JP2002327381A - ワイヤロープ - Google Patents

ワイヤロープ

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JP2002327381A JP2001128269A JP2001128269A JP2002327381A JP 2002327381 A JP2002327381 A JP 2002327381A JP 2001128269 A JP2001128269 A JP 2001128269A JP 2001128269 A JP2001128269 A JP 2001128269A JP 2002327381 A JP2002327381 A JP 2002327381A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】柔軟でロープ径が細く軽量化されながらも高い
鋼材断面密度により必要強度を維持でき、しかもシーブ
径を小さくしても必要な疲労性を維持しつつシーブとの
良好な摩擦接触を実現することができ、また油の塗布や
補給を要さずボデイや周辺の環境をきれいに保つことが
できるエレベータ用およびクレーン用で代表される荷役
機械用の動索として好適なワイヤロープを提供する。 【解決手段】高強度鋼素線を使用した被覆芯シェンケル
側ストランドからなるワイヤロープであり、素線を撚り
合わせて構成した芯ストランドの周りに複数本の側スト
ランドを配して撚り合わせかつ外周を高分子化合物被覆
を施した1本の被覆芯シェンケルの周りに、素線を撚り
合わせた芯部の周りに複数本の側素線を配して複層に撚
り合わせしかも前記被覆芯シェンケルよりも外径が相対
的に小さい複数本の側ストランドを配して撚合し、かつ
前記側ストランドを含む全体を高分子化合物により外装
被覆している。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はエレベータ用あるい
はクレーン用で代表される荷役機械用の動索として好適
なワイヤロープに関するものである。
【0002】
【従来の技術】ワイヤロープは静索のほか動索として汎
用されている。かかる動索の代表的なものとしては、エ
レベータ用ロープやクレーン用ロープがある。エレベー
タは一般にロープとシーブとの摩擦力を利用してロープ
に連結したかごを上下に動かすシステムであり、エレベ
ータかごとカウンターウェイトがシーブを経由して結合
されている。こうした吊り上げ及び駆動を行なうメイン
ロープとして、従来のエレベータ用ロープは、一般に中
心に繊維芯を配した6×S(19)、8×S(19)、
6×W(19)、8×W(19)、6×Fi(25)、
8×Fi(25)の構造を持ち、直径約12mm、破断
荷重64.4kNクラスのワイヤロープが用いられてい
た。また、ロープを構成する素線材質に関し、シーブが
高価で交換に多大な手間と時間がかかることを考慮して
シーブの摩耗を防止すべく低炭素鋼を使用していた。
【0003】また、クレーン用ロープとしては、古くか
ら6×37、6×19の構造のものが用いられ、これに
代って、6×Fi(22+7)や6×Fi(19+6)
のロープが多く採用されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来のエベー
タ用ロープは、ロープの素線径が太いために図14
(b)のようにシーブ400の径SDが500mm程度
と大きなものになり、これに関連してモータなどの駆動
機械類も大型化していた。このため、屋上に設置される
機械室の小型化を図ることができず、ことにビルが高層
化すると、ロープの自重増加により設備がさらに大型化
することを避けられなかった。
【0005】さらに、従来のエレベータ用ロープでは、
シーブの摩耗を防止するために低炭素鋼を使用して硬さ
を意図的に抑えていたため、ロープの強度の向上が制約
を受け、これがまた高層ビルへの適用上問題となってい
た。
【0006】また、従来のエレベータ用ロープは、錆の
発生や疲労性向上のために塗油が必要であり、その結果
摩擦係数が小さくなり、シーブとロープの間に滑りが生
じやすい。この滑りによりモータの回転によるシーブの
回転運動がロープに正確に伝わらず、シーブの回転運動
とかごの上下運動が連動しなくなり、かごの正確な位置
制御ができなくなる。そこで、従来では、シーブ400
の溝401にアンダーカット402を形成する特別な加
工を施したり、ダブルラップ方式でロープを巻回したり
しており、このため、設備コストが高価になったり、ロ
ープの取り付け及び交換作業に非常に手間がかかるとい
う問題があった。
【0007】一方、従来のクレーン用ロープも、同様な
理由からシーブ径やドラム径が大きくなって大型化を避
けられず、金属同士の接触であるため摩耗が多く、シー
ブ、ドラムおよびロープの寿命が短くなり、またさびの
発生が起りやすく、これを低減するため塗油を必要とす
るので、油がシーブやドラムに多量に付着したり周囲に
飛散し、クレーンボデイや周辺を汚すなどの問題があっ
た。
【0008】本発明は前記のような問題点を解決するた
めになされたもので、その目的とするところは、柔軟で
ロープ径が細く軽量化されながらも高い鋼材断面密度に
より必要強度を維持でき、しかもシーブ径を小さくして
も必要な疲労性を維持しつつシーブとの良好な摩擦接触
を実現することができ、また油の塗布や補給を要さずボ
デイや周辺の環境をきれいに保つことができ、エレベー
タ用およびクレーン用で代表される荷役機械用の動索と
して好適なワイヤロープを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
本発明は、外装被覆前のロープ径(DR)との関係で素
線径(WR)を15≦DR/WR≦100とした高強度
鋼素線を使用したワイヤロープにして、素線を撚り合わ
せて構成した芯ストランドの周りに複数本の側ストラン
ドを配して撚り合わせかつ外周を高分子化合物被覆を施
した1本の被覆芯シェンケルの周りに、素線を撚り合わ
せた芯部の周りに複数本の側素線を配して複層に撚り合
わせしかも外径が前記被覆芯シェンケルよりも相対的に
小さい複数本の側ストランドを配して撚合し、かつ前記
側ストランドを含む全体を高分子化合物により外装被覆
していることを特徴としている。
【0010】本発明ワイヤロープは、シーブと良好な摩
擦係数が得られるので、動力を伝達するエレベーター用
たとえば吊り上げ及び駆動を行なうメインロープ、異常
速度検出用のガバナロープなどに好適である。また、エ
レベータ用のほかクレーンで代表される荷役設備や機械
の動索としても好適である。
【0011】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施例を添付図面を
参照して説明する。図1(a)は本発明によるワイヤロ
ープを適用したトラクション式エレベータを模式的に示
しており、1は本発明によるワイヤロープ、aは前記ワ
イヤロープ1の端末に固定されたかご、bはワイヤロー
プ1の他端末に固定されたカウンターウエイト、cはワ
イヤロープ1の移動を制御する駆動シーブ、dは駆動シ
ーブcを駆動するモータ、eはそらせ用のガイドシーブ
である。
【0012】図1(b)は本発明によるワイヤロープを
適用したクレーンを示しており、fは走行体、gはブー
ム、hは巻き上げドラム、iはブーム伏仰ドラムであ
り、本発明ロープ1は巻き上げドラムからブーム頂のシ
ーブjを経由して導かれており、また別の本発明ロープ
1はブーム伏仰ドラムiからブームgに連結されてい
る。図示するものはジブクレーンであるが、クレーンと
しては、天井クレーンジブクレーン、橋形クレーン、ア
ンローダ、さらにトラッククレン、ホイストクレーン、
クローラクレーンなどの各種移動式クレーンが対象とさ
れる。
【0013】図2と図3は前記ワイヤロープ1の一例を
拡大して示しており、全体として(7×7)+7×(3
+9+15)の構造、詳しくは、{(1+6)+6×
(1+6)}+8×{(3+9+15)}の構造式のス
トランドタイプロープからなっている。ワイヤロープ1
は、中心の芯シェンケル2と、これを囲むように配置さ
れた複数本(図面では8本)の側ストランド3とを有
し、しかも前記芯シェンケル2は高分子化合物被覆5が
施され、側ストランド3間を含む外側には全体に高分子
化合物からなる外装被覆6が施され、断面が円形状をな
している。
【0014】前記芯シェンケル2は、図3のように、中
心の芯ストランド2aのまわりに複数本(図面では6
本)の側ストランド2bを配して撚合してなり、この状
態で全体に高分子化合物被覆5が施されている。各側ス
トランド3は、複層すなわちこの例では芯部(第1層)
3aと、これのまわりに複数本の素線を配して撚合する
ことにより構成した第2層3bと、該第2層3bのまわ
りに複数本の素線を配して撚合した第3層3cとからな
っており、各側ストランド3は個別的に高分子化合物被
覆は施されていない。
【0015】各部の構成を製作工程を加味して詳細に説
明すると、芯シェンケル2の芯ストランド2aと側スト
ランド2bは、それぞれ所要本数たとえばこの例では7
本の鋼素線を撚り合わせて構成されている。また、側ス
トランド3の各層3a,3b,3cはそれぞれ複数本こ
の例では3本と、9本と15本の鋼素線を3工程で撚り
合わせることにより構成されている。
【0016】芯シェンケル2と側ストランド3における
鋼素線の径(WR)は、外装被覆6を施す前のロープ径
(DR)との関係で、15≦DR/WR≦100の範囲
のものが使用される。これは、15<DR/WRではシ
ーブとの繰り返し曲げにより比較的早期に疲労限に達し
て安全性に問題が生ずるとともに短寿命になるためであ
り、DR/WR>100ではコスト高になるためであ
る。さらに好適には、33≦DR/WR≦75である。
【0017】鋼素線は、引張り強度280kg/mm2以上の
特性を有することが好適である。その理由は細径化によ
っても十分な破断荷重を実現するためであり、引張り強
度280kg/mm2未満ではこの目的を達成しがたいからで
ある。かかる鋼素線は、一般的に、炭素含有量が0.8
0wt%以上の炭素鋼線材を伸線することによって作ら
れる。そして、鋼素線の表面には耐食性被覆層たとえ
ば、亜鉛、あるいは亜鉛・アルミニウム合金めっき、黄
銅めっきなどのいずれかが施されている。
【0018】芯シェンケル2の芯ストランド2aは、図
4(a)のように中心の芯素線200と、これと同等か
あるいは相対的に径の細い多数の側素線200’から構
成されている。同じく芯シェンケル2の側ストランド2
bは、図4(b)のように、中心の芯素線201と、こ
れと同等かあるいは相対的に径の細い多数の側素線20
1’から構成されている。かかる構成は、中心の芯素線
200と側素線200’を一括して撚り合わせることに
より得られる。前記芯ストランド2aの撚り方向と側ス
トランド2bの撚り方向は同じ方向たとえばS方向とな
っている。
【0019】側ストランド2bの芯素線201の直径
は、好ましくは芯ストランド2aの芯素線200の直径
よりも相対的に小さいことが好ましく、それにより、芯
ストランド2aの直径d1を側ストランド2bの直径d
2よりも適度に大きくしている。なお、「ストランドの
直径」とはストランドを構成する外層の素線群の外接円
を意味する。
【0020】上記のように芯ストランド2aの直径d1
を側ストランド2bの直径d2よりも大きくするのは、
芯シェンケルを作ったときに、各側ストランド2b間に
合成高分子化合物の浸透を許容する隙間を形成するため
であり、その(d1−d2)/d2×100は、通常、
約1.4〜6.8%程度が好ましい。
【0021】上記のようにして得た1本の芯ストランド
2aの周りに複数本(図面では6本)の側ストランド2
bを配して撚り合わせる。この場合の撚りピッチは一般
に仕上げシェンケル径の6〜9倍程度とし、撚り方向は
芯ストランド2aおよび側ストランド2bの撚り方向と
異なる方向すなわちこの例ではZ方向とする。これは製
造が容易であり、工程の変動に対して型崩れが少ないか
らである。以上により図5(a)のような素芯シュンケ
ル2’が作られる。なお図では1つの側ストランドのみ
素線を示し、他は省略している。そして本発明は、この
素芯シュンケル2’を高分子化合物5にて被覆し、図5
(b)のように高分子化合物被覆芯シェンケル2を形成
する。
【0022】この高分子化合物は、特性として、鉄鋼と
の接着性がよく、耐摩耗性、耐油性、耐水性、温度特
性、耐侯性、柔軟性(耐ストレスクラック性)を有して
いることが好ましく、代表的な高分子化合物としては、
ポリエチレン、ポリプロピレン、弗素樹脂などの汎用合
成樹脂が挙げられるが、そのほかエンジニアリングプラ
スチックを使用してもよい。あるいは、ジエン系、オレ
フイン系、ウレタン系などのゴムであってもよい。
【0023】前記高分子化合物被覆5の形成方法は任意
であり、溶解物中に素芯シュンケル2’を連続的に通過
させてもよいし、素芯シュンケル2’の周りに押出し機
により押し出してもよい。高分子化合物被覆5は、素芯
シュンケル2’と側ストランド3とのフレッティングを
防止するとともに、最終の外装高分子化合物被覆6の形
成時に側シェンケル相互間に高分子化合物が充填される
のに十分なスペースを確保することができるよう、被覆
厚さtを設定する。このとき、側シェンケル間のスペー
スは、0.3〜1.5mm程度が望ましい。高分子化合
物は各側ストランド2b,2b間の隙間を通して芯スト
ランド2aの表面に達することにより、緩衝性能のある
膜を形成する。高分子化合物の一部50は側ストランド
2bの素線間にも浸透し、また芯ストランド2aの素線
間にも浸透していてもよい。
【0024】次に、側ストランド3について説明する
と、基本的には複層構造であれば構造を問わず、また製
作法も問わないが、いま、一例を挙げると、図6(a)
(b)(c)はかかる側ストランド3の1本の製作工程
を例示している。側ストランド3の芯部(第1層)3a
は、径が同等の複数本(図面では3本)の素線300か
ら構成されており、それら素線径は芯シュンケル2の芯
ストランド2aの素線と同等かまたは適度に小さく側ス
トランド2bよりも適度に大きい。第1工程としてまず
図6(a)のように、複数本の素線300を所定の撚り
ピッチで撚り合わせる。
【0025】次いで、図6(b)のように、第2工程と
して、前記芯部(第1層)3aの周りに芯部素線と同等
または適度に細い径の複数本(図面では9本)の側素線
301を配して所定の撚りピッチで撚り合わせて第2層
3bを形成する。ついで、第3工程として、第1層+第
2層からなる撚合体の外周に、第2層の素線と同等かま
たは適度に細い所要数(図面では15本)の素線302
を配し、所定の撚りピッチで撚り合わせ、これで図6
(c)に示す側ストランド3を得る。この場合、第1工
程の撚り方向と第2工程の撚り方向は同一(たとえばZ
方向)であるが、第3工程の撚り方向は逆方向(たとえ
ばS方向)とされる。
【0026】この側ストランド3の外径D2は被覆芯シ
ェンケル2の外径D1よりも小さく、好ましくは、素芯
シェンケル2’の外径よりも小さくする。それにより側
ストランド3,3間に後述する外装被覆層6のための高
分子化合物を浸透させることができ、好都合である。
【0027】次に、高分子化合物被覆5を有する芯シェ
ンケル2の周りに、側ストランドル3を複数本(図示す
るものでは7本)配し、それらを撚り合わせる。この最
終撚りの撚りピッチは撚り構造と素線径に応じて適宜選
択するが、通常、仕上げロープ径の6〜9倍程度とし、
かつ撚り方向を芯シェンケル2の撚り方向と一致させて
行なう。たとえばこの例ではZ方向とする。このように
して図7に示す素ロープ1’が完成する。
【0028】素ロープ1’は最終的に全体を高分子化合
物によって被覆し、外装被覆層6を形成する。この外装
被覆層6は、側ストランド3,3間のフレッティングを
防止するとともに、シーブとの摩擦係数の調整を図るた
めのもので、高分子化合物は耐摩耗性、耐侯性がよく、
適度の弾性を持ち摩擦係数が比較的高い特性を有し、か
つ加水分解しない特性であることが好ましい。その例と
しては、ポリウレタン系、エーテル系のポリウレタンエ
ラストマーなどの合成樹脂、あるいはゴムが挙げられ
る。
【0029】高分子化合物600は側ストランドの外径
(外接円)から所定の厚さTの層601を形成する。好
適には、各側ストランド3,3間の隙間を通して芯シュ
ンケル2の表面の高分子化合物被覆5と接着される。外
装被覆層6の被覆厚さTは、これがあまり薄いと耐久性
に乏しくまた摩耗寿命も低下する。厚すぎるとロープの
柔軟性が損なわれるばかりかロープ径が大きくなり、強
度効率が低下するので、通常0.3〜1.0mmとする
ことが好ましい。外装被覆層6の形成方法はたとえば押
出し機を使用するなど任意である。
【0030】なお、製造上は、素ロープ1’を撚る工程
で千鳥状に配置した3本程度のロール間に側ストランド
3を通過させて螺旋状の型付けを行い、ボイス通過後、
ならしロールを通すことによって行われる。型付率は
0.60〜0.90程度より好ましくは、0.65〜
0.85で行なえばよい。ここで、型付率とは、ロープ
径とロープからストランドを取り出したときの、ストラ
ンドの高さの比をいう。この工程により、ロープの回転
性を防止するとともにばらけを防止し、かつ側ストラン
ド間の隙間を均等で最適なものに調整することができ
る。
【0031】図8〜図13は本発明の別の実施例を示し
ており、(7×19)+10×(37)とした本発明ロ
ープを示している。詳しくは、構造式は、{(1+6)
+12}+6×{(1+6)+12)}+10×{(1
+6)+12+18}としている。この実施例も第1実
施例と同じく被覆芯シェンケル2と、これを囲む複数本
(図面では10本)の側ストランド3とを有し、しかも
前記芯シェンケル2は高分子化合物被覆5が施され、側
ストランド3間を含む外側には全体に高分子化合物から
なる外装被覆6が施され、断面が円形状をなしている。
【0032】芯シェンケル2の芯ストランド2aは、図
9(a)のように、中心の1本の芯素線200と、これ
よりも相対的に径の細い多数の側素線201,202か
ら構成されている。かかる構成を得るには、芯素線20
0と側素線201,202を一括して撚り合わせてもよ
い。しかし、好ましくは回転性が生じないようにするた
め、2工程撚りにて構成する。
【0033】図9(a)(b)はこの芯シェンケル2の
芯ストランド2aの製作工程を示しており、(a)のよ
うに、一本の芯素線200の周りにこれよりも相対的に
径の細い複数本(図面では6本)の側素線201を配し
て所定の撚りピッチで撚り合わせる第1工程により1+
nからなる内層20aを作り、(b)のように、内層2
0aの外周に複数本(図面では12本)の側素線202
を配して所定の撚りピッチで撚り合わせる第2工程によ
り外層20a’を形成している。この場合、第1工程の
撚り方向と第2工程の撚り方向は同一方向(たとえばZ
方向)とする。図9において素線の断面中の符号は撚り
方向を示している。なお、内層20aの側素線201と
外層20a’の側素線202は同等の径としているがこ
れに限られるものではない。
【0034】図10(a)(b)は芯シェンケル2の各
側ストランド2bの製作工程を示しており、一本の芯素
線203の周りにこれよりも相対的に径の細い複数本
(図面では6本)の側素線204を配して所定の撚りピ
ッチで撚り合わせる第1工程により1+nからなる内層
20bを作り、この内層20bの外周に外層となるべき
複数本m(図面では12本)の側素線205を配して所
定の撚りピッチで撚り合わせる第2工程{(1+n)+
m}により形成している。この場合、第1工程の撚り方
向と第2工程の撚り方向は同じ方向(たとえばS方向)
とする。撚りピッチは芯ストランド2aと側ストランド
2bとも同じである。
【0035】側ストランド2bの芯素線203の径は、
好ましくは芯ストランド2aの芯素線201の直径より
も相対的に小さく、たとえば、芯ストランド2aの側素
線201,202と同等とする。側ストランド2bの側
素線204,205の径は芯ストランド2aの側素線2
01,202の径よりも小さく、それにより、芯ストラ
ンド2aの直径d1を側ストランド2bの直径d2より
も適度に大きくしている。なお、「ストランドの直径」
とはストランドを構成する外層の素線群の外接円を意味
する。
【0036】上記のように芯ストランド2aの直径d1
を側ストランド2bの直径d2よりも大きくするのは、
芯シェンケルを作ったときに、各側ストランド2b間に
高分子化合物の浸透を許容する隙間を形成するためであ
り、その(d1−d2)/d2×100は、通常、約
1.4〜6.8%程度である。
【0037】上記のようにして得た1本の芯ストランド
2aの周りに複数本(図面では6本)の側ストランド2
bを配して撚り合わせる。この場合の撚りピッチは一般
に仕上げシェンケル径の6〜9倍程度とし、撚り方向は
芯ストランド2aの撚り方向と同じにする。これは製造
が容易であり、工程の変動に対して型崩れが少ないから
である。以上により図11(a)のような素芯シュンケ
ル2’が作られる。そして本発明は、この素芯シュンケ
ル2’を高分子化合物にて被覆し、図11(b)のよう
に高分子化合物被覆5を形成し、被覆芯シェンケル2と
する。高分子化合物は、第1実施例に説明したものと同
じであり、被覆方法も同様である。
【0038】高分子化合物は各側ストランド2b,2b
間の隙間を通して芯ストランド2aの表面に達すること
により、緩衝性能のある膜を形成する。高分子化合物の
一部は側ストランド2bの素線間にも浸透し、また芯ス
トランド2aの素線間にも浸透していてもよい。
【0039】次に、側ストランド3の例について製造工
程とあわせて説明すると、側ストランド3は複層たとえ
ば、芯部(第1層)3aとこれを囲む第2層3bと、こ
れを囲む第3層3cからなっている。図12(a)
(b)(c)はかかる側ストランド3の製作工程を示し
ており、第1工程として、図12(a)のように、1本
の中心素線300の周りにこれよりも適度に径の細い複
数本(図面では6本)の素線301を配して所定の撚り
ピッチで撚り合わせ、第1層3aを得る。
【0040】次いで、図12(b)のように、第2工程
として、前記芯部(第1層)3aの周りに複数本(図面
では12本)の側素線302を配して所定の撚りピッチ
で撚り合わせて第2層3bを形成する。側素線302の
径は第1層3aの素線301と同等の太さであってもよ
い。ついで、第3工程として、第1層+第2層からなる
撚合体の外周に、第2層の素線302より適度に細い所
要数(図面では18本)の素線303を配し、所定の撚
りピッチで撚り合わせ、これで図12(c)に示す側ス
トランド3を得る。この場合、第1工程の撚り方向ない
し第3工程の撚り方向はすべて同一(たとえばS方向)
とされる。
【0041】この側ストランド3の外径D2は被覆芯シ
ェンケル2の外径D1よりも小さく、さらには、素芯シ
ェンケル2’の外径よりも小さくする。それにより側ス
トランド3,3間に後述する外装被覆層6のための高分
子化合物を浸透させることができ、好都合である。な
お、側ストランド3の第1層3aの素線径と芯シェンケ
ル2の芯ストランド2aの素線径との関係は、素線20
0と300、素線201と301をおのおの同等として
よい。側ストランド3の第2層3bの素線302は芯シ
ェンケル2の芯ストランド2aの素線202と同等でよ
い。さらに、側ストランド3の第3層3cの素線303
は芯シェンケル2の側ストランド2bの素線,204,
205と同等でよい。
【0042】次に、高分子化合物被覆5を有する芯シェ
ンケル7の周りに側ストランド3を複数本配し、それら
を撚り合わせて本発明ロープとする。この最終撚りの撚
りピッチは撚り構造と素線径に応じて適宜選択するが、
通常、仕上げロープ径の6〜9倍程度とし、かつ撚り方
向を芯シェンケル2の撚り方向と一致させて行なう。た
とえばこの例ではZ方向とする。このようにして図13
に示す素ロープ1’が完成する。
【0043】素ロープ1’は最終的に全体を高分子化合
物によって被覆し、外装被覆層6を形成する。高分子化
合物とその被覆法は第1実施例に述べたとおりであり、
高分子化合物600は側ストランドの外径(外接円)か
ら所定の厚さTの層601を形成する。好適には、各側
ストランド3,3間の隙間を通して芯シュンケル2の表
面の高分子化合物被覆5と接着される。また、外装被覆
層6の被覆厚さTは、これがあまり薄いと耐久性に乏し
くまた摩耗寿命も低下する。厚すぎるとロープの柔軟性
が損なわれるばかりかロープ径が大きくなり、強度効率
が低下するので、通常0.3〜1.0mmとすることが
好ましい。外装被覆層6の形成方法はたとえば押出し機
を使用するなど任意である。
【0044】なお、上記実施例は本発明の数例であり、
これに限定されるものではなく、被覆芯シェンケル2の
周りに複層の側ストランドを形成し、その側ストランド
の外周を含む全体を高分子化合物で被覆した構造のワイ
ヤロープをすべて含む。芯シェンケルの構成および側ス
トランドの構成は、実施例のもののほか、(1+6)+
6×(1+6)+8×(1+6+12)などを含む。
【0045】さらに本発明において、芯シェンケルや側
ストランドの撚り形式は、多層撚り、平行撚り(各層同
一撚りピッチ)のいずれも含んでいる。多層撚りの例を
あげると、次のとおりである。 {(1+6)+6×(1+6)}+8×(3+9+1
5) (1+6+12)+6×{(1+6+12)}+10×
{(1+6+12+18) {(1+6)+6×(1+6)}+8×(1+6+1
2) (1+6+12)+6×(1+6+12) (1+6+12+18)+6×(1+6+12+1
8)
【0046】平行撚りの例を挙げると、次のとおりであ
る。 {(1+6)+6×(1+6)}+8×(27) {(1+6+12)+6×{(1+6+12)}+10×
(37) {(1×19)+6×(19)}+10×(37) {(1+6)+6×(1+6)}+8×(19) (1×19)+6×(19) (1×37)+6×(37) {(1+6)+6×(1+6)}×6or8{S(1
9),W(19),Fi(25)} このような平行撚り形式とした場合、内外層の素線が互
いに相接して線接触の状態となり、ストランドの締りが
よいため形崩れを起しにくく、またストランドの内部摩
耗が少なく、さらに素線間の空隙が少なく有効断面積が
大きくなるので、切断荷重が大となる利点がある。
【0047】実施例のものにおいて、芯シェンケル2の
撚り方向と側ストランド3の撚り方向、芯シェンケル2
のストランド2a,2bの撚り方向、側ストランド3の
各層3a,3b,3cの撚り方向は上記説明の方向に限
られない。
【0048】
【実施例の作用】本発明によるワイヤロープの特性を述
べると、伸びが4〜6%と少ないためエレベータ用や、
クレーン用などの荷役機械用として適切である。可撓性
は800〜1800であるためかなり曲げやすい。弾性
係数は従来の繊維芯タイプが40000〜60000N
/mm2であるのに対して、74000N/mm2以上で
あり、これもエレベータ用や荷役用のロープとして好適
な特性である。S曲げ疲労試験においては、D/d=2
0、SF=10すなわち計算破断荷重の1/10の荷重
でのテストの条件で従来の繊維芯タイプが20000〜
40000回であるが、本発明ロープは450000回
を越えるきわめて高い耐疲労性を示す。
【0049】本発明によるロープは、直径が小さな高強
度鋼線材からなる素線を多数本撚り込むことにより芯シ
ュンケル2と側ストランド3を構成しているので、要求
強度を実現しつつロープの径を細くして軽量化すること
ができ、さらに良好な疲労性を実現し得るため、ドラム
やシーブ4の径を小さくすることができる。すなわちた
とえば被覆も含めてロープ重量を従来比で20%以上軽
くすることができるため、図13(a)のようにシーブ
4の径SDを従来比の50%以下とすることができる。
また、ドラムやシーブ4の小型化によりこれを駆動する
モーター類のトルクを小さくすることができるので、寸
法を小さくすることができる。またロープを軽量化する
ことができるので、モーター類の容量も小さいものにす
ることができ、クレーンに適用した場合には、クレーン
本体を小型化することができる。ドラムやシーブの径を
極限まで小さくしなければ、ロープの長寿命化を図るこ
とができる。
【0050】また、芯シュンケル2に高分子化合物被覆
9を施して外径を増径することにより、側ストランド相
互間に隙間を形成することができ、また、全体被覆をす
るときに前記側ストランド相互間の隙間から高分子化合
物が内部に入りやすくなる。そして、芯シュンケル2の
径を変えることなく被覆径すなわち高分子化合物被覆5
の厚さを変えてやるだけで、側ストランド相互間の隙間
寸法を容易にコントロールすることができる。
【0051】このように芯シュンケル2が高分子化合物
被覆5を有し、その高分子化合物被覆9の周りに側スト
ランド3を配して撚合しているので、芯シュンケル2と
側ストランド3とがメタルタッチせず、フレッティング
が防止されるので、ロープ寿命を向上させることができ
る。また、外装被覆層6によりロープ表面を被覆してお
り、ロープがシーブやドラムと金属接触しないので両者
の摩耗が低減され、これによってもロープやシーブやド
ラムの長寿命化を図ることができる。
【0052】また、芯シュンケル2が高分子化合物被覆
5の分だけ増径しているので、スペーサとしての機能を
発揮し、側ストランド3,3に外装被覆層10の高分子
化合物が浸透充填しやすい隙間を形成することができ
る。このため、側ストランド3,3間のフレッティング
が緩和され、疲労性を向上することができる。
【0053】また、外装被覆層6として使用する高分子
化合物の選択により摩擦係数を制御することができ、シ
ーブ4の溝は図14(a)に示すような丸溝で足りるこ
とになるので、コストを低減することができる。それで
いてモータの回転によるシーブの回転運動をロープに正
確に伝えて、シーブの回転運動と荷重物の上下運動をよ
く連動させ、正確な位置制御を行なえるので、乗り心地
をよくすることができる。またロープ断面が円形状であ
るため、自転やねじれの影響(片荷重による部分断線)
が軽減される。さらに、無給油とすることができるの
で、その手間が省けるとともにドラムやシーブに油が付
着したり、周辺に飛散することがなくなるので機械室や
クレーンなどの機械を清潔にすることができる。
【0054】また、芯シェンケル2は芯ストランド2a
の外径が側ストランド2bの外径よりも大きく構成さ
れ、また側ストランド3は芯シェンケル2と撚り方向が
異なっているので、不都合なロープの回転性を排除する
ことができ、これにより高分子化合物被覆5や外装被覆
層6の接着関係が安定し、耐久性を高いものとすること
ができる。
【0055】本発明はまた側ストランド3を用いたスト
ランド形であるため、ケーブルレイド形のロープ(シェ
ンケルタイプ)と比べて、次のような特徴がある。 ケーブルレイド形のロープは基本的に側が6つのシェ
ンケルからなっているため、軸線と直角方向の断面形状
が6角形に近い形状となるが、ストランド形は使用する
ストランド数が多くなるので、ロープの断面形状をより
丸いものとすることができる。それにより、出来上がっ
たロープの使用時に、側ストランドとシーブ間に介在す
る外装被覆6にかかる面圧を緩和することができる。そ
の結果、外装被覆6とこれを有するロープの長寿命化を
実現できるとともに、外装被覆6の変形が少なくなるた
め、エレベータに適用した場合に振動を減少することが
できる。
【0056】ケーブルレイド形のロープよりも鋼材断
面密度を高くすることができるので、ロープ径が小さく
てもケーブルレイド形ロープと同一強度を得ることがで
き、これにより、ロープを巻収するドラムを小さくする
ことができ、ハンドリング性がよくなる。また、外装被
覆を同じ厚さにした場合にも高分子化合物の量を少なく
することができ、コストを削減できる。ロープを同一寿
命に設定した場合、シーブ径の小型化と動力系の小型化
を図ることができる。
【0057】側ストランドをフライヤー数の多い撚線
機で一度に撚ることができるので、ケーブルレイド形に
比較して撚り線工程を減少させることができる。 ケーブルレイド形の側シェンケルの場合のように複数
本のストランドを作り、それらさらに撚り合わせるので
ないため、各ストランドのフレッティングを減少させる
ことができ、これにより摩耗による寿命低下を改善する
ことができる。ことに平行撚りあるいはこれに準ずるも
のととすることによりフレッティングをさらに減じて寿
命を伸ばすことができる。
【0058】
【実施例】実施例1 (1)素線 原料として直径5.5mmの高炭素鋼線材(C:0.8
2%、Si:0.21%、Mn:0.48%、残部鉄及
び不可避的不純物)を用いた。この鋼線材を次の工程で
伸線して素線を得た。 1)酸洗い後、10パス程度で冷間伸線を行って線径
2.0mmとし、これを980℃程度で空気パテインテ
ィングし、酸洗い後、4パス程度の冷間伸線を行って線
径1.65mmとし、980℃程度で加熱後、550℃
程度で鉛パテンティングを行い、酸洗い、湯洗い後に電
気メッキ法にて亜鉛めっきを施し、水性タイプ潤滑剤を
使用して20パス程度の湿式伸線を行い、最終径0.2
90mm〜0.310mmの素線を得た。各素線の特性
は、引張り強さ320kg/mm2、破断時伸び2%であっ
た。
【0059】(2)芯シェンケルの製作 2−1)芯シェンケルの芯ストランドの製作工程 第1工程:1+6 径0.310mmの芯素線1本と、径0.310mmの
6本の側素線を、撚りピッチ15.0mmにてS方向に
撚り合せ、外径0.93mmの芯ストランドを作った。
【0060】2−2)芯シェンケルの側ストランドの製
作工程 第1工程:1+6 径0.290mmの芯素線1本と、径0.290mmの
6本の側素線を、撚りピッチ15.0mmでS方向に撚
り合せ、外径0.87mmの側ストランドを得た。
【0061】2−3)芯シェンケル撚り工程(1×1
2)+6×(1×12) 前記2−1)で得た1本の芯シェンケル芯ストランドの
回りに、2−2)で得た6本の芯シェンケル側ストラン
ドを配し、撚りピッチ22.00mmでZ方向に撚り合
せ、外径2.67mmの芯シェンケルを得た。
【0062】(3)芯シェンケルの被覆 溶融ポリエチレンをエクスチュルーダにて押出し、前記
芯シェンケルに0.30mmの厚さで被覆し、仕上げ径
3.27mmの樹脂被覆芯シェンケルを得た。
【0063】(4)側ストランドの製作 4−1)第1工程:1×3 径0.300mmの3本の素線を撚りピッチ8.0mm
でZ方向に撚り合わせ、外径0.65mmの芯部(第1
層)を得た。 4−2)第2工程:第1層+第2層 前記第1層の周りに、径0.300mmの9本の素線を
配し、撚りピッチ16.0mmでZ方向に撚り合せ、外
径1.25mmの複層撚合体を得た。
【0064】4−3)第3工程:第1層+第2層+第3
層 前記第2層の周りに径0.300mmの素線を15本配
し、撚りピッチ22.0mmでS方向に撚り合わせ、径
1.85mmの側ストランドを得た。
【0065】(5)ロープ撚り工程 チューブラー型撚線機を使用し、前記被覆芯シェンケル
の周りに、側ストランドを8本を配し、ピッチ50.0
0mm、撚り方向Zにて撚り合せ、外径6.97mmの
素ロープを得た。
【0066】(6)型付けおよびならし 撚線機に直径が8.0mmの3本のロールを千鳥状に配
置した型付装置を配し、ボイスの下流に直径が50mm
の上下で対をなす9+10組のならしロールを配してお
き、型付率平均70%程度の型付けとならしを行なっ
た。
【0067】(7)全体被覆 型付けおよびならしを施した素ロープに溶融ポリウレタ
ンをエクスチュルーダにて0.50mmの厚さに被覆
し、径7.97mmの仕上げロープを得た。得られたロ
ープの鋼材断面密度は37.2%、表面の摩擦係数
(μ)は0.3、破断荷重は40kNであった。
【0068】本発明ロープ3本を、かごとカウンターウ
エイトの重量2tonの模擬エレベータに使用したとこ
ろ、径150mm、溝3個で溝R5.25mmの丸溝付
きシーブを使用して、安全率10で円滑に運転すること
ができた。比較のため、素線径0.475〜0.955
mmの低炭素鋼素線(C:0.42wt%)を用いた比
較ロープ:構造8×S(19)、径12.5mm、強度
63.5KN×3本を作成し、前記模擬エレベータに使
用したところ、シーブ径500mm、シーブ溝3個、溝
R6.2mmアンダーカット付きでなければ、円滑な運
転ができなかった。
【0069】実施例2 本発明を適用して図8に示す(7×19)+10×(3
7)構造のロープを製作した。素線としては、0.27
8〜0.286mmの範囲の亜鉛めっき付ワイヤ(引張
り強さおよび伸び特性は実施例1と同じ)を503本使
用した。
【0070】(1)芯シェンケルの製作 1−1)芯シェンケルの芯ストランドの製作工程 第1工程:1+6 径0.286mmの芯素線1本と、径0.282mmの
6本の側素線を、撚りピッチ9.0mmにてZ方向に撚
り合せ、外径0.85mmの内層を作った。 第2工程:(1+6)+12 前記内層(1+6)の周りに外層用の径0.282mm
の側素線12本を配し、撚りピッチ14mmでZ方向で
撚り合せ、外径1.41mmの芯ストランドを得た。
【0071】1−2)芯シェンケルの側ストランドの製
作工程 第1工程:1+6 径0.282mmの芯素線1本と、径0.278mmの
6本の側素線を、撚りピッチ9.0mmでS方向に撚り
合せ、外径0.84mmの内層を得た。 第2工程:(1+6)+12 内層(1+6)の周りに、外層用の径0.278mmの
12本の側素線を配し、撚りピッチ14.0mmでS方
向に撚合せ、外径1.40mmの側ストランドを得た。
【0072】1−3)芯シェンケル撚り工程{(1+
6)+12}+6×{(1+6)+12} 前記1−
1)で得た1本の芯シェンケル芯ストランドの回りに、
2−2)で得た6本の芯シェンケル側ストランドを配
し、撚りピッチ30.0mmでZ方向に撚り合せ、外径
4.21mmの芯シェンケルを得た。
【0073】(2)芯シェンケルの被覆 溶融ポリエチレンをエクスチュルーダにて押出し、前記
芯シェンケルに0.30mmの厚さで被覆し、仕上げ径
4.81mmの樹脂被覆芯シェンケルを得た。
【0074】(3)側ストランドの製作 3−1)第1工程:1+6 径0.286mmの1本の芯素線のまわりに0.282
mmの6本の側素線を配し、撚りピッチ16.0mmで
S方向に撚り合わせ、外径0.85mmの芯部(第1
層)を得た。 3−2)第2工程:第1層+第2層 前記第1層の周りに、径0.282mmの12本の素線
を配し、撚りピッチ16.0mmでS方向に撚り合せ、
外径1.41mmの複層撚合体を得た。
【0075】3−3)第3工程:第1層+第2層+第3
層 前記第2層の周りに径0.278mmの素線を18本配
し、撚りピッチ16.0mmでS方向に撚り合わせ、径
1.97mmの側ストランドを得た。
【0076】(4)ロープ撚り工程 チューブラー型撚線機を使用し、前記被覆芯シェンケル
の周りに、側ストランドを10本を配し、ピッチ65.
00mm、撚り方向Zにて撚り合せ、外径径8.75m
mの素ロープを得た。
【0077】(5)型付けおよびならし 撚線機に直径が9.0mmの3本のロールを千鳥状に配
置した型付装置を配し、ボイスの下流に直径が55mm
の上下で対をなす9+10組のならしロールを配してお
き、型付率平均70%程度の型付けとならしを行なっ
た。
【0078】(6)全体被覆 型付けおよびならしを施した素ロープに溶融ポリウレタ
ンをエクスチュルーダにて0.50mmの厚さに被覆
し、径9.75mmの仕上げロープを得た。得られたロ
ープの鋼材断面密度は41.4%、表面の摩擦係数
(μ)は0.3、破断荷重は64kNであった。本発明
ロープ3本を、かごとカウンターウエイトの重量2to
nの模擬エレベータに使用したところ、径150mm、
溝3個で溝R5.25mmの丸溝付きシーブを使用し
て、安全率10で円滑に運転することができた。
【0079】
【発明の効果】以上説明した本発明によるときには、外
装被覆前のロープ径(DR)との関係で素線径(WR)
を15≦DR/WR≦100とした高強度鋼素線を使用
したワイヤロープにして、素線を撚り合わせて構成した
芯ストランドの周りに複数本の側ストランドを配して撚
り合わせかつ外周を高分子化合物被覆を施した1本の被
覆芯シェンケルの周りに、素線を撚り合わせた芯部の周
りに複数本の側素線を配して複層に撚り合わせしかも前
記被覆芯シェンケルよりも外径が相対的に小さい複数本
の側ストランドを配して撚合し、かつ前記側ストランド
を含む全体を高分子化合物により外装被覆しているた
め、次のようなすぐれた効果が得られる。
【0080】1)高強度材質の細径の素線を多数撚り込
んでいるため、疲労性が良好な細径かつ軽量で要求強度
を満足するロープとすることができ、それによりシー
ブ、ドラム、モータ類を小型化できて、省スペースを図
ることができる。
【0081】2)芯シェンケル2の周りだけでなく、側
ストランド3の周りに高分子化合物の外装被覆6を施し
ており、この部分がシーブやドラムと接触するので、ロ
ープとドラム、シーブの摩耗を防止することができると
ともに、被覆高分子化合物により摩擦係数が高くなるの
で、シーブやドラムの特殊な溝加工が不要になり、また
シーブに対するロープのダブルラップが不要になる。特
にダブルラップが不要になることでシーブ軸に作用する
力を軽減できるため、軸や軸受け小型化することがで
き、これによってもコストダウンを図ることができる。
【0082】3)芯シェンケル2が高分子化合物で被覆
されているため、側ストランド3とのフレッティングが
緩和され、ロープ寿命を向上することができるととも
に、芯シェンケル2が高分子化合物被覆されて増径され
ているので、側ストランド3,3間に隙間を形成するこ
とも可能となり、全体を高分子化合物で被覆したときに
その高分子化合物が側ストランド3,3間に確実に充填
される。このため、側ストランド間3,3のフレッティ
ングが緩和され、疲労性を改善し、ロープの寿命を向上
することができる。
【0083】4)芯シェンケル2の径を変えることな
く、高分子化合物の被覆厚さを変えるだけで側ストラン
ド間の高分子化合物の侵入隙間を容易にコントロールす
ることができるので、全体被覆高分子化合物の性質など
に即応することができる。これにより生産性を向上する
ことができる。
【0084】5)芯シェンケル2と側ストランド3との
組合わせであるため、第1に鋼材断面密度を高くするこ
とができ、これによりロープ径が小さくても高い強度を
得ることができ、それによりハンドリング性がよくな
り、被覆材としての高分子化合物の量を少なくすること
ができ、またシーブ径や動力系を一段と小型化すること
ができる。第2に側ストランド3を使用しているためそ
の断面形状を丸い形状とすることができ、これによりシ
ーブとの間に介在する外装被覆にかかる面圧を緩和する
ことができ、それにより外装被覆の長寿命化を実現でき
るとともに外装被覆の変形が少なくなるため、エレベー
タに適用した場合に振動を減少することができる。第3
に側がシェンケルタイプ(ストランドをさらに撚り合わ
せたたもの)ではなくストランドタイプであるため、フ
レッティングを減少させることができ、摩耗による寿命
低下を改善することができる。
【0085】6)さび止めのための給油を省略すること
ができるため、作業性がよくなるとともに、シーブ、ド
ラムあるいは周辺への油の付着や飛散がなくなり、ロー
プ使用機械や使用環境を清潔なものに改善することがで
きる。
【0086】請求項2によれば、前記請求項1の特性に
よりシステムの省スペースやコストダウンが可能な実用
性の高いエレベータ用ロープを提供できるというすぐれ
た効果が得られる。
【0087】請求項3によれば、前記請求項1の特性に
よりシーブ径、ドラム径が小型で、摩耗が少なく、長寿
命で低コストのクレ−ン類用のロープ提供できるという
すぐれた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明のロープを適用したエレベータ
の一例を模式的に示す説明図、(b)は本発明のロープ
を適用したクレーンの一例を示す説明図である。
【図2】本発明ロープの第1実施例を示す部分切欠斜視
図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う拡大断面図であ
る。
【図4】(a)は第1実施例における芯シェンケルの芯
ストランドの断面図、(b)は同じく芯シェンケルの側
ストランドの断面図である。
【図5】(a)は第1実施例における素芯シェンケルの
断面図、(b)は被覆芯シェンケルの断面図である。
【図6】(a)は第1実施例における側ストランドの第
1層の断面図、(b)は第2層撚合状態の断面図、
(c)は第3層を撚合した側ストランドの断面図であ
る。
【図7】(a)は第1実施例における素ロープの断面図
である。
【図8】本発明によるワイヤロープの第2実施例を示す
拡大断面図である。
【図9】(a)は第2実施例の芯シェンケルの芯ストラ
ンドの製作第1工程の断面図、(b)は第2工程により
得られた芯ストランドの断面図である。
【図10】(a)は第2実施例の芯シェンケルの側スト
ランド製作第1工程の断面図、(b)は第2工程により
得られた側ストランドの断面図である。
【図11】(a)は第2実施例の素芯シェンケルの断面
図、(b)は第2実施例の被覆芯シェンケルの断面図で
ある。
【図12】(a)は第2実施例の側ストランドの第1層
を示す断面図、(b)は第2層製作状態の断面図、
(c)は完成した側ストランドの断面図である。
【図13】第2実施例の素ロープの断面図である。
【図14】(a)は本発明ロープが使用するシーブの側
面図、(b)は従来ロープが使用するシーブの側面図で
ある。
【符号の説明】
1 ワイヤロープ 2 芯シェンケル 2’ 素芯シェンケル 2a 芯シェンケルの芯ストランド 2b 芯シェンケルの側ストランド 3 側ストランド 3a 側ストランドの第1層 3b 側ストランドの第2層 5 高分子化合物被覆 6 外装被覆

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】外装被覆前のロープ径(DR)との関係で
    素線径(WR)を15≦DR/WR≦100とした高強
    度鋼素線を使用したワイヤロープにして、素線を撚り合
    わせて構成した芯ストランドの周りに複数本の側ストラ
    ンドを配して撚り合わせかつ外周を高分子化合物被覆を
    施した1本の被覆芯シェンケルの周りに、素線を撚り合
    わせた芯部の周りに複数本の側素線を配して複層に撚り
    合わせしかも前記被覆芯シェンケルよりも外径が相対的
    に小さい複数本の側ストランドを配して撚合し、かつ前
    記側ストランドを含む全体を高分子化合物により外装被
    覆していることを特徴とするワイヤロープ。
  2. 【請求項2】ワイヤロープがエレベータ用ロープである
    請求項1に記載のワイヤロープ。
  3. 【請求項3】ワイヤロープがクレーン用ロープ類である
    請求項1に記載のワイヤロープ。
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