JP2003018808A - 車両用交流発電機 - Google Patents

車両用交流発電機

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JP2003018808A JP2001194407A JP2001194407A JP2003018808A JP 2003018808 A JP2003018808 A JP 2003018808A JP 2001194407 A JP2001194407 A JP 2001194407A JP 2001194407 A JP2001194407 A JP 2001194407A JP 2003018808 A JP2003018808 A JP 2003018808A
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照本  進
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Abstract

(57)【要約】 【課題】車両用交流発電機の高出力化を図る。 【解決手段】回転子と固定子と該固定子の発熱を冷却す
る液冷式冷却手段とを備え、前記回転子は、先端部分に
複数個の爪部が形成され対向配置された1対の爪形磁極
と、該爪形磁極を磁化させる界磁巻線と、前記爪形磁極
の爪部間に固定された補助励磁用の永久磁石と、前記爪
磁極の爪部端面から円周方向に延びるつば状の磁石固定
部を有し、前記固定子は、前記回転子と所定の間隔を隔
てて配置され、前記爪形磁極の磁化により交流電圧を発
生させる固定子巻線を有する車両用交流発電機におい
て、前記磁石固定部を前記回転子の主ギャップ面よりも
半径方向内側に離間した位置に設け、該磁石固定部の半
径方向内側に前記永久磁石を配置し、該磁石固定部の半
径方向外側に磁気的空隙部を形成した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は車両用交流発電機に
係り、特に自動車用発電装置として用いるのに好適な車
両用交流発電機に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の車両用交流発電機として、次のよ
うな公知例がある。まず、第一の公知例では回転子の冷
却を促進するために、特開2000−125513号公
報に記載されているように、界磁巻線の発熱を固定側に
伝えやすいように固定側に凸部機構を配置したものが開
示されている。
【0003】第二の公知例では、爪磁極間に永久磁石を
配置する場合に爪形磁極の内周側に磁石固定部を設け
て、非磁性体の磁石保持器に永久磁石全体が覆われたも
のを爪磁極間に配置したものが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記、第一の従来技術
においては、永久磁石を爪磁極間に配置するための磁石
固定部分が永久磁石上部に必要なため、永久磁石が無い
爪形状に比べ爪磁極の表面積が大きくなる問題点があ
る。その結果、爪磁極表面で発生する渦電流損失が大き
くなる問題が発生する。また、固定子コイルに近いとこ
ろに配置されるため、固定子からの銅損による熱を受け
やすく、永久磁石にネオジム磁石を用いた場合には、熱
減磁の可能性が発生する。また、磁石位置を単純に下げ
ようとすると、磁石固定部の径方向厚みが大きくなり、
極間部の対向面積が増加するために、漏れ磁束が大きく
なる問題点が発生する。逆に、爪磁極の爪表面積を同じ
ようにした場合には、磁石の磁化方向長さが長くなり着
磁がし難い問題が発生してくる。また、磁石が大きくな
る問題が発生しコストアップにつながる。また、第二の
従来技術に於いては回転子の発熱を固定側に伝えても熱
伝導で水路に熱を伝えるためには水路までの距離が長
く、回転子から水路までの熱抵抗は余り良くないと考え
られる。
【0005】一方、液冷式車両用交流発電機は、冷却手
段にファンを用いないことから機内を密閉構造にするこ
とが可能である。この場合、回転子の発熱による冷却に
は空気を介して熱伝導によるものが主とした熱伝達経路
となる。そのために、温度上昇を抑えるためには回転子
部での発熱を低減する必要がある。回転子の熱源として
は、界磁巻線の銅損と回転による機械損、爪磁極表面で
発生する渦電流損がある。高速回転になると、この渦電
流損失が大幅に増大する。そのために、渦電流損失の低
減が重要となる。
【0006】本発明の第一の目的は、永久磁石を爪磁極
間に配置する場合、永久磁石の適切な固定方法及び永久
磁石の磁束の利用率向上を図った車両用交流発電機を提
供することにある。
【0007】本発明の第二の目的は、液冷式車両用交流
発電機において、高速回転における渦電流損失の増大を
抑えることのできる車両用交流発電機を提供することに
ある。
【0008】また、本発明の第三の目的は、回転子の発
熱を水路に効率良く伝えることのできる車両用交流発電
機を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、第一、第二の
目的を達成するために、固定子の爪形磁極の爪部間に固
定された補助励磁用の永久磁石と、前記爪磁極の爪部端
面から円周方向に延びるつば状の磁石固定部を有する車
両用交流発電機において、前記磁石固定部を前記回転子
の主ギャップ面よりも半径方向内側に離間した位置に設
け、該磁石固定部の半径方向内側に前記永久磁石を配置
し、該磁石固定部の半径方向外側に磁気的空隙部を形成
したことを特徴とする。
【0010】なお、磁石固定部は、主ギャップ面すなわ
ち爪磁極表面よりもギャップ長の2〜3倍の距離離れて
内径側に設けるのが望ましい。また、磁石固定部を部分
的に設けることで、極間の漏れ磁束を低下させ、出力の
向上を図ることができる。
【0011】また、永久磁石の保持部材に、複合磁性材
料を用いて永久磁石の磁化方向に接する面は磁性体、直
角方向は非磁性体とすることで、永久磁石の利用効率向
上を可能にしている。
【0012】上記の第三の目的を達成するために、本発
明では、固定子のプーリ側軸受け外側の回転子近傍に冷
却水が循環する冷却促進部を設けたものである。これに
より、回転子の発熱を冷却水に効率良く伝達させること
が出来るものである。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例として冷却
手段を完全液冷構造とした車両用交流発電機の1例を図
1ないし図8により説明する。図1は車両用交流発電機
の縦断面図であり、図2は水路の構造を示し、図3にエ
ンジンを含めた駆動系及び冷却系統の全体構成を示す。
まず、第1の実施例になる車両用交流発電機の構成につ
いて説明する。
【0014】図1は冷却手段を完全液冷構造とした車両
用交流発電機の1例を示したものである。エンジンの動
力を受けるプーリ102はシャフト101に固定され、
2個のベアリングで支持されている。その2つのベアリ
ングの中心部には回転子1が配置され、プーリ102の
回転に同期して回転するようにシャフト101に固定さ
れている。
【0015】回転子1には、爪形磁極108が設けられ
ており、爪形磁極108の内周側には界磁巻線107が
配置されている。また、回転子1の爪磁極間には高出力
化を可能とする補助励磁用のネオジム永久磁石117が
設けられている。先に述べた界磁巻線107には、回転
子1に設けられたスリップリング110にブラシ111
が摺動可能に取り付けられており、直流電流を通電でき
るように構成されている。永久磁石117の極性は界磁
巻線107を励磁したときに作る磁極と同極が向かい合
うように着磁されたものが配置される。
【0016】固定子2には、固定子コア105に三相の
固定子巻線106が巻かれており、固定子コア105の
外周部には水路114を設けたハウジング115が配置
されている。フロントブラケット103には、回転子1
の軸方向から熱伝導し易いように、水路114を設けた
冷却促進部118が設けられている。この冷却促進部1
18は回転子と僅かなギャップ長を介して配置されてい
る。また、反プーリ側の水路114はハウジング115
に水路となる溝を設けたものにリアプレート112で蓋
をすることで密閉水路を構成するようになっている。全
体の水路としては、ハウジング115及びフロントブラ
ケット103、リアプレート112により成り立ってお
り、直列流路を構成している。
【0017】よって、ハウジング115内部で発生する
磁気音、風音は外部には漏れ難い構造となっている。反
プーリ側のリアブラケット104の内部には発電電圧を
調整するための、ICレギュレータ113と整流素子が
挿入されたダイオードマイナスフィン109−と、ダイ
オードプラスフィン109+が配置されている。このダ
イオードマイナスフィン109−は先に述べたリアプレ
ート112の上に配置され、その上にダイオードプラス
フィン109+が配置されている。ここの説明では整流
素子には、ダイオードを用いた説明を行ったが、MOS
-FETのブリッジを用いても同様の性能は得られる。
【0018】先にも述べたが、ハウジング115の反プ
ーリ側には整流素子を冷却するための水路114が設け
られており、その水路114はリアプレート112によ
って水路が閉じられた構成となっている。先にも述べた
ように整流素子は、このリアプレート112に固定され
ている。リアブラケット104は整流素子の配置された
ダイオードマイナスフィン109−及びダイオードプラ
スフィン109+及びICレギュレータ113を覆うよ
うにハウジング115に固定されている。回転子1の冷
却は、回転子1の軸方向端面とフロントブラケット10
3及びハウジング115の反プーリ側面との接する面に
熱伝導が良好に行えるように冷却促進部118が配置さ
れている。この冷却促進部118は回転子1に僅かなギ
ャップで面対向するような形状を成している。また、先
にも説明したように、その冷却促進部には水路114が
設けられている。
【0019】回転子1の爪磁極間には先にも述べたよう
に補助励磁用の永久磁石117及び界磁巻線107が配
置されているが、残りの空間には樹脂116が充填され
ている。また、固定子2に於いても固定子巻線106と
ハウジング115の隙間及び固定子コア105内の巻線
間にも樹脂116が充填されている。どちらの樹脂11
6も巻線で発生した損失による発熱を水路114に伝え
やすくするものである。回転子1の樹脂は爪磁極間に配
置した永久磁石の防湿と割れた場合の飛散防止及び永久
磁石の固定にも効果がある。回転子1の樹脂は高速回転
に耐えられなければならないため、固定子2に用いる樹
脂とは材質が異なっても良い。
【0020】水路114はエンジン冷却水を分岐して循
環する構成である。図2は、水路の構造を示したもので
あり、(A)はジャケット34の平面図、(B)はFブ
ラケット10の正面を示している。ジャケット34に
は、冷却水に入口と出口が構成されており、入口側を吸
水口223、出口側を排水口225で示している。冷却
水は、吸水口223から入り矢印39のように直列流路
に流れ排水口225から出ていく。
【0021】Fブラケット10では水流が折り返せるよ
うに折り返し水路36が形成されている。また、このと
きFブラケット10の内径側にも水路が形成されてお
り、冷却水は、環状の仕切り部38を越えてFブラケッ
トの内径側まで通る構造になっている。
【0022】次に、図3において、エンジン300を含
めた駆動系及び冷却系統の全体構成を示す。車両用交流
発電機100は、固定部110を介してエンジン300
に固定されている。車両用交流発電機100の出力軸に
固定されたプーリ1とエンジン300のクランクプーリ
302がベルト303で接続されている。
【0023】エンジン300の冷却水を冷却するための
ラジエータ210に対して、車両用交流発電機100に
は並列に循環水路が構成されている。すなわち、ラジエ
ータ210に並列に、エンジン300の冷却水循環水路
と車両用交流発電機100の冷却水循環水路114と
が、それぞれ最適の冷却能力を発揮するように独立して
設けられている。この循環水路における水の循環は、エ
ンジン300の回転に連動するウォータポンプ220に
よってなされる。循環水路は、ラジエータ210の出口
211側に接続されたポンプ220と吸水ホース22
2、ラジエータ210の入口212側に接続された排水
ホース224を含んでいる。
【0024】次に、車両用交流発電機100の動作につ
いて説明する。まず、界磁巻線107がブラシ111と
スリップリング110を介して直流励磁された状態で、
プーリ102が回転するとプーリ102に取り付けられ
た回転子1の爪形磁極108が回転し、固定子巻線10
6に3相の電圧が発生する。この3相電圧を先に述べた
ダイオードマイナスフィン109−及びダイオードプラ
スフィン+に配置した整流素子ブリッジによって全波整
流することで、直流電圧に変換することが可能となる。
【0025】先に述べたハウジング115に配置した水
路114は、固定子コア105の外周に配置されてお
り、発電時に発生する固定子コア105の鉄損や固定子
巻線106で発生する銅損による温度上昇を抑えるよう
に熱の伝達手段として用いられている。この水路114
は整流素子の冷却用水路114及びフロントブラケット
103の冷却促進部118に設けた水路114と直列に
接続されている。回転子1の界磁巻線107の銅損によ
って発生する発熱は先に説明した回転子1の軸方向端面
に設けた冷却促進部118により熱交換を行いフロント
ブラケット103に設けた水路114に熱が伝わる構成
である。よって水路114は回転子全体を覆うように配
置されている。このように、回転子1の全体を覆うよう
に水路114を配置することで回転子1の冷却を良好に
行えるだけではなく、磁気音の遮音等にも効果がある。
【0026】図4は、本発明の回転子1を軸方向から見
た図を示したものである。手前の爪形磁極108をN極
側、反対側をS極磁極として説明する。本発明の爪形磁
極形状は、N極側爪形磁極108NとS極側爪形磁極1
08Sは全く同じ形状で構成されている。永久磁石11
7の飛び出しを防止するために、爪形磁極108の内周
側には磁石固定部119が回転子の最外周面よりd1の
距離だけ内周側に設けられている。また、磁石固定部の
厚みはh1となっている。
【0027】ここで、磁石固定部119を爪磁極表面に
設けない理由は、爪磁極表面付近に磁気的空隙部を形成
するためである。爪磁極表面では回転によりスロットリ
プルによる渦電流損失が発生しているこの渦電流損失
は、磁束密度の変動の大きさや回転速度によって大きく
なる。また、爪磁極表面積が大きい場合には損失が比例
して大きくなる。そこで、磁石固定部を内径側に配置
し、爪磁極表面付近に磁気的空隙部を形成することで、
この渦電流損失を低減するために爪磁極表面積を狭めら
れる効果がある。このとき、磁石固定部がスロットリプ
ルの影響を受けにくいように、主ギャップ長に対して2
〜3倍の距離離して配置している。このとき爪形磁極1
08の根元部分の磁極幅をWps、磁極間幅をWsとす
ると本発明の爪形磁極形状は、Wps>Wsの関係を成
していることを特徴とする。
【0028】また、このとき回転子の爪形磁極のスキュ
ーは1スロットピッチスキューを採用している。この、
磁石固定部119の径方向の厚みh1は1.0〜2.5
mm程度としており回転時に永久磁石が飛び出さないよ
うにするだけではなく、界磁巻線107に励磁を加えな
い状態で永久磁石117から固定子巻線106に漏れる
漏れ磁束を低下する効果が有る。この磁石固定部119
の径方向厚みh1を今回1.0〜2.5mmとしたが、
厚みをこれ以上大きくすると、爪形磁極間での漏れ磁束
が大きくなり有効磁束が減少する。また、極間に配置で
きる永久磁石の厚みが薄くなり有効磁束が減少する。
【0029】図5は、爪形磁極間及び爪形磁極根元部に
永久磁石を配置する場合について示したものである。今
までの説明では、爪形磁極間に配置する永久磁石117
は略長方形の形状であったが、根元部分に配置する永久
磁石123は爪形磁極間根元部と同じ形状で構成され、
爪形磁極内周側に磁石固定部124を設け、この部分で
飛び出しを防止している。この扇形形状の永久磁石12
3の磁化方向は径方向であり、N極側の爪形磁極間に配
置する場合にはS極が外周側で内周側はN極となる。ま
た、爪形磁極の根元部形状は配置する永久磁石123と
接する面が大きくなるように角形形状とし、配置する永
久磁石123の上面端部が磁石固定部124に接する構
造である。
【0030】以上の説明は、永久磁石123の上面には
カバー等の説明は省略したが外周側に非磁性体のカバー
を配置しても良い。また、爪形磁極108と永久磁石1
23の接する面は防食処理を行うことで耐久性を向上出
きる効果がある。ここで説明した、爪磁極端部に永久磁
石123を配置した場合の特徴は、以下の通りである。
(1)界磁巻線の減磁界を受けにくい。(2)固定子の
発熱部から遠く、回転子の端部に配置されるため雰囲気
温度が低い。(3)爪磁極の起き上がりが無く磁石の固
定に安定している。(4)発電時の電機子反作用による
減磁界を受けにくい。(5)渦電流が流れにくい場所に
あり損失を発生しにくい。等である。
【0031】図6は、爪形磁極間に永久磁石117を配
置した図を示したものである。N極側の爪形磁極を10
8N、S極側の爪形磁極を108Sとし、その内周側で
あって、内径側に永久磁石117の飛び出しを防止する
ための磁石固定部119を配置したものである。ここ
で、磁石固定部119を爪磁極の最外周に設けた場合に
は、回転中のスロットリプルによる渦電流が発生しやす
くなるために、渦電流による損失が発生し、爪形磁極の
温度上昇となり極間に配置した永久磁石が減磁する問題
が発生する可能性がある。また、極間に配置される永久
磁石が固定子に設けられた固定子コイルで発生する銅損
による温度上昇で温度的に高い場所に近いところに置か
れるため、同様に熱減磁の問題が発生しやすくなると考
えられる。
【0032】本発明では、爪磁極表面で発生する渦電流
損失を低減できるように、磁石固定部119を回転子の
最外周面に配置するのではなく、爪磁極表面付近に磁気
的空隙部を形成してスロットリプルの磁束変動を受けに
くいように主ギャップ面より内径側に設けたものであ
る。また、磁石固定部119は図からも分かるように爪
表面とはなだらかに繋がるのではなく、比較的階段状に
近い形状としている。
【0033】図7は、図6に示した爪形磁極間に永久磁
石を配置した場合のA−A'断面について示したもので
ある。N極側の爪形磁極108NとS極側の爪形磁極1
08Sの間には永久磁石117が配置されている。永久
磁石の固定用に設けた磁石固定部119は爪形磁極の最
外周面よりもd1離れて配置する。また、磁石固定部1
19の厚みは永久磁石117が最高回転数で回転子が回
転した場合にも永久磁石117が外周側に飛び出さない
ような機械的強度を持たせた厚みh1となる。そこで、
この厚みh1は1.0〜2.5mm程度で構成される。
【0034】また、磁石固定部の幅t1についても厚み
h1とほぼ同じ寸法である。先に説明した磁石固定部上
面と回転子の最外周面との距離d1については、固定子
のスロットリプルの影響を受けにくいように、主ギャッ
プ長をg1とした場合g1の2〜3倍の距離離せば磁束
変動の影響を受けにくくなるためこの近辺の値が望まし
い。また、磁気音に関しては爪磁極表面には従来用いら
れているベベルを設けた方が良く、ベベルの外周側から
階段状に1段落として磁石固定部119を配置するのが
望ましい。また、爪磁極表面の形状において上面側w1
を下面側w2よりも狭くして、渦電流の流れる面積を低
減することで、渦電流損失低減を図ることも可能であ
る。
【0035】図8は今までに説明してきた回転子の外観
を示したもので、磁石固定部が爪磁極表面ではなく、内
径側に配置されている様子がよく分かる。詳細な説明は
省略する。
【0036】図9は、図8に示した磁石固定部119を
爪形磁極の両側に連続して設けるのではなく、部分的に
2ヶ所に分けて設けたものである。図9の例ではN極側
の爪形磁極108Nの左側磁石固定部119N−L1、
119N−L2、S極側爪形磁極108Sの右側磁石固
定部119S−R1、119S−R2、左側磁石固定部
119S−L1、119S−L2である。この、爪形磁
極108の内周側で内径側に設けた磁石固定部119に
補助励磁用の永久磁石117(図示せず)は固定され
る。
【0037】図示しないが、爪形磁極の左右に設ける磁
石固定部119の数が異なった場合についても、同様の
効果があることは言うまでもなく、千鳥状に取り付けた
場合には、対向する磁石固定部からの距離を広げ、固定
子巻線のインダクタンスを低下させるようにできる。爪
形磁極の先端部と根元部分は省略することが出来ないた
め、分割した場合には、先端部と根元部の最低2個は必
要である。
【0038】以上、磁石固定部分を分割した内容につい
て説明したが、この分割の目的は漏れ磁束の低減と固定
子巻線のq軸インダクタンスの低減を狙ったもので、結
果的には出力電流の向上効果がある。また、図8〜図9
では爪形磁極根元部に配置する永久磁石123の固定部
については図を省略したが、磁石固定部を設けて永久磁
石123を配置しても良い。
【0039】次に、図10を用いて爪形磁極間に配置す
る永久磁石117の外周部に複合磁性材料からなる磁石
保持部材について説明する。図10は、爪形磁極間に永
久磁石117を配置した場合の軸中心部での断面図を示
したものである。本発明の複合磁性材料は、磁性体の性
質と非磁性体の性質を同じ金属上に形成できるもので、
例えば13Cr−Feや17Cr−Fe等のものがあ
る。これらは、本来磁性体の性質を持つもので、局部的
に熱を加えて温度が1、100℃程度になると非磁性体
の性質を示すものである。また、材料によっては逆の性
質を示すものもある。本発明では、磁性体と非磁性体の
異なった性質を同一の板で現れれば良い。本実施例で
は、永久磁石117の底面を除く全ての面を先に説明し
た複合磁性材料で覆い、永久磁石の上面のみ熱処理によ
り非磁性体とする。
【0040】また、永久磁石の磁化方向の面は磁性体で
あり、磁石保持部材120は永久磁石にほぼ完全に接す
るような形状である。このように、永久磁石117の磁
化方向面を磁性体とすることで磁石の磁束は、磁性面を
介して爪形磁極に接するため、磁石保持部材が無い場合
と比べると有効磁束は増加する。また、永久磁石117
の上面は非磁性体としているため永久磁石の上面部での
漏れ磁束は増加しない。
【0041】また、図10の下側に示した図は、爪形磁
極の中心近辺で爪形磁極と磁石保持部材120に囲まれ
た永久磁石の断面を示したものであり、爪形磁極の下面
に隙間が空いているものを示している。爪形磁極の根元
に近い部分で有ればどちらか一方の爪形磁極の下面には
隙間は空かないが、反対側の爪形磁極の下面は大きく空
いてしまう。図示しないが、この爪形磁極の下面に出来
る隙間に樹脂を充填してもよい。爪形磁極の下面に相当
する部分は爪形磁極が外周部にあるため、飛び出すこと
はない。
【0042】また、磁石保持部材120を連結しないで
個々の永久磁石に一対一で対応した保持部材を用いて
も、磁石の磁化方向面に相当する複合磁性材料の磁気特
性は磁性体の性質とし、磁化方向と直角面は非磁性体の
性質を示すようにしている。このように単体で、永久磁
石117と磁石保持部材120を形成しても、先に説明
したように爪磁極間に樹脂116を充填して、界磁巻線
107での発熱を樹脂116を介して爪形磁極に伝えや
すくしている。
【0043】図10で説明した磁石保持部材の形状は永
久磁石の形状に合わせた場合について説明したが、爪形
磁極の下部に当たる部分に空間が空かないように構成し
たものを図11に示す。図10及び図11に示した磁石
保持部材120の爪形磁極との接する部分は磁性体で構
成される。図11の場合も、磁石保持部材120と界磁
巻線107との間には熱伝導性の良い樹脂等を挿入して
も良い。
【0044】以上説明したように、回転子の冷却を促進
できるように冷却促進部118に水路114を設けるこ
とで、出力向上の効果がある。また、回転子の爪磁極間
に永久磁石を固定する磁石固定部を爪磁極表面から離し
て配置することで、爪磁極表面で発生する渦電流損失を
低減できる。また、回転子の内径側を樹脂モールドする
ことで、軸方向面に界磁巻線の熱が伝えやすくなり出力
の向上効果及び、磁気音の低減が可能となる。また、永
久磁石固定部を分割して設けることで漏れ磁束の低減効
果、及びq軸インダクタンスの低減が図れ出力の向上効
果がある。また、永久磁石の固定位置を回転子の外周面
から主ギャップ長の2〜3倍の距離離すことで、無励磁
時の固定子への漏れ磁束を低減できバッテリーの加充電
を防止することが出来る。また、永久磁石の保持部材を
磁性体と非磁性体の2つの性質を持つ複合磁性材料とす
ることで、漏れ磁束低減により出力向上効果がある。
【0045】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば爪磁
極内周側に設ける補助励磁用の永久磁石の固定部分を、
爪磁極の外周面から、渦電流の影響を受けにくい位置に
設けると共に、永久磁石の位置を固定子から離せること
で固定子の発熱による熱を受けにくく出来る。また、爪
磁極表面形状を狭くすることも可能となり高速回転時の
渦電流損失を低減でき高速時の出力向上効果がある。ま
た、回転子の内径側を樹脂モールドすることで、騒音低
減の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例になる車両用交流発電機
の縦断面図である。
【図2】本発明の両用交流発電機における冷却水路の構
造を示す図である。
【図3】本発明の実施例における、エンジンを含めた駆
動系及び冷却系統の全体構成を示す図である。
【図4】本発明の実施例における回転子に設けた爪形磁
極を軸方向から見た図である。
【図5】本発明の実施例における永久磁石固定部の説明
図である。
【図6】本発明の実施例における永久磁石の配置の説明
図である。
【図7】図6のA−A'断面を示したものである。
【図8】本発明の実施例における回転子の外観を示した
図である。
【図9】図8の回転子に対する、変形例を示す図であ
る。
【図10】本発明の他の実施例における永久磁石磁石保
持部材について説明する図である。
【図11】本発明の他の実施例における永久磁石磁石保
持部材について説明する図である。
【符号の説明】
1…回転子、2…固定子、101…シャフト、102…
プーリ、103…Fブラケット、104…リアブラケッ
ト、105…固定子コア、106…固定子巻線、107
…界磁巻線、108…爪形磁極、109+…ダイオード
プラスフィン、109−…ダイオードマイナスフィン、
110…スリップリング、111…ブラシ、112…リ
アプレート、113…ICレギュレータ、114…水
路、115…ハウジング、116…モールド樹脂、11
7…永久磁石、118…冷却促進部、119…磁石固定
部、120…磁石保持部材、121…非磁性部、122
…磁性部、123…永久磁石、124…磁石固定部。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 照本 進 茨城県ひたちなか市大字高場2520番地 株 式会社日立製作所自動車機器グループ内 (72)発明者 高野 雅美 茨城県ひたちなか市大字高場2520番地 株 式会社日立製作所自動車機器グループ内 Fターム(参考) 5H609 BB05 BB13 BB19 PP02 PP05 PP06 PP07 PP09 PP16 QQ02 QQ04 QQ12 QQ13 QQ16 QQ18 QQ23 RR26 RR37 RR42 RR46 RR52 RR63 RR67 RR70 RR73 5H619 AA11 BB02 BB17 PP01 PP02 PP04 PP08 PP12 PP14 5H621 BB07 GA07 HH01 JK08 JK11 JK13 5H622 AA06 CA02 CA07 CA10 CB04 PP03 PP07 PP11 QA08

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】回転子と固定子と該固定子の発熱を冷却す
    る液冷式冷却手段とを備え、前記回転子は、先端部分に
    複数個の爪部が形成され対向配置された1対の爪形磁極
    と、該爪形磁極を磁化させる界磁巻線と、前記爪形磁極
    の爪部間に固定された補助励磁用の永久磁石と、前記爪
    磁極の爪部端面から円周方向に延びるつば状の磁石固定
    部を有し、前記固定子は、前記回転子と所定の間隔を隔
    てて配置され、前記爪形磁極の磁化により交流電圧を発
    生させる固定子巻線を有する車両用交流発電機におい
    て、 前記磁石固定部を前記回転子の主ギャップ面よりも半径
    方向内側に離間した位置に設け、該磁石固定部の半径方
    向内側に前記永久磁石を配置し、該磁石固定部の半径方
    向外側に磁気的空隙部を形成したことを特徴とする車両
    用交流発電機。
  2. 【請求項2】回転子と固定子とを備え、前記回転子は、
    先端部分に複数個の爪部を形成した1対の対向配置され
    た爪形磁極と、前記爪形磁極を磁化させる界磁巻線とか
    ら構成され、前記固定子は、前記回転子と所定の間隔を
    隔てて配置され、前記爪形磁極の磁化により交流電圧を
    発生させる固定子巻線有し、前記固定子の発熱を冷却す
    る液冷式冷却手段を備えた車両用交流発電機において、 前記磁石固定部を前記回転子の主ギャップ面よりも半径
    方向内側に離間した位置に設け、該磁石固定部の半径方
    向内側に前記永久磁石を配置し、該磁石固定部の半径方
    向外側に磁気的空隙部を形成したことを特徴とする車両
    用交流発電機。
  3. 【請求項3】回転子と固定子とを備え、前記回転子は、
    先端部分に複数個の爪部を形成した1対の対向配置され
    た爪形磁極と、隣接する前記爪形磁極の間に配置された
    永久磁石と、前記爪形磁極を磁化させる界磁巻線とから
    構成され、前記固定子は、前記回転子と所定の間隔を隔
    てて配置され、前記爪形磁極の磁化により交流電圧を発
    生させる固定子巻線有し、前記固定子の発熱を冷却する
    液冷式冷却手段を備えた車両用交流発電機において、 前記回転子の主ギャップ面よりも半径方向内側に離間し
    て前記磁石固定部を設け、該磁石固定部の半径方向内側
    に前記永久磁石を配置し、該磁石固定部の半径方向外側
    に磁気的空隙部を形成し、 該永久磁石の外周面に、複合磁性材料からなる磁石保持
    部材を連続的に設け、前記永久磁石の最外周部分に相当
    する部分を非磁性体とし、該永久磁石の磁化方向面は磁
    性体の性質を有することを特徴とする車両用交流発電
    機。
  4. 【請求項4】請求項1ないし3のいずれかに記載の前記
    磁石固定部の最外周部は、主ギャップ面から主ギャップ
    長の2〜3倍の距離離れて、内周側に配置されることを
    特徴とする車両用交流発電機。
  5. 【請求項5】請求項4に記載の車両用交流発電機におい
    て、前記磁石固定部の最外周部は、前記爪磁極外周面と
    階段状に繋がっていることを特徴とする車両用交流発電
    機。
  6. 【請求項6】請求項1ないし5のいずれかに記載の前記
    磁石固定部は、一片の爪磁極端面に複数個に分けて配置
    されていることを特徴とする車両用交流発電機。
  7. 【請求項7】請求項1ないし5のいずれかに記載の回転
    子において、前記爪形磁極根元部分の形状は角形形状で
    あり、その部分の内周側空間部に前記磁石固定部を設け
    磁極間とほぼ同形状の前記永久磁石を配置したことを特
    徴とする車両用交流発電機。
  8. 【請求項8】先端部分に複数個の爪部を形成した1対の
    対向配置された爪形磁極と、前記爪形磁極を磁化させる
    界磁巻線と、前記爪磁極間に設けられた補助励磁用の磁
    石固定部から構成される回転子と、前記回転子と所定の
    間隔を隔てて配置され、前記爪形磁極の磁化により交流
    電圧を発生させる固定子巻線と前記回転子の軸を支持す
    る一対の軸受けとを有する固定子と、前記回転子の軸の
    一方に固定されたプーリとを備えた車両用交流発電機に
    おいて、 固定子の発熱を冷却する液冷方式の冷却手段を設け、該
    冷却手段は、前記固定子のプーリ側軸受け外側の回転子
    近傍に冷却水が循環する冷却促進部を設けたことを特徴
    とする車両用交流発電機。
  9. 【請求項9】請求項1ないし8のいずれかに記載の車両
    用交流発電機において、前記爪形磁極間で磁石に接する
    面に防食塗料を塗布した爪形磁極間に、前記永久磁石を
    配置したことを特徴とする車両用交流発電機。
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