JP2011173813A - PPARα発現促進剤 - Google Patents

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芳郎 小玉
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Abstract

【課題】本発明は、副作用の少ない新たなPPARα発現促進剤を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明により、グルコシルセラミドを有効成分とするPPARα発現促進剤が提供される。当該PPARα発現促進剤は、特に内臓脂肪蓄積抑制効果、血中コレステロール値改善効果、インスリン感受性亢進効果に優れる。
【選択図】なし

Description

本発明は、内臓脂肪蓄積阻害、血中LDLコレステロールの低下、抗炎症等に有用な、PPARα発現促進剤に関する。
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(Peroxisome proliferator-activated receptors:PPARs)は、核内受容体スーパーファミリーの一員であり、主に脂質や糖代謝に関係する遺伝子群の発現制御に関わる。
PPARα(Peroxisome proliferator-activated receptor alpha;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α)は、PPARsのサブタイプであり、特に脂肪酸異化(β酸化)を進める遺伝子群の発現を誘導する。PPARαの標的遺伝子には、ペルオキシソームβ酸化の律速遺伝子であるアシルCoAオキシダーゼ(AOX)、ミトコンドリアのβ酸化系の律速酵素である中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ(MCAD)、リポタンパク質リパーゼ等、脂肪酸代謝に関連した分子種が多い。
よって、PPARαの発現を促進することにより、脂質代謝の改善効果が期待される。具体的には、例えば、内臓脂肪蓄積の阻害、血中LDLコレステロールの低下、血中中性脂肪濃度の低下等が期待される。
また、PPARαは炎症のマスターレギュレーターであるnuclear factor-kappa B (NF−κB)を競合阻害することにより、抗炎症作用を示す。従って、PPARαの発現を促進することにより、抗炎症効果も期待できる。
従来、PPARα発現を促進するため、PPARαアゴニストとして、フェノフィブラート、ベザフィブラート、クロフィブラート等のいわゆるフィブラート系の薬物が用いられてきた。しかしながら、フィブラート系薬物は、動脈硬化を惹起させるとの懸念があった。また、フィブラート系薬物は腎臓排泄率が高く、横紋筋融解症等の副作用に注意が必要であった。このような状況のため、副作用の少ない新たなPPARα発現促進剤が望まれていた。
信州医誌,56(6):347〜358,2008「α型ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPARα):脂肪肝疾患との関連」
本発明は、副作用の少ない新規なPPARα発現促進剤を提供することを課題とする。
本発明者らは、驚くべき事に、グルコシルセラミドにPPARα発現促進作用があることを見出し、さらに改良を重ねて本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は例えば以下の項1〜4の記載のPPARα発現促進剤に係るものである。
項1.
グルコシルセラミドを有効成分とする、PPARα発現促進剤。
項2.
トウモロコシ由来グルコシルセラミドを有効成分とする、項1に記載のPPARα発現促進剤。
項3.
内臓脂肪蓄積抑制剤である、項1又は2に記載のPPARα発現促進剤。
項4.
脂質異常症治療及び予防剤である、項1又は2に記載のPPARα発現促進剤。
本発明のグルコシルセラミドを有効成分とするPPARα発現促進剤を摂取することにより、PPARαの発現が大幅に促進される。これにより、特に内臓脂肪蓄積を抑制することができる。また、血中のコレステロール値を改善することができる。さらには、インスリン感受性を亢進させることができる。
また、グルコシルセラミドは食品中に多く含まれる成分であり、安全性が高いため、副作用の心配もほとんどない。
コーンから抽出、精製したグルコシルセラミドを、HPLC−ELSDで解析して得られたクロマトグラムを示す。 グルコシルセラミドを摂取させたラットの肝臓からRNAを抽出して、DNAマイクロアレイ解析を行った結果を示す。 グルコシルセラミドを摂取させたラットの腸間膜脂肪量及び肝臓脂肪量を測定した結果を示す。 グルコシルセラミドを摂取させたラットの総コレステロール値及び非HDL-コレステロール値を測定した結果を示す。 グルコシルセラミドを摂取させたラットの血中アディポネクチン量及びインスリン量を測定した結果を示す。
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
本発明のPPARα発現促進剤は、グルコシルセラミドを有効成分とする。用いるグルコシルセラミドは、特に制限されるものではないが、植物由来グルコシルセラミドであることが好ましい。すなわち、植物から抽出したグルコシルセラミドであることが好ましい。グルコシルセラミドを抽出するために用いる植物としては特に制限はされないが、例えば小麦(小麦胚芽)、大豆、米(米糠・米胚芽)、綿実、菜種、トウモロコシ(コーン胚芽)、サトウキビ、ゴマ、ピーナッツ、蒟蒻芋、柚子、蜜柑、甜菜等が挙げられ、なかでもトウモロコシ(コーン胚芽)が好ましい。主にこれら植物の食用部位を用いることができる。また、これら植物から油を製造・精製する際に、油の抽出残渣や油脂の精製過程で生じる脱ガム物あるいは米糠等、の低コスト資源も好ましい。このような植物は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、グルコシルセラミドはグルコセレブロシドとも呼ばれ、スフィンゴイド塩基と脂肪酸が酸アミド結合したセラミドの1位のヒドロキシ基にグルコースがβ−グリコシド結合したものである。
各種植物からグルコシルセラミドを抽出する方法としては特に制限されない。例えば、有機溶媒又は含水有機溶媒、好ましくはアルコール又は含水アルコール等により、植物から抽出されて得られる画分をさらに精製して、グルコシルセラミドを得ることができる。
抽出に用いるアルコールは特に制限されず、例えば炭素数1〜6の一価アルコール、好ましくは炭素数1〜4の一価アルコールを用いることができ、具体的にはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、ペンタノール、ヘキサノール等を用いることができる。中でもエタノールが好ましい。なお、アルコールは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、抽出には、アルコールに代えて又はアルコールに加えて、アルコール以外の有機溶媒や水を用いてもよい。アルコール以外の有機溶媒としては、グルコシルセラミドが抽出でき、毒性が低いものであれば特に制限されない。例えばクロロホルム等の非食品系溶媒は好ましくない。これらの有機溶媒や水を、アルコールとは別に用いて各抽出工程を順々に行ってもよいし、アルコールと混合した上で抽出に用いてもよい。また、有機溶媒を水と混合した上で用いてもよい。アルコールと水を混合したものが含水アルコールである。含水アルコールの含水率は特に制限されないが、50重量%以下のものが好ましく、30重量%以下のものがより好ましい。なお、これらアルコール、有機溶媒及び水は1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
具体的な抽出操作は、特に限定されず、公知の方法にて行うことができる。例えば、冷浸・温浸等の浸漬法、パーコレーション法等により行うことができる。好適な一例として、例えば、植物原料にアルコール又は含水アルコールを加え常温で1分〜5時間程度静置又は撹拌を行う方法が例示できる。
例えば上記のようにして得られた植物抽出画分をさらに精製して、グルコシルセラミドを得ることができる。精製方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて植物抽出画分からグルコシルセラミドを精製することができる。
また、植物抽出画分に対してアルコール沈殿処理を行って上清を回収することにより、グルコシルセラミドを精製することもできる。アルコール沈殿処理に用いるアルコールとしては、特に制限されないが、例えば炭素数1〜6の一価アルコール、好ましくは炭素数1〜4の一価アルコールを用いることができ、具体的にはエタノール、イソプロパノールを好ましく用いることができる。アルコールは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
アルコール沈殿処理は、常法により行うことができる。例えば、植物抽出画分に対して適量(例:濃縮乾固画分1gに対し約20mL)のアルコールを加え、撹拌後遠心処理又は減圧ろ過する、という操作を行うことで実施できる。アルコール沈殿処理は繰り返し行ってもよい。グルコシルセラミドはアルコール沈殿処理後の上清に含まれるため、アルコール沈殿処理を繰り返し行う場合は、各処理毎に上清を回収しておき、合わせてもよい。アルコール沈殿処理は、通常1〜5回、好ましくは1〜3回、より好ましくは1〜2回行う。このようにして得られる上清を濃縮乾固して固形物(粉末)として利用してもよい。上清は常法に従って濃縮乾固することができる。例えば、当該上清をロータリーエバポレーター等を用いて濃縮乾固すればよい。
なお、アルコール沈殿処理を行う前に、植物抽出画分から脂質を除去しておくと、より純度の高いグルコシルセラミドが得られうるので好ましい。脂質除去処理方法としては、特に限定するものではないが、例えばヘキサン及び/又はアセトン沈殿処理が挙げられる。当該処理は、常法により行うことができる。例えば、ヘキサン沈殿処理・アセトン沈殿処理とも、試料に対して適量(例:乾燥試料1gに対し5〜10mL)のヘキサン又はアセトンを加え、撹拌後遠心処理又は減圧ろ過して沈殿又は不溶部を回収する、という操作を行うことで実施できる。さらに、ヘキサンとアセトンの混合溶媒を用いた沈殿処理(ヘキサン及びアセトン沈殿処理)を行ってもよい。この場合ヘキサンとアセトンの混合比率は適宜設定できる(例えば体積比でヘキサン:アセトン=1:1)。ヘキサン沈殿処理、アセトン沈殿処理、ヘキサン及びアセトン沈殿処理は繰り返し行ってもよく、また、単独又は任意の順番で組み合わせて複数回行なってもよい。組み合わせる場合は、例えば各処理をそれぞれ1〜5回、好ましくは1〜5回ずつ組み合わせるのが好ましい。なお、アセトン沈殿のみでは除去しきれない色素が、ヘキサンを用いることによって除去可能となることがあるため、ヘキサン沈殿処理、あるいはヘキサン及びアセトン沈殿処理を用いることが好ましい。好ましい脂質除去処理の一態様として、アセトン沈殿処理を1〜5回繰り返した後、ヘキサン及びアセトン沈殿処理を1〜5回繰り返すという処理を挙げることができる。また、試料としては、上述の植物原料から有機溶媒又は含水有機溶媒等により抽出して得られる画分を、減圧乾燥する等して、濃縮乾固したものを用いるのが好ましい。なお、ヘキサン沈殿処理により主にリン脂質・グリセロ糖脂質を除去でき、また、アセトン沈殿処理により主に中性脂質を除去できる。
また、脂質除去処理として、上述のヘキサン沈殿処理及び/又はアセトン沈殿処理に代えて又は加えて、アルカリ加水分解処理を行ってもよい。当該処理に用いることができるアルカリ溶液としては、例えば水酸化ナトリウム溶液等を挙げることができ、当該溶液の溶媒としては水、エタノール等を用いることができる。具体的な処理方法としては、特に限定されず常法にて行うことができる。
ヘキサン沈殿処理及び/又はアセトン沈殿処理に加えてアルカリ加水分解処理を行う場合は、ヘキサン沈殿処理及び/又はアセトン沈殿処理の前後どちらに行ってもよいが、前に行うことが好ましい。なお、アルカリ加水分解処理により、主にグリセロリン脂質とグリセロ糖脂質などのエステル脂質が分解され、極性脂質画分から除去される。
脂質除去処理及びアルコール沈殿処理を経て得られた植物抽出画分は、非常に高純度(好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは97質量%以上)のグルコシルセラミドを含んでおり、本発明のPPARα発現促進剤に特に好適に用いることができる。
なお、各種植物由来グルコシルセラミドは市販もされている。表1に市販されているグルコシルセラミドを例示する。
Figure 2011173813
例えばこのような市販品であるグルコシルセラミドも本発明に用いることができる。また、純度が低いものは、精製を行って純度を高めてから用いることが好ましい。純度を高めて用いることにより、従来簡単には摂取することができなかった多量のグルコシルセラミドを簡便に摂取することができる。精製には、例えば上述した脂質除去処理及びアルコール沈殿処理を適用できる。
上述のように、PPARαは主に脂質や糖代謝に関係する遺伝子群の発現制御に関わっている。このため、PPARαの発現を促進させることにより、心筋梗塞、動脈硬化症、脳梗塞、虚血性心疾患、冠動脈疾患、脂質異常症(高コレステロール血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高トリグリセリド血症)、肥満等の治療及び予防を行うことができる。本発明のグルコシルセラミドを有効成分とするPPARα発現促進剤にも、このような効果が期待できる。本発明のPPARα発現促進剤は、特に内臓脂肪蓄積の抑制効果が大きく、中でも脂肪肝の治療及び予防に好ましく用いることができる。さらに、血中コレステロール値の改善効果も大きく、脂質異常症の治療及び予防に好ましく用いることができる。すなわち、本発明のPPARα発現促進剤は、特に内臓脂肪蓄積抑制剤、並びに脂質異常症治療及び予防剤として好ましく用いることができる。
さらに、PPARαは炎症のマスターレギュレーターであるNF−κBを競合阻害するため、PPARαの発現を促進させることで、炎症を抑制し、各種炎症性疾患(例えばアトピー性皮膚炎、関節リウマチ、大腸炎、クローン病等)の治療及び予防を行うことができると考えられている。本発明のグルコシルセラミドを有効成分とするPPARα発現促進剤にも、このような効果が期待できる。また、本発明のPPARα発現促進剤は、PPARαの発現を促進させることでインスリン感受性を高めることもできることから、糖尿病の治療及び予防にも効果的である。
本発明のPPARα発現促進剤の投与又は摂取対象者は、特に上述したような疾患を有する患者、或いはこのような疾患を患う可能性の高い人(いわゆる予備軍)が好ましい。
本発明のPPARα発現促進剤は、医薬分野及び食品分野で好ましく用いられる。当該剤は、グルコシルセラミド(好ましくは植物由来グルコシルセラミド、すなわち植物から抽出したグルコシルセラミド)を含有する。
本発明のPPARα発現促進剤を医薬分野にて用いる場合、当該剤(以下「本発明に係る医薬剤」と記載することがある)は、グルコシルセラミドのみからなるものでもよいし、他の成分を配合したものでもよい。例えば、本発明に係る医薬剤においては、有効成分であるグルコシルセラミドに、必要に応じて薬学的に許容される基剤、担体、添加剤(例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、溶剤、甘味剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤、界面活性剤、保湿剤、保存剤、pH調整剤、粘稠化剤等)等を配合することができる。このような基材、担体、添加剤等は、例えば医薬品添加物辞典2000(株式会社薬事日報社)に具体的に記載されており、例えばこれに記載されるものを用いることができる。また、常法により、例えば錠剤、被覆錠剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、ゼリー剤、チュアブル剤、ソフト錠剤等の製剤に調製することができる。
本発明に係る医薬剤におけるグルコシルセラミドの配合量は、PPARα発現促進作用が発揮される限り特に制限されず、一日当たりの好ましいグルコシルセラミドの摂取量に応じて適宜設定できる。好ましくは0.0005〜100質量%、より好ましくは0.005〜90質量%、さらに好ましくは0.05〜80質量%である。
本発明に係る医薬剤の投与時期は特に限定されず、例えば製剤形態、患者の年齢、患者の症状の程度等を考慮して適宜投与時期を選択することが可能である。また、投与形態は、経口投与が好適である。
本発明に係る医薬剤の投与量は、患者の年齢、患者の症状の程度、その他の条件等に応じて適宜選択され得るが、当該剤中のグルコシルセラミドの量が、好ましくは成人一日あたり1〜1000mg、より好ましくは10〜100mgの範囲となる量を目安とするのが好ましい。なお、1日1回又は複数回(好ましくは2〜3回)に分けて投与することができる。
本発明のPPARα発現促進剤をPPARα発現促進用の食品添加剤として用いる場合、当該剤(以下「本発明に係る食品添加剤」と記載することがある)は、グルコシルセラミドそのものであってもよいし、これらと食品衛生学上許容される基剤、担体、添加剤や、その他食品添加剤として利用され得る成分・材料が適宜配合されたものでもよい。また、このような食品添加剤の形態としては、例えば液状、粉末状、フレーク状、顆粒状、ペースト状のものが挙げられるがこれらに限定されない。具体的には、調味料(醤油、ソース、ケチャップ、ドレッシング等)、フレーク(ふりかけ)、焼き肉のたれ、スパイス、ルーペースト(カレールーペースト等)等が例示できる。このような食品添加剤は、常法に従って適宜調製することができる。本発明に係る食品添加剤におけるグルコシルセラミドの配合量は、PPARα発現促進作用が発揮される限り特に制限されないが、好ましくは0.0005〜100質量%、より好ましくは0.005〜90質量%、さらに好ましくは0.05〜80質量%である。
このような本発明に係る食品添加剤は、該食品添加剤が添加された食品を食べることにより摂取される。なお、当該添加は食品調理中又は製造中に行ってもよいし、調理済みの食品を食べる直前又は食べながら行ってもよい。当該食品添加剤はこのようにして経口摂取することにより、PPARα発現促進効果を発揮する。なお、本発明に係る食品添加剤の摂取量、摂取対象等は、特に制限されないが、例えば上述した本発明に係る医薬剤の投与量、投与対象等と同様であることが好ましい。
本発明のPPARα発現促進剤をPPARα発現促進用の飲食品として用いる場合、当該剤(以下「本発明に係る飲食品」と記載することがある)は、グルコシルセラミド、及び食品衛生学上許容される基剤、担体、添加剤、その他食品として利用され得る成分・材料等が適宜配合されたものである。例えば、グルコシルセラミドを含む、PPARα発現促進用の加工食品、飲料、健康食品(栄養機能食品、特定保健用食品等)、サプリメント、病者用食品(病院食、病人食又は介護食等)等が例示できる。例えばグルコシルセラミドが配合されたハンバーグ、ミートボール、ウインナー、鳥そぼろ、鳥皮チップス等の加工肉食品、及び加工された肉食品を含んでなる健康食品(栄養機能食品、特定保健用食品等)、サプリメント、病者用食品等であることが好ましい。また、グルコシルセラミドを飲料類(ジュース等)、菓子類(例えばガム、チョコレート、キャンディー、ビスケット、クッキー、おかき、煎餅、プリン、杏仁豆腐等)、パン類、スープ類(粉末スープ等を含む)、加工食品等の各種飲食品に含有させたものであってもよい。
なお、健康食品(栄養機能食品、特定保健用食品等)、サプリメントとして、本発明に係る飲食品を調製する場合は、継続的な摂取が行いやすいように、例えば顆粒、カプセル、錠剤(チュアブル剤等を含む)、飲料(ドリンク剤)等の形態に調製することが好ましく、なかでもカプセル、タブレット、錠剤の形態が摂取の簡便さの点からは好ましいが、特にこれらに限定されるものではない。顆粒、カプセル、錠剤等の形態の、本発明に係る飲食品からなるPPARα発現促進剤は、薬学的及び/又は食品衛生学的に許容される担体等を用いて、常法に従って適宜調製することができる。また、他の形態に調製する場合であっても、従来の方法に従えばよい。
本発明に係る飲食品におけるグルコシルセラミドの配合量は、PPARα発現促進作用が発揮され得る限り特に制限されないが、好ましくは0.0005〜100質量%、より好ましくは0.005〜90質量%、さらに好ましくは0.05〜80質量%である。
本発明に係る飲食品の摂取量、摂取対象等は、特に制限はされないが、例えば上述した本発明に係る医薬剤と同様であることが好ましい。
なお、病院食とは病院に入院した際に供される食事であり、病人食は病人用の食事であり、介護食とは被介護者用の食事である。本発明に係る飲食品は、特に神経疾患で入院、自宅療養等されている患者、あるいは介護を受けられている患者用の病院食、病人食又は介護食として好ましく用いることができる。また、高齢者など、神経疾患を患う可能性の高い人が予防的に摂取することもできる。
本発明は、例えば上述したような疾患を有する患者、或いはそのような疾患を患う可能性の高い人(いわゆる予備軍)に対し、本発明のPPARα発現促進剤を経口投与又は摂取することを特徴とする各疾患の予防方法及び治療方法をも提供する。当該方法は、具体的には、前述の本発明のPPARα発現促進剤を経口投与又は摂取することで行われ得る。なお、当該方法における、経口投与又は摂取量等の各条件は前述の通りである。
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
グルコシルセラミド及びステロール配糖体含有画分の抽出
コーン胚芽4kgにエタノール8Lを加え、1時間撹拌した後、ろ別して可溶部を回収した。そして、これをロータリーエバポレーターにより濃縮乾固した結果、抽出物が約480g得られた。これに常法に従い脱ガム処理を行い、80gのコーン由来粗グルコシルセラミド画分(脱ガム物)を得た。
脂質除去処理
コーン由来粗グルコシルセラミド画分72g(脱ガム物)に対し、アセトンを700mL加えて激しく撹拌し、遠心分離して沈殿を回収した。当該アセトン沈殿処理を5回繰り返した。さらに、アセトン沈殿処理にて得られた沈殿に対し、ヘキサン/アセトン(1:1)を350mL加えて激しく撹拌し、遠心分離して沈殿を回収した。当該ヘキサン及びアセトン沈殿処理を3回繰り返した。
以上の処理により得られた沈殿30gをコーン由来グルコシルセラミド画分とした。
エタノール沈殿処理
コーン由来グルコシルセラミド画分にエタノール600mL(20mL/1g)を加え、撹拌し、遠心分離して上清を回収した。当該エタノール沈殿処理を2回繰り返し、得られた上清を全て合わせてグルコシルセラミド含有画分とした。当該画分をロータリーエバポレーターで濃縮乾固し、得られた固形物をヘキサンに溶解してチューブへ移し、さらに4倍容量のアセトンでアセトン沈殿処理を行って、沈殿(グルコシルセラミド)を18.4g得た。
光散乱検出−高速液体クロマトグラフィー(HPLC−ELSD)による純度の検定
上述のようにして得られたグルコシルセラミドを、クロロホルム/メタノール(2:1)液に溶解させ、HPLC−ELSDにより解析してクロマトグラムを得た。得られたクロマトグラムを図1に示す。上図にグルコシルセラミドが1.5μg含まれる溶液を解析した結果を、下図にグルコシルセラミドが10μg含まれる溶液を解析した結果を示す。なお、当該HPLC−ELSD解析の条件は以下の通りである。
HPLC−ELSD(島津製作所)
検出方法:ELSD(蒸発光散乱検出)
分離:2液グラジエント
A液(溶出液):ヘキサン/イソプロパノール/酢酸(82:17:1)
B液(溶出液):イソプロパノール/水/酢酸/トリエチルアミン(85:14:1:0.2)
当該クロマトグラムの全ピーク面積に対するグルコシルセラミドのピーク面積はいずれも98%であった。従って、得られたグルコシルセラミドの純度は98%であることが確認できた。
グルコシルセラミドのPPARα発現促進作用の検討
グルコシルセラミドを含有させた飼料を、肥満モデルラットに摂取させ、PPARα発現が促進されるか検討した。なお、以下で使用するグルコシルセラミドは、上述のようにして得たものである。
<試料の調製>
実験に使用するラットの飼料として、AIN-76(米国国立栄養研究所により1977年に発表された マウス・ラットを用いた栄養研究のための標準精製飼料組成:以下「通常飼料」と表記することがある)を購入した。また、特別注文により、グルコシルセラミドを0.1質量%含有するAIN-76、及びグルコシルセラミドを0.5質量%含有するAIN-76(以下それぞれ「0.1%GlcCer飼料」、「0.5%GlcCer飼料」と記載することがある)を購入した(いずれもオリエンタル酵母株式会社)。
<抗アトピー性皮膚炎効果の確認実験>
肥満モデルであるZucker fa/faラット(Zucker-fattyラット)を日本エスエルシー株式会社から購入し、一週間の予備飼育後、コントロール群、0.1%群、及び0.5%群の3群に群分けした(いずれの群もn=6)。予備飼育は水及び通常飼料を自由摂取条件下で行った。群分け後は、コントロール群には通常飼料を、0.1%群には0.1%GlcCer飼料を、0.5%群には0.5%GlcCer飼料を、それぞれ摂取させ、6週間飼育した。なお、6週間飼育の間、水及び各飼料は自由摂取とした。
6週間の飼育後、各ラットを屠殺し、心臓から血を採取した後、解剖を行った。肝臓を採取し、これからRNAを抽出してDNAマイクロアレイによりPPARαのmRNA(メッセンジャーRNA)の発現を解析した。RNA抽出はRNeasy Mini Kit (株式会社キアゲン)、を用いて行った。また、DNAマイクロアレイとしては3D-Gene Rat Oligo chip 12k(東レ株式会社)を用いた。なお、PPARα以外のコレステロール代謝関連遺伝子及びアディポネクチンシグナリング関連遺伝子のmRNA発現についても解析した。具体的には、PPARαの他に、Adipor2、Cpt2、Irs2、Hmgcs1、及びAcacbの各mRNA発現についても解析した。これらの各遺伝子についての簡潔な説明を以下に記す。また、解析結果を図2に示す。
Adipor2:アディポネクチンの受容体であり、主に肝臓に発現している。アディポネクチンが脂肪細胞から分泌されても、受容体が発現亢進しないとシグナルが伝達されないため、アディポネクチンシグナルの伝達のために重要である。なお、アディポネクチンは脂肪細胞から分泌される分泌タンパク質であり、インスリン感受性亢進作用、動脈硬化抑制作用、抗炎症作用、心筋肥大抑制作用等の作用を示す。
Cpt2:カルニチンに長鎖脂肪酸(アシルCoA)を結合させ、ミトコンドリア内膜に輸送するβ酸化系酵素の1種で、ミトコンドリア内膜内側に局在する。PPARαにより発現が亢進される。
Irs2:肝臓インスリンシグナルの主要メディエーターであり、発現が上昇することでインスリンによるグルコースからのグリコーゲン合成活性が亢進する。
Hmgcs1:コレステロール合成酵素の1種。アセトアセチルCoAを3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルCoAへと変換する。
Acacb:脂肪酸合成の律速酵素。アセチルCoAをATPを利用してカルボキシル化し、マロニルCoAを合成する。この遺伝子の発現低下により脂肪酸合成が抑制され、高脂血症や脂肪肝が抑制され得る。
図2には、コントロール群の発現量を1.0とし、0.1%群及び0.5%群がコントロール群の発現量の何倍の発現量を示したかをグラフにして表した。図2に示されるように、0.5%群においてPPARαの発現はコントロール群の約4倍近くにまで上昇した。発現量が約4倍になるほどまでにPPARαの発現を促進する成分はほとんど知られておらず、グルコシルセラミドが従来知られているPPARα発現促進成分に比べ、より強力に発現を促進することが明らかになった。
また、Adipor2の発現量も2倍以上となった。さらに、Cpt2及びIrs2の発現量は、0.1%群及び0.5%群ともにコントロール群の2倍近くになった。逆に、Hmgcs1及びAcacbの発現量は、0.1%群及び0.5%群ともにコントロール群に比べ減少した。
これらの結果から、グルコシルセラミドを摂取することにより、PPARαの発現が促進されること、PPARα以外のコレステロール代謝関連遺伝子及びアディポネクチンシグナリング関連遺伝子のmRNA発現も変化することがわかった。Cpt2の発現が促進されることによりβ酸化が促進され、また、Irs2の発現が促進されることによりグルコースからのグリコーゲン合成活性が亢進されることが期待される。また、Hmgcs1の発現が抑制されることによりコレステロール合成が抑制され、また、Acacbの発現が抑制されることにより脂肪酸合成が抑制されることが期待される。
各ラットの腸間膜脂肪重量及び肝臓の脂質含量の測定も行った。腸間膜脂肪重量は、解剖後に腸とその周囲脂肪を一緒に摘出し、その後、氷冷しながら腸から脂肪を引き離して秤量した。また、肝臓の脂質含量は、肝臓から切片を取り出し、常法(クロロホルム/メタノール(2:1)を用いたFolch法)に従い、全脂質を抽出して秤量した。
また、採取した血を用い、血漿中の総コレステロール値(T-Chol)及び非HDLコレステロール値(Non-HDL-Chol)についても測定した。総コレステロール値は、「コレステロール E-テストワコー」(和光純薬工業株式会社)を用いて測定した。また、非HDLコレステロール値は、「HDL-コレステロール E-テストワコー」(和光純薬工業株式会社)を用いてHDL-コレステロール値を求め、それを総コレステロール値から減じて算出した。
結果をそれぞれ図3及び図4に示す。さらにまた、採取した血を用い、血清中に存在するアディポネクチン及びインスリン量についても測定した。アディポネクチン量の測定は、ラットアディポネクチンELISAキット(アディポジェン)を用いて行った。またインスリン量の測定は、超高感度ラットインスリン測定キット(株式会社森永生科研究所)を用いて行った。結果を図5に示す。なお、図3〜図5の棒グラフにおいて、「a」及び「b」との表記は、aとbとの間に有意差(P<0.05)があることを示す。また、図3〜図5において、「Cont」はコントロール群を、「CE0.1」は0.1%群を、「CE0.5」は0.5%群を、それぞれ示す。
図3に示されるように、グルコシルセラミドを摂取した群(0.1%群及び0.5%群)では、コントロール群に比べ腸間膜脂肪重量が有意に減少していた。さらに、0.5%群では、肝臓の脂質含量も有意に減少していた。
また、図4に示されるように、0.5%群では、血漿総コレステロール値及び非HDLコレステロール値のいずれもが有意に減少していた。
また、図5に示されるように、0.5%群では、血清アディポネクチン量が有意に増加し、血清インスリン量が有意に減少していた。なお、アディポネクチンはシグナルカスケードにおいてPPARの上流に位置しており、アディポネクチンの発現が上昇することでPPARαの発現も上昇する。
以上のことから、グルコシルセラミドを摂取することにより、PPARαの発現が促進されることにより、脂肪量(特に腸間膜脂肪及び肝臓脂肪)が減少すること、血中コレステロール値が改善されること、インスリン感受性が亢進されること、が分かった。これにより、グルコシルセラミドを摂取することにより、内臓脂肪蓄積が抑制されることが確認できた。また、グルコシルセラミドが、脂質異常症の治療及び予防に有効であることが確認できた。

Claims (4)

  1. グルコシルセラミドを有効成分とする、PPARα発現促進剤。
  2. トウモロコシ由来グルコシルセラミドを有効成分とする、請求項1に記載のPPARα発現促進剤。
  3. 内臓脂肪蓄積抑制剤である、請求項1又は2に記載のPPARα発現促進剤。
  4. 脂質異常症治療及び予防剤である、請求項1又は2に記載のPPARα発現促進剤。
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