JP2002350545A - エネルギー測定方法及び測定装置 - Google Patents

エネルギー測定方法及び測定装置

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JP2002350545A JP2001158908A JP2001158908A JP2002350545A JP 2002350545 A JP2002350545 A JP 2002350545A JP 2001158908 A JP2001158908 A JP 2001158908A JP 2001158908 A JP2001158908 A JP 2001158908A JP 2002350545 A JP2002350545 A JP 2002350545A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 信号パルス間のパルス間隔が短い場合であっ
ても、個々の信号パルスのエネルギーを正しくかつ精度
良く測定することが可能なエネルギー測定方法及び測定
装置を提供する。 【解決手段】 測定対象としてエネルギー測定装置1に
入力された信号パルスPに対して、ゲート積分器32で
取得された積分信号強度Q、及びパルス間隔計測器23
で計測されたパルス間隔Tから、エネルギー算出部10
において全積分強度に対応するエネルギーEを算出す
る。このとき、その信号パルスよりも前に入力された信
号パルスでの積分信号強度またはエネルギーの少なくと
も一方及びパルス間隔からパイルアップ補正を行う。こ
れにより、パイルアップの影響が除外された正しいエネ
ルギーEを精度良く求めることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、入力された信号パ
ルスのパルス波形に対し、その信号強度を積分して信号
パルスのエネルギーを測定するエネルギー測定方法及び
測定装置に関するものである。本発明は放射線のエネル
ギー計測や線量計測のみならず、放射線の検出位置情報
や放射線画像の計測などにも広く応用され、とくに核医
学診断に用いられるガンマカメラ、SPECT(Single
photon emission computed tomography)装置、PET(P
ositron emission tomography)装置などにも応用され
る。
【0002】
【従来の技術】γ線や荷電粒子などの放射線(エネルギ
ー線)について測定を行う場合、放射線の検出には、例
えばシンチレータを用いたシンチレーション検出器など
の放射線検出器が用いられる。そして、放射線検出器か
ら出力された検出信号に対して、所定の信号処理あるい
はさらに演算処理等を行うことにより必要な情報が得ら
れる。
【0003】例えば、シンチレーション検出器では、シ
ンチレータ中で発生するパルス状のシンチレーション光
によって、シンチレータに入射した放射線を検出する。
このシンチレーション光による光信号パルスは、光電子
増倍管などの光検出器で電気信号パルスに変換される。
すなわち、シンチレーション光が光電子増倍管の光電面
に入射するとその光電面から光強度に比例して複数の光
電子を発生し、この光電子は第一ダイノードに集められ
たのち、順次後続のダイノードによって増倍され、パル
ス信号(電流信号)となって出力される。
【0004】一般に、放射線検出器に使用されるシンチ
レータのシンチレーション光は例えば指数関数的に信号
強度が減衰するようなパルス波形を有する。そして、第
一ダイノードに集められる光電子の総数がシンチレータ
に吸収された放射線のエネルギーに対応する。そこで放
射線のエネルギーを計測するには、光電子増倍管からの
出力信号を適当な時間間隔にわたって積分する必要があ
る。一般に1つの信号パルスによって、第一ダイノード
に集められる光電子の総数は十分大きくないので、上記
の積分時間はシンチレーション光の大部分を積分するよ
うに設定するのが好ましい。この積分時間が短い場合に
は集められる光電子数が減少するため、その統計的な変
動によって、エネルギー分解能が低下する。
【0005】放射線検出器による放射線の単位時間当た
りの検出数(計数率)が高い状態で測定が行われると、
信号パルス間のパルス間隔が、個々の信号パルスのパル
ス幅と同程度またはそれよりも短い時間間隔となる確率
が増大し、2以上の信号パルスが互いに時間的に重なり
合う、いわゆる「パイルアップ」が発生する。このと
き、エネルギーを測定しようとする信号パルスに対して
信号強度(電流信号)の積分を行うと、その信号パルス
にパイルアップしている他の信号パルスの信号強度が同
時に積分されてしまい、測定対象となっている信号パル
スのエネルギーを正しく測定することができないという
問題を生じる。
【0006】パルス波形が1つの指数関数で表される場
合、パイルアップによる誤差を少なくするために従来か
らよく用いられる比較的簡単な方法は、デレイライン・
クリッピング法によってパルスの時間幅を短縮し、積分
時間をそのパルス時間幅にほぼ等しく設定する方法であ
る。この場合、パルスの時間幅を短くするほど積分時間
も短くすることができ、高い計数率においてパイルアッ
プを生ずる確率が減少し、計数率特性を向上することが
できるが、その代わり、各信号パルスごとに光電子増倍
管の第一ダイノードに集められる光電子数が減少し、パ
イルアップが発生しないような低い計数率においてもエ
ネルギー分解能が低下する欠点があった。
【0007】これを改良する従来技術の1つとして、Ta
nakaらの方法(文献1:Nucl. Instr. Meth. Vol. 158,
pp. 459-466, 1979)では、上記のようにデレイライン
・クリッピング法によってパルスの時間幅を短縮する
が、積分時間を後続パルスの発生によって制御し、後続
パルスが発生しない範囲において十分長くすることによ
って、低い計数率におけるエネルギー分解能の低下を避
けている。
【0008】また、Kolodziejczykの方法(文献2:米
国特許第5430406号公報)では、パルス信号(電
流信号)とそれを時間的に積分した積分信号とを適当な
荷重で加算することによって、時間的に一定で、かつ振
幅がエネルギーに比例するような加算信号を発生させ、
この加算信号の振幅をサンプリングして測定する方法が
用いられている。測定対象の信号パルスの加算信号を後
続の信号パルスが到来する直前にサンプリングし、その
値を計測することによって、後続の信号パルスのパイル
アップの影響を除去することができるが、前の信号パル
スのパイルアップの影響を除去することはできない。
【0009】さらに、他の方法として、Wongの方法(文
献3:国際特許WO98/50802号公報)がある。
この方法は、上記したKolodziejczykの方法と同様に電
流信号と積分信号の加算信号を測定する方法を用いてい
るが、さらに測定対象の信号パルスより以前に到来した
すべての信号パルスの影響も補正するように改良したも
のである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】シンチレーション検出
器などの放射線検出器を利用して放射線を計測する場
合、計数率が高くなって信号パルスのパイルアップが起
こると、エネルギーの測定値に誤差を生じたり、エネル
ギー分解能が低下する。シンチレーション検出器を利用
したガンマカメラ、SPECT装置、PET装置などの
放射線画像計測装置において信号パルスのパイルアップ
が起こると、放射線エネルギーのみならず、放射線の検
出位置を示す位置信号も正しく計測されないので、得ら
れる放射線画像の解像力が低下したり画像に歪みを生じ
たりする。これらの高計数率における問題は従来のパイ
ルアップ補正法によってある程度防ぐことができるが、
不十分であった。
【0011】すなわち、前記したようにデレイライン・
クリッピング法によってパルス幅を短縮する方法では、
パイルアップが発生しないような低い計数率においても
エネルギー分解能や画像解像力が低下する欠点があっ
た。Tanakaらの方法でも、高い計数率まで測定できるよ
うにパルス幅を極端に短かくすると高い計数率での分解
能が低下する。電流信号と積分信号とを適当な荷重で加
算した信号を用いるKolodziejczykの方法およびWongの
方法では、信号パルスの電流信号が時間の経過とともに
統計的に激しく変動するために、計数率の増大とともに
エネルギー分解能や画像解像力が大きく低下する欠点が
あった。また、これらの方法はすべてシンチレーション
のパルス波形が単一の指数関数で近似できる場合にのみ
応用することができ、それ以外の場合、例えば減衰時定
数の異なる2つ以上の指数関数の和として近似されるよ
うな場合には適用できないという欠点があった。
【0012】本発明は、以上の問題点を解決するために
なされたものであり、高い計数率においても、個々の信
号パルスのエネルギーを正しくかつ精度良く測定するこ
とが可能なエネルギー測定方法及び測定装置を提供し、
放射線計測や放射線画像計測の性能を向上することを目
的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成す
るために、本発明によるエネルギー測定方法は、測定対
象の信号パルスのパルス波形に対し、その信号強度を積
分して信号パルスのエネルギーを測定するエネルギー測
定方法であって、(1)入力された信号パルスに対し、
信号パルスから次の信号パルスまでの時間間隔であるパ
ルス間隔を取得するパルス間隔取得ステップと、(2)
パルス間隔に対応するように設定された所定の積分時間
で、信号パルスの信号強度を積分して積分信号強度を取
得する積分強度取得ステップと、(3)積分強度取得ス
テップで取得された積分信号強度、及びパルス間隔取得
ステップで取得されたパルス間隔から、信号パルスの全
積分強度に対応するエネルギーを算出するエネルギー算
出ステップとを備え、(4)エネルギー算出ステップに
おいて、測定対象の信号パルスでの積分信号強度及びパ
ルス間隔から算出された補正前のエネルギーに対して、
該信号パルスよりも前に入力された信号パルスでの積分
信号強度またはエネルギーの少なくとも一方及びパルス
間隔からパイルアップ補正を行って、補正後のエネルギ
ーを算出することを特徴とする。
【0014】また、本発明によるエネルギー測定装置
は、測定対象の信号パルスのパルス波形に対し、その信
号強度を積分して信号パルスのエネルギーを測定するエ
ネルギー測定装置であって、(a)入力された信号パル
スを分岐した一方を入力し、信号パルスに対応するトリ
ガ信号を生成するトリガ信号生成手段と、(b)トリガ
信号生成手段からのトリガ信号を入力し、トリガ信号に
基づいて、信号強度の積分を指示するためのゲート信号
を生成するゲート信号生成手段と、(c)トリガ信号生
成手段からのトリガ信号を入力し、信号パルスでのパル
ス間隔として、トリガ信号から次のトリガ信号までの時
間間隔を計測するパルス間隔計測手段と、(d)入力さ
れた信号パルスを分岐した他方を入力し、所定の遅延時
間だけ遅延させる遅延手段と、(e)遅延手段で遅延さ
れた信号パルス、及びゲート信号生成手段からのゲート
信号を入力し、ゲート信号の指示に基づいて設定された
所定の積分時間で、信号パルスの信号強度を積分して積
分信号強度を取得するゲート積分手段と、(f)ゲート
積分手段で取得された積分信号強度、及びパルス間隔計
測手段で計測されたパルス間隔から、信号パルスの全積
分強度に対応するエネルギーを算出するエネルギー算出
手段とを備え、(g)エネルギー算出手段は、測定対象
の信号パルスでの積分信号強度及びパルス間隔から算出
された補正前のエネルギーに対して、該信号パルスより
も前に入力された信号パルスでの積分信号強度またはエ
ネルギーの少なくとも一方及びパルス間隔からパイルア
ップ補正を行って、補正後のエネルギーを算出すること
を特徴とする。
【0015】上記したエネルギー測定方法及び測定装置
においては、測定対象として入力された信号パルスに対
して、パルス波形、すなわち信号強度の時間変化(電流
信号)からエネルギーを求めるとともに、その信号パル
スよりも前に入力された他の信号パルスに対して先に取
得されたデータを用いて、パイルアップ補正を行ってい
る。これにより、信号パルスにパイルアップされた他の
信号パルスの影響を除外して、個々の信号パルスのエネ
ルギーを正しく測定することができる。
【0016】また、信号パルスに対する補正前のエネル
ギーの算出及びパイルアップ補正に用いるデータとし
て、雑音信号などの影響が大きい信号パルス(電流信
号)を直接に用いず、積分信号強度、パルス間隔、及び
それらから求められたエネルギーを用いている。これに
より、信号パルスのエネルギーを精度良く測定すること
ができる。以上より、信号パルス間のパルス間隔が短
く、信号パルスにパイルアップを生じている場合であっ
ても、個々の信号パルスのエネルギーを正しくかつ精度
良く測定することが可能なエネルギー測定方法及び測定
装置が実現される。
【0017】また、エネルギー測定装置は、エネルギー
算出手段が、パイルアップ補正の演算を含むエネルギー
を算出するための演算を行うエネルギー演算手段と、測
定対象の信号パルスでの積分信号強度及びパルス間隔を
記憶する第1バッファメモリと、該信号パルスよりも前
に入力された信号パルスでの積分信号強度またはエネル
ギーの少なくとも一方及びパルス間隔を記憶する第2バ
ッファメモリとを有することを特徴とする。
【0018】このような構成により、バッファメモリに
記憶された各データを参照しつつ、エネルギーを算出す
るための演算を確実に行うことができる。
【0019】具体的なエネルギーの算出方法について
は、エネルギー測定方法(エネルギー測定装置)は、エ
ネルギー算出ステップにおいて、(エネルギー算出手段
が、)パルス間隔Tに基づいて決定される係数A(T)
及びB(T)を用い、時刻t0に入力された信号パルス
0のエネルギーE0を、信号パルスP0での積分信号強
度Q0及びパルス間隔T0と、時刻t1(t1<t0)に連
続して入力された信号パルスP1での積分信号強度Q1
びパルス間隔T1とから、次式 E0=Q0・A(T0)−Q1・B(T1) により算出することを特徴とする。
【0020】このような算出方法は、例えば、信号パル
スのパルス波形が単一の指数関数によって表される場合
の単一指数関数補正法において適用することが可能であ
る。あるいは、パルス波形が単一の指数関数以外の一般
波形によって表される場合の2項近似法においても適用
することが可能である。
【0021】あるいは、エネルギー測定方法(エネルギ
ー測定装置)は、エネルギー算出ステップにおいて、
(エネルギー算出手段が、)測定対象の信号パルスより
も前に入力された信号パルスのうちでパイルアップ補正
に用いる信号パルスの個数をJ個(J=1以上の整数)
とするとともに、パルス間隔Tに基づいて決定される係
数C0(T)及びCj(T)(j=1、…、J)を用い、
時刻t0に入力された信号パルスP0のエネルギーE
0を、信号パルスP0での積分信号強度Q0及びパルス間
隔T0と、それぞれ時刻tj(tj<tj-1)に連続して入
力されたJ個の信号パルスPjでのエネルギーEj及びパ
ルス間隔Tjとから、次式 E0=Q0・C0(T0)−Σj=1Jj・Cj(Tj) により算出することを特徴とする。
【0022】このような算出方法は、例えば、信号パル
スのパルス波形が単一の指数関数以外の一般波形によっ
て表される場合の多項補正法において適用することが可
能である。
【0023】あるいは、エネルギー測定方法(エネルギ
ー測定装置)は、エネルギー算出ステップにおいて、
(エネルギー算出手段が、)パルス間隔Tに基づいて決
定される係数D0(T)、D1(T)及びD2(T)を用
い、時刻t0に入力された信号パルスP0のエネルギーE
0を、信号パルスP0での積分信号強度Q0及びパルス間
隔T0と、時刻t1(t1<t0)に連続して入力された信
号パルスP1でのエネルギーE1及びパルス間隔T1と、
時刻t2(t2<t1)に連続して入力された信号パルス
2での積分信号強度Q2及びパルス間隔T2とから、次
式 E0=Q0・D0(T0)−E1・D1(T1)−Q2・D
2(T2) により算出することを特徴とする。
【0024】このような算出方法は、例えば、信号パル
スのパルス波形が単一の指数関数以外の一般波形によっ
て表される場合の3項近似法において適用することが可
能である。
【0025】また、エネルギー測定方法は、エネルギー
算出ステップにおいて、パルス間隔Tに基づいて決定さ
れ、エネルギーの算出に用いられる係数のそれぞれにつ
いて、複数のパルス間隔の値に対してあらかじめ求めら
れた係数の値から作成されたルックアップテーブルを用
いることを特徴とする。
【0026】同様に、エネルギー測定装置は、エネルギ
ー算出手段が、パルス間隔Tに基づいて決定され、エネ
ルギーの算出に用いられる係数のそれぞれについて、複
数のパルス間隔の値に対してあらかじめ求められた係数
の値から作成されたルックアップテーブルを有すること
を特徴とする。
【0027】このような構成により、ルックアップテー
ブルにあらかじめ用意された係数の値を参照しつつ、エ
ネルギーを算出するための演算を効率的に行うことがで
きる。ただし、これらの係数については、エネルギー算
出手段でその都度求めることとしても良い。
【0028】また、エネルギー測定方法は、信号パルス
のパルス波形をあらかじめ設定された波形弁別条件に基
づいて複数種類のパルス波形に弁別するパルス波形弁別
ステップをさらに備え、エネルギー算出ステップにおい
て、パルス波形弁別ステップで弁別されたパルス波形の
種類に対応した算出方法を用いてエネルギーを算出する
ことを特徴とする。
【0029】同様に、エネルギー測定装置は、信号パル
スのパルス波形をあらかじめ設定された波形弁別条件に
基づいて複数種類のパルス波形に弁別するパルス波形弁
別手段をさらに備え、エネルギー算出手段が、パルス波
形弁別手段で弁別されたパルス波形の種類に対応した算
出方法を用いてエネルギーを算出することを特徴とす
る。
【0030】これにより、互いに異なる複数種類のパル
ス波形のいずれかを有する信号パルスがエネルギーの測
定対象となるような場合において、入力された信号パル
スに対して、それぞれのパルス波形に対応する好適な算
出方法を用いてエネルギーの算出を行うことができる。
【0031】また、エネルギー測定装置は、ゲート積分
手段において信号パルスの信号強度を積分する積分時間
を、測定対象の信号パルスそれぞれに対して、あらかじ
め設定された最大積分時間Tmax、及びパルス間隔Tか
らゲート積分手段のリセット時間Trを引いた時間T−
rのうちの短い時間である実効積分時間T’ T’=min(Tmax,T−Tr) として設定することを特徴とする。
【0032】これにより、積分時間が長時間にわたるこ
とを防止するとともに、信号パルスそれぞれでのパルス
間隔に応じて好適な積分時間を設定して、算出されるエ
ネルギーの精度を極力向上させることができる。
【0033】
【発明の実施の形態】以下、図面とともに本発明による
エネルギー測定方法及び測定装置の好適な実施形態につ
いて詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一
要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0034】まず、本発明によるエネルギー測定方法及
び測定装置における測定対象となる信号パルスの例とし
て、図1及び図2に示す時間波形のグラフを用いて、放
射線検出器として用いられるシンチレーション検出器か
ら検出信号として出力される信号パルスについて説明す
る。
【0035】図1は、シンチレーション検出器から放射
線検出に対応して出力される信号パルスについて、その
パルス波形である信号強度の時間波形(電流信号波形)
の一例を模式的に示すグラフである。このグラフにおい
て、横軸は時間tを、また、縦軸は各時刻における信号
パルスの信号強度(電流値)を示している。
【0036】シンチレーション検出器では、シンチレー
タ中で発生するシンチレーション光による光信号パルス
に応じて、シンチレータに接続された光検出器から電気
信号パルスPが出力される。この信号パルスPは、一般
に、シンチレーション光の発生時刻に対応する時刻に立
ち上がった信号強度が、ある程度のパルス時間幅にわた
る時間的な広がりを持って減衰するパルス波形を有す
る。
【0037】具体的には、信号パルスPのパルス波形
は、例えば、図1に示すように、信号強度が立ち上がり
時刻で立ち上がった後に、時間tの経過とともに単一の
指数関数にしたがって減衰する時間波形f(t)
【0038】
【数1】 で近似されるパルス波形を示す。ここで、式(1)にお
いて、τは、信号パルスPのパルス波形での信号強度の
減衰時定数、tは、信号パルスPの立ち上がり時刻から
の経過時間を示している。また、Eは、パルス波形の信
号強度の全積分強度に対応する信号パルスPのエネルギ
ーである。
【0039】信号パルスPに対してエネルギーEの測定
を行う場合、信号パルスPのパルス幅や減衰時定数τに
応じて好適な積分時間を設定し、設定された積分時間に
わたって、パルス波形f(t)での信号強度を積分す
る。信号パルスPの立ち上がり時刻から信号強度の積分
を行う積分時間をTとすると、得られる積分電荷量であ
る積分信号強度Q(T)は、次式
【0040】
【数2】 で表される。
【0041】この積分信号強度Q(T)は、図1中にお
いて斜線を付して示した範囲での信号強度の積分値に相
当し、積分時間Tを長くするにしたがって、全積分強度
である信号パルスPのエネルギーEに近付く。表式上の
便利のため、積分レスポンスG(T)を
【0042】
【数3】 のように定義すると、式(2)に示した積分信号強度は
Q(T)=EG(T)となる。
【0043】図2は、信号パルスのパイルアップの発生
について示すグラフである。このような信号パルスのパ
イルアップは、例えば、シンチレーション検出器におけ
る放射線の単位時間当りの検出数(計数率)が高く、信
号パルス間のパルス時間間隔が短くなった場合に発生す
る。すなわち、信号パルス間のパルス間隔が、個々の信
号パルスのパルス幅と同程度またはそれよりも短くなる
と、図2(a)の時間波形のグラフに示すように、2以
上の信号パルスPのパルス波形が互いに重なり合うパイ
ルアップを生じる。
【0044】図2(a)のグラフにおいては、エネルギ
ーを測定しようとする信号パルスとして図示した信号パ
ルスP0のパルス波形に対し、信号パルスP0よりも前の
連続する2つの信号パルスP1、P2について、それぞれ
同様にパルス波形を示している。これらの信号パルスP
1及びP2は、いずれも測定対象の信号パルスP0に対し
てパイルアップしている。
【0045】ここで、図2(a)に示すように、これら
の信号パルスそれぞれの立ち上がり時刻について、信号
パルスP0の立ち上がり時刻を0として、信号パルスP1
の立ち上がり時刻を−t1、信号パルスP2の立ち上がり
時刻を−t2(−t2<−t1<0)とする。また、対象
とする信号パルスから次の信号パルスまでのパルス間隔
について、信号パルスP2でのパルス間隔をT2、信号パ
ルスP1でのパルス間隔をT1、信号パルスP0でのパル
ス間隔をT0とする。
【0046】これらの信号パルスのパルス波形に対し、
信号パルスPi(i=2、1、0)のそれぞれについ
て、次の信号パルスまでのパルス間隔Tiを積分時間と
して信号強度の積分を行うとする。このとき、信号パル
スP0に対する積分信号強度として、積分時間T0にわた
って積分した積分信号強度Q0(T0)が得られる(図2
(a)中において斜線を付して示した範囲での積分
値)。同様に、信号パルスP1、P2に対する積分信号強
度として、積分時間T1、T2にわたって積分した積分信
号強度Q1(T1)、Q2(T2)がそれぞれ得られる。
【0047】測定しようとする信号パルスP0のエネル
ギーE0は、図2(b)中において斜線を付して示すよ
うに、信号パルスP0のパルス波形に含まれる信号強度
の全体を積分した積分信号強度に相当する。ここで、信
号パルスの頻度が低くパイルアップが発生していない場
合には、測定対象としている信号パルスのパルス波形f
(t)が既知であれば、上記した式(2)を用いて、積
分信号強度Q0、及び積分時間であるパルス間隔T0
ら、信号パルスP0のエネルギーをE0=Q0/G(T0
と求めることができる。
【0048】一方、信号パルスのパイルアップが発生し
ている場合には、信号パルスP0に対して実際に得られ
る積分信号強度Q0は、図2(a)に示すように、信号
パルスP0自体の信号強度の積分値に加えて、信号パル
スP0よりも前の信号パルスで信号パルスP0にパイルア
ップしている他の信号パルスP1、P2の信号強度の積分
値を含んでいる。このとき、積分信号強度Q0は、信号
パルスP0の信号強度、及びその全積分強度であるエネ
ルギーE0と直接には対応しない。したがって、この積
分信号強度Q0をそのまま用いたのでは、信号パルスP0
のエネルギーE0を正しく測定することができない。
【0049】以上より、信号パルスのパイルアップが発
生した場合、信号パルスPのエネルギーEを正しく測定
するためには、エネルギーEを算出する際に、測定対象
の信号パルスPにパイルアップしている他の信号パルス
の影響を除去するパイルアップ補正を行う必要がある。
【0050】本発明によるエネルギー測定方法及び測定
装置は、このようなパイルアップ補正を所定の方法及び
構成を用いて行うことにより、信号パルスのパイルアッ
プが発生している場合であっても、個々の信号パルスの
エネルギーを正しくかつ精度良く測定することを可能と
するものである。
【0051】図3は、本発明によるエネルギー測定装置
の第1実施形態の構成を示すブロック図である。本エネ
ルギー測定装置1は、測定対象として入力された信号パ
ルスPのパルス波形に対し、その信号強度を積分するこ
とによって信号パルスPのエネルギーEを測定するエネ
ルギー測定回路(信号処理回路)であり、信号パルスP
のエネルギーEを算出するための演算等を行うエネルギ
ー算出部10を含んで構成されている。
【0052】エネルギー測定の測定対象となる信号パル
スP、例えば図1及び図2に示したシンチレーション検
出器からの検出信号の電気信号パルスは、エネルギー測
定装置1に入力され、2つの信号パルスに分岐される。
【0053】分岐された一方の信号パルスは、トリガ信
号生成器21へと入力される。トリガ信号生成器21
は、信号パルスPに対応するトリガ信号を生成する。具
体的には、例えば、入力された信号パルスPのパルス波
形に対して、信号強度の下限値となるスレッショルドを
あらかじめ設定しておき、信号パルスPの信号強度がス
レッショルドを超えたときに、その信号パルスPに対応
するトリガ信号を生成して出力する。
【0054】トリガ信号生成器21から出力されたトリ
ガ信号は、ゲート信号生成器22及びパルス間隔計測器
23へと入力される。ゲート信号生成器22は、トリガ
信号に基づいて、信号パルスPに対する信号強度の積分
を指示(例えば積分のON/OFFを指示)するための
ゲート信号を生成する。また、パルス間隔計測器23
は、測定しようとする信号パルスPから次の信号パルス
までのパルス間隔Tとして、トリガ信号から次のトリガ
信号までの時間間隔を計測する。
【0055】一方、分岐された他方の信号パルスは、遅
延回路31へと入力される。遅延回路31は、ゲート信
号による指示に基づいて信号強度の積分を行うため、入
力された信号パルスPを所定の遅延時間だけ遅延させて
出力する。
【0056】遅延回路31によって遅延された信号パル
スPは、ゲート積分器32へと入力される。また、この
ゲート積分器32には、ゲート信号生成器22からのゲ
ート信号も入力されている。ゲート積分器32は、この
ゲート信号の指示に基づいて設定された所定の積分時間
によって、遅延回路31から入力された信号パルスPの
信号強度を積分し、得られた積分信号強度Qを出力す
る。
【0057】信号パルスPのエネルギーEを算出するエ
ネルギー算出部10には、上記したゲート積分器32で
取得された積分信号強度Qと、パルス間隔計測器23で
計測されたパルス間隔Tとが入力される。エネルギー算
出部10は、信号パルスPにパイルアップされた他の信
号パルスの影響が除去されるようにパイルアップ補正を
行いつつ、積分信号強度Q及びパルス間隔Tから、信号
パルスPの全積分強度に対応するエネルギーEを算出す
る。
【0058】本実施形態のエネルギー測定装置1によっ
て実行される信号パルスPのエネルギー測定方法は、概
略以下の通りである(図2(a)参照)。
【0059】まず、エネルギー測定装置1に測定対象と
して入力された信号パルスP0に対して、パルス間隔計
測器23において、その信号パルスP0から次の信号パ
ルスまでのパルス間隔T0を取得する(パルス間隔取得
ステップ)。また、ゲート積分器32において、ゲート
信号の指示に基づいてパルス間隔T0に対応するように
設定された所定の積分時間で、信号パルスP0の信号強
度を積分して積分信号強度Q0を取得する(積分強度取
得ステップ)。
【0060】そして、これらの積分信号強度Q0及びパ
ルス間隔T0から、エネルギー算出部10において、信
号パルスP0のエネルギーE0を算出する(エネルギー算
出ステップ)。
【0061】このとき、測定しようとする信号パルスP
0での積分信号強度Q0及びパルス間隔T0から算出され
た補正前のエネルギーに対して、その信号パルスP0
りも前に入力された信号パルス(例えば信号パルス
1)について先に取得されている積分信号強度(例え
ば積分信号強度Q1)またはエネルギー(例えばエネル
ギーE1)の少なくとも一方及びパルス間隔(例えばパ
ルス間隔T1)を用いてパイルアップ補正を行う。これ
により、信号パルスP0にパイルアップされた他の信号
パルスの影響が極力除去された補正後のエネルギーE0
が算出されて、エネルギー測定装置1から出力される。
【0062】上述したエネルギー測定装置及び測定方法
の効果について説明する。
【0063】本実施形態のエネルギー測定装置1及びエ
ネルギー測定方法においては、測定対象として入力され
た信号パルスPに対して、パルス波形、すなわち信号強
度の時間変化からエネルギーEを求めるとともに、その
信号パルスPよりも前に入力された他の信号パルスに対
して先に取得されているデータを用いて、パイルアップ
補正を行っている。これにより、信号パルスPにパイル
アップされた他の信号パルスの影響を除外して、個々の
信号パルスPのエネルギーEを正しく測定することがで
きる。
【0064】また、信号パルスPに対する補正前のエネ
ルギーの算出及びパイルアップ補正に用いるデータとし
て、信号パルスPに発生する雑音信号などの影響が大き
い信号パルスPの信号強度を直接に用いず、ゲート積分
器32によって信号強度が積分された積分信号強度Q、
パルス間隔計測器23で計測されたパルス間隔T、及び
それらから求められたエネルギーEをエネルギー算出に
用いている。これにより、信号パルスPのエネルギーE
を精度良く測定することができる。
【0065】以上より、信号パルス間のパルス間隔が短
く、信号パルス同士にパイルアップを生じている場合で
あっても、個々の信号パルスのエネルギーを正しくかつ
精度良く測定することが可能なエネルギー測定方法及び
測定装置が実現される。このような方法は、信号パルス
のパルス波形が単一の指数関数で表される場合に限ら
ず、一般的な時間波形に対して、広い範囲で適用が可能
である。
【0066】なお、エネルギー測定装置1に含まれる各
回路要素等については、必要に応じて、様々なものを用
いて良い。ゲート積分器32による信号強度の積分につ
いては、アナログ演算で電流信号を積分しても良いし、
あるいは、連続的なサンプリングによって信号波形をデ
ジタル化した後に、デジタル演算で積分を行う構成とす
ることも可能である。また、パルス間隔計測器23によ
るパルス間隔の計測については、例えば、パルス間隔計
測器23にクロックパルスを入力しておき、クロックパ
ルスを計数することによって時間間隔を計測する方法を
用いることができる。
【0067】エネルギー測定装置の構成、及び測定装置
で実行されるエネルギーの算出方法を含むエネルギー測
定方法について、さらに具体的に説明する。
【0068】図4は、エネルギー測定装置の第2実施形
態の構成を示すブロック図である。このエネルギー測定
装置1は、例えば、測定対象となる信号パルスPのパル
ス波形が図1及び図2に示した例のように単一の指数関
数で表される場合において、その信号パルスのエネルギ
ー測定に適用することが可能な構成となっている。
【0069】本実施形態のエネルギー測定装置1の構成
は、トリガ信号生成器21、ゲート信号生成器22、パ
ルス間隔計測器23、遅延回路31、及びゲート積分器
32については、図3に示した実施形態と同様である。
【0070】本実施形態におけるエネルギー算出部10
は、エネルギー演算器11と、ルックアップテーブル1
2と、2つのバッファメモリ40、41とを有して構成
されている。エネルギー演算器11は、測定対象である
信号パルスP0の入力に対応して、そのエネルギーE0
算出するために必要な演算を行う。また、ルックアップ
テーブル12には、後述するように、エネルギー演算器
11で実行される演算において用いられる係数のデータ
が格納されている。
【0071】バッファメモリ40には、各時点で測定対
象となっている信号パルスP0に対応して、ゲート積分
器32から入力された積分信号強度Q0、及びパルス間
隔計測器23から入力されたパルス間隔T0が記憶され
る。また、バッファメモリ41には、信号パルスP0
りも前の信号パルスP1での積分信号強度Q1及びパルス
間隔T1が記憶される。これらの各データは、エネルギ
ー演算器11で行われるエネルギーを算出するための演
算に対する入力データとなる。
【0072】このように、エネルギーE0を算出するた
めの演算を行うエネルギー演算器11と、測定対象の信
号パルスP0での積分信号強度Q0及びパルス間隔T0
記憶するバッファメモリ40(第1バッファメモリ)
と、信号パルスP0よりも前に入力された信号パルスP1
での積分信号強度Q1及びパルス間隔T1を記憶するバッ
ファメモリ41(第2バッファメモリ)とを有するエネ
ルギー算出部10の構成とすることにより、バッファメ
モリに記憶された各データを参照しつつ、エネルギーE
を算出するための演算を確実に行うことができる。
【0073】図4に示したエネルギー測定装置1の構
成、特にエネルギー算出部10の構成を参照しつつ、信
号パルスPのパルス波形が式(1)に示した時間波形f
(t)のように単一の指数関数で表される場合に適用が
可能なエネルギーEの算出方法である単一指数関数補正
法について説明する。
【0074】信号パルスP0のパルス波形が式(1)の
時間波形f(t)で表される場合、信号パルスのパイル
アップが発生していないとすると、パルス間隔T0を積
分時間として信号強度を積分した積分信号強度Q0は、
【0075】
【数4】 となる。このとき、信号パルスP0のエネルギーE0は、
バッファメモリ40に記憶されている積分信号強度Q0
及びパルス間隔T0から、
【0076】
【数5】 と求められる。
【0077】これに対して、信号パルスのパイルアップ
が発生している場合には、積分信号強度Q0は、信号パ
ルスP0よりも前の信号パルスP1、P2等の信号強度の
積分値を含んでいる。したがって、エネルギーE0を正
しく求めるには、式(5)の右辺Q0/G(T0)から信
号パルスP1、P2等の信号強度の積分値を除去するパイ
ルアップ補正を行う必要がある。そして、この除去すべ
き信号強度の積分値は、パルス波形が単一の指数関数で
ある場合には、測定対象である信号パルスP0の直前の
信号パルスP1に対して先に取得されたデータとしてバ
ッファメモリ41に記憶されている積分信号強度Q1
びパルス間隔T1から求めることができる。
【0078】以上より、単一指数関数補正法において
は、信号パルスP0に対するパイルアップ補正後のエネ
ルギーE0は、バッファメモリ40に記憶されている積
分信号強度Q0及びパルス間隔T0と、バッファメモリ4
1に記憶されている積分信号強度Q1及びパルス間隔T1
とから、以下の式(6)
【0079】
【数6】 によって求めることができる。
【0080】上記した式(6)では、各信号パルスPi
に対する信号強度の積分時間として、次の信号パルスま
でのパルス間隔Tiをそのまま用いている。これに対し
て、実際には、ゲート積分器32での積分値の読取及び
リセットにある程度の時間を要することを考慮して、積
分時間を設定する必要がある。また、パルス間隔Ti
長くなった場合に長時間にわたって信号強度を積分する
ことがないように、積分時間の上限値として最大積分時
間を設定しておくことが好ましい。
【0081】ゲート積分器32において積分値の読取及
びリセットに要するリセット時間をTr、上限値として
設定された最大積分時間をTmaxとすると、信号パルス
Pのパルス間隔Tに対して、実際に信号強度の積分を行
う実効積分時間T’は、
【0082】
【数7】 となる。
【0083】図5は、信号パルスPのパルス波形に対す
るパルス間隔T及び実効積分時間T’について示すグラ
フである。ここで、図5(a)のグラフは、図2(a)
と同様に、信号強度の時間変化である信号波形を示して
いる。また、図5(b)のグラフは、図5(a)に示し
た信号波形を積分した積分信号強度の時間変化である積
分波形を示している。
【0084】図5においては、例として、信号パルスP
0でのパルス間隔T0が最大積分時間Tmaxに対してT0
r<Tmaxを満たしている場合について示している。こ
のとき、信号パルスP0でのパルス間隔T0に対応する実
効積分時間T0’は、T0’=T0−Trとなる。ゲート積
分器32から出力される積分信号強度は、信号パルスP
0の信号波形に対し、図5(b)に示すように、積分開
始から実効積分時間T0’にわたって信号強度の積分に
よって増加する積分波形となる。そして、次の信号パル
スの積分開始までのリセット時間Trでリセットされ、
また、ゲート積分器32において積分値の読取が実行さ
れる。
【0085】このように、実効積分時間T’を信号強度
の積分時間とすることにより、積分時間が長時間にわた
ることを防止するとともに、信号パルスPそれぞれでの
パルス間隔Tに応じて好適な積分時間を設定して、算出
されるエネルギーEの精度を極力向上させることができ
る。なお、最大積分時間Tmaxは、例えば、パルス波形
f(t)の減衰時定数τに対して、3τ程度に設定され
る。
【0086】また、この実効積分時間T’では、パルス
間隔Tが長い場合に対して最大積分時間Tmaxを設定し
たが、逆にパルス間隔Tが短い場合に対しては、エネル
ギーEの算出を実行するための最小パルス間隔を設定し
ておいても良い。この場合、最小パルス間隔は、測定対
象の信号パルスP0の前のパルス間隔T1、及び後のパル
ス間隔T0に対してそれぞれ設定しておくことが好まし
い。
【0087】前のパルス間隔T1に対して最小パルス間
隔を設けることにより、信号パルスP0に対する前の信
号パルスP1のパイルアップが大き過ぎる場合を除外す
ることができる。また、後のパルス間隔T0に対して最
小パルス間隔を設けることにより、信号パルスP0の積
分時間が充分に確保できない場合を除外することができ
る。
【0088】上記した実効積分時間T’の適用に対し、
パルス間隔Tに対応する積分レスポンスG(T)に代え
て実効積分時間T’に対応する実効積分レスポンスH
(T)を定義すると、このH(T)は、
【0089】
【数8】 と表される。信号パルスP0に対するパイルアップ補正
後のエネルギーE0は、この実効積分レスポンスH
(T)を用いて、上記した式(6)を修正した以下の式
(9)
【0090】
【数9】 によって求めることができる。
【0091】この式(9)において、A(T)は、ゲー
ト積分器32で取得された積分信号強度Q0から全積分
強度に対応するエネルギーE0を求めるための係数であ
り、その値は信号パルスP0のパルス間隔T0に基づいて
決定される。また、B(T)は、直前の連続する信号パ
ルスP1での積分信号強度Q1を用いてパイルアップ補正
を行うための係数であり、その値は信号パルスP1のパ
ルス間隔T1に基づいて決定される。
【0092】以上より、エネルギー演算器11におい
て、パルス間隔T0及びT1を参照して係数A(T0)及
びB(T1)を決定することによって、バッファメモリ
40に記憶されている積分信号強度Q0、及びバッファ
メモリ41に記憶されている積分信号強度Q1から、信
号パルスP0の正確なエネルギーE0を容易に求めること
ができる。
【0093】ここで、エネルギーE0の算出に用いられ
る係数A(T)及びB(T)のそれぞれについては、複
数のパルス間隔Tの値に対してあらかじめ各係数の値を
求めておき、それらの係数の値からルックアップテーブ
ル12(図4参照)を作成しておくことが好ましい。こ
れにより、取得されたパルス間隔T0及びT1に対して、
ルックアップテーブル12に含まれている係数A(T)
のルックアップテーブル及び係数B(T)のルックアッ
プテーブルの2つのルックアップテーブルからそれぞれ
係数の値A(T0)及びB(T1)を読み出して、パイル
アップ補正がされたエネルギーE0を短時間で効率的に
算出することが可能となる。
【0094】次に、信号パルスPのパルス波形が単一の
指数関数で表せない一般的な時間波形(一般波形)であ
る場合について説明する。
【0095】シンチレーション検出器から放射線検出に
対応して出力される信号パルスの一般波形は、例えば、
減衰時定数が異なる複数の指数関数の和によって表され
る。図6は、このような一般波形を有する信号パルスの
パルス波形の例として、減衰時定数が小さく減衰が早い
成分と、減衰時定数が大きく減衰が遅い成分とを含むパ
ルス波形f(t)=Eg(t)を模式的に示すグラフで
ある。
【0096】このような一般波形を有する信号パルスに
対するパイルアップ補正では、時間波形の相違により、
上記した式(6)または式(9)を適用することはでき
ないが、信号パルスにパイルアップされる前の信号パル
スによる信号強度(電荷量)を先に測定された他の信号
パルスのエネルギーから推定して、同様に、パイルアッ
プ補正を行うことが可能である。
【0097】図7は、エネルギー測定装置の第3実施形
態の構成を示すブロック図である。このエネルギー測定
装置1は、例えば、測定対象となる信号パルスPのパル
ス波形が図6に示した例のように単一の指数関数で表せ
ない一般波形である場合において、その信号パルスのエ
ネルギー測定に適用することが可能な構成となってい
る。
【0098】本実施形態のエネルギー測定装置1の構成
は、トリガ信号生成器21、ゲート信号生成器22、パ
ルス間隔計測器23、遅延回路31、及びゲート積分器
32については、図3に示した実施形態と同様である。
【0099】本実施形態におけるエネルギー算出部10
は、エネルギー演算器11と、ルックアップテーブル1
2と、データ入力側のバッファメモリ45と、エネルギ
ー出力側のバッファメモリ50とを有して構成されてい
る。エネルギー演算器11は、測定対象である信号パル
スP0の入力に対応して、そのエネルギーE0を算出する
ために必要な演算を行う。また、ルックアップテーブル
12には、エネルギー演算器11で実行される演算にお
いて用いられる係数のデータが格納されている。
【0100】データ入力側のバッファメモリ45には、
各時点で測定対象となっている信号パルスP0に対応し
て、ゲート積分器32から入力された積分信号強度
0、及びパルス間隔計測器23から入力されたパルス
間隔T0が記憶される。また、信号パルスP0よりも前の
連続するJ個(J=1以上の整数)の信号パルスP1
2、…、PJでのパルス間隔T1、T2、…、TJも記憶
されている。また、エネルギー出力側のバッファメモリ
50には、信号パルスP0に対して算出されたエネルギ
ーE0が記憶される。また、信号パルスP0よりも前のJ
個の信号パルスP1、P2、…、PJでのエネルギーE1
2、…、EJも記憶されている。これらの各データは、
エネルギー演算器11で行われるエネルギーを算出する
ための演算に対する入力データとなる。
【0101】図7に示したエネルギー測定装置1の構
成、特にエネルギー算出部10の構成を参照しつつ、信
号パルスPのパルス波形が一般波形である場合に適用が
可能なエネルギーEの算出方法である多項補正法につい
て説明する。
【0102】図6にその例を示したように、信号パルス
Pのパルス波形が一般的な時間波形としてf(t)=E
g(t)と表されているとすると、単一の指数関数の場
合に関して式(3)に示した積分レスポンスに対応する
積分レスポンスG(T)は、
【0103】
【数10】 となる。さらに、ゲート積分器32でのリセット時間T
r及び最大積分時間Tmaxを考慮して式(7)の実効積分
時間T’を適用すると、式(8)に示した実効積分レス
ポンスに対応する実効積分レスポンスH(T)は、
【0104】
【数11】 と表される。信号パルスP0に対するパイルアップ補正
後のエネルギーE0は、この実効積分レスポンスH
(T)を用い、以下の式(12)
【0105】
【数12】 によって求めることができる。
【0106】ここで、Jは、測定対象の信号パルスP0
よりも前に入力された信号パルスのうちでパイルアップ
補正に用いる信号パルスP1、…、PJの個数である。こ
の個数J個は、上記したバッファメモリ45に記憶され
ている前のパルス間隔T1、…、TJのデータ数、及びバ
ッファメモリ50に記憶されている前のエネルギー
1、…、EJのデータ数とも対応している。
【0107】また、この式(12)において、C
0(T)は、ゲート積分器32で取得された積分信号強
度Q0から全積分強度に対応するエネルギーE0を求める
ための係数であり、その値は信号パルスP0のパルス間
隔T0に基づいて決定される。また、Cj(Tj)=C
j(tj,T0)(j=1、…、J)は、信号パルスP0
りも前のJ個の信号パルスPjそれぞれでのエネルギー
jを用いてパイルアップ補正を行うための係数であ
り、信号パルスPjのパルス間隔Tjに基づいて決定され
る。なお、tjは、信号パルスP0の立ち上がり時刻を0
としたときの信号パルスPjの立ち上がり時刻に対応す
るものであり(図2参照)、パルス間隔Tjを用いて表
すと、
【0108】
【数13】 である。
【0109】以上より、エネルギー演算器11におい
て、パルス間隔T0、T1、…、TJを参照して係数C
0(T0)、Cj(Tj)を決定することによって、信号パ
ルスP0のパルス波形が一般波形の場合でも、バッファ
メモリ45に記憶されている積分信号強度Q0、及びバ
ッファメモリ50に記憶されているエネルギーE1
…、E Jから、信号パルスP0の正確なエネルギーE0
容易に求めることができる。
【0110】ここで、エネルギーE0の算出に用いられ
る係数C0(T)及びCj(T)(j=1、…、J)のそ
れぞれについては、複数のパルス間隔Tの値に対してあ
らかじめ各係数の値を求めておき、それらの係数の値か
らそれぞれルックアップテーブル12(図7参照)を作
成しておくことが好ましい。これにより、パイルアップ
補正がされたエネルギーE0を短時間で効率的に算出す
ることが可能となる。
【0111】また、パイルアップ補正に用いる信号パル
スの個数Jについては、Jを多くするほど、パイルアッ
プ補正の精度、したがって算出されるエネルギーE0
精度が向上される。実際には、測定対象である信号パル
スのパルス波形や信号パルスの入力頻度、エネルギーE
0を算出するための演算に要する時間、用意するルック
アップテーブルのデータ量などを考慮して、好適な個数
にJを設定することが好ましい。
【0112】一般波形に対する式(12)によるエネル
ギー算出方法は、上述したように、信号パルスP0より
も前のJ個の信号パルスを用いてパイルアップ補正を行
う多項補正法によるものである。この式(12)は、J
+1番目以降の信号パルスの影響を無視することを除け
ば、エネルギーE0の正確な展開式となっている。これ
に対して、エネルギー演算を簡単化するとともに演算に
用いるデータ数を減少するため、2項近似法や3項近似
法などの近似法を用いて、一般波形でのパイルアップ補
正を行うことも可能である。
【0113】まず、2項近似法では、信号パルスP0
エネルギーE0の算出において信号パルスP2以前の信号
パルスの電荷を無視し(図2(a)参照)、直前の信号
パルスP1の立ち上がり時刻−t1から信号パルスP0
立ち上がり時刻0までの電荷量を、すべて信号パルスP
1によるものと仮定する。このとき、パイルアップ補正
後の信号パルスP0のエネルギーE0は、以下の式(1
4)
【0114】
【数14】 によって近似的に求めることができる。ただし、xは、
パルス波形に応じて経験的に定められる補正係数であ
る。
【0115】図8は、式(14)による2項近似法を用
いたエネルギーの算出方法に対応するエネルギー算出部
の構成の一例を示すブロック図である。このエネルギー
算出部10は、エネルギー演算器11と、ルックアップ
テーブル12と、データ入力側の2つのバッファメモリ
40、41とを有して構成されている。この構成は、エ
ネルギー演算器11で実行される演算の内容を除けば、
図4に示したものと同等である。
【0116】バッファメモリ40には、各時点で測定対
象となっている信号パルスP0に対応して、積分信号強
度Q0及びパルス間隔T0が記憶される。また、バッファ
メモリ41には、信号パルスP1での積分信号強度Q1
びパルス間隔T1が記憶される。
【0117】エネルギー演算器11は、パルス間隔T0
及びT1を参照して係数D0(T0)及びD1(T1)を決
定し、または、ルックアップテーブル12から係数D0
(T0)及びD1(T1)の値を読み出す。これにより、
バッファメモリ40に記憶されている積分信号強度
0、及びバッファメモリ41に記憶されている積分信
号強度Q1から、式(14)によってパイルアップ補正
されたエネルギーE0を求めることができる。
【0118】また、3項近似法では、信号パルスP0
エネルギーE0の算出において信号パルスP3以前の信号
パルスの電荷を無視し、信号パルスP1でのエネルギー
1の影響は正しく補正するとともに、信号パルスP2
立ち上がり時刻−t2から信号パルスP1の立ち上がり時
刻−t1までの電荷量を、すべて信号パルスP2によるも
のと仮定する。このとき、パイルアップ補正後の信号パ
ルスP0のエネルギーE0は、以下の式(15)
【0119】
【数15】 によって近似的に求めることができる。ただし、xは、
パルス波形に応じて経験的に定められる補正係数であ
る。
【0120】図9は、式(15)による3項近似法を用
いたエネルギーの算出方法に対応するエネルギー算出部
の構成の一例を示すブロック図である。このエネルギー
算出部10は、エネルギー演算器11と、ルックアップ
テーブル12と、データ入力側の3つのバッファメモリ
40、41、42と、エネルギー出力側のバッファメモ
リ50とを有して構成されている。
【0121】データ入力側のバッファメモリ40には、
各時点で測定対象となっている信号パルスP0に対応し
て、積分信号強度Q0及びパルス間隔T0が記憶される。
また、バッファメモリ41には、信号パルスP1での積
分信号強度Q1及びパルス間隔T1が記憶される。また、
バッファメモリ42には、信号パルスP2での積分信号
強度Q2及びパルス間隔T2が記憶される。また、エネル
ギー出力側のバッファメモリ50には、信号パルスP0
でのエネルギーE0及び信号パルスP1でのエネルギーE
1が記憶される。
【0122】エネルギー演算器11は、パルス間隔
0、T1、及びT2を参照して係数D0(T0)、D1(T
1)、及びD2(T2)を決定し、または、ルックアップ
テーブル12から係数D0(T0)、D1(T1)、及びD
2(T2)の値を読み出す。これにより、バッファメモリ
40に記憶されている積分信号強度Q0、バッファメモ
リ50に記憶されているエネルギーE1、及びバッファ
メモリ42に記憶されている積分信号強度Q2から、式
(15)によってパイルアップ補正されたエネルギーE
0を求めることができる。
【0123】上述した単一指数関数補正法、多項補正
法、2項近似法、または3項近似法をエネルギーの算出
方法として用いたエネルギー測定についてそれぞれシミ
ュレーションを行い、その効果の確認を行った。このシ
ミュレーションでは、所定のパルス波形とエネルギーを
有する多数の信号パルスを所定の平均計数率で時間的に
ランダムに発生させ、所定のエネルギー算出法及びパイ
ルアップ補正法に基づいてエネルギーの算出値をシミュ
レートし、平均の波高分布やエネルギー分解能を推定し
た。各パルス信号のエネルギーは光電子増倍管の第一ダ
イノードに集められる全光電子数で表し、計測される各
パルス信号のエネルギーは所定の積分時間内に集められ
る光電子数がポアッソン分布にしたがって統計的に変動
すると仮定した。また各パルス間隔は正確に測定される
ものと仮定し、パルス間隔の測定誤差及びデジタル化に
よる誤差は無視した。
【0124】まず、単一指数関数補正法によるエネルギ
ー算出及びパイルアップ補正のシミュレーション結果に
ついて、図10及び図11を参照して説明する。ここで
は、信号パルスPのパルス波形について、減衰時定数τ
=240nsの単一の指数関数成分による時間波形を仮
定し、エネルギーは光電子数で1000とした。また、
他の条件については、リセット時間をTr=50ns、
最大積分時間をTmax=1000nsにそれぞれ設定し
た。
【0125】図10は、入力信号パルスに対して単一指
数関数補正法を用いて求められたエネルギー算出値の分
布を示すグラフである。このグラフにおいて、横軸は、
信号パルスPに対するエネルギーEの算出値(channe
l)を示し、縦軸は、channel毎のカウント数を示してい
る。
【0126】図10においては、入力計数率について、
(1)0.01Mcps、(2)1Mcps、(3)
2.5Mcps、及び(4)5Mcpsの4条件でそれ
ぞれシミュレーションを行って得られたエネルギー分布
を示している。入力計数率が増大するにつれて、エネル
ギー分解能がやや低下しているものの、パイルアップ補
正によって、他の信号パルスの信号強度が積分されるこ
とによるエネルギーのシフト、及びエネルギー分解能の
低下が抑制されていることがわかる。
【0127】また、図11は、入力信号パルスに対して
単一指数関数補正法を用いて求められたエネルギー算出
値の半値幅(FWHM)及び10%値幅(FWTM)を
示すグラフである。これらのグラフからも、単一指数関
数のパルス波形を有する信号パルスに対して、単一指数
関数補正法を用いてパイルアップ補正を行うことによっ
て、入力信号パルス数の増大に伴うエネルギー分解能の
低下が極力抑制されていることがわかる。
【0128】次に、2項近似法、3項近似法、及び多項
補正法によるエネルギー算出及びパイルアップ補正の第
1のシミュレーション結果について、図12及び図13
を参照して説明する。ここでは、信号パルスPのパルス
波形について、減衰時定数τ 1=240nsの第1指数
関数成分、及びτ2=50nsの第2指数関数成分を強
度比70%:30%で含む時間波形を一般波形として仮
定した。また、他の条件については、リセット時間をT
r=50ns、最大積分時間をTmax=1000nsにそ
れぞれ設定し、エネルギーは光電子数で2000とし
た。
【0129】図12は、入力信号パルスに対して2項近
似法、3項近似法、及び多項補正法を用いて求められた
エネルギー算出値のFWHM及びFWTMを示すグラフ
である。ここで、2項近似法においては、補正係数をx
=1.1とした。また、3項近似法においては、補正係
数をx=1.2とした。また、多項補正法においては、
パイルアップ補正に用いる信号パルスの個数をJ=5と
した。
【0130】これらのグラフから、一般波形のパルス波
形を有する信号パルスに対して、2項近似法、3項近似
法、または多項補正法を用いてパイルアップ補正を行う
ことによって、入力信号パルス数の増大に伴うエネルギ
ー分解能の低下が極力抑制されていることがわかる。
【0131】また、2項近似法、3項近似法、及び多項
補正法のそれぞれについて比較すると、パイルアップ補
正の項数を2項から3項、多項(J=5)と多くするこ
とによって、得られるエネルギーの算出値の精度が向上
されている。
【0132】また、図13は、上記したシミュレーショ
ン結果における入力計数率と出力計数率の関係、すなわ
ち計数率特性を示すグラフである。最小積分時間を10
0nsに設定した結果、信号パルスのうち前後のパルス
間隔がともに100ns(合計200ns)以上のもの
のみが検出されるため、出力計数率は5Mcpsで飽和
している様子が示されている。
【0133】次に、2項近似法、3項近似法、及び多項
補正法によるエネルギー算出及びパイルアップ補正の第
2のシミュレーション結果について、図14及び図15
を参照して説明する。ここでは、信号パルスPのパルス
波形について、減衰時定数τ 1=1000nsの第1指
数関数成分、τ2=210nsの第2指数関数成分、及
びτ3=26nsの第3指数関数成分を強度比30%:
30%:40%で含む時間波形を一般波形として仮定し
た。また、他の条件については、図12及び図13の場
合と同様である。
【0134】図14は、入力信号パルスに対して2項近
似法、3項近似法、及び多項補正法を用いて求められた
エネルギー算出値のFWHM及びFWTMを示すグラフ
である。ここで、2項近似法においては、補正係数をx
=1.7とした。また、3項近似法においては、補正係
数をx=2.0とした。また、多項補正法においては、
パイルアップ補正に用いる信号パルスの個数をJ=5
(多項1)及びJ=10(多項2)とした。
【0135】これらのグラフから、図12に示したグラ
フと同様に、一般波形のパルス波形を有する信号パルス
に対して、2項近似法、3項近似法、または多項補正法
を用いてパイルアップ補正を行うことによって、入力信
号パルス数の増大に伴うエネルギー分解能の低下が極力
抑制されていることがわかる。
【0136】また、2項近似法、3項近似法、J=5と
した多項補正法、及びJ=10とした多項補正法のそれ
ぞれについて比較すると、パイルアップ補正の項数を多
くすることによって、得られるエネルギーの算出値の精
度が向上されている。
【0137】また、図15は、入力信号パルスに対して
(a)3項近似法、及び(b)J=5とした多項近似法
を用いて求められたエネルギー算出値の分布を示すグラ
フである。
【0138】図15(a)及び(b)においては、入力
計数率について、(1)0.01Mcps、(2)1M
cps、(3)2Mcps、(4)3Mcps、及び
(5)4Mcpsの5条件でそれぞれシミュレーション
を行って得られたエネルギー分布を示している。入力計
数率が増大するにつれて、エネルギー分解能がやや低下
し、エネルギー分布の中心値がやや高エネルギー側にシ
フトしているものの、パイルアップ補正によって、エネ
ルギーのシフト及びエネルギー分解能の低下が抑制され
ていることがわかる。
【0139】ここで、一般波形の場合に適用される2項
近似法、3項近似法、及び多項補正法においては、上述
したように、パイルアップ補正の項数(パイルアップ補
正に用いる信号パルスの個数)を多くすることによっ
て、得られるエネルギーの算出値の精度が向上する。一
方、パイルアップ補正の項数が多くなると、エネルギー
を算出するための演算が複雑となり、また、ルックアッ
プテーブルを用いる場合には、必要なルックアップテー
ブルの個数及びデータ量が増大する。このため、パイル
アップ補正の項数については、必要とされるエネルギー
算出値の精度や予想される信号パルスの入力頻度などか
ら、好適な項数及び補正法を選択して用いることが好ま
しい。
【0140】また、エネルギー測定においては、連続的
に入力される信号パルスPのそれぞれについて、取得さ
れた積分信号強度Q及びパルス間隔Tをリストモードで
データ収集しておき、データ収集後またはデータ収集と
並行してオフラインでエネルギー算出を行う場合があ
る。このような場合には、データ収集とは別に、ソフト
ウエアによってエネルギーを算出するための演算を実行
することが可能であり、パイルアップ補正の項数Jを多
くした条件での多項補正法のような複雑な演算について
も適用が可能である。
【0141】このようにオフラインでエネルギー算出を
行う場合の装置構成については、上記したエネルギー測
定装置1の構成のうち、エネルギー算出部10を別装置
であるエネルギー算出装置(例えばエネルギー算出用の
ソフトウエアを有するコンピュータ)とする構成が可能
である。この場合、エネルギー測定装置1においては、
エネルギー算出部10に代えて、積分信号強度Q及びパ
ルス間隔Tなどのデータを所定の記録媒体に記録する記
録手段を設けておけば良い。
【0142】また、単一指数関数以外の一般波形に対す
るエネルギー測定においては、例えば、微分回路などの
波形整形回路によって減衰時定数の長い成分を除去して
おくなど、パルス波形を整形した後に信号処理を行う構
成としても良い。
【0143】なお、発光パルス波形が単一の指数関数で
表せる場合、従来の方法としてWongの方法があることを
すでに記載したが、これらの方法による効果を比較する
ため、本発明による単一指数関数補正法、及び上記した
Wongの方法を用いて、それぞれエネルギー算出及びパイ
ルアップ補正のシミュレーションを行った。ここでは、
信号パルスPのパルス波形について、減衰時定数τ=3
00nsの単一の指数関数成分による時間波形を仮定
し、エネルギーは光電子数で2000とした。また、Wo
ngの方法については、電流信号に含まれる雑音信号の影
響を低減するために、信号処理前に平滑回路で信号パル
スの平滑化を行うこととし、平滑時間10ns(従来
1)、20ns(従来2)、及び50ns(従来3)の
3条件でそれぞれシミュレーションを行った。
【0144】図16は、入力信号パルスに対して単一指
数関数補正法、及び従来の補正法であるWongの方法を用
いて求められたエネルギー算出値のFWHMを示すグラ
フである。これらのグラフから、信号パルスの平滑化と
ともにWongの方法を用いた場合よりも、単一指数関数補
正法の方が、入力計数率の増大に伴うエネルギー分解能
の低下の抑制効果が高いことがわかる。
【0145】また、図17は、入力信号パルスに対して
(a)単一指数関数補正法、及び(b)Wongの方法を用
いて求められたエネルギー算出値の分布を示すグラフで
ある。図17(a)及び(b)においては、入力計数率
について、(1)0.01Mcps、(2)1Mcp
s、(3)2.5Mcps、及び(4)5Mcpsの4
条件でそれぞれシミュレーションを行って得られたエネ
ルギー分布を示している。これらのグラフからも、単一
指数関数補正法の方が、入力計数率の増大に伴うエネル
ギー分解能の低下の抑制効果が高いことがわかる。
【0146】次に、本発明によるエネルギー測定装置の
第4実施形態として、パルス波形弁別を用いた場合につ
いて説明する。パルス波形弁別(PSD:Pulse Shape
Discrimination)とは、異なった発光減衰時定数をもつ
複数のシンチレータを光電子増倍管に取り付け、どのシ
ンチレータが放射線を検出して発光したかを信号波形の
相違から弁別して検出する方法である。たとえば1つの
光電子増倍管にγ線用シンチレータと中性子用シンチレ
ータを取り付けて波形弁別を適用すると、γ線と中性子
線を同時に弁別して計測することができる。また、シン
チレータのなかにはγ線、α線、重粒子線など、検出し
た放射線の種類によって互いに異なる発光減衰時定数を
示すものがある。このようなシンチレータを用いると波
形弁別法によって放射線の種類を弁別して計測できる。
具体的な波形弁別法として種々の方法がある。以下の例
では信号パルスを2つの異なる時間積分して得られる積
分値の比が発光減衰時定数によって異なることを利用し
て波形弁別する方法を用いるが、これに限定されるもの
ではない。
【0147】図18はこのような波形弁別法を用いた第
4実施形態の構成を示すブロック図である。このエネル
ギー測定装置1は、測定対象となる信号パルスPとし
て、異なる減衰時定数τ1、τ2のいずれかを有する単一
指数関数波形の2種類の信号パルスが入力される場合に
おいて、その信号パルスのエネルギー測定に適用するこ
とが可能な構成となっている。
【0148】本実施形態のエネルギー測定装置1の構成
は、トリガ信号生成器21、ゲート信号生成器22、遅
延回路31、及びゲート積分器32については、図3に
示した実施形態と同様である。
【0149】本実施形態においては、パルス間隔計測器
23に代わって、パルス間隔計測手段としての機能を含
むサンプル時間設定部24が設けられている。サンプル
時間設定部24は、信号パルスP0でのパルス間隔T0
計測するとともに、計測されたパルス間隔T0に基づい
て、信号強度の積分を行うサンプル時間である実効積分
時間T’(式(7)参照)を設定し、ゲート信号生成器
22に指示する。ゲート信号生成器22は、トリガ信号
生成器21から入力されたトリガ信号、及びサンプル時
間設定部24から指示された実効積分時間T’に基づい
て、信号強度の積分を指示するためのゲート信号を生成
する。
【0150】ゲート積分器32は、ゲート信号の指示に
基づいて、遅延回路31から入力された信号パルスP0
の信号強度を積分する。ゲート信号によって指示された
実効積分時間T’での積分によって得られる積分信号強
度は、サンプルホールド回路及びADCからなるA/D
変換器33を介して、積分信号強度データQ0として出
力される。
【0151】一方、ゲート積分器32に対して、各信号
パルスP0毎に設定される実効積分時間T’とは別に、
積分時間Tpが指示されている。この積分時間Tpは、想
定される実効積分時間T’よりも短い時間(T’>
p)となるように、あらかじめ固定に設定されてい
る。積分時間Tpでの積分によって得られる積分信号強
度は、サンプルホールド回路及びADCからなるA/D
変換器34を介して、積分信号強度データQpとして出
力される。
【0152】A/D変換器33から出力された積分信号
強度Q0、及びA/D変換器34から出力された積分信
号強度Qpは、パルス波形弁別器25に入力される。パ
ルス波形弁別器25は、積分時間が異なる積分信号強度
0及びQpの比Q0/Qpを用い、あらかじめ設定された
波形弁別条件に基づいて複数種類(ここでは2種類)の
パルス波形の弁別を行い、得られた波形弁別結果x
0(x0=1または2)を出力する。
【0153】エネルギー算出部10は、エネルギー演算
器11と、ルックアップテーブル12と、2つのバッフ
ァメモリ46、47とを有して構成されている。エネル
ギー演算器11は、測定対象である信号パルスP0の入
力に対応して、そのエネルギーE0を算出するために必
要な演算を行う。また、ルックアップテーブル12に
は、エネルギー演算器11で実行される演算において用
いられる係数のデータが格納されている。
【0154】各時点で測定対象となっている信号パルス
0に対して、A/D変換器33から出力された積分信
号強度Q0、サンプル時間設定部24から出力されたパ
ルス間隔T0、及びパルス波形弁別器25から出力され
た波形弁別結果x0は、それぞれエネルギー演算器11
に入力されるとともに、バッファメモリ46に記憶され
る。また、バッファメモリ47には、信号パルスP0
りも前の信号パルスP1での積分信号強度Q1、パルス間
隔T1、及び波形弁別結果x1が記憶される。これらの各
データは、エネルギー演算器11で行われるエネルギー
を算出するための演算に対する入力データとなる。
【0155】図18に示したエネルギー測定装置1の構
成を参照しつつ、パルス波形弁別を伴う場合でのエネル
ギーEの算出方法について具体的に説明する。
【0156】測定対象としてエネルギー測定装置1に入
力される信号パルスPについて、異なる減衰時定数
τ1、τ2によるパルス波形を有する2種類の信号パルス
が存在するものとする。このとき、減衰時定数τk(k
=1または2)の信号パルスに対応するパルス波形fk
(t)、積分信号強度Qk(T)、及び積分レスポンス
k(T)は、それぞれ
【0157】
【数16】 となる。
【0158】また、2つの積分時間のうち長い方の実効
積分時間T’を、リセット時間Tr及び最大積分時間T
maxを用いて式(7)によって設定すると、実効積分レ
スポンスHk(T)は、
【0159】
【数17】 と表される。また、短い方の積分時間Tpは、上述のよ
うにあらかじめ固定に設定される。
【0160】図18に示すように、測定対象の信号パル
スP0及びその前の信号パルスP1での波形弁別結果をそ
れぞれk=x0、x1(いずれも1または2)とする。こ
のとき、信号パルスP0に対するパイルアップ補正後の
エネルギーE0は、以下の式(18)
【0161】
【数18】 によって求めることができる。
【0162】なお、減衰時定数τ1のパルス波形に対応
する係数A1(T)、B1(T)、及び減衰時定数τ2
パルス波形に対応する係数A2(T)、B2(T)につい
ては、エネルギー演算器11においてその都度演算して
求めても良い。あるいは、係数A1(T)、B1(T)、
2(T)、及びB2(T)を求める演算をあらかじめ行
ってルックアップテーブル12を作成しておいても良
い。この場合、パルス波形弁別を行わない場合に比べ
て、2倍の個数及びデータ量のルックアップテーブルを
用意する必要がある。
【0163】ここで、パルス波形弁別器25において行
われる、減衰時定数τ1、τ2による2種類のパルス波形
を弁別するパルス波形弁別について説明しておく。
【0164】図19は、信号パルスPに対してパルス波
形弁別を行うための積分時間の設定について示すグラフ
である。ここで、図19(a)のグラフは、信号強度の
時間変化である信号波形を示している。また、図19
(b)のグラフは、図19(a)に示した信号波形を積
分した積分信号強度の時間変化である積分波形を示して
いる。
【0165】本実施形態のエネルギー測定装置1におい
ては、図19に示すように、信号パルスP0の信号強度
の積分に対して、2つの積分時間T0’及びTpが設定さ
れる。このうち、長い方の積分時間であるT0’は、図
5に示したパルス波形弁別を伴わない場合と同様の通常
の実効積分時間である。一方、短い方の積分時間である
pは、パルス波形弁別のために固定に設定された積分
時間である。パルス波形弁別器25では、長い積分時間
T’で求められた積分信号強度Q0と、短い積分時間Tp
で求められた積分信号強度Qpとを比較することによっ
て、2種類のパルス波形が弁別される。
【0166】図20は、信号パルスのパルス波形の弁別
方法について示すグラフである。このグラフにおいて、
横軸は、個々の信号パルスPのパルス間隔Tに依存して
変動する実効積分時間T’を示し、縦軸は、積分信号強
度の比Q0/Qpを示している。
【0167】減衰時定数τ1のパルス波形と、減衰時定
数τ2のパルス波形とでは、その減衰速度の違いによ
り、積分時間T’(T’>Tp)が等しい場合でも、積
分信号強度Q0及びQpの比R(T’)=Q0/Qpが互い
に異なる値となる。したがって、この比の値を利用する
ことにより、2種類のパルス波形を弁別することができ
る。
【0168】図20のグラフには、減衰時定数τ1のパ
ルス波形での積分信号強度の比R1(T’)=G
1(T’)/G1(Tp)、及び減衰時定数τ2のパルス波
形での積分信号強度の比R2(T’)=G2(T’)/G
2(Tp)について、それぞれ実効積分時間T’に対する
依存性を示している。
【0169】積分時間がT’=Tpであれば、これらの
比はR1(T’)=R2(T’)=1である。そして、実
効積分時間T’が長くなるにしたがって、比R
1(T’)及びR2(T’)はそれぞれ増大すると同時
に、両者の差が増大する。これに対して、比R
1(T’)及びR2(T’)の差がパルス波形弁別器25
において判別可能となる積分時間によって、実効積分時
間T’に対する最小積分時間Tminを設定する。また、
比R1(T’)及びR2(T’)の2つの曲線の略中心
に、波形弁別曲線Rp(T’)を設定しておく。
【0170】これにより、信号パルスP0から実際に求
められた積分信号強度の比R(T’)=Q0/Qpの値に
対して、パルス波形弁別器25において上記した波形弁
別曲線Rp(T’)の値と比較を行うことによって、パ
ルス波形を弁別することができる。
【0171】すなわち、求められた比がQ0/Qp>Rp
であれば、測定対象となっている信号パルスP0は減衰
時定数τ1のパルス波形を有するものである。このと
き、パルス波形弁別器25は、波形弁別結果としてx0
=1を出力する。一方、Q0/Qp<Rpであれば、信号
パルスP0は減衰時定数τ2のパルス波形を有するもので
ある。このとき、パルス波形弁別器25は、波形弁別結
果としてx0=2を出力する。
【0172】このように、パルス波形弁別を伴ってエネ
ルギー測定を行うことにより、例えばそれぞれ異なる減
衰時定数を有する複数のシンチレータからの信号パルス
がエネルギーの測定対象として入力されるような場合な
ど、異なるパルス波形の信号パルスが入力される場合に
おいて、それぞれのパルス波形に対応する好適な算出方
法を用いてエネルギーの算出を行うことができる。
【0173】上記したパルス波形弁別を伴う場合につい
て、エネルギー算出及びパイルアップ補正のシミュレー
ションを行った。ここでは、信号パルスPのパルス波形
について、それぞれ減衰時定数τ1=100nsまたは
τ2=50nsの単一の指数関数成分による2種類の時
間波形を仮定し、これらのパルスは同じ確率でランダム
に発生すると仮定した。また、エネルギーは一定(光電
子数2000)とした。また、他の条件については、リ
セット時間をTr=50ns、固定の積分時間をTp=3
0ns、実効積分時間T’に対する最小積分時間をT
min=50ns、最大積分時間をTmax=500nsにそ
れぞれ設定した。
【0174】図21は、入力信号パルスに対してパルス
波形弁別及びパイルアップ補正を行って求められたエネ
ルギー算出値の分布を示すグラフであり、図21(a)
は、積分時間の補正及びパイルアップ補正を行わなかっ
た条件1でのエネルギー分布、図21(b)は、積分時
間の補正のみを行った条件2でのエネルギー分布、図2
1(c)は、積分時間の補正及びパイルアップ補正を両
方とも行った条件3でのエネルギー分布をそれぞれ示し
ている。
【0175】また、各グラフには、入力計数率につい
て、(1)0.1Mcps、(2)1Mcps、(3)
2.5Mcps、及び(4)5Mcpsの4条件でそれ
ぞれシミュレーションを行って得られたエネルギー分布
を示している。
【0176】まず、パイルアップ補正を行わず、かつ、
積分時間の補正を行わずに積分信号強度Qをそのままエ
ネルギーEとした図21(a)のグラフでは、入力計数
率が増大するにつれて、エネルギー分解能が低下すると
ともに、積分時間が短くなることによる低エネルギー側
の分布、及び信号パルスのパイルアップによる高エネル
ギー側の分布を生じている。また、積分時間の補正のみ
を行った図21(b)のグラフでは、積分時間による低
エネルギー側の分布はなくなっているものの、パイルア
ップによる高エネルギー側の分布は残っている。
【0177】これに対して、積分時間の補正及びパイル
アップ補正を両方とも行った図21(c)のグラフで
は、低エネルギー側及び高エネルギー側の分布がいずれ
も解消されている。また、そのエネルギー分解能も向上
されている。
【0178】図22は、入力信号パルスに対してパイル
波形弁別及びパイルアップ補正を行って求められたエネ
ルギー算出値のFWHM及びFWTMを示すグラフであ
り、図21と同様に、条件1、2、及び3のそれぞれに
ついて対応するグラフを示している。これらのグラフか
ら、積分時間の補正及びパイルアップ補正を両方とも行
った条件3において、入力信号パルス数の増大に伴うエ
ネルギー分解能の低下が極力抑制されていることがわか
る。
【0179】また、図23は、上記したシミュレーショ
ン結果における計数率特性を示すグラフである。この場
合は最小積分時間を50nsに設定した結果、出力計数
率は10Mcpsで飽和している。
【0180】次に、エネルギー測定装置の第5実施形態
として、ガンマカメラやPET装置などに用いられる2
次元位置検出型の放射線検出器からの信号パルスに対し
て適用する場合について説明する。ここでは、その一例
として、PET装置によく用いられる2次元位置検出型
のブロック検出器からの信号パルスに対して適用する場
合について述べる。図24はこのような実施形態の構成
を示すブロック図である。ここで用いたブロック検出器
は、図25に示すように、BGO(ゲルマニュウム酸ビ
スマス)などのシンチレータSCの結晶を2次元のマト
リックス状(例えば8行8列のマトリックス)に配列し
て、4本の角形光電子増倍管PMTを光学的に結合した
もので、4本の光電子増倍管PMTからの信号パルスを
それぞれPA、PB、PC、及びPDとし、これらの各信号
パルスのエネルギーをそれぞれE A、EB、EC、及びED
とし、それらを合計したエネルギーをEとすると、γ線
を検出したシンチレータのX座標及びY座標は、それぞ
れ次式
【0181】
【数19】 によって求められる。なお、4本の光電子増倍管の代わ
りに一本の位置検出型光電子増倍管を用いてもよい。
【0182】このような装置で信号パルスのパイルアッ
プが起こると、放射線のエネルギーが正しく測定されな
いのみならず、放射線の検出位置が正しく測定されない
ために解像力の劣化や画像歪みが発生する。
【0183】本実施形態のエネルギー測定装置1の構成
は、基本的には、図4に示した構成を変形したものであ
る。具体的には、トリガ信号生成器21、ゲート信号生
成器22、及びパルス間隔計測器23については、図4
に示した実施形態と同様である。
【0184】また、測定対象として入力される4つの信
号パルスPA0、PB0、PC0、及びP D0に対して、それら
の信号パルスを加算して合計の信号パルスP0を生成す
る和回路35が設けられている。トリガ信号生成器21
には、この和回路35で生成された信号パルスP0が入
力される。
【0185】一方、遅延回路31及びゲート積分器32
については、PA0、PB0、PC0、P D0、及びP0の5つ
の信号パルスそれぞれに対応して、遅延回路31A、3
B、31C、31D、及び31E、ゲート積分器32A
32B、32C、32D、及び32Eが設けられている。
【0186】また、エネルギー算出部10には、バッフ
ァメモリ40及び41については、信号パルスPA0、P
B0、PC0、PD0、及びP0にそれぞれ対応する積分信号
強度QA0、QB0、QC0、QD0、及びQ0が記憶されるバ
ッファメモリ40A、40B、40C、40D、及び4
E、信号パルスPA1、PB1、PC1、PD1、及びP1にそ
れぞれ対応する積分信号強度QA1、QB1、QC1、QD1
及びQ1が記憶されるバッファメモリ41A、41B、4
C、41D、及び41Eが設けられている。また、信号
パルスP0に対応するパルス間隔T0が記憶されるバッフ
ァメモリ40T、及び信号パルスP1に対応するパルス間
隔T1が記憶されるバッファメモリ41Tが設けられてい
る。
【0187】さらに、エネルギー演算器11について
は、信号パルスPA0、PB0、PC0、P D0、及びP0にそ
れぞれ対応するエネルギー演算器11A、11B、1
C、11D、及び11Eが設けられている。なお、この
図24においては、エネルギー算出部10に設けられる
ルックアップテーブル12については、図示を省略して
いる。
【0188】以上の構成において、信号パルスPA0は、
遅延回路31A、ゲート積分器32A、バッファメモリ4
A、41A、及びエネルギー演算器11Aによって信号
処理され、対応するエネルギーEA0が算出される。ま
た、信号パルスPB0は、遅延回路31B、ゲート積分器
32B、バッファメモリ40B、41B、及びエネルギー
演算器11Bによって信号処理され、対応するエネルギ
ーEB0が算出される。また、信号パルスPC0は、遅延回
路31C、ゲート積分器32C、バッファメモリ40 C
41C、及びエネルギー演算器11Cによって信号処理さ
れ、対応するエネルギーEC0が算出される。また、信号
パルスPD0は、遅延回路31D、ゲート積分器32D、バ
ッファメモリ40D、41D、及びエネルギー演算器11
Dによって信号処理され、対応するエネルギーED0が算
出される。
【0189】また、信号パルスPA0、PB0、PC0、及び
D0が加算された信号パルスP0は、遅延回路31E、ゲ
ート積分器32E、バッファメモリ40E、41E、及び
エネルギー演算器11Eによって信号処理され、対応す
る全体のエネルギーE0が算出される。そして、これら
のエネルギーEA0、EB0、EC0、ED0、及びE0から、
式(19)を用いてγ線を検出したシンチレータの位置
が求められる。
【0190】ただし、このようにして得られるX座標及
びY座標は必ずしもシンチレータの正確なX座標及びY
座標に比例しておらず、かつ統計雑音を含んでいる。一
方、シンチレータの正確な位置はその配列から複数の位
置のいずれかであることが判っているので、あらかじめ
用意されたルックアップテーブルによって、測定された
座標値を正しい座標値に変換する必要がある。また、エ
ネルギーE0は検出された放射線のエネルギーに相当す
るので、この信号を波高分析することによって放射線の
エネルギー選別を行う。
【0191】本発明によるエネルギー測定方法及び測定
装置は、上記した実施形態に限られるものではなく、様
々な変形が可能である。例えば、信号パルスのパイルア
ップ補正については、上述した単一指数関数補正法、2
項近似法、3項近似法、及び多項補正法に限らず、積分
信号強度、パルス間隔、及びエネルギーを用いるもので
あれば、具体的なパルス波形等に応じて様々な補正法を
用いて良い。
【0192】また、エネルギー算出部10に設けるバッ
ファメモリの構成については、パイルアップ補正で使用
されるデータに応じて適宜構成を変更することが好まし
い。
【0193】
【発明の効果】本発明によるエネルギー測定方法及び測
定装置は、以上詳細に説明したように、次のような効果
を得る。すなわち、測定対象の信号パルスでの積分信号
強度及びパルス間隔からエネルギーを算出するととも
に、その信号パルスよりも前に入力された信号パルスで
の積分信号強度またはエネルギーの少なくとも一方及び
パルス間隔からパイルアップ補正を行うエネルギー測定
方法及び測定装置によれば、信号パルスにパイルアップ
された他の信号パルスの影響を除外して、個々の信号パ
ルスのエネルギーを正しくかつ精度良く測定することが
できる。
【0194】このような信号パルスのパイルアップの問
題は、様々な形態の放射線検出器その他の装置において
生じるものである。したがって、上記したエネルギー測
定方法及び測定装置は、放射線のエネルギーや放射線の
検出位置に関する情報の測定が必要な様々な装置、例え
ばシンチレーション検出器、エネルギースペクトロメー
タ、放射線位置検出器、ガンマカメラ、SPECT装
置、及びPET装置など、に対して広く適用することが
可能であり、これらの装置のエネルギー分解能や解像力
を高い計数率においても良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】エネルギーの測定対象となる信号パルスのパル
ス波形の一例を模式的に示すグラフである。
【図2】信号パルスのパイルアップの発生について示す
グラフである。
【図3】エネルギー測定装置の第1実施形態の構成を示
すブロック図である。
【図4】エネルギー測定装置の第2実施形態の構成を示
すブロック図である。
【図5】信号パルスのパルス波形に対するパルス間隔及
び実効積分時間について示すグラフである。
【図6】信号パルスのパルス波形の他の例を模式的に示
すグラフである。
【図7】エネルギー測定装置の第3実施形態の構成を示
すブロック図である。
【図8】エネルギー算出部の構成の例を示すブロック図
である。
【図9】エネルギー算出部の構成の例を示すブロック図
である。
【図10】入力信号パルスに対して単一指数関数補正法
を用いて求められたエネルギー算出値の分布を示すグラ
フである。
【図11】入力信号パルスに対して単一指数関数補正法
を用いて求められたエネルギー算出値のFWHM及びF
WTMを示すグラフである。
【図12】入力信号パルスに対して2項近似法、3項近
似法、及び多項補正法を用いて求められたエネルギー算
出値のFWHM及びFWTMを示すグラフである。
【図13】入力信号パルス数と出力数との相関について
示すグラフである。
【図14】入力信号パルスに対して2項近似法、3項近
似法、及び多項補正法を用いて求められたエネルギー算
出値のFWHM及びFWTMを示すグラフである。
【図15】入力信号パルスに対して(a)3項近似法、
及び(b)多項近似法を用いて求められたエネルギー算
出値の分布を示すグラフである。
【図16】入力信号パルスに対して単一指数関数補正
法、及び従来の補正法を用いて求められたエネルギー算
出値のFWHMを示すグラフである。
【図17】入力信号パルスに対して(a)単一指数関数
補正法、及び(b)従来の補正法を用いて求められたエ
ネルギー算出値の分布を示すグラフである。
【図18】エネルギー測定装置の第4実施形態の構成を
示すブロック図である。
【図19】信号パルスに対してパルス波形弁別を行うた
めの積分時間の設定について示すグラフである。
【図20】信号パルスのパルス波形の弁別方法について
示すグラフである。
【図21】入力信号パルスに対してパルス波形弁別及び
パイルアップ補正を行って求められたエネルギー算出値
の分布を示すグラフである。
【図22】入力信号パルスに対してパルス波形弁別及び
パイルアップ補正を行って求められたエネルギー算出値
のFWHM及びFWTMを示すグラフである。
【図23】入力信号パルス数と出力数との相関について
示すグラフである。
【図24】エネルギー測定装置の第5実施形態の構成を
示すブロック図である。
【図25】2次元位置検出型のPET用ブロック検出器
の構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
1…エネルギー測定装置、10…エネルギー算出部、1
1…エネルギー演算器、12…ルックアップテーブル、
40、41、42、45、46、47、50…バッファ
メモリ、21…トリガ信号生成器、22…ゲート信号生
成器、23…パルス間隔計測器、24…サンプル時間設
定部、25…パルス波形弁別器、31…遅延回路、32
…ゲート積分器、33、34…A/D変換器、35…和
回路。

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 測定対象の信号パルスのパルス波形に対
    し、その信号強度を積分して前記信号パルスのエネルギ
    ーを測定するエネルギー測定方法であって、 入力された信号パルスに対し、前記信号パルスから次の
    信号パルスまでの時間間隔であるパルス間隔を取得する
    パルス間隔取得ステップと、 前記パルス間隔に対応するように設定された所定の積分
    時間で、前記信号パルスの信号強度を積分して積分信号
    強度を取得する積分強度取得ステップと、 前記積分強度取得ステップで取得された前記積分信号強
    度、及び前記パルス間隔取得ステップで取得された前記
    パルス間隔から、前記信号パルスの全積分強度に対応す
    るエネルギーを算出するエネルギー算出ステップとを備
    え、 前記エネルギー算出ステップにおいて、測定対象の前記
    信号パルスでの前記積分信号強度及び前記パルス間隔か
    ら算出された補正前のエネルギーに対して、該信号パル
    スよりも前に入力された信号パルスでの前記積分信号強
    度または前記エネルギーの少なくとも一方及び前記パル
    ス間隔からパイルアップ補正を行って、補正後の前記エ
    ネルギーを算出することを特徴とするエネルギー測定方
    法。
  2. 【請求項2】 前記エネルギー算出ステップにおいて、
    前記パルス間隔Tに基づいて決定される係数A(T)及
    びB(T)を用い、 時刻t0に入力された信号パルスP0の前記エネルギーE
    0を、前記信号パルスP0での積分信号強度Q0及びパル
    ス間隔T0と、時刻t1(t1<t0)に連続して入力され
    た信号パルスP1での積分信号強度Q1及びパルス間隔T
    1とから、次式 E0=Q0・A(T0)−Q1・B(T1) により算出することを特徴とする請求項1記載のエネル
    ギー測定方法。
  3. 【請求項3】 前記エネルギー算出ステップにおいて、
    測定対象の前記信号パルスよりも前に入力された信号パ
    ルスのうちで前記パイルアップ補正に用いる信号パルス
    の個数をJ個(J=1以上の整数)とするとともに、前
    記パルス間隔Tに基づいて決定される係数C0(T)及
    びCj(T)(j=1、…、J)を用い、 時刻t0に入力された信号パルスP0の前記エネルギーE
    0を、前記信号パルスP0での積分信号強度Q0及びパル
    ス間隔T0と、それぞれ時刻tj(tj<tj-1)に連続し
    て入力されたJ個の信号パルスPjでのエネルギーEj
    びパルス間隔T jとから、次式 E0=Q0・C0(T0)−Σj=1Jj・Cj(Tj) により算出することを特徴とする請求項1記載のエネル
    ギー測定方法。
  4. 【請求項4】 前記エネルギー算出ステップにおいて、
    前記パルス間隔Tに基づいて決定される係数D
    0(T)、D1(T)及びD2(T)を用い、 時刻t0に入力された信号パルスP0の前記エネルギーE
    0を、前記信号パルスP0での積分信号強度Q0及びパル
    ス間隔T0と、時刻t1(t1<t0)に連続して入力され
    た信号パルスP1でのエネルギーE1及びパルス間隔T1
    と、時刻t2(t 2<t1)に連続して入力された信号パ
    ルスP2での積分信号強度Q2及びパルス間隔T2とか
    ら、次式 E0=Q0・D0(T0)−E1・D1(T1)−Q2・D
    2(T2) により算出することを特徴とする請求項1記載のエネル
    ギー測定方法。
  5. 【請求項5】 前記エネルギー算出ステップにおいて、
    前記パルス間隔Tに基づいて決定され、前記エネルギー
    の算出に用いられる前記係数のそれぞれについて、複数
    の前記パルス間隔の値に対してあらかじめ求められた前
    記係数の値から作成されたルックアップテーブルを用い
    ることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項記載の
    エネルギー測定方法。
  6. 【請求項6】 前記信号パルスのパルス波形をあらかじ
    め設定された波形弁別条件に基づいて複数種類のパルス
    波形に弁別するパルス波形弁別ステップをさらに備え、 前記エネルギー算出ステップにおいて、前記パルス波形
    弁別ステップで弁別された前記パルス波形の種類に対応
    した算出方法を用いて前記エネルギーを算出することを
    特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載のエネルギ
    ー測定方法。
  7. 【請求項7】 測定対象の信号パルスのパルス波形に対
    し、その信号強度を積分して前記信号パルスのエネルギ
    ーを測定するエネルギー測定装置であって、 入力された信号パルスを分岐した一方を入力し、前記信
    号パルスに対応するトリガ信号を生成するトリガ信号生
    成手段と、 前記トリガ信号生成手段からの前記トリガ信号を入力
    し、前記トリガ信号に基づいて、信号強度の積分を指示
    するためのゲート信号を生成するゲート信号生成手段
    と、 前記トリガ信号生成手段からの前記トリガ信号を入力
    し、前記信号パルスでのパルス間隔として、前記トリガ
    信号から次のトリガ信号までの時間間隔を計測するパル
    ス間隔計測手段と、 入力された前記信号パルスを分岐した他方を入力し、所
    定の遅延時間だけ遅延させる遅延手段と、 前記遅延手段で遅延された前記信号パルス、及び前記ゲ
    ート信号生成手段からの前記ゲート信号を入力し、前記
    ゲート信号の指示に基づいて設定された所定の積分時間
    で、前記信号パルスの信号強度を積分して積分信号強度
    を取得するゲート積分手段と、 前記ゲート積分手段で取得された前記積分信号強度、及
    び前記パルス間隔計測手段で計測された前記パルス間隔
    から、前記信号パルスの全積分強度に対応するエネルギ
    ーを算出するエネルギー算出手段とを備え、 前記エネルギー算出手段は、測定対象の前記信号パルス
    での前記積分信号強度及び前記パルス間隔から算出され
    た補正前のエネルギーに対して、該信号パルスよりも前
    に入力された信号パルスでの前記積分信号強度または前
    記エネルギーの少なくとも一方及び前記パルス間隔から
    パイルアップ補正を行って、補正後の前記エネルギーを
    算出することを特徴とするエネルギー測定装置。
  8. 【請求項8】 前記エネルギー算出手段は、前記パイル
    アップ補正の演算を含む前記エネルギーを算出するため
    の演算を行うエネルギー演算手段と、測定対象の前記信
    号パルスでの前記積分信号強度及び前記パルス間隔を記
    憶する第1バッファメモリと、該信号パルスよりも前に
    入力された信号パルスでの前記積分信号強度または前記
    エネルギーの少なくとも一方及び前記パルス間隔を記憶
    する第2バッファメモリとを有することを特徴とする請
    求項7記載のエネルギー測定装置。
  9. 【請求項9】 前記エネルギー算出手段は、前記パルス
    間隔Tに基づいて決定される係数A(T)及びB(T)
    を用い、 時刻t0に入力された信号パルスP0の前記エネルギーE
    0を、前記信号パルスP0での積分信号強度Q0及びパル
    ス間隔T0と、時刻t1(t1<t0)に連続して入力され
    た信号パルスP1での積分信号強度Q1及びパルス間隔T
    1とから、次式 E0=Q0・A(T0)−Q1・B(T1) により算出することを特徴とする請求項7または8記載
    のエネルギー測定装置。
  10. 【請求項10】 前記エネルギー算出手段は、測定対象
    の前記信号パルスよりも前に入力された信号パルスのう
    ちで前記パイルアップ補正に用いる信号パルスの個数を
    J個(J=1以上の整数)とするとともに、前記パルス
    間隔Tに基づいて決定される係数C0(T)及びC
    j(T)(j=1、…、J)を用い、 時刻t0に入力された信号パルスP0の前記エネルギーE
    0を、前記信号パルスP0での積分信号強度Q0及びパル
    ス間隔T0と、それぞれ時刻tj(tj<tj-1)に連続し
    て入力されたJ個の信号パルスPjでのエネルギーEj
    びパルス間隔T jとから、次式 E0=Q0・C0(T0)−Σj=1Jj・Cj(Tj) により算出することを特徴とする請求項7または8記載
    のエネルギー測定装置。
  11. 【請求項11】 前記エネルギー算出手段は、前記パル
    ス間隔Tに基づいて決定される係数D0(T)、D
    1(T)及びD2(T)を用い、 時刻t0に入力された信号パルスP0の前記エネルギーE
    0を、前記信号パルスP0での積分信号強度Q0及びパル
    ス間隔T0と、時刻t1(t1<t0)に連続して入力され
    た信号パルスP1でのエネルギーE1及びパルス間隔T1
    と、時刻t2(t 2<t1)に連続して入力された信号パ
    ルスP2での積分信号強度Q2及びパルス間隔T2とか
    ら、次式 E0=Q0・D0(T0)−E1・D1(T1)−Q2・D
    2(T2) により算出することを特徴とする請求項7または8記載
    のエネルギー測定装置。
  12. 【請求項12】 前記エネルギー算出手段は、前記パル
    ス間隔Tに基づいて決定され、前記エネルギーの算出に
    用いられる前記係数のそれぞれについて、複数の前記パ
    ルス間隔の値に対してあらかじめ求められた前記係数の
    値から作成されたルックアップテーブルを有することを
    特徴とする請求項9〜11のいずれか一項記載のエネル
    ギー測定装置。
  13. 【請求項13】 前記信号パルスのパルス波形をあらか
    じめ設定された波形弁別条件に基づいて複数種類のパル
    ス波形に弁別するパルス波形弁別手段をさらに備え、 前記エネルギー算出手段は、前記パルス波形弁別手段で
    弁別された前記パルス波形の種類に対応した算出方法を
    用いて前記エネルギーを算出することを特徴とする請求
    項7〜12のいずれか一項記載のエネルギー測定装置。
  14. 【請求項14】 前記ゲート積分手段において前記信号
    パルスの信号強度を積分する前記積分時間を、測定対象
    の前記信号パルスそれぞれに対して、あらかじめ設定さ
    れた最大積分時間Tmax、及び前記パルス間隔Tから前
    記ゲート積分手段のリセット時間Trを引いた時間T−
    rのうちの短い時間である実効積分時間T’ T’=min(Tmax,T−Tr) として設定することを特徴とする請求項7〜13のいず
    れか一項記載のエネルギー測定装置。
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