JP2004250811A - ポリエステル繊維およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
本発明はバージンチップ製造工程および/またはフィルム製造工程において発生するポリエステル屑よりなる再生ポリエステル樹脂を原料として、強度、製糸安定性に優れた産業用ポリエステルフィラメントを提供せんとするものである。
【解決手段】
再生ポリエステル樹脂を95wt%以上含有するポリエステル繊維であって、該再生ポリエステル樹脂がバージンチップ製造工程および/またはフィルム製造工程において発生するポリエステル屑であり、固有粘度0.8〜1.2、破断強度5.8〜10.4cN/dtex、アンチモン金属を60〜170ppm含有することを特徴とするポリエステル繊維。
【選択図】 なし
本発明はバージンチップ製造工程および/またはフィルム製造工程において発生するポリエステル屑よりなる再生ポリエステル樹脂を原料として、強度、製糸安定性に優れた産業用ポリエステルフィラメントを提供せんとするものである。
【解決手段】
再生ポリエステル樹脂を95wt%以上含有するポリエステル繊維であって、該再生ポリエステル樹脂がバージンチップ製造工程および/またはフィルム製造工程において発生するポリエステル屑であり、固有粘度0.8〜1.2、破断強度5.8〜10.4cN/dtex、アンチモン金属を60〜170ppm含有することを特徴とするポリエステル繊維。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、再生ポリエステル樹脂を原料としたポリエステル繊維、特に高強度で製糸性に優れたに産業用途のポリエステル繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートは、その力学特性、耐熱性、成形性、耐薬品性等のバランスに優れ、安価であることから、繊維、フィルム、また、PETボトルに代表される成型品や包装材として幅広く用いられているが、近年、資源の再利用、環境問題等の面から、使用後のポリエステル製品、あるいは成型工程で発生したポリエステル屑を回収再利用、すなわち再生ポリエステル樹脂とする試みがなされている。
【0003】
従来の再生ポリエステル樹脂より産業用として好適な繊維を得る方法には、有機不純物を含有する回収ポリエステルを原料に使用したポリエステル繊維製品および製造法に関するもの(例えば特許文献1、特許文献2参照)や、バージン原料と再生原料を混ぜて使用することで再生ポリエステル繊維を高強度化する方法(例えば特許文献3、特許文献4、特許文献5参照)や、PETボトル再生樹脂を固相重合して繊維化する方法(例えば特許文献6参照)が提案されている。
【0004】
しかしながら、前記特許文献1または2記載の方法では添加物、異物等の不純物を多く含み、破断伸度が30%以下となるような延伸工程においては糸切れが多発し操業性が著しく低下し、高強度糸が得られないという問題点を有している。
【0005】
特許文献3〜5には、新しいポリエステル樹脂と再生ポリエステル樹脂をノズルパック内で混練する方法や、溶融前のチップの段階で新しいポリエステル樹脂と再生ポリエステル樹脂を混合する方法や、芯成分に再生ポリエステル、鞘成分に新しいポリエステルを用いた芯鞘複合糸を用いて繊維を高強度化する方法が記載されている。しかしながら、これらの手法は資源の再利用、環境問題といった観点からは本来の目的を充分には満足していないという問題を有している。
【0006】
また、特許文献6の実施例にはPETボトル再生樹脂を固相重合することにより高強度繊維を得る方法が記載されているが、PETボトルを回収してチップ化する際に異物の混入が避けられず、また、色々な種類のPETボトルが区別されること無く回収され、チップ化されることから粘度等のバラツキも大きい。このため、高強度繊維を得るために必要な高倍率で延伸する条件においては製糸性が悪化してしまうという問題を有している。また、一般的にPETボトル用樹脂は結晶化速度を遅くする為にジエチレングリコール等の物質を多く含有しているため、PETボトル用樹脂から得られる繊維は耐熱性に劣るという問題も有している。
【0007】
上記のように再生ポリエステル樹脂を使用して実用的な繊維製品を得ようとする試みはなされているものの、高い強度を得るために高倍率延伸が必要な産業用繊維を製糸性良く安定に得ることができてないのが現状である。
【0008】
【特許文献1】
特開平10−72725号公報
【0009】
【特許文献2】
特開2000−160429号公報
【0010】
【特許文献3】
特開2000−282326号公報
【0011】
【特許文献4】
特開2000−328369号公報
【0012】
【特許文献5】
特開2001−172827号公報
【0013】
【特許文献6】
特開2002−235243号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果、達成されたものであり、再生ポリエステル樹脂を使用しても製糸性が良好で、極めて優れた強度を有する産業用再生ポリエステル繊維を提供せんとするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明のポリエステル繊維は再生ポリエステル樹脂を95wt%以上含有するポリエステル繊維であって、該再生ポリエステル樹脂がバージンチップ製造工程および/またはフィルム製造工程において発生するポリエステル屑から得られ、繊維の固有粘度が0.8〜1.2、破断強度が5.8〜10.4cN/dtex、含有するアンチモン金属量が60〜120ppmであることを特徴とする。
【0016】
なお、本発明のポリエステル繊維において、少なくとも1種類以上の着色剤を繊維総重量に対して0.01〜4wt%含有していることがより好ましい条件であり、これらの条件を満たすことにより、さらに優れた効果の発現を期待することができる。
【0017】
また、本発明のポリエステル繊維の製造方法は、再生ポリエステル樹脂を95wt%以上含有するポリエステル繊維の製造方法であって、該再生ポリエステル樹脂がバージンチップ製造工程および/またはフィルム製造工程で発生したポリエステル屑を再成形し、再生ポリエステル樹脂とした後、繊維状に溶融成形することを特徴とする。さらに本発明のポリエステル繊維の製造方法において、前記再生ポリエステル樹脂が固相重合されることにより、更に優れた効果の発現を期待することが出来る。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明でいうポリエステルとはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート等からなる芳香族ポリエステルやポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルが好ましく、さらに、これらのポリエステルには本発明の目的、効果を損なわない範囲であれば、第三成分が共重合されたものであっても良く、共重合成分の例としては、イソフタル酸やナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸やセバシン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸、ジエチレングリコールや1,4−ブタンジオール等のジオール化合物、5−スルホイソフタル酸金属塩、含リン化合物などを挙げることができるがこれに限定されることはない。しかし、繊維としての汎用性、物性、回収ポリエステルの経済性の観点からポリエチレンテレフタレートが最も好ましい。
【0020】
本発明における再生ポリエステル樹脂は、本発明の目的、効果を損なわない範囲であれば、ダル化剤などの粒子や酸化防止剤などの安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、充填剤、架橋剤などの添加剤を含んでいても良い。
【0021】
本発明者らは再生ポリエステル樹脂を用いて、製糸性に優れ実用に耐えうる高強度繊維を得る方法について鋭意検討をおこなった結果、再生ポリエステル樹脂を用いて紡糸をおこなう際に、高倍率での延伸が実施できず、高強度繊維を得ることができなかった要因が再生ポリエステル樹脂原料と重合触媒由来のアンチモン金属含有量であることを見出し本発明に到達した。
【0022】
本発明における再生ポリエステル樹脂の原料は、バージンチップ製造時やフィルム製造時において発生するポリエステル屑であることが必須である。これらの製造時に屑として扱われる規格外れ部分はプレコンシューマー品であるため異物の混入が少なく、この屑より得られる再生ポリエステル樹脂を出発原料として繊維を製造する際に製糸性良く、高強度の繊維を得ることが出来る。
【0023】
また、バージンチップ製造時において発生した屑は、前述の様に異物の混入が少ないだけでなくフィルムや繊維等への溶融成形を通過していないため、ポリエステルの熱による分解が少ない点で有利である。
【0024】
また、フィルム製造時においては、フィルム延伸時に厚みの厚い端部が大量に屑として発生する問題も有しており、これらの屑を繊維として再利用することは環境負荷を低減できる。
【0025】
本発明でいうバージンチップ製造とはアルキレングリコールとジカルボン酸等を重合してポリエステルにした後、重合後のポリエステルを固化して、押出・射出成形用の原料チップを製造すること指す。また、フィルム製造とは原料チップを溶融後、スリット状の口金より押し出して冷却固化した後、延伸してフィルム化することを指す。
【0026】
近年、PETボトルを回収、溶融成形したPETボトル回収チップを原料としたリサイクル繊維の開発が進んでいるが、PETボトル回収チップは、前述の様に異物の混入、粘度バラツキが多く、高強度繊維を製糸性良く得ることが難しく、また、PETボトル製造時に発生する屑も前述の様に結晶化速度を遅くする為の物質を含有しているため、PETボトル用樹脂から得られる繊維は耐熱性が弱い等の問題を有していることから、本発明の如き高強度で産業用途に供される繊維としては適さない。
【0027】
本発明の再生ポリエステル繊維は再生ポリエステル樹脂を95wt%以上含有することが必須である。資源の再利用、環境問題といった観点から再生ポリエステル繊維は再生ポリエステル樹脂を可能な限り多く含有することが重要である。また、本発明の如き産業用として供される繊維は、着色や難燃性等の付与を求められることがある。それらの場合には再生ポリエステル樹脂を溶融紡糸する段階で、各種顔料、添加剤等を5wt%以下の割合で含有することができるが、顔料や前述の共重合成分、添加剤等の割合が5wt%以上となる場合には繊維中の異物含有量が多くなるため、本発明の如き高強度な繊維を得ることが困難となる。
【0028】
また、本発明におけるポリエステル繊維は、重合触媒に起因するアンチモン金属を60〜170ppm含有していることが必須である。
【0029】
本発明における再生ポリエステル繊維は、バージンチップ製造時および/またはフィルム製造時、屑回収後の溶融再チップ化時、再生繊維製造時といった様に多くの溶融再成形工程を通る。このため、再生ポリエステル繊維に含有されるアンチモン金属量が170ppmを超えると、繰り返し行なわれる再溶融工程において重合触媒としての作用以上に分解を促進したり、アンチモン金属が凝集することによって異物となり製糸性を大きく低下させる。このポリマーの分解により生じたカルボキシル末端はポリマー加水分解の自己触媒として作用し、さらなる分解反応を引き起こすため固有粘度の大幅な低下を引き起こす原因となり、製糸性不良や繊維強度低下が発生する。
【0030】
また、アンチモン金属量が60ppm未満では、再生ポリエステル樹脂を固相重合する場合の重合速度が遅くなるとともに到達固有粘度も低下するため、アンチモン金属量は60ppm以上が必須である。
【0031】
本発明においてアンチモン金属量を調整するためには、再生ポリエステル樹脂を製造する段階において、原料とするポリエステル屑のアンチモン金属量を計量し、本発明の規定する範囲内となるよう適宜混合した後、溶融再ペレット化する方法などがある。
【0032】
また、本発明においてアンチモン金属としては三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、三塩化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモングリコレートが好ましく使用される。
【0033】
本発明のポリエステル繊維の固有粘度は0.8〜1.2であることが必須であり、固有粘度を高くするための手段としては、再生ポリエステル樹脂を固相重合することが好ましい。ポリエステル繊維の固有粘度が0.8より小さい場合、産業用途に要求される高い強力を有したポリエステル繊維を得ることができない。また、ポリエステル繊維の固有粘度を1.2より大きくすると繊維を形成する分子鎖の絡みが強固となり過ぎて、製糸性の悪化、限界延伸倍率の低下が発生し、産業用途に要求される高い強力を有したポリエステル繊維を得ることができない。固相重合の方法は従来知られているような方法で良く、例えばポリエチレンテレフタレートであれば、真空下で220〜240℃にて一定時間処理すれば良く、連続・バッチいずれの方法で行っても良い。また反応容器内の温度を均一にするために攪拌が行われることが好ましい。
【0034】
本発明のポリエステル繊維の破断強度は5.8〜10.4cN/dtexであることが必須であり、より好ましくは6〜10cN/dtex、さらに好ましくは6.5〜10cN/dtexである。強度が5.8cN/dtex未満の場合には産業用繊維として適用できる分野が限定される。また、強度を10.4cN/dtex以上とすると繊維の持つ伸度が低下し、産業用で要求されるタフネスが達成できない場合がある。
【0035】
本発明のポリエステル繊維は着色剤を繊維総重量に対して0.01〜4wt%含有している原着繊維であることが好ましい。着色剤の添加量が0.01wt%以下の場合色調が不足し、4wt%を超える場合本発明の目的とする産業用として必要な強度を得ることが困難になるため、着色剤の添加量は、繊維総重量に対し0.1〜0.6wt%であることがより好ましく、更に0.3〜0.5wt%の範囲内であることが好ましい。着色剤としては、カーボンブラック系顔料などの無機系顔料や、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系着色剤、スチレン系着色剤、およびキナクリドン系着色剤などの有機系着色剤が挙げられるが、特にこれに限定されず、ポリエステル系樹脂を溶融紡糸する際に、本発明の目的、効果を損なわない範囲であれば公知の染料および顔料を使用することができる。少なくともこれらから選ばれた少なくとも1種類以上の着色剤を添加することが好ましい。
【0036】
以下に本発明のポリエステル繊維を得るための製造方法の一例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0037】
フィルム製造においてフィルム延伸時に発生し、通常製品にならない端部分を粉砕再溶融し、所望のアンチモン量を含有するペレットにした後、必要な固有粘度まで固相重合した再生ポリエステル樹脂を、通常の溶融紡糸法により口金より紡出する。このとき、ポリマの熱による劣化を防ぐために、紡糸機内におけるポリマの滞留時間は短いほど好ましく、通常10分以内とすれば良い。紡糸温度は通常260℃〜300℃であれば良い。
【0038】
さらに、口金直下には加熱筒を配し、吐出糸条はこの加熱筒内を通過させることが好ましい。この加熱筒は、一般に、5〜100cmの長さで、150〜350℃で温度制御された加熱筒であれば良いが、その長さ及び温度条件は、得られる糸条の繊度やフィラメント数により最適化されれば良い。この加熱筒の使用により、溶融ポリマの固化を遅らせ高強度を発現させることができる。
【0039】
紡出された糸条は、上記高温雰囲気中を通過した後、冷風で冷却固化され、次いで油剤が付与された後、紡糸速度を制御する引取りロールで引取られる。
【0040】
引取りロールに引取られた未延伸糸条は、通常連続して延伸されるが、一旦巻取った後に別工程で延伸しても良い。紡糸速度は、通常300〜3000m/分、好ましくは500〜2500m/分であれば良い。延伸は常法の熱延伸が採用されれば良い。その延伸倍率は未延伸糸の複屈折、延伸温度、および多段延伸する際の延伸比配分等によって変化させ得るが、1.5〜6.5倍が好ましく、2.3〜6.0倍のような高倍率であることがより好ましい。
【0041】
次いで、この延伸糸は熱固定される。熱固定は糸条を熱ローラや熱板に接触させたり、また高温気体中を通過させることなどの公知の方法により行えば良く、一般に160〜240℃、好ましくは180〜220℃の熱固定温度をとれば良い。この熱固定時の張力および温度を変化させることで、乾熱収縮率をコントロールすることが可能である。
【0042】
さらに、本発明のポリエステル繊維に、工程上の毛羽発生を抑えるため、延伸工程および熱固定工程において、フィラメントに交絡処理を施すことは何等差支えない。交絡はエア交絡など公知の方法が採用でき、例えばエア交絡の場合、用いる糸条の繊度や張力に応じて、エアの圧力を適宜変更する事で目的の交絡度を達成することができる。交絡度(CF値)としては10〜70であることが好ましく20〜60であることがより好ましい。
【0043】
【実施例】
以下に本発明を実施例および比較例に基づきさらに詳細に説明する。
【0044】
また、本発明における諸特性の測定方法は以下の通りである。
【0045】
[破断強度・破断伸度]
(株)オリエンテック社製“テンシロン”引張試験機を用い、試料長25cm、引張速度30cm/分の条件でSS曲線(応力−伸長特性)を測定し、SS曲線から求めた。
【0046】
[固有粘度]
オルソクロロフェノール100mlに対し試料8gを溶解した溶液の相対粘度ηをオストワルド式粘度計を用いて測定し(25℃)、次の近似式によって求めた。
固有粘度=0.0242η+0.2634
[交絡度(CF値)]
1m試長の試料に100gの荷重をかけ、6gのフックを下降速度1〜2cm/秒で下降させ、式:交絡度(CF値)=100(cm)/下降距離(cm)により計算して求めた。
【0047】
[アンチモン金属の含有量]
蛍光X線元素分析装置(堀場製作所社製、MESA−500W型)により求めた。なお、ポリエステルに二酸化チタン粒子が含有されている際には、次の前処理をした上で蛍光X線分析を行った。すなわち、ポリエステルをオルソクロロフェノールに溶解(溶媒100gに対してポリマー5g)し、このポリマー溶液と同量のジクロロメタンを加えて溶液の粘性を調製した後、遠心分離器(回転数18000rpm、1時間)で粒子を沈降させる。その後、傾斜法で上澄み液のみを回収し、上澄み液と同量のアセトンを添加することによりポリマーを再析出させ、そのあと3G3のガラスフィルター(IWAKI社製)で濾過し、濾上物をさらにアセトンで洗浄した後、室温で12時間真空乾燥してアセトンを除去した。以上の前処理を施して得られたポリマーについてアンチモン元素の分析を行った。
【0048】
一方、二酸化チタン粒子が含有されていない場合は、前処理を行う必要がないので、ポリマーをそのまま分析した。
【0049】
[製糸安定性]
紡糸連続延伸を行ったときの断糸、毛羽の発生状況から3段階で評価した。
【0050】
○:良好で長時間の安定製糸が可能。
【0051】
△:やや不安定
×:不安定で断糸、毛羽が多発し長時間の製糸は困難。
【0052】
(実施例1〜3、比較例1〜2)
表1に示す割合でアンチモン金属を含有するフィルム延伸時に発生した固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレート屑を290で溶融し、再ペレット化した後、真空下220℃で固相重合を行い、表1に示す極限粘度の再生ポリエステル樹脂を得た。当該樹脂を空気に触れさせることなく紡糸ホッパーに移送し、290℃に加熱したエクストルダー型紡糸機で溶融した後、290℃に加熱した紡糸パック中に導き、紡糸口金より吐出した。紡糸口金は全面配孔で、孔径0.6mmφ、孔数は192であり、口金直下には50cmの加熱筒を取り付け、筒内雰囲気温度を300℃となるように加熱した。ここでいう筒内雰囲気温度とは加熱筒中央部の内壁から1cm離れた部分の空気層温度である。
【0053】
加熱筒直下にユニフロー型チムニーを設置し、糸条に18℃の冷風を30m/分の速度で吹付け冷却固化した。固化した糸条に油剤を付与した後、表1に示す速度で回転する引取ロールにより糸条を引取り、引取りロールと給糸ロールとの間で3%のストレッチをかけ、引取った糸条の引揃えを行い、引き続き表1に記載の延伸倍率で2段熱延伸を行い、弛緩処理をしたのち延伸糸を巻き取った。引取りロールは70℃、給糸ロールは100℃、第1延伸ロールは110℃、第2延伸ロールは220℃とそれぞれのロールは加熱し、延伸後の弛緩ロールは非加熱とした。総延伸倍率は表1に示すが、延伸配分としては、1段目で総延伸倍率の70%の延伸を行い、残りを2段目で延伸し、弛緩率3%でリラックス処理を施し、1100dtex、192フィラメントの延伸糸を得た。弛緩ロールと巻き取り機の間には交絡付与ノズルを設置し繊維に交絡を付与した。得られた繊維の物性について評価し、表1に示した。なお、弛緩率は第2延伸ロールと弛緩ロールの回転速度を変えることで設定した。
【0054】
(実施例4)
実施例1記載の方法で表1に示す割合でアンチモン金属を含有するポリエチレンテレフタレート樹脂に、2軸のエクストルーダーを用いて平均粒径0.1μmのカーボンブラック(顔料)を20重量%となるように溶融混練して固有粘度0.6のマスターチップを作製し、該マスターチップと表1に示すアンチモン金属含有量、極限粘度の再生ポリエステル樹脂をブレンドして、表1に示す顔料含有量にしたこと以外は実施例1と同様に行なった。
【0055】
(比較例3および4)
再生ポリエステル樹脂(三島殖産株式会社”トレグリーン”固有粘度0.61)を真空下220℃で固相重合をおこないとして表1記載の固有粘度を有するPETボトルリサイクルチップを用い、表1に記載の条件で紡糸したこと以外は実施例1と同様におこなった。
【0056】
【表1】
【0057】
表1から明らかなように、本発明の方法によれば再生ポリエステル樹脂を使用しても製糸性に優れ、かつ、産業用途に好適に使用できる強度を有したポリエステル繊維を得ることができる。また、本発明の範囲外である比較例1においては、再生ポリエステル樹脂の固有粘度を高くすることができず、産業用途として好適なポリエステル繊維を得ることは出来なかった。比較例2においては、実施例1より高い固有粘度を持つ再生ポリエステル樹脂を原料としたものの、溶融繊維化における固有粘度低下が大きく、また、アンチモン金属の凝集等に起因する製糸性の悪化が起こり、産業用途として好適なポリエステル繊維を得ることができなかった。
【0058】
また、比較例3から明らかなようにPETボトルリサイクルチップを用いて産業用途として好適な高強度を有するポリエステル繊維を得ようとする場合は製糸性が悪かった。
【0059】
さらに、PETボトルリサイクルチップを用いて製糸性良く繊維を得る場合は、比較例4に記載の様に、産業用としては不適合な低強度繊維しか得ることが出来なかった。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、再生ポリエステル樹脂を原料とし、製糸性に優れ、産業用として実用に耐えうる高強度を有したポリエステル繊維を得ることが可能となる。かかるポリエステル繊維は、安全ネット、陸上ネット、土木ネット、安全帯、魚網等に良好に使用することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、再生ポリエステル樹脂を原料としたポリエステル繊維、特に高強度で製糸性に優れたに産業用途のポリエステル繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートは、その力学特性、耐熱性、成形性、耐薬品性等のバランスに優れ、安価であることから、繊維、フィルム、また、PETボトルに代表される成型品や包装材として幅広く用いられているが、近年、資源の再利用、環境問題等の面から、使用後のポリエステル製品、あるいは成型工程で発生したポリエステル屑を回収再利用、すなわち再生ポリエステル樹脂とする試みがなされている。
【0003】
従来の再生ポリエステル樹脂より産業用として好適な繊維を得る方法には、有機不純物を含有する回収ポリエステルを原料に使用したポリエステル繊維製品および製造法に関するもの(例えば特許文献1、特許文献2参照)や、バージン原料と再生原料を混ぜて使用することで再生ポリエステル繊維を高強度化する方法(例えば特許文献3、特許文献4、特許文献5参照)や、PETボトル再生樹脂を固相重合して繊維化する方法(例えば特許文献6参照)が提案されている。
【0004】
しかしながら、前記特許文献1または2記載の方法では添加物、異物等の不純物を多く含み、破断伸度が30%以下となるような延伸工程においては糸切れが多発し操業性が著しく低下し、高強度糸が得られないという問題点を有している。
【0005】
特許文献3〜5には、新しいポリエステル樹脂と再生ポリエステル樹脂をノズルパック内で混練する方法や、溶融前のチップの段階で新しいポリエステル樹脂と再生ポリエステル樹脂を混合する方法や、芯成分に再生ポリエステル、鞘成分に新しいポリエステルを用いた芯鞘複合糸を用いて繊維を高強度化する方法が記載されている。しかしながら、これらの手法は資源の再利用、環境問題といった観点からは本来の目的を充分には満足していないという問題を有している。
【0006】
また、特許文献6の実施例にはPETボトル再生樹脂を固相重合することにより高強度繊維を得る方法が記載されているが、PETボトルを回収してチップ化する際に異物の混入が避けられず、また、色々な種類のPETボトルが区別されること無く回収され、チップ化されることから粘度等のバラツキも大きい。このため、高強度繊維を得るために必要な高倍率で延伸する条件においては製糸性が悪化してしまうという問題を有している。また、一般的にPETボトル用樹脂は結晶化速度を遅くする為にジエチレングリコール等の物質を多く含有しているため、PETボトル用樹脂から得られる繊維は耐熱性に劣るという問題も有している。
【0007】
上記のように再生ポリエステル樹脂を使用して実用的な繊維製品を得ようとする試みはなされているものの、高い強度を得るために高倍率延伸が必要な産業用繊維を製糸性良く安定に得ることができてないのが現状である。
【0008】
【特許文献1】
特開平10−72725号公報
【0009】
【特許文献2】
特開2000−160429号公報
【0010】
【特許文献3】
特開2000−282326号公報
【0011】
【特許文献4】
特開2000−328369号公報
【0012】
【特許文献5】
特開2001−172827号公報
【0013】
【特許文献6】
特開2002−235243号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果、達成されたものであり、再生ポリエステル樹脂を使用しても製糸性が良好で、極めて優れた強度を有する産業用再生ポリエステル繊維を提供せんとするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明のポリエステル繊維は再生ポリエステル樹脂を95wt%以上含有するポリエステル繊維であって、該再生ポリエステル樹脂がバージンチップ製造工程および/またはフィルム製造工程において発生するポリエステル屑から得られ、繊維の固有粘度が0.8〜1.2、破断強度が5.8〜10.4cN/dtex、含有するアンチモン金属量が60〜120ppmであることを特徴とする。
【0016】
なお、本発明のポリエステル繊維において、少なくとも1種類以上の着色剤を繊維総重量に対して0.01〜4wt%含有していることがより好ましい条件であり、これらの条件を満たすことにより、さらに優れた効果の発現を期待することができる。
【0017】
また、本発明のポリエステル繊維の製造方法は、再生ポリエステル樹脂を95wt%以上含有するポリエステル繊維の製造方法であって、該再生ポリエステル樹脂がバージンチップ製造工程および/またはフィルム製造工程で発生したポリエステル屑を再成形し、再生ポリエステル樹脂とした後、繊維状に溶融成形することを特徴とする。さらに本発明のポリエステル繊維の製造方法において、前記再生ポリエステル樹脂が固相重合されることにより、更に優れた効果の発現を期待することが出来る。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明でいうポリエステルとはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート等からなる芳香族ポリエステルやポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルが好ましく、さらに、これらのポリエステルには本発明の目的、効果を損なわない範囲であれば、第三成分が共重合されたものであっても良く、共重合成分の例としては、イソフタル酸やナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸やセバシン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸、ジエチレングリコールや1,4−ブタンジオール等のジオール化合物、5−スルホイソフタル酸金属塩、含リン化合物などを挙げることができるがこれに限定されることはない。しかし、繊維としての汎用性、物性、回収ポリエステルの経済性の観点からポリエチレンテレフタレートが最も好ましい。
【0020】
本発明における再生ポリエステル樹脂は、本発明の目的、効果を損なわない範囲であれば、ダル化剤などの粒子や酸化防止剤などの安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、充填剤、架橋剤などの添加剤を含んでいても良い。
【0021】
本発明者らは再生ポリエステル樹脂を用いて、製糸性に優れ実用に耐えうる高強度繊維を得る方法について鋭意検討をおこなった結果、再生ポリエステル樹脂を用いて紡糸をおこなう際に、高倍率での延伸が実施できず、高強度繊維を得ることができなかった要因が再生ポリエステル樹脂原料と重合触媒由来のアンチモン金属含有量であることを見出し本発明に到達した。
【0022】
本発明における再生ポリエステル樹脂の原料は、バージンチップ製造時やフィルム製造時において発生するポリエステル屑であることが必須である。これらの製造時に屑として扱われる規格外れ部分はプレコンシューマー品であるため異物の混入が少なく、この屑より得られる再生ポリエステル樹脂を出発原料として繊維を製造する際に製糸性良く、高強度の繊維を得ることが出来る。
【0023】
また、バージンチップ製造時において発生した屑は、前述の様に異物の混入が少ないだけでなくフィルムや繊維等への溶融成形を通過していないため、ポリエステルの熱による分解が少ない点で有利である。
【0024】
また、フィルム製造時においては、フィルム延伸時に厚みの厚い端部が大量に屑として発生する問題も有しており、これらの屑を繊維として再利用することは環境負荷を低減できる。
【0025】
本発明でいうバージンチップ製造とはアルキレングリコールとジカルボン酸等を重合してポリエステルにした後、重合後のポリエステルを固化して、押出・射出成形用の原料チップを製造すること指す。また、フィルム製造とは原料チップを溶融後、スリット状の口金より押し出して冷却固化した後、延伸してフィルム化することを指す。
【0026】
近年、PETボトルを回収、溶融成形したPETボトル回収チップを原料としたリサイクル繊維の開発が進んでいるが、PETボトル回収チップは、前述の様に異物の混入、粘度バラツキが多く、高強度繊維を製糸性良く得ることが難しく、また、PETボトル製造時に発生する屑も前述の様に結晶化速度を遅くする為の物質を含有しているため、PETボトル用樹脂から得られる繊維は耐熱性が弱い等の問題を有していることから、本発明の如き高強度で産業用途に供される繊維としては適さない。
【0027】
本発明の再生ポリエステル繊維は再生ポリエステル樹脂を95wt%以上含有することが必須である。資源の再利用、環境問題といった観点から再生ポリエステル繊維は再生ポリエステル樹脂を可能な限り多く含有することが重要である。また、本発明の如き産業用として供される繊維は、着色や難燃性等の付与を求められることがある。それらの場合には再生ポリエステル樹脂を溶融紡糸する段階で、各種顔料、添加剤等を5wt%以下の割合で含有することができるが、顔料や前述の共重合成分、添加剤等の割合が5wt%以上となる場合には繊維中の異物含有量が多くなるため、本発明の如き高強度な繊維を得ることが困難となる。
【0028】
また、本発明におけるポリエステル繊維は、重合触媒に起因するアンチモン金属を60〜170ppm含有していることが必須である。
【0029】
本発明における再生ポリエステル繊維は、バージンチップ製造時および/またはフィルム製造時、屑回収後の溶融再チップ化時、再生繊維製造時といった様に多くの溶融再成形工程を通る。このため、再生ポリエステル繊維に含有されるアンチモン金属量が170ppmを超えると、繰り返し行なわれる再溶融工程において重合触媒としての作用以上に分解を促進したり、アンチモン金属が凝集することによって異物となり製糸性を大きく低下させる。このポリマーの分解により生じたカルボキシル末端はポリマー加水分解の自己触媒として作用し、さらなる分解反応を引き起こすため固有粘度の大幅な低下を引き起こす原因となり、製糸性不良や繊維強度低下が発生する。
【0030】
また、アンチモン金属量が60ppm未満では、再生ポリエステル樹脂を固相重合する場合の重合速度が遅くなるとともに到達固有粘度も低下するため、アンチモン金属量は60ppm以上が必須である。
【0031】
本発明においてアンチモン金属量を調整するためには、再生ポリエステル樹脂を製造する段階において、原料とするポリエステル屑のアンチモン金属量を計量し、本発明の規定する範囲内となるよう適宜混合した後、溶融再ペレット化する方法などがある。
【0032】
また、本発明においてアンチモン金属としては三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、三塩化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモングリコレートが好ましく使用される。
【0033】
本発明のポリエステル繊維の固有粘度は0.8〜1.2であることが必須であり、固有粘度を高くするための手段としては、再生ポリエステル樹脂を固相重合することが好ましい。ポリエステル繊維の固有粘度が0.8より小さい場合、産業用途に要求される高い強力を有したポリエステル繊維を得ることができない。また、ポリエステル繊維の固有粘度を1.2より大きくすると繊維を形成する分子鎖の絡みが強固となり過ぎて、製糸性の悪化、限界延伸倍率の低下が発生し、産業用途に要求される高い強力を有したポリエステル繊維を得ることができない。固相重合の方法は従来知られているような方法で良く、例えばポリエチレンテレフタレートであれば、真空下で220〜240℃にて一定時間処理すれば良く、連続・バッチいずれの方法で行っても良い。また反応容器内の温度を均一にするために攪拌が行われることが好ましい。
【0034】
本発明のポリエステル繊維の破断強度は5.8〜10.4cN/dtexであることが必須であり、より好ましくは6〜10cN/dtex、さらに好ましくは6.5〜10cN/dtexである。強度が5.8cN/dtex未満の場合には産業用繊維として適用できる分野が限定される。また、強度を10.4cN/dtex以上とすると繊維の持つ伸度が低下し、産業用で要求されるタフネスが達成できない場合がある。
【0035】
本発明のポリエステル繊維は着色剤を繊維総重量に対して0.01〜4wt%含有している原着繊維であることが好ましい。着色剤の添加量が0.01wt%以下の場合色調が不足し、4wt%を超える場合本発明の目的とする産業用として必要な強度を得ることが困難になるため、着色剤の添加量は、繊維総重量に対し0.1〜0.6wt%であることがより好ましく、更に0.3〜0.5wt%の範囲内であることが好ましい。着色剤としては、カーボンブラック系顔料などの無機系顔料や、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系着色剤、スチレン系着色剤、およびキナクリドン系着色剤などの有機系着色剤が挙げられるが、特にこれに限定されず、ポリエステル系樹脂を溶融紡糸する際に、本発明の目的、効果を損なわない範囲であれば公知の染料および顔料を使用することができる。少なくともこれらから選ばれた少なくとも1種類以上の着色剤を添加することが好ましい。
【0036】
以下に本発明のポリエステル繊維を得るための製造方法の一例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0037】
フィルム製造においてフィルム延伸時に発生し、通常製品にならない端部分を粉砕再溶融し、所望のアンチモン量を含有するペレットにした後、必要な固有粘度まで固相重合した再生ポリエステル樹脂を、通常の溶融紡糸法により口金より紡出する。このとき、ポリマの熱による劣化を防ぐために、紡糸機内におけるポリマの滞留時間は短いほど好ましく、通常10分以内とすれば良い。紡糸温度は通常260℃〜300℃であれば良い。
【0038】
さらに、口金直下には加熱筒を配し、吐出糸条はこの加熱筒内を通過させることが好ましい。この加熱筒は、一般に、5〜100cmの長さで、150〜350℃で温度制御された加熱筒であれば良いが、その長さ及び温度条件は、得られる糸条の繊度やフィラメント数により最適化されれば良い。この加熱筒の使用により、溶融ポリマの固化を遅らせ高強度を発現させることができる。
【0039】
紡出された糸条は、上記高温雰囲気中を通過した後、冷風で冷却固化され、次いで油剤が付与された後、紡糸速度を制御する引取りロールで引取られる。
【0040】
引取りロールに引取られた未延伸糸条は、通常連続して延伸されるが、一旦巻取った後に別工程で延伸しても良い。紡糸速度は、通常300〜3000m/分、好ましくは500〜2500m/分であれば良い。延伸は常法の熱延伸が採用されれば良い。その延伸倍率は未延伸糸の複屈折、延伸温度、および多段延伸する際の延伸比配分等によって変化させ得るが、1.5〜6.5倍が好ましく、2.3〜6.0倍のような高倍率であることがより好ましい。
【0041】
次いで、この延伸糸は熱固定される。熱固定は糸条を熱ローラや熱板に接触させたり、また高温気体中を通過させることなどの公知の方法により行えば良く、一般に160〜240℃、好ましくは180〜220℃の熱固定温度をとれば良い。この熱固定時の張力および温度を変化させることで、乾熱収縮率をコントロールすることが可能である。
【0042】
さらに、本発明のポリエステル繊維に、工程上の毛羽発生を抑えるため、延伸工程および熱固定工程において、フィラメントに交絡処理を施すことは何等差支えない。交絡はエア交絡など公知の方法が採用でき、例えばエア交絡の場合、用いる糸条の繊度や張力に応じて、エアの圧力を適宜変更する事で目的の交絡度を達成することができる。交絡度(CF値)としては10〜70であることが好ましく20〜60であることがより好ましい。
【0043】
【実施例】
以下に本発明を実施例および比較例に基づきさらに詳細に説明する。
【0044】
また、本発明における諸特性の測定方法は以下の通りである。
【0045】
[破断強度・破断伸度]
(株)オリエンテック社製“テンシロン”引張試験機を用い、試料長25cm、引張速度30cm/分の条件でSS曲線(応力−伸長特性)を測定し、SS曲線から求めた。
【0046】
[固有粘度]
オルソクロロフェノール100mlに対し試料8gを溶解した溶液の相対粘度ηをオストワルド式粘度計を用いて測定し(25℃)、次の近似式によって求めた。
固有粘度=0.0242η+0.2634
[交絡度(CF値)]
1m試長の試料に100gの荷重をかけ、6gのフックを下降速度1〜2cm/秒で下降させ、式:交絡度(CF値)=100(cm)/下降距離(cm)により計算して求めた。
【0047】
[アンチモン金属の含有量]
蛍光X線元素分析装置(堀場製作所社製、MESA−500W型)により求めた。なお、ポリエステルに二酸化チタン粒子が含有されている際には、次の前処理をした上で蛍光X線分析を行った。すなわち、ポリエステルをオルソクロロフェノールに溶解(溶媒100gに対してポリマー5g)し、このポリマー溶液と同量のジクロロメタンを加えて溶液の粘性を調製した後、遠心分離器(回転数18000rpm、1時間)で粒子を沈降させる。その後、傾斜法で上澄み液のみを回収し、上澄み液と同量のアセトンを添加することによりポリマーを再析出させ、そのあと3G3のガラスフィルター(IWAKI社製)で濾過し、濾上物をさらにアセトンで洗浄した後、室温で12時間真空乾燥してアセトンを除去した。以上の前処理を施して得られたポリマーについてアンチモン元素の分析を行った。
【0048】
一方、二酸化チタン粒子が含有されていない場合は、前処理を行う必要がないので、ポリマーをそのまま分析した。
【0049】
[製糸安定性]
紡糸連続延伸を行ったときの断糸、毛羽の発生状況から3段階で評価した。
【0050】
○:良好で長時間の安定製糸が可能。
【0051】
△:やや不安定
×:不安定で断糸、毛羽が多発し長時間の製糸は困難。
【0052】
(実施例1〜3、比較例1〜2)
表1に示す割合でアンチモン金属を含有するフィルム延伸時に発生した固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレート屑を290で溶融し、再ペレット化した後、真空下220℃で固相重合を行い、表1に示す極限粘度の再生ポリエステル樹脂を得た。当該樹脂を空気に触れさせることなく紡糸ホッパーに移送し、290℃に加熱したエクストルダー型紡糸機で溶融した後、290℃に加熱した紡糸パック中に導き、紡糸口金より吐出した。紡糸口金は全面配孔で、孔径0.6mmφ、孔数は192であり、口金直下には50cmの加熱筒を取り付け、筒内雰囲気温度を300℃となるように加熱した。ここでいう筒内雰囲気温度とは加熱筒中央部の内壁から1cm離れた部分の空気層温度である。
【0053】
加熱筒直下にユニフロー型チムニーを設置し、糸条に18℃の冷風を30m/分の速度で吹付け冷却固化した。固化した糸条に油剤を付与した後、表1に示す速度で回転する引取ロールにより糸条を引取り、引取りロールと給糸ロールとの間で3%のストレッチをかけ、引取った糸条の引揃えを行い、引き続き表1に記載の延伸倍率で2段熱延伸を行い、弛緩処理をしたのち延伸糸を巻き取った。引取りロールは70℃、給糸ロールは100℃、第1延伸ロールは110℃、第2延伸ロールは220℃とそれぞれのロールは加熱し、延伸後の弛緩ロールは非加熱とした。総延伸倍率は表1に示すが、延伸配分としては、1段目で総延伸倍率の70%の延伸を行い、残りを2段目で延伸し、弛緩率3%でリラックス処理を施し、1100dtex、192フィラメントの延伸糸を得た。弛緩ロールと巻き取り機の間には交絡付与ノズルを設置し繊維に交絡を付与した。得られた繊維の物性について評価し、表1に示した。なお、弛緩率は第2延伸ロールと弛緩ロールの回転速度を変えることで設定した。
【0054】
(実施例4)
実施例1記載の方法で表1に示す割合でアンチモン金属を含有するポリエチレンテレフタレート樹脂に、2軸のエクストルーダーを用いて平均粒径0.1μmのカーボンブラック(顔料)を20重量%となるように溶融混練して固有粘度0.6のマスターチップを作製し、該マスターチップと表1に示すアンチモン金属含有量、極限粘度の再生ポリエステル樹脂をブレンドして、表1に示す顔料含有量にしたこと以外は実施例1と同様に行なった。
【0055】
(比較例3および4)
再生ポリエステル樹脂(三島殖産株式会社”トレグリーン”固有粘度0.61)を真空下220℃で固相重合をおこないとして表1記載の固有粘度を有するPETボトルリサイクルチップを用い、表1に記載の条件で紡糸したこと以外は実施例1と同様におこなった。
【0056】
【表1】
【0057】
表1から明らかなように、本発明の方法によれば再生ポリエステル樹脂を使用しても製糸性に優れ、かつ、産業用途に好適に使用できる強度を有したポリエステル繊維を得ることができる。また、本発明の範囲外である比較例1においては、再生ポリエステル樹脂の固有粘度を高くすることができず、産業用途として好適なポリエステル繊維を得ることは出来なかった。比較例2においては、実施例1より高い固有粘度を持つ再生ポリエステル樹脂を原料としたものの、溶融繊維化における固有粘度低下が大きく、また、アンチモン金属の凝集等に起因する製糸性の悪化が起こり、産業用途として好適なポリエステル繊維を得ることができなかった。
【0058】
また、比較例3から明らかなようにPETボトルリサイクルチップを用いて産業用途として好適な高強度を有するポリエステル繊維を得ようとする場合は製糸性が悪かった。
【0059】
さらに、PETボトルリサイクルチップを用いて製糸性良く繊維を得る場合は、比較例4に記載の様に、産業用としては不適合な低強度繊維しか得ることが出来なかった。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、再生ポリエステル樹脂を原料とし、製糸性に優れ、産業用として実用に耐えうる高強度を有したポリエステル繊維を得ることが可能となる。かかるポリエステル繊維は、安全ネット、陸上ネット、土木ネット、安全帯、魚網等に良好に使用することができる。
Claims (4)
- 再生ポリエステル樹脂を95wt%以上含有するポリエステル繊維であって、該再生ポリエステル樹脂がバージンチップ製造工程および/またはフィルム製造工程において発生するポリエステル屑から得られ、固有粘度0.8〜1.2、破断強度5.8〜10.4cN/dtex、含有するアンチモン金属量が60〜170ppmであることを特徴とするポリエステル繊維。
- 少なくとも1種類以上の着色剤を繊維総重量に対して0.01〜4wt%含有していることを特徴とする請求項1記載のポリエステル繊維。
- 再生ポリエステル樹脂を95wt%以上含有するポリエステル繊維の製造方法であって、バージンチップ製造工程および/またはフィルム製造工程で発生したポリエステル屑を再成形し、再生ポリエステル樹脂とした後、繊維状に溶融成形することを特徴とするポリエステル繊維の製造方法。
- 前記再生ポリエステル樹脂が固相重合されていることを特徴とする請求項3記載のポリエステル繊維の製造方法。
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WO2017092071A1 (zh) * | 2015-11-30 | 2017-06-08 | 谭亦武 | 一种废pet回收再利用的方法及应用 |
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2003
- 2003-02-19 JP JP2003040710A patent/JP2004250811A/ja active Pending
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