JP2002271468A - 電磁波防護装置およびそれが取り付けられた携帯用通信機器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 不要輻射を発生させることなく人体への電磁
エネルギーの吸収量を低減できる電磁波防護装置が取り
付けられた携帯電話機を得る。 【解決手段】 基部１ａとこの基部１ａの両端において
基部１ａから相互に同方向に屈曲した第１の屈曲部１ｂ
とで構成された板状体からなり、軟磁性体粉末と有機結
合剤とを含む複合磁性体で形成された電磁波防護装置１
が取り付けられた携帯電話機５である。携帯電話機５の
使用状態において第１の屈曲部１ｂが使用者に対して外
側を向き、基部１ａが携帯電話機５のアンテナ６よりも
使用者側に位置するように電磁波防護装置１を取り付け
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、主として携帯用通
信機器においてＥＭＩ対象に使用される電磁波干渉抑
制、もしくは人体や他の機器に対する電磁波の被爆低減
に使用される電磁波被爆防護に適用して有効な技術に関
する。

【０００２】

【従来の技術】近年携帯用通信機器の発展は目覚ましい
ものがあり、とりわけ携帯電話機の小型軽薄化が進めら
れてきた。これに伴い、アンテナの設置位置はより人体
に接近するため、アンテナと人体頭部との相互作用がク
ローズアップされるようになってきた。

【０００３】アンテナから放射された電波は、その一部
が最も近接している人体頭部に吸収されて残りが空間へ
放射される。したがって、人体頭部において電磁エネル
ギーが吸収される。これによって、アンテナの放射効率
・通信特性が低下するという問題が生じてきている。

【０００４】また、携帯電話機の使用時にはアンテナが
頭部に近接するために、頭部が局所的に強い電磁界に曝
されることになり、電力局所吸収量が増加することによ
る人体影響が懸念されている。そのため、携帯電話機を
対象とした電波の局所吸収指針が米国、欧州、日本で相
次いで設定された。

【０００５】こうした背景から、人体頭部における電磁
エネルギー被爆量の低減が望まれている。ここで、アン
テナと人体との距離を十分離すことによって電磁エネル
ギーの被爆量が低減できることが報告されているが、携
帯電話機を耳から十分に遠ざけて使用することはできな
いことから、これは現実的な解決策とはなっていない。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】アンテナ近傍で生じて
いる電磁界レベルを低減する技術として、発明者らは携
帯用通信機器のアンテナ近傍の人体側に平板状の電磁波
防護装置を配置して電磁波を吸収・抑制することを検討
した。

【０００７】これによれば、不要輻射を生じさせること
なく効率的に電磁界レベルの低減、ひいては人体頭部へ
の電磁エネルギーの局所吸収量の低減を実現することが
でき、人体への吸収によって生じていたアンテナの放射
効率・通信特性の低下を防ぐことができることが確認さ
れた。

【０００８】しかしながら、このような電磁波防護装置
による人体頭部への電磁エネルギーの局所吸収量の低減
は、発明者らが期待した程十分ではなかった。

【０００９】これについて考察した結果、配置された電
磁波防護装置が有限長であるためにその端部において電
磁界の集中が生じ、電磁波防護装置の中央部では十分な
電磁波低減が図れるものの、端部では逆に電磁界レベル
が増大する結果を生みだしているためであった。

【００１０】そこで、本発明は、不要輻射を発生させる
ことなく人体への電磁エネルギーの吸収量を低減するこ
とのできる電磁波防護装置およびそれが取り付けられた
携帯用通信機器を提供することを目的とする。

【００１１】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明に係る電磁波防護装置は、基部とこの基部の
両端において基部から相互に同方向に屈曲した第１の屈
曲部とで構成された板状体からなり、軟磁性体粉末と有
機結合剤とを含む複合磁性体で形成されたことを特徴と
する。

【００１２】また、本発明に係る電磁波防護装置は、基
部とこの基部の端部全周において基部から屈曲した第２
の屈曲部とで構成された板状体からなり、軟磁性体粉末
と有機結合剤とを含む複合磁性体で形成されたことを特
徴とする。

【００１３】さらに、本発明に係る電磁波防護装置は、
前述した発明において、軟磁性体粉末は扁平形状とさ
れ、軟磁性体粉末の磁性粒子配向方向は、複合磁性体の
厚さ方向に対して垂直に配向されていることを特徴とす
る。

【００１４】そして、本発明に係る携帯用通信機器は、
前述した電磁波防護装置が取り付けられたものであり、
携帯用通信機器の使用状態において第１の屈曲部または
第２の屈曲部が使用者に対して外側を向き、基部が携帯
用通信機器のアンテナよりも使用者側に位置するように
電磁波防護装置が取り付けられていることを特徴とす
る。

【００１５】このような発明によれば、不要輻射を発生
させることなくアンテナ近傍の電磁界レベルの低減を図
り、端部における電磁界集中による悪影響を排除して人
体への電磁エネルギーの吸収量を低減することが可能に
なる。

【００１６】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図
面を参照しつつさらに具体的に説明する。ここで、添付
図面において同一の部材には同一の符号を付しており、
また、重複した説明は省略されている。なお、発明の実
施の形態は、本発明が実施される特に有用な形態として
のものであり、本発明がその実施の形態に限定されるも
のではない。

【００１７】図１は本発明の一実施の形態である電磁波
防護装置を示す斜視図、図２は図１の電磁波防護装置が
用いられた携帯電話機の使用状態を斜め方向から示す説
明図、図３は図１の電磁波防護装置が用いられた携帯電
話機の使用状態を正面から示す説明図、図４は図１の電
磁波防護装置が用いられた携帯電話機の使用状態を上方
から示す説明図、図５は図１の電磁波防護装置における
軟磁性体粉末を示す説明図、図６は本発明者らが比較例
として用いた電磁波防護装置を示す斜視図、図７は図６
の電磁波防護装置が用いられた携帯電話機の使用状態を
斜め方向から示す説明図、図８は図６の電磁波防護装置
が用いられた携帯電話機の使用状態を正面から示す説明
図、図９は図６の電磁波防護装置が用いられた携帯電話
機の使用状態を上方から示す説明図、図１０は本発明の
一実施の形態である第１の組成による電磁波防護装置お
よび第２の組成による電磁波防護装置の単位体重当たり
の吸収電力量（ＳＡＲ）における平均局所吸収量の測定
結果を電磁波防護装置がない場合とともに示すグラフ、
図１１は図１の電磁波防護装置が用いられた携帯電話機
の使用状態における電磁エネルギー分布を上方から示す
説明図、図１２は図６の電磁波防護装置が用いられた携
帯電話機の使用状態における電磁エネルギー分布を上方
から示す説明図、図１３は本発明の一実施の形態である
電磁波防護装置の結合レベルを測定するための評価系を
示す概略図、図１４は本発明の他の実施の形態である電
磁波防護装置を示す斜視図、図１５は本発明のさらに他
の実施の形態である電磁波防護装置を示す斜視図、図１
６は本発明のさらに他の実施の形態である電磁波防護装
置を示す斜視図である。

【００１８】図１に示すように、本実施の形態の電磁波
防護装置１は、基部１ａとこの基部１ａの両端において
相互に同方向に屈曲した第１の屈曲部１ｂとからなる板
状体である。したがって、第１の屈曲部１ｂを含んだ断
面形状は略コの字形を呈している。そして、この電磁波
防護装置１は、軟磁性体粉末２と有機結合剤３とを含む
複合磁性体で形成されている（図５参照）。

【００１９】このような電磁波防護装置１が携帯電話機
５などの携帯用通信機器に用いられた場合には、図２〜
図４に示すように、当該携帯電話機５の使用状態におい
て第１の屈曲部１ｂが使用者に対して外側を向き、基部
１ａが携帯電話機５のアンテナ６よりも使用者側に位置
するように取り付けられる。したがって、アンテナ６の
給電点７よりも基部１ａの方が人体頭部４に近接してい
る。

【００２０】ここで、本実施の形態においては、次に示
す第１の組成からなる複合磁性体が用いられている。

【００２１】 軟磁性体粉末（８３．０重量部） Ｆｅ−Ａｌ−Ｓｉ合金 平均粒子径：３５μｍ アスペクト比：２０以上 形状：扁平 有機結合剤（１７．０重量部） 熱可塑性エストラマー このような複合磁性体からなる電磁波防護装置１におけ
る軟磁性体粉末２の配向方向を走査型電子顕微鏡にて解
折したモデルを図５に示す。

【００２２】図５においては、前述した第１の組成に示
した組成物を混練した圧延ロールにて０．３ｍｍの厚さ
のシート状にした複合磁性体を用い、図１に示すように
略コの字形状に折り曲げ加工し、図２〜図４に示したよ
うな位置および方向にて携帯電話機５の筐体の内側部分
に取り付けた。このとき、電磁波防護装置１の各寸法
は、図１において、Ｗ＝３５ｍｍ、Ｄ＝３５ｍｍ、Ｈ＝
１０ｍｍである。また、厚さは０．３ｍｍである。

【００２３】また、本実施の形態における変形例とし
て、次に示す第２の組成からなる複合磁性体を用いた。
なお、他の条件は全て第１の組成からなる複合磁性体と
同様とした。

【００２４】 軟磁性体粉末（８３．０重量部） Ｆｅ−Ａｌ−Ｓｉ合金 平均粒子径：３０μｍ アスペクト比：３以下 製法：水アトマイズ法 有機結合剤（１７．０重量部） 熱可塑性エストラマー ここで、本発明者らが比較例として用いた電磁波防護装
置２１を図６に、その電磁波防護装置２１の携帯電話機
５における取り付け状態を図７〜図９に示す。

【００２５】比較例の電磁波防護装置２１は厚さ０．３
ｍｍの平板状で前述した第２の組成からなり、各寸法
は、図６において、Ｗ＝３５ｍｍ、Ｄ＝３５ｍｍであ
る。そして、このような電磁波防護装置２１を、図７〜
図９に示すように、携帯電話機５の使用状態において携
帯電話機５のアンテナ６よりも使用者側に位置するよう
に携帯電話機５に取り付けた。

【００２６】図１０に携帯電話機５の単位体重当たりの
吸収電力量（ＳＡＲ）の平均局所吸収量測定結果につい
て、電磁波防護装置１を取り付けない場合を基準とした
相対値で示す。ここで、ＳＡＲ測定に用いた携帯電話機
５は、λ／４モノポールアンテナで周波数が９００ＭＨ
ｚ、アンテナ入力電力が０．６Ｗである。

【００２７】図１０から分かるように、本実施の形態の
電磁波防護装置１を用いることによってＳＡＲが大きく
低減している。また、第１の組成と第２の組成とを比較
すると、第１の組成の電磁波防護装置１でＳＡＲ低減効
果がより大きく出ている。

【００２８】図１１において、図１の電磁波防護装置１
が用いられた携帯電話機５の使用状態における電磁エネ
ルギー分布を上方から示す。また、図１２において、比
較例である図６の電磁波防護装置２１が用いられた携帯
電話機５の使用状態における電磁エネルギー分布を上方
から示す。

【００２９】これらの図面から分かるように、電磁波防
護装置１，２１をアンテナ６と人体頭部４との間に設置
した場合、空間での電磁エネルギーの分布はむしろ密に
なり磁界強度も増加しているものの、人体頭部４付近に
おける電磁エネルギー分布は疎になり磁界強度は大幅に
減少している。

【００３０】そして、注目すべきは電磁波防護装置１，
２１の端部における電磁エネルギーの集中であり、比較
例の単純な平板状のものでは端部近傍においては電磁波
防護装置２１がないときと比べても逆に被爆量が増加し
てしまう結果となっている。これに対して、本実施の形
態の電磁波防護装置１によれば、電磁エネルギーが密で
ある部分が人体頭部４から遠ざかっているので、人体頭
部４における電磁エネルギーの被爆量低減が図られてい
る。

【００３１】なお、図１３に示した評価系でネットワー
クアナライザを用いて結合レベルを測定した。ここで
は、電磁界発振器８の取り付けられた電磁界送信用マイ
クロループアンテナ１０ａと、電磁界強度測定器９の取
り付けられた電磁界受信用マイクロループアンテナ１０
ｂとを用いた。

【００３２】測定結果は、第１の組成の電磁波防護装置
１において−６ｄＢ、第２の組成の電磁波防護装置１お
よび比較例の電磁波防護装置２１において−１ｄＢであ
り、複合磁性体である電磁波防護装置１を取り付けるこ
とによる不要輻射は発生していないことが確認された。

【００３３】このように、本実施の形態の電磁波防護装
置１によれば、不要輻射を発生させることなくアンテナ
６近傍の電磁界レベルの低減を図り、端部における電磁
界集中による悪影響を排除して人体への電磁エネルギー
の吸収量を低減することが可能になる。

【００３４】図１４に本発明の他の実施の形態である電
磁波防護装置１１を示す。図示する場合においては、基
部１１ａの端部全周において基部１１ａから屈曲した第
２の屈曲部１１ｂが形成されている。したがって、この
ような電磁波防護装置１１を携帯電話機５に取り付けた
場合には、アンテナ６の延伸方向に対して平行方向およ
び垂直方向の双方の断面が略コの字形状となる。

【００３５】図１５および図１６に本発明のさらに他の
実施の形態である電磁波防護装置１２，１３を示す。第
１の屈曲部は図１に示す形状に限定されるものではな
く、基部１２ａ，１３ａの両端において基部１２ａ，１
３ａから相互に同方向に屈曲している限り、たとえば図
示するような第１の屈曲部１２ｂ，１３ｂの形状など、
様々な形状を採用することもできる。なお、同様に、第
２の屈曲部についても様々な形状を採用することができ
る。

【００３６】また、基部１ａ，１２ａ，１３ａの両端に
おいて第１の屈曲部１ｂ，１２ｂ，１３ｂを形成し、さ
らに他の箇所にも基部１ａ，１２ａ，１３ａの端部から
屈曲した屈曲部を形成してもよい。

【００３７】さらに、本実施の形態においては、電磁波
防護装置１，１１，１２，１３は携帯電話機５の一部を
覆っているが、全体を覆うように構成してもよいことは
いうまでもない。

【００３８】

【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によれば以下の効果を奏することができる。

【００３９】すなわち、不要輻射を発生させることなく
アンテナ近傍の電磁界レベルの低減を図り、端部におけ
る電磁界集中による悪影響を排除して人体への電磁エネ
ルギーの吸収量を低減することが可能になる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施の形態である電磁波防護装置を
示す斜視図である。

【図２】図１の電磁波防護装置が用いられた携帯電話機
の使用状態を斜め方向から示す説明図である。

【図３】図１の電磁波防護装置が用いられた携帯電話機
の使用状態を正面から示す説明図である。

【図４】図１の電磁波防護装置が用いられた携帯電話機
の使用状態を上方から示す説明図である。

【図５】図１の電磁波防護装置における軟磁性体粉末を
示す説明図である。

【図６】本発明者らが比較例として用いた電磁波防護装
置を示す斜視図である。

【図７】図６の電磁波防護装置が用いられた携帯電話機
の使用状態を斜め方向から示す説明図である。

【図８】図６の電磁波防護装置が用いられた携帯電話機
の使用状態を正面から示す説明図である。

【図９】図６の電磁波防護装置が用いられた携帯電話機
の使用状態を上方から示す説明図である。

【図１０】本発明の一実施の形態である第１の組成によ
る電磁波防護装置および第２の組成による電磁波防護装
置の単位体重当たりの吸収電力量（ＳＡＲ）における平
均局所吸収量の測定結果を電磁波防護装置がない場合と
ともに示すグラフである。

【図１１】図１の電磁波防護装置が用いられた携帯電話
機の使用状態における電磁エネルギー分布を上方から示
す説明図である。

【図１２】図６の電磁波防護装置が用いられた携帯電話
機の使用状態における電磁エネルギー分布を上方から示
す説明図である。

【図１３】本発明の一実施の形態である電磁波防護装置
の結合レベルを測定するための評価系を示す概略図であ
る。

【図１４】本発明の他の実施の形態である電磁波防護装
置を示す斜視図である。

【図１５】本発明のさらに他の実施の形態である電磁波
防護装置を示す斜視図である。

【図１６】本発明のさらに他の実施の形態である電磁波
防護装置を示す斜視図である。

【符号の説明】

１ 電磁波防護装置 １ａ 基部 １ｂ 第１の屈曲部 ２ 軟磁性体粉末 ３ 有機結合剤 ４ 人体頭部 ５ 携帯電話機（携帯用通信機器） ６ アンテナ ７ 給電点 ８ 電磁界発振器 ９ 電磁界強度測定器 １０ａ 電磁界送信用マイクロループアンテナ １０ｂ 電磁界受信用マイクロループアンテナ １１ 電磁波防護装置 １１ａ 基部 １１ｂ 第２の屈曲部 １２ 電磁波防護装置 １２ａ 基部 １２ｂ 第１の屈曲部 １３ 電磁波防護装置 １３ａ 基部 １３ｂ 第１の屈曲部 ２１ 電磁波防護装置

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Ｆターム(参考） 5E321 AA23 BB32 BB53 GG11 GH10 5J020 EA02 EA06 EA09 5J047 AA04 AA17 AB06 FD01 5K023 AA07 BB28 DD06

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 基部とこの基部の両端において前記基部
   から相互に同方向に屈曲した第１の屈曲部とで構成され
   た板状体からなり、 軟磁性体粉末と有機結合剤とを含む複合磁性体で形成さ
   れたことを特徴とする電磁波防護装置。
2. 【請求項２】 基部とこの基部の端部全周において前記
   基部から屈曲した第２の屈曲部とで構成された板状体か
   らなり、 軟磁性体粉末と有機結合剤とを含む複合磁性体で形成さ
   れたことを特徴とする電磁波防護装置。
3. 【請求項３】 前記軟磁性体粉末は扁平形状とされ、前
   記軟磁性体粉末の磁性粒子配向方向は、前記複合磁性体
   の厚さ方向に対して垂直に配向されていることを特徴と
   する請求項１または２記載の電磁波防護装置。
4. 【請求項４】 請求項１〜３の何れか一項に記載の電磁
   波防護装置が取り付けられた携帯用通信機器であって、 前記携帯用通信機器の使用状態において前記第１の屈曲
   部または前記第２の屈曲部が使用者に対して外側を向
   き、前記基部が前記携帯用通信機器のアンテナよりも使
   用者側に位置するように前記電磁波防護装置が取り付け
   られていることを特徴とする携帯用通信機器。