常条件下でドリル加工した場合に特段の問題は生じないが、潤滑特性と耐摩耗性が必要とされるとともに切屑がドリルの切屑排出溝につまり易い、合金鋼の湿式高速穴あけ加工に用いた場合には、切屑排出溝に切屑がつまり易く、これが原因で、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、合金鋼の湿式高速穴あけ加工であっても、長期に亘りすぐれた耐摩耗性と切り屑排出性を維持する表面被覆ドリルを提供することである。
そこで、本発明者らは、前述のような観点から、合金鋼の湿式高速穴あけ加工に用いられた場合にも長期間に亘りすぐれた耐摩耗性と切り屑排出性を維持する表面被覆ドリルを提供すべく、ドリルの最表面層に組成硬度制御層として(Ti1−xAl)Nの成分系からなる層厚0.5〜5μmの硬質被覆層が存在する表面被覆ドリルの組成硬度制御層の組成変化および硬度変化に着目し鋭意研究を行った結果、次のような知見を得た。
(a)組成硬度制御層の組成のうち、ドリル先端におけるAlの含有比率xの値が0.3から0.5の範囲に存在し、ドリル先端からドリル直径の3倍の位置のマージン部におけるAlの含有比率xが0.5から0.7の範囲に存在し、かつ、ドリル先端からドリル直径の3倍の位置まで漸次増加する場合、このような組成硬度制御層を硬質被覆層として備えた表面被覆ドリルは、従来の表面被覆ドリルに比して、合金鋼の湿式高速穴あけ加工において、長期間に亘りすぐれた耐摩耗性および切り屑排出性を示すことを見出した。
(b)ドリル先端とドリル先端からドリル直径の3倍の位置のマージン部における組成硬度制御層の硬さを所定の値に制御すると共に、前記組成硬度制御層の硬さをドリル先端からドリル直径の3倍の位置まで漸次減少させることにより、耐摩耗性および切り屑排出性を一層向上させることができることを見出した。
(c)ドリル先端から、ドリル先端からドリル直径の3倍の位置までのマージン部における組成硬度制御層の組成のうち、金属元素全体に対するAlの含有比率が、ドリル基体側から組成硬度制御層表面に向けて、連続的に減少することによって、耐摩耗性および切り屑排出性を一層向上させることができることを見出した。
(d)ドリル先端から、ドリル先端からドリル直径の3倍の位置までのマージン部における組成硬度制御層の硬さが、ドリル基体側から組成硬度制御層表面に向けて、連続的に増加することによって、耐摩耗性および切り屑排出性を一層向上させることができることを見出した。
前述したような組成硬度制御層は、図1の概略説明図に示される物理蒸着装置の1種である圧力勾配型Arプラズマガンを利用したイオンプレーティング装置にドリル基体を装着し、
ドリル基体温度:420〜430℃、
蒸発源1:なし
蒸発源1に対するプラズマガン放電電力:3kW、
放電ガス流量:アルゴン(Ar)ガス 30sccm、
ドリル基体に印加する直流バイアス電圧:−500V、
という特定の条件でボンバード処理を行った後、
ドリル基体温度:420〜430℃、
蒸発源1:金属Ti、
蒸発源1に対するプラズマガン放電電力:10〜12kW、
蒸発源2:金属Al、
蒸発源2に対するプラズマガン放電電力:6〜9kW、
反応ガス流量:窒素(N)ガス 135sccm、
放電ガス流量:アルゴン(Ar)ガス 75sccm、
ドリル基体に印加する直流バイアス電圧:−25V、
という特定の条件下で、かつ、ドリル基体の先端をTiハースに向けたまま、公転させずに自転のみさせる。
また、組成硬度制御層の組成または硬度を連続的に減少または増加させるには、成膜中にAlプラズマガン、アシストガンの出力を増加または減少させることによって達成できる。この結果形成された組成硬度制御層を硬質被覆層として備えた表面被覆ドリルは、従来の表面被覆ドリルに比して、合金鋼の湿式高速穴あけ加工において、すぐれた耐摩耗性および切り屑排出性を示すことを見出した。
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであって、
「(1) 超硬合金焼結体あるいは高速度鋼からなるドリル基体の上に、直接または中間層を介し、最表面に組成硬度制御層を形成した表面被覆ドリルにおいて、
前記組成硬度制御層が、(Ti1−xAl)Nの成分系および層厚0.5〜5.0μmからなり、かつ、前記成分系のうち、金属元素全体に対するAlの含有割合をxとしたとき、ドリル先端におけるAlの含有割合がx=0.3〜0.5、かつ、ドリル先端からドリル直径の3倍の位置のマージン部におけるAlの含有割合がx=0.5〜0.7に存在し、かつ、Alの含有割合xがドリル先端からドリル直径の3倍の位置まで漸次増加することを特徴とする表面被覆ドリル。
(2) 前記組成硬度制御層のドリル先端における、100mgfで測定した微小押し込み硬さが3000〜5000kgf/mmの範囲に存在し、かつ、ドリル先端からドリル直径の3倍の位置のマージン部における組成硬度制御層の、100mgfで測定した微小押し込み硬さが1500〜2800kgf/mmの範囲に存在し、前記組成硬度制御層の硬さがドリルの軸方向に沿って、ドリル先端からドリル直径の3倍の位置まで漸次減少することを特徴とする(1)を特徴とする表面被覆ドリル。
(3) 前記組成硬度制御層のドリル先端から、ドリル先端からドリル直径の3倍の位置までのマージン部における組成のうち、金属元素全体に対するAlの含有比率xが、前記ドリル基体側から組成硬度制御層表面に向けて、それぞれ連続的に減少することを特徴とする(1)または(2)に記載の表面被覆ドリル。
(4) 前記組成硬度制御層のドリル先端から、ドリル先端からドリル直径の3倍の位置までのマージン部における硬さが、前記ドリル基体側から組成硬度制御層表面に向けて、連続的に増加することを特徴とする(1)または(2)に記載の表面被覆ドリル。」
に特徴を有するものである。
本発明について、以下に説明する。
本発明の表面被覆ドリルの超硬合金焼結体あるいは高速度鋼からなるドリル基体の上に、直接または、中間層を介して、(Ti1−xAl)Nの成分系からなる層厚0.5〜5.0μmの硬質被覆層を形成する。ここで、硬質被膜層の層厚が0.5μm未満では、所望の耐摩耗性が維持できず、一方、5μmを超えると応力による自己破壊が生じ、所望の耐衝撃性を得ることができない。したがって、硬質被覆層の層厚は0.5〜5.0μmと定めた。
また、硬質被覆層の組成(Ti1−xAl)Nにおいて、ドリル先端のAlの含有比率xの値が、0.3未満では、所望の耐摩耗性が得られない。一方、0.5を超えるとTiの量が相対的に低くなりすぎ、所望の高い耐熱性が得られない。したがって、ドリル先端のAlの含有比率xの値は0.3〜0.5と定めた。
また、ドリル先端からドリル直径の3倍の位置のマージン部におけるAlの含有割合が、0.5未満では、所望の耐衝撃性が得られない。一方、0.7を超えるとTiの量が相対的にきわめて低くなりすぎ、最低限の耐熱性が得られない。したがって、ドリル先端からドリル直径の3倍の位置のマージン部におけるAlの含有割合は0.5〜0.7と定めた。
また、ドリル先端の組成硬度制御層の100mgfで測定した微小押し込み硬さが3000kgf/mm未満では、耐摩耗性が低くなりすぎ、5000kgf/mmを超えると皮膜の靭性が著しく低下し、衝撃によるチッピングの原因となる。さらに、ドリル先端からドリル直径の3倍の位置での組成硬度制御層の100mgfで測定した微小押し込み硬さが1500kgf/mm未満では、最低限の耐摩耗性が得られず、2800kgf/mmを超えると靱性が低下し、またドリルの切削抵抗が大きくなりやすく、チッピングや剥離の原因となる。したがって、硬度制御層のドリル先端における100mgfで測定した微小押し込み硬さが3000〜5000kgf/mm、かつ、ドリル先端からドリル直径の3倍の位置のマージン部における組成硬度制御層の100mgfで測定した微小押し込み硬さが1500〜2800kgf/mmの範囲と定めた。
また、組成硬度制御層の組成のうち金属元素全体に対するAlの含有比率がドリル基体側から組成硬度制御層表面に向けて、連続的に減少することによって、ドリルのうち溝形成部の後方においてもすぐれた耐熱衝撃性を発揮し、長期に亘り安定的な切削を実現する。さらに、組成硬度制御層の硬さがドリル基体側から組成硬度制御層表面に向けて、連続的に増加することによって、ドリル先端に必要不可欠な高い硬度を具備するとともに、高い硬さが必要とされない溝形成部の後方においては、比較的摩耗しやすい低い硬さを具備することにより、切削抵抗が低く安定的な切削性能を実現し、ドリルの寿命を更に長期化することができる。
本発明の表面被覆ドリルは、超硬合金焼結体あるいは高速度鋼からなるドリル基体の上に、直接または中間層を介し、最表面に組成硬度制御層を形成した表面被覆ドリルにおいて、組成硬度制御層が、(Ti1−xAl)Nの成分系および層厚0.5〜5.0μmからなり、かつ、成分系のうち、金属元素全体に対するAlの含有割合をxとしたとき、ドリル先端におけるAlの含有割合がx=0.3〜0.5、かつ、ドリル先端からドリル直径の3倍の位置のマージン部におけるAlの含有割合がx=0.5〜0.7に存在し、かつ、Alの含有割合xがドリル先端からドリル直径の3倍の位置まで漸次増加する構成にしたことにより、合金鋼の湿式高速穴あけ加工において、長期間に亘りすぐれた耐摩耗性および切り屑排出性を示す。さらに、前述の構成に加えて、組成硬度制御層のドリル先端における荷重100gfで測定した微小押し込み硬さが3000〜5000kgf/mmの範囲に存在し、かつ、ドリル先端からドリル直径の3倍の位置のマージン部における組成硬度制御層の荷重100gfで測定した微小押し込み硬さが1500〜2800kgf/mmの範囲に存在し、前記組成硬度制御層の硬さがドリルの軸方向に沿って、ドリル先端からドリル直径の3倍の位置まで漸次減少することにより、耐摩耗性および切り屑排出性を一層向上させることができる。
さらに、前述の構成に加えて、組成硬度制御層のドリル先端から、ドリル先端からドリル直径の3倍の位置までのマージン部における組成のうち、金属元素全体に対するAlの含有比率xが、ドリル基体側から組成硬度制御層表面に向けて、それぞれ連続的に減少することにより、耐摩耗性および切り屑排出性を一層向上させることができる。
さらに、前述の構成に加えて、組成硬度制御層のドリル先端から、ドリル先端からドリル直径の3倍の位置までのマージン部における硬さが、前記ドリル基体側から組成硬度制御層表面に向けて、連続的に増加することにより、耐摩耗性および切り屑排出性を一層向上させることができる。
すなわち、本発明の表面被覆ドリルは、マスキング等の手法によって作成された段階的に大きく変化する従来の表面被覆ドリルよりも安定的な切削性能を長時間にわたって維持することができるものであって、更に膜厚方向にAlの含有率が減少することで、皮膜内部ではすぐれた靭性を発揮するとともに熱負荷の大きい表面側ではすぐれた耐熱衝撃性を発揮し、ドリル寿命を更に長期化することが出来、また、更に膜厚方向に硬さが増加することで、皮膜内部ではすぐれた靭性を発揮するとともに力学的負荷の大きい表面側ではすぐれた耐衝撃性を発揮し、ドリルの寿命を長期化することが出来るという本発明に特有の格別にすぐれた効果を発揮することが出来る。
本発明の表面被覆ドリルの硬質被覆層(組成硬度制御層)を蒸着形成するための圧力勾配型Arプラズマガンを利用したイオンプレーティング装置の概略図を示す。 従来被覆ドリルを蒸着形成するためのアークイオンプレーティング装置の概略図を表す。
つぎに、本発明の表面被覆ドリルを実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、平均粒径0.8μmのWC粉末、同2.3μmのCr粉末、同1.5μmのVC粉末および同1.8μmのCo粉末を用意し、これら原料粉末をそれぞれ表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力で所定形状の各種の圧粉体にプレス成形し、これらの圧粉体を、6Paの真空雰囲気中、7℃/分の昇温速度で1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に昇温し、この温度に1時間保持後、炉冷の条件で焼結して、ドリル基体形成用丸棒焼結体を形成し、さらに前記の丸棒焼結体から、研削加工にて、溝形成部の直径×長さが10mm×80mmの寸法、並びにねじれ角30度の2枚刃形状をもったWC基超硬合金製のドリル基体D−1〜D−4をそれぞれ製造した。
ついで、これらのドリル基体D−1〜D−4の切刃に、ホーニングを施し、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図1の概略図に示される物理蒸着装置の1種である圧力勾配型Arプラズマガンを利用したイオンプレーティング装置に装着し、
ドリル基体温度:420〜430℃、
蒸発源1:なし
蒸発源1に対するプラズマガン放電電力:3kW、
放電ガス流量:アルゴン(Ar)ガス 30sccm、
ドリル基体に印加する直流バイアス電圧:−500V、
という特定の条件でボンバード処理を行った後、
ドリル基体温度:420〜430℃、
蒸発源1:金属Ti、
蒸発源1に対するプラズマガン放電電力:10〜12kW、
蒸発源2:金属Al、
蒸発源2に対するプラズマガン放電電力:6〜9kW、
反応ガス流量:窒素(N)ガス 135sccm、
放電ガス流量:アルゴン(Ar)ガス 75sccm、
ドリル基体に印加する直流バイアス電圧:−25V、
蒸着時間: 60〜150min.
という表2に示される特定の条件下、ドリル基体の先端をTiハースに向けたまま、公転させずに自転のみさせる。また、成膜中にAlプラズマガン、アシストプラズマガンの出力を減少または増加させることによって、組成硬度制御層の膜厚方向のAlの含有割合および硬さをそれぞれ連続的に減少または増加させる。
こうして、表2に示される組成、および、表4に示される目標膜厚、硬さを有する組成硬度制御層を形成した本発明表面被覆ドリル1〜12をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、前記ドリル基体D−1〜D−4の表面に、ホーニングを施し、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、
図2に示される、Ti−Al合金をターゲットとして取り付けたアークイオンプレーティング装置内にドリル基体を垂直方向に固定した状態で保持し自転させると同時に、該鉛直方向の軸を回転中心軸として公転させながら、
ドリル基体温度:400〜420℃、
ターゲット1:Ti−Al合金、
ターゲット1に対するアーク放電電流:120A、
反応ガス圧力:窒素(N)ガス 4〜6Pa、
ドリル基体に印加する直流バイアス電圧:−25V、
という表3に示される条件下、従来被覆層を蒸着形成して、ドリル基体D−1〜D−4の表面に、表3に示される組成、および、表5に示される目標膜厚、硬さを有する従来層を形成した比較表面被覆ドリル1〜9をそれぞれ製造した。
表4および表5において、ドリル基体側領域とは、硬質被覆層の厚さをtとしたとき、ドリル基体の表面から0.1tの位置を意味しており、最表面領域とは、硬質被覆層の最表面から0.1tの位置を意味している。
つぎに、前記本発明表面被覆ドリル1〜12および比較表面被覆ドリル1〜9について、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:80mmの、JIS・SCM440(HB240)の板材、
切削速度: 140m/min.、
送り: 0.35mm/rev.、
穴深さ: 60mm、
の条件での合金鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の、加工穴深さ3Dの切削速度および送りは、それぞれ、110m/min.および0.25mm/rev.)を行い、先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.3mmに至るまで、若しくはドリルの欠損に至るまでの穴あけ加工数を測定した。この測定結果を表4、5にそれぞれ示した。
この結果得られた本発明表面被覆ドリル1〜12の硬質被覆層を構成する組成硬度制御層、さらに、比較表面被覆ドリル1〜9の硬質被覆層を構成する従来層の平均層厚を、走査型電子顕微鏡を用いて断面測定したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均値(5ヶ所の平均値)を示した。
表2、4に示される結果から、本発明表面被覆ドリルは、最表面に(Ti1−xAl)Nの成分系からなる組成硬度制御層が形成されており、その層厚が0.5〜5μmであり、かつ、成分系のうち、金属元素全体に対するAlの含有比率をxとしたとき、ドリル先端におけるxの値が、0.3〜0.5の範囲に存在し、かつ、ドリル先端からドリル直径の3倍の位置のマージン部におけるxの値が、0.5〜0.7に存在し、かつ、Alの含有割合xがドリル先端からドリル直径の3倍の位置まで漸次増加していることから、合金鋼の湿式高速穴あけ加工において、長期間に亘りすぐれた耐摩耗性と切り屑排出性を維持する表面被覆ドリルが得られることが明らかである。
これに対して、表3、5に示される結果から、硬質被覆層として組成および硬度が制御されていない従来層を有する比較表面被覆ドリルにおいては、耐摩耗性および切り屑排出性が十分でないために、チッピング、欠損、剥離の発生等により、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
前述のように、本発明の表面被覆ドリルは、超硬合金焼結体あるいは高速度鋼からなるドリル基体の上に、直接または中間層を介し、最表面に組成硬度制御層を形成した表面被覆ドリルにおいて、組成硬度制御層が、(Ti1−xAl)Nの成分系および層厚0.5〜5.0μmからなり、かつ、成分系のうち、金属元素全体に対するAlの含有割合をxとしたとき、ドリル先端におけるAlの含有割合がx=0.3〜0.5、かつ、ドリル先端からドリル直径の3倍の位置のマージン部におけるAlの含有割合がx=0.5〜0.7に存在し、かつ、Alの含有割合xがドリル先端からドリル直径の3倍の位置まで漸次増加することにより、すぐれた耐摩耗性および切り屑排出性を備えており、そして、このすぐれた耐摩耗性と切り屑排出性は、合金鋼の湿式高速穴あけ加工条件においても、長期間にわたり高い耐摩耗性を維持するものである。

Claims (4)

  1. 超硬合金焼結体あるいは高速度鋼からなるドリル基体の上に、直接または中間層を介し、最表面に組成硬度制御層を形成した表面被覆ドリルにおいて、
    前記組成硬度制御層が、(Ti1−xAl)Nの成分系および層厚0.5〜5.0μmからなり、かつ、前記成分系のうち、金属元素全体に対するAlの含有割合をxとしたとき、ドリル先端におけるAlの含有割合がx=0.3〜0.5、かつ、ドリル先端からドリル直径の3倍の位置のマージン部におけるAlの含有割合がx=0.5〜0.7に存在し、かつ、Alの含有割合xがドリル先端からドリル直径の3倍の位置まで漸次増加することを特徴とする表面被覆ドリル。
  2. 前記組成硬度制御層のドリル先端におけるビッカース硬度が荷重100gfにおいて3000〜5000kgf/mmの範囲に存在し、かつ、ドリル先端からドリル直径の3倍の位置のマージン部における組成硬度制御層のビッカース硬度が荷重100gfにおいて1500〜2800kgf/mmの範囲に存在し、前記組成硬度制御層の硬さがドリルの軸方向に沿って、ドリル先端からドリル直径の3倍の位置まで漸次減少することを特徴とする請求項1に記載の表面被覆ドリル。
  3. 前記組成硬度制御層のドリル先端から、ドリル先端からドリル直径の3倍の位置までのマージン部における組成のうち、金属元素全体に対するAlの含有比率xが、前記ドリル基体側から組成硬度制御層表面に向けて、それぞれ連続的に減少することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表面被覆ドリル。
  4. 前記組成硬度制御層のドリル先端から、ドリル先端からドリル直径の3倍の位置までのマージン部における硬さが、前記ドリル基体側から組成硬度制御層表面に向けて、連続的に増加することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表面被覆ドリル。
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