JP2002293542A - 酸化チタン薄膜形成塗布液及びその製造方法並びに酸化チタン薄膜担持基材 - Google Patents

酸化チタン薄膜形成塗布液及びその製造方法並びに酸化チタン薄膜担持基材

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 プラスチック、金属、セラミックス等各種基
材に塗布したときに、高い触媒活性と実用的な膜強度を
有する酸化チタン薄膜形成塗布液を提供することを目的
とする。 【 解決手段】 平均粒子径0.4〜1.5μm、比表面積50m
/g以上の酸化チタン粒子(A)0.2〜15重量%と、平均
粒子径200nm以下、比表面積200m/g以上の酸化チタン
粒子(B)0.05〜10重量%、及びシリカ化合物(SiOとし
て)(C)0.1〜5重量%を含有し、且つ(B)/((A)+
(B))×100=3〜25重量%、(C)/((A)+(B)+(C))=
5〜30重量%である酸化チタン薄膜形成塗布液により上
記課題を解決する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は酸化チタンの光触媒
効果を利用し、NOなどの有害物質除去、脱臭、防汚、
抗菌などに利用される酸化チタン薄膜形成塗布液及びそ
の製造方法並びに酸化チタン薄膜担持基材に関する。
【0002】
【従来の技術】酸化チタン光触媒は、紫外線を吸収して
おこる化学反応によりNOなどの有害物質除去、脱臭、
防汚、抗菌などの効果を示すことで知られている。とこ
ろで、光触媒効果を工業的に発現させるためには基材上
に光触媒薄膜を担持させることが必要である。ガラス、
金属、セラミクス、各種プラスチックなどの基材表面に
酸化チタンを付与する方法として、酸化チタン前駆体で
あるチタンアルコキシド、有機酸チタン、塩化チタンな
どのチタン塩などを塗布し、焼き付ける方法、チタニア
粉体やゾルとバインダーの混合物を塗布する方法などが
ある。主に防汚目的の酸化チタン薄膜の場合は、表面に
吸着する汚れ成分によって汚染度が左右されるため、膜
の表面は平滑で表面積が小さな方が好ましい。
【0003】ところが、脱臭などのより多くの物質を分
解する効果を期待する場合は、膜の比表面積を大きくす
る必要があり、そのためには膜構造を多孔質化すると同
時に膜を厚くする必要がある。それ故、主に脱臭などの
有機物分解を目的とする酸化チタン薄膜は、比較的大き
な酸化チタン粒子を使用した膜を形成させることが多
い。粒子径の大きな酸化チタンからなる薄膜は膜厚も必
然的に厚くなり、大きな粒子の充填構造には多くの隙間
ができ、結果として多孔質構造となる。ところで、それ
自身に自己結着性のない大きな粒子径の酸化チタン粒子
を、基材上に多孔質に担持固定化するためには、バイン
ダー成分を添加して低温あるいは常温で硬化させて担持
させることが必要となる。このとき、粒子の大きな酸化
チタンからなる膜は表面が粗く、多孔質構造であるため
に、膜強度が低くなり、容易に脱落したり傷ついてしま
うことが問題となっていた。膜強度を向上させる最も簡
単な方法はバインダー量を増加させることであるが、こ
の方法ではバインダー成分が酸化チタン粒子表面を覆っ
てしまい、膜強度が向上しても期待する触媒活性が減少
してしまうことになる。一方、酸化チタン粒子を小さく
すれば表面が平滑になって膜の強度は向上するが、膜の
収縮によるひび割れの発生等から、膜厚を薄くせざるを
得ず、有効に利用される表面積が低下するので、やはり
この方法でも触媒活性は減少する。上如の様に、大きな
触媒効果をねらって粒子径の大きな酸化チタンを基材上
に担持固定化するためには、膜強度と触媒効果を両立さ
せることが大きな課題となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、塗布液
中に粒子径の大きな酸化チタンと小さな酸化チタンを一
定の比で混在させることにより、より少ないバインダー
量で高い触媒活性と実用的な膜強度とを有する酸化チタ
ン薄膜担持基材が得られることを見いだし、課題を解決
するに至った。
【0005】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は平均粒子
径0.4〜1.5μm、比表面積50m/g以上の酸化チタン粒子
(A)0.2〜15重量%と、平均粒子径200nm以下、比表面積
200m/g以上の酸化チタン粒子(B)0.05〜10重量%、及
びシリカ化合物(SiOとして)(C)0.1〜5重量%を含有
し、且つ(B)/((A)+(B))×100=3〜25重量%、(C)
/((A)+(B)+(C))=5〜30重量%である酸化チタン薄
膜形成塗布液に関する。また本発明は、当該塗布液で処
理した酸化チタン薄膜担持基材に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において使用される酸化チタン粒子は二種類であ
る。一種類は平均粒子径0.4μm〜1.5μmの酸化チタン粒
子でアナターゼ型酸化チタンが好ましく利用される。平
均粒子径が0.4μmより小さい場合は膜の多孔質度が減少
して触媒効果が低くなり、1.5μmより大きい場合は、膜
の多孔質度が高くなり触媒効果は高くなるが、膜表面が
粗になるため膜強度が著しく低下し、膜が脱落したり、
チョーキングしたりすることから実用的には問題があ
る。実際には、触媒効果と膜強度を実用的に両立させる
ため0.6μm〜1.2μmの平均粒子径を有する酸化チタン粒
子を選ぶことが好ましい。アナターゼ型結晶の結晶化度
すなわち結晶子の大きさは特にこだわらないが、粉末X
線回折に供した時にアナターゼ型の回折ピークが認めら
れるものであればよい。このことから考えると結晶子径
としては5nm程度以上となる。粉末X線回折チャート上で
多少のルチル型酸化チタンが混入していても特に問題は
ない。
【0007】酸化チタン粉末の比表面積は100℃乾燥後
で50m/g以上である必要がある。これ以下では触媒効
果を得るために多孔質構造にしても、大きな触媒効果は
期待できない。これらの酸化チタンは市販のアナターゼ
型酸化チタン粉末を利用しても、硫酸チタンや塩化チタ
ンを熱分解あるいは中和分解して得られる含水酸化チタ
ンを利用してもよい。
【0008】粒子径の調製には中和分解法あるいは熱分
解法で得られた含水酸化チタンゲルをゾル化する際に水
熱処理などで粒子成長させても良いが、粉末の酸化チタ
ン粒子を乾式または湿式で粉砕する方法が最も簡便であ
る。この方法で得られた粒子はそれ自身が凝集体粒子で
あり、高い触媒効果を期待できる多孔質構造を形成しや
すい。粉末として塗布液に添加すると、短時間に沈殿し
てしまうので、沈降性の少ないスラリーやゾルの状態に
加工した状態で使用することが好ましい。必要な物性が
満たされていれば市販の酸化チタンスラリーやゾルを利
用しても良い。
【0009】塗布液中では粒子の凝集による粒子径の変
化および沈降を防ぐために、分散安定剤を共存させるこ
とができる。これらの分散安定剤は、粒子の調製時から
共存させることもできるし、塗布液を調製する際に添加
しても良い。
【0010】分散安定剤としては特にこだわらず各種の
薬剤が使用できるが、酸化チタンは中性付近では凝集し
やすいので、酸性またはアルカリ性の分散安定剤が好ま
しく使用される。酸性の分散安定剤としては硝酸、塩酸
等の鉱酸、カルボン酸、オキシカルボン酸、ポリカルボ
ン酸などの有機酸などが挙げられる。アルカリ性の分散
安定剤としてはカルボン酸、ポリカルボン酸類のアルカ
リ金属塩やアンモニア、1〜4級のアミン類およびそれ
らにヒドロキシ基を付加したアルカノールアミン類から
選ばれた一種類以上の化合物が好例として挙げられる。
特に、有機酸を利用すると、後述する有機溶媒との混和
性が良好である上に、pHが極端に低くならず且つ製造時
に使用する設備を腐食しにくいので好ましい。有機酸と
しては酢酸、シュウ酸、グリコール酸、乳酸、酒石酸、
リンゴ酸、クエン酸などが好ましく利用でき、これらの
中から選ばれた一種類以上の酸で分散安定化させること
ができる。
【0011】また塗布液の粘度を上げるために水溶性高
分子などの増粘剤等を添加することもできる。増粘剤と
しては多糖類やポリビニルアルコール、ポリエチレンオ
キシドなどが例示できる。塗布液中の酸化チタン量(TiO
)は0.2〜15重量%である。塗布液中での酸化チタン量
がこれより高きに過ぎる場合は、塗布液の粘度が高くな
りすぎてハンドリング性が悪くなり、逆に低くきに過ぎ
る場合は、塗布液の粘度が低下するため、粒子径の大き
な酸化チタンは沈降しやすくなる。塗布液の安定性を考
慮すると酸化チタン量 としては2〜10重量%がより好ま
しい。
【0012】一方、本発明で使用するもう一種類の酸化
チタン粒子は、平均粒子径200nm以下で且つ比表面積200
m/g以上の酸化チタン微粒子(以下、0.4μm〜1.5μmの
酸化チタン粒子と区別するため酸化チタン微粒子と云
う)である。これらの酸化チタン微粒子は多孔質な膜中
において、粒子同士の接触点を増加させることにより、
前述のより大きな粒子径を有する酸化チタン粒子による
多孔質構造の形成を妨げることなく、酸化チタン薄膜全
体の強度を向上させ、結果としてバインダー量が少なく
ても実用に耐える高強度な膜形成の役割を果たす。ま
た、これら酸化チタン微粒子自身も触媒効果を示すた
め、前記酸化チタン粒子の触媒効果を低下させることは
ほとんどない。
【0013】これらの酸化チタン微粒子は上述の様にい
わゆるバインダー効果を併せ持つ必要があることから、
粒子径が小さく、且つ比表面積が大きいことが必須であ
る。粒子径が200nm以上ではバインディング効果が少な
くなり、膜強度が低下するのでより好ましくは100nm以
下である方が良い。また、比表面積も大きな方が好まし
く、通常200m/g以上必要であり、特に膜強度を向上さ
せたい場合は250m/g以上のものが利用される。これら
酸化チタン微粒子の結晶化度には特にこだわらないが、
粉末X線回折で全く回折ピークを示さないようなアモル
ファス構造では触媒効果への寄与が乏しいため良くな
い。従って少なくとも乾燥粉の粉末X線回折においてア
ナターゼ型酸化チタンの回折ピーク位置にピークが確認
できる程度の結晶性があることが好ましい。
【0014】これら酸化チタン微粒子の製造方法に関し
ては特に制約されるものではないが、乾式では製造が困
難であるので、粉体の酸化チタンを分散剤または解こう
剤の存在下で湿式で微粉砕するか、チタン塩を分解、解
こうして得られるゾル状の酸化チタンを利用するのが適
当である。これらの酸化チタン微粒子は前記の粒子径の
大きな酸化チタン粒子と共に塗布液中に分散させる。基
本的に200nm以下の粒子径を有するコロイドレベルの微
粒子は沈殿しにくいが、塗布液中での粒子の沈降や凝集
を起こさないために独自の分散安定化剤を使用すること
ができるし、もう一方の酸化チタン粒子に用いている分
散安定剤を共有することもできる。
【0015】分散安定剤の種類は前述の酸化チタン粒子
の分散に例示したものから選ぶことができる。混合時に
ゲル化したり、粒子が凝集したりする事を防ぐために、
両者の安定化剤は酸性同士またはアルカリ性同士である
方が好ましい。肝要なことはそれぞれの粒子が塗布液中
で凝集沈殿などの変化を起こすことなく安定に存在する
ことである。塗布液中における酸化チタン微粒子量(TiO
)は0.05〜10重量%である。膜固形分全量に対する酸化
チタン微粒子の割合は3〜20重量%、全酸化チタン量に対
する酸化チタン微粒子の割合は3〜25重量%であることが
好ましい。酸化チタン微粒子の割合が下限以下ではバイ
ンダー量を増加させなければ十分な密着性、膜強度が得
られず、上限以上では膜構造の変化に伴い触媒効果が極
端に減少したり、膜がひび割れたりしやすくなる。
【0016】これらの酸化チタン粒子を基材に強固に密
着させるためには酸化チタン微粒子のみでは不十分で、
どうしてもバインダー成分が必要となる。本発明におけ
るバインダー成分として利用できるものはシリカ化合物
である。
【0017】シリカ化合物としては、4、3、2官能の
アルコキシシラン、およびこれらアルコキシシラン類の
縮合物、加水分解物、シリコーンワニス等が使用でき
る。3、2官能のアルコキシシランは、一般的にはシラ
ンカップリング剤と呼ばれることも多いが、本発明では
シリコン1分子に1つ以上のアルコキシ基が結合してい
る化合物をアルコキシシランと称する。具体的に例示す
ると4官能アルコキシシランとしてはテトラメトキシシ
ラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラ
ン、3官能のアルコキシシランとしてはメチルトリメト
キシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリ
メトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニル
トリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタ
クリロキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドプロ
ポキシトリメトキシシラン、グリシロプロピルメチルジ
エトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、
アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、メル
カプトプロピルトリメトキシシラン、2官能のアルコキ
シシランとしてはジメチルジメトキシシラン、ジメチル
ジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフ
ェニルジエトキシシランなどが挙げられる。縮合物とし
てはエチルシリケート40、エチルシリケート48、メチル
シリケート51等の4官能アルコキシシランの縮合物が挙
げられるがこれらに限定されるものではない。
【0018】また加水分解物としてはアルコキシシラン
類を有機溶媒と水及び触媒を使用して加水分解させたも
のが使用できる。これらのシリカ化合物の内、特にテト
ラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、エチルシリ
ケート40、エチルシリケート48、メチルシリケート51お
よびそれらの加水分解生成物であるアルコール性シリカ
ゾルは膜を強固に基材上に固定でき、且つ比較的安価で
あることから特に好適である。
【0019】アルコール性シリカゾルの製造方法は特に
限定されることはなく、塗布液内でアルコキシシランの
加水分解反応を行っても良いし、アルコキシシランを加
水分解または部分加水分解し、既にアルコール性シリカ
ゾルとなったものを本発明酸化チタン液に添加しても良
い。
【0020】これらバインダー液は塗布液に混合して使
用されるが、バインダーの混合に際し、バインダー液と
水系の酸化チタン分散液を混和、安定化させるために溶
媒を使用することができる。溶媒の種類としては、メタ
ノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの
一価低級アルコール、エチレングリコール、プロピレン
グリコールなどの多価アルコール類およびそれらのエス
テルであるセルソルブなどが好溶媒として利用できる。
これら溶媒の量は塗布液全体に対して5〜90重量%であ
る。
【0021】シリカ化合物、即ちバインダーは、酸化チ
タン含有塗布液に予め混合して貯蔵しておいてもよい
が、バインダー成分が通常の保存方法で劣化する場合
は、使用直前に酸化チタン含有塗布液と混合し使用する
こともできる。バインダーの量は多過ぎると塗布液の安
定性を阻害するだけでなく、酸化チタンの表面を覆って
しまい触媒効果を大幅に低下させるので、比表面積50m
/g以上の酸化チタン粒子を(A)、酸化チタン微粒子を
(B)、バインダーのシリカ混合物(SiO)を(C)とした場
合(C)/((A)+(B)+(C))=5〜30重量%であることが好
ましい。特に触媒効果を期待する場合は5〜20重量%であ
ると更に良い。塗布液中でのバインダー濃度は塗布液の
粘度や安定性に影響するのでSiOとして0.1〜5重量%が
よい。塗布液にバインダーを添加してから長時間貯蔵す
る場合にはさらに低く2.5重量%以下であることがより好
ましい。
【0022】本発明塗布液を塗布した結果、実用的な密
着性が得られれば、どのような基材にも塗布することも
できるが、一般的な基材としては、タイルや瓦、ガラス
等のセラミクス類、鉄、アルミ等の金属類、アクリル、
PET、ポリカーボネート、塩ビ等のプラスチック類、各
種の塗装表面やコンクリート、モルタル表面、布などに
塗布することができる。
【0023】基材形状は板状、フイルム状、成型体など
いずれでも可能である。塗布液を基材上に塗布して酸化
チタン薄膜を形成させる方法はいずれの方法でも良く、
刷毛塗り、スプレー塗布、スピンコート、ディップコー
ト、ロールコート、グラビアコート、バーコートなど各
種の塗布方法が基材の形状を考慮して選択できる。塗布
液の乾燥は基材の種類によって異なるが通常300℃以下
で熱処理される。ガラスやセラミクスを基材とする場合
は高い温度で処理する方が密着性が良くなるが、500℃
以上では酸化チタンの焼結による比表面積の低下が著し
く、触媒効果が低下する。
【0024】また、基材が、アクリル、PET、ポリカー
ボネート、塩化ビニルなどのプラスチック類の場合は基
材の耐熱性から熱処理温は150℃以下となる。酸化チタ
ン薄膜の膜厚は厚い方が触媒効果を高められるが、3μm
以上になると膜厚の増加と触媒効果の増加が比例しなく
なるのでこれ以上の膜厚は一般的に不経済となる。また
膜厚が厚いとひび割れの原因にもなるので実用的には0.
2〜2μmが触媒効果と経済性を両立できる膜厚である。
しかし基材の種類により異なるので、これに限定される
ものではない。
【0025】薄膜形成にあたり上記のプラスチック類を
基材とする場合は、基材と酸化チタン薄膜との密着性を
より高めるために、基材と酸化チタン薄膜との間に樹脂
を主成分とする接着層を設けることができる。接着層と
しては基材と酸化チタン薄膜組成の両方に親和性の高い
ものが好ましいが、アクリル樹脂を主成分とするもの
は、密着性の高い強靱な接着層を形成できるので最適で
ある。密着性をさらに増加させたい場合はシリカゾルや
シリコーン樹脂、アルコキシシランなどの有機シリコン
化合物をアクリル樹脂に混合して使用することもでき
る。また、アクリル樹脂に代えてアクリル変性シリコン
樹脂化合物、シリコン変性アクリル樹脂化合物も使用で
きる。接着層は一般的に上記樹脂化合物を含む溶液を塗
布することにより形成する。溶液はトルエン、キシレ
ン、ケトン、アルコールなどの溶媒に樹脂を分散させた
ものでも、水系のエマルションタイプでもよい。接着層
の塗布形成方法は特に制限されず、酸化チタン薄膜と同
様の方法で塗布し、接着層を形成することができる。接
着層の膜厚は限定されないが、0.2μm程度以上であれば
十分な密着性を付与できる。当然のことながら、基材表
面が何らかの理由により既に上述樹脂で被覆されている
場合には、これらの処理を省略することができる。
【0026】
【実施例】以下にこれまで述べてきた発明の詳細を具体
的に例を挙げて説明するが、本発明はそれらの実施例に
よって限定されるものではない。尚、特に断らない限り
%は全て重量%を示す。
【0027】(実施例1)日本エアロジル(株)製酸化チ
タンP-25(比表面積50m/g)に分散剤としてクエン酸を
加え(酸化チタンに対し0.1モル)、湿式粉砕して得た
平均粒子径0.8μm(比表面積68m/g)のスラリー(A)と
多木化学(株)製酸化チタンゾルM-6(比表面積280m/g、
平均粒子径10nm)(B)、関東化学(株)製テトラエトキシシ
ラン(C)をそれぞれ酸化物換算(TiO、SiO)で(B)/
((A)+(B))×100=10%、(C)/((A)+(B)+(C))=20
%の比となるように混合し、水及びエタノールで希釈
し、酸化物換算(TiO、SiO)の総固形分濃度8%、エタ
ノール50%の塗布液を得た。この塗布液を75mm×52mmの
スライドガラスおよび多木化学(株)製シリコン含有アク
リル樹脂塗料プライマーAを1μm厚でコートしたPET
基板上に上記酸化チタン薄膜形成塗布液をスピンコート
し、100℃で10min乾燥させた後、試料板とした。このと
きの基板状に塗布された塗布液の乾燥固形分は基板あた
り0.003gとした。
【0028】(実施例2)多木化学(株)製酸化チタンA-
100(比表面積295m/g)に分散剤としてしゅう酸を加え
(酸化チタンに対し0.2モル)、湿式粉砕して得た平均
粒子径0.6μm(比表面積300m/g)のスラリー(A)と同
法により得た平均粒子径150nm比表面積325m /gのゾル
(B)、信越化学工業(株)製テトラメトキシシラン(C)をそ
れぞれ酸化物換算で(B)/((A)+(B))×100=6%、(C)
/((A)+(B)+(C))=20%の比となるように混合し、
水及びイソプロピルアルコールで希釈し、酸化物換算の
総固形分濃度10%、イソプロピルアルコール35%の塗布液
を得た。この塗布液を75mm×52mmのスライドガラスおよ
び三洋化成工業(株)製アクリルシリコン樹脂エマルショ
ン塗料サンモールを5μm厚でコートしたアクリル基板上
に上記上記酸化チタン薄膜形成塗布液をスピンコート
し、100℃で10min乾燥させた後、試料板とした。このと
きの基板状に塗布された塗布液の乾燥固形分は基板あた
り0.003gとした。
【0029】(実施例3)多木化学(株)製酸化チタンゾ
ルA-6を105℃で乾燥させた後、これに分散剤としてリン
ゴ酸を加え(酸化チタンに対し0.1モル)、湿式粉砕し
て得たスラリー(平均粒子径0.65μm、比表面積140m/
g)(A)と実施例2で用いたゾル(B)、多摩化学(株)製シ
リケ−ト40(C)をそれぞれ酸化物換算で(B)/((A)+
(B))×100=18%、(C)/((A)+(B)+(C))=15%の比
となるように混合し、水及びエタノールで希釈し、酸化
物換算の総固形分濃度5%、エタノール40%の塗布液を得
た。この塗布液を75mm×52mmのスライドガラスおよび大
日本インキ化学工業製アクリル系特殊エマルション樹脂
塗料ボンコートDV-759膜を5μm厚でコートしたPET基
板上に上記酸化チタン薄膜形成塗布液をスピンコート
し、100℃で10min乾燥させた後、試料板とした。このと
きの基板状に塗布された塗布液の乾燥固形分は基板あた
り0.003gとした。
【0030】(比較例1)実施例1の多木化学(株)製酸
化チタンゾルM-6(B)の固形分(TiO)全量を、日本エ
アロジル(株)製酸化チタンP-25の湿式粉砕スラリー
(A)の固形分(TiO)に置き換え、酸化チタン成分を
一種類にして実施例1と同じ方法により塗布液及び試料
板を調製した。
【0031】(比較例2)実施例1の多木化学(株)製酸
化チタンゾルM-6(B)の固形分(TiO)全量を、日本エ
アロジル(株)製酸化チタンP-25の湿式粉砕スラリー(A)
の固形分(TiO)に置き換え、さらにテトラメトキシシ
ラン(C)(SiO)量を(C)/((A)+(C))=35%となるよ
うに混合した以外は実施例1と同じ方法により塗布液及
び試料板を調製した。
【0032】(比較例3)実施例1のテトラメトキシシ
ラン(C)量(SiO)を(C)/((A)+(B)+(C))=50%と
なるように混合した以外は実施例1と同じ方法により塗
布液及び試料板を調製した。
【0033】(比較例4)実施例1の多木化学(株)製酸
化チタンゾルM-6(B)の固形分(TiO)を増加させ(B)/
((A)+(B))×100=30%とした以外は実施例1と同じ方
法により塗布液及び試料板を調製した。
【0034】(膜強度試験)上記実施例、比較例で作成
したガラス基板サンプルに1kg/cmの加重をかけた市販
のプラスチック消しゴムによる反復スクラッチにより評
価し、200回のスクラッチで膜が消失していないものをA
A、100〜200回のスクラッチで膜が消失したものをA、50
〜100回で膜が消失したものをB、50回未満で膜が消失し
たものをCとした。
【0035】(ガス分解活性試験)上記実施例、比較例
で作成したアクリル基板サンプル試料板1枚を、容積1.
9Lのパイレックス(登録商標)ガラス製セパラブルフ
ラスコに設置し、アセトアルデヒドガスをボンベから導
入して容器内を100ppmとし、密閉した。この後フラスコ
外部より、市販のFLブラックライトを、試料表面の紫外
線強度が1mW/cmとなるようにして120分間照射し、残
存するアセトアルデヒド濃度を検知管で測定した。触媒
効果は初期アルデヒド濃度に対する分解消失したアセト
アルデヒド濃度の百分率で表した。その結果を表1に示
した。
【0036】
【表1】 (試験結果)
【0037】
【発明の効果】本発明酸化チタン薄膜形成塗布液は二種
類の酸化チタンで構成されており、これを基材表面に塗
布したときは両者が相互に作用して、高い触媒活性と実
用的な膜強度を有する酸化チタン薄膜担持基材が得られ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C09D 5/00 C09D 5/00 Z 5/16 5/16 183/02 183/02 183/04 183/04 Fターム(参考) 4G047 CA02 CB05 CB08 CD02 4G069 AA03 AA08 BA02A BA02B BA04A BA04B BA20A BA20B BA22A BA22B BA48A BE09A BE09B CA01 CA11 CA13 CA17 EA11 EB18X EB18Y EC02X EC03X FA03 FB23 FC08 4J038 DL021 DL031 DL051 DL081 DL091 DL111 HA216 NA05 NA11 NA27 PA18 PB14 PC02 PC03 PC04 PC08 PC10

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 平均粒子径0.4〜1.5μm、比表面積50m
    /g以上の酸化チタン粒子(A)0.2〜15重量%と、平均粒
    子径200nm以下、比表面積200m/g以上の酸化チタン粒
    子(B)0.05〜10重量%、及びシリカ化合物(SiOとし
    て)(C)0.1〜5重量%を含有し、且つ(B)/((A)+
    (B))×100=3〜25重量%、(C)/((A)+(B)+(C))=
    5〜30重量%である酸化チタン薄膜形成塗布液。
  2. 【請求項2】 シリカ化合物がアルコキシシランまたは
    その縮合物、加水分解物である請求項1記載の酸化チタ
    ン薄膜形成塗布液。
  3. 【請求項3】 平均粒子径0.4〜1.5μm、比表面積50m
    /g以上の酸化チタン粒子(A)の濃度が0.2〜15重量%、
    平均粒子径200nm以下、比表面積200m/g以上の酸化チ
    タン粒子(B)の濃度が0.05〜10重量%、シリカ化合物(S
    iO)(C)の濃度が0.1〜5重量%であって、且つ(B)/
    ((A)+(B))×100=3〜25重量%、(C)/((A)+(B)+
    (C))=5〜30重量%となるように(A)、(B)及び(C)を
    混合することからなる酸化チタン薄膜形成塗布液の製造
    方法。
  4. 【請求項4】 請求項1、2または3記載の酸化チタン
    薄膜形成塗布液で処理した酸化チタン薄膜担持基材。
  5. 【請求項5】 基材と酸化チタン薄膜との間に接着層と
    してアクリル樹脂層またはアクリル変性シリコン樹脂層
    を有することを特徴とする請求項4記載の酸化チタン薄
    膜担持基材。
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