JP2002256413A - 切粉に対する表面潤滑性にすぐれた表面被覆超硬合金製切削工具 - Google Patents
切粉に対する表面潤滑性にすぐれた表面被覆超硬合金製切削工具Info
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Abstract
超硬合金製切削工具を提供する。 【解決手段】 表面被覆超硬合金製切削工具が、炭化タ
ングステン基超硬合金基体または炭窒化チタン系サーメ
ット基体の表面に、組成式:[Ti1-(X+Y+Z)AlXTa
YVZ]N(ただし、いずれも原子比で、Xは0.25〜
0.7、Yは0.01〜0.3、Zは0.05〜0.3
を示す)を満足するTiとAlとTaとVの複合窒化物
からなる硬質被覆層を、1〜15μmの平均層厚で物理
蒸着してなる。
Description
面潤滑性にすぐれ、したがって特にステンレス鋼や軟鋼
などのきわめて粘性が高く、かつ切粉が切刃部表面に溶
着し易い難削材の高速切削加工に用いた場合にも、切刃
部に欠けやチッピング(微小欠け)などの発生なく、す
ぐれた切削性能を長期に亘って発揮する表面被覆超硬合
金製切削工具(以下、被覆超硬工具という)に関するも
のである。
などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部
に着脱自在に取り付けて用いられるスローアウエイチッ
プ、前記被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリ
ルやミニチュアドリル、さらに前記被削材の面削加工や
溝加工、肩加工などに用いられるソリッドタイプのエン
ドミルなどがあり、また前記スローアウエイチップを着
脱自在に取り付けて前記ソリッドタイプのエンドミルと
同様に切削加工を行うスローアウエイエンドミル工具な
どが知られている。
示される物理蒸着装置の1種であるアークイオンプレー
ティング装置を用い、ヒータで装置内を、例えば雰囲気
を5×10-2Paの真空として、500℃の温度に加熱
した状態で、アノード電極と、所定組成を有するTi−
Al−Ta合金がセットされたカソード電極(蒸発源)
との間に、例えば電圧:35V、電流:90Aの条件で
アーク放電を発生させ、同時に装置内に反応ガスとして
窒素ガスを導入して、例えば雰囲気圧力を3Paとし、
一方炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金
または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメ
ットからなる基体(以下、これらを総称して超硬基体と
いう)には、例えばー200Vのバイアス電圧を印加し
た条件で、前記超硬合金基体の表面に、例えば特開平5
−272745号公報に記載されるように、TiとAl
とTaの複合窒化物[以下、(Ti,Al,Ta)Nで
示す]からなる硬質被覆層を、1〜15μmの平均層厚
で物理蒸着してなる被覆超硬工具が知られている。
FA化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化お
よび省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに
伴い、切削工具には1種類の工具できるだけ多くの材種
の被削材を切削加工できる汎用性が求められると共に、
切削加工も高速化の傾向にあるが、上記の従来被覆超硬
工具においては、これを鋼や鋳鉄などの通常の条件での
切削加工に用いた場合には問題はないが、これをきわめ
て粘性の高いステンレス鋼や軟鋼などの被削材の高速切
削に用いた場合には、これら被削材の切粉は、硬質被覆
層を構成する(Ti,Al,Ta)N層に対する親和性
が高いために、切刃部表面に溶着し易く、この溶着現象
は切削加工が高速化すればするほど顕著に現れるように
なり、この溶着現象が原因で切刃部に欠けやチッピング
が発生し、この結果比較的短時間で使用寿命に至るのが
現状である。
上述のような観点から、特にステンレス鋼や軟鋼などの
高速切削加工に用いた場合にも、切刃部表面に切粉の溶
着し難い被覆超硬工具を開発すべく、特に上記の硬質被
覆層が(Ti,Al,Ta)N層で構成された従来被覆
超硬工具に着目し、研究を行った結果、上記の従来被覆
超硬工具の硬質被覆を構成する(Ti,Al,Ta)N
層の組成を、組成式:[Ti1-(X+Y)AlXTaY]N
(ただし、いずれも原子比で、Xは0.25〜0.7、
Yは0.01〜0.3を示す)を満足する組成に特定し
た上で、これにV成分を、TiとAlとTaの合量に占
める割合(原子比)で、0.05〜0.3の割合で固溶
含有させてなるTiとAlとTaとVの複合窒化物[以
下、(Ti,Al,Ta,V)Nで示す]で硬質被覆層
を構成すると、この結果の被覆超硬工具においては、一
般に切削時の摩擦熱で切刃部が加熱され、特にきわめて
粘性の高いステンレス鋼や軟鋼などの難削材の高速切削
では、一段の高熱発生を伴ない、切刃部の温度が約70
0℃以上に達するが、前記(Ti,Al,Ta,V)N
層では、これを構成するV成分が前記高温加熱で選択酸
化(優先酸化)されて、酸化バナジウム(以下、V2O5
で示す)が生成されるようになり、このV2O5は融点が
668℃と低く、このため溶融して切刃部の表面を潤滑
化するようになることから、切刃部表面への切粉の溶着
現象がなくなり、切刃部に欠けやチッピングの発生がな
くなって、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮するよ
うになる、という研究結果を得たのである。
されたものであって、超硬基体の表面に、組成式:[T
i1-(X+Y+Z)AlXTaYVZ]N(ただし、いずれも原子
比で、Xは0.25〜0.7、Yは0.01〜0.3、
Zは0.05〜0.3を示す)を満足する(Ti,A
l,Ta,V)Nからなる硬質被覆層を、1〜15μm
の平均層厚で物理蒸着してなる、切粉に対する表面潤滑
性にすぐれた被覆超硬工具に特徴を有するものである。
硬質被覆層の(Ti,Al,Ta,V)N層におけるA
lは、きわめて軟質のTiNに対して高温硬さおよび耐
熱性を向上させるために固溶するものであり、したがっ
て組成式:[Ti1-(X+Y+Z)AlXTaYVZ]NのX値が
原子比で0.25未満では所望の高温硬さおよび耐熱性
向上効果が得られず、一方そのX値が同0.7を越える
と、TiNによってもたらされるすぐれた靭性が急激に
低下するようになり、チッピング発生の原因ともなると
いう理由で、X値を原子比で0.25〜0.7、望まし
くは0.4〜0.6と定めた。また、同じくTaには、
硬質被覆層の高温強度を向上させ、もって上記Alとの
共存において耐摩耗性向上に寄与する作用があるが、上
記組成式のY値が原子比で0.01未満では所望の高温
強度向上効果が得られず、一方そのY値が同0.3を越
えると、硬質被覆層が軟質化し、摩耗進行が急激に促進
されるようになることから、Y値を原子比で0.01〜
0.3、望ましくは0.02〜0.25と定めた。さら
に、同じくVには、上記の通り切削時の発熱で硬質被覆
層の構成成分であるTi、Al、およびTaに優先して
酸化し、V2O5を形成して、溶融し、これが切刃部の表
面に存在して、潤滑材として作用し、親和性の高いステ
ンレス鋼や軟鋼などの切粉の切刃部表面への溶着を防止
する作用があるが、上記組成式のZ値が原子比で0.0
5未満では前記作用に所望向上効果が得られず、一方そ
のZ値が同0.3を越えると、硬質被覆層の酸化が急激
に進行し、摩耗が促進されるようになることから、Z値
を原子比で0.05〜0.3、望ましくは0.1〜0.
25と定めた。また、硬質被覆層の平均層厚を1〜15
μmとしたのは、その層厚が1μm未満では所望のすぐ
れた耐摩耗性を確保することができず、一方その層厚が
15μmを越えると、切刃部に欠けやチッピングが発生
し易くなるという理由によるものである。
を実施例により具体的に説明する。 (実施例1)原料粉末として、いずれも1〜3μmの平
均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、V
C粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3 C2 粉末、T
iN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これ
ら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボー
ルミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、100MP
a の圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6P
aの真空中、温度:1400℃に1時間保持の条件で焼
結し、焼結後、切刃部分にR:0.05のホーニング加
工を施してISO規格・CNMG120408の形状を
もったWC基超硬合金製のチップ超硬基体A1〜A10
を形成した。
2μmの平均粒径を有するTiCN(重量比でTiC/
TiN=50/50)粉末、Mo2 C粉末、ZrC粉
末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、お
よびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示さ
れる配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合
し、乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス
成形し、この圧粉体を2kPaの窒素雰囲気中、温度:
1500℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃
部分にR:0.03のホーニング加工を施してISO規
格・CNMG120408の形状をもったTiCN系サ
ーメット製のチップ超硬基体B1〜B6を形成した。
0およびB1〜B6を、アセトン中で超音波洗浄し、乾
燥した状態で、それぞれ図1に例示される通常のアーク
イオンプレーティング装置に装入し、一方カソード電極
(蒸発源)として種々の成分組成をもったTi−Al−
Ta−V合金またはTi−Al−Ta合金を装着し、装
置内を排気して0.5Paの真空に保持しながら、ヒー
ターで装置内を500℃に加熱した後、Arガスを装置
内に導入して10PaのAr雰囲気とし、この状態で超
硬基体に−800vのバイアス電圧を印加して超硬基体
表面をArガスボンバート洗浄し、ついで装置内に反応
ガスとして窒素ガスを導入して6Paの反応雰囲気とす
ると共に、前記超硬基体に印加するバイアス電圧を−2
00vに下げて、前記カソード電極とアノード電極との
間にアーク放電を発生させ、もって前記超硬基体A1〜
A10およびB1〜B6のそれぞれの表面に、表3、4
に示される目標組成および目標層厚の硬質被覆層を蒸着
することにより、図2(a)に概略斜視図で、同(b)
に概略縦断面図で示される形状を有する本発明被覆超硬
工具としての本発明表面被覆超硬合金製スローアウエイ
チップ(以下、本発明被覆超硬チップと云う)1〜1
6、および従来被覆超硬工具としての従来表面被覆超硬
合金製スローアウエイチップ(以下、従来被覆超硬チッ
プと云う)1〜16をそれぞれ製造した。
ップ1〜16および従来被覆超硬チップ1〜16の硬質
被覆層について、その構成層のそれぞれの厚さ断面中央
部の組成をオージェ分光分析装置を用いて測定すると共
に、その厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて断面測定し
たところ、いずれも表3、4に示される目標組成および
目標層厚と実質的に同じ値を示した。
6および従来被覆超硬チップ1〜16について、これを
工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状
態で、 被削材:JIS・SUS304の丸棒、 切削速度:200m/min.、 切り込み:1.5mm、 送り:0.3mm/rev.、 切削時間:20分、 の条件でのステンレス鋼の乾式高速連続旋削加工試験、 被削材:JIS・SUS304の長さ方向等間隔4本縦
溝入り丸棒、 切削速度:120m/min.、 切り込み:1.0mm、 送り:0.2mm/rev.、 切削時間:15分、 の条件でのステンレス鋼の乾式高速断続旋削加工試験、
さらに、 被削材:JIS・S15Cの長さ方向等間隔4本縦溝入
り丸棒、 切削速度:250m/min.、 切り込み:2.0mm、 送り:0.25mm/rev.、 切削時間:20分、 の条件での軟鋼の乾式高速断続旋削加工試験を行い、い
ずれの旋削加工試験でも切刃部の逃げ面摩耗幅を測定し
た。この測定結果を表5に示した。
5.5μmを有する中粗粒WC粉末、同0.8μmの微
粒WC粉末、同1.3μmのTaC粉末、同1.2μm
のNbC粉末、同1.2μmのZrC粉末、同2.3μ
mのCr3C2粉末、同1.5μmのVC粉末、同1.0
μmの(Ti,W)C粉末、同1.8μmのCo粉末、
および同1.2μmの炭素(C)粉末を用意し、これら
原料粉末をそれぞれ表6に示される配合組成に配合し、
さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミ
ル混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力で所定
形状の各種の圧粉体にプレス成形し、これらの圧粉体
を、6Paの真空雰囲気中、7℃/分の昇温速度で13
70〜1470℃の範囲内の所定の温度に昇温し、この
温度に1時間保持後、炉冷の条件で焼結して、直径が8
mm、13mm、および26mmの3種の超硬基体形成
用丸棒焼結体を形成し、さらに前記の3種の丸棒焼結体
から、研削加工にて、表6に示される組合せで、切刃部
の直径×刃長がそれぞれ6mm×13mm、10mm×
22mm、および20mm×38mmの寸法をもったエ
ンドミル超硬基体a〜hをそれぞれ製造した。
hを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同
じく図1に例示される通常のアークイオンプレーティン
グ装置に装入し、その表面に上記実施例1と同一の条件
で、表7、8に示される目標組成および目標層厚をもっ
た硬質被覆層を蒸着することにより、図3(a)に概略
正面図で、同(b)に切刃部の概略横断面図で示される
形状を有する従来被覆超硬工具としての従来表面被覆超
硬合金製エンドミル(以下、従来被覆超硬エンドミルと
云う)1〜16をそれぞれ製造した。
ンドミル1〜16および従来被覆超硬エンドミル1〜1
6の硬質被覆層について、その構成層のそれぞれの厚さ
断面中央部の組成をオージェ分光分析装置を用いて測定
すると共に、その厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて断
面測定したところ、いずれも表7、8に示される目標組
成および目標層厚と実質的に同じ値を示した。
〜16および従来被覆超硬エンドミル1〜16のうち、
本発明被覆超硬エンドミル1〜6および従来被覆超硬エ
ンドミル1〜6については、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5
0mmのJIS・SUS304の板材、 切削速度:40m/min.、 溝深さ(切り込み):2mm、 テーブル送り:130mm/分、 の条件でのステンレス鋼の湿式高速溝切削加工試験(水
溶性切削油使用)、本発明被覆超硬エンドミル7〜12
および従来被覆超硬エンドミル7〜12については、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5
0mmのJIS・S15C板材、 切削速度:100m/min.、 溝深さ(切り込み):4mm、 テーブル送り:300mm/分、 の条件での軟鋼の乾式高速溝切削加工試験、本発明被覆
超硬エンドミル13〜16および従来被覆超硬エンドミ
ル13〜16については、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5
0mmのJIS・SUS304の板材、 切削速度:30m/min.、 溝深さ(切り込み):7mm、 テーブル送り:60mm/分、 の条件でのステンレス鋼の湿式高速溝切削加工試験(水
溶性切削油使用)、をそれぞれ行い、いずれの溝切削加
工試験でも外周刃の逃げ面摩耗量が使用寿命の目安とさ
れる0.1mmに至るまでの切削溝長を測定した。この
測定結果を表7、8にそれぞれ示した。
径が8mm(エンドミル超硬基体a〜c形成用)、13
mm(エンドミル超硬基体d〜f形成用)、および26
mm(エンドミル超硬基体g、h形成用)の3種の丸棒
焼結体を用い、この3種の丸棒焼結体から、研削加工に
て、溝形成部の直径×溝長がそれぞれ4mm×21mm
(ドリル超硬基体a‘〜c’)、8mm×35mm(ド
リル超硬基体d‘〜f’)、および16mm×55mm
(ドリル超硬基体g‘、h’)の寸法をもったドリル超
硬基体a‘〜h’をそれぞれ製造した。
h’を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、
同じく図1に例示される通常のアークイオンプレーティ
ング装置に装入し、それぞれの表面に、上記実施例1と
同一の条件で、表9、10に示される目標組成および目
標層厚をもった硬質被覆層を蒸着することにより、図4
(a)に概略正面図で、同(b)に溝形成部の概略横断
面図で示される形状を有する本発明被覆超硬工具として
の本発明表面被覆超硬合金製ドリル(以下、本発明被覆
超硬ドリルと云う)1〜16、および従来被覆超硬工具
としての従来表面被覆超硬合金製ドリル(以下、従来被
覆超硬ドリルと云う)1〜16をそれぞれ製造した。
ドリル1〜16および従来被覆超硬ドリル1〜16の硬
質被覆層について、その構成層のそれぞれの厚さ断面中
央部の組成をオージェ分光分析装置を用いて測定すると
共に、その厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて断面測定
したところ、いずれも表9、10に示される目標組成お
よび目標層厚と実質的に同じ値を示した。
6および従来被覆超硬ドリル1〜16のうち、本発明被
覆超硬ドリル1〜6および従来被覆超硬ドリル1〜6に
ついては、板材、 被削材:平面寸法:100mm×250厚さ:20mm
のJIS・SUS304板材、 切削速度:50m/min.、 送り:0.10mm/rev、 の条件でのステンレス鋼の湿式高速穴あけ(穴深さ:1
0mmのメクラ穴)切削加工試験、本発明被覆超硬ドリ
ル7〜12および従来被覆超硬ドリル7〜12について
は、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:2
0mmのJIS・SUS304の板材、 切削速度:60m/min.、 送り:0.15mm/rev、 の条件でのステンレス鋼の湿式高速穴あけ(貫通穴)切
削加工試験、本発明被覆超硬ドリル13〜16および従
来被覆超硬ドリル13〜16については、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5
0mmのJIS・S15Cの板材、 切削速度:60m/min.、 送り:0.25mm/rev、 の条件での軟鋼の湿式高速穴あけ(貫通穴)切削加工試
験、をそれぞれ行い、いずれの湿式高速穴あけ切削加工
試験(水溶性切削油使用)でも先端切刃面の逃げ面摩耗
幅が0.3mmに至るまでの穴あけ加工数を測定した。
この測定結果を表9、10にそれぞれ示した。
被覆超硬工具は、いずれもステンレス鋼や軟鋼の切削加
工を高い発熱を伴う高速で行っても、硬質被覆層を構成
するTi,Al,Ta,V)N層のうちのV成分が選択
酸化(優先酸化)して、V2O5を生成し、このV2O5が
潤滑材として作用し、すぐれた表面潤滑性が維持される
ことから、切刃部表面への切粉の溶着が著しく抑制さ
れ、この結果切刃部におけるチッピングの発生がなくな
り、すぐれた耐摩耗性を発揮するのに対して、硬質被覆
層が(Ti,Al,Ta)N層からなる従来被覆超硬工
具においては、切粉が硬質被覆層に溶着し易く、これが
原因で硬質被覆層が局部的に剥がし取られることから、
切刃部にチッピングが発生し、比較的短時間で使用寿命
に至ることが明らかである。上述のように、この発明の
被覆超硬工具は、各種の鋼や鋳鉄などの通常の条件での
切削加工は勿論のこと、特に粘性が高く、切粉が切刃表
面に溶着し易いステンレス鋼や軟鋼などの高速切削加工
でも切粉に対してすぐれた表面潤滑性を発揮し、汎用性
のある切削性能を示すものであるから、切削加工装置の
FA化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに
低コスト化に十分満足に対応できるものである。
である。
は被覆超硬チップの概略縦断面図である。
(b)は同切刃部の概略横断面図である。
は同溝形成部の概略横断面図である。
Claims (1)
- 【請求項1】 炭化タングステン基超硬合金基体または
炭窒化チタン系サーメット基体の表面に、 組成式:[Ti1-(X+Y+Z)AlXTaYVZ]N(ただし、
いずれも原子比で、Xは0.25〜0.7、Yは0.0
1〜0.3、Zは0.05〜0.3を示す)を満足する
TiとAlとTaとVの複合窒化物からなる硬質被覆層
を、1〜15μmの平均層厚で物理蒸着してなる、切粉
に対する表面潤滑性にすぐれた表面被覆超硬合金製切削
工具。
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