JP2003012275A - クレーンの免震構造 - Google Patents

クレーンの免震構造

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JP2003012275A JP2001196149A JP2001196149A JP2003012275A JP 2003012275 A JP2003012275 A JP 2003012275A JP 2001196149 A JP2001196149 A JP 2001196149A JP 2001196149 A JP2001196149 A JP 2001196149A JP 2003012275 A JP2003012275 A JP 2003012275A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 少数で且つ簡単な構造の免震機構により地震
時の地面の強い振動に対して免震可能なクレーンの免震
構造を提供する 【解決手段】 コンテナクレーン2において、脚部構造
5の左側構面30と右側構面31は、夫々前後1対の柱
部材40,41と、柱部材40,41の下部同士を連結
する水平連結部材42と、この水平連結部材42の長さ
方向途中部を柱部材40,41の上端部に連結する1対
の斜材43,44とを備え、各構面30,31におけ
る、斜材43,44の下端部45を結合する斜材結合部
45と水平連結部材42とを連結する連結部に設けた免
震機構46であって、斜材結合部45と水平連結部材4
2との間の少なくとも前後方向の相対移動を許容すると
共に、少なくとも左右方向の相対移動を規制可能な免震
機構46を設けたので、少数で簡単な構造の免震機構に
より地震時の地面の強い振動に対して免震できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コンテナクレーン
等のクレーンの免震構造に関し、特に、少数で且つ簡単
な構造の免震機構によって地震時の免震を可能にしたも
のに関する。
【0002】
【従来の技術】 従来、コンテナ等種々の荷物を荷役す
るためには、橋形クレーンや門形クレーン等様々な形式
のクレーンが用いられる。例えば、図8に示すように、
陸上のコンテナヤードとコンテナ船との間でコンテナを
荷役する際に用いられ、門形クレーンの一種であるコン
テナクレーンについて説明すると、コンテナクレーン1
00は、コンテナ101を陸上と船との間で移動させて
荷役するための前後方向(陸上と海上を結ぶ方向)に延
びる水平なガーダー102及び起伏式のブーム103
と、ガーダー102及びブーム103を支持する脚部構
造104とを備え、脚部構造104の下端部にはコンテ
ナヤードのレール上を走行する4組の走行装置105が
連結され、走行装置105によりコンテナクレーン10
0はコンテナヤード内を移動可能である。ガーダー10
2とブーム103においてはコンテナ101をスプレッ
ダ106を介してロープで吊り下げて保持するトロリ1
07が前後方向に移動可能であり、コンテナクレーン1
00はトロリ107を移動させてコンテナヤードとコン
テナ船の間でコンテナ101を荷役する。
【0003】ところで、前記の脚部構造104は、左右
1対の構面で構成されるが、各構面は前後1対の柱部材
108、前記前後1対の柱部材108の下部同士を連結
する水平連結部材109、及び柱部材108と水平連結
部材109との連結部と柱部材上端部とを連結する斜材
110などで構成されている。前記のガーダー102及
びブーム103は、前後方向に長大な構造を有し、脚部
構造104がたわみ易いために、斜材110などにより
コンテナクレーン100の前後方向の剛性を高めてい
る。このため、コンテナクレーン100の通常使用状態
では、ガーダー102及びブーム103が揺れにくく、
安定してコンテナ101を荷役できるが、剛性が高いた
めに固有振動周期が短く(1〜2秒)、コンテナクレー
ンの一般的な支持地盤における地震時の振動の卓越周期
に比較的近い周期を有しているため、地震により前後方
向に強い揺れが生じたときには、共振状態に陥りやす
く、構造体各部に発生する応力及び構造体支持部の反力
が大きくなるという問題がある。
【0004】前記の問題を解決するために、種々の免震
構造が提案されている。例えば、特開2000−143
153公報に記載のコンテナクレーンにおいては、クレ
ーンの脚部構造と走行装置との間に積層ゴムを有する免
震装置を設けている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】 前記公報のコンテナ
クレーンにおいては、全ての走行装置に免震装置を設け
る必要があるため多数の免震装置が必要であり、さらに
脚部構造と走行装置との間に免震装置を設けるため、免
震装置の構造が複雑になり、かつ免震装置は走行装置よ
り上のクレーン全体構造を支持可能な大きな強度が必要
である。本発明の目的は、少数で簡単な構造の免震機構
により、地震時の地面の強い振動に対して免震可能なク
レーンの免震構造を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】 請求項1のクレーンの
免震構造は、水平なガーダーと、ガーダーを支持する脚
部構造とを備えたクレーンにおいて、前記脚部構造は、
相互に連結された左側構面及び右側構面を備え、各構面
は、前後1対の柱部材と、それら柱部材の下部同士を連
結する水平連結部材と、この水平連結部材の長さ方向途
中部を前後の柱部材の上端部に連結する1対の斜材とを
備え、前記前後1対の柱部材の上端部同士は、1又は複
数の部材を介して相互に連結され、前記各構面におけ
る、1対の斜材の下端部を結合する斜材結合部と水平連
結部材とを連結する連結部に設けた免震機構であって、
斜材結合部と水平連結部材との間の少なくとも前後方向
の相対移動を許容すると共に、少なくとも左右方向の相
対移動を規制する左右移動規制手段を備えた免震機構を
設けたことを特徴とするものである。
【0007】クレーン(例えば門形クレーン)の脚部構
造は、左側構面及び右側構面の各構面において、前後1
対の柱部材と、それら柱部材の下部同士を連結する水平
連結部材と、水平連結部材と柱部材上端部を連結する1
対の斜材により、前後方向(陸上と海上を結ぶ方向)に
剛性を高めるように構成されている。また、前後1対の
柱部材の上端部同士は、1又は複数の部材を介して相互
に連結されている。なお、各構面の前後1対の柱部材の
上端部同士の連結方法は、1本の部材を設けて直接連結
することでも良いが、コンテナクレーンでは、前側の左
右一対の柱部材の上端部同士を連結する前側上部左右連
結部材と、後側の左右一対の柱部材の上端部同士を連結
する後側上部左右連結部材とを設け、これら前後1対の
上部左右連結部材間に前後方向に伸びる水平なガーダー
を固定することにより、各構面の前後1対の柱部材の上
端部同士の連結を行なうことが多い。このように構成さ
れた各構面は、力学的に安定し、前後方向に高い剛性を
有している。
【0008】免震の原理は、構造体と地面との間の相対
移動を可能にし、地面の振動が構造体に伝わりにくくす
るものであるが、構造体と地面との間で相対移動を生じ
させ且つ復元力を有する免震機構を設けることが多い。
このように免震機構を設けた場合、免震機構を含めた構
造体全体の固有周期を、当該構造体支持地盤に地震によ
り発生する振動の卓越周期よりなるべく長くすることに
より、共振点から極力離れ、その結果構造体に励起され
る加速度の振幅を低減させるものである。このような免
震の原理により免震機構が機能すると、地震時に構造体
各部に発生する応力及び構造体支持部の反力を小さくす
ることができる。
【0009】従って、請求項1のクレーンの免震構造
は、左右各構面において、1対の斜材の下端部を結合す
る斜材結合部と水平連結部材とを連結する連結部に、斜
材結合部と水平連結部材との間の少なくとも前後方向の
相対移動を許容する免震機構を設けることにより、構面
内の前後方向剛性を低下させてクレーンの前後方向固有
周期を長くし、免震の原理により免震の機能が働くよう
に構成したものである。
【0010】前記免震機構は、水平連結部材の途中部
(できるだけ中央部付近が望ましい)の1箇所に設けれ
ば良い。従って、免震機構は前後2本の斜材と1本の水
平連結部材の交点、即ちトラス構造の交点に設けること
になり、このように構成した請求項1の免震構造の免震
機構には、構造力学から明らかなとおり基本的な応力と
しては前後方向剪断力しか発生せず、免震機構の設計が
容易になるという利点を有している。勿論、実際にはそ
の他の応力も発生するが、これらは二次的な応力であっ
て値は小さく、免震機構の設計にはあまり影響しない。
仮に、図8に示すような従来のクレーンの脚部構造にお
ける1本の斜材110の下端部と水平連結部材109と
の連結部に免震機構を設けた場合は、免震機構に斜材1
10の軸力がそのまま伝達されるため、免震機構に前後
方向のほか上下方向にも大きな応力が働き、そのため免
震機構の構造が複雑となりかつ強度の大きいものにせざ
るを得ない。請求項1の発明による免震機構にはこのよ
うな上下方向の主応力は発生しないため免震機構の構造
を簡単にすることができ、しかも少数の免震機構でクレ
ーンの前後方向固有周期を十分長くして免震することが
できる。
【0011】また、前記免震機構は、斜材結合部と水平
連結部材との間の少なくとも左右方向の相対移動を規制
する左右移動規制手段を備えているため、斜材結合部が
左右方向にずれて水平連結部材から外れることがない。
なお、この場合の左右方向相対移動は、左右方向相対移
動量が構造体の安定上許される範囲を超えないよう規制
すれば良い。
【0012】請求項2のクレーンの免震構造は、請求項
1の発明において、前記免震機構が減衰機能をも兼ね備
えていることを特徴とするものである。一般に、外部加
振力により励起される構造体の振動は、構造体の減衰性
能が大きいほど振幅が小さくなる(即ち、制振性能が高
まる)ため、構造体全体の減衰性能はなるべく大きいこ
とが望ましい。従って、免震機構が減衰機能をも備える
ことによりクレーン全体の減衰性能を大きくすることが
できる。
【0013】請求項3のクレーンの免震構造は、請求項
1又は2の発明において、前記免震機構は金属板とゴム
とを交互に複数層積層した積層ゴムを有することを特徴
とするものである。従って、この免震機構は、次の特徴
を有する。 1〕地震時に積層ゴムが水平方向に変形して斜材結合部
と水平連結部材との間の少なくとも前後方向の相対移動
を許容することにより、免震機構が機能する。 2〕積層ゴムは弾性係数及び形状・寸法を適切に選択し
て比較的大きな水平方向復元力を持たせることができる
ため、その復元力に応じて前後1対の斜材は左右構面全
体の前後方向剪断力伝達要素として機能することができ
る。従って、水平方向の前記相対移動に対して復元力を
有しない免震機構の場合に比べて、左右各構面の前後1
対の柱部材のサイズを小さくすることができる。
【0014】3〕積層ゴムは所定以上には変形しないた
め斜材結合部と水平連結部材との間の過大な相対移動を
防止することができる。 4〕通常用いられる積層ゴムは大きな減衰性能を有して
いるため、免震機構は減衰機能をも兼ね備えることにな
る。 5〕通常用いられる積層ゴムは比較的大きな復元力を持
っているため、振動が収まったときには積層ゴムは元の
状態に戻る。即ち地震の最中に生じた斜材結合部と水平
連結部材との間の相対位置関係を、地震が終息したとき
にほぼ元の状態に自動的に戻すことができる。 6〕積層ゴムは、左右方向にも復元力を有しているた
め、その復元力および所定以上に変形しない積層ゴムの
前記特性を勘案して、斜材結合部と水平連結部材との間
の左右方向相対移動量を構造上安全な範囲以内に積層ゴ
ムにより規制できる場合は、積層ゴム自身を左右移動規
制手段としても良い。
【0015】請求項4のクレーンの免震構造は、請求項
1〜3の発明において、前記免震機構に、常時は斜材結
合部と水平連結部材との間の少なくとも前後方向相対移
動を規制し、所定の条件でこの前後方向相対移動の規制
を解除する前後移動規制手段を設けたことを特徴とする
ものである。
【0016】クレーンに免震機構を設けるとクレーンの
前後方向の剛性が低下するため、クレーンの通常使用時
では免震機構を設けない場合よりもクレーンが揺れやす
くなり、円滑な荷役作業に支障が出ることがあるため、
常時はクレーンの剛性は高いことが望ましい。しかし、
地震時は免震機構を機能させる必要があるため、前後移
動規制手段により、常時は少なくとも前記前後方向相対
移動を規制してクレーンの前後方向剛性を高い状態に保
持し、常時の円滑な荷役作業を可能にすると共に、大き
な地震が発生して所定の条件に達した場合は前記前後方
向相対移動の規制を解除して免震機構が機能するように
したものである。なお、「所定の条件に達した場合」と
しては、地震により発生する荷重(あるいはクレーン上
の指定箇所の応力)、地上又はクレーン指定箇所の振動
加速度あるいは地震の震度等のいずれか選択した項目の
値が所定値以上になった場合とするのが良い。
【0017】請求項5のクレーンの免震構造は、請求項
4の発明において、前記前後移動規制手段が、シェアピ
ンであることを特徴とするものである。シェアピンは、
所定以上の荷重が働いた場合に剪断破壊するよう作られ
ているものである。斜材結合部と水平連結部材との間を
シェアピンで連結し、常時は前後方向相対移動を規制す
ると共に、大きな地震が発生してシェアピンに所定以上
の荷重が作用したときには、シェアピンが剪断破壊して
前後方向相対移動の規制が解除され、免震機構が機能し
てクレーンの前後方向の固有周期を長くすることができ
る。
【0018】
【発明の実施の形態】 本発明の実施の形態について説
明する。本実施形態は、門形クレーンの代表例であるコ
ンテナクレーンに本発明を適用したものである。図1に
示すように、このコンテナクレーン2は、前後方向に延
びる水平なガーダー3と、起伏式のブーム4と、ガーダ
ー3及びブーム4を支持する脚部構造5とを備え、陸上
のコンテナヤード1と海上のコンテナ船(図示略)との
間でコンテナ6を荷役するものである。
【0019】先ず、ガーダー3とブーム4について説明
する。図1に示すように、脚部構造5の柱部材40の上
端の位置において、ガーダー3の前端にブーム4の後端
が回動可能に連結され、この連結部10において前部上
部構11が立設されている。ガーダー3の長さ方向途中
部においても、脚部構造5の柱部材41の上端の位置に
後部上部構12が立設されている。前部上部構11の上
端からはガーダー3及びブーム4に斜材13,14,1
5が延び、後部上部構12の上端からはガーダー3に斜
材16,17が延び、これら斜材13〜17によりガー
ダー3とブーム4が水平姿勢に保たれている。
【0020】ガーダー3の後部には機械室18が設けら
れ、この機械室18には、ブーム4を起伏させる起伏ド
ラム19と、スプレッダ24を昇降させる巻上ドラム
(図示略)と、トロリ26を前後に移動駆動するトロリ
駆動ドラム(図示略)等が配設されている。ブーム4は
シーブ20を介して起伏ドラム19にロープ21が接続
され、起伏ドラム19でロープ21を巻取り又は繰り出
すことによりブーム4は起伏動作を行う。
【0021】次に、脚部構造5について説明する。図2
に示すように、脚部構造5は、相互に連結された左側構
面30及び右側構面31を備えている。各構面30,3
1の上端は前後1対の上部左右連結部材36,37で連
結され、各構面30,31の下端も前後1対の下部左右
連結部材38,39で連結され、下部左右連結部材3
8,39には夫々左右1対4組の走行装置34が連結さ
れている。
【0022】左側構面30と右側構面31は左右対称で
同様に構成されているので、右側構面31について説明
する。図1に示すように、右側構面31は、前後1対の
柱部材40,41と、それら柱部材40,41の下部同
士を連結する水平連結部材42と、この水平連結部材4
2の長さ方向途中部(但し、ほぼ中間点部)を前後の柱
部材40,41の上端部に連結する1対の斜材43,4
4を備え、斜材43,44の下端部を結合する斜材結合
部45と水平連結部材42とを連結する連結部に免震機
構46が設けられている。また、右側構面31の前側柱
部材40の上端部は、前側の上部左右連結部材36に連
結され、同様に右側構面31の後側柱部材41の上端部
は、後側の上部左右連結部材37に連結され、これら前
後1対の上部左右連結部材36,37はガーダー3によ
り相互に連結されており、従って右側構面31の前後の
柱部材40,41の上端部はガーダー3及び上部左右連
結部材36,37を介して相互に連結されている。右側
構面31は、このように構成されて力学的に安定な構面
を形成している。構造力学から明らかなとおり、このよ
うに構成した場合、斜材結合部45と水平連結部材42
の連結部に設けられた免震機構46には、二次的に発生
する小さな応力を別にすれば、基本的に前後方向の水平
剪断荷重のみが作用し、上下方向の荷重は作用しない。
【0023】次に、免震機構46について説明する。図
3〜図7に示すように、免震機構46は金属板とゴムと
を交互に複数層積層し減衰機能を有する積層ゴム50、
ガイド部材54(左右移動規制手段)、及びシェアピン
55(前後移動規制手段)などを備えている。この積層
ゴム50は圧縮強度が大きく、水平方向には容易に変形
可能で所定以上に変形しない特徴を有する。積層ゴム5
0の上端の金属板50aは斜材結合部45の下端に固定
された金属板51とボルト結合され、積層ゴム50の下
端の金属板50bは金属板52とボルト結合され、この
金属板52は保持板53を介して水平連結部材42に固
定されている。従って、積層ゴム50は水平連結部材4
2と斜材結合部45との間で固定されている。地震等で
コンテナクレーン2の脚部構造5に大きな振動が伝達さ
れたときには、積層ゴム50が前後方向に変形する。
【0024】積層ゴム50の左右両側には水平連結部材
42に固定された1対のガイド部材54が設けられ、ガ
イド部材54は、水平姿勢に保持された水平部材54a
と、水平連結部材42に立設され水平部材54aを支持
する2つの鉛直支持部材54bとで構成されている。図
7に示すように、水平部材54aの内側面(斜材結合部
45側の面)は、斜材結合部45の下端に固定された金
属板51に立設された係止部材51aの外側面に当接し
ている。水平部材54aの下面には金属板51の左右両
端が当接し、金属板51の右端部と右側の水平部材54
aはシェアピン55で連結されている。このシェアピン
55は所定以上の前後方向の荷重で剪断破壊するもので
あり、このシェアピン55の破壊を介して積層ゴム50
は前後方向に変形可能になり、免震機構46が機能する
ことになる。
【0025】シェアピン55が所定以上の前後方向の荷
重で剪断破壊したときは、図6に示すように、積層ゴム
50は前後方向へ変形して斜材結合部45が水平連結部
材42に対して相対的に前後方向へ移動可能になる。し
かし、左右方向については、ガイド部材54により斜材
結合部45の水平連結部材42に対する左右方向への相
対移動は規制される。
【0026】次に、コンテナクレーン2の免震構造の作
用について説明する。コンテナクレーン2の通常使用状
態では、図3に示すように、金属板51と水平部材54
aを連結するシェアピン55により、斜材結合部45は
水平連結部材42に対する相対移動を規制され、コンテ
ナクレーン2の前後方向の剛性は維持される。従って、
コンテナ6をコンテナヤード1とコンテナ船との間で荷
役するときにも、脚部構造5がたわみにくく、安定して
コンテナ6の荷役を行うことができる。
【0027】地震等により地面に振動が生じたときに
は、脚部構造5にその振動は伝達される。伝達された振
動によりシェアピン55には前後方向の剪断荷重が作用
するが、振動が小さく前記荷重が所定以下である場合に
は、シェアピン55は破壊せず、コンテナクレーン2は
前後方向に高い剛性を保持したまま振動する。脚部構造
5に伝達された振動が大きく前記荷重が所定以上である
場合には、シェアピン55は剪断破壊する。
【0028】シェアピン55が剪断破壊すると、金属板
51とガイド部材54との連結が切断され、つまり斜材
結合部45と水平連結部材42との間の前後方向相対移
動の規制が解除され、積層ゴム50は前後方向に変形可
能となる。従って、左右構面30,31の前後方向剛性
が低下し、コンテナクレーン2の前後方向固有振動周期
が長くなり(例えば3秒以上)、コンテナクレーン2の
一般的な支持地盤における地震時の振動の卓越周期より
長くなることにより、免震構造の免震機能が働く。また
積層ゴム50の水平方向変形による減衰性能が大きいた
め、左右構面30,31全体の前後方向振動における減
衰係数が大きくなり、積層ゴム50は制振効果ももたら
す。
【0029】このとき、積層ゴム50はその特性上、水
平方向に所定以上に変形することはないため、積層ゴム
50は前後方向に所定以上に変形することはない。ま
た、図7に示すように、水平部材54aの内側面(斜材
結合部45側の面)は、係止部材51aの外側面に当接
しているため、斜材結合部45と水平連結部材42の左
右方向相対移動が規制され、斜材結合部45が水平連結
部材42から左右方向に外れることはない。また、前述
のとおり斜材結合部45と水平連結部材42の連結部に
設けられた免震機構46には、二次的に発生する小さな
応力を別にすれば、基本的に前後方向の水平剪断荷重の
みが働くが、仮に二次的な応力として免震機構46に鉛
直方向の引っ張り力が働いたとしても、斜材結合部45
の下端部に固定されている金属板51がガイド部材54
の水平部材54aの下面に当接して上方への移動が係止
されているので、斜材結合部45と水平連結部材42と
の上下方向間隔が開くことはなく積層ゴム50に引っ張
り力が作用することがない。
【0030】以上のコンテナクレーン2の免震構造によ
れば、左右各構面30,31において、免震機構46を
1対の斜材43,44の下端部を結合する斜材結合部4
5と水平連結部材42とを連結する連結部に設けたの
で、比較的簡単な構造で且つ左右各1箇所の免震機構4
6を設けるだけで地震時に十分な免震の効果が得られ
る。
【0031】免震機構46は、積層ゴム50、ガイド部
材54、シェアピン55で構成され、積層ゴム50の前
後方向の弾性変形によりコンテナクレーン2の前後方向
の固有振動周期を適度に長くして免震機能を発揮するこ
とができ、また積層ゴム50の減衰性能により脚部構造
5全体の前後方向の減衰係数を大きくして前後方向の振
動に対する制振効果ももたらすことができる。なお、鉛
プラグが埋め込まれた積層ゴムを使用すると、鉛プラグ
の塑性変形により更に大きな減衰性能を得ることができ
る。
【0032】また、積層ゴム50は前後方向に変形する
が、所定以上に変形することがないので、斜材結合部4
5と水平連結部材42との間の前後方向相対移動量が所
定以上に大きくなることがなく、この相対移動が予期し
ない程過大になり脚部構造5全体が不安定に陥ることを
防止できる。さらに、積層ゴム50の高い復元性によ
り、地震終息後は斜材結合部45と水平連結部材42と
の間の前後方向相対位置がほぼ元の状態に戻るため、地
震終息後のコンテナクレーン2の復旧作業が容易にな
る。
【0033】シェアピン55により、斜材結合部45の
下端に固定された金属板51の右端部と、水平連結部材
42に固定された1対のガイド部材54の水平部材54
aとを連結したため、常時は斜材結合部45と水平連結
部材42との間の前後方向相対移動が規制され、コンテ
ナクレーン2の前後方向剛性を高い状態に保持し、安定
した荷役作業をすることができる。地震で強い振動がコ
ンテナクレーン2に伝達され、シェアピン55に所定以
上の荷重が作用したときには、シェアピン55が剪断破
壊して前記の前後方向相対移動の規制が解除されること
により、積層ゴム50の弾性変形が可能となり、免震機
構46による免震の効果が生じる。
【0034】ガイド部材54において、水平部材54a
の内側面(斜材結合部45側の面)は、斜材結合部45
の下端に固定された金属板51に立設した係止部材51
aの外側面に当接しているため、斜材結合部45と水平
連結部材42の左右方向相対移動が規制され、斜材結合
部45が水平連結部材42から左右方向にずれることが
なく、脚部構造5の安定性が保たれる。また、図7に示
すように、斜材結合部45の下端に固定された金属板5
1は、水平部材54aの下面に当接しているため、積層
ゴム50に引っ張り力が作用することがない。
【0035】次に前記実施形態に種々の変更を加えた変
更形態について説明する。 1〕免震機構として、斜材結合部45と水平連結部材4
2との間の前後方向の相対移動を許容すると共に、左右
方向の相対移動を規制可能なリニアガイド(直動ベアリ
ング)を用いても良い。この場合、リニアガイド下部を
水平連結部材42に固定し、斜材結合部45に連結され
た部材がリニアガイド内を左右方向の移動を規制されつ
つ前後方向に摺動するように構成する。リニアガイドは
復元力を有しないため、必要ならばスプリング等前後方
向に弾性変形可能な種々の部材を付加しても良い。
【0036】2〕積層ゴム50の左右方向の剛性が、斜
材結合部45と水平連結部材42との間の左右方向相対
移動を所定量以内に規制するために十分であれば、この
左右方向相対移動を規制するためのガイド部材54を省
略して積層ゴム50を左右方向にも弾性変形可能に構成
しても良い。なお、この場合のシェアピン50の取り付
け方は、前記実施形態における取り付け方と異なって来
るが、設計的事項として如何様にも処理可能である。
【0037】3〕斜材結合部45と水平連結部材42と
の間の前後方向相対移動が生じたときに復元力が生じな
い免震機構を設けることもできる。即ち、免震機構に積
層ゴム50や前記スプリング等弾性変形可能な部材を設
けず、例えば、斜材結合部45が水平連結部材42に対
して相対的に前後方向に摺動可能に構成する。この場合
は、斜材43,44が剪断力を伝達する斜材としては機
能しなくなるため、前後1対の柱部材40,41の強度
を上げる等して、左右構面30,31の必要強度を確保
しておく必要がある。
【0038】4〕金属板51とガイド部材54とを連結
するシェアピン55は、1本に限らず金属板51の左右
に複数本設けても良い。シェアピン55を剪断破壊させ
たい所定の荷重とシェアピン1本の剪断破壊強度との関
係から、シェアピン55の本数は種々の選択が可能であ
る。
【0039】5〕免震機構において、常時は斜材結合部
45と水平連結部材42との前後方向相対移動を規制部
材(例えばロックピン等)で規制し、所定の条件におけ
る外部からの電気信号により免震機構にこの規制の解除
を指令し、この指令を受けて電動モータ等の駆動手段に
より前記規制部材を規制解除側へ駆動して、前記の前後
方向相対移動の規制を解除するように構成してもよい。
前記の電気信号としては地震計からの加速度や震度情報
等を用いることができる。
【0040】6〕免震機構に油圧ダンパーシリンダーを
設けることにより減衰機能を持たせても良い。この場
合、油圧ダンパーシリンダーはその軸の方向をコンテナ
クレーン2の前後方向に合わせて配置し、油圧ダンパー
シリンダーのチューブを水平連結部材42側に固定し、
油圧ダンパーシリンダーのロッドの先端部を斜材結合部
45側に固定し、斜材結合部45と水平連結部材42と
の間の前後方向の相対移動に応じてロッドが伸縮するこ
とによりコンテナクレーン2の振動を減衰することがで
きる。
【0041】7〕前記のように油圧ダンパーシリンダー
を設けた場合において、リリーフ機能付きの油圧ユニッ
トを油圧ダンパーシリンダーに接続し、常時はリリーフ
弁を閉にして油圧ダンパーシリンダーのロッドが伸縮し
ないように拘束し、油圧ダンパーシリンダー内の油圧が
所定以上の正圧又は所定以下の負圧になった場合リリー
フ弁を開にしてロッドが伸縮するように免震機構を構成
してもよい。この場合、常時は油圧ダンパーシリンダー
のロッドの伸縮は拘束されるため、斜材結合部45と水
平連結部材42との間の前後方向相対移動が規制されて
クレーンの前後方向の剛性を高く保持するとともに、地
震により斜材結合部45と水平連結部材42との間に前
後方向の剪断力が作用したとき、その剪断力が油圧ダン
パーシリンダーに伝達されて剪断力の向きにより油圧が
上昇又は下降し、油圧上昇量又は下降量が所定以上にな
った場合に油圧ユニット内のリリーフ弁が開になり、油
圧ダンパーシリンダーのロッドの伸縮の拘束が解除され
て、免震機構により免震の効果を生じさせる。
【0042】8〕本発明をコンテナクレーン以外の門形
クレーン、橋形クレーン、例えばクラブトロリ式クレー
ン、造船用橋形クレーン等に適用することも可能であ
る。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で前記実
施形態及びその変更形態に種々の変更を加えたものに本
発明を適用することができるのは言うまでもない。
【0043】
【発明の効果】 請求項1の発明によれば、クレーンに
おいて、脚部構造の各構面における、1対の斜材の下端
部を結合する斜材結合部と水平連結部材とを連結する連
結部に設けた免震機構であって、斜材結合部と水平連結
部材との間の少なくとも前後方向の相対移動を許容する
と共に、少なくとも左右方向の相対移動を規制する左右
移動規制手段を備えた免震機構を設けたので、以下の効
果を有する。
【0044】地震で地面に大きな振動が生じた場合に
は、その振動は脚部構造に伝達されるが、斜材結合部と
水平連結部材の連結部に設けられた免震機構において、
斜材結合部と水平連結部材との間の少なくとも前後方向
の相対移動を許容し、クレーンの前後方向の固有振動周
期を長くし、免震の原理により免震機能が働く。また、
左右移動規制手段により斜材結合部と水平連結部材との
間の少なくとも左右方向の相対移動は規制されるため、
斜材結合部が水平連結部材から左右方向にずれて外れる
ことは無く、脚部構造の安定性が保持される。免震機構
は、脚部構造の左右各構面に各1箇所設ければ良く、し
かも免震機構には主荷重として前後方向の剪断力しか働
かないため、免震機構の構造を簡単にでき、しかも少数
の免震機構により十分な免震効果を実現できる。
【0045】請求項2の発明によれば、免震機構が減衰
機能をも兼ね備えているため、免震機構により前後方向
の固有振動周期を長くして免震すると共に、クレーンの
前後方向の減衰性能を大きくして制振することも可能と
なる。その他、請求項1と同様の効果が得られる。
【0046】請求項3の発明によれば、免震機構が金属
板とゴムとを交互に複数層積層した積層ゴムを有するた
め、斜材結合部と水平連結部材との間の水平方向の相対
移動に対して積層ゴムの復元力が働き、免震機構が復元
力を有しない場合に比べて左右構面の前後1対の柱部材
のサイズを小さくすることができる。また、地震が終息
したとき、積層ゴムの復元力により、斜材結合部と水平
連結部材との間の水平方向の相対位置関係をほぼ元の状
態に自動的に戻すことができ、地震後の復旧が容易にな
る。また、積層ゴムは水平方向に所定以上に変形するこ
とがなく、斜材結合部と水平連結部材との間の前後方向
の過大な相対移動を防止することができる。さらに、積
層ゴムの高い減衰性能によりクレーンに伝達された振動
を制振することもできる。その他、請求項1又は2と同
様の効果が得られる。
【0047】請求項4の発明によれば、免震機構に、常
時は斜材結合部と水平連結部材との間の少なくとも前後
方向相対移動を規制し、所定の条件でこの規制を解除す
る前後移動規制手段を設けたので、前後移動規制手段に
より、常時は斜材結合部と水平連結部材との間の前後方
向相対移動が規制され、クレーンの前後方向剛性が高い
状態に保持されて常時の円滑な荷役作業を可能にすると
共に、大きな地震の発生により所定の条件を満たした場
合にのみ前記の規制が解除されるので、斜材結合部と水
平連結部材との間に前後方向の相対移動を生じさせてク
レーンの前後方向の固有振動周期を長くして免震するこ
とができる。その他、請求項1〜3の何れかと同様の効
果が得られる。
【0048】請求項5の発明によれば、前記前後移動規
制手段としてシェアピンを用いたため、常時は斜材結合
部と水平連結部材との間の少なくとも前後方向相対移動
をシェアピンにより規制して、常時の円滑な荷役作業を
可能にすると共に、地震による所定以上の荷重がシェア
ピンに作用したときは、シェアピンが剪断破壊して前後
方向相対移動を許容してクレーンの前後方向の固有振動
周期を長くして免震することができる。その他、請求項
4と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るコンテナクレーンの正
面図である。
【図2】コンテナクレーンの側面図である。
【図3】免震機構(通常使用状態)の正面図である。
【図4】免震機構のIV-IV 線矢視図である。
【図5】免震機構のV-V 線断面図である。
【図6】免震機構のVI-VI 線断面図(シェアピン破壊
時)である
【図7】免震機構の要部拡大断面図(シェアピン近傍)
である。
【図8】従来のコンテナクレーンの正面図である
【符号の説明】
2 コンテナクレーン 3 ガーダー 5 脚部構造 30 左側構面 31 右側構面 40 前側柱部材 41 後側柱部材 42 水平連結部材 43,44 斜材 45 斜材結合部 46 免震機構 50 積層ゴム 54 ガイド部材 55 シェアピン
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3F202 AA05 AC08 BA02 3F204 AA03 BA04 CA05 FA10 FB20

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水平なガーダーと、ガーダーを支持する
    脚部構造とを備えたクレーンにおいて、 前記脚部構造は、相互に連結された左側構面及び右側構
    面を備え、 各構面は、前後1対の柱部材と、それら柱部材の下部同
    士を連結する水平連結部材と、この水平連結部材の長さ
    方向途中部を前後の柱部材の上端部に連結する1対の斜
    材とを備え、 前記前後1対の柱部材の上端部同士は、1又は複数の部
    材を介して相互に連結され、 前記各構面における、1対の斜材の下端部を結合する斜
    材結合部と水平連結部材とを連結する連結部に設けた免
    震機構であって、斜材結合部と水平連結部材との間の少
    なくとも前後方向の相対移動を許容すると共に、少なく
    とも左右方向の相対移動を規制する左右移動規制手段を
    備えた免震機構を設けたことを特徴とするクレーンの免
    震構造。
  2. 【請求項2】 前記免震機構が、減衰機能をも兼ね備え
    ていることを特徴とする請求項1に記載のクレーンの免
    震構造。
  3. 【請求項3】 前記免震機構が、金属板とゴムとを交互
    に複数層積層した積層ゴムを有することを特徴とする請
    求項1又は2に記載のクレーンの免震構造。
  4. 【請求項4】 前記免震機構に、常時は斜材結合部と水
    平連結部材との間の少なくとも前後方向相対移動を規制
    し、所定の条件でこの前後方向相対移動の規制を解除す
    る前後移動規制手段を設けたことを特徴とする請求項1
    〜3の何れかに記載のクレーンの免震構造。
  5. 【請求項5】 前記前後移動規制手段が、シェアピンで
    あることを特徴とする請求項4に記載のクレーンの免震
    構造。
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