JP3910377B2 - ワイヤロープ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はエレベータ用あるいはクレーン用で代表される荷役機械用の動索として好適なワイヤロープに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ワイヤロープは静索のほか動索として汎用されている。かかる動索の代表的なものとしては、エレベータ用ロープやクレーン用ロープがある。
エレベータは一般にロープとシーブとの摩擦力を利用してロープに連結したかごを上下に動かすシステムであり、エレベータかごとカウンターウェイトがシーブを経由して結合されている。こうした吊り上げ及び駆動を行なうメインロープとして、従来のエレベータ用ロープは、一般に中心に繊維芯を配した6×S(19)、8×S(19)、6×W(19)、8×W(19)、6×Fi(25)、8×Fi(25)の構造を持ち、直径約12mm、破断荷重64.4kNクラスのワイヤロープが用いられていた。また、ロープを構成する素線材質に関し、シーブが高価で交換に多大な手間と時間がかかることを考慮してシーブの摩耗を防止すべく低炭素鋼を使用していた。
【0003】
また、クレーン用ロープとしては、古くから6×37、6×19の構造のものが用いられ、これに代って、6×Fi(22+7)や6×Fi(19+6)のロープが多く採用されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のエベータ用ロープは、ロープの素線径が太いために図14(b)のようにシーブ400の径SDが500mm程度と大きなものになり、これに関連してモータなどの駆動機械類も大型化していた。このため、屋上に設置される機械室の小型化を図ることができず、ことにビルが高層化すると、ロープの自重増加により設備がさらに大型化することを避けられなかった。
【0005】
さらに、従来のエレベータ用ロープでは、シーブの摩耗を防止するために低炭素鋼を使用して硬さを意図的に抑えていたため、ロープの強度の向上が制約を受け、これがまた高層ビルへの適用上問題となっていた。
【0006】
また、従来のエレベータ用ロープは、錆の発生や疲労性向上のために塗油が必要であり、その結果摩擦係数が小さくなり、シーブとロープの間に滑りが生じやすい。この滑りによりモータの回転によるシーブの回転運動がロープに正確に伝わらず、シーブの回転運動とかごの上下運動が連動しなくなり、かごの正確な位置制御ができなくなる。そこで、従来では、シーブ400の溝401にアンダーカット402を形成する特別な加工を施したり、ダブルラップ方式でロープを巻回したりしており、このため、設備コストが高価になったり、ロープの取り付け及び交換作業に非常に手間がかかるという問題があった。
【0007】
一方、従来のクレーン用ロープも、同様な理由からシーブ径やドラム径が大きくなって大型化を避けられず、金属同士の接触であるため摩耗が多く、シーブ、ドラムおよびロープの寿命が短くなり、またさびの発生が起りやすく、これを低減するため塗油を必要とするので、油がシーブやドラムに多量に付着したり周囲に飛散し、クレーンボデイや周辺を汚すなどの問題があった。
【0008】
本発明は前記のような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、柔軟でロープ径が細く軽量化されながらも高い鋼材断面密度により必要強度を維持でき、しかもシーブ径を小さくしても必要な疲労性を維持しつつシーブとの良好な摩擦接触を実現することができ、また油の塗布や補給を要さずボデイや周辺の環境をきれいに保つことができ、エレベータ用およびクレーン用で代表される荷役機械用の動索として好適なワイヤロープを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、外装被覆前のロープ径(DR)との関係で素線径(WR)を15≦DR/WR≦100とした引張り強度280kgf /mm 2 以上の高強度鋼素線を使用したストランド形ワイヤロープにして、素線を撚り合わせて構成した芯ストランドの周りに複数本の側ストランドを配して撚り合わせかつ外周に高分子化合物被覆を施した1本の被覆芯シェンケルの周りに、素線を撚り合わせた芯部の周りに複数本の側素線を配して複層に撚り合わせしかも前記被覆芯シェンケルの被覆前のものよりも外径が相対的に小さい側ストランドを複数本配して撚合し、かつ前記側ストランド3間を含む外側には全体に高分子化合物からなる外装被覆6が施され断面が円形状をなしていることを特徴としている。
【0010】
本発明ワイヤロープは、シーブと良好な摩擦係数が得られるので、動力を伝達するエレベーター用たとえば吊り上げ及び駆動を行なうメインロープ、異常速度検出用のガバナロープなどに好適である。また、エレベータ用のほかクレーンで代表される荷役設備や機械の動索としても好適である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施例を添付図面を参照して説明する。
図1(a)は本発明によるワイヤロープを適用したトラクション式エレベータを模式的に示しており、1は本発明によるワイヤロープ、aは前記ワイヤロープ1の端末に固定されたかご、bはワイヤロープ1の他端末に固定されたカウンターウエイト、cはワイヤロープ1の移動を制御する駆動シーブ、dは駆動シーブcを駆動するモータ、eはそらせ用のガイドシーブである。
【0012】
図1(b)は本発明によるワイヤロープを適用したクレーンを示しており、fは走行体、gはブーム、hは巻き上げドラム、iはブーム伏仰ドラムであり、本発明ロープ1は巻き上げドラムからブーム頂のシーブjを経由して導かれており、また別の本発明ロープ1はブーム伏仰ドラムiからブームgに連結されている。
図示するものはジブクレーンであるが、クレーンとしては、天井クレーンジブクレーン、橋形クレーン、アンローダ、さらにトラッククレン、ホイストクレーン、クローラクレーンなどの各種移動式クレーンが対象とされる。
【0013】
図2と図3は前記ワイヤロープ1の一例を拡大して示しており、全体として(7×7)+7×(3+9+15)の構造、詳しくは、{(1+6)+6×(1+6)}+8×{(3+9+15)}の構造式のストランドタイプロープからなっている。
ワイヤロープ1は、中心の芯シェンケル2と、これを囲むように配置された複数本(図面では8本)の側ストランド3とを有し、しかも前記芯シェンケル2は高分子化合物被覆5が施され、側ストランド3間を含む外側には全体に高分子化合物からなる外装被覆6が施され、断面が円形状をなしている。
【0014】
前記芯シェンケル2は、図3のように、中心の芯ストランド2aのまわりに複数本(図面では6本)の側ストランド2bを配して撚合してなり、この状態で全体に高分子化合物被覆5が施されている。
各側ストランド3は、複層すなわちこの例では芯部(第1層)3aと、これのまわりに複数本の素線を配して撚合することにより構成した第2層3bと、該第2層3bのまわりに複数本の素線を配して撚合した第3層3cとからなっており、各側ストランド3は個別的に高分子化合物被覆は施されていない。
【0015】
各部の構成を製作工程を加味して詳細に説明すると、芯シェンケル2の芯ストランド2aと側ストランド2bは、それぞれ所要本数たとえばこの例では7本の鋼素線を撚り合わせて構成されている。また、側ストランド3の各層3a,3b,3cはそれぞれ複数本この例では3本と、9本と15本の鋼素線を3工程で撚り合わせることにより構成されている。
【0016】
芯シェンケル2と側ストランド3における鋼素線の径(WR)は、外装被覆6を施す前のロープ径(DR)との関係で、15≦DR/WR≦100の範囲のものが使用される。
これは、15<DR/WRではシーブとの繰り返し曲げにより比較的早期に疲労限に達して安全性に問題が生ずるとともに短寿命になるためであり、DR/WR>100ではコスト高になるためである。さらに好適には、33≦DR/WR≦75である。
【0017】
鋼素線は、引張り強度280kg/mm2以上の特性を有することが好適である。その理由は細径化によっても十分な破断荷重を実現するためであり、引張り強度280kg/mm2未満ではこの目的を達成しがたいからである。かかる鋼素線は、一般的に、炭素含有量が0.80wt%以上の炭素鋼線材を伸線することによって作られる。そして、鋼素線の表面には耐食性被覆層たとえば、亜鉛、あるいは亜鉛・アルミニウム合金めっき、黄銅めっきなどのいずれかが施されている。
【0018】
芯シェンケル2の芯ストランド2aは、図4(a)のように中心の芯素線200と、これと同等かあるいは相対的に径の細い多数の側素線200’から構成されている。同じく芯シェンケル2の側ストランド2bは、図4(b)のように、中心の芯素線201と、これと同等かあるいは相対的に径の細い多数の側素線201’から構成されている。かかる構成は、中心の芯素線200と側素線200’を一括して撚り合わせることにより得られる。
前記芯ストランド2aの撚り方向と側ストランド2bの撚り方向は同じ方向たとえばS方向となっている。
【0019】
側ストランド2bの芯素線201の直径は、好ましくは芯ストランド2aの芯素線200の直径よりも相対的に小さいことが好ましく、それにより、芯ストランド2aの直径d1を側ストランド2bの直径d2よりも適度に大きくしている。なお、「ストランドの直径」とはストランドを構成する外層の素線群の外接円を意味する。
【0020】
上記のように芯ストランド2aの直径d1を側ストランド2bの直径d2よりも大きくするのは、芯シェンケルを作ったときに、各側ストランド2b間に合成高分子化合物の浸透を許容する隙間を形成するためであり、その(d1−d2)/d2×100は、通常、約1.4〜6.8%程度が好ましい。
【0021】
上記のようにして得た1本の芯ストランド2aの周りに複数本(図面では6本)の側ストランド2bを配して撚り合わせる。この場合の撚りピッチは一般に仕上げシェンケル径の6〜9倍程度とし、撚り方向は芯ストランド2aおよび側ストランド2bの撚り方向と異なる方向すなわちこの例ではZ方向とする。これは製造が容易であり、工程の変動に対して型崩れが少ないからである。
以上により図5(a)のような素芯シュンケル2’が作られる。なお図では1つの側ストランドのみ素線を示し、他は省略している。そして本発明は、この素芯シュンケル2’を高分子化合物5にて被覆し、図5(b)のように高分子化合物被覆芯シェンケル2を形成する。
【0022】
この高分子化合物は、特性として、鉄鋼との接着性がよく、耐摩耗性、耐油性、耐水性、温度特性、耐侯性、柔軟性(耐ストレスクラック性)を有していることが好ましく、代表的な高分子化合物としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、弗素樹脂などの汎用合成樹脂が挙げられるが、そのほかエンジニアリングプラスチックを使用してもよい。あるいは、ジエン系、オレフイン系、ウレタン系などのゴムであってもよい。
【0023】
前記高分子化合物被覆5の形成方法は任意であり、溶解物中に素芯シュンケル2’を連続的に通過させてもよいし、素芯シュンケル2’の周りに押出し機により押し出してもよい。高分子化合物被覆5は、素芯シュンケル2’と側ストランド3とのフレッティングを防止するとともに、最終の外装高分子化合物被覆6の形成時に側シェンケル相互間に高分子化合物が充填されるのに十分なスペースを確保することができるよう、被覆厚さtを設定する。このとき、側シェンケル間のスペースは、0.3〜1.5mm程度が望ましい。
高分子化合物は各側ストランド2b,2b間の隙間を通して芯ストランド2aの表面に達することにより、緩衝性能のある膜を形成する。高分子化合物の一部50は側ストランド2bの素線間にも浸透し、また芯ストランド2aの素線間にも浸透していてもよい。
【0024】
次に、側ストランド3について説明すると、基本的には複層構造であれば構造を問わず、また製作法も問わないが、いま、一例を挙げると、図6(a)(b)(c)はかかる側ストランド3の1本の製作工程を例示している。側ストランド3の芯部(第1層)3aは、径が同等の複数本(図面では3本)の素線300から構成されており、それら素線径は芯シュンケル2の芯ストランド2aの素線と同等かまたは適度に小さく側ストランド2bよりも適度に大きい。第1工程としてまず図6(a)のように、複数本の素線300を所定の撚りピッチで撚り合わせる。
【0025】
次いで、図6(b)のように、第2工程として、前記芯部(第1層)3aの周りに芯部素線と同等または適度に細い径の複数本(図面では9本)の側素線301を配して所定の撚りピッチで撚り合わせて第2層3bを形成する。ついで、第3工程として、第1層+第2層からなる撚合体の外周に、第2層の素線と同等かまたは適度に細い所要数(図面では15本)の素線302を配し、所定の撚りピッチで撚り合わせ、これで図6(c)に示す側ストランド3を得る。この場合、第1工程の撚り方向と第2工程の撚り方向は同一(たとえばZ方向)であるが、第3工程の撚り方向は逆方向(たとえばS方向)とされる。
【0026】
この側ストランド3の外径D2は被覆芯シェンケル2の外径D1よりも小さく、好ましくは、素芯シェンケル2’の外径よりも小さくする。それにより側ストランド3,3間に後述する外装被覆層6のための高分子化合物を浸透させることができ、好都合である。
【0027】
次に、高分子化合物被覆5を有する芯シェンケル2の周りに、側ストランドル3を複数本(図示するものでは7本)配し、それらを撚り合わせる。この最終撚りの撚りピッチは撚り構造と素線径に応じて適宜選択するが、通常、仕上げロープ径の6〜9倍程度とし、かつ撚り方向を芯シェンケル2の撚り方向と一致させて行なう。たとえばこの例ではZ方向とする。このようにして図7に示す素ロープ1’が完成する。
【0028】
素ロープ1’は最終的に全体を高分子化合物によって被覆し、外装被覆層6を形成する。この外装被覆層6は、側ストランド3,3間のフレッティングを防止するとともに、シーブとの摩擦係数の調整を図るためのもので、高分子化合物は耐摩耗性、耐侯性がよく、適度の弾性を持ち摩擦係数が比較的高い特性を有し、かつ加水分解しない特性であることが好ましい。その例としては、ポリウレタン系、エーテル系のポリウレタンエラストマーなどの合成樹脂、あるいはゴムが挙げられる。
【0029】
高分子化合物600は側ストランドの外径(外接円)から所定の厚さTの層601を形成する。好適には、各側ストランド3,3間の隙間を通して芯シュンケル2の表面の高分子化合物被覆5と接着される。外装被覆層6の被覆厚さTは、これがあまり薄いと耐久性に乏しくまた摩耗寿命も低下する。厚すぎるとロープの柔軟性が損なわれるばかりかロープ径が大きくなり、強度効率が低下するので、通常0.3〜1.0mmとすることが好ましい。外装被覆層6の形成方法はたとえば押出し機を使用するなど任意である。
【0030】
なお、製造上は、素ロープ1’を撚る工程で千鳥状に配置した3本程度のロール間に側ストランド3を通過させて螺旋状の型付けを行い、ボイス通過後、ならしロールを通すことによって行われる。型付率は0.60〜0.90程度より好ましくは、0.65〜0.85で行なえばよい。ここで、型付率とは、ロープ径とロープからストランドを取り出したときの、ストランドの高さの比をいう。この工程により、ロープの回転性を防止するとともにばらけを防止し、かつ側ストランド間の隙間を均等で最適なものに調整することができる。
【0031】
図8〜図13は本発明の別の実施例を示しており、(7×19)+10×(37)とした本発明ロープを示している。詳しくは、構造式は、{(1+6)+12}+6×{(1+6)+12)}+10×{(1+6)+12+18}としている。
この実施例も第1実施例と同じく被覆芯シェンケル2と、これを囲む複数本(図面では10本)の側ストランド3とを有し、しかも前記芯シェンケル2は高分子化合物被覆5が施され、側ストランド3間を含む外側には全体に高分子化合物からなる外装被覆6が施され、断面が円形状をなしている。
【0032】
芯シェンケル2の芯ストランド2aは、図9(a)のように、中心の1本の芯素線200と、これよりも相対的に径の細い多数の側素線201,202から構成されている。かかる構成を得るには、芯素線200と側素線201,202を一括して撚り合わせてもよい。しかし、好ましくは回転性が生じないようにするため、2工程撚りにて構成する。
【0033】
図9(a)(b)はこの芯シェンケル2の芯ストランド2aの製作工程を示しており、(a)のように、一本の芯素線200の周りにこれよりも相対的に径の細い複数本(図面では6本)の側素線201を配して所定の撚りピッチで撚り合わせる第1工程により1+nからなる内層20aを作り、(b)のように、内層20aの外周に複数本(図面では12本)の側素線202を配して所定の撚りピッチで撚り合わせる第2工程により外層20a’を形成している。この場合、第1工程の撚り方向と第2工程の撚り方向は同一方向(たとえばZ方向)とする。図9において素線の断面中の符号は撚り方向を示している。
なお、内層20aの側素線201と外層20a’の側素線202は同等の径としているがこれに限られるものではない。
【0034】
図10(a)(b)は芯シェンケル2の各側ストランド2bの製作工程を示しており、一本の芯素線203の周りにこれよりも相対的に径の細い複数本(図面では6本)の側素線204を配して所定の撚りピッチで撚り合わせる第1工程により1+nからなる内層20bを作り、この内層20bの外周に外層となるべき複数本m(図面では12本)の側素線205を配して所定の撚りピッチで撚り合わせる第2工程{(1+n)+m}により形成している。この場合、第1工程の撚り方向と第2工程の撚り方向は同じ方向(たとえばS方向)とする。撚りピッチは芯ストランド2aと側ストランド2bとも同じである。
【0035】
側ストランド2bの芯素線203の径は、好ましくは芯ストランド2aの芯素線201の直径よりも相対的に小さく、たとえば、芯ストランド2aの側素線201,202と同等とする。側ストランド2bの側素線204,205の径は芯ストランド2aの側素線201,202の径よりも小さく、それにより、芯ストランド2aの直径d1を側ストランド2bの直径d2よりも適度に大きくしている。なお、「ストランドの直径」とはストランドを構成する外層の素線群の外接円を意味する。
【0036】
上記のように芯ストランド2aの直径d1を側ストランド2bの直径d2よりも大きくするのは、芯シェンケルを作ったときに、各側ストランド2b間に高分子化合物の浸透を許容する隙間を形成するためであり、その(d1−d2)/d2×100は、通常、約1.4〜6.8%程度である。
【0037】
上記のようにして得た1本の芯ストランド2aの周りに複数本(図面では6本)の側ストランド2bを配して撚り合わせる。この場合の撚りピッチは一般に仕上げシェンケル径の6〜9倍程度とし、撚り方向は芯ストランド2aの撚り方向と同じにする。これは製造が容易であり、工程の変動に対して型崩れが少ないからである。
以上により図11(a)のような素芯シュンケル2’が作られる。そして本発明は、この素芯シュンケル2’を高分子化合物にて被覆し、図11(b)のように高分子化合物被覆5を形成し、被覆芯シェンケル2とする。高分子化合物は、第1実施例に説明したものと同じであり、被覆方法も同様である。
【0038】
高分子化合物は各側ストランド2b,2b間の隙間を通して芯ストランド2aの表面に達することにより、緩衝性能のある膜を形成する。高分子化合物の一部は側ストランド2bの素線間にも浸透し、また芯ストランド2aの素線間にも浸透していてもよい。
【0039】
次に、側ストランド3の例について製造工程とあわせて説明すると、側ストランド3は複層たとえば、芯部(第1層)3aとこれを囲む第2層3bと、これを囲む第3層3cからなっている。
図12(a)(b)(c)はかかる側ストランド3の製作工程を示しており、第1工程として、図12(a)のように、1本の中心素線300の周りにこれよりも適度に径の細い複数本(図面では6本)の素線301を配して所定の撚りピッチで撚り合わせ、第1層3aを得る。
【0040】
次いで、図12(b)のように、第2工程として、前記芯部(第1層)3aの周りに複数本(図面では12本)の側素線302を配して所定の撚りピッチで撚り合わせて第2層3bを形成する。側素線302の径は第1層3aの素線301と同等の太さであってもよい。
ついで、第3工程として、第1層+第2層からなる撚合体の外周に、第2層の素線302より適度に細い所要数(図面では18本)の素線303を配し、所定の撚りピッチで撚り合わせ、これで図12(c)に示す側ストランド3を得る。この場合、第1工程の撚り方向ないし第3工程の撚り方向はすべて同一(たとえばS方向)とされる。
【0041】
この側ストランド3の外径D2は被覆芯シェンケル2の外径D1よりも小さく、さらには、素芯シェンケル2’の外径よりも小さくする。それにより側ストランド3,3間に後述する外装被覆層6のための高分子化合物を浸透させることができ、好都合である。
なお、側ストランド3の第1層3aの素線径と芯シェンケル2の芯ストランド2aの素線径との関係は、素線200と300、素線201と301をおのおの同等としてよい。側ストランド3の第2層3bの素線302は芯シェンケル2の芯ストランド2aの素線202と同等でよい。さらに、側ストランド3の第3層3cの素線303は芯シェンケル2の側ストランド2bの素線,204,205と同等でよい。
【0042】
次に、高分子化合物被覆5を有する芯シェンケル7の周りに側ストランド3を複数本配し、それらを撚り合わせて本発明ロープとする。この最終撚りの撚りピッチは撚り構造と素線径に応じて適宜選択するが、通常、仕上げロープ径の6〜9倍程度とし、かつ撚り方向を芯シェンケル2の撚り方向と一致させて行なう。たとえばこの例ではZ方向とする。このようにして図13に示す素ロープ1’が完成する。
【0043】
素ロープ1’は最終的に全体を高分子化合物によって被覆し、外装被覆層6を形成する。高分子化合物とその被覆法は第1実施例に述べたとおりであり、高分子化合物600は側ストランドの外径(外接円)から所定の厚さTの層601を形成する。好適には、各側ストランド3,3間の隙間を通して芯シュンケル2の表面の高分子化合物被覆5と接着される。また、外装被覆層6の被覆厚さTは、これがあまり薄いと耐久性に乏しくまた摩耗寿命も低下する。厚すぎるとロープの柔軟性が損なわれるばかりかロープ径が大きくなり、強度効率が低下するので、通常0.3〜1.0mmとすることが好ましい。外装被覆層6の形成方法はたとえば押出し機を使用するなど任意である。
【0044】
なお、上記実施例は本発明の数例であり、これに限定されるものではなく、被覆芯シェンケル2の周りに複層の側ストランドを形成し、その側ストランドの外周を含む全体を高分子化合物で被覆した構造のワイヤロープをすべて含む。
芯シェンケルの構成および側ストランドの構成は、実施例のもののほか、(1+6)+6×(1+6)+8×(1+6+12)などを含む。
【0045】
さらに本発明において、芯シェンケルや側ストランドの撚り形式は、多層撚り、平行撚り(各層同一撚りピッチ)のいずれも含んでいる。
多層撚りの例をあげると、次のとおりである。
▲1▼{(1+6)+6×(1+6)}+8×(3+9+15)
▲2▼(1+6+12)+6×{(1+6+12)}+10×{(1+6+12+18)
▲3▼{(1+6)+6×(1+6)}+8×(1+6+12)
▲4▼(1+6+12)+6×(1+6+12)
▲5▼(1+6+12+18)+6×(1+6+12+18)
【0046】
平行撚りの例を挙げると、次のとおりである。
▲1▼{(1+6)+6×(1+6)}+8×(27)
▲2▼{(1+6+12)+6×{(1+6+12)}+10×(37)
▲3▼{(1×19)+6×(19)}+10×(37)
▲4▼{(1+6)+6×(1+6)}+8×(19)
▲5▼(1×19)+6×(19)
▲6▼(1×37)+6×(37)
▲7▼{(1+6)+6×(1+6)}×6or8{S(19),W(19),Fi(25)}
このような平行撚り形式とした場合、内外層の素線が互いに相接して線接触の状態となり、ストランドの締りがよいため形崩れを起しにくく、またストランドの内部摩耗が少なく、さらに素線間の空隙が少なく有効断面積が大きくなるので、切断荷重が大となる利点がある。
【0047】
実施例のものにおいて、芯シェンケル2の撚り方向と側ストランド3の撚り方向、芯シェンケル2のストランド2a,2bの撚り方向、側ストランド3の各層3a,3b,3cの撚り方向は上記説明の方向に限られない。
【0048】
【実施例の作用】
本発明によるワイヤロープの特性を述べると、伸びが4〜6%と少ないためエレベータ用や、クレーン用などの荷役機械用として適切である。可撓性は800〜1800であるためかなり曲げやすい。弾性係数は従来の繊維芯タイプが40000〜60000N/mm2であるのに対して、74000N/mm2以上であり、これもエレベータ用や荷役用のロープとして好適な特性である。S曲げ疲労試験においては、D/d=20、SF=10すなわち計算破断荷重の1/10の荷重でのテストの条件で従来の繊維芯タイプが20000〜40000回であるが、本発明ロープは450000回を越えるきわめて高い耐疲労性を示す。
【0049】
本発明によるロープは、直径が小さな高強度鋼線材からなる素線を多数本撚り込むことにより芯シュンケル2と側ストランド3を構成しているので、要求強度を実現しつつロープの径を細くして軽量化することができ、さらに良好な疲労性を実現し得るため、ドラムやシーブ4の径を小さくすることができる。すなわちたとえば被覆も含めてロープ重量を従来比で20%以上軽くすることができるため、図13(a)のようにシーブ4の径SDを従来比の50%以下とすることができる。また、ドラムやシーブ4の小型化によりこれを駆動するモーター類のトルクを小さくすることができるので、寸法を小さくすることができる。またロープを軽量化することができるので、モーター類の容量も小さいものにすることができ、クレーンに適用した場合には、クレーン本体を小型化することができる。ドラムやシーブの径を極限まで小さくしなければ、ロープの長寿命化を図ることができる。
【0050】
また、芯シュンケル2に高分子化合物被覆5を施して外径を増径することにより、側ストランド相互間に隙間を形成することができ、また、全体被覆をするときに前記側ストランド相互間の隙間から高分子化合物が内部に入りやすくなる。そして、芯シュンケル2の径を変えることなく被覆径すなわち高分子化合物被覆5の厚さを変えてやるだけで、側ストランド相互間の隙間寸法を容易にコントロールすることができる。
【0051】
このように芯シュンケル2が高分子化合物被覆5を有し、その高分子化合物被覆9の周りに側ストランド3を配して撚合しているので、芯シュンケル2と側ストランド3とがメタルタッチせず、フレッティングが防止されるので、ロープ寿命を向上させることができる。また、外装被覆層6によりロープ表面を被覆しており、ロープがシーブやドラムと金属接触しないので両者の摩耗が低減され、これによってもロープやシーブやドラムの長寿命化を図ることができる。
【0052】
また、芯シュンケル2が高分子化合物被覆5の分だけ増径しているので、スペーサとしての機能を発揮し、側ストランド3,3に外装被覆層10の高分子化合物が浸透充填しやすい隙間を形成することができる。このため、側ストランド3,3間のフレッティングが緩和され、疲労性を向上することができる。
【0053】
また、外装被覆層6として使用する高分子化合物の選択により摩擦係数を制御することができ、シーブ4の溝は図14(a)に示すような丸溝で足りることになるので、コストを低減することができる。それでいてモータの回転によるシーブの回転運動をロープに正確に伝えて、シーブの回転運動と荷重物の上下運動をよく連動させ、正確な位置制御を行なえるので、乗り心地をよくすることができる。またロープ断面が円形状であるため、自転やねじれの影響(片荷重による部分断線)が軽減される。
さらに、無給油とすることができるので、その手間が省けるとともにドラムやシーブに油が付着したり、周辺に飛散することがなくなるので機械室やクレーンなどの機械を清潔にすることができる。
【0054】
また、芯シェンケル2は芯ストランド2aの外径が側ストランド2bの外径よりも大きく構成され、また側ストランド3は芯シェンケル2と撚り方向が異なっているので、不都合なロープの回転性を排除することができ、これにより高分子化合物被覆5や外装被覆層6の接着関係が安定し、耐久性を高いものとすることができる。
【0055】
本発明はまた側ストランド3を用いたストランド形であるため、ケーブルレイド形のロープ(シェンケルタイプ)と比べて、次のような特徴がある。
▲1▼ケーブルレイド形のロープは基本的に側が6つのシェンケルからなっているため、軸線と直角方向の断面形状が6角形に近い形状となるが、ストランド形は使用するストランド数が多くなるので、ロープの断面形状をより丸いものとすることができる。それにより、出来上がったロープの使用時に、側ストランドとシーブ間に介在する外装被覆6にかかる面圧を緩和することができる。その結果、外装被覆6とこれを有するロープの長寿命化を実現できるとともに、外装被覆6の変形が少なくなるため、エレベータに適用した場合に振動を減少することができる。
【0056】
▲2▼ケーブルレイド形のロープよりも鋼材断面密度を高くすることができるので、ロープ径が小さくてもケーブルレイド形ロープと同一強度を得ることができ、これにより、ロープを巻収するドラムを小さくすることができ、ハンドリング性がよくなる。また、外装被覆を同じ厚さにした場合にも高分子化合物の量を少なくすることができ、コストを削減できる。ロープを同一寿命に設定した場合、シーブ径の小型化と動力系の小型化を図ることができる。
【0057】
▲3▼側ストランドをフライヤー数の多い撚線機で一度に撚ることができるので、ケーブルレイド形に比較して撚り線工程を減少させることができる。
▲4▼ケーブルレイド形の側シェンケルの場合のように複数本のストランドを作り、それらさらに撚り合わせるのでないため、各ストランドのフレッティングを減少させることができ、これにより摩耗による寿命低下を改善することができる。 ことに平行撚りあるいはこれに準ずるものととすることによりフレッティングをさらに減じて寿命を伸ばすことができる。
【0058】
【実施例】
実施例1
(1)素線
原料として直径5.5mmの高炭素鋼線材(C:0.82%、Si:0.21%、Mn:0.48%、残部鉄及び不可避的不純物)を用いた。
この鋼線材を次の工程で伸線して素線を得た。
1)酸洗い後、10パス程度で冷間伸線を行って線径2.0mmとし、これを980℃程度で空気パテインティングし、酸洗い後、4パス程度の冷間伸線を行って線径1.65mmとし、980℃程度で加熱後、550℃程度で鉛パテンティングを行い、酸洗い、湯洗い後に電気メッキ法にて亜鉛めっきを施し、水性タイプ潤滑剤を使用して20パス程度の湿式伸線を行い、最終径0.290mm〜0.310mmの素線を得た。各素線の特性は、引張り強さ320kg/mm2、破断時伸び2%であった。
【0059】
(2)芯シェンケルの製作
2−1)芯シェンケルの芯ストランドの製作工程
第1工程:1+6
径0.310mmの芯素線1本と、径0.310mmの6本の側素線を、撚りピッチ15.0mmにてS方向に撚り合せ、外径0.93mmの芯ストランドを作った。
【0060】
2−2)芯シェンケルの側ストランドの製作工程
第1工程:1+6
径0.290mmの芯素線1本と、径0.290mmの6本の側素線を、撚りピッチ15.0mmでS方向に撚り合せ、外径0.87mmの側ストランドを得た。
【0061】
2−3)芯シェンケル撚り工程(1×12)+6×(1×12)
前記2−1)で得た1本の芯シェンケル芯ストランドの回りに、2−2)で得た6本の芯シェンケル側ストランドを配し、撚りピッチ22.00mmでZ方向に撚り合せ、外径2.67mmの芯シェンケルを得た。
【0062】
(3)芯シェンケルの被覆
溶融ポリエチレンをエクスチュルーダにて押出し、前記芯シェンケルに0.30mmの厚さで被覆し、仕上げ径3.27mmの樹脂被覆芯シェンケルを得た。
【0063】
(4)側ストランドの製作
4−1)第1工程:1×3
径0.300mmの3本の素線を撚りピッチ8.0mmでZ方向に撚り合わせ、外径0.65mmの芯部(第1層)を得た。
4−2)第2工程:第1層+第2層
前記第1層の周りに、径0.300mmの9本の素線を配し、撚りピッチ16.0mmでZ方向に撚り合せ、外径1.25mmの複層撚合体を得た。
【0064】
4−3)第3工程:第1層+第2層+第3層
前記第2層の周りに径0.300mmの素線を15本配し、撚りピッチ22.0mmでS方向に撚り合わせ、径1.85mmの側ストランドを得た。
【0065】
(5)ロープ撚り工程
チューブラー型撚線機を使用し、前記被覆芯シェンケルの周りに、側ストランドを8本を配し、ピッチ50.00mm、撚り方向Zにて撚り合せ、外径6.97mmの素ロープを得た。
【0066】
(6)型付けおよびならし
撚線機に直径が8.0mmの3本のロールを千鳥状に配置した型付装置を配し、ボイスの下流に直径が50mmの上下で対をなす9+10組のならしロールを配しておき、型付率平均70%程度の型付けとならしを行なった。
【0067】
(7)全体被覆
型付けおよびならしを施した素ロープに溶融ポリウレタンをエクスチュルーダにて0.50mmの厚さに被覆し、径7.97mmの仕上げロープを得た。得られたロープの鋼材断面密度は37.2%、表面の摩擦係数(μ)は0.3、破断荷重は40kNであった。
【0068】
本発明ロープ3本を、かごとカウンターウエイトの重量2tonの模擬エレベータに使用したところ、径150mm、溝3個で溝R5.25mmの丸溝付きシーブを使用して、安全率10で円滑に運転することができた。
比較のため、素線径0.475〜0.955mmの低炭素鋼素線(C:0.42wt%)を用いた比較ロープ:構造8×S(19)、径12.5mm、強度63.5KN×3本を作成し、前記模擬エレベータに使用したところ、シーブ径500mm、シーブ溝3個、溝R6.2mmアンダーカット付きでなければ、円滑な運転ができなかった。
【0069】
実施例2
本発明を適用して図8に示す(7×19)+10×(37)構造のロープを製作した。素線としては、0.278〜0.286mmの範囲の亜鉛めっき付ワイヤ(引張り強さおよび伸び特性は実施例1と同じ)を503本使用した。
【0070】
(1)芯シェンケルの製作
1−1)芯シェンケルの芯ストランドの製作工程
第1工程:1+6
径0.286mmの芯素線1本と、径0.282mmの6本の側素線を、撚りピッチ9.0mmにてZ方向に撚り合せ、外径0.85mmの内層を作った。
第2工程:(1+6)+12
前記内層(1+6)の周りに外層用の径0.282mmの側素線12本を配し、撚りピッチ14mmでZ方向で撚り合せ、外径1.41mmの芯ストランドを得た。
【0071】
1−2)芯シェンケルの側ストランドの製作工程
第1工程:1+6
径0.282mmの芯素線1本と、径0.278mmの6本の側素線を、撚りピッチ9.0mmでS方向に撚り合せ、外径0.84mmの内層を得た。
第2工程:(1+6)+12
内層(1+6)の周りに、外層用の径0.278mmの12本の側素線を配し、撚りピッチ14.0mmでS方向に撚合せ、外径1.40mmの側ストランドを得た。
【0072】
1−3)芯シェンケル撚り工程{(1+6)+12}+6×{(1+6)+12} 前記1−1)で得た1本の芯シェンケル芯ストランドの回りに、2−2)で得た6本の芯シェンケル側ストランドを配し、撚りピッチ30.0mmでZ方向に撚り合せ、外径4.21mmの芯シェンケルを得た。
【0073】
(2)芯シェンケルの被覆
溶融ポリエチレンをエクスチュルーダにて押出し、前記芯シェンケルに0.30mmの厚さで被覆し、仕上げ径4.81mmの樹脂被覆芯シェンケルを得た。
【0074】
(3)側ストランドの製作
3−1)第1工程:1+6
径0.286mmの1本の芯素線のまわりに0.282mmの6本の側素線を配し、撚りピッチ16.0mmでS方向に撚り合わせ、外径0.85mmの芯部(第1層)を得た。
3−2)第2工程:第1層+第2層
前記第1層の周りに、径0.282mmの12本の素線を配し、撚りピッチ16.0mmでS方向に撚り合せ、外径1.41mmの複層撚合体を得た。
【0075】
3−3)第3工程:第1層+第2層+第3層
前記第2層の周りに径0.278mmの素線を18本配し、撚りピッチ16.0mmでS方向に撚り合わせ、径1.97mmの側ストランドを得た。
【0076】
(4)ロープ撚り工程
チューブラー型撚線機を使用し、前記被覆芯シェンケルの周りに、側ストランドを10本を配し、ピッチ65.00mm、撚り方向Zにて撚り合せ、外径径8.75mmの素ロープを得た。
【0077】
(5)型付けおよびならし
撚線機に直径が9.0mmの3本のロールを千鳥状に配置した型付装置を配し、ボイスの下流に直径が55mmの上下で対をなす9+10組のならしロールを配しておき、型付率平均70%程度の型付けとならしを行なった。
【0078】
(6)全体被覆
型付けおよびならしを施した素ロープに溶融ポリウレタンをエクスチュルーダにて0.50mmの厚さに被覆し、径9.75mmの仕上げロープを得た。得られたロープの鋼材断面密度は41.4%、表面の摩擦係数(μ)は0.3、破断荷重は64kNであった。
本発明ロープ3本を、かごとカウンターウエイトの重量2tonの模擬エレベータに使用したところ、径150mm、溝3個で溝R5.25mmの丸溝付きシーブを使用して、安全率10で円滑に運転することができた。
【0079】
【発明の効果】
以上説明した本発明によるときには、外装被覆前のロープ径(DR)との関係で素線径(WR)を15≦DR/WR≦100とした高強度鋼素線を使用したストランド形ワイヤロープにして、素線を撚り合わせて構成した芯ストランド2aの周りに複数本の側ストランド2bを配して撚り合わせかつ外周に高分子化合物被覆5を施した1本の被覆芯シェンケル2の周りに、素線を撚り合わせた芯部3aの周りに複数本の側素線301,302,303を配して複層に撚り合わせて構成されしかも前記被覆芯シェンケル2よりも外径が相対的に小さい側ストランド3を複数本配して撚合し、かつ前記側ストランド3間を含む外側には全体に高分子化合物からなる外装被覆6が施され断面が円形状をなしているため、次のようなすぐれた効果が得られる。
【0080】
1)外装被覆前のロープ径(DR)との関係で素線径(WR)を15≦DR/WR≦100とした引張り強度280kgf/mm2以上の高強度材質の細径の素線を多数撚り込んでいるため、疲労性が良好な細径かつ軽量で要求強度を満足するロープとすることができ、それによりシーブ、ドラム、モータ類を小型化できて、省スペースを図ることができる。
【0081】
2)芯シェンケル2の周りだけでなく、側ストランド3間を含む外側に全体に高分子化合物からなる外装被覆6が施され断面が円形状をなしており、この部分がシーブやドラムと接触するので、ロープとドラム、シーブの摩耗を防止することができるとともに、被覆高分子化合物により摩擦係数が高くなるので、シーブやドラムの特殊な溝加工が不要になり、またシーブに対するロープのダブルラップが不要になる。特にダブルラップが不要になることでシーブ軸に作用する力を軽減できるため、軸や軸受け小型化することができ、これによってもコストダウンを図ることができる。
【0082】
3)芯シェンケル2が高分子化合物で被覆されているため、側ストランド3とのフレッティングが緩和され、ロープ寿命を向上することができるとともに、芯シェンケル2が高分子化合物被覆5により増径され、かつ側ストランド3の外径が芯シェンケル2の被覆前のものそれより相対的に小さいので、側ストランド3,3間に隙間を形成することが可能となり、全体を高分子化合物で被覆したときにその高分子化合物が側ストランド3,3間に充填されえる。このため、側ストランド間3,3のフレッティングが緩和され、疲労性を改善し、ロープの寿命を向上することができる。
【0083】
4)芯シェンケル2の径を変えることなく、高分子化合物の被覆厚さを変えるだけで側ストランド間の高分子化合物の侵入隙間を容易にコントロールすることができるので、全体被覆高分子化合物の性質などに即応することができる。これにより生産性を向上することができる。
【0084】
5)芯シェンケル2と側ストランド3とを組合わせたストランド形ロープであるため、第1に鋼材断面密度を高くすることができ、これによりロープ径が小さくても高い強度を得ることができ、それによりハンドリング性がよくなり、被覆材としての高分子化合物の量を少なくすることができ、またシーブ径や動力系を一段と小型化することができる。第2に側ストランド3を使用しているためその断面形状を丸い形状とすることができ、これによりシーブとの間に介在する外装被覆にかかる面圧を緩和することができ、それにより外装被覆の長寿命化を実現できるとともに外装被覆の変形が少なくなるため、エレベータに適用した場合に振動を減少することができる。第3に側がシェンケルタイプ(ストランドをさらに撚り合わせたたもの)ではなくストランドタイプであるため、フレッティングを減少させることができ、摩耗による寿命低下を改善することができる。
【0085】
6)さび止めのための給油を省略することができるため、作業性がよくなるとともに、シーブ、ドラムあるいは周辺への油の付着や飛散がなくなり、ロープ使用機械や使用環境を清潔なものに改善することができる。
【0086】
請求項2によれば、前記請求項1の特性によりシステムの省スペースやコストダウンが可能な実用性の高いエレベータ用ロープを提供できるというすぐれた効果が得られる。
【0087】
請求項3によれば、前記請求項1の特性によりシーブ径、ドラム径が小型で、摩耗が少なく、長寿命で低コストのクレ−ン類用のロープ提供できるというすぐれた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明のロープを適用したエレベータの一例を模式的に示す説明図、(b)は本発明のロープを適用したクレーンの一例を示す説明図である。
【図2】本発明ロープの第1実施例を示す部分切欠斜視図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う拡大断面図である。
【図4】(a)は第1実施例における芯シェンケルの芯ストランドの断面図、(b)は同じく芯シェンケルの側ストランドの断面図である。
【図5】(a)は第1実施例における素芯シェンケルの断面図、(b)は被覆芯シェンケルの断面図である。
【図6】(a)は第1実施例における側ストランドの第1層の断面図、(b)は第2層撚合状態の断面図、(c)は第3層を撚合した側ストランドの断面図である。
【図7】(a)は第1実施例における素ロープの断面図である。
【図8】本発明によるワイヤロープの第2実施例を示す拡大断面図である。
【図9】(a)は第2実施例の芯シェンケルの芯ストランドの製作第1工程の断面図、(b)は第2工程により得られた芯ストランドの断面図である。
【図10】(a)は第2実施例の芯シェンケルの側ストランド製作第1工程の断面図、(b)は第2工程により得られた側ストランドの断面図である。
【図11】(a)は第2実施例の素芯シェンケルの断面図、(b)は第2実施例の被覆芯シェンケルの断面図である。
【図12】(a)は第2実施例の側ストランドの第1層を示す断面図、(b)は第2層製作状態の断面図、(c)は完成した側ストランドの断面図である。
【図13】第2実施例の素ロープの断面図である。
【図14】(a)は本発明ロープが使用するシーブの側面図、(b)は従来ロープが使用するシーブの側面図である。
【符号の説明】
1 ワイヤロープ
2 芯シェンケル
2’ 素芯シェンケル
2a 芯シェンケルの芯ストランド
2b 芯シェンケルの側ストランド
3 側ストランド
3a 側ストランドの第1層
3b 側ストランドの第2層
5 高分子化合物被覆
6 外装被覆
Claims (3)
- 外装被覆前のロープ径(DR)との関係で素線径(WR)を15≦DR/WR≦100とした引張り強度280kgf /mm 2 以上の高強度鋼素線を使用したストランド形ワイヤロープにして、素線を撚り合わせて構成した芯ストランド2aの周りに複数本の側ストランド2bを配して撚り合わせかつ外周に高分子化合物被覆5を施した1本の被覆芯シェンケル2の周りに、素線を撚り合わせた芯部3aの周りに複数本の側素線301,302,303を配して複層に撚り合わせしかも前記被覆芯シェンケル2の被覆前のものよりも外径が相対的に小さい側ストランド3を複数本配して撚合し、かつ前記側ストランド3間を含む外側には全体に高分子化合物からなる外装被覆6が施され断面が円形状をなしていることを特徴とするワイヤロープ。
- ワイヤロープがエレベータ用ロープである請求項1に記載のワイヤロープ。
- ワイヤロープがクレーン用ロープ類である請求項1に記載のワイヤロープ。
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