JP2989365B2 - 芯鞘型ポリエステル複合繊維 - Google Patents

芯鞘型ポリエステル複合繊維

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JP2989365B2
JP2989365B2 JP4056614A JP5661492A JP2989365B2 JP 2989365 B2 JP2989365 B2 JP 2989365B2 JP 4056614 A JP4056614 A JP 4056614A JP 5661492 A JP5661492 A JP 5661492A JP 2989365 B2 JP2989365 B2 JP 2989365B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高強度で高弾性率を有す
るポリエステル複合繊維に関する。詳細には、高強度、
高モジュラス、良好な熱寸法安定性という優れた機械特
性を有する産業資材用として適するポリエステル複合繊
維に関し、特に本発明のポリエステル繊維をゴムの補強
に使用した場合には、ゴムの熱変形回復性(例えば耐フ
ラットスポット性等)を大幅に向上することができる。
【0002】
【従来の技術】ポリエステル繊維、特にポリエチレンテ
レフタレート繊維は、そのヤング率がポリアミド繊維よ
りも高くてレーヨンと同程度であり、且つ他の繊維素材
に比べて物性のバランスがとれていることから、タイヤ
コード等のゴム補強材として汎用されている。
【0003】しかしながら、ポリエチレンテレフタレー
ト繊維は室温では比較的高いヤング率を有するものの、
加熱時にはヤング率が低下して寸法安定性が劣ったもの
になる。そのため、ゴム補強用等の産業資材用に製造さ
れた高ヤング率のポリエチレンテレフタレート繊維であ
っても、加熱時にはそのヤング率が通常の衣料用ポリエ
チレンテレフタレート繊維と同じ程度まで低下するとい
う欠点がある。
【0004】一方、充分な延伸熱処理を施したポリエチ
レンナフタレート繊維は室温においてポリエチレンテレ
フタレート繊維の2倍近いヤング率を有している。しか
も、そのようなポリエチレンナフタレート繊維は、10
0℃以上の加熱条件下でも100g/d以上の高いヤン
グ率を有し、さらに150℃での乾熱収縮率が2%以下
という優れた熱寸法安定性を有していることから、タイ
ヤコード等のゴム補強材としての使用が試みられてい
る。
【0005】しかし、ポリエチレンナフタレート繊維
は、ポリエチレンテレフタレート繊維に比べてゴムとの
接着性に劣っており、特にタイヤコードとして使用した
場合には、自動車走行時に発生した熱がタイヤ内に蓄積
されて高温となるとゴムとの接着性を失い剥離を生ずる
という欠点を有する。
【0006】ポリエチレンナフタレート繊維をタイヤコ
ードとして用いた場合に生ずる上記の欠点を改良するこ
とを目的として、芯成分をポリエチレンナフタレートか
ら構成し、鞘成分をポリアミド、またはポリエチレンナ
フタレートとポリアミドとのブレンド物から構成した芯
鞘型複合繊維が近年提案されている(特開平3−146
713号公報、特開平3−161514号公報および特
開平3−161516号公報)。
【0007】しかしながら、ポリエステルとポリアミド
とは元来互いに接着しにくいため、ポリエステルを芯成
分としポリアミドを鞘成分とした上記の複合繊維では、
芯部分と鞘部分とが剥離し易いという欠点がある。また
ポリエチレンナフタレートとポリアミドとのブレンド物
を鞘成分とした場合には鞘部分で両方の重合体が均一に
混合されず、良好な物性を有する複合繊維が得られにく
いという欠点がある。
【0008】また、繊維で補強されたタイヤでは自動車
の乗り心地を大きく損なういわゆるフラットスポット現
象が起きる場合が多いが、このフラットスポット現象
は、自動車走行時の内部発熱によってタイヤの温度が補
強繊維(タイヤコード)の2次転移点(以後「Tg」と
いう)を越えるとタイヤコードのヤング率が低下して変
形を生じ、この変形が自動車が走行していない冷却時
(駐車時)にも回復されないために生ずる現象である。
【0009】ところで、ポリアミド繊維はヤング率が低
く且つTgも低いため(例えばナイロン6のTg=45
〜50℃、ナイロン6,6のTg=40℃)、タイヤコ
ードに使用した場合は上記したフラットスポット現象が
顕著に現れる傾向があり、したがって、鞘成分にポリア
ミドを使用している上記公報に記載されている従来の芯
鞘型複合繊維では、タイヤコードとして使用した場合に
フラットスポット現象の回避が困難である。
【0010】
【発明の内容】上記の点から、本発明者らは、高強度で
且つ高いモジュラスおよび優れた熱寸法安定性を有し、
産業資材用、特にタイヤコード等のゴム補強材として適
するポリエステル繊維を得ることを目的として研究を続
けてきた。その結果、特定の極限粘度を有するエチレン
−2,6−ナフタレ−ト単位から主としてなるポリエチ
レンナフタレートを芯成分とし、これに特定の極限粘度
を有するエチレンテレフタレート単位から主としてなる
ポリエチレンテレフタレートを鞘成分として組み合わせ
て複合繊維を形成し、この複合繊維に特定の処理を施す
と高強度、高モジュラスおよび良好な熱寸法安定性を有
する、産業資材、特にゴム補強材として適した繊維が得
られることを見いだして本発明を完成した。
【0011】すなわち、本発明は、(a)極限粘度[η]
が0.6以上のエチレン−2,6−ナフタレ−ト単位を
主とするポリエチレンナフタレートを芯成分として用
い、そして極限粘度[η]が0.95以上のエチレンテレ
フタレート単位を主とするポリエチレンテレフタレート
を鞘成分として用いて形成した芯鞘型ポリエステル複合
繊維であって;(b)複合繊維に占める芯部分の割合が
50〜90重量%であり;(c)120℃におけるヤン
グ率が100g/d以上であり;そして(d)150℃
における乾熱収縮率が2%以下である;ことを特徴とす
る芯鞘型ポリエステル複合繊維である。
【0012】本発明の芯鞘型複合繊維では、芯成分とし
て、0.6以上の極限粘度[η]を有し且つエチレン−
2,6−ナフタレ−ト単位を主とするポリエチレンナフ
タレート(以後「PEN」という)を用いて複合繊維を
形成することが必要である。
【0013】本発明において、PENの極限粘度[η]
は、PENをp−クロロフェノールとテトラクロロエタ
ンとの混合溶媒(重量混合比1:1)に溶解し、30℃
で測定した粘度から求めた値をいう。PENの極限粘度
[η]が0.6未満であると、本発明の複合繊維の120
℃におけるヤング率を100g/d以上にすることがこ
とができず、高モジュラスの複合繊維を得ることができ
ない。PENの極限粘度[η]が特に0.7以上であるの
が好ましい。そして、本発明では、紡糸後の複合繊維に
おいてPENの極限粘度[η]が0.55以上であるのが
好ましい。
【0014】また、本発明において、「エチレン−2,
6−ナフタレ−ト単位を主とする」とは、PENの95
モル%以上がエチレン−2,6−ナフタレ−ト単位から
構成されていることを意味する。本発明で使用するPE
Nは、通常そのTgが100〜120℃、好ましくは1
10〜120℃であり、熱可塑性樹脂のうちでもTgの
高い重合体の部類に入る。PENにおけるエチレン−
2,6−ナフタレ−ト単位の割合が95モル%未満であ
ると、本発明の複合繊維のTgが低下し、しかも高融点
の複合繊維が得られず、複合繊維の熱寸法安定性、強伸
度、ヤング率等の低下を招く。
【0015】本発明で使用するPENは、ナフタレン−
2,6−ジカルボン酸またはそのエステル等の誘導体と
エチレングリコールまたはその誘導体とを、必要に応じ
て少量(通常5モル%未満)の第3成分と共に、触媒の
存在下に自体公知の方法によって重縮合させることによ
り製造することができる。
【0016】第3成分を使用する場合は、PENの重合
完了前に適当な1種または2種以上の第3成分を添加す
ると、該第3成分が共重合されたエチレン−2,6−ナ
フタレ−ト共重合体を得ることができる。使用し得る第
3成分の例としては、ジエチレングリコール、ネオペン
チルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、イソフ
タル酸、スルホイソフタル酸およびそれらのナトリウム
塩、ポリアルキレングリコール、ナフタレン−2,7−
ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸−4
−スルホン酸ナトリウム塩等を挙げることができる。
【0017】第3成分を共重合させる場合は、得られる
エチレン−2,6−ナフタレ−ト共重合体のTgが10
0℃よりも低くならないように、その種類および使用割
合を選択することが必要であり、第3成分の共重合割合
は、通常、5モル%未満にすべきである。第3成分の共
重合割合が5モル%以上である、すなわちエチレン−
2,6−ナフタレ−ト単位の割合が95モル%未満であ
ると、上記したように、複合繊維のTgが低下して高融
点とならず、しかも複合繊維の熱寸法安定性、強伸度、
ヤング率等が低下する。
【0018】そして、本発明の複合繊維では、鞘成分と
して極限粘度[η]が0.95以上で且つエチレンテレフ
タレート単位を主とするポリエチレンテレフタレート
(以後「PET」という)を用いて複合繊維を形成する
ことが必要である。また、紡糸後の複合繊維において
は、PETの極限粘度[η]が0.90以上であるのが好
ましい。本発明において、PETの極限粘度[η]は、P
ENの場合と同様に、PETをp−クロロフェノールと
テトラクロロエタンとの混合溶媒(重量混合比1:1)
に溶解し、30℃で測定した粘度から求めた値をいう。
【0019】本発明の複合繊維では、PETと複合紡糸
するPENの溶融粘度が通常かなり高く、そのため溶融
紡糸する際の紡糸機のヘッド温度として通常290〜3
10℃、特に300〜310℃という高温を通常採用す
るが、PETの極限粘度[η]が0.95未満であると、
ヘッド部分におけるPETの溶融粘度がPENの溶融粘
度よりもかなり低くなってしまい、両者の溶融粘度の差
が大きくなる。その結果、紡出される複合繊維の断面形
状が均一な同心状にならずに偏芯を生じたり、繊維径が
不均一になって良好な芯鞘型複合繊維を得ることができ
ず、紡糸安定性が悪くなる。しかも、紡糸後の延伸工程
においても毛羽が発生し、得られる延伸糸の物性、特に
機械的特性、耐熱性および熱寸法安定性が劣ったものに
なる。
【0020】したがって、本発明では、290〜310
℃、特に300〜310℃という高温における溶融紡糸
時のPENの溶融粘度との差を出来るだけ小さくしてバ
ランスをとるために、鞘部分を構成するPETとして極
限粘度[η]が0.95以上のものを使用する必要があ
り、それによって断面形状が良好で繊維径の均一で、且
つ諸物性、特に機械的特性、耐熱性および熱寸法安定性
に優れた複合繊維を得ることができる。このような点か
ら、PETの極限粘度[η]が1.0以上であるのが一層
好ましい。
【0021】また、本発明において、「エチレンテレフ
タレート単位を主とする」とは、PETの90モル%以
上がエチレンテレフタレート単位から構成されているこ
とを意味する。PETにおけるエチレンテレフタレート
単位の割合が90モル%未満であると、本発明の複合繊
維のTgが低下し、しかも高融点の複合繊維が得られ
ず、複合繊維の熱寸法安定性、強伸度、ヤング率等の低
下を招く。本発明で使用するPETは、テレフタル酸ま
たはそのエステル等の誘導体とエチレングリコールまた
はその誘導体とを、必要に応じて少量(通常10モル%
未満)の第3成分と共に、触媒の存在下に自体公知の方
法によって重縮合させることにより製造することができ
る。
【0022】第3成分を使用する場合は、PETの重合
完了前に適当な1種または2種以上の第3成分を添加す
るのがよく、それによって該第3成分が共重合されたエ
チレンテレフタレート共重合体を得ることができる。使
用し得る第3成分の例としては、ジエチレングリコー
ル、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノ
ール、イソフタル酸、スルホイソフタル酸およびそれら
のナトリウム塩、ポリアルキレングリコール等を挙げる
ことができる。
【0023】また、本発明の複合繊維においては、芯成
分であるPENおよび鞘成分であるPETの一方または
両方が、必要に応じて、酸化チタン等の艶消し剤、光沢
改良剤、難燃剤等を含有していてもよい。
【0024】更に、本発明の複合繊維では、PENから
なる芯部分の割合が50〜90重量%、すなわちPET
からなる鞘部分の割合が50〜10重量%であることが
必要である。芯部分(PEN)の割合が50重量%未満
であると、複合繊維における鞘部分(PET)による被
覆割合が大きくなり過ぎて、PEN繊維の特性である熱
寸法安定性および高温下での高ヤング率という特性を複
合繊維に付与することができず、目的とする産業資材と
して適した複合繊維を得ることができなくなる。一方、
芯部分(PEN)の割合が90重量%を超えると、複合
繊維をゴムの補強用に使用した場合に、ゴムとの接着性
が劣ったものになる。熱寸法安定性、高温下での高ヤン
グ率、ゴムとの接着性等の点から、複合繊維における芯
部分(PEN)の割合を特に75〜90重量%とするの
が好ましい。
【0025】そして、本発明の複合繊維が、120℃に
おけるヤング率が100g/d以上で且つ150℃にお
ける乾熱収縮率が2%以下であるという上記した物性を
有するためには、複合繊維を構成する芯部分のPENお
よび鞘部分のPETの両方が高度に配向し結晶化してい
ることが必要である。芯部分のPENおよび鞘部分のP
ETの両方を高度に配向・結晶化するための方法であれ
ばどのような方法も採用でき、例えば、高速紡糸を行っ
て紡糸により直線延伸配向・結晶化した複合繊維を製造
する高速紡糸法、紡糸した複合繊維を巻取ることなくそ
のまま引続いて延伸処理して配向・結晶化させる紡糸直
接延伸法、紡糸した複合繊維を一旦巻取った後に延伸処
理を施して配向・結晶化する方法等を採用することがで
き、高速防止法および紡糸に引き続いて延伸処理を行う
紡糸直接延伸法による場合は工程の合理化を行うことが
っできる。
【0026】紡糸直接延伸法、または紡糸して一旦巻取
った後に延伸する方法による場合には、鞘部分を構成す
るPETに比べて、芯部分を構成するPENは結晶化速
度が約7.5倍も遅く、一段の延伸では充分に配向・結
晶化が行われにくいので、延伸処理を一段で行うよりも
加熱下に(例えば加熱ローラを使用して)、2段以上の
多段で行うのがよく、特に3段またはそれ以上で行うの
が好ましい。上記のような配向・結晶化処理を行うこと
により、120℃におけるヤング率が100g/d以上
で且つ150℃における乾熱収縮率が2%以下である高
ヤング率と高い熱寸法安定性を有する本発明の芯鞘型複
合繊維を得ることができる。
【0027】本発明の複合繊維では、複合繊維全体の横
断面形状および芯部分の横断面形状は特に限定されず、
円形、楕円形、方形、三角形、多角形等の任意の形状で
あり得るが、通常全体および芯部分の横断面形状を円形
とするのが、均一な物性を得る上で好ましい。また、本
発明の複合繊維では延伸処理後(配向・結晶化後)の単
繊維繊度が約3〜10デニール程度にしておくのが、産
業資材用途として望ましい。また、トータル繊度は50
0〜1000デニール程度が好ましい。本発明の複合繊
維は、その用途に応じて、モノフィラメント、短繊維、
フィラメント糸、スラブ、紡績糸、編織布、不織布、
網、タイヤコード等の任意の形態にして使用することが
できる。
【0028】限定されるものではないが、本発明の芯鞘
型ポリエステル複合繊維の一般的な製法を以下に記載す
る。2基の押出機の一方に、芯部分を構成する極限粘度
[η]が0.6以上、好ましくは0.7以上のエチレン−
2,6−ナフタレ−ト単位から主としてなるPENを供
給して290〜310℃の温度で溶融すると共に、もう
一方の押出機に鞘部分を構成するエチレンテレフタレー
ト単位から主としてなるPETを供給して280〜30
0℃の温度で溶融する。次いで、各々の溶融重合体流
を、ヘッド温度が300〜310℃であり且つ紡糸口金
直下に10cm〜100cmの長さに亙って300〜3
20℃の加熱雰囲気を形成させるための保温・加熱筒を
設置した複合紡糸装置に導いて紡糸口金からPENが芯
部分になりPETが鞘部分を構成する芯鞘型複合繊維を
紡出させ、保温・加熱筒を通過させた後、冷却風で急冷
固化し、油剤を付与して芯鞘型のポリエステル複合繊維
を製造する。
【0029】上記の複合紡糸は、通常、約1000m/
分以上の紡糸速度で行うのがよく、その際に後の延伸工
程において複合繊維を充分に配向結晶化させる上で、紡
糸口金直下の加熱雰囲気の制御が重要である。紡糸によ
って配向・結晶化した本発明の芯鞘型ポリエステル複合
繊維を直接得ようとする場合は、紡糸速度1500m/
分以上の高速紡糸を行うのがよい。
【0030】また、紡糸により未延伸糸を製造し、それ
を巻取ることなる直線延伸処理するかまたは一旦巻取っ
た後に延伸処理する場合は、加熱供給ローラの温度を7
0〜130℃、好ましくは100〜120℃とし以降多
段延伸を行うのがよい。多段延伸では、最終段の延伸ロ
ーラの温度を180〜240℃、好ましくは200〜2
20℃として延伸熱処理を行う。最終段の延伸ローラの
温度がこの範囲から外れ、特に180℃よりも低い場合
は、本発明で目的としているヤング率および乾熱収縮率
を有する複合繊維が得られず、しかも複合繊維の耐熱性
が劣ったものになる。
【0031】このような加熱ローラによる多段延伸によ
って、複合繊維の鞘部分がPETで構成されているにも
拘わらず、芯部分を構成しているPENの特徴が複合繊
維に現れて、120℃でのヤング率が100g/d以上
で且つ150℃での乾熱収縮率が2%以下の芯鞘型ポリ
エステル複合繊維を得ることができる。そして、この複
合繊維は熱安定性に優れ、タイヤコード等の産業資材と
して用いた場合には、フラットスポット現象等の熱変形
を生じない。
【0032】上記のようにして得られた本発明の芯鞘型
ポリエステル複合繊維は、産業資材用として適してお
り、特にゴムの補強材、そのうちでもタイヤコード用と
して極めて優れている。一般に、PET繊維はポリアミ
ド繊維に比べてゴムとの接着性が劣るとされているが、
本発明の芯鞘型ポリエステル複合繊維では、紡糸時に使
用する油剤の種類を選択することによって、ゴムとの間
に充分な接着強度を保つことができる。
【0033】
【実施例】以下に、実施例等により本発明を具体的に説
明するが、本発明はそれにより限定されない。以下の例
中、紡糸前の各重合体の極限粘度[η]は、上記した方法
により測定すると共に、紡糸後の繊維における各重合体
の極限粘度[η]、得られた繊維の強度、伸度、ヤング
率、乾熱収縮率、ゴムとの接着性および耐熱接着性は下
記の方法により測定した。
【0034】紡糸後の繊維における各重合体の極限粘度
[η]の測定: (1)芯鞘型複合繊維における各重合体の極限粘度
[η]:芯鞘型複合繊維をp−クロロフェノール/テトラ
クロロエタン混合溶媒(重量比1:1)に溶解し、30
℃の条件下で測定して複合繊維の極限粘度[η]0を得
る。一方、同じ芯鞘型複合繊維をアルカリ減量処理して
鞘部分を溶解除去した後、芯部分(PEN)の極限粘度
を上記と同様にして測定して、その極限粘度を[η]1
する。鞘部分を構成するPETの極限粘度を[η]2とし
たときに、[η]0、[η]1および[η]2の間には下記の数
式1で示される関係が成立する。
【0035】
【数1】[η]0=([η]1+[η]2)/2 したがって、上記の数式1から、複合繊維の鞘部分を構
成するPETの極限粘度[η]2を下記の数式2より求め
る。
【0036】
【数2】[η]2=2[η]0−[η]1
【0037】(2)単独繊維(比較例1と比較例3の繊
維)における重合体の極限粘度[η]:上記と同様にし
て、比較例1または比較例3で得られた単独繊維をp−
クロロフェノール/テトラクロロエタン混合溶媒(重量
比1:1)に溶解し、30℃の条件下で測定して極限粘
度[η]を求めた。
【0038】繊維の強度、伸度およびヤング率の測定:
繊維の強度、伸度およびヤング率を、JIS L101
7の定義および測定法にしたがって測定した。繊維の乾熱収縮率の測定: JIS L1013にしたが
って、熱処理温度を150℃、熱処理時間を30分間と
して測定した。
【0039】ゴムとの接着性の測定:JIS L101
7−3.3.1Aにしたがって測定した。耐熱接着性の測定: JIS L1017−3.3.1Aに
したがい、加硫時の熱処理を170℃で60分間として
測定した。
【0040】《実施例1〜3》極限粘度[η]=0.85
のPENを30Φ溶融押出機で300℃で溶融し、また
極限粘度[η]=1.2のPETを30Φ溶融押出機で2
95℃で溶融した後、各重合体の溶融流を下記の表1に
示した割合で複合紡糸パックに導き、ノズル孔径が0.
4mm、孔数が96ホールの口金を取り付けた芯鞘型複
合紡糸口金よりヘッド温度310℃、320℃の加熱雰
囲気温度を有する口金直下の保温・加熱筒の長さ20c
mの条件で、芯部分がPENおよび鞘部分がPETにな
るようにして芯鞘型複合繊維を紡出し、保温・加熱筒通
過後に温度25℃の冷却風で急冷固化し、油剤を付与し
てから紡糸速度1000m/分で巻取った。
【0041】上記で得た紡糸原糸を、加熱供給ローラ温
度を110℃、第1延伸ローラ温度170℃および第2
延伸ローラ温度210℃の加熱条件でローラ2段延伸を
行い全延伸倍率が4.4倍の延伸糸を得た。その際に、
加熱供給ローラと第1延伸ローラ間の延伸倍率は4.0
倍であり、第1延伸ローラと第2延伸ローラ間の延伸倍
率は1.1倍であった。
【0042】上記の紡糸および延伸処理においては、延
伸後の糸の繊度が500デニール/96フィラメントに
なるように、紡糸時の重合体の紡出量を調節した。上記
で得られた延伸糸を2本合糸して、1000デニール/
192フィラメントとして、その物性を上記した方法に
より測定した。その結果を下記の表1に示す。
【0043】《比較例 1》極限粘度[η]=0.85の
PENを30Φ溶融押出機で300℃で溶融した後、単
独紡糸パックに導き、ノズル孔径が0.4mm、孔数が
96ホールの口金を取り付けた単独紡糸口金よりヘッド
温度310℃、320℃の加熱雰囲気温度を有する口金
直下の保温・加熱筒の長さ20cmの条件で、PEN単
独繊維を紡出し、保温・加熱筒通過後に温度25℃の冷
却風で急冷固化し、油剤を付与してから紡糸速度100
0m/分で巻取った。
【0044】上記で得た紡糸原糸を、加熱供給ローラ温
度を130℃、第1延伸ローラ温度170℃および第2
延伸ローラ温度210℃の加熱条件でローラ2段延伸を
行い全延伸倍率が4.0倍の延伸糸を得た。その際に、
加熱供給ローラと第1延伸ローラ間の延伸倍率は3.6
倍であり、第1延伸ローラと第2延伸ローラ間の延伸倍
率は1.11倍であった。
【0045】上記の紡糸および延伸処理においても、実
施例1〜3と同様に、延伸後の糸の繊度が500デニー
ル/96フィラメントになるように、紡糸時の重合体の
紡出量を調節し、得られた延伸糸を2本合糸して、10
00デニール/192フィラメントとして、その物性を
上記した方法により測定した。その結果を下記の表1に
示す。
【0046】《比較例 2》PENとPETの複合紡糸
パックへの供給割合を下記の表1に示したように30:
70にした外は、実施例1〜3と全く同様にして紡糸お
よび延伸処理を行い、得られた延伸糸を2本合糸して、
1000デニール/192フィラメントとして、その物
性を上記した方法により測定した。その結果を下記の表
1に示す。
【0047】《比較例 3》極限粘度[η]=1.2のP
ETを30Φ溶融押出機で295℃で溶融した後、単独
紡糸パックに導き、ノズル孔径が0.4mm、孔数が9
6ホールの口金を取り付けた単独紡糸口金よりヘッド温
度305℃、310℃の加熱雰囲気温度を有する口金直
下の保温・加熱筒の長さ20cmの条件で、PEN単独
繊維を紡出し、保温・加熱筒通過後に温度25℃の冷却
風で急冷固化し、油剤を付与してから紡糸速度1000
m/分で巻取った。
【0048】上記で得た紡糸原糸を、加熱供給ローラ温
度を90℃、第1延伸ローラ温度150℃および第2延
伸ローラ温度200℃の加熱条件でローラ2段延伸を行
い全延伸倍率が5.2倍の延伸糸を得た。その際に、加
熱供給ローラと第1延伸ローラ間の延伸倍率は4.7倍
であり、第1延伸ローラと第2延伸ローラ間の延伸倍率
は1.15倍であった。
【0049】上記の紡糸および延伸処理においても、実
施例1〜3と同様に、延伸後の糸の繊度が500デニー
ル/96フィラメントになるように、紡糸時の重合体の
紡出量を調節し、得られた延伸糸を2本合糸して、10
00デニール/192フィラメントとして、その物性を
上記した方法により測定した。その結果を下記の表1に
示す。
【0050】
【表1】
【0051】繊維(糸)がゴム補強材として有効に使用
できるためには、一般に、ゴムとの接着性が18kg以
上が必要であり、この接着強度は加熱後も加熱前の90
%以上の値で保持されていることが必要である。この点
から、上記表1の結果を検討すると、加熱前はゴムとの
接着性が実施例1〜3および比較例1〜3のすべてにお
いて18kg以上で合格しているものの、耐熱試験後
(加熱後)には、比較例1のPEN単独繊維ではその耐
熱接着性(接着強度)が13.6kg(耐熱試験前の7
2.7%)にまで低下しており、PEN単独繊維では加
熱によって繊維とゴムとの接着性が大きく低下している
こと、それに対して実施例1〜3の本発明の複合繊維で
は、加熱後も加熱前の接着強度の90%以上が維持され
ていて、ゴムとの接着性が18kgの合格ラインを超え
ていることがわかる。
【0052】また、表1の結果から、芯部分(PEN)
の割合が50〜90%の範囲にある実施例1〜3の本発
明の複合繊維(延伸糸)は、強度が大きく、延伸糸の伸
度および乾熱収縮率が小さく且つヤング率が大きくて、
寸法安定性、特に熱寸法安定性および熱回復性が優れて
おり、タイヤコード等の産業資材として適していること
がわかる。これに対して、芯部分(PEN)の割合が5
0%未満であって鞘部分(PET)の割合が50%を超
える比較例2の複合繊維および比較例3のPET単独繊
維では、延伸糸の伸度および乾熱収縮率が大きく、しか
もヤング率が小さく、特に120℃での加熱時のヤング
率が室温でのヤング率の3分の1以下に低下してしま
い、加熱時に繊維の大きな伸びを生じて、寸法安定性、
特に熱寸法安定性および熱回復性が劣り、タイヤコード
等の産業資材として適さないことがわかる。
【0053】
【発明の効果】本発明の芯鞘型ポリエステル複合繊維
は、高強度、高モジュラスおよび良好な熱寸法安定性と
いう優れた機械特性を有し、しかもゴムとの接着性に優
れている。そのため、本発明の芯鞘型ポリエステル複合
繊維は、ゴム補強材、更に他の産業資材として極めて優
れており、特に本発明の芯鞘型ポリエステル複合繊維を
タイヤコードに使用した場合には、ゴムの熱変形回復性
を大幅に向上させて、タイヤにおけるフラットスポット
現象の発生を防止することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−146713(JP,A) 特開 平5−5209(JP,A) 特開 平4−57919(JP,A) 特公 昭47−5212(JP,B1) 特公 昭44−14897(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) D01F 8/14

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a)極限粘度[η]が0.6以上のエチ
    レン−2,6−ナフタレ−ト単位を主とするポリエチレ
    ンナフタレートを芯成分として用い、そして極限粘度
    [η]が0.95以上のエチレンテレフタレート単位を主
    とするポリエチレンテレフタレートを鞘成分として用い
    て形成した芯鞘型ポリエステル複合繊維であって;(b)
    複合繊維に占める芯部分の割合が50〜90重量%であ
    り;(c)120℃におけるヤング率が100g/d以上
    であり;そして(d)150℃における乾熱収縮率が2
    %以下である;ことを特徴とする芯鞘型ポリエステル複
    合繊維。
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