JP2002263951A - スプライン加工方法 - Google Patents

スプライン加工方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 スプラインシャフトのスプライン表面に流動
浸漬法により形成された樹脂層を、例えば200μm以
下の膜厚であっても精度よく、かつ安価に仕上げること
ができるスプライン加工方法を提供する。 【解決手段】 スプラインシャフト1のスプライン表面
に樹脂層7を流動浸漬法により形成した後、スプライン
シャフト1の中心位置決め用テーパ穴11と位置決め用
テーパ穴12を用いて位置決めを行って樹脂層7を所定
の膜厚に仕上げ、これにより、スプラインシャフト1の
周方向の位置決めを正確に行うことができるので、スプ
ラインシャフト1に形成すべき樹脂層7の膜厚が例えば
100〜200μm程度であっても、樹脂層7を均一に
仕上げることが可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ユニバーサルジョ
イント等のスプラインシャフト等に所定の膜厚の樹脂層
を形成するスプライン加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ユニバーサルジョイント等のスプライン
シャフトのスプライン表面は、消音、耐摩耗性、摺動荷
重の低減等を目的として、ナイロン系樹脂等による樹脂
層で被覆されている。この樹脂層の形成には、一般的に
流動浸漬法が用いられている。この流動浸漬法では、ま
ずショットブラスト、プライマー等の下地処理を行った
スプラインシャフト21を加熱炉で加熱する。次に、図
6に示すようにエア22により樹脂粉末23が流動状態
にされた流動浸漬槽24内に所定時間浸漬する。これに
より、樹脂粉末23がスプラインシャフト21に付着し
て熱で溶融することにより、樹脂層が形成される。
【0003】この流動浸漬法により樹脂層を形成する場
合、樹脂粉末23の溶融の程度はスプラインシャフトの
熱容量によるが、この熱容量にバラツキがあるために形
成される樹脂層が不均一になる。このため、流動浸漬法
により樹脂層の膜厚を厚め(例えば500μm程度)に
形成した後、ブローチ加工や切削加工等により所定の膜
厚(例えば200〜300μm程度)に仕上げている。
【0004】従来のブローチ加工では、まず図7に示す
ようにスプラインシャフト21の両端面の軸中心に設け
られた中心位置決め用テーパ穴30、31に、正面側押
さえ治具26に設けられた中心ピン28および背面側押
さえ治具27に設けられた中心ピン29を嵌合させ、正
面側押さえ治具26および背面側押さえ治具27により
スプラインシャフト21を挟み込むことで、このスプラ
インシャフト21を固定する。
【0005】このように固定されたスプラインシャフト
21を各押さえ治具26、27とともにブローチ型25
の方向へ移動させて、スプラインシャフト21の歯形状
と相似形状で所定量大きい内周歯面を有するブローチ型
25内を通している。このようにスプラインシャフト2
1がブローチ型25内を通るとき、スプラインシャフト
21に厚めに形成された樹脂層は、ブローチ型25によ
り削り落とされて所定の膜厚に仕上げられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、スプライン
シャフトに樹脂層を形成することによる消音効果は、一
般的に樹脂層の膜厚が厚いほうが有利である。一方、摺
動時の樹脂層の摩耗に対しては、樹脂層の膜厚が薄いほ
うが有利である。図5は本願発明者が調査した樹脂層の
膜厚と作動音、摩耗量の関係を示すグラフであり、作動
音については樹脂層を形成しない場合を100とした係
数値で、摩耗量については膜厚360μmの樹脂層を形
成した場合を100とした係数値で表している。図5に
示すように消音効果および耐久性を考慮すると、樹脂層
の膜厚が約100〜200μmであるとき最も効果的で
あることがわかった。
【0007】しかしながら、従来のブローチ加工では上
記のように中心位置だけで位置決めを行っているので、
ブローチ型25の歯とスプラインシャフト21の歯が周
方向において正確に合致しない。このため、従来のブロ
ーチ加工により樹脂層の膜厚を200μm以下に仕上げ
ようとすると、スプラインシャフトの歯の左右で樹脂層
の膜厚が異なり、ひどい場合には下地が露出するという
問題が生じていた。
【0008】また、ブローチ加工以外の例えば切削加工
等により樹脂層の膜厚を200μm以下に仕上げようと
する場合、精度を確保することは可能であるが、加工コ
ストが高くなるという問題があった。本発明は上記の事
情に鑑みて提案されたものであって、スプラインシャフ
トのスプライン表面に流動浸漬法により形成された樹脂
層を、薄い膜厚であっても精度よく、かつ安価に仕上げ
ることができるスプライン加工方法を提供することを目
的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成
するために以下の手段を採用している。すなわち、スプ
ラインシャフトのスプライン表面に樹脂層を流動浸漬法
により形成した後、この樹脂層をブローチ加工により所
定の膜厚に仕上げるスプライン加工方法において、上記
樹脂層の形成後、スプラインシャフトの軸中心位置およ
びこの軸中心位置よりも径方向外方に位置する位置決め
部とに基づいてブローチ型の歯とスプラインシャフトの
歯との周方向の位置関係を決定した状態で、上記樹脂層
を所定の膜厚に仕上げるという方法を採用している(請
求項1)。このような方法によれば、ブローチ型の歯と
スプラインシャフトの歯とを周方向において所定の間隔
で正確に合致させることができるので、スプラインシャ
フトに形成すべき樹脂層の膜厚が薄い場合であっても、
加工コストが安価なブローチ加工により樹脂層を均一に
仕上げることが可能となる。
【0010】また、上記樹脂層の膜厚は100〜200
μmに仕上げることが好ましい(請求項2)。この場
合、スプラインシャフトを樹脂層で被覆することによる
消音効果および耐久性の向上という目的を最も効果的に
達成することができる。
【0011】また、上記スプラインシャフトの軸中心位
置はこのスプラインシャフトの両端面軸中心位置に設け
られた中心位置決め用テーパ穴で決定され、上記スプラ
インシャフトの位置決め部をこのスプラインシャフトの
少なくとも一端面に設けられた位置決め用テーパ穴とす
ることができる(請求項3)。この場合、スプラインシ
ャフトの中心位置決め用テーパ穴と位置決め用テーパ穴
とを用いて位置決めを行っているので、スプラインシャ
フトの位置決めを容易に行うことができる。
【0012】
【発明の実施の形態】図1は本発明に係るスプライン加
工方法の一実施の形態でのブローチ加工方法を示すため
の側面図であり、図2は本実施の形態で使用するスプラ
インシャフトを示す正面図および側面断面図であり、図
3は本実施の形態で使用するブローチ型を示す正面図で
ある。以下、図に基づいてこのスプライン加工方法につ
いて説明する。なお、本実施の形態のスプライン加工方
法の流動浸漬法については従来と同様であるので図6を
用いて説明する。
【0013】本実施の形態のスプライン加工方法におい
ては、まず、ショットブラスト、プライマー等の下地処
理を行ったスプラインシャフト1を加熱炉で加熱する。
このスプラインシャフト1を、図6に示すようにエア2
2により樹脂粉末23が流動状態にされた流動浸漬槽2
4内に所定時間浸漬する。これにより、樹脂粉末23が
スプラインシャフト1に付着して熱で溶融することによ
り、樹脂層7が形成される。ここでは、樹脂層7の膜厚
を求められる膜厚(例えば100〜200μm程度)よ
り厚め(例えば500μm程度)に形成している。
【0014】次に、図1および図2に示すようにスプラ
インシャフト1の一端面の軸中心に設けられた中心位置
決め用テーパ穴11およびこの軸中心よりも径方向外方
に設けられた位置決め用テーパ穴(位置決め部)12
に、正面側押さえ治具3に設けられた各テーパ穴に合致
するテーパ状の先端部を有する中心ピン4および位置決
めピン5をそれぞれ嵌合させる。同時に、スプラインシ
ャフト1の他端面の軸中心に設けられた中心位置決め用
テーパ穴13に背面側押さえ治具6に設けられたこのテ
ーパ穴に合致するテーパ状の先端部を有する中心ピン7
を嵌合させる。
【0015】これにより、図3に示すようにスプライン
シャフト1の歯形状と相似形状で所定量大きい内周歯面
2aを有するブローチ型2とスプラインシャフト1とが
調芯される。また、図4に示すようにブローチ型2の歯
2aとスプラインシャフト1の歯1aとの両側面の周方
向の間隔Sが等しくなるようにスプラインシャフト1の
周方向位置が決定される。そして、正面側押さえ治具3
および背面側押さえ治具6によりスプラインシャフト1
を挟み込むことで、このスプラインシャフト1を固定す
る。
【0016】正面側押さえ治具3および背面側押さえ治
具6により固定されたスプラインシャフト1を、各押さ
え治具3、6とともにブローチ型2の方向へ移動させて
ブローチ型2内を通す。スプラインシャフト1がブロー
チ型2内を通るとき、図4に示すブローチ型2の歯2a
とスプラインシャフト1の歯1aとの間隔Sが、周方向
にずれるのが位置決めピン5によって防止される。そし
て、この間隔S以上となるスプラインシャフト1に厚め
に形成された樹脂層7は、ブローチ型2により削り落と
されて所定の膜厚に仕上げられる。
【0017】上記のようにスプラインシャフト1の中心
位置決め用テーパ穴11および位置決め用テーパ穴12
を用いて、スプラインシャフト1の位置決めを行ってい
るので、ブローチ型2の歯とスプラインシャフト1の歯
とを周方向においても所定の間隔で正確に合致させるこ
とができる。これにより、スプラインシャフト1に形成
すべき樹脂層7の膜厚が例えば100〜200μm程度
であっても、樹脂層を均一に仕上げることが可能とな
る。
【0018】なお、本実施の形態では、スプラインシャ
フト1を押さえ治具とともに移動させてブローチ型2内
を通しているが、これに限られるものではなく、例えば
スプラインシャフト1を押さえ治具とともに固定した状
態でブローチ型2を移動させて加工しても構わない。ま
た、本実施の形態では、スプラインシャフト1に1カ所
の位置決め用テーパ穴12を設けているが、これに限ら
れるものではなく、例えば2カ所以上に位置決め用テー
パ穴12を設けて位置決めを行っても構わない。
【0019】
【発明の効果】以上のように、本発明に係るスプライン
加工方法では、スプラインシャフトのスプライン表面に
樹脂層を流動浸漬法により形成した後、スプラインシャ
フトの軸中心位置および位置決め部とに基づいて位置決
めし、上記樹脂層を所定の膜厚に仕上げている。よっ
て、スプラインシャフトに形成すべき樹脂層の膜厚が薄
い場合であっても、加工コストが安価なブローチ加工に
より樹脂層を均一に仕上げることができる。
【0020】また、樹脂層の膜厚を100〜200μm
に仕上げる場合、スプラインシャフトを樹脂層で被覆す
ることによる消音効果および耐久性の向上という目的を
最も効果的に達成することができる。
【0021】また、スプラインシャフトの軸中心位置を
このスプラインシャフトの両端面軸中心位置に設けられ
た中心位置決め用テーパ穴で決定し、スプラインシャフ
トの位置決め部をこのスプラインシャフトの少なくとも
一端面に設けられた位置決め用テーパ穴とすることによ
り、スプラインシャフトの位置決めを容易に行うことが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るスプライン加工方法の一実施の形
態でのブローチ加工方法を示すための側面図である。
【図2】本発明に係るスプライン加工方法の一実施の形
態で使用するスプラインシャフトを示す正面図および側
面断面図である。
【図3】本発明に係るスプライン加工方法の一実施の形
態で使用するブローチ型を示す正面図である。
【図4】上記スプラインシャフトの歯とブローチ型の歯
との位置関係を示す説明図である。
【図5】スプラインシャフトに形成される樹脂層の膜厚
と作動音、摩耗量の関係を示すグラフである。
【図6】流動浸漬法による樹脂層の形成を示すための説
明図である。
【図7】従来のブローチ加工を示すための側面図であ
る。
【符号の説明】
1 スプラインシャフト 2 ブローチ型 3 正面側押さえ治具 4、7 中心ピン 5 位置決めピン 6 背面側押さえ治具 7 樹脂層 12 位置決め用テーパ穴 11、13 中心位置決め用テーパ穴

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】スプラインシャフトのスプライン表面に樹
    脂層を流動浸漬法により形成した後、この樹脂層をブロ
    ーチ加工により所定の膜厚に仕上げるスプライン加工方
    法において、 上記樹脂層の形成後、スプラインシャフトの軸中心位置
    およびこの軸中心位置よりも径方向外方に位置する位置
    決め部とに基づいてブローチ型の歯とスプラインシャフ
    トの歯との周方向の位置関係を決定した状態で、上記樹
    脂層を所定の膜厚に仕上げることを特徴とするスプライ
    ン加工方法。
  2. 【請求項2】上記樹脂層の膜厚を100〜200μmに
    仕上げる請求項1に記載のスプライン加工方法。
  3. 【請求項3】上記スプラインシャフトの軸中心位置はこ
    のスプラインシャフトの両端面軸中心位置に設けられた
    中心位置決め用テーパ穴で決定され、上記スプラインシ
    ャフトの位置決め部はこのスプラインシャフトの少なく
    とも一端面に設けられた位置決め用テーパ穴である請求
    項1または請求項2に記載のスプライン加工方法。
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