以下、添付図面を参照して、医用画像診断装置の各実施形態を詳細に説明する。なお、各実施形態は、適宜組み合わせることができる。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る医用画像診断装置としての核医学イメージング装置の構成について説明する。第1の実施形態では、かかる核医学イメージング装置の一例としてPET装置を例に挙げて説明する。
図1は、第1の実施形態に係るPET装置100の構成の一例を示す図である。図1に示すように、実施形態に係るPET装置100は、架台装置10と、コンソール装置20とを備える。
架台装置10は、被検体P内で放出された陽電子が電子と結合して対消滅した際に放出された一対のガンマ線(対消滅ガンマ線)を、被検体Pの周囲をリング状に取り囲むように配置された検出器モジュールによって検出し、検出器モジュール14の出力信号(電気信号)から計数情報を生成することにより、計数情報を収集する。被検体Pには、例えば、陽電子放出核種で標識された放射性医薬品が投与されている。なお、ガンマ線は、放射線の一例である。
図1に示すように、架台装置10は、天板11と、寝台12と、寝台駆動回路13と、複数の検出器モジュール14と、計数情報収集回路15とを備える。なお、架台装置10は、図1に示すように、撮像口となる空洞を有する。
天板11は、被検体Pが載置されるベッドであり、寝台12の上に配置される。寝台駆動回路13は、後述する寝台制御回路23による制御の下、天板11を移動させる。例えば、寝台駆動回路13は、天板11を移動させることで、被検体Pを架台装置10の撮像口内に移動させる。
検出器モジュール14は、被検体P内で放出された陽電子が電子と結合して対消滅した際に放出された一対のガンマ線を検出し、検出した一対のガンマ線に基づく電気信号を出力する。図1に示すように、検出器モジュール14は、被検体Pの周囲をリング状に取り囲むように、複数配置される。検出器モジュール14は、被検体P内から放出されたガンマ線を光に変換し、変換した光を電気信号に変換する。検出器モジュール14の構成については後述する。
計数情報収集回路15は、検出器モジュール14の出力信号から計数情報を生成し、生成した計数情報を、後述するデータ記憶回路24に格納する。例えば、計数情報収集回路15は、プロセッサにより実現される。
例えば、計数情報収集回路15は、検出器モジュール14の出力信号から計数情報を生成することにより、計数情報を収集する。この計数情報には、ガンマ線の検出位置、エネルギー値、及び検出時間が含まれる。例えば、後述するように、計数情報には、シンチレータ番号(P)、エネルギー値(E)、及び検出時間(T)が含まれる。なお、図1においては図示を省略しているが、複数の検出器モジュール14は、複数のブロックに区分けされ、ブロック毎に計数情報収集回路15を備える。例えば、1つの検出器モジュール14が1つのブロックである場合には、計数情報収集回路15は、検出器モジュール14毎に備えられる。
コンソール装置20は、ユーザによるPET装置100の操作を受け付け、PET画像の撮像を制御するとともに、架台装置10によって収集された計数情報を用いてPET画像を再構成する。図1に示すように、コンソール装置20は、入力回路21と、ディスプレイ22と、寝台制御回路23と、データ記憶回路24と、同時計数情報生成回路25と、画像再構成回路26と、システム制御回路27と、補正回路28とを備える。なお、コンソール装置20が備える各回路等は、バスを介して接続される。
入力回路21は、PET装置100のユーザによって各種指示や各種設定の入力に用いられる。入力回路21は、入力された各種指示や各種設定を、システム制御回路27に転送する。例えば、入力回路21は、撮像開始指示や撮像終了指示の入力に用いられる。例えば、入力回路21は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール、ジョイスティック等により実現される。
ディスプレイ22は、ユーザによって参照される液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。ディスプレイ22は、システム制御回路27による制御の下、PET画像を表示したり、ユーザから各種指示や各種設定を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。
寝台制御回路23は、寝台駆動回路13を制御する。例えば、寝台制御回路23は、プロセッサにより実現される。
データ記憶回路24は、PET装置100において用いられる各種データを記憶する。データ記憶回路24は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(flash memory)等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。
データ記憶回路24は、計数情報収集回路15によって生成された計数情報のリストを記憶する。データ記憶回路24が記憶する計数情報のリストは、同時計数情報生成回路25による処理に用いられる。なお、データ記憶回路24が記憶する計数情報のリストは、同時計数情報生成回路25による処理に用いられた後に削除されてもよいし、所定期間記憶されていてもよい。
図2は、第1の実施形態に係る計数情報のリストを説明するための図である。図2に示すように、データ記憶回路24は、検出器モジュール14を識別するモジュールIDに対応付けて、シンチレータ番号(P)、エネルギー値(E)、及び検出時間(T)を含む計数情報を記憶する。
また、データ記憶回路24は、同時計数情報生成回路25によって生成された同時計数情報の時系列リストを記憶する。また、データ記憶回路24が記憶する同時計数情報の時系列リストは、画像再構成回路26による処理に用いられる。なお、データ記憶回路24が記憶する同時計数情報の時系列リストは、画像再構成回路26による処理に用いられた後に削除されてもよいし、所定期間記憶されていてもよい。
図3は、第1の実施形態に係る同時計数情報の時系列リストを説明するための図である。図3に示すように、データ記憶回路24は、同時計数情報の通し番号であるコインシデンスNo.に対応付けて、計数情報の組を記憶する。なお、同時計数情報の時系列リストは、計数情報の検出時間(T)に基づき概ね時系列順に並んでいる。
また、データ記憶回路24は、画像再構成回路26によって再構成されたPET画像を記憶する。また、データ記憶回路24が記憶するPET画像は、システム制御回路27によってディスプレイ22に表示される。また、データ記憶回路24は、各種のプログラムを記憶する。
図1に戻り、同時計数情報生成回路25は、計数情報収集回路15によって生成された計数情報のリストを用いて同時計数情報の時系列リストを生成する。例えば、同時計数情報生成回路25は、データ記憶回路24に記憶された計数情報のリストから、一対のガンマ線を略同時に計数した計数情報の組を、計数情報の検出時間(T)に基づいて検索する。また、同時計数情報生成回路25は、検索の結果得られた計数情報の組毎に同時計数情報を生成し、生成した同時計数情報を、概ね時系列順に並べながら、データ記憶回路24に格納する。
例えば、同時計数情報生成回路25は、ユーザによって入力された同時計数情報を生成する際の条件(同時計数情報生成条件)に基づいて、同時計数情報を生成する。同時計数情報生成条件には、時間ウィンドウ幅が含まれる。例えば、同時計数情報生成回路25は、時間ウィンドウ幅に基づいて、同時計数情報を生成する。
例えば、同時計数情報生成回路25は、データ記憶回路24に記憶された計数情報のリストを参照し、検出時間(T)の時間差が時間ウィンドウ幅以内にある計数情報の組を、検出器モジュール14間で検索する。例えば、同時計数情報生成回路25は、同時計数情報生成条件を満たす組として、「P11、E11、T11」と「P22、E22、T22」との組を検索すると、この組を同時計数情報として生成し、データ記憶回路24に格納する。なお、同時計数情報生成回路25は、時間ウィンドウ幅とともにエネルギーウィンドウ幅を用いて同時計数情報を生成してもよい。また、同時計数情報生成回路25は、架台装置10内に設けられていてもよい。
画像再構成回路26は、PET画像を再構成する。例えば、画像再構成回路26は、データ記憶回路24に記憶された同時計数情報の時系列リストを読み出し、読み出した時系列リストを用いてPET画像を再構成する。また、画像再構成回路26は、再構成したPET画像をデータ記憶回路24に格納する。例えば、画像再構成回路26は、プロセッサにより実現される。
システム制御回路27は、架台装置10及びコンソール装置20を制御することによって、PET装置100の全体制御を行う。例えば、システム制御回路27は、PET装置100における撮像を制御する。例えば、システム制御回路27は、プロセッサにより実現される。
補正回路28は、第1の特定機能28a、第2の特定機能28b及び補正機能28cを備える。ここで、例えば、図1に示す補正回路28の構成要素である第1の特定機能28a、第2の特定機能28b及び補正機能28cの各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でデータ記憶回路24に記録されている。補正回路28は、各プログラムをデータ記憶回路24から読み出し、読み出した各プログラムを実行することで、各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の補正回路28は、図1の補正回路28内に示された各機能を有することとなる。第1の特定機能28aは、第1の特定部の一例である。また、第2の特定機能28bは、第2の特定部の一例である。また、補正機能28cは、補正部の一例である。なお、第1の特定機能28a、第2の特定機能28b及び補正機能28cについては後述する。
なお、上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable GateArray:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはデータ記憶回路24に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、データ記憶回路24にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し、読み出したプログラムを実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。
以上、第1の実施形態に係るPET装置の全体構成について説明した。
次に、第1の実施形態に係る検出器モジュール14の構成の一例について説明する。図4は、第1の実施形態に係る検出器モジュール14の構成の一例を示す図である。図4に示すように、検出器モジュール14は、フォトンカウンティング方式、アンガー型の検出器であり、複数のシンチレータ141と、複数の光電子増倍管(PMT(Photomultiplier Tube))142と、ライトガイド143と、複数の増幅回路144とを有する。
シンチレータ141は、被検体P内で放出された陽電子が電子と結合して対消滅した際に放出された一対のガンマ線をシンチレーション光子(scintillation photons、optical photons)に変換し、シンチレーション光子を出力する。例えば、シンチレータ141は、1つのガンマ線が入射されると、1つのシンチレーション光子を出力する。シンチレータ141は、例えば、LaBr3(Lanthanum Bromide)、LYSO(Lutetium Yttrium Oxyorthosilicate)、LSO(Lutetium Oxyorthosilicate)、LGSO(Lutetium Gadolinium Oxyorthosilicate)等のシンチレータ結晶によって形成される。図4の例に示すように、シンチレータ141は、2次元状に配列される。
光電子増倍管142は、シンチレータ141から出力されたシンチレーション光子を増倍して電気信号に変換する。図4の例に示すように、光電子増倍管142は、複数配置される。光電子増倍管142は、シンチレーション光子を受光して光電子を発生させる光電陰極、発生した光電子を加速する電場を与える多段のダイノード、及び、電子の流れ出し口である陽極を有する。光電効果により光電陰極から放出された電子は、ダイノードに向って加速されてダイノードの表面に衝突し、複数の電子を叩き出す。この現象が多段のダイノードにわたって繰り返されることにより、なだれ的に電子数が増倍され、陽極での電子数は、数100万にまで達する。かかる例では、光電子増倍管142の利得率は、数100万倍となる。例えば、1つのシンチレーション光子が光電子増倍管142に入射すると、光電子増倍管142は、数100万個の電子からなる電気信号を出力する。また、なだれ現象を利用した増幅のため、ダイノードと陽極との間には、通常1000ボルト以上の電圧が印加される。光電子増倍管142は、変換器の一例である。
ライトガイド143は、シンチレータ141から出力されたシンチレーション光子を光電子増倍管142に伝達する。ライトガイド143は、例えば、光透過性に優れたプラスチック素材等によって形成される。
このように、検出器モジュール14は、被検体P内から放出された対消滅ガンマ線をシンチレータ141によってシンチレーション光子に変換し、変換したシンチレーション光子を光電子増倍管142によって電気信号に変換して出力する。すなわち、検出器モジュール14は、間接変換型の検出器である。
検出器モジュール14は、光が入射された複数の光電子増倍管142の出力の重心計算をすることにより、光を出力したシンチレータ141の位置を算出する。このようなシンチレータ141の位置を算出するロジックは、例えば、アンガーロジックと称される。かかるロジックによりシンチレータ141の位置を算出する場合には、シンチレータ141の数よりも光電子増倍管142の数を少なくすることができるが、重心計算の結果得られる座標からシンチレータ141の位置を同定する必要がある。
複数の増幅回路144それぞれは、光電子増倍管142それぞれの後段に接続されている。増幅回路144は、光電子増倍管142から出力された電気信号を所定の増幅率で増幅して補正回路28に出力する。
ここで、上述した光電子増倍管142の利得率は、光電子増倍管142ごとに固有である。このため、例えば、同一の数のシンチレーション光子が光電子増倍管142に入射された場合であっても、出力される電気信号の信号強度は、光電子増倍管142ごとに固有の値となり、全ての信号強度が略同一にならない場合がある。そこで、同一の数のシンチレーション光子が各光電子増倍管142に入射された場合に、各増幅回路144から出力される電気信号の信号強度が略同一となるように、各増幅回路144の増幅率を調整するエネルギーキャリブレーションが行われる。
上述したエネルギーキャリブレーションでは、各光電子増倍管142から出力される電気信号の信号強度として、次のような信号強度が用いられる。例えば、横軸を電気信号の信号強度とし、縦軸を入射した対消滅ガンマ線の数である事象数とした場合のヒストグラムにおいて、最大の事象数に対応する信号強度が用いられる。すなわち、各光電子増倍管142について、ヒストグラムにおけるピークの信号強度が、電気信号の信号強度として用いられる。そして、上述したエネルギーキャリブレーションでは、全ての光電子増倍管142について、ピークの信号強度が略同一となるように、各増幅回路144の増幅率が調整される。
上述したように、エネルギーキャリブレーションでは、各光電子増倍管142について、ヒストグラムにおけるピークの信号強度が用いられるため、このピークの信号強度を精度良く特定することが、精度良くエネルギーキャリブレーションを行うことにつながる。
ここで、詳細については後述するが、シンチレータ141に、対消滅ガンマ線に加え、対消滅ガンマ線の散乱線(散乱ガンマ線)が入射されてしまうと、対消滅ガンマ線のみに基づくヒストグラムのピークを精度良く特定することが困難になってしまう。なお、対消滅ガンマ線のみに基づくヒストグラムとは、対消滅ガンマ線及び散乱ガンマ線のうち、対消滅ガンマ線のみがシンチレータ141に入射し、シンチレータ141により対消滅ガンマ線がシンチレーション光子に変換され、光電子増倍管142によりシンチレーション光子が電気信号に変換された場合における電気信号から得られるヒストグラムを指す。そこで、散乱が少なく単色ガンマ線を放射する68Ge等の密封点状線源や密封線状線源を用いて上述したエネルギーキャリブレーションを行うことが考えられる。この場合には、例えば、被検体Pの臨床撮像の期間とは別に、1週間程度のメンテナンス期間を設け、このメンテナンス期間中のうちの1日程度の時間をかけて、エネルギーキャリブレーションを行う。このエネルギーキャリブレーションは、例えば、3か月に1回実行される。このように、比較的長い期間エネルギーキャリブレーションが実行されないことに加え、光電子増倍管142の利得率は経時変化するため、PET装置の性能が比較的長い期間低下してしまう。また、このようなメンテナンス期間は、PET装置の本来の目的である臨床撮像を行うことができないダウンタイムである。このため、このようなメンテナンス期間を設けることは、PET装置の稼働率を下げる要因ともなる。
そこで、第1の実施形態では、PET装置100の稼働率の低下、及び、PET装置100の性能の長い期間の低下を抑制するために、次の処理を行う。すなわち、第1の実施形態に係るPET装置100は、メンテナンス期間中に密封点線源を用いてエネルギーキャリブレーションを行うのではなく、被検体Pの臨床撮像により得られた電気信号を用いて、エネルギーキャリブレーションを行う。
ただし、臨床撮像中の被検体Pからは、対消滅ガンマ線に加えて、対消滅ガンマ線の散乱線が放出される。すなわち、被検体Pは、光子の散乱を伴う放射線源である。そのため、臨床撮像において、検出器モジュール14は、対消滅ガンマ線以外にも、散乱ガンマ線をシンチレーション光子に変換し、このシンチレーション光子を電気信号に変換して出力する。したがって、被検体Pから放出された対消滅ガンマ線及び散乱ガンマ線に基づくヒストグラムは、以下に説明するようなヒストグラムとなる。図5及び図6は、臨床撮像により得られた電気信号に基づくヒストグラムの一例を示す図である。図5及び図6は、横軸を電気信号の信号強度、縦軸をシンチレータ141に入射された対消滅ガンマ線及び散乱ガンマ線の数である事象数とするヒストグラムを示す。例えば、対消滅ガンマ線及び散乱ガンマ線に基づくヒストグラムは、図5の例に示す対消滅ガンマ線に基づくヒストグラム30と散乱ガンマ線に基づくヒストグラム31とを合わせた結果得られる、図6の例に示すヒストグラム32となる。
なお、対消滅ガンマ線及び散乱ガンマ線に基づくヒストグラムとは、対消滅ガンマ線及び散乱ガンマ線がシンチレータ141に入射し、シンチレータ141により対消滅ガンマ線及び散乱ガンマ線がシンチレーション光子に変換され、光電子増倍管142によりシンチレーション光子が電気信号に変換された場合における電気信号から得られるヒストグラムを指す。同様に、散乱ガンマ線に基づくヒストグラムとは、対消滅ガンマ線及び散乱ガンマ線のうち、散乱ガンマ線のみがシンチレータ141に入射し、シンチレータ141により散乱ガンマ線がシンチレーション光子に変換され、光電子増倍管142によりシンチレーション光子が電気信号に変換された場合における電気信号から得られるヒストグラムを指す。
一般的に、ガンマ線は、散乱時にエネルギーを失う。このため、散乱ガンマ線のエネルギーは、対消滅ガンマ線のエネルギーよりも低くなる。したがって、図5及び図6に示す内容から分かるように、散乱ガンマ線は、対消滅ガンマ線に基づくヒストグラム30におけるピークPtから低強度側のヒストグラム30の部分の形状に影響を及ぼす。例えば、図6の例に示すように、散乱ガンマ線の影響により、ピークPtの位置が、ピークPfまで横軸方向にx1分だけずれてしまう。したがって、エネルギーキャリブレーションにおいて、単純に、臨床撮像で得られた電気信号に基づくヒストグラムのピークPfを特定し、ピークPfの信号強度を用いた場合には、エネルギーキャリブレーションの精度が低くなる場合がある。
そこで、第1の実施形態に係るPET装置100は、以下に説明する処理を行って、対消滅ガンマ線及び散乱ガンマ線のうち、対消滅ガンマ線のみに基づくヒストグラムにおけるピークの信号強度を特定することにより、精度良くエネルギーキャリブレーションを行う。
図1に戻り、第1の特定機能28aは、複数の光電子増倍管142それぞれについて、光電子増倍管142から出力された電気信号の信号強度と入射ガンマ線の数との関係を表すヒストグラムにおけるピークの信号強度である第1の信号強度を特定する。なお、入射ガンマ線とは、例えば、シンチレータ141に入射したガンマ線のことを指す。入射ガンマ線には、対消滅ガンマ線及び散乱ガンマ線が含まれる。
例えば、第1の特定機能28aは、まず、被検体Pの臨床撮像において複数の光電子増倍管142それぞれから出力された電気信号を基に、各光電子増倍管142について、光電子増倍管142から出力された電気信号の信号強度を入射ガンマ線ごとに算出する。そして、第1の特定機能28aは、各光電子増倍管142について、算出した入射ガンマ線ごとの信号強度を用いて、信号強度と入射ガンマ線の数との関係を表すヒストグラムを生成する。例えば、第1の特定機能28aが、ある光電子増倍管142について先の図6の例に示すようなヒストグラム32を生成する。
そして、第1の特定機能28aは、各ヒストグラムについて、信号強度の高強度側から低強度側に向かってヒストグラム上の点を次々と移動させながら、ヒストグラムにおける各点での微分係数を算出する。図7は、第1の実施形態に係る第1の特定機能28aが実行する処理の一例を説明するための図である。例えば、第1の特定機能28aは、ある光電子増倍管142について図6の例に示すようなヒストグラム32を生成した場合には、図7の例に示すように、矢印Aが示す方向に点を移動させつつ、ヒストグラム32における各点での微分係数を算出する。そして、第1の特定機能28aは、高強度側から順々に算出した微分係数のうち、初めて微分係数が0となった場合の点を、対消滅ガンマ線及び散乱ガンマ線に基づくヒストグラムのピークとして特定する。すなわち、第1の特定機能28aは、対消滅ガンマ線及び散乱ガンマ線に基づくヒストグラムにおいて、信号強度が高強度側から低強度側に向かって最初に微分係数が0となる点をピークとして特定する。例えば、図7の例に示すように、第1の特定機能28aは、初めて微分係数が0となった場合の点Pfをヒストグラム32のピークPfとして特定する。
なお、第1の特定機能28aは、信号強度が高強度側から低強度側に向かって、事象数が所定の閾値よりも大きい範囲内でヒストグラム上の点を移動させながら微分係数を算出してもよい。これにより、第1の特定機能28aが、事象数が所定の閾値未満となるようなノイズの影響を受けるヒストグラムの部分において、ノイズの影響により形状が変形されたことにより微分係数が0となってしまった点を誤ってピークとして特定してしまうことを抑制することができる。
そして、第1の特定機能28aは、特定したピークの信号強度を第1の信号強度として特定する。例えば、図7の例に示すように、第1の特定機能28aは、ピークPfの信号強度S1を第1の信号強度S1として特定する。
第2の特定機能28bは、複数の光電子増倍管142それぞれについて、第1の信号強度よりも高強度側のヒストグラムの部分に基づいて、ヒストグラムにおいて、散乱せずに入射したガンマ線である対消滅ガンマ線のエネルギーに対応する信号強度である第2の信号強度を特定する。
例えば、第2の特定機能28bは、まず、複数の光電子増倍管142それぞれについて、第1の信号強度よりも高強度側のヒストグラムの部分における信号強度と事象数との関係を複数特定する。
図8は、第1の実施形態に係る第2の特定機能28bが実行する処理の一例を説明するための図である。例えば、図8の例に示すように、第2の特定機能28bは、ある光電子増倍管142について、第1の信号強度S1よりも高強度側のヒストグラム32の部分における信号強度と事象数との関係として、n個の(x1,y1)、(x2,y2)・・・・(xn,yn)を特定する。ここで、x1,x2,・・・xnは、それぞれ信号強度である。また、y1,y2,・・・ynは、それぞれ、x1,x2,・・・xnのそれぞれに対応する事象数である。なお、以下の説明において、1つ1つの信号強度を区別する必要がない場合には、信号強度として「x」を用いる。同様に、1つ1つの事象数を区別する必要がない場合には、事象数として「y」を用いる。
そして、第2の特定機能28bは、特定した複数の信号強度と事象数との関係を用いて、対消滅ガンマ線及び散乱ガンマ線のうち対消滅ガンマ線のみに基づくヒストグラムにおけるピークの信号強度を特定する。ここで、対消滅ガンマ線のみに基づくヒストグラムは、シンチレーション光子の数の平方根の大きさに反比例するような半値幅を有するガウス曲線に近似すると考えられる。そこで、第2の特定機能28bは、n個の(x1,y1)、(x2,y2)・・・・(xn,yn)を用いて、カーブフィッティング(曲線あてはめ)を行って、ガウス曲線に近似する近似曲線を算出することにより、対消滅ガンマ線のみに基づくヒストグラムにおけるピークの信号強度を特定する。
このようなピークの信号強度を特定する方法の一例について説明する。例えば、ガウス曲線は、下記の式(1)で表される。
なお、式(1)において、Aは、ガウス関数の振幅を示し、σは、標準偏差を表し、x0は、ガウス関数の中心を示す。そして、式(1)を変形すると、下記の式(2)となる。
そして、第2の特定機能28bは、n個の(x1,y1)、(x2,y2)・・・・(xn,yn)を式(2)に当てはめて、フィッティングパラメータであるA、σ及びx0を算出することにより、ガウス曲線に近似する曲線を算出する。そして、第2の特定機能28bは、算出したx0を、対消滅ガンマ線のみに基づくヒストグラムにおけるピークの信号強度として特定する。すなわち、第2の特定機能28bは、x0を第2の信号強度として算出する。
ここで、第2の特定機能28bは、対消滅ガンマ線のみに基づくヒストグラムにおけるピークの信号強度を特定する際に、第1の信号強度よりも低強度側のヒストグラムの部分を用いずに、第1の信号強度よりも高強度側のヒストグラムの部分を用いる。ここで、上述したように、第1の信号強度よりも低強度側のヒストグラムの部分は、散乱ガンマ線の影響を受けて形状が変化しているが、高強度側のヒストグラムの部分は、散乱ガンマ線の影響を受けていないと考えられる。このため、第2の特定機能28bは、散乱ガンマ線の影響を受けていない部分のみを用いることで、精度よく、対消滅ガンマ線のエネルギー値(511keV)に対応するピークの信号強度を特定することができる。
なお、第2の特定機能28bは、ピークの信号強度を特定する際に、パイルアップによる影響を加味してもよい。ここで、パイルアップの一例について説明する。例えば、光電子増倍管142は、シンチレータ141から出力されたシンチレーション光子を受光し、受光したシンチレーション光子を電気信号に変換して出力するが、その電気信号が減衰しない間に、シンチレータ141から出力された次のシンチレーション光子を受光した場合には、このシンチレーション光子を電気信号に変換し、変換した電気信号を、最初に受光したシンチレーション光子に由来する電気信号に加算して出力する。すなわち、光電子増倍管142は、複数のシンチレーション光子のそれぞれに由来する電気信号を加算した信号強度が強い1つの電気信号を出力する。ここで、このような信号強度が強い1つの電気信号は、1つのガンマ線に対応する電気信号である。このように、複数のガンマ線が検出器モジュール14に入射されたにも関わらず、検出器モジュール14から1つのガンマ線に対応する電気信号のみが出力される現象をパイルアップと呼ぶ。例えば、検出器モジュール14に入射されるガンマ線の時間間隔が短くなるほど、パイルアップが発生する確率が高くなる。図9は、第1の実施形態に係る第2の特定機能28bがピークの信号強度を特定する際に、パイルアップによる影響を加味する場合について説明するための図である。図9の例は、横軸を信号強度に対応するエネルギーとし、縦軸を事象数とする、対消滅ガンマ線及び散乱ガンマ線に基づくヒストグラム50と、対消滅ガンマ線のみに基づくヒストグラム51とを示す。上述したように、被検体Pの臨床撮像により得られた電気信号に基づくヒストグラム50のピークより低強度側の一点鎖線で囲まれた部分52では、散乱ガンマ線の影響を受ける場合がある。更に、図9の例に示すように、ヒストグラム50のピークより高強度側の点線で囲まれた部分53では、パイルアップの影響を受ける場合がある。部分53では、パイルアップが生じることにより、信号強度が強くなってしまう。そのため、ヒストグラム51と比較すると、ヒストグラム50の部分53では、信号強度が強くなる側に変形している。このパイルアップは、単位時間あたりの入射ガンマ線の数(カウントレート)に応じて発生頻度が定まる。そして、カウントレートさえ分かれば、部分53において、ヒストグラム51よりもどの程度信号強度(又は信号強度に対応するエネルギー)が大きくなっているのかを推測することができる。
そこで、第2の特定機能28bは、カウントレートを算出し、算出したカウントレートに基づいて、部分53において、ヒストグラム51よりもどの程度信号強度(又は信号強度に対応するエネルギー)が大きくなっているのかを推測する。そして、第2の特定機能28bは、部分53において、推測した信号強度(又はエネルギー)分だけ、信号強度(又はエネルギー)を減じるようにヒストグラム50を修正する。そして、第2の特定機能28bは、修正後のヒストグラム50を用いて、上述したような方法により、第2の信号強度を特定する。すなわち、第2の特定機能28bは、算出したカウントレートに基づいて、ヒストグラム50からパイルアップによる影響を除く補正を行い、補正後のヒストグラム50に基づいて、第2の信号強度を特定する。このように、第2の特定機能28bは、パイルアップを加味して第2の信号強度を特定する。これにより、更に精度よく第2の信号強度を特定することができる。
補正機能28cは、上述したエネルギーキャリブレーションを行うことにより、複数の光電子増倍管142それぞれについて特定された第2の信号強度に基づいて、複数の光電子増倍管142それぞれから出力される電気信号の信号強度を補正する。
例えば、補正機能28cは、増幅回路144の増幅率の幅や光電子増倍管142から出力される電気信号の信号強度に基づいて、全ての増幅回路144から出力可能な電気信号の信号強度を目標信号強度として算出する。例えば、補正機能28cは、光電子増倍管142又は増幅回路144から出力される電気信号の信号強度の平均値を目標信号強度として算出する。
そして、補正機能28cは、増幅回路144ごとに、増幅回路144から出力される電気信号の信号強度が目標信号強度となるために、現在の増幅率からどれだけの量だけ増幅率を増加又は減少させればいいか、増幅率の増加量又は減少量を算出する。そして、補正機能28cは、増幅回路144ごとに、算出した増加量又は減少量を増幅回路144に送信する。これにより、増幅回路144は、増加量を受信した場合には、増加量分だけ増幅率を増加させ、減少量を受信した場合には、減少量分だけ増幅率を減少させる。これにより、全ての増幅回路144から出力される電気信号の信号強度が略目標信号強度となる。このようにして、補正機能28cは、エネルギーキャリブレーションを実行する。
図10及び図11は、第1の実施形態に係る補正機能28cが実行する処理の一例を説明するための図である。例えば、図10の例に示すように、補正機能28cは、目標信号強度60を算出する。そして、補正機能28cは、ある光電子増倍管142についてのヒストグラム61におけるピーク61aの第2の信号強度が目標信号強度60となるために、現在の増幅率からどれだけの量だけ増幅率を増加させればいいか、増幅率の増加量を算出する。そして、補正機能28cは、対応する増幅回路144に、算出した増加量を送信する。
また、例えば、図11の例に示すように、補正機能28cは、他の光電子増倍管142についてのヒストグラム62におけるピーク62aの第2の信号強度が目標信号強度60となるために、現在の増幅率からどれだけの量だけ増幅率を減少させればいいか、増幅率の減少量を算出する。そして、補正機能28cは、対応する増幅回路144に、算出した減少量を送信する。
次に、第1の実施形態に係るPET装置100が実行する処理の流れの一例を説明する。図12は、第1の実施形態に係るPET装置100が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図12の例に示すように、システム制御回路27は、ユーザが入力回路21を操作して入力した、被検体Pの検査における撮像を開始する指示(撮像開始指示)を受信したか否かを判定する(ステップS101)。撮像開始指示を受信していない場合(ステップS101:No)には、システム制御回路27は、再び、ステップS101で、撮像開始指示を受信したか否かを判定する。
一方、撮像開始指示を受信した場合(ステップS101:Yes)には、システム制御回路27は、撮像を開始するように、架台装置10を制御する(ステップS102)。例えば、ステップS102において、システム制御回路27は、検出した入射ガンマ線に基づく電気信号を出力することを開始するように、検出器モジュール14を制御する。また、ステップS102において、検出器モジュール14の出力信号から計数情報を生成し、生成した計数情報をデータ記憶回路24に格納することを開始するように、計数情報収集回路15を制御する。ステップS102で開始された撮像は、後述するステップS106で終了されるまで行われる。
そして、補正回路28の第1の特定機能28aは、電気信号が出力された光電子増倍管142について、この電気信号の信号強度を事象毎に算出する(ステップS103)。そして、第1の特定機能28aは、今回の検査のIDである検査IDと、検査日時と、ステップS103で信号強度が算出された電気信号を出力した光電子増倍管142のIDと、事象ごとの信号強度とを対応付けたヒストグラム生成用データをデータ記憶回路24に格納する(ステップS104)。
そして、システム制御回路27は、ユーザが入力回路21を操作して入力した、撮像を終了する指示(撮像終了指示)を受信したか否かを判定する(ステップS105)。撮像終了指示を受信していない場合(ステップS105:No)には、システム制御回路27は、ステップS103に戻り、再び、電気信号が出力された光電子増倍管142について、この電気信号の信号強度を事象毎に算出する。すなわち、被検体Pの撮像中に、ステップS103及びステップS104において、事象毎の信号強度が算出され、ヒストグラム生成用データが生成される。
一方、撮像終了指示を受信した場合(ステップS105:Yes)には、システム制御回路27は、撮像を終了するように、架台装置10を制御する(ステップS106)。例えば、ステップS106において、システム制御回路27は、検出した入射ガンマ線に基づく電気信号を出力することを停止するように、検出器モジュール14を制御する。また、ステップS106において、検出器モジュール14の出力信号から計数情報を生成し、生成した計数情報をデータ記憶回路24に格納することを停止するように、計数情報収集回路15を制御する。
そして、第1の特定機能28aは、データ記憶回路24に格納されたヒストグラム生成用データのうち、検査日時が現在の日時から所定時間前までの所定の期間内であるヒストグラム生成用データを取得する(ステップS107)。
そして、第1の特定機能28aは、取得したヒストグラム生成用データを用いて、光電子増倍管142ごとに、ヒストグラムを生成し、光電子増倍管142ごとに、上述した第1の信号強度を特定する(ステップS108)。ここで、上述したように、光電子増倍管142の利得率は、経時変化する。したがって、現在の日時から所定時間前よりも過去の検査において生成されたヒストグラム生成用データの精度が低い場合がある。そこで、第1の特定機能28aは、精度が低い場合があるヒストグラム生成用データを用いずに、ヒストグラムを生成する。これにより、生成されたヒストグラムの精度の低下を抑制することができる。そして、この結果、エネルギーキャリブレーションの精度の低下を抑制することができる。
なお、ステップS107で、全体の事象数が所定の閾値以上となるような分だけヒストグラム生成用データを取得してもよい。これにより、ステップS108で、第1の特定機能28aは、精度よくヒストグラムを算出することができるだけの事象数分のヒストグラム生成用データを用いてヒストグラムを生成するので、精度のよいヒストグラムを生成することができる。
そして、第2の特定機能28bは、光電子増倍管142ごとに、上述した第2の信号強度を特定する(ステップS109)。そして、補正機能28cは、上述したエネルギーキャリブレーションを実行し(ステップS110)、処理を終了する。
以上、第1の実施形態に係るPET装置100について説明した。PET装置100は、対消滅ガンマ線及び散乱ガンマ線のうち、対消滅ガンマ線のみに基づくヒストグラムにおけるピークの第2の信号強度を特定し、エネルギーキャリブレーションの際に、特定した第2の信号強度を用いる。このため、PET装置100によれば、精度良くエネルギーキャリブレーションを行うことができる。すなわち、PET装置100によれば、精度よく、複数の光電子増倍管142から出力される電気信号の強度を揃えることができる。
また、PET装置100は、撮像を実行するたびに、エネルギーキャリブレーションを実行する。このため、PET装置100は、メンテナンス期間中に1日程度の時間をかけてエネルギーキャリブレーションを実行する必要がない。そのため、PET装置100によれば、稼働率の低下を抑制することができる。
以上のことから、PET装置100によれば、稼働率の低下を抑制しつつ、精度よく、エネルギーキャリブレーションを行うことができる。
また、PET装置100は、上述したように、撮像を実行するたびに、エネルギーキャリブレーションを実行する。そのため、PET装置100によれば、性能が長い期間、低下してしまうことを抑制することができる。
また、PET装置100は、密封点状線源や密封線状線源などを用いずにエネルギーキャリブレーションを行う。そのため、PET装置100によれば、ユーザに密封点状線源や密封線状線源などを購入させて保管させるような煩雑さをユーザに感じさせることを抑制することができる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、PET装置100が、撮像が終了した後にエネルギーキャリブレーションを実行する場合について説明した。しかしながら、PET装置100は、撮像中にエネルギーキャリブレーションを実行してもよい。そこで、このような実施形態について、第2の実施形態として説明する。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の処理については、同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
第2の実施形態に係るPET装置100が実行する処理の流れの一例を説明する。図13は、第2の実施形態に係るPET装置100が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図13に示す第2の実施形態に係る処理は、ステップS104とステップS105との間で、ステップS107〜S110の処理を行う点で、先の図12に示す第1の実施形態に係る処理と異なる。
第2の実施形態では、第1の特定機能28aは、撮像中に、光電子増倍管142により電気信号が出力されるたびに、ステップS108において、ヒストグラムを生成し、第1の信号強度を特定する。また、第2の特定機能28bは、第1の特定機能28aにより第1の信号強度が特定されるたびに、ステップS109において、第2の信号強度を特定する。また、補正機能28cは、ステップS110において、第2の特定機能28bにより第2の信号強度が特定されるたびに、エネルギーキャリブレーションを行って、複数の光電子増倍管142それぞれから出力される電気信号の信号強度を補正する。このようにして、第2の実施形態に係るPET装置100は、撮像中にリアルタイムでエネルギーキャリブレーションを実行する。このため、撮像により得られる計数情報の精度を更に高くすることができる。したがって、再構成されるPET画像の画質を高くすることができる。
(第3の実施形態)
第1の実施形態及び第2の実施形態では、医用画像診断装置としてPET装置を用いた場合について説明した。しかしながら、第1の実施形態及び第2の実施形態で説明した内容は、SPECT装置にも適用することができる。SPECT装置では、使用する核種でガンマ線のエネルギーが分かり、単色光のX線を放射するからである。そこで、第3の実施形態では、第1の実施形態及び第2の実施形態で説明した内容が適用された医用画像診断装置として、SPECT装置を例に挙げて説明する。なお、第3の実施形態において、第1の実施形態及び第2の実施形態の構成と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略するか又は説明を簡略化する場合がある。
図14は、第3の実施形態に係るSPECT装置の構成の一例を示す図である。第3の実施形態に係るSPECT装置は、架台装置10と、コンソール装置20とを有する。
架台装置10は、被検体Pに投与され、被検体Pの生体組織に選択的に取り込まれた放射性医薬品から放射されるガンマ線を検出して投影データを収集する装置である。架台装置10は、天板11と、寝台12と、寝台駆動回路13と、ガンマカメラ74と、カメラ駆動回路75とを有する。なお、架台装置10は、図14に示すように、撮像口となる空洞を有する。
ガンマカメラ74は、被検体Pの生体組織に選択的に取り込まれた放射性医薬品の核種(RI:Radio Isotope)から放射されるガンマ線の強度分布を2次元的に検出し、検出した2次元ガンマ線強度分布データを、例えば、増幅処理、A/D変換処理することで投影データを生成する装置である。ガンマカメラ74は、生成した投影データを後述するデータ収集回路29に送信する。
カメラ駆動回路75は、後述するカメラ制御回路70の制御のもと、ガンマカメラ74を移動させる装置である。例えば、カメラ駆動回路75は、ガンマカメラ74を架台装置10の撮像口内に沿って駆動させる。これにより、ガンマカメラ74は、被検体Pの周囲を回転して、360度の方向における投影データを生成する。
コンソール装置20は、ユーザによるSPECT装置の操作を受け付けるとともに、架台装置10によって収集された投影データから被検体Pに投与した放射性医薬品の体内分布が描出された断層画像である核医学画像(SPECT画像)を再構成する装置である。
コンソール装置20は、図14の例に示すように、入力回路21と、ディスプレイ22と、寝台制御回路23と、データ記憶回路24と、画像再構成回路26と、システム制御回路27と、補正回路28と、データ収集回路29と、カメラ制御回路70とを有する。コンソール装置20が有する各回路は、バスを介して接続される。
ディスプレイ22は、システム制御回路27による制御のもと、SPECT画像などを表示したり、入力回路21を介してユーザから各種指示や各種設定などを受け付けるためのGUIを表示したりする。
データ収集回路29は、ガンマカメラ74から送信された投影データを収集し、収集した投影データそれぞれに対して、対数変換処理、オフセット補正、感度補正などの補正処理を行なって補正処理済み投影データを生成する。そして、データ収集回路29は、生成した補正処理済み投影データをデータ記憶回路24に格納する。
画像再構成回路26は、データ記憶回路24から補正処理済み投影データを読み出し、読み出した補正処理済み投影データ(例えば、360度方向の補正処理済み投影データ)を逆投影処理することで、SPECT画像を再構成する。そして、画像再構成回路26は、再構成したSPECT画像をデータ記憶回路24に格納する。
システム制御回路27は、架台装置10およびコンソール装置20の動作を制御することによって、SPECT装置の全体制御を行う。具体的には、システム制御回路27は、寝台制御回路23およびカメラ制御回路70を制御することで、架台装置10における投影データの収集処理を実行させる。また、システム制御回路27は、データ収集回路29の補正処理と、画像再構成回路26の再構成処理を制御することで、コンソール装置20における画像処理全体を制御する。また、システム制御回路27は、データ記憶回路24が記憶するSPECT画像を、ディスプレイ22に表示するように制御する。
ここで、ガンマカメラ74は、第1の実施形態及び第2の実施形態において説明した検出器モジュール14を含んで構成される。第3の実施形態に係る検出器モジュール14が備えるシンチレータ141は、被検体Pの内部組織から放射されたガンマ線を紫外領域にピークを持つシンチレーション光子に変換する。検出器モジュール14が備える光電子増倍管142は、所定の利得率で、シンチレータ141から入力されたシンチレーション光子を電気信号に変換し、この電気信号を第3の実施形態に係る補正回路28に送信する。すなわち、第3の実施形態に係る検出器モジュール14は、被検体P内から放出されたガンマ線を検出し、検出したガンマ線に基づく電気信号を出力する。
ガンマカメラ74は、電気信号に基づく2次元ガンマ線強度分布データから投影データを生成する。そして、ガンマカメラ74は、生成した投影データをデータ収集回路29に送信する。
第3の実施形態に係る補正回路28は、ガンマカメラ74から送信された電気信号を用いて、第1の実施形態に係る補正回路28と同様の処理を行う。
以上、第3の実施形態に係るSPECT装置について説明した。上述したように、第3の実施形態に係る補正回路28は、第1の実施形態に係る補正回路28と同様の処理を行う。第3の実施形態に係るSPECT装置によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
なお、第1の実施形態及び第2の実施形態では、医用画像診断装置としてPET装置を例に挙げ、第3の実施形態では、医用画像診断装置としてSPECT装置を例に挙げて説明した。しかしながら、第1の実施形態、第2の実施形態又は第3の実施形態で説明した内容を、医用画像診断装置としてX線CT(Computed Tomography)装置に適用してもよい。例えば、単色光のX線を放射するX線源を備えるX線CT装置に、第1の実施形態、第2の実施形態又は第3の実施形態で説明した内容を適用してもよい。また、多光色のX線を放射するX線源を備えるX線CT装置であっても、特性X線に対応するピークを用いることで、第1の実施形態、第2の実施形態又は第3の実施形態で説明した内容を適用してもよい。また、フォトンカウンティング型X線CT装置(光子計数型X線CT装置)に、第1の実施形態、第2の実施形態又は第3の実施形態で説明した内容を適用してもよい。このようなX線CT装置が備える複数の検出器モジュールは、被検体を透過した、散乱せずに入射した放射線、及び、放射線の散乱線をシンチレーション光子に変換するシンチレータを備える。すなわち、複数の検出器モジュールは、被検体を透過した、散乱せずに入射した放射線、及び、被検体を透過した、放射線の散乱線に基づく電気信号を出力する。
また、第1〜第3の実施形態では、光電子増倍管を用いた場合について説明したが、光電子増倍管の代わりに、磁場の影響を受けないアバランシェフォトダイオード(APD:Avalanche Photodiode)が半導体素子アレイとして用いられたシリコンフォトマルチプライアー(SiPM:Silicon Photomultiplier)を用いてもよい。
また、第1〜第3の実施形態では、補正回路28がコンソール装置20内に設けられている場合について説明した。しかしながら、補正回路28は、架台装置10内に設けられていてもよい。また、補正回路28を設けずに、補正回路28が有する機能と同様の機能を計数情報収集回路15が有してもよい。
また、第1〜第3の実施形態で説明した内容は、1つのシンチレータ141からのシンチレーション光子が1つの光電子増倍管142に入射される場合であっても、1つのシンチレータ141からのシンチレーション光子が複数の光電子増倍管142に分散されて入射される場合であっても、適用できる。
また、第1〜第3の実施形態では、第1の特定機能28aが、複数の光電子増倍管142それぞれについて、光電子増倍管142から出力された電気信号の信号強度と入射ガンマ線の数との関係を表すヒストグラムを生成し、生成したヒストグラムにおけるピークの信号強度である第1の信号強度を特定する場合について説明した。しかしながら、第1の特定機能28aは、このようなヒストグラムを生成せずに、光電子増倍管142から出力された電気信号の信号強度と入射ガンマ線の数との関係を用いて、第1の信号強度を特定してもよい。すなわち、第1の特定機能28aは、ヒストグラムを生成せずに、光電子増倍管142から出力された電気信号の信号強度と入射ガンマ線の数との関係に基づき、入射ガンマ線の数のピークに対応する信号強度である第1の信号強度を特定してもよい。
また、第1〜第3の実施形態では、検出器モジュール14が、間接変換型の検出器である場合について説明したが、直接変換型の検出器であってもよい。例えば、検出器モジュール14は、2次元で配列されたテルル化カドミウム(CdTe)系の半導体素子(例えば、テルル化亜鉛カドミウム(CdZnTe)の半導体素子)により構成された直接変換型の検出器であってもよい。半導体素子は、入射した対消滅ガンマ線を電気信号に直接変換して出力する。このような半導体素子により構成された検出器モジュール14は、対消滅ガンマ線が入射するごとに、1パルスの電気信号(アナログ信号)を出力する。
したがって、検出器モジュール14は、間接変換型の検出器及び直接変換型の検出器のいずれの場合であっても、被検体P内から放出された対消滅ガンマ線に基づく電気信号を出力する。
以上述べた少なくとも1つの実施形態のPET装置100及びSPECT装置によれば、稼働率の低下を抑制しつつ、精度よく、エネルギーキャリブレーションを行うことができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。