JP2002507510A - 転写箔、特に熱転写箔 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 互いに完全に分離されたパッチであって、転写箔を取り扱う際の通常の手法を用いて支持体上に転写され得るパッチを、キャリアフィルム上に形成することを可能とした転写箔、およびその作製方法を提案する。この転写箔および作製方法においては、後に続く上重ね印刷の障害となるフレークが形成されないような手法で、転写処理が実行され得る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】 本発明は、転写箔に関するものであり、より詳細には、熱および／または圧力
により支持体上に転写可能であり該支持体に接着態様で付着する装飾層が剥離可
能に載置されたキャリアフィルムを備えた、熱転写箔に関するものである。本発
明はまた、そうした種類の転写箔の作製方法にも関するものである。

【０００２】 そうした種類の転写箔または浮出箔は、装飾層が様々な形態を取り得る点から
、極めて多種多様な支持体の装飾に用いられている。しかしながら、通常は、転
写箔の装飾層は、少なくとも１層の保護ラッカー層部を実際の装飾要素を形成す
る別の各層部と併せて有しており、装飾層が支持体に塗布された後には、この保
護ラッカー層部は開放された外面を形成する。一般的には、キャリアフィルムか
ら最も遠い側にある装飾層の層部は、接着層部を形成し、該接着層部により装飾
層が支持体に接着する。ここ数年は、たとえば紙幣、小切手、有価証券や債券等
の金銭価値を有する紙片、およびクレジットカード等のような、金銭価値を有す
る物品や証書に、偽造を困難とさせるような偽造防止用の外見的特色を提供する
目的で、極めて特殊な装飾を担う転写箔あるいは浮出箔も相当の程度で使用され
ている。こうした目的のために、通常、転写箔の装飾層は、熱可塑性により全体
的に変形可能な層部を有しており、この層部中には、転写箔の作製過程において
、光学的回折効果を有する構造、たとえば適当なグレーティング構造が複製され
る。こうした種類の光学的回折効果であって、可能な限り明確に視認できるよう
な効果を有する構造を作製するために、多くのケースにおいて通常的に実施され
るのは、上記の変形可能な層部の適当な構造とされた表面に、反射層部を設ける
ことである。この反射層部は、該反射層部が重ね合わされている装飾層の層部と
は、実質的に異なる屈折率を有することを特徴とする。ほとんどのケースにおい
て、一般的には蒸着により塗布される金属層部が、上記の反射層部として使用さ
れる。

【０００３】 上述のような種類の転写箔は、ドイツ国公開特許第４４／２３／２９１号に、
現在の最先端の技術水準を示すものとして記載されている。

【０００４】 特に偽造防止のための用途においては、偽造をより一層困難とさせるため、転
写箔の装飾層により形成された偽造防止要素が紙幣等の支持体に塗布された後に
、さらにその偽造防止要素の上に上重ね印刷がなされることが望ましい。ここで
、転写箔のキャリアフィルムから支持体へと装飾層を転写するには、原則として
２つの可能な方法がある。すなわち、より詳しく言えば、適当なローラーあるい
は類似のものを用いて装飾層を長板状の形態として転写する方法と、装飾層の適
当な領域を支持体にパッチ状に塗布する方法とがある。従来は、一般的には、転
写箔の装飾層の少なくとも１層の層部が広い表面積を覆うように存在することが
前提とされており、その場合には、適当に形作られた転写用押印器を用いて装飾
層を支持体に転写する手法によって、対応するスポットあるいはパッチが支持体
上に形成されていた。しかしながら、この方法により転写箔のキャリアフィルム
から支持体へと装飾層を転写すると、一般的には、キャリアフィルム上に残存す
る装飾層の一部領域であって転写処理あるいは浮出印刷処理後においてキャリア
フィルムと共に支持体から引き離される一部領域から転写されるパッチの縁に沿
って、転写箔の装飾層が裂かれることになる。ローラーを用いて転写処理を実施
した場合において、該ローラーによって形成される押圧跡の幅がキャリアフィル
ム上に存在する装飾層の長板形状の幅よりも狭いような状況に対しても、上記の
考察と同様のことが言える。転写処理中において装飾層の一部領域が裂かれてし
まうと、裂片状に剥れ落ちるフレークと呼ばれる小粒子が非常に高い頻度で発生
し、それらのフレークは、その後に続く印刷処理過程において、状況によっては
非常に深刻な問題および困難性を引き起こす可能性を有する。この点に関して、
装飾層が少なくとも一部領域的に金属被覆されるのは、まさに偽造防止要素の場
合においてであるいうことを念頭に置くべきである。フレークが問題および困難
性を引き起こすものであると言えるのは、特に、印刷機の汚損をもたらし、した
がって乱雑で不明瞭な印刷をもたらすという理由からである。実際上、偽造防止
要素にその後に施される印刷もまた、非常に精巧な構成であることが多い。状況
によっては、一台の機械が、一方で転写処理を他方で上重ね印刷処理を連続して
担い得るが、そうした機械の適切な清掃を転写処理と印刷処理の間に行うことは
、少なくとも妥当なコストでは不可能である。

【０００５】 したがって、本発明の目的は、問題となるフレーク形成を発生させる怖れなく
、独立したパッチの形態で適当な装飾層を支持体に塗布することを可能とするよ
うな転写箔、および該転写箔の作製方法を提案することである。本発明は同時に
、非常に良好な精度で作製され得る転写箔を提供し、かつ装飾層において提供さ
れ得る様々な種類の層部についてそれらの間の位置関係を整合させるよう努める
ものである。

【０００６】 上記の目的を達成するために、本発明によれば、本明細書の導入部に記載され
たような種類の転写箔であり、装飾層が、互いに完全に分離されており各々独立
に支持体上に転写され得る独立した複数のパッチに分割されている転写箔が提案
される。ここで、キャリアフィルム上において、上記の独立した複数のパッチの
それぞれの周囲には、少なくとも１ｍｍ、好ましくは少なくとも２ｍｍの幅を有
する、境界型あるいは縁取型のごく単純な形式の間隙領域がそれぞれ設けられて
おり、この緩衝領域に当初存在していた装飾層材料は後段的に除去され、当該領
域においてキャリアフィルムが露出させられる。

【０００７】 本発明によれば、上記の種類の転写箔は、まず、形成されるべき転写可能なパ
ッチの縁を超えてあらゆる箇所に亘って装飾層が広がるように、従来の転写箔の
作製から既知であるような手法で、装飾層を形成する材料がキャリアフィルム上
に塗布され、次に、上記の間隙領域を形成するために、独立した各パッチの縁全
体に沿って装飾層材料が後段的に除去されるような方法で、作製されることが好
ましい。

【０００８】 したがって、本発明による転写箔あるいは本発明による方法により作製された
転写箔は、所望のパッチ領域外に広がる装飾層の一部領域を後段的に除去するこ
とで、支持体に転写されるべきパッチの精密な範囲設定および規定が達成される
という点により特徴づけられる。このことは特に、転写箔を使用して装飾層のパ
ッチを支持体に転写する際において、転写が現実に達成されるであろう箇所にの
み、該転写箔が適当な装飾層の一部を有することになるという利点をもたらす。
したがって、装飾層の対応するパッチを支持体に転写する作業は、より広い表面
積から装飾層を分離する作業をもはや包含しない。その結果、問題となるフレー
ク形成が発生する可能性はなくなる。間隙領域において後段的に装飾層を除去す
る処理中にはフレークが発生し得るが、転写箔の包装および利用者への供給に先
立ってそうしたフレークを転写箔から取り除くことは、たとえば、レーザー照射
による処理装置においては既知である吸引除去器等によって、容易に可能である
。こうしたフレークによって印刷機が汚損される可能性はない。

【０００９】 本発明による手法のさらなる利点は、状況によっては位置整合の問題を除去で
きるという点にある。特に、光学的回折効果を有する構造やその他の構造が、装
飾層の層部において複製されるべき状況においては、上記の利点が言える。極め
て正確な位置関係をもって印刷を行うことは明らかに可能である。すなわち、た
とえば通常的に装飾層を形成するラッカー層部を極めて正確に塗布し、支持体に
転写されるべき適当なパッチが望まれる箇所にのみそれらのラッカー層部が存在
するように成すことが可能である。しかしながら、ラッカー層部の１つの中に適
当な構造を複製する場合には、比較的高い温度で処理を行うことが必要となり、
それによって、ほとんどのケースではキャリアフィルムが相当に引き延ばされ、
装飾層表面の位置決めが不正確となる結果がもたらされる。その結果、たとえば
、装飾層のラッカー層部に対して複製パターンの縦方向または横方向へのずれが
生じる。そうなると、複製パターンとラッカー層部との間に位置ずれが存在する
ことになるため、複製パターンの形成が予期されていた装飾層の層部全体を包含
しない複製がもたらされてしまう。しかしながら、たとえ広い表面積あるいは全
体の表面積を覆うラッカー層部に適切な構造が浮出印刷された場合であっても、
温度の上昇に起因した、各パッチの互いの相対位置の変化、あるいは特に装飾層
のパッチの形状および大きさに関して生じる好ましくない変化のいずれかについ
て、考慮しなくてはならない。しかしながら、既に適当な形態とされている装飾
層、すなわち各種の層部およびおそらくは複製された構造を有している装飾層が
、最終的な所望のパッチの寸法よりも大きい寸法を有するパッチの形式で塗布さ
れ、その後に、少なくとも各パッチの周囲において所望のパッチ領域の外に存在
する間隙領域中の装飾層材料を完全に除去することによって、装飾層パッチの最
終的な形状および大きさが形成される場合、上記の影響は無視できる。

【００１０】 したがって、本発明によれば、除去可能な問題は、浮出印刷の適用時における
、広い表面積を有する装飾層からのフレーク形成の問題だけではない。加えて、
装飾層のパッチの大きさ、形状および位置に関する精度の水準も向上させること
が可能であり、それにより、適当なパッチを提供された物品、たとえば紙幣等の
品質向上ももたらされうる。この点に関連して、後段的に行われる装飾層材料の
除去作業は、たとえばキャリアフィルムに適当な印を付すことなどにより、正確
な位置決めという観点において極めて精密に制御可能であることを念頭に置くべ
きである。また、この点に関連して、パッチを支持体に転写あるいは浮出印刷す
るための道具はパッチの寸法より幾分大である場合があり、またそのことは、パ
ッチがその縁に沿って美しくかつ適切に支持体に押し付けられ、支持体に適切に
接着されることを保証する上で好ましいかもしれないが、そのような場合でも、
パッチの周囲に予期されている間隙領域は、実際上、適当な１個のパッチのみが
支持体に転写されることを保証するものである。そうでなければ、実際上、既に
適当な装飾層のパッチを提供された物品のその後の処理過程中において、支持体
にしっかりと接着されていない装飾層の一部領域が支持体から剥がれ落ち、また
しても問題となるフレークが形成されてしまう危険性が生じる。

【００１１】 間隙領域中の装飾層材料を除去する処理は、様々な方法により実施可能である
が、この点に関しては、いくつかの処理工程がとりわけ好適かつ適切である。

【００１２】 上記の点に関しては、本発明によれば、たとえば、装飾層を形成する材料層部
の塗布後において、個々のパッチの縁に沿って間隙領域あるいは境界部を形成す
る目的で、少なくとも１ｍｍの幅を有する装飾層の長板状の一部分が、レーザー
照射によってキャリアフィルムから完全に除去されるような方法が提供される。
装飾層の長板状の一部分を除去するためにレーザー照射を利用することには、原
則として、極めて多種多様な幾何学的形状を可能にするという利点がある。加え
て、レーザー照射を利用した除去は、極めて正確かつ高速である。さらには、レ
ーザー照射を利用した除去は、非常に滑らかで整然とした高精度のパッチの縁を
提供するものであり、それにより、フレーク形成防止の信頼性が高められる。

【００１３】 与えられた各状況において採用されるレーザーは、どのような層部が存在する
かによって選定される関係上、使用される材料によっては、既知の様々なレーザ
ーのうち大体のものを採用することが可能となる。エネルギーを適合させる目的
から、使用される材料によって少なくとも部分的に吸収されることが、上記のレ
ーザー照射に必要とされる条件である。レーザー照射強度のレベルが低過ぎると
、材料は温度が上昇されるのみとなり、一方、より高いレベルの強度が使用され
ると、材料は溶解、分解あるいは蒸発してしまう。たとえば、転写箔が、キャリ
アフィルムであるポリエステル箔の上に配されたラッカー層部であって、可視光
および近赤外線のスペクトル領域において透明であるようなラッカー層部を備え
ている場合には、そうした種類のラッカー層部はエキシマレーザーの照射により
除去されることが望ましく、これは詳述すれば、該ラッカー層部の紫外放射吸収
に関する特性に起因するものである。反対に、吸収能の高い層部、とりわけ金属
層部が使用される場合には、Ｎｄ：ＹＡＧレーザーあるいはダイオードレーザー
を使用すれば、これらの層部もまた適切に除去され得る。

【００１４】 転写箔の構造を、使用したいレーザー照射に整合あるいは適合させられ得るこ
とが望ましい。その目的のため、本発明によれば、転写箔はたとえば、透明なキ
ャリアフィルムと、除去処理に使用される波長のレーザー光を吸収する材料から
成る層部（たとえば金属層部や適当なラッカー層部）を少なくとも１層有する装
飾層とを備えた転写箔とすることができる。

【００１５】 転写箔がそのような構造である場合、Ｎｄ：ＹＡＧレーザまたはダイオードレ
ーザーを用いて除去処理が行われ、金属層部またはレーザー光吸収能を有する材
料の一部領域上において適切な材料除去がなされる一方、適当なレーザー光吸収
能を有する材料が存在しない領域に対しては、レーザーはほとんど影響を及ぼさ
ない。

【００１６】 これに関連して、有利な処理工程においては、間隙領域の形成のために後段的
に除去されるべき装飾層上の一部領域（のみ）が、除去処理に使用されるレーザ
ー照射の吸収能が装飾層に使用される他の材料やキャリアフィルムによりも強く
吸収する材料からなる層部を有している。このことにより、レーザー照射が装飾
層に作用する際においては、より高い吸収能を有する層部が存在している領域に
おいてのみ除去が行われ、所望領域の除去が終了するとレーザーの作用は停止さ
れる。除去されるべき領域にのみ高吸収能材料が存在する場合には、レーザービ
ームが間隙領域に沿って精密に移動されなくてもよいという利点、すなわちレー
ザービームが間隙領域に集中されなくてもよいという利点がある。また一方では
、より大きいビーム径のレーザービームを使用して、あるいはレーザービームの
位置精度の点で実質的により低い要求の下で、処理を行うことも可能である。こ
の場合、間隙領域の精密な幾何学的配置は、装飾層に組み入れられた高吸収能層
部の領域により、既に規定されていることになる。

【００１７】 高吸収能材料は、様々な方法により提供され得る。本発明によれば、たとえば
、キャリアフィルムおよび／またはキャリアフィルムに隣接する層部がレーザー
照射を吸収する材料で形成される方法が提案される。この場合、ある特定の高吸
収能層部が使用されるとすれば、その層部は、間隙領域が形成されるべき領域に
のみ提供され得る。この場合において、レーザー照射吸収能を有するさらに追加
の層が提供される場合には、巧妙な処理工程を適用することが可能であり、それ
によりキャリアフィルムは、装飾層の除去に使用されるレーザー照射を吸収する
ラッカー層部であって、装飾層が剥離可能に載置されてなるラッカー層部を担持
することとなる。この場合、レーザー照射はレーザー照射吸収能を有するラッカ
ー層部を破壊し、それにより同時に、対応する領域において、装飾層もまたキャ
リアフィルムから除去あるいは剥離され、その後の処理過程において容易かつ適
切に装飾層が取り除かれ得るようになる。

【００１８】 使用されるレーザーの特性、特に出力され得るパワー、強度分布および動作モ
ードに対応して、間隙領域の装飾層材料を除去するために、レーザーをどのよう
に転写箔に作用させるのかを決定する必要もある。

【００１９】 この点に関して１つの可能な方法は、除去されるべき領域に亘って移動するレ
ーザービームを使用して、装飾層の除去を行うことである。こうした処理方法は
、所望の強度を達成するに際し、比較的小さなビーム径により処理を行うことを
可能とするために比較的低い出力パワーのレーザーを採用した場合に、適用され
得る。上記のレーザービームの移動は、転写箔内におけるレーザー照射吸収能の
高い材料が、間隙領域が形成されるべき領域のみならず、他の領域にも存在する
場合においても、適当であると考えられる。

【００２０】 これに対して、高吸収能材料の層部の転写箔内における適当な幾何学的配置に
より、パッチの幾何学的配置が予め規定されている場合には、必要な強度レベル
の達成が維持される限りにおいて、より大きなビーム径のレーザービームを用い
ることが可能となる。そうした状況下でも、上記のレーザービームもまた移動さ
れてもよいが、実質的に静止した比較的大きいビーム径のレーザービームで転写
箔が照射されるような処理方法も可能であることは明らかである。

【００２１】 比較的高いパワーのレーザーが使用される場合においてのみ適用され得る別の
可能な方法においては、１つのパッチの周囲において除去されるべき各間隙領域
の形状に対応した形状を有するレーザービームを使用して、装飾層の除去処理が
実行される。このような処理工程は、パッチが規則的な形状（たとえば、楕円、
円あるいは多角形）である場合に、特に適当である。この場合、適当な光学系が
適当な環状のレーザービームを発生させ、該レーザービームが、適当なパッチ周
囲の境界部領域においてのみ転写箔に作用し、それにより材料が除去される。

【００２２】 起こり得るラッカー層部の除去処理（転写箔の装飾層に関し一般的に必要とさ
れる処理）に関し、原則として、有機ラッカーはエキシマレーザーの照射によっ
て金属等の支持体から極めて容易に除去され得ることが知られている。こうした
ことが可能なのは、ポリマーは一般的に紫外領域において吸収能が高く、またエ
キシマレーザーを用いれば極めて高い強度レベルが達成可能だからである。そう
したエキシマレーザーは、極めて高い水準のパルス出力およびそれに対応した短
いパルス持続時間を有するため、このようなエキシマレーザーの使用は好ましい
。

【００２３】 ＫｒＦエキシマレーザーの照射（λ＝２４８ｎｍ）の使用により、転写箔のラ
ッカー層部あるいは金属層部が、キャリアフィルム、とりわけキャリアフィルム
の用途で通常採用されるポリエステル箔から除去され得ることが、試験により明
らかとなった。この点において、目的に適ったビーム形状を支持体に照射すれば
、広範な領域に亘って材料を除去し、かつ表面部のみを除去することが可能であ
る。ここで、上記の適当なビーム形状は、たとえば適当な光学系あるいはマスク
投影により形作られる。

【００２４】 既に述べたように、光学系を利用して、レーザービームを環状形状と成して転
写箔に投射し、各パッチ周囲の対応する境界部のみを除去することが可能である
。その場合、レーザービームと箔との間の相対移動は、何ら必要とされず、また
許容されない。このことにより、複数のレーザーパルスが除去処理に必要とされ
る場合においては、レーザービームの方向調整機構を備えることが必要となるこ
とに注意されたい。この場合において、レンズにより転写箔上に投影されるマス
クが境界あるいは環状形状の形成のために使用される際には、レーザービームの
エネルギーのうちの相当部分が、装飾層材料の除去には使用されず、マスクの不
透明領域により吸収あるいは反射されてしまうという不利な点が生じる。したが
って、その代わりに、特別な回折光学系を使用してエキシマレーザーのビームを
環状形状に変換することを検討するべきであり、それにより、処理効率を実質的
に向上させることが可能となり、またより広い表面積を処理することが可能とな
る。

【００２５】 レーザー照射の吸収によって、すなわち吸収されたエネルギーによって、レー
ザー照射を吸収した材料の温度は上昇し、またより高い強度レベルでは該材料は
蒸発する。この点に関し、ポリエステル製のキャリア上にあるラッカー層部に対
しては、０．３Ｊ／ｃｍ^２よりも大であるエネルギー密度および複数のレーザー
パルスが必要となる。エネルギー密度のレベルが高いほど（したがって処理され
る表面積が小さいほど）、適当な材料層部の完全除去に必要とされるレーザーパ
ルスの数は少なくなると理解されたい。たとえば、装飾層に適当な材料を使用し
た場合には、１０×１０ｍｍ^２の表面積あるいはおそらくはそれより広い表面積
が、ＫｒＦエキシマレーザーの５レーザーパルス分で除去され得る。上述の環境
においては、単一のレーザーパルスにより３×３ｍｍ^２の表面積を除去すること
が可能である。

【００２６】 しかしながら、エキシマレーザーの照射は、実際上紫外放射を吸収するポリエ
ステル箔にも作用し、該ポリエステル箔を破損させることに注意しなくてはなら
ない。したがって、このケースでは、該照射は、装飾層側からしか作用させるこ
とができず、また、装飾層を構成する材料層部が除去されたら直ちに停止されな
くてはならない。

【００２７】 さらに、金属層部を有する転写箔の装飾層であって、該金属層部が適当なラッ
カー層部の間に挟持されているような装飾層は、Ｎｄ−ＹＡＧレーザーとダイオ
ードレーザーのどちらによっても除去され得ることが、試験により明らかとなっ
た。しかしながら、この場合はエキシマレーザーを用いた処理と異なり、一般的
には、レーザービームが転写箔に対して相対移動させられ、そのためには実質上
非慣性的に動作する検流計ミラーの使用が可能である。このことは、極めて高速
の処理速度の達成を可能とする。この動作モードはまた、ミラー駆動手段の適当
なプログラミングにより、除去に関する幾何学的特性が極めて柔軟に調節可能と
なるという利点を享受する。ここで、ミラーの動作制御に使用されるソフトウェ
アは、浮出箔のウェブが適当な作製機械内を通過する際における該浮出箔のウェ
ブの動作をも、考慮に入れることができる。

【００２８】 原則として、材料の除去には以下の各レーザーが使用される。

【００２９】

【表１】 ＣＯ_２レーザーおよびＴＥＡ−ＣＯ_２レーザーは、波長が長く、熱的破損のレ
ベルが比較的高いため、限られた場合においてしか装飾層の除去に適さない。

【００３０】 使用されるレーザーに応じて、以下の特性が期待される。

【００３１】使用レーザー： エキシマレーザー 波長 ２４８ｎｍまたは３０８ｎｍ 平均レーザーパワー ８０Ｗ パルス周波数 ２００Ｈｚ ラッカー層部における吸収 有 金属層部における吸収 有 ポリエステルにおける吸収 有 （通常のキャリアフィルム） ポリエステルを介した照射の可能性 無 レーザービームと箔の間における相対移動の必要性 無 ビーム調節の必要性 複数のパルスの使用時において ビーム位置補正 高コスト ９ｍｍ^２（１パルス分）の処理時間 ５ｍｓ １００ｍｍ^２（５パルス分）の処理時間 ２５ｍｓ 通常のＯＶＤの処理時間 ５０ｍｓ 可変的な幾何学特性への適応性 高コスト、光学素子の交換要 マルチトラック型の構成 可能であるが高コスト 処理の質 外見上極めて美しい縁使用レーザー： Ｎｄ：ＹＡＧレーザー 波長 １０６４ｎｍ 平均レーザーパワー ５０Ｗ パルス周波数 数ｋＨｚ ラッカー層部における吸収 無 金属層部における吸収 有 ポリエステルにおける吸収 無 （通常のキャリアフィルム） ポリエステルを介した照射の可能性 有 レーザービームと箔の間における相対移動の必要性 有 ビーム調節の必要性 有 ビーム位置補正 可能 典型的な除去速度 ８００ｍｍ／ｓ ３ｍｍ四方の面積の処理時間 １５ｍｓ １０ｍｍ四方の面積の処理時間 ５０ｍｓ 通常のＯＶＤの処理時間 １２５ｍｓ 可変的な幾何学特性への適応性 容易 マルチトラック型の構成 比較的容易（たとえばグラスファイバー等の手段 により） 処理の質 縁の仕上がりの質は中程度使用レーザー： ダイオードレーザー 波長 ６５０から９００ｎｍ 平均レーザーパワー ５０Ｗ パルス周波数 数ｋＨｚ ラッカー層部における吸収 無 金属層部における吸収 有 ポリエステルにおける吸収 無 （通常のキャリアフィルム） ポリエステルを介した照射の可能性 有 レーザービームと箔の間における相対移動の必要性 有 ビーム調節の必要性 有 ビーム位置補正 可能 典型的な除去速度 ８００ｍｍ／ｓ ３ｍｍ四方の面積の処理時間 １５ｍｓ １０ｍｍ四方の面積の処理時間 ５０ｍｓ 通常のＯＶＤの処理時間 １２５ｍｓ 可変的な幾何学特性への適応性 容易 マルチトラック型の構成 比較的容易（たとえばグラスファイバーや、複数の レーザーヘッド等の手段により） 処理の質 縁の仕上がりの質は中程度 ＯＰＯシステムを使用した場合には、期待される結果は、エキシマレーザーお
よびダイオードレーザーを使用した場合の結果と類似の結果である。

【００３２】 使用されるレーザー照射および前述の各作用によっては、装飾層材料の吸収特
性における特定の制御された変化、および該装飾層材料の特定の配置により、特
定の効果を生じさせることが可能である。たとえば、吸収剤（たとえばＴｉＯ_２ ）を添加したり、あるいは結合媒体のシステムを変更したりすることにより、Ｎ
ｄ：ＹＡＧレーザーあるいはダイオードレーザーのそれぞれの波長領域内におい
て、吸収能をもたらしめることが可能である。この点に関して、吸収能を有する
層部である装飾層、あるいは吸収能を有する層部とされた装飾層が、キャリアフ
ィルムのなるべく近くに配されていると有利である。より詳しく言えば、吸収さ
れたレーザー照射は、当該層部の温度を上昇させ、その場合、当該層部の上に積
層されている各層部は、該温度上昇に対応して、液化、気体発生、蒸発等により
除去される。

【００３３】 レーザーの各部あるいはレーザー照射に変更を加えると、装飾層とキャリアフ
ィルムの双方に関し、色変化あるいは曇りの効果が生じる可能性があることを念
頭に置かなければならない。

【００３４】 間隙領域を形成する領域における装飾層の除去は、上述の態様のレーザー照射
によってのみ可能であるものではないことを理解されたい。たとえば、キャリア
フィルムから遠い側にある開放された表面において、各パッチの大きさに対応す
る抗溶媒性のマスクを、装飾層に提供することも検討可能である。その場合、本
発明によれば、採用される処理工程は、装飾層がマスクにより覆われた後に、マ
スクにより覆われていない領域において、適当な溶媒あるいは腐食剤の作用によ
り装飾層を形成する材料を除去するような処理工程である。しかしながら、この
処理工程は、適当な設備が使用可能であることを前提としており、特に腐食剤を
使用することとする場合はそうであることを理解されたい。

【００３５】 さらに、間隙領域を形成する領域においては、他の態様、たとえば直接的な力
学的作用（小粒子の吹付け）や、洗浄除去可能なラッカー層部の使用により、装
飾層材料の除去処理を達成することも可能である。最後に、間隙領域における装
飾層の除去のために、テイカー要素あるいは受層要素、たとえば、本発明による
転写箔の間隙領域に対応するパターンに露出された接着層が提供されているテイ
カー箔あるいは受層箔を使用することも可能である。広い領域に亘って装飾層を
提供された転写箔に、テイカー要素あるいは受層要素が押し付けられると、テイ
カー要素あるいは受層要素が押し付けられた領域あるいは各接着層がテイカー要
素あるいは受層要素上に存在している領域において、装飾層材料あるいは装飾層
がテイカー要素あるいは受層要素上の接着層に固く付着し、その後に続く転写箔
とテイカー要素あるいは受層要素との分離時において、テイカー要素あるいは受
層要素の装飾層への付着領域に該装飾層が載り、結果として、間隙領域を形成す
る領域において、該装飾層が転写箔のキャリアフィルムから完全に剥離される。

【００３６】 本発明の概念は、光学的回折効果を有する空間的構造が浮出印刷されている熱
変形可能な層部を、少なくとも１層備えた装飾部を有するような転写箔を提供す
ることが目的である場合に、特に好適に使用される。その場合、熱変形可能な層
部が透明であり、かつ、該熱変形可能な層部の表面のうちキャリアフィルムから
遠い側にあり上記の空間的構造を担持している表面において、該熱変形可能な層
部が上記の空間構造の視認容易性を向上させるコントラスト層部により少なくと
も一部領域的に覆われているような形態であることが好ましく、ここで該コント
ラスト層部は、金属層部により形成されていることが好ましい。そうした種類の
転写箔は、特に光変容性偽造防止要素（ＯＶＤ）として使用され得るものであり
、たとえば、紙幣、有価証券や債券等の金銭価値を有する紙片や株式、クレジッ
トカードあるいは小切手の、偽造に対する防止効果を高めるために使用され得る
。個々のＯＶＤが従来の伝統的な手法によって大きな装飾層から浮出印刷あるい
は転写された場合において、特に深刻なフレーク発生が起こり得るのは、まさに
金属層部の存在に起因するものである。

【００３７】 本発明によれば、そうした種類のＯＶＤ用転写箔の作製のために採用される処
理方法は、独立した複数のパッチを形成するためにパッチの縁に沿って材料が除
去されるのに先立って、パッチの縁（所望のＯＶＤの周縁）を超えてあらゆる箇
所に亘って広がる領域に熱変形可能な層部が塗布され、それに対応した広い面積
に亘って、換言すれば熱変形可能な層部全体に亘って、上記の空間的構造が浮出
印刷されるような処理方法である。好ましくは、この必要とされる処理方法は、
上記のような広い表面積に亘って、装飾層の少なくとも独立した複数の層部が、
複数のパッチ領域を覆うようにしてキャリアフィルムに塗布され、その後、後段
的な材料除去により間隙領域が形成されるような方法である。ここで、装飾層の
少なくとも独立した複数の層部が、キャリアフィルムの全表面積に亘って該キャ
リアフィルムに塗布されることさえ可能である。

【００３８】 一般的に光学的回折効果を有する空間的構造が、その大きさおよび配向性の点
において、ＯＶＤを形成するパッチと正確に一致させられることが極めて重要で
あるのは、まさにＯＶＤの場合においてである。装飾層を形成するラッカーの適
当なパッチをキャリアフィルムに塗布することにより上記の一致を達成しようと
試みると、上記の構造を担持すべき変形可能なラッカーがキャリアフィルムとと
もに適切に熱せられなくてはならない後段的複製時において、たとえばキャリア
フィルムが収縮したり、変形したり、引き延ばされたりするために、キャリアフ
ィルムの位置が所望の位置に対してずれてしまう。このずれは、状況によっては
無視できない程度となる。このことにより、熱可塑性のラッカーから成るパッチ
に対する複製打型の正確な方向付けを達成することは困難とされ、比較的大きな
誤差が許容されなくてはならなくなる。しかしながら、本発明によって、比較的
大きな打型を使用して複製処理がなされれば、除去処理に用いられるレーザービ
ームあるいはその他の除去要素が上記の構造に対して適当かつ正確に照準付けら
れるような処理方法（たとえば、明確かつ乱れのないレーザービーム等の照準付
けのために検出されかつ位置整合用の印として使用される、上記構造のある特定
の構成要素によって可能とされる処理方法）によって、ＯＶＤの縁に対する上記
構造のパターンの正確な方向付けが、後段的に良好に実施される。

【００３９】 以下において、本発明による転写箔およびその適当な作製工程のさらなる詳細
が、図面を参照しながらより詳しく説明される。

【００４０】 図１および３を参照すると、それらの図に示されているのは本発明による転写
箔あるいは浮出箔である。該転写箔あるいは浮出箔は、キャリアフィルム１を含
んでおり、これはたとえば約２０μｍ厚の従来型のポリエステルフィルムである
。図１に示されているように、キャリアフィルム１の上に配されているのは、全
体として参照番号３で特定され構成および形態（層部および材料の連なり方）の
点では既知の転写箔用装飾層と同様である装飾層の、複数のパッチ２である。図
示されている実施形態では、各パッチ２は、長方形というごく単純化された形状
で示されている。そうした種類のパッチ２は、たとえば、金銭価値を有する紙片
とりわけ紙幣の偽造防止のためのＯＶＤとして使用されることが可能であり、該
目的のために、ＯＶＤすなわちパッチ２は、熱および／または圧力の効果の下、
後段的にそれぞれ別個にキャリアフィルム１から紙幣の紙片あるいは類似の紙片
に転写される。この点において、本発明による転写箔の構造および使用法は、既
知の転写箔と同様であり、したがってここではこれ以上詳細に説明される必要は
ない。

【００４１】 図１に示された実施形態においては、転写箔の個々のパッチ２は、間隙領域を
形成し典型的には５−１０ｍｍの幅を有する緩衝領域４によって、互いに隔てら
れている。加えて、上記のパッチは、いかなる所望形状をもとり得る点を理解さ
れたい。たとえば、上記のパッチは、不規則な縁の形状を有していてもよく、あ
るいは楕円形または円形であってもよい。これらの場合には、緩衝領域４もまた
、対応した不規則な形状となる。

【００４２】 図３は、装飾層３の構造を例として示した断面図である。図３に示された実施
形態における装飾層３は、実質的に４層の層部を有する。より詳しく言えば、１
つには剥離層あるいは分離層５を有しており、この剥離層あるいは分離層５は、
装飾層３により形成されたパッチ２が支持体（図示せず）に転写される際におい
て、該パッチ２のキャリアフィルムからの容易かつ破損を生じない剥離あるいは
分離を保証するものである。分離層５の上には、透明で熱変形可能な保護ラッカ
ー層部６が続いており、該保護ラッカー層部６のキャリアフィルムから遠い側の
表面上には、空間的構造７が、たとえば回折格子、ホログラムあるいはそれらに
類似のものの形態で提供されている。そうした種類の空間的構造７は、視線角度
あるいは照明角度によって変容する、適切な設計のＯＶＤを提供するものである
。

【００４３】 空間的構造あるいは空間的構造により発生させられる効果の視認容易性を向上
させるために、空間的構造７を担持する保護ラッカー層部６の表面は、保護ラッ
カー層部６の屈折率とは相当程度異なる屈折率を有するコントラスト層部８によ
り覆われている。ほとんどの場合において、このコントラスト層部８は、たとえ
ば蒸着により塗布され得るような、高い反射能を有する金属層部である。

【００４４】 装飾層３は、最後の層部として接着層部９を含んでおり、この接着層部９によ
り、従来の転写箔あるいは浮出箔から既知の手法で、パッチ２が支持体上に固定
される。接着層部は、一般的には、熱により活性化される接着剤を含んでいる。
しかしながら、その代わりに、他の形式の放射とりわけ紫外放射により活性化さ
れ得る接着剤、あるいはそのような放射の効果により架橋結合する接着剤を提供
することも可能であり、その場合においては、パッチ２の支持体への接着強度は
おそらくは向上させられる。

【００４５】 また、接着層９を省略し、その代わりに、パッチ２が転写されるべき支持体の
必要な各領域に、接着剤を適当に塗布することも可能である。

【００４６】 既に述べたように、図３に示された積層形態は、単なる一例に過ぎない。装飾
層３は、一般的に従来の転写箔および浮出箔から既知の他の形態に変更されるこ
とが可能であり、とくに偽造防止の目的においてはそうである。たとえば、有色
で不透明あるいは透明な追加のラッカー層部を使用することによる変更が可能で
あり、また特に、一部領域的に提供された反射層部８による変更が可能である。

【００４７】 図１に示された実施形態においては、個々のパッチ２の間に存在するそれぞれ
の緩衝領域４は、その全体において装飾層材料３が全く塗布されていないのに対
し、図２に示された実施形態においては、個々のパッチ２が、装飾層３が除去さ
れた境界部４’の形式の間隙領域によってのみ包囲された態様が提供されている
。このような構成においては、境界部４’は、少なくとも１ｍｍであり好ましく
は少なくとも２ｍｍである幅ｂを有している。

【００４８】 個々のパッチ２の間にある間隙領域４および４’は、他の方法によっても形成
され得る。図１から３に示された各実施形態においては、それらの間隙領域はレ
ーザー照射（図的には、矢印１０および破線１１により示されている）の作用に
より形成されている。図３に示した実施形態においては、極めて多種多様なレー
ザー照射を吸収する一繋がりの金属層部８が存在し、また、エキシマレーザーの
照射が使用される場合においては、該照射はラッカー層部にも吸収されるので、
間隙領域を形成する領域のみが適切に照射されしたがって熱せられ、間隙領域４
および４’においてのみ装飾層３を形成する材料が除去されるように、レーザー
ビーム１０（１１）は、適当な形状とされるかあるいはキャリアフィルム上にお
いて適当な移動をさせられなくてはならない。

【００４９】 この点において、透明なキャリアフィルム１を使用し、同時に、吸収を全くあ
るいは少なくとも実質的には生じさせずにキャリアフィルム１上を素通りするよ
うな照射をもたらすレーザーを用いて処理を行うことが望ましい。さらに言えば
、そのような場合においては、レーザー照射が、キャリアフィルム１にも損傷を
与えたり、あるいは実際にキャリアフィルム１を裂損させてしまう危険性もなく
なる。そのため、外見上とりわけ美しい間隙領域４および４’の形成、特に装飾
層３の完全なる除去が可能となる。

【００５０】 図５ａおよび図５ｂに示された浮出箔もまた、キャリアフィルム１を含んでい
る。当初において（図５ａ参照）、キャリアフィルム１の全表面上に配されてい
るのは、装飾ラッカー層部１６および接着層部１９であり、これらは共同で装飾
層１３を形成している。この形態の独特の特徴として、図５ａに示されるような
転写箔の当初の構成は、後に間隙領域４が配置される予定である領域において、
追加のラッカー層部１２を有しており、この追加のラッカー層部１２は、いかな
る場合においてもその上に照射されたレーザー光（矢印１０で示されている）を
吸収するような組成あるいは構成とされる（適当な着色による等）。その一方で
、該レーザー光は、相当に低い程度しか吸収されずに、ラッカー層部１６および
接着層部１９、あるいはこの２つの層部のうちどちらか一方のみを通過すること
ができる。

【００５１】 追加のラッカー層部１２は、レーザー照射に曝されると相当程度に熱せられ、
それにより、装飾ラッカー層部１６および接着層部１９中、該追加のラッカー層
部１２の直上に位置する領域は、キャリアフィルム１から除去される。この除去
は、たとえば層部１２の蒸発などにより達成される。それにより、図５ｂに示さ
れるような構成がもたらされる。

【００５２】 当初の転写箔が図５ａに示されるように構成されている場合、接着層部１９お
よび装飾ラッカー層部１６を介して照射を行う必然性はない。逆に、反対側、す
なわちキャリアフィルムの開放された表面１４の側からレーザー光による照射を
行うことも可能である。いずれにしても、追加のラッカー層部１２が存在する領
域においてのみ装飾層部１３が同様の効果に曝され、該領域から装飾層が除去さ
れて間隙領域４が形成される。

【００５３】 図６は、レーザー光の使用により適当な間隙領域が形成され得るような、さら
に別の可能な方法を示したものであり、ここでは、形成される間隙領域は破線２
４によって示されているのみである。図６に示された転写箔は、実質的には図３
に示されたものと同様であるが、金属部２８が透明な保護ラッカー層部２６の全
表面に亘って提供されているのではなく、独立した複数の領域上においてのみ提
供されている点が異なっている。しかしながら、後に間隙領域４および４’が提
供されるべき領域は、金属部が配されていない領域２７に隣接する金属部を有し
ている。

【００５４】 ここで、本実施形態において、キャリアフィルム１ならびに層部２６および２
９に損傷を与えないレーザー光（矢印１０）が破線１１で示されるビーム幅で照
射され、この照射が、間隙領域４および４’が形成されるべき領域にある金属部
２８にレーザ光が作用するようにして、しかし金属部を有さない領域２７上にあ
る側方境界１１を広げることなく行われる場合、緩衝領域が形成されるべき領域
、すなわち破線２４間の金属部が存在する領域においてのみ装飾層２３が破壊さ
れ、最終的にはキャリアフィルム１から除去される状態を提供することが可能で
ある。一方、金属層部２８の領域以外の、レーザー光が作用しない領域において
は、装飾層２３は保持される。図６を参照しながら説明された処理工程の有する
利点は、レーザービームの導光および焦点合わせを、図３に示されるような、間
隙領域４および４’の幾何学的特性がレーザービームの幾何学的特性および移動
特性にのみ依存する場合に要求されるであろうほど正確には、行う必要がない点
である。それにも拘らず、図６の実施形態においても、少なくとも特定の領域に
おいて空間的構造７がとりわけ明瞭に視認できるようにするために、それらの領
域において空間的構造７を金属被覆することが可能である。

【００５５】 最後に、図７は、レーザー照射を使用せずに本発明により転写箔を作製するた
めの、可能な方法を図示したものである。

【００５６】 図７に示された転写箔もまた、参照番号３３により全体が指定されている装飾
層が剥離層あるいは分離層５を介して固定されている、従来型のキャリアフィル
ム１を含んでいる。

【００５７】 装飾層３３は、１つには装飾ラッカー層部３６を含んでおり、この装飾ラッカ
ー層部３６は、ここでも同様に複数の層部を含んでおり、かつ適当なパターンに
配置され得る。装飾層部３６あるいはとりわけその界面３７に、他の実施形態の
空間的構造７に対応するような空間的構造を提供することも可能であり、またこ
の空間的構造には、反射層部を提供することが可能である。

【００５８】 図７に示された転写箔が有する根本的な相違点は、ここでは装飾層３３が、よ
り外側の層すなわちキャリアフィルム１から遠い側に位置する層として、マスク
として作用する層部３８を有している点である。参照番号３８に示されるマスク
は、溶媒および／または腐食剤に抗力を有する材料、たとえばラッカーを含んで
いる。転写箔の作製に際しては、たとえば適当なプリント処理により、後にパッ
チ２を形成すべき領域においてのみ、マスク３８が塗布される。その後、たとえ
ばここでも紫外放射を利用することなどによりマスクが固化されると、該マスク
に対応する転写箔の表面３９が、適当な溶媒あるいは腐食剤の作用に曝されるが
、ここでこの適当な溶媒あるいは腐食剤は、明らかな通り、マスク３８には作用
せずに装飾ラッカー層部３６に作用する。その結果、装飾ラッカー層部３６は、
やはり後段的な同様の方法により、マスク３８が施されないままであった間隙領
域３４から除去される。すなわち、間隙領域３４においては、広い表面積を覆う
装飾ラッカー層部３６の塗布後において装飾層材料がキャリアフィルムから完全
に除去され、それにより、このような転写箔の形態の場合にも、適当な転写処理
において、個々のパッチ２が、完全かつフレーク形成を伴わずに支持体上に転写
され得ることとなる。

【００５９】 本発明による転写箔の形態は、基本的には既知の転写箔と同様のものであり、
それゆえ転写箔の個々の層を形成する各層部の組成例については、本明細書に詳
細な説明を含む必要がないことを、最後にもう一度繰り返しておく。この点に関
しては、たとえば、ドイツ国公開特許第４４／２３／２９１号に記載されている
ような種々の層部の組成および塗布方法が参照され得る。

【図面の簡単な説明】

【図１】 図１は、ＯＶＤの一例として示された、パッチを有する転写箔の一部の平面図

【図２】 図２は、別の実施形態に関する、図１と同様の平面図

【図３】 図３は、図１におけるＩＩＩ−ＩＩＩの線に沿って取られた断面図

【図４】 図４は、図１に示されたような転写箔上の小領域であって、４個のパッチが相
対する小領域の、拡大された平面図

【図５】 図５は、転写箔の第１の実施形態において、図４のＶ−Ｖの線に沿って取られ
た断面図であり、ａは、間隙領域形成のために装飾層材料が除去される前の状態
を示し、ｂは、間隙領域形成のためにレーザー照射により装飾層材料が除去され
た後の状態を示す

【図６】 図６は、転写箔のある別の実施形態において、図４のＶ−Ｖの線に沿って取ら
れた断面図であり、間隙領域形成前の状態を示した図

【図７】 図７は、腐食処理あるいは溶解処理により間隙領域が形成される、転写箔の第
３の実施形態において、図４のＶ−Ｖの線に沿って取られた断面図

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 ＥＰ(ＡＴ，ＢＥ，ＣＨ，ＣＹ， ＤＥ，ＤＫ，ＥＳ，ＦＩ，ＦＲ，ＧＢ，ＧＲ，ＩＥ，Ｉ Ｔ，ＬＵ，ＭＣ，ＮＬ，ＰＴ，ＳＥ)，ＯＡ(ＢＦ，ＢＪ ，ＣＦ，ＣＧ，ＣＩ，ＣＭ，ＧＡ，ＧＮ，ＧＷ，ＭＬ， ＭＲ，ＮＥ，ＳＮ，ＴＤ，ＴＧ)，ＡＰ(ＧＨ，ＧＭ，Ｋ Ｅ，ＬＳ，ＭＷ，ＳＤ，ＳＬ，ＳＺ，ＵＧ，ＺＷ)，Ｅ Ａ(ＡＭ，ＡＺ，ＢＹ，ＫＧ，ＫＺ，ＭＤ，ＲＵ，ＴＪ ，ＴＭ)，ＡＬ，ＡＭ，ＡＴ，ＡＵ，ＡＺ，ＢＡ，ＢＢ ，ＢＧ，ＢＲ，ＢＹ，ＣＡ，ＣＨ，ＣＮ，ＣＵ，ＣＺ， ＤＫ，ＥＥ，ＥＳ，ＦＩ，ＧＢ，ＧＤ，ＧＥ，ＧＨ，Ｇ Ｍ，ＨＲ，ＨＵ，ＩＤ，ＩＬ，ＩＮ，ＩＳ，ＪＰ，ＫＥ ，ＫＧ，ＫＰ，ＫＲ，ＫＺ，ＬＣ，ＬＫ，ＬＲ，ＬＳ， ＬＴ，ＬＵ，ＬＶ，ＭＤ，ＭＧ，ＭＫ，ＭＮ，ＭＷ，Ｍ Ｘ，ＮＯ，ＮＺ，ＰＬ，ＰＴ，ＲＯ，ＲＵ，ＳＤ，ＳＥ ，ＳＧ，ＳＩ，ＳＫ，ＳＬ，ＴＪ，ＴＭ，ＴＲ，ＴＴ， ＵＡ，ＵＧ，ＵＳ，ＵＺ，ＶＮ，ＹＵ，ＺＷ

Claims (20)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 転写箔、特には熱および／または圧力により支持体上に転写
   可能であり前記支持体に接着態様で付着する装飾層（３、１３、２３）が剥離可
   能に載置されたキャリアフィルム（１）を有する熱転写箔であって、 前記装飾層（３、１３、２３）が、互いに完全に分離された、各々独立に支持
   体上に転写され得る独立した複数のパッチ（２）に分割されており、 前記キャリアフィルム（１）上の前記パッチ（２）の各々の周囲に、少なくと
   も１ｍｍであり好ましくは少なくとも２ｍｍである幅（ａ、ｂ）を有する、間隙
   領域（４、４’、３４）がそれぞれ提供されており、 前記間隙領域（４、４’、３４）において前記キャリアフィルム（１）が露出
   されるように、前記間隙領域（４、４’、３４）に当初存在する装飾層材料が後
   段的に除去されていることを特徴とする転写箔、特に熱転写箔。
2. 【請求項２】 前記間隙領域（４’）が、前記パッチ（２）の周囲の境界部
   により形成されていることを特徴とする請求項１に記載の転写箔。
3. 【請求項３】 前記装飾層材料（３、１３、２３）が、レーザー照射（１０
   、１１）により、前記間隙領域（４、４’）において除去されることを特徴とす
   る請求項１あるいは２に記載の転写箔。
4. 【請求項４】 前記キャリアフィルム（１）が透明である一方、前記装飾層
   （３、１３、２３）が、前記除去処理に使用される波長のレーザー光を吸収する
   材料から成る少なくとも１層の層部（８、１２、２８）を有することを特徴とす
   る請求項１から３のいずれか１項に記載の転写箔。
5. 【請求項５】 前記装飾層（３、２３）が金属層部（８、２８）を有するこ
   とを特徴とする請求項３あるいは４に記載の転写箔。
6. 【請求項６】 前記キャリアフィルム（１）および／または前記キャリアフ
   ィルム（１）に隣接する層部（１２）が、レーザー照射（１０、１１）を吸収す
   る材料で形成されていることを特徴とする請求項３に記載の転写箔。
7. 【請求項７】 前記キャリアフィルム（１）が、前記装飾層（１３）の除去
   に使用されるレーザー照射を吸収するラッカー層部（１２）を担持しており、該
   ラッカー層部（１２）上に前記装飾層（１３）が剥離可能に載置されていること
   を特徴とする請求項６に記載の転写箔。
8. 【請求項８】 前記装飾層（３３）が、前記キャリアフィルム（１）から遠
   い側にある開放された表面（３９）において、前記パッチ（２）のそれぞれの大
   きさに対応する抗溶媒性のマスク（３８）を提供されていることを特徴とする請
   求項１あるいは２に記載の転写箔。
9. 【請求項９】 前記装飾層（３、２３）が、光学的回折効果を有する空間的
   構造（７）が浮出印刷された少なくとも１層の熱変形可能な層部（６、２６）を
   有することを特徴とする請求項１から８のいずれか１項に記載の転写箔。
10. 【請求項１０】 前記熱変形可能な層部（６、２６）が透明であり、前記熱
    変形可能な層部（６、２６）の前記キャリアフィルム（１）から遠い側にある表
    面であって、前記空間構造（７）を担持している表面において、前記熱変形可能
    な層部（６、２６）が、前記空間的構造（７）の視認容易性を向上させるコント
    ラスト層部（８）によって少なくとも一部領域的に覆われていることを特徴とす
    る請求項９に記載の転写箔。
11. 【請求項１１】 前記コントラスト層部が、反射能を有する金属層部（８、
    ２８）により形成されていることを特徴とする請求項１０に記載の転写箔。
12. 【請求項１２】 請求項１から１１のいずれか１項に記載の転写箔を作製す
    るための方法であって、 形成されるべき転写可能な前記パッチ（２）の縁を超えてあらゆる箇所に亘っ
    て前記装飾層（３、１３、２３、３３）が広がるように、従来の転写箔の作製か
    ら既知であるような手法で、前記装飾層（３、１３、２３、３３）を形成する前
    記材料が前記キャリアフィルム（１）に塗布され、 前記間隙領域（４、４’、３４）を形成するために、前記独立した複数のパッ
    チ（２）の各々の縁全体に沿って、装飾層材料が後段的に除去されることを特徴
    とする方法。
13. 【請求項１３】 請求項３から１１のいずれか１項に記載の転写箔を作製す
    るための請求項１２に記載の方法であって、 前記装飾層（３、１３、２３）を形成する前記材料層部の塗布後において、前
    記独立した複数のパッチ（２）の縁に沿って、前記装飾層（３、１３、２３）の
    一部分であって、１ｍｍの幅を有する少なくとも１つの長板状の一部分が、レー
    ザー照射（１０、１１）によって前記キャリアフィルム（１）から完全に除去さ
    れることを特徴とする方法。
14. 【請求項１４】 除去されるべき前記領域（４、４’）に亘って移動するレ
    ーザービームが、前記装飾層（３）の除去に使用されることを特徴とする請求項
    １３に記載の方法。
15. 【請求項１５】 前記装飾層（３、１３、２３）の除去が、１つのパッチの
    周囲の除去されるべき前記領域（４、４’）の各々の形状に対応した形状を有す
    るレーザービームを使用することにより行われることを特徴とする請求項１３に
    記載の方法。
16. 【請求項１６】 前記除去処理に使用されるレーザー照射を前記装飾層（３
    、１３、２３）に使用される他の材料や前記キャリアフィルム（１）よりも強く
    吸収する材料から成る層部（８、１２、２８）が、後段的に除去されるべき前記
    領域（４、４’）において、前記装飾層（３、１３、２３）に提供され、それに
    より、レーザー照射が前記装飾層（３、１３、２３）に作用する際において、よ
    り高い吸収能を有する前記層部（８、１２、２８）が存在する前記領域（４、４
    ’）のみが除去され、所望の前記領域（４、４’）の除去が終了するとレーザー
    照射の作用が停止されることを特徴とする請求項１３に記載の方法。
17. 【請求項１７】 前記キャリアフィルム（１）から遠い側にある前記装飾層
    （３３）の開放された面上の、後に前記パッチを形成する領域において、前記装
    飾層（３３）が溶媒および／または腐食剤に対して抗力を有するマスク（３８）
    により覆われ、その後、覆われていない領域（３４）において、前記装飾層（３
    ３）を形成する前記材料が、適当な溶媒または腐食剤の作用により除去されるこ
    とを特徴とする請求項１２に記載の方法。
18. 【請求項１８】 請求項９から１１のいずれか１項に記載の転写箔を作製す
    るための請求項１２から１７のいずれか１項に記載の方法であって、 前記独立した複数のパッチ（２）を形成するために前記パッチの縁に沿って材
    料の前記除去処理が行われるのに先立って、前記パッチの縁を超えてあらゆる箇
    所に亘って広がる領域に前記熱変形可能な層部（６、２６）が塗布され、それに
    対応して、前記空間的構造（７）が広い表面積に亘って浮出印刷されることを特
    徴とする方法。
19. 【請求項１９】 前記装飾層（３、１３、２３、３３）の少なくとも独立し
    た複数の層部が、前記複数のパッチ（２）の領域を覆うようにして広い表面積に
    亘り前記キャリアフィルム（１）に塗布され、その後、後段的な除去により前記
    間隙領域（４、４’、３４）が形成されることを特徴とする請求項１２から１８
    のいずれか１項に記載の方法。
20. 【請求項２０】 前記間隙領域（４、４’、３４）の形成に先立って、前記
    装飾層（３、１３、２３、３３）の少なくとも独立した複数の層部が、前記キャ
    リアフィルム（１）の全表面積に亘って前記キャリアフィルム（１）に塗布され
    ることを特徴とする請求項１９に記載の方法。