JP2002348736A - 熱可塑性合成繊維とその製造方法 - Google Patents

熱可塑性合成繊維とその製造方法

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JP2002348736A JP2001155359A JP2001155359A JP2002348736A JP 2002348736 A JP2002348736 A JP 2002348736A JP 2001155359 A JP2001155359 A JP 2001155359A JP 2001155359 A JP2001155359 A JP 2001155359A JP 2002348736 A JP2002348736 A JP 2002348736A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来の溶融紡糸によって引張強度が10cN
/dtex以上の熱可塑性合成繊維を容易に、かつ高生
産性にて製造することができ、高品質かつ低コストの製
品を提供する。 【解決手段】 1種類以上の熱可塑性樹脂群Aを繊維を
構成する単繊維の内部に配置し、熱可塑性樹脂群Aより
も溶融粘度が小さい熱可塑性樹脂Bが、熱可塑性樹脂群
Aを覆うように、吐出・成形することを特徴とする熱可
塑性合成繊維の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は熱可塑性合成繊維お
よびその製造方法に関する。さらに詳しくは、新規な高
強度・高弾性率の熱可塑性合成繊維、およびその製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエステルやナイロン、ポリオレフィ
ンを代表とする熱可塑性合成繊維は、安価で種々の特性
に優れることから多量にかつ広い分野にわたって用いら
れている。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリ
ヘキサメチレンアジパミド、ポリカプラミド、ポリプロ
ピレン繊維は、強度・弾性率など優れた物理特性を有す
ることから工業的に重要な位置を占め、衣料用途のみな
らず、タイヤコードなどのゴム補強資材、漁網などの水
産資材用途、ロープなどの農業資材用途など、各種産業
資材に好適に利用されている。
【0003】かかる熱可塑性合成繊維の製造には、経済
的に有利な溶融紡糸法が広く採用されている。繊維の強
度・弾性率は一般に高い方が高次加工工程の通過性や最
終製品の性能に優れるが、それぞれの用途に応じた強度
・弾性率を発現させるために、使用するポリマーの重合
度や、溶融紡糸・延伸の条件が設定される。例えば衣料
用途であれば、液相重合で得られる最高重合度に近いポ
リマーを得、しかる後に溶融紡糸して、必要があれば延
伸される。また、更なる高強度・高弾性率化が必要な産
業用繊維においては、液相重合で得られたポリマーを固
相重合して更に高重合度化し、これを溶融紡糸した後に
限界近い倍率で延伸し、融着温度直下で熱セットする。
【0004】しかしながら通常の溶融紡糸・延伸のプロ
セスを使用して、例えばポリエチレンテレフタレート
(以下PET)繊維を製造した場合、強度が10cN/
dtex、弾性率が150cN/dtexを超えるよう
な高強度・高弾性率繊維を工業的に製造することは極め
て困難であった。
【0005】また、衣料用途においては、6000m/
分を越える紡糸速度で繊維を引き取った場合、繊維の強
度が著しく低下して満足がいく高次加工通過性や製品特
性が得られないこと、また繊維の紡糸工程中に糸切れが
頻発することが問題となっていた。
【0006】これらの問題を解決するために、いくつか
の技術が開示されている。例えば特開昭59−4742
3号公報や特開昭63−190015号公報では、高速
紡糸時に起こる配向結晶化を抑制することで、機械的特
性の優れた繊維を得る方法が開示されている。該公報に
よると、ポリエステルに特定の化合物を共重合すること
によって、紡速6000m/分を越える引き取り速度の
繊維の製糸性が向上し、衣料用途に十分供しうる機械的
特性の繊維を得ることができるとしている。しかしなが
ら、これらの方法では高価な化合物を多量に添加する必
要があるためコストアップが避けられず、またポリエス
テルが持つ本来の特性を失ってしまうという欠点があっ
た。
【0007】また、Polymer ,37 ,p4421 (1996)には、
IVが2.0程度という従来より高重合度のポリエステ
ルに、ポリエステルに相溶な化合物を多量に添加し、低
温で溶融紡糸することによって高強度・高弾性率糸を製
造する方法が開示されている。この方法によれば、ポリ
エステルに2−メチルアントラキノンに代表される低分
子化合物を添加することで低温紡糸を実現し、ポリエス
テルの分子量低下を抑制することで、溶融紡糸によって
引張強度が2GPaを越える繊維を得ることができると
の記載がある。
【0008】しかしながらこれら低分子化合物を多量に
添加すると、溶融紡糸などの過程で発煙が激しく、到底
生産技術として使用できるものではない。また、これら
の物質は製品中に取り残され、高次加工工程や最終製品
の使用中に徐々に放出されるため、環境に与える影響も
大きい。また、原糸機械特性としては高いものが得られ
ても、高次加工工程で様々な熱履歴や化学的処理を受け
るうちに物理特性が低下してしまい、最終製品での強度
・弾性率は不満足なものとなる。
【0009】これに対し、ポリエステルを有機溶媒に溶
解させて紡糸し、IVが1.2以上という従来よりも高
重合度のポリエステルの分子量を低下させることなく繊
維化することによって繊維の高強度・高弾性率化を実現
しようという試みが、特開平6―200410号、特開
平6―330406号公報等で提案されている。該公報
には、引張強度10cN/dtex、弾性率150cN
/dtex程度の繊維を得ることができる旨の記載があ
るが、有機溶媒を使用する湿式または半乾半湿式紡糸に
よる製造となるため、生産効率が低く、製造コストが高
くなるという欠点がある。また、ポリエステルが可溶な
溶媒は極めて特殊なものであり、その溶媒コストは高
く、溶媒の回収・精製は極めて困難である。
【0010】また、繊維学会誌vol.35 No.8 T328には、
ポリエチレンテレフタレート繊維を固相重合することに
よってポリマーの分子量を高め、機械的物性を改善する
試みが記載されている。しかし、糸の固相重合は非常に
低生産性のプロセスであるため、製造コストの上昇は不
可避であり、工業的な展開は到底望めない。また、この
技術によれば分子量増加が達成されるものの、繊維構造
が変化してかえって強度が低下してしまう。
【0011】ポリオレフィンについては、やはり溶媒を
使用したゲル膨潤延伸によって分子量100万以上のポ
リマーを用いて20cN/dtexを越える強度、15
00cN/dtexを越える弾性率の繊維が製造されて
いることは周知の事実である。しかし、上記プロセスと
同様に溶媒を用いたプロセスであるため、製造効率が低
く、極めてコストが高いという欠点がある。また、この
プロセスが使用できるポリマーはエチレンやポリプロピ
レンなどのごく一部のポリマーに限られており、多くの
縮合系化合物には展開できないという欠点を持ってい
る。
【0012】また、成型加工シンポジア'00講演B1
07では、ポリエチレンテレフタレートを芯に、ポリス
チレンを鞘に使用した芯鞘複合繊維において、芯成分の
ポリエチレンテレフタレート繊維のタフネスが向上する
データーが報告されている。しかしながらこの方法は、
芯成分の重量と等倍以上、好ましくは4倍程度の鞘成分
を複合することが必要であり、工業的に応用することは
難しい。また、鞘成分を除去する場合にも、得られるポ
リエチレンテレフタレート繊維と同量またはそれ以上に
およぶ大量のポリスチレンを溶出させる必要があり、工
業的に応用することは極めて困難である。
【0013】以上のように、熱可塑性樹脂を成型して高
い引張強度・弾性率を持つ繊維を得ようとする試みはほ
とんどの場合繊維を構成するポリマーを高重合度化する
ものである。これらは有機溶媒などの低分子化合物にポ
リマーを希釈したり、あるいは固相重合を行うなどの生
産性が低いプロセスを採用することが必要であり、製造
効率の低下や製品のコストアップが避けられない。ま
た、溶媒を回収・精製するための設備に多大な投資を行
う必要があり、製品のコストアップのみならず、万一の
事故が起こったときには環境に甚大な被害を及ぼす恐れ
がある。
【0014】このように、繊維の高強度・高弾性率化は
あらゆる用途の繊維に求められているにもかかわらず、
その実現の方法は、溶融紡糸であれば製品本来の特性を
失わせるような多量の添加剤によってポリマーを希釈す
るか、あるいは有機溶媒を使用した湿式、半乾・半湿式
紡糸など低効率なプロセスに頼らざるを得ないのが現状
である。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、上記
従来技術の問題点を解消し、有機溶剤を使用するプロセ
スや低分子化合物による希釈を伴わない溶融紡糸によっ
て、従来に比べて高い引張強度・弾性率を有する熱可塑
性合成繊維を高効率で製造する方法を提供することであ
る。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意検討の
結果、繊維の強度を向上するためには口金吐出孔内で存
在する流路断面方向のポリマーの流速分布を低減するこ
とが重要であることを突き止めた。そこで、口金孔内で
壁面部分に低粘度のポリマーを配し、繊維強度を担う実
質部分を構成する高粘度ポリマーの流速分布を低減する
ことによって、従来の溶融紡糸で得られる繊維よりも物
理特性に優れた繊維を製造することが可能であることを
見出し、本発明に至った。
【0017】すなわち、以下の要件を満たす複数の熱可
塑性樹脂を別々に溶融・計量した後、合流させ、吐出・
成型することを特徴とする熱可塑性合成繊維の製造方法
により、本発明の目的が達成される。(1)と(2)の
要件を満たすように、複数の熱可塑性樹脂を別々に溶融
・計量した後、合流させ、吐出・成形することを特徴と
する熱可塑性合成繊維の製造方法。 (1)1種類以上の熱可塑性樹脂群が、繊維を構成する
単繊維の内部に配置される(熱可塑性樹脂群A)。 (2)以下の要件を満たす1種類の熱可塑性樹脂(熱可
塑性樹脂B)が、熱可塑性樹脂群Aを覆う。 ηA/ηB≧10 ηA:熱可塑性樹脂群Aのうち、最も低い溶融粘度を有
する熱可塑性樹脂の溶融粘度(poise) ηB:熱可塑性樹脂Bの溶融粘度(poise) ηA、ηBの測定条件: 温度:TS+30℃ ただしTSは熱可塑性樹脂群A、熱可塑性樹脂Bのう
ち、最も高い軟化温度を有する熱可塑性樹脂の軟化温度 剪断速度:1×103(s-1
【0018】
【発明の実施の形態】本発明の熱可塑性合成繊維は、熱
分解温度以下にガラス転移点を有する複数の熱可塑性樹
脂から構成され、これらは熱可塑性樹脂群Aと熱可塑性
樹脂Bに分類される。熱可塑性樹脂群Aは実質的に本発
明の繊維の機械的強度を発現する役割を担っている。該
熱可塑性樹脂群Aは本発明の繊維の引張強度・弾性率を
高くするという目的のためには、少なくとも1種類は結
晶性熱可塑性樹脂で構成されることが好ましい。また、
熱可塑性樹脂群Aが1種類の結晶性熱可塑性樹脂から構
成されると、最も高強度・高弾性率化を達成することが
容易であるため好ましい。
【0019】熱可塑性樹脂群Aを構成する熱可塑性樹脂
は上記の通り、熱分解温度以下にガラス転移点を有する
ものであれば特に限定しないが、経済的な理由や高強度
・高弾性率化を達成しやすいことから、ポリエステル、
ポリアミド、ポリオレフィン系の結晶性熱可塑性樹脂を
使用することが好ましく、ポリエチレンテレフタレー
ト、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリカプラミド、
ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタ
レート、ポリ乳酸、ポリエチレン、ポリプロピレンであ
るとさらに好ましい。中でもポリエチレンテレフタレー
ト、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリカプラミドは
耐熱性、耐薬品性、機械的特性に優れ、経済的にも最も
好ましい熱可塑性樹脂である。
【0020】熱可塑性樹脂群Aを構成する熱可塑性樹脂
の重合度は特に制限はなく、用途に応じて設定されれば
よい。例えば衣料用途として用いる場合には、従来使用
されている熱可塑性樹脂の粘度範囲で構わず、ポリエチ
レンテレフタレートであればIVで0.5〜0.8程
度、ナイロンであればηで2.0〜3.0程度である。
また、産業用途であれば繊維の高強度・高弾性率化とい
う目的から溶融紡糸可能な限り高いことが好ましく、例
えばポリエチレンテレフタレートであればIVにして
1.0以上、ポリヘキサメチレンアジパミドやポリカプ
ラミドであればηにして3.0以上である。なお、本発
明によれば、樹脂の成型時に最も圧力損失が高い口金吐
出部での剪断変形が小さくなるため、従来よりも高粘度
の熱可塑性樹脂を低圧にて押し出すことができるほか、
口金面温度を低下させてもメルトフラクチャーなどの不
安定流動を起こしにくいため、口金面に付着する熱分解
物の発生を抑制することができる。従って、熱可塑性樹
脂群Aを構成する樹脂としては従来よりもさらに高重合
度の樹脂を使用することが可能であり、また従来と同等
の重合度の樹脂を使用しても操業性の安定化に役立てる
ことができる。
【0021】本発明の熱可塑性樹脂群Aの断面形状には
特に制約はなく、丸、三角、Yなど様々な形を用いるこ
とができ、また同心円、偏心、多芯など、繊維断面の中
での位置や個数にも制限はない。ただし、高強度・高弾
性率の繊維を得るという目的からは、熱可塑性樹脂群A
と熱可塑性樹脂Bがすべて円形断面であり、それらが同
心円に配列されることが好ましい。
【0022】本発明の熱可塑性樹脂Bは、口金吐出孔内
で存在する流路断面方向の熱可塑性樹脂群Aの流速分布
を低減する役割を担っている。熱可塑性樹脂Bは本発明
の重要な技術的位置を占めているので、その詳細につい
て述べる。本発明者らは繊維の機械的強度を改良するた
めには、口金から吐出された後のポリマーの温度や巻取
り速度を変更して変形挙動を制御するだけでは不十分で
あり、口金孔内部の構造形成に遡る必要があることを突
き止めた。すなわち、溶融ポリマーは吐出直前に口金孔
内部で強い剪断変形を受け、特に口金部材との接面のポ
リマーは流動が許されないため大きな剪断変形を強いら
れることになる。従ってこの部分は剪断応力が非常に高
いものとなり、応力と分子配向の比例則によって高配向
化する結果、微細な結晶核が生成することになる。ま
た、剪断変形は口金部材との接面では大きいにも関わら
ず流路中心部では極めて小さいものであり、これが繊維
構造の断面内部での不均一性をもたらしている。本発明
者らは鋭意検討した結果、口金部材の接面近傍を構成す
るポリマーに剪断変形を集中し、繊維の機械的強度を実
質的に担う熱可塑性樹脂群Aの剪断変形を減じることに
よって、熱可塑性樹脂群Aの断面内での構造が均一とな
り、表層の微結晶を生成することなくポリマーを吐出可
能であり、これによって繊維の高強度・高弾性率化が可
能になることを見出した。
【0023】なお、J.Rheol. vol.38 p831 (1994)やJ.A
ppl.Polym.Sci. Vol.59 p1305 (1996)によれば、溶融体
を成型部材に流すに当たって、その樹脂−金属界面に低
粘度のポリマーを配置することによって、樹脂実質部の
流速分布を抑制することが可能であることが述べられて
いる。しかしながらこれまでの繊維成型技術では、口金
孔内での流速分布が繊維の力学的特性に影響を与えうる
ことは知られておらず、今回我々が詳細な検討を行った
結果初めて明らかになった事実である。また、上記報告
には繊維に対する応用技術は記されておらず、具体的な
繊維の形状、樹脂の種類、工業的な応用に対する記述は
一切見られない。
【0024】本発明によれば、従来の溶融紡糸に使用し
ている樹脂に他の低分子化合物などを混入することな
く、経済的に最も好ましい溶融紡糸によって容易に繊維
の機械的強度・弾性率を向上することが可能である。
【0025】このような口金孔内のポリマー変形を実現
するためには、熱可塑性樹脂群Aのうち最も溶融粘度が
低い樹脂の溶融粘度ηAと、熱可塑性樹脂Bの溶融粘度
ηBの関係が、ηA/ηB≧10以上となる熱可塑性樹
脂を使用することが必要であり、ηA/ηB≧100と
なることがさらに好ましい。この溶融粘度の測定条件は
口金孔内部の流動条件に近いことが好ましいことから、
剪断速度は1×103(s-1)、温度としては熱可塑性
樹脂群Aおよび熱可塑性樹脂Bのうち最も軟化温度が高
い樹脂の軟化温度+30℃を採用する。
【0026】上記のように口金孔内の温度や剪断速度に
近い条件下でηA/ηBが10未満であると、熱可塑性
樹脂群Aのうち最も高い溶融粘度を有する熱可塑性樹脂
の表層に微結晶が生成したり、断面方向に構造分布がで
きるため、繊維の強度・弾性率が不十分となり好ましく
ない。また、ηA/ηBが100以上であると効果は特
に顕著であり、高い引張強度・弾性率の繊維を得ること
ができる。
【0027】ここでいう軟化温度とは熱可塑性樹脂が結
晶性高分子の場合には融解温度のことを指し、室温から
300℃まで昇温速度15℃にて測定したDSCの結晶
融解曲線のピーク温度をいう。また、熱可塑性樹脂がD
SCの測定で結晶融解ピークを与えないような非晶性高
分子の場合には、ビカット軟化点(JIS K 720
6)によって軟化温度を定義する。
【0028】本発明の熱可塑性樹脂Bは、熱可塑性樹脂
群Aを覆う必要がある。熱可塑性樹脂Bの役割は繊維の
機械特性を担う熱可塑性樹脂群Aを壁面から離すことに
よって剪断変形の断面方向内分布を低減することが目的
であり、これらは熱可塑性樹脂Bが単繊維の表面を完全
に覆うことでのみ達成される。従って熱可塑性樹脂群A
は単繊維内層に配置される形態となる必要がある。
【0029】本発明の熱可塑性合成繊維に使用される熱
可塑性樹脂Bの割合は特に制限はないが、この部分が実
質的に繊維強度・弾性率への貢献がないことから、熱可
塑性樹脂Bの重量構成比が繊維全体の20%以下である
ことが好ましく、10%以下であるとさらに好ましい。
熱可塑性樹脂Bの重量構成比が20%以下であれば、こ
の部分が繊維の強度・弾性率を担わなくとも、熱可塑性
樹脂群Aの内外構造差を十分低減することができ、十分
な強度・弾性率の繊維を得ることができる。
【0030】本発明の熱可塑性樹脂Bに用いられる樹脂
の化学的組成には特に制限はないが、熱可逆性樹脂Bの
軟化温度が、熱可塑性樹脂群Aのうち最も高い軟化温度
を示す樹脂の軟化温度より20℃以上低くないことが好
ましく、10℃以上低くないことがさらに好ましい。ま
た、熱可塑性樹脂Bが、熱可塑性樹脂群Aのうち、最も
高い溶融粘度を有する熱可塑性樹脂と実質的に同一の化
学的組成を有することがさらに好ましい。熱可逆性樹脂
Bの軟化温度が、熱可塑性樹脂群Aのうち最も高い軟化
温度を示す樹脂の軟化温度より20℃以上低くない場
合、特に熱可塑性樹脂群Aが1種類の結晶性熱可塑性樹
脂から構成される場合には、繊維全体が類似または単一
の熱特性を有する熱可塑性樹脂から構成されることとな
り、高次加工工程や製品となった後の取り扱いが容易で
あり、好ましい。
【0031】本発明で用いる熱可塑性樹脂は、発明の主
旨を損ねない範囲で他の第3成分が共重合されていても
良い。例えばポリエチレンテレフタレートを熱可塑性樹
脂Aとして用いる場合、ポリエステルを構成するジカル
ボン酸化合物として例えば、テレフタル酸、イソフタル
酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカ
ルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘ
キサンジカルボン酸、5ーナトリウムスルホイソフタル
酸、5−テトラブチルホソホニウムイソフタル酸等の芳
香族、脂肪族、脂環族ジカルボン酸およびそれらの誘導
体を少量用いてもよい。またジオール化合物としては、
エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレン
グリコール、テトラメチレングリコール、1,4−シク
ロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ネオ
ペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール、ビス
フェノールA、ビスフェノールSのような芳香族、脂肪
族、脂環族のジオール化合物またはその誘導体を用いる
ことができる。
【0032】さらに、本発明の熱可塑性樹脂は本発明の
主旨を損ねない範囲で、艶消剤、難燃剤等の添加剤を少
量含有しても良い。特に熱可塑性樹脂Bは繊維の強度・
弾性率を担うことがなく、繊維を構成する単繊維の表面
を覆っていることから、例えば接着剤、離型剤、撥水剤
などを含有させることによって繊維の表面を改質してお
くと、高次加工工程の省略が可能となるなどの利点があ
る。
【0033】本発明の熱可塑性合成繊維は、上記の熱可
塑性樹脂群Aと熱可塑性樹脂Bを別々に溶融・計量した
後、合流させ、吐出することにより製造される。本発明
の目的は溶融紡糸によって従来よりも機械的特性が高い
繊維を得ることにあり、高効率で環境負荷の小さい製造
を実現することが可能である。
【0034】本発明の製造方法には、いわゆる複合紡糸
法が用いられる。樹脂の合流部は、口金孔内での剪断流
動を制御する目的から、口金内部で行われることが好ま
しい。
【0035】口金から吐出された繊維は、冷却風にて冷
却・固化され、必要があれば冷却以前の段階または冷却
以後に再加熱された後に給油されることが好ましい。そ
の後、本発明の目的である高強度・高弾性率繊維を得る
ためには、6000m/分以上の速度で引き取ってその
まま巻き取るか、または任意の速度で一旦引き取った糸
を延伸するか、または一旦巻き取らずにそのまま直接延
伸することが好ましい。さらに高強度・高弾性率化する
ためには、繊維の融着が起こらない範囲の高温で熱セッ
トする事が好ましく、必要があれば弛緩処理を施しても
よい。
【0036】巻き取られた糸はそのまま製品として用い
られることが好ましいが、更に高強度化が必要であれ
ば、繊維の強度・弾性率と関係しない熱可塑性樹脂B成
分を取り除くこともできる。熱可塑性樹脂Bを取り除い
た繊維は、その分軽量化され、単位重量当たりの強力や
弾性率が増すため、さらに高強度・高弾性率化必要な用
途に本発明の繊維を適用することができる。熱可塑性樹
脂Bの除去は、例えば力学的に熱可塑性樹脂Bを分割し
たり破砕するなどの物理的な手段で行ってもよいし、何
らかの溶剤で溶出するような化学的手段を採用してもよ
い。ただし、化学的な手段によって熱可塑性樹脂Bを溶
出する場合には、熱可塑性樹脂Bとして水溶性の樹脂を
使用し、水や温水、熱水、あるいは無機塩の水溶液など
を使用して熱可塑性樹脂Bを溶出することが好ましい。
つまり、有機溶媒による熱可塑性樹脂Bの溶出・除去な
ど環境付加が大きな手法をは避けることが好ましい。
【0037】本発明の熱可塑性合成繊維の製造方法によ
れば、従来溶融紡糸法によって行われていたあらゆる熱
可塑性樹脂の引張強度・弾性率を向上することが可能で
あり、本発明の方法によって得られた熱可塑性合成繊維
を使用することによって、最終製品の品位の向上が可能
となる。また、本発明の方法で得られた熱可塑性合成繊
維の引張強度・弾性率の向上により、繊維の製糸性向上
や高次加工工程の通過性向上がもたらされ、生産性の飛
躍的な向上に貢献することができる。
【0038】特に、従来は溶融紡糸によって引張強度が
10cN/dtex以上、弾性率が150cN/dte
x以上の熱可塑性合成繊維を得ることはきわめて困難で
あったが、本発明の熱可塑性合成繊維の製造方法によっ
て、引張強度10cN/dtex以上、弾性率が150
cN/dtex以上の熱可塑性合成繊維を容易にかつ高
生産性にて製造することができ、高品質かつ低コストの
製品を提供することが可能となる。
【0039】
【実施例】以下、実施例により、本発明を詳細に説明す
る。なお、本発明は実施例に制限されるものではない。
なお、実施例中の物性値は以下の方法によって測定し
た。 (1)熱可塑性樹脂の溶融粘度 (株)東洋精機製キャピログラフ1Bにて測定を行っ
た。検出される圧力をすべてキャピラリー部の圧力損失
とし、ハーゲンポアズイユの式から剪断粘度を見積もっ
た。
【0040】なお、剪断速度1×103の時の溶融粘度
は、ピストン降下速度を変化させることによって剪断速
度を変化させ、これらの値から推定した。
【0041】条件は以下の通り。
【0042】(1) ノズルのキャピラリー:長さ10m
m、内径1mmφ (2) シリンダー:径9.55mmφ (3) ピストン降下速度:50、100、200mm/分 (2)ポリエステル繊維の強度、弾性率、伸度 東洋ボールドウイン(株)社製テンシロン引張り試験器
により、試長250mm、引張り速度300mm/分で
S−S曲線を求め、強伸度を算出した。 (3)乾熱収縮率 試料をカセ状にとって20℃、65%RHにて24時間
以上放置したのち、試料の0.1g/dの荷重をかけて
測定した長さL0の試料を、150℃のオーブン中に3
0分間処理した後、取り出して4時間以上放冷した。そ
の後、再び0.1g/dの荷重をかけて長さL1を測定
し、以下の式で収縮率Sを測定した。
【0043】 S(%)=(L0−L1)/L0×100 (4)繊維断面形状の観察 直径1mmφの孔が空いた金属板を用意し、その孔に試
料を黒綿と共に通して固定して断面方向にカットし、光
学顕微鏡にて観察した。 (5)軟化温度 PERKIN−ELMER社製 DSC7RSeにて測
定を行った。測定は室温から300℃まで毎分15℃の
割合で昇温し、得られた結晶融解曲線のピーク温度を読
みとった。
【0044】実施例1 定法によってエステル化および重縮合を行い、以下に記
載する2種類の重合度のPETを合成した。両者とも軟
化温度は260℃であった。290℃での溶融粘度が9
800poiseのPET(以下PET−A)を熱可塑
性樹脂A、290℃での溶融粘度が82poiseのP
ET(以下PET−B)を熱可塑性樹脂Bとして用いる
ため、それぞれのペレットを乾熱炉にて120℃で3時
間結晶化させ、さらにこれらのペレットを150℃で1
2時間真空乾燥した。これらを2つのエクストルーダを
備えた紡糸機に供給し、295℃の紡糸温度で別々に溶
融・計量した後パック内に導入し、口金内部で合流させ
た。口金は3枚構成であり、第1プレートの丸孔で熱可
塑性樹脂Bの計量、第2プレートの丸孔で熱可塑性樹脂
Aの計量を行った後、第2プレートと第3プレートの間
で両樹脂を合流させて、第3プレートの丸孔で単糸断面
形状を円形に成型して吐出した。
【0045】PET−AとPET−Bの重量比率は9
5:5とし、PET−Aが芯成分、PET−Bが鞘成分
となる同心円の芯鞘複合紡糸を行った。口金の吐出孔は
0.4mmφの丸孔を144備えた口金を用いた。吐出
した糸条を25℃・30m/分のチムニー冷却風を当て
て冷却固化し、オイリングローラーにて給油した後、引
き取り速度500m/分で引き取り、一旦巻き取ること
なく90℃、120℃にて合計延伸倍率6.2倍の2段
延伸を行い、200℃にて熱セット、3%のリラックス
処理を行って巻き取った。このようにして巻き取った糸
の断面を顕微鏡写真で観察した結果、すべての単糸で芯
成分と鞘成分が同心円状に配置していることを確認し
た。
【0046】巻き取った糸の引張特性をテンシロンにて
測定したところ、強度・弾性率ともに比較例1、2、
3、7、8に比べて飛躍的に改善されていることが確認
された。
【0047】実施例2 熱可塑性樹脂Bとして軟化温度260℃、290℃での
溶融粘度920poiseのPETを使用した以外は実
施例1と同様の方法にて製糸した。
【0048】巻き取った糸の断面を顕微鏡写真で観察し
た結果、すべての単糸で芯成分と鞘成分が同心円状に配
置していることを確認でき、また糸の引張特性をテンシ
ロンにて測定したところ、強度・弾性率ともに比較例
1、2、3、7、8に比べて飛躍的に改善されているこ
とが確認された。
【0049】実施例3、4 芯成分と鞘成分の重量比率を変更した他は実施例1と同
様の方法にて製糸した。巻き取った糸の断面を顕微鏡写
真で観察した結果、すべての単糸で芯成分と鞘成分が同
心円状に配置していることを確認でき、また糸の引張特
性をテンシロンにて測定したところ、強度・弾性率とも
に比較例1、2、3、7、8に比べて改善されているこ
とが確認された。
【0050】実施例5 鞘成分をポリメチルペンテンとした以外は実施例1と同
様の方法にて製糸した。ポリメチルペンテンは三井化学
(株)製"TPX"DX820を使用し、乾燥することな
くそのまま用いた。この樹脂のDSC融解ピーク温度は
240℃であり、290℃でのポリメチルペンテンの溶
融粘度は220poiseであった。
【0051】巻き取った糸の断面を顕微鏡写真で観察し
た結果、すべての単糸で芯成分と鞘成分が同心円状に配
置していることを確認でき、また糸の引張特性をテンシ
ロンにて測定したところ、強度・弾性率ともに比較例
1、2、3、7、8に比べて飛躍的に改善されているこ
とが確認された。
【0052】実施例6 鞘成分をポリプロピレンとした以外は実施例1と同様の
方法にて紡糸した。ポリプロピレンは(株)グランドポ
リマー社製"ハイポール"J108を使用し、乾燥するこ
となくそのまま用いた。この樹脂のDSC融解ピーク温
度は165℃であった。290℃でのポリプロピレンの
溶融粘度は310poiseであった。
【0053】延伸は熱セット温度を140℃とし、延伸
倍率を5.8倍とした以外は実施例1と同様の方法で行
った。
【0054】巻き取った糸の断面を顕微鏡写真で観察し
た結果、すべての単糸で芯成分と鞘成分が同心円状に配
置していることを確認でき、また糸の引張特性をテンシ
ロンにて測定したところ、強度・弾性率ともに比較例
1、2、3、7、8に比べて飛躍的に改善されているこ
とが確認された。
【0055】実施例7 鞘成分に水溶性ポリエステルを用いた以外は実施例1同
様の方法にて製糸した。水溶性ポリエステルはテレフタ
ル酸成分の30%がイソフタル酸、20%がスルホイソ
フタル酸ナトリウムで置換された共重合物を使用した。
この樹脂のDSC結晶融解ピークは250℃であり、2
90℃での水溶性ポリエステルの溶融粘度は91poi
seであった。水溶性ポリエステルのペレットは、乾熱
炉にて80℃で6時間結晶化させ、さらにこれらのペレ
ットを120℃で24時間真空乾燥した。
【0056】巻き取った糸の断面を顕微鏡写真で観察し
た結果、すべての単糸で芯成分と鞘成分が同心円状に配
置していることを確認でき、また糸の引張特性をテンシ
ロンにて測定したところ、強度・弾性率ともに比較例
1、2、3、7、8に比べて飛躍的に改善されているこ
とが確認された。
【0057】実施例8 第2プレートの計量孔の形状をY型とすることで、熱可
塑性樹脂Aの断面形状を三角形とすること以外は実施例
1と同様の方法にて製糸した。
【0058】巻き取った糸の断面を顕微鏡写真で観察し
た結果、すべての単糸の断面形状は丸で、芯成分の形状
は三角形であった。また、芯成分の三角形の重心は、単
糸丸断面の中心と一致していた。
【0059】さらに、糸の引張特性をテンシロンにて測
定したところ、強度・弾性率ともに比較例1、2、3、
7、8に比べて飛躍的に改善されていることが確認され
た。
【0060】実施例9 第2プレートの計量孔を、1単糸あたり10孔配置する
ことで、熱可塑性樹脂Aを多芯とすること以外は実施例
1と同様の方法にて製糸した。
【0061】巻き取った糸の断面を顕微鏡写真で観察し
た結果、すべての単糸内部に円形の島が10個存在する
ことを確認した。また、糸の引張特性をテンシロンにて
測定したところ、強度・弾性率ともに比較例1、2、
3、7、8に比べて飛躍的に改善されていることが確認
された。
【0062】実施例10 第3プレートの吐出孔の形状をY型とすることで、単糸
の断面形状を三角形とする以外は、実施例1と同様の方
法で製糸した。
【0063】巻き取った糸の断面を顕微鏡写真で観察し
た結果、すべての単糸の断面形状は三角形で、芯成分の
形状も三角形であった。また、芯成分の三角形の重心
は、単糸の三角断面の重心と一致していた。
【0064】さらに、糸の引張特性をテンシロンにて測
定したところ、強度・弾性率ともに比較例1、2、3、
7、8に比べて飛躍的に改善されていることが確認され
た。
【0065】実施例11 引き取り速度を2000m/分とし、合計延伸倍率を
2.5倍とする以外は実施例1と同様の方法で製糸し
た。
【0066】巻き取った糸の断面を顕微鏡写真で観察し
た結果、すべての単糸で芯成分と鞘成分が同心円状に配
置していることを確認でき、また糸の引張特性をテンシ
ロンにて測定したところ、強度・弾性率ともに比較例9
に比べて飛躍的に改善されていることが確認された。
【0067】実施例12 引き取り速度を5000m/分とし、合計延伸倍率を
1.5倍とする以外は実施例1と同様の方法で製糸し
た。
【0068】巻き取った糸の断面を顕微鏡写真で観察し
た結果、すべての単糸で芯成分と鞘成分が同心円状に配
置していることを確認でき、また糸の引張特性をテンシ
ロンにて測定したところ、強度・弾性率ともに比較例1
0に比べて飛躍的に改善されていることが確認された。
【0069】実施例13 熱可塑性樹脂Aとして使用するPETを変更し、軟化温
度260℃、290℃での溶融粘度が2800pois
eのPETを使用し、実施例1と同様に重量比率95:
5の芯鞘複合紡糸を行った。口金の吐出孔は0.2mm
φの丸孔を36備えた口金を用いた。吐出した糸条を2
5℃・30m/分のチムニー冷却風を当てて冷却固化
し、給油ガイドにて給油・収束した後、引き取り速度3
000m/分で引き取り、延伸することなく一旦巻き取
った。次に、90℃に加熱したローラーにて延伸倍率
2.0倍の1段延伸を行い、130℃にて熱セットを行
って巻き取った。
【0070】このようにして巻き取った糸の断面を顕微
鏡写真で観察した結果、すべての単糸で芯成分と鞘成分
が同心円状に配置していることを確認した。
【0071】巻き取った糸の引張特性をテンシロンにて
測定したところ、強度・弾性率ともに比較例11に比べ
て飛躍的に改善されていることが確認された。
【0072】実施例14 実施例13と同様の方法で吐出・冷却・給油した糸条を
紡糸速度6000m/分で引き取り、延伸することなく
巻き取った。
【0073】このようにして巻き取った糸の断面を顕微
鏡写真で観察した結果、すべての単糸で芯成分と鞘成分
が同心円状に配置していることを確認した。巻き取った
糸の引張特性をテンシロンにて測定したところ、強度・
弾性率ともに比較例12に比べて飛躍的に改善されてい
ることが確認された。
【0074】実施例15 紡糸速度を10000m/分とする以外は実施例14と
同様の方法で繊維を製造した。
【0075】このようにして巻き取った糸の断面を顕微
鏡写真で観察した結果、すべての単糸で芯成分と鞘成分
が同心円状に配置していることを確認した。
【0076】巻き取った糸の引張特性をテンシロンにて
測定したところ、強度・弾性率ともに比較例13に比べ
て飛躍的に改善されていることが確認された。
【0077】実施例16 熱可塑性樹脂Bをポリエチレンとした以外は実施例14
と同様の方法で製糸を行った。
【0078】ポリエチレンは三井化学(株)社製"ミラ
ソン"FL60を用い、そのDSCでの融解ピーク温度
は110℃であった。また、290℃での溶融粘度は1
30poiseであった。ポリエチレンは乾燥すること
なくそのまま用いた。
【0079】このようにして巻き取った糸の断面を顕微
鏡写真で観察した結果、すべての単糸で芯成分と鞘成分
が同心円状に配置していることを確認した。
【0080】巻き取った糸の引張特性をテンシロンにて
測定したところ、強度・弾性率ともに比較例12に比べ
て飛躍的に改善されていることが確認された。
【0081】実施例17 熱可塑性樹脂Bをポリスチレンとした以外は実施例14
と同様の方法で製糸を行った。
【0082】ポリエチレンはエー・アンド・エム・スチ
レン(株)社製"スタイロン"679Rを用い、そのビカ
ット軟化点温度は93℃であった。この樹脂の290℃
での溶融粘度は135poiseであった。ポリスチレ
ンは乾燥することなくそのまま用いた。
【0083】このようにして巻き取った糸の断面を顕微
鏡写真で観察した結果、すべての単糸で芯成分と鞘成分
が同心円状に配置していることを確認した。巻き取った
糸の引張特性をテンシロンにて測定したところ、強度・
弾性率ともに比較例12に比べて飛躍的に改善されてい
ることが確認された。
【0084】実施例18 熱可塑性樹脂Aとして、DSC融解ピーク温度が260
℃、290℃での溶融粘度が3200poiseのポリ
ヘキサメチレンアジパミド(N66)を用いた以外は、
実施例1と同様の方法で繊維を製造した。N66は定法
によって重縮合し、実施例1と同様の方法で乾燥を行っ
た。
【0085】巻き取った糸の断面を顕微鏡写真で観察し
た結果、すべての単糸で芯成分と鞘成分が同心円状に配
置していることを確認でき、また糸の引張特性をテンシ
ロンにて測定したところ、強度・弾性率ともに比較例
4、14に比べて飛躍的に改善されていることが確認さ
れた。
【0086】実施例19 熱可塑性樹脂Aとして、DSC融解ピーク温度が230
℃、290℃での溶融粘度が3000poiseのポリ
カプラミド(N6)を用いた以外は、実施例1と同様の
方法で繊維を製造した。N6は定法によって重縮合し、
実施例1と同様の方法で乾燥を行った。
【0087】巻き取った糸の断面を顕微鏡写真で観察し
た結果、すべての単糸で芯成分と鞘成分が同心円状に配
置していることを確認でき、また糸の引張特性をテンシ
ロンにて測定したところ、強度・弾性率ともに比較例
5、15に比べて飛躍的に改善されていることが確認さ
れた。
【0088】実施例20 熱可塑性樹脂Aとして(株)島津製作所社製のポリ乳
酸"ラクティー"5000(PLA)を用いた以外は、実
施例14と同様の方法で繊維を製造した。PLAのDS
C融解ピーク温度は170℃であり、290℃での溶融
粘度は900poiseであった。PLAのペレットは
予備結晶化することなしに、100℃で12時間真空乾
燥して用いた。
【0089】巻き取った糸の断面を顕微鏡写真で観察し
た結果、すべての単糸で芯成分と鞘成分が同心円状に配
置していることを確認でき、また糸の引張特性をテンシ
ロンにて測定したところ、強度・弾性率ともに比較例1
6に比べて飛躍的に改善されていることが確認された。
【0090】実施例21 熱可塑性樹脂AとしてShell社製のポリプロピレン
テレフタレート樹脂"CORTERRA"(PPT)を用
いた以外は、実施例14と同様の方法で繊維を製造し
た。PPTのDSC結晶融解ピークは225℃であり、
290℃での溶融粘度は900poiseであった。P
PTのペレットは予備乾燥なしに150℃で5時間真空
乾燥して用いた。
【0091】巻き取った糸の断面を顕微鏡写真で観察し
た結果、すべての単糸で芯成分と鞘成分が同心円状に配
置していることを確認でき、また糸の引張特性をテンシ
ロンにて測定したところ、強度・弾性率ともに比較例1
7に比べて飛躍的に改善されていることが確認された。
【0092】実施例22 熱可塑性樹脂Aとして(株)グランドポリマー社製のポ
リプロピレン"グランドポリプロ"E101を用いた以外
は、実施例1と同様の方法で繊維を製造した。ただし、
延伸ローラーの温度は50および100℃とし、熱セッ
ト温度を140℃に変更した。
【0093】この樹脂のDSC融解ピーク温度は165
℃であり、290℃での溶融粘度は12600pois
eであった。PPのペレットは、乾燥することなくその
まま用いた。巻き取った糸の断面を顕微鏡写真で観察し
た結果、すべての単糸で芯成分と鞘成分が同心円状に配
置していることを確認でき、また糸の引張特性をテンシ
ロンにて測定したところ、強度・弾性率ともに比較例
6、18に比べて飛躍的に改善されていることが確認さ
れた。
【0094】実施例23 いずれもDSC結晶融解ピークが260℃のPETとN
66を用い、290℃での溶融粘度が9800pois
eのPET(PET−A)と290℃での溶融粘度が3
200poiseのN66(N66−A)を熱可塑性樹
脂群A、290℃での溶融粘度が82poiseのPE
T(PET−B)を熱可塑性樹脂Bとして、それぞれの
ペレットを乾熱炉にて120℃で3時間結晶化させ、さ
らにこれらのペレットを150℃で12時間真空乾燥し
た。これらを2つのエクストルーダを備えた紡糸機に供
給し、295℃の紡糸温度で別々に溶融・計量した後パ
ック内に導入し、口金内部で合流させた。口金は3枚構
成であり、第1プレートの丸孔で熱可塑性樹脂Bの計
量、第2プレートの丸孔で熱可塑性樹脂群Aの計量を行
った後、第2プレートと第3プレートの間でこれら樹脂
を合流させて、第3プレートの丸孔で単糸断面形状を円
形に成型して吐出した。
【0095】PET−A、N66−A、PET−Bの重
量比率は45:45:10とし、PET−AとN66−
Aが単糸あたりそれぞれ5島を構成する多芯成分、PE
T−Bが海成分となる海島型の芯鞘複合紡糸を行った。
口金の吐出孔は0.4mmφの丸孔を144備えた口金
を用いた。吐出・冷却・給油・延伸条件は実施例1と同
様の方法を用いた。
【0096】このようにして巻き取った糸の断面を顕微
鏡写真で観察した結果、すべての単糸で10個の島が単
糸内部に配置されていることを確認した。
【0097】巻き取った糸の引張特性をテンシロンにて
測定したところ、強度・弾性率ともに比較例1、2、
3、7、8に比べて飛躍的に改善されていることが確認
された。
【0098】実施例24 実施例7の方法によって得られた繊維を、パンチ穴を有
する金属製ボビンに巻き返し、98℃の熱水に浸して鞘
部の水溶性ポリエステルを溶出した後、50℃にて24
時間真空乾燥機した。繊維の断面を顕微鏡写真で観察し
た結果、すべての単糸で鞘部が溶出していることを確認
した。巻き取った糸の引張特性をテンシロンにて測定し
たところ、強度・弾性率ともに実施例7よりもさらに改
善されていることが確認された。
【0099】実施例25 実施例17の方法によって得られた繊維を、パンチ穴を
有する金属製ボビンに巻き返し、トルエンに浸して鞘部
のポリスチレンを溶出した後、50℃にて24時間真空
乾燥機した。繊維の断面を顕微鏡写真で観察した結果、
すべての単糸で鞘部が溶出していることを確認した。巻
き取った糸の引張特性をテンシロンにて測定したとこ
ろ、強度・弾性率ともに実施例17よりもさらに改善さ
れていることが確認された。
【0100】比較例1、2、3 熱可塑性樹脂AおよびBとして使用するPETを変更
し、軟化温度260℃、290℃での溶融粘度が表1で
示されるような、芯/鞘を構成するPETの粘度比が1
0以下の組合せのPETを使用し、実施例1と同様にし
て芯鞘複合紡糸を行った。吐出した糸条を25℃・30
m/分のチムニー冷却風を当てて冷却固化し、オイリン
グローラーにて給油した後、引き取り速度500m/分
で引き取り、一旦巻き取ることなく90℃、120℃に
て2段延伸を行い、200℃にて熱セット、3%のリラ
ックス処理を行って巻き取った。このようにして巻き取
った糸の断面を顕微鏡写真で観察した結果、すべての単
糸で芯成分と鞘成分が同心円状に配置していることを確
認した。
【0101】巻き取った糸の引張特性をテンシロンにて
測定したところ、強度・弾性率ともに不十分なものであ
った。
【0102】比較例4 熱可塑性樹脂Bとして、260℃、290℃での溶融粘
度が2800poiseのPETを用いた以外は、実施
例18と同様の方法で繊維を製造した。N66は定法に
よって重縮合し、実施例18と同様の方法で乾燥を行っ
た。
【0103】巻き取った糸の断面を顕微鏡写真で観察し
た結果、すべての単糸で芯成分と鞘成分が同心円状に配
置していることを確認できた。糸の引張特性をテンシロ
ンにて測定したところ、強度・弾性率ともに不満足なも
のであった。
【0104】比較例5 熱可塑性樹脂Bとして、260℃、290℃での溶融粘
度が2800poiseのPETを用いた以外は、実施
例19と同様の方法で繊維を製造した。N6は定法によ
って重縮合し、実施例19と同様の方法で乾燥を行っ
た。
【0105】巻き取った糸の断面を顕微鏡写真で観察し
た結果、すべての単糸で芯成分と鞘成分が同心円状に配
置していることを確認できた。糸の引張特性をテンシロ
ンにて測定したところ、強度・弾性率ともに不満足なも
のであった。
【0106】比較例6 熱可塑性樹脂Bとして、260℃、290℃での溶融粘
度が9800poiseのPETを用いた以外は、実施
例22と同様の方法で繊維を製造した。
【0107】巻き取った糸の断面を顕微鏡写真で観察し
た結果、すべての単糸で芯成分と鞘成分が同心円状に配
置していることを確認できた。糸の引張特性をテンシロ
ンにて測定したところ、強度・弾性率ともに不満足なも
のであった。
【0108】比較例7 定法によってエステル化および重縮合を行い、290℃
での溶融粘度が9800poiseのPETを乾熱炉に
て120℃で3時間結晶化させ、さらにこれらのペレッ
トを150℃で12時間真空乾燥した。これらをエクス
トルーダを備えた紡糸機に供給し、295℃の紡糸温度
で溶融・計量した後パック内に導入し、0.6mmφの
丸孔を144備えた口金から吐出した。吐出した糸条を
口金直下で300℃に加熱した長さ30cmのフードに
通した後、25℃・30m/分のチムニー冷却風を当て
て冷却固化し、オイリングローラーにて給油した後、引
き取り速度500m/分で引き取り、一旦巻き取ること
なく90℃、120℃にて合計延伸倍率5.4倍の2段
延伸を行い、200℃にて熱セット、3%のリラックス
処理を行って巻き取った。
【0109】巻き取った糸の引張特性をテンシロンにて
測定したところ、強度は10cN/dtex未満、弾性
率は150cN/dtex未満であり、ともに不満足な
ものであった。
【0110】比較例8 熱可塑性樹脂Bとして290℃での溶融粘度が1300
poiseのPETを使用した以外は実施例1と同様の
方法にて製糸した。
【0111】巻き取った糸の断面を顕微鏡写真で観察し
た結果、すべての単糸で芯成分と鞘成分が同心円状に配
置していることを確認できた。糸の引張特性をテンシロ
ンにて測定したが、強度・弾性率ともに不満足なもので
あった。
【0112】比較例9 紡糸速度を2000m/分とし、延伸倍率を2.3倍と
する以外は比較例7と同様の方法で製糸を行った。その
結果、繊維の強度・弾性率とも不満足なものであった。
【0113】比較例10 紡糸速度を5000m/分とし、延伸倍率を1.2倍と
する以外は比較例7と同様の方法で製糸を行った。その
結果、繊維の強度・弾性率とも不満足なものであった。
【0114】比較例11 290℃での溶融粘度が2800poiseのPETを
乾熱炉にて120℃で3時間結晶化させ、さらにこれら
のペレットを150℃で12時間真空乾燥した。これら
をエクストルーダを備えた紡糸機に供給し、295℃の
紡糸温度で溶融・計量した後パック内に導入し、0.2
3mmφの丸孔を36備えた口金から吐出した。吐出し
た糸条を25℃・30m/分のチムニー冷却風を当てて
冷却固化し、給油ガイドにて給油・収束した後、引き取
り速度3000m/分で引き取り、延伸することなく一
旦巻き取った。次に、90℃に加熱したローラーにて延
伸倍率1.7倍の1段延伸を行い、130℃にて熱セッ
トを行って巻き取った。
【0115】糸の引張特性をテンシロンにて測定した
が、強度・弾性率ともに不満足なものであった。
【0116】比較例12 比較例11と同様の方法で吐出・冷却・給油した糸条を
紡糸速度6000m/分で引き取り、延伸することなく
巻き取った。
【0117】糸の引張特性をテンシロンにて測定した
が、強度・弾性率ともに不満足なものであった。
【0118】比較例13 紡糸速度を10000m/分とする以外は比較例6と同
様の方法で繊維を製造した。
【0119】糸の引張特性をテンシロンにて測定した
が、強度・弾性率ともに不満足なものであった。
【0120】比較例14 290℃での溶融粘度3200poiseのN66を乾
熱炉にて120℃で3時間結晶化させ、さらにこれらの
ペレットを150℃で12時間真空乾燥した。これらを
エクストルーダを備えた紡糸機に供給し、295℃の紡
糸温度で溶融・計量した後パック内に導入し、0.3m
mφの丸孔を144備えた口金から吐出した。吐出した
糸条を口金直下で300℃に加熱した長さ30cmのフ
ードに通した後、25℃・30m/分のチムニー冷却風
を当てて冷却固化し、オイリングローラーにて給油した
後、引き取り速度500m/分で引き取り、一旦巻き取
ることなく90℃、120℃にて合計延伸倍率5.4倍
の2段延伸を行い、200℃にて熱セット、3%のリラ
ックス処理を行って巻き取った。
【0121】巻き取った糸の引張特性をテンシロンにて
測定したところ、強度は10cN/dtex未満、弾性
率は100cN/dtex未満であり、ともに不満足な
ものであった。
【0122】比較例15 290℃での溶融粘度3000poiseのN6を乾熱
炉にて120℃で3時間結晶化させ、さらにこれらのペ
レットを150℃で12時間真空乾燥した。これらをエ
クストルーダを備えた紡糸機に供給し、295℃の紡糸
温度で溶融・計量した後パック内に導入し、0.3mm
φの丸孔を144備えた口金から吐出した。吐出した糸
条を口金直下で300℃に加熱した長さ30cmのフー
ドに通した後、25℃・30m/分のチムニー冷却風を
当てて冷却固化し、オイリングローラーにて給油した
後、引き取り速度500m/分で引き取り、一旦巻き取
ることなく90℃、120℃にて合計延伸倍率5.4倍
の2段延伸を行い、200℃にて熱セット、3%のリラ
ックス処理を行って巻き取った。
【0123】巻き取った糸の引張特性をテンシロンにて
測定したところ、強度は10cN/dtex未満、弾性
率は100cN/dtex未満であり、ともに不満足な
ものであった。
【0124】比較例16 溶融粘度(株)島津製作所社製のPLA"ラクティー"5
000を用い、ペレットを100℃で12時間真空乾燥
した。これらをエクストルーダを備えた紡糸機に供給
し、230℃の紡糸温度で溶融・計量した後パック内に
導入し、0.23mmφの丸孔を36備えた口金から吐
出した。吐出した糸条を25℃・30m/分のチムニー
冷却風を当てて冷却固化し、給油ガイドにて給油・収束
した後、引き取り速度6000m/分で引き取り、延伸
することなく巻き取った。糸の引張特性をテンシロンに
て測定したが、強度・弾性率ともに不満足なものであっ
た。
【0125】比較例17 溶融粘度シェル社製のPPT"CORTERRA"を用
い、ペレットを150℃で5時間真空乾燥した。これら
をエクストルーダを備えた紡糸機に供給し、260℃の
紡糸温度で溶融・計量した後パック内に導入し、0.2
3mmφの丸孔を36備えた口金から吐出した。吐出し
た糸条を25℃・30m/分のチムニー冷却風を当てて
冷却固化し、給油ガイドにて給油・収束した後、引き取
り速度6000m/分で引き取り、延伸することなく巻
き取った。糸の引張特性をテンシロンにて測定したが、
強度・弾性率ともに不満足なものであった。
【0126】比較例18 溶融粘度12600poiseの(株)グランドポリマ
ー社製PP"グランドポリプロ"E101を乾燥せずにエ
クストルーダを備えた紡糸機に供給し、295℃の紡糸
温度で溶融・計量した後パック内に導入し、0.6mm
φの丸孔を144備えた口金から吐出した。吐出した糸
条を25℃・30m/分のチムニー冷却風を当てて冷却
固化し、オイリングローラーにて給油した後、引き取り
速度500m/分で引き取り、一旦巻き取ることなく5
0℃、100℃にて合計延伸倍率5.4倍の2段延伸を
行い、140℃にて熱セット、3%のリラックス処理を
行って巻き取った。
【0127】巻き取った糸の引張特性をテンシロンにて
測定したところ、強度は10cN/dtex未満、弾性
率は100cN/dtex未満であり、ともに不満足な
ものであった。
【0128】
【表1】
【0129】
【表2】
【0130】
【表3】
【0131】
【表4】
【0132】
【発明の効果】口金吐出孔内で存在する流路断面方向の
ポリマーの流速分布を低減することが重要であり、口金
孔内で壁面部分に低粘度のポリマーを配し、繊維強度を
担う実質部分を構成する高粘度ポリマーの流速分布を低
減することによって、有機溶剤を使用するプロセスや低
分子化合物による希釈を伴わない溶融紡糸によって、従
来に比べて高い引張強度・弾性率を有する熱可塑性合成
繊維を高効率で製造する方法を提供する。
【0133】特に、従来は溶融紡糸によって引張強度が
10cN/dtex以上の熱可塑性合成繊維を得ること
はきわめて困難であったが、本発明の熱可塑性合成繊維
の製造方法によって、引張強度10cN/dtex以上
の熱可塑性合成繊維を容易にかつ高生産性にて製造する
ことができ、高品質かつ低コストの製品を提供すること
が可能となる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4L041 AA07 BA02 BA05 BA21 BD01 CA06 CA20 CA25 CA36 CA38 EE02 EE10

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(1)と(2)の要件を満たすように、複
    数の熱可塑性樹脂を別々に溶融・計量した後、合流さ
    せ、吐出・成形することを特徴とする熱可塑性合成繊維
    の製造方法。 (1)1種類以上の熱可塑性樹脂群が、繊維を構成する
    単繊維の内部に配置される(熱可塑性樹脂群A)。 (2)以下の要件を満たす1種類の熱可塑性樹脂(熱可
    塑性樹脂B)が、熱可塑性樹脂群Aを覆う。 ηA/ηB≧10 ηA:熱可塑性樹脂群Aのうち、最も低い溶融粘度を有
    する熱可塑性樹脂の溶融粘度(poise) ηB:熱可塑性樹脂Bの溶融粘度(poise) ηA、ηBの測定条件: 温度:TS+30℃ ただしTSは熱可塑性樹脂群A、熱可塑性樹脂Bのう
    ち、最も高い軟化温度を有する熱可塑性樹脂の軟化温度 剪断速度:1×103(s-1
  2. 【請求項2】熱可塑性樹脂を吐出し、引き取った糸条を
    一旦巻き取るか、または巻き取ることなく延伸すること
    を特徴とする請求項1の熱可塑性合成繊維の製造方法。
  3. 【請求項3】熱可塑性樹脂を吐出した後、紡糸速度60
    00m/分以上で引き取ることを特徴とする請求項1ま
    たは2記載の熱可塑性合成繊維の製造方法。
  4. 【請求項4】熱可塑性樹脂群Aが一種類の結晶性熱可塑
    性樹脂からなり、請求項1〜3いずれか1項記載の方法
    で製造される熱可塑性合成繊維。
  5. 【請求項5】熱可塑性樹脂群Aがポリエチレンテレフタ
    レート、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリカプラミ
    ド、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレ
    フタレート、ポリ乳酸、ポリエチレン、ポリプロピレン
    系樹脂から選ばれた熱可塑性樹脂であることを特徴とす
    る請求項4項記載の熱可塑性合成繊維。
  6. 【請求項6】熱可塑性樹脂Bの重量構成比が、繊維全体
    の20%未満であることを特徴とする請求項4または5
    記載の熱可塑性合成繊維。
  7. 【請求項7】熱可塑性樹脂Bが、熱可塑性樹脂群Aの結
    晶性熱可塑性樹脂と実質的に同一の化学的組成を有する
    ことを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項記載の熱
    可塑性合成繊維。
  8. 【請求項8】単繊維の断面形状が実質的に円形であり、
    熱可塑性樹脂群Aと熱可塑性樹脂Bが同心円で配列する
    ことを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項記載の熱
    可塑性合成繊維。
  9. 【請求項9】繊維強度が10cN/dtex以上である
    請求項4〜8いずれか1項記載の熱可塑性合成繊維。
  10. 【請求項10】請求項4〜8のいずれか1項記載の熱可
    塑性合成繊維の熱可塑性樹脂Bを取り除く熱可塑性合成
    繊維の製造方法。
  11. 【請求項11】熱可塑性樹脂群Aが非水溶性樹脂、熱可
    塑性樹脂Bが水溶性樹脂であることを特徴とする請求項
    9記載の熱可塑性合成繊維の製造方法。
  12. 【請求項12】繊維強度が10cN/dtex以上であ
    り、請求項10または11記載の方法で製造される熱可
    塑性合成繊維。
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