JP2002275072A - 脂質代謝改善剤 - Google Patents

脂質代謝改善剤

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Abstract

(57)【要約】 【課 題】 経口摂取可能で、比較的少量で効果があ
り、風味や保存安定性の点で問題のない脂質代謝改善剤
を提供する。 【解決手段】 ラクトシルセラミドやグルコシルセラミ
ドなどの中性スフィンゴ糖脂質を脂質代謝改善剤や脂質
代謝改善飲食品の有効成分とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、中性スフィンゴ糖
脂質を有効成分とする脂質代謝改善剤に関する。また、
本発明は、中性スフィンゴ糖脂質を配合した脂質代謝改
善飲食品に関する。本発明の脂質代謝改善剤や脂質代謝
改善飲食品は、脂質代謝を改善する作用を有するので、
これを摂取することにより、脂肪肝、高脂血症、動脈硬
化症、肥満症などの疾患の治療及び予防に有用である。
【0002】
【従来の技術】脂質代謝は、食物由来のトリグリセリド
を主体とする脂肪を生体内で異化(分解)、同化(蓄
積)する過程を指し、広義には、脂質のエネルギー化反
応、脂肪酸の生合成、アシルグリセロールの生合成、リ
ン脂質の代謝、コレステロールの代謝などを含むもので
ある(栄養学のための生化学,123-134 (1993) 、朝倉書
店)。近年、心臓血管系の疾患による死亡率が急増して
おり、その発症の危険率と血中コレステロール濃度の相
関が指摘されている。このような中、日常的な摂取が可
能である食品素材により、血中コレステロール濃度を下
げようという試みがなされてきた。例えば、それらの食
品素材として、大豆タンパク質(Atherosclerosis, 72
,115(1988))、乳清タンパク質(Agric.Biol.Che
m.,55,813(1991)、特開平5-176713号公報)、大豆タ
ンパク質加水分解物(J.Nutr.,120 ,977(1990))、
卵黄リン脂質(Agric.Biol.Chem.,53,2469(1989))
などが挙げられる。また、ラクトアルブミン、コラーゲ
ン、大豆タンパク質、小麦グルテンのいずれかと大豆レ
シチンとを組み合わせる方法(Nutr.Rep.Int.,28,62
1(1983))や、大豆レシチンを含む組織状の大豆タンパ
ク質を用いる方法(Ann.Nutr.Metab., 29, 348(198
5))などが提案されている。しかし、これらには、比較
的多量の摂取を必要とするという問題、風味上の問題、
飲料にした場合に保存中に沈殿するなどの保存安定性の
問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、これら
の問題点を鑑み、広く食品素材に含まれている脂質代謝
改善作用を示す物質について、鋭意、探索を進めていた
ところ、中性スフィンゴ糖脂質が、経口投与により脂質
代謝を改善することができることを見出した。そして、
この中性スフィンゴ糖脂質を脂質代謝改善剤や脂質代謝
改善飲食品の有効成分として利用できることを見出し、
本発明を完成するに至った。したがって、本発明は、こ
の脂質代謝改善作用を有する中性スフィンゴ糖脂質を有
効成分とする脂質代謝改善剤を提供することを課題とす
る。また、本発明は、中性スフィンゴ糖脂質を配合した
脂質代謝改善飲食品を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の脂質代謝改善剤
の特徴は、中性スフィンゴ糖脂質を有効成分とすること
にある。スフィンゴ糖脂質は、スフィンゴシンのアミノ
基に脂肪酸が酸アミド結合した構造を持つセラミドの一
級アルコールに各種の糖類がグリコシド結合した糖脂質
の総称であり、中性スフィンゴ糖脂質と酸性スフィンゴ
糖脂質とに分類される。また、牛乳中に含有されるスフ
ィンゴ糖脂質に関する研究が行われており、牛乳中に
は、酸性スフィンゴ糖脂質のガングリオシド、中性スフ
ィンゴ糖脂質のラクトシルセラミドやグルコシルセラミ
ドなど、スフィンゴ糖脂質が比較的多く存在しているこ
とが明らかにされている(脂質化学研究, 27,182-185(1
985)、日本畜産学会報, 40(8),349-354(1969)、日本畜
産学会報, 41(2),75-79(1970)など)。本発明では、中
性スフィンゴ糖脂質として、一般的な方法で調製した中
性スフィンゴ糖脂質を使用することができるが、ラクト
シルセラミドやグルコシルセラミドを使用することが好
ましい。
【0005】中性スフィンゴ糖脂質は、例えば、特許第
2782347号に記載されているような方法で調製すること
ができる。具体的には、牛乳や牛乳から得られるバター
ミルク、ホエー、脱脂乳などの乳質物質、動物の脳や腎
など、中性スフィンゴ糖脂質を含む物質にタンパク質加
水分解酵素を作用させてタンパク質を加水分解し、得ら
れたタンパク質加水分解溶液を、限外濾過法などの方法
で濃縮し、必要に応じて、乾燥して粉末化することによ
り、中性スフィンゴ糖脂質の濃縮液や乾燥粉末を得るこ
とができる。さらに、得られた中性スフィンゴ糖脂質に
ついて、次のような方法で精製し、ラクトシルセラミド
及びグルコシルセラミドを得ることができる。
【0006】(1) 上記の濃縮液又は乾燥粉末に、ク
ロロホルム−メタノール混合液(2:1、v/v)を加え、室
温で30分間撹拌して中性スフィンゴ糖脂質を抽出し、こ
の抽出液を蒸発乾固する。 (2) 上記の蒸発乾固した抽出物に、アセトンを加
え、室温で20分間撹拌して中性脂質を抽出し、アセトン
と共に除去する。 (3) 上記の中性脂質を除去した残渣に、クロロホル
ムを加えて溶解し、シリカゲルカラムにこの溶液を通液
して、シリカゲルに中性スフィンゴ糖脂質を吸着させた
後、シリカゲルカラムをクロロホルムで洗浄する。 (4) 上記の中性スフィンゴ糖脂質を吸着させたシリ
カゲルカラムに、クロロホルム−メタノール混合液(9:
1、v/v)を通液して、グルコシルセラミドを溶出する。 (5) 上記のグルコシルセラミドを溶出したシリカゲ
ルカラムに、クロロホルム−メタノール混合液(8:2、v
/v)を通液して、ラクトシルセラミドを溶出する。 以上のようにして溶出されたラクトシルセラミド及びグ
ルコシルセラミドの溶出液を蒸発乾固することにより、
純度90%以上のラクトシルセラミド粉末及びグルコシル
セラミド粉末を得ることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の脂質代謝改善剤を投与す
るに際しては、有効成分の中性スフィンゴ糖脂質をその
ままの状態で用いることもできるが、常法に従い、粉末
剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤などに製剤
化して用いることもできる。さらには、これらの中性ス
フィンゴ糖脂質をそのままあるいは製剤化した後、これ
を栄養剤や飲食品などに配合して、脂質代謝改善を図る
ことも可能である。また、大豆タンパク質、ホエータン
パク質、大豆レシチン、ジアシルグリセロール、大豆イ
ソフラボンなど、従来から脂質代謝改善作用をもつと考
えられている成分と共に、中性スフィンゴ糖脂質を配合
すれば、一層の脂質代謝改善作用が期待できる。
【0008】本発明の脂質代謝改善剤の投与量は、年
齢、治療効果及び病態などにより異なるが、ラットを用
いた動物実験の結果によると、脂質代謝改善作用を示す
ためには中性スフィンゴ糖脂質をラット体重1kg当たり3
0mg以上摂取させる必要があることが判った。したがっ
て、ラットを用いた動物実験の結果のヒトへの外挿法
(続医薬品の開発,8,7-18、廣川書店)をもとにして、
通常、成人一人当たり一日30mg以上の中性スフィンゴ糖
脂質を摂取すれば効果が期待できるので、この必要量を
確保できるよう飲食品に配合したり、医薬として服用す
れば良い。次に、実施例及び試験例を示して本発明を詳
細に説明する。
【0009】
【参考例1】バターミルク粉20kgを水180kgに溶解した
溶液に0.5kgの枯草菌プロテアーゼを添加し、pH7.6、温
度40℃で15時間反応させ、タンパク質を分解した後、90
℃で10分間加熱し、酵素を失活させた。次いで、この溶
液を、GR−51P(DDS社製)の膜面積0.36m2の濾過膜を装
着した限外濾過装置(LAB−20型モジュール、DDS社製)
にて、温度40℃、流量15 l/分、平均圧力0.6MPaで濾過
し、中性スフィンゴ糖脂質を濃縮した。濃縮終了後、濃
縮槽より濃縮液を回収し、凍結乾燥を行って、中性スフ
ィンゴ糖脂質粉末1.4kgを得た。
【0010】
【参考例2】参考例1により調製した中性スフィンゴ糖
脂質粉末1kgに、クロロホルム−メタノール混合液(2:
1、v/v)を10 l加え、室温で30分間撹拌して中性スフィ
ンゴ糖脂質を抽出し、この抽出液を蒸発乾固した。この
蒸発乾固した抽出物に、アセトン2 lを加え、室温で20
分間撹拌して中性脂質を抽出し、アセトンと共に除去し
た。中性脂質を除去した残渣に、クロロホルムを加えて
溶解し、シリカゲルカラム(4.0×60cm)に通液して、
シリカゲルに中性スフィンゴ糖脂質を吸着させ、クロロ
ホルム2 lで洗浄した後、クロロホルム−メタノール混
合液(9:1、v/v)2 lを通液して、グルコシルセラミド
を溶出した。さらにクロロホルム−メタノール混合液
(8:2、v/v)2 lを通液して、ラクトシルセラミドを溶
出した。これらのラクトシルセラミドの溶出液とグルコ
シルセラミドの溶出液をそれぞれ蒸発乾固して、ラクト
シルセラミド粉末とグルコシルセラミド粉末それぞれ30
gを得た。
【0011】
【試験例1】参考例1で得られた中性スフィンゴ糖脂質
及び参考例2で得られたラクトシルセラミド、グルコシ
ルセラミドについて、5週齢のWistar系雄ラットを用い
た動物実験により脂質代謝改善作用を調べた。対照群
(A群)、中性スフィンゴ糖脂質をラット体重1kg当た
り30mg投与する群(B群)、中性スフィンゴ糖脂質をラ
ット体重1kg当たり300mg投与する群(C群)、ラクトシ
ルセラミドをラット体重1kg当たり30mg投与する群(D
群)、ラクトシルセラミドをラット体重1kg当たり300mg
投与する群(E群)、グルコシルセラミドをラット体重
1kg当たり30mg投与する群(F群)、グルコシルセラミ
ドをラット体重1kg当たり300mg投与する群(G群)の7
試験群(n=8)に分け、10日間飼育した。なお飼育期
間中は、0.5%のコレステロール及び0.25%のコール酸ナ
トリウムを含む飼料を摂取させた。10週間飼育後に血清
中の総コレステロール(TChol)、高密度リポタンパク
質コレステロール(HDL)、低密度及び超低密度リポタ
ンパク質コレステロール(LDL+VLDL)それぞれの濃度を
測定した。また、飼育7〜9日目に糞を採取し、糞中への
中性ステロール排泄量を測定した。糞採取前夜は絶食し
た。その結果を表1に示す。
【0012】
【表1】 表中、数値は平均値±標準偏差を示し、上付き文字は異
なる文字間で有意差があることを示す。
【0013】これによると、総コレステロール濃度は、
対照群であるA群に比べ、試験群であるB群、C群、D
群、E群、F群及びG群すべてにおいて有意に低い値を
示した。内訳を見てみると、悪玉コレステロールとされ
る低密度及び超低密度リポタンパク質コレステロール濃
度は、A群に比べ、B群、C群、D群、E群、F群及び
G群で有意に低い値を示しているのに対して、善玉コレ
ステロールとされる高密度リポタンパク質コレステロー
ル濃度は、A群に比べ、C群、D群、E群及びG群で有
意に高い値を示した。また、糞中への中性ステロール排
泄量は、A群に比べ、B群、C群、D群、E群、F群及
びG群で有意に高い値を示した。
【0014】このことから、中性スフィンゴ糖脂質また
はその主成分であるラクトシルセラミド及びグルコシル
セラミドには血清中のコレステロール、特に悪玉コレス
テロールとされる低密度及び超低密度リポタンパク質コ
レステロールを低減させる作用があり、脂質代謝を改善
することが明らかとなった。また、この効果は糞中への
中性ステロール排泄量を高めることによると考えられ
た。
【0015】
【実施例1】参考例1で得られた中性スフィンゴ糖脂質
を配合して、脂質代謝改善乳飲料を製造した。すなわ
ち、牛乳20kg、脱脂粉乳21.6kg及び水56kgを調合して乳
ベースを調製した後、この乳ベースに、グラニュー糖1k
g及び中性スフィンゴ糖脂質0.37kgを添加し、ホモジナ
イザーで均質圧200kg/cm2として乳化した。そして、充
填温度90℃でこれを200ml缶に充填し、巻締めした後、1
21℃、10分間のレトルト殺菌を行い、冷却して缶入り乳
飲料を製造した。製造した乳飲料の風味は良好であっ
た。
【0016】
【実施例2】表2に示す組成の脂質代謝改善錠剤を製造
した。
【表2】
【0017】
【実施例3】表3に示す組成の脂質代謝改善飲料を製造
した。
【表3】
【0018】
【発明の効果】本発明の脂質代謝改善剤や脂質代謝改善
飲食品は、脂質代謝を改善する作用を有する。従って、
脂肪肝、高脂血症、動脈硬化症、肥満症などの疾患の治
療及び予防に有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A23L 2/38 A61P 1/16 A61P 1/16 3/04 3/04 3/06 3/06 9/10 101 9/10 101 C07H 15/04 E // C07H 15/04 A23L 2/00 F (72)発明者 川上 浩 埼玉県川越市藤間204−5 Fターム(参考) 4B017 LC03 LK10 LK11 LK17 LK18 LP01 4B018 LB08 LB10 MD14 MD27 MD69 MD71 ME04 MF01 4C057 BB02 BB03 CC01 DD01 JJ09 JJ12 4C086 AA01 AA02 EA06 MA01 MA04 NA14 ZA42 ZA45 ZA70 ZA75 ZC33

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 中性スフィンゴ糖脂質を有効成分とする
    脂質代謝改善剤。
  2. 【請求項2】 中性スフィンゴ糖脂質が、ラクトシルセ
    ラミド及び/又はグルコシルセラミドである請求項1記
    載の脂質代謝改善剤。
  3. 【請求項3】 中性スフィンゴ糖脂質を配合した脂質代
    謝改善飲食品。
  4. 【請求項4】 中性スフィンゴ糖脂質が、ラクトシルセ
    ラミド及び/又はグルコシルセラミドである請求項3記
    載の脂質代謝改善飲食品。
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