JP2002257479A - 熱処理炉及びその加熱制御装置 - Google Patents

熱処理炉及びその加熱制御装置

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JP2002257479A JP2001052129A JP2001052129A JP2002257479A JP 2002257479 A JP2002257479 A JP 2002257479A JP 2001052129 A JP2001052129 A JP 2001052129A JP 2001052129 A JP2001052129 A JP 2001052129A JP 2002257479 A JP2002257479 A JP 2002257479A
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陽介 平田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 量産に近い条件での制御が可能で、しかもよ
り高精度な制御が可能な熱処理炉の加熱制御装置を提供
する。 【解決手段】 セラミックス成形体wを加熱焼成する熱
処理炉1の加熱制御装置において、上記成形体を加熱し
ながら重量を常時測定し、その重量変化に基づいて所定
の重量変化速度になるようにヒータ出力値を制御する出
力制御手段5を備える。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セラミックス成形
体を加熱焼成する熱処理炉の加熱制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】セラミックス成形品の製造工程において
は、成形のために原料粉末にバインダが添加されてい
る。成形体を加熱焼成する段階で、このバインダが急激
に分解することがある。その際の発生ガス等が原因とな
ってセラミックス成形体に割れ、クラックが生じること
があり、また積層品では層間剥がれなどを生じることが
ある。このような問題を防止するために長時間をかけて
脱バインダ処理を行っているが、効率の良い最適な脱脂
条件を決定するには長時間を要し、困難な作業を伴う。
【0003】上記問題を解決する一つの手段として、従
来、例えば特開昭63−316104号公報に記載され
たものがある。この例では、セラミック試料を加熱炉で
加熱し、セラミック試料の物理的性質の変化、例えば寸
法の収縮,重量変化の時間的微分値を検出し、この値が
亀裂,割れを生じない最大収縮速度あるいは最大減量速
度を越えると、温度調節器により試料の収縮速度あるい
は減量速度が上記最大値以下となるようにセラミック試
料の温度を調節するようにしている。
【0004】また、特開平9−68509号公報には、
「材料の加熱によって該材料から発生するガスの発生量
に基づいて加熱温度を制御することを特徴とする材料の
加熱制御方法」が開示さている。
【0005】さらにまたニューセラミックス1997年
No.1には、脱バインダ過程の解析に有効なダイナミック
熱天秤、として所定の重量変化速度となるように昇温速
度を制御するようにした方式が記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記従来方法では、数
グラム程度の成形体しか対応できないのが実情である。
即ち、成形体が小さいか又は少量の場合は、所定温度を
目標にして加熱した際の重量減少への反応が早く、比較
的制御も容易である。しかし成形体が大きいか又は多量
になると、加熱した際の重量減少への反応が遅く、また
一度加熱され重量減少が進行すると所定の重量減少速度
以上になった場合にこれを抑える制御は難しくなる。
【0007】結局、従来方式では量産条件とは大きく異
なる試料にしか有効でないといった問題があった。その
ため試料の種類・形状・重量・設置状態等による熱伝達
の差や、試料の発熱等による様々な測定条件の変化に汎
用的に対応し、しかも利用者が制御方式等に関する専門
的な知識、経験、予備実験等を必要とせず、最適な制御
開始温度(時間)や最適な制御パラメータ等を自動的に
設定する方式が求められていた。
【0008】本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなさ
れたもので、量産に近い条件での制御が可能で、しかも
より高精度な制御が可能な熱処理炉及びその加熱制御装
置を提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、セラ
ミックス成形体を加熱焼成する熱処理炉の加熱制御装置
において、上記成形体を加熱しながら重量を常時測定
し、その重量変化に基づいて所定の重量変化速度になる
ようにヒータ出力値を制御する出力制御手段を備えたこ
とを特徴としている。
【0010】請求項2の発明は、請求項1において、上
記出力制御手段は、重量変化速度の設定値と重量変化速
度の実測値との偏差に基づいて、PID制御方式により
成形体の重量変化速度が設定値となるようにヒータ出力
値を制御する機能を有することを特徴としている。
【0011】請求項3の発明は、請求項2において、上
記出力制御手段は、上記重量変化速度の設定値と実測値
との偏差、該偏差の傾斜値、炉体温度の傾斜値等の測定
環境に基づいて、ファジィ推論を用いて制御パラメータ
を測定条件に合わせて自動的にチューニングする機能を
有することを特徴としている。
【0012】請求項4の発明は、請求項3において、上
記出力制御手段は、重量変化速度の設定値より算出した
所定の重量減少速度に到達したときファジィ推論を自動
的に開始し、重量変化率の設定値が設定上限温度に到達
したときファジィ推論を自動的に終了する機能を有する
ことを特徴としている。
【0013】請求項5の発明は、請求項2において、2
つ以上の独立制御回路を備え、上記出力制御手段は、特
定のゾーン(メインゾーン)のみヒータ出力値制御を行
い、該メインゾーン以外のゾーンは該メインゾーンの検
出温度を設定温度として温度制御する機能を有すること
を特徴としている。
【0014】請求項6の発明は、請求項1ないし5の何
れかに記載の加熱制御装置を備えたことを特徴とする熱
処理炉である。
【0015】
【発明の作用効果】請求項1,6の発明によれば、成形
体を加熱しながら重量を常時測定し、その重量変化に基
づいて所定の重量変化速度になるようにヒータ出力値を
制御するようにしたので、実際の量産に対応した条件の
もとでの脱バインダ処理が可能であり、しかもより高精
度な制御が可能である。
【0016】また一回の演算式によってヒータ出力を求
めてフィードバック制御を行なうことにより、材料の加
熱をより直接的に制御でき、対象となる材料が数百グラ
ム以上の場合においても精度よく制御を行なうことがで
きる。なお、従来は特定の演算式によって昇温速度また
は加熱温度を求めて、さらにその昇温速度または加熱温
度に基づいてPID制御等の演算式によってヒータ出力
値を求めサイリスタに出力するという方式であったため
少なくとも2回の演算を行なう必要があり制御形態が複
雑になり、対象となる材料が多い場合(例えば数百グラ
ム程度の場合)には制御精度の向上は困難であった。
【0017】請求項2,6の発明によれば、重量変化速
度の設定値と重量変化速度の実測値との偏差に基づい
て、PID制御方式により成形体の重量変化速度が設定
値となるようにヒータ出力値を制御するようにしたの
で、より一層実際の量産に対応した条件のもとでの脱バ
インダ処理が可能であり、しかもより高精度な制御が可
能である。
【0018】請求項3,6の発明によれば、上記重量変
化速度の設定値と実測値との偏差、該偏差の傾斜値、炉
体温度の傾斜値等の測定環境に基づいて、ファジィ推論
を用いて制御パラメータを測定条件に合わせて自動的に
チューニングするようにしたので、利用者が制御方式等
に関する専門知識を持つ必要がなく、例えば熱伝導率の
大きく異なる材料や、熱容量の大きな匣を多段に重ねた
場合、あるいは材料のチャージ量を増加させた場合など
様々な条件に汎用的に対応し、また外乱等によるバラツ
キも修正し、精度良く制御を行なうことができる。な
お、従来の方式で測定条件に合わせて所定の重量変化速
度を得るように制御を行なう場合、数多くの予備実験や
経験、制御方式等に関する専門知識が必要であり、非常
に困難であった。
【0019】請求項4,6の発明によれば、重量変化速
度の設定値より算出した所定の重量減少速度に到達した
ときファジィ推論を自動的に開始し、重量変化率の設定
値が設定上限温度に到達したときファジィ推論を自動的
に終了するようにしたので、材料や重量変化速度設定値
に合わせた最適な制御開始温度(時間)を、材料の重量
変化速度から自動的に設定することができ、材料や制御
方式等に関する専門知識を必要とせず使用できるように
なり、また、重量変化開始直後の制御も精度よく所定の
重量変化速度に制御可能になった。なお、従来の方法で
は、重量変化速度設定値や、測定材料が変わった場合、
利用者が制御開始温度(時間)等を設定する必要があ
り、材料や制御等に関する知識,経験,予備実験等が要
求され、また重量減少開始直後の重量変化速度が設定通
りに制御できない問題があった。
【0020】請求項5,6の発明によれば、特定のゾー
ン(メインゾーン)のみヒータ出力値制御とし、該メイ
ンゾーン以外のゾーンは該メインゾーンの検出温度を設
定温度として温度制御するようにしたので、予備実験を
必要とすることなく、炉内上下方向の温度分布のばらつ
きを低減でき、さらに汎用性の高いシステムをそのまま
多ゾーン炉に適応可能になった。
【0021】
【実施の形態】以下本発明の実施形態を図に基づいて説
明する。図1,図2は本発明の第1実施形態を説明する
ための図であり、図1はブロック構成図であり、図2は
炉体温度及び材料重量の時間経過に伴う変化特性を示す
特性図である。
【0022】図中、1は加熱炉、2は炉内に配置された
材料wの重量を常時計測する天秤、3は材料wを加熱す
るヒータ、4はヒータ3への給電をオンオフ制御するサ
イリスタ、5は天秤2によって測定された材料wの重量
データが入力され、該重量データをもとに所要のヒータ
出力値を算出し、サイリスタ4に制御信号を出力するC
PUである。このCPU5にはあらかじめ所要の重量変
化速度目標値、最終到達重量および上限温度が設定され
ている。なお、炉内温度は図示しない温度センサにより
検出され、該検出値は上記CPU5に入力されている。
【0023】本第1実施形態では、図2に示すように、
まず、炉体温度が所定温度Toになるまでは一定の昇温
速度となるようにヒータ3への給電量が制御されて上記
材料wが加熱される。そして上記所定温度Toに達する
と、CPU5において、天秤2で測定された材料wの重
量データに基づいて重量変化速度(単位時間当たりの重
量変化量)が計算され、該計算値が所定の目標重量変化
速度となるように所要のヒータ出力値が算出される。
【0024】上記算出されたヒータ出力値に基づく制御
信号がサイリスタ4に出力されてヒータ3の出力制御が
行なわれる。この一連の処理が一定の周期ごとに逐次繰
り返えされ、このようにして材料wが所定の重量変化速
度でもって減量していき、脱バインダ処理がなされる。
なお、図2は材料wの重量減少状態を示しており、該重
量減少の割合が重量変化速度となる。
【0025】上記脱バインダ処理の過程で材料wの重量
があらかじめ設定された最終到達重量Woに達するか、
または炉体温度が上限温度に達した場合、本脱バインダ
処理が終了したとみなされ、その後は所定の温度プロフ
ァイルに合わせた温度制御が行われる。
【0026】このように本第1実施形態では、炉体温度
が所定温度Toに達した後においては、材料wの重量が
所定の目標重量変化速度で減量していくようにヒータ3
の出力値を計算し、該計算値に基づいてヒータ3の出力
制御を行うようにしたので、実際の量産に対応した条件
のもとでの脱バインダ処理が可能であり、しかもより高
精度な制御が可能である。
【0027】上述のように従来は所要の昇温速度または
加熱温度を求めてフィードバック制御を行っていたが、
この場合特定の演算式によって昇温速度または加熱温度
を求めて、さらにその昇温速度または加熱温度に基づい
て一般的にはPID制御等の演算式によってヒータ出力
値を求めサイリスタに出力するという方式であった。こ
れでは制御を行なうために少なくとも2回の演算を行な
う必要があるため制御形態が複雑になり、対象となる材
料が多い場合(例えば数百グラム程度の場合)には制御
精度の向上は困難であった。
【0028】これに対して本第1実施形態の方式では一
回の演算式によってヒータ出力を求めてフィードバック
制御を行なうことにより、材料の加熱をより直接的に制
御でき、対象となる材料が数百グラム以上の場合におい
ても精度よく制御を行なうことができる。
【0029】ちなみに、上記従来の所定の重量変化速度
で減量するよう「温度制御」するようにした方式の場合
には、数グラムといった少量の試料については、温度状
態の重量減少への反応が早いため問題は生じない。しか
し量産条件に対応した製品の場合には、温度状態の重量
変化速度に対する反応が遅く、しかも一旦加熱されて重
量減少が進行した場合に重量減少速度が過大となるとこ
れを抑える制御は非常に困難である。これに対して本実
施形態では、重量変化速度が所定値となるようにヒータ
出力自体を制御するようにしているので、該ヒータ出力
の重量変化速度に対する反応が極めて直接的であること
から、制御精度を向上できる。
【0030】次に本発明の第2実施形態を説明する。本
第2実施形態装置は上記第1実施形態と同様に図1に示
す構成となっている。そして上記CPU5は、直近の過
去5回の重量測定データをもとに重量変化速度実測値を
求め、これと目標値である重量変化速度設定値との偏差
eを求め、該偏差eを基にPID制御方式によりヒータ
出力値を求める。具体的には、上記偏差eを下記の式に
代入し、ヒータ出力値を求める。
【0031】M=Kp×e+Ki×∫edt+Kd×d
e/dt ここで、M:ヒータ出力値(%) Kp:比例係数 Ki:積分係数 Kd:微分係数 dt:制御周期の単位時間。 積分項はeの累積値とし、最大値をMm(最大出力値)
/Kiに制限している。微分値は現在の偏差eと前回制
御時の偏差との差を用いた。
【0032】こうして求めた出力値によってヒータの出
力制御を行い、これを例えば制御周期を6秒として繰り
返し行なうことによって、上記重量変化速度の実測値が
目標値となるように制御する。
【0033】このように本第2実施形態では、PID制
御とヒータ出力値フィードバック制御の組み合わせによ
って材料wの重量変化速度が目標値になるように制御し
たので、実際の量産に対応した条件のもとでの脱バイン
ダ処理が可能であり、しかもより高精度な制御が可能で
ある。
【0034】ここで上記実施形態の場合、測定条件の変
化に対して制御方式等に関する専門知識、経験、予備実
験等を必要とするという問題が懸念される。また、ある
特定条件では重量変化速度を一定に制御できるが、測定
条件を変えた場合、重量変化開始温度,重量変化開始時
間や試料への熱伝達や必要なヒータ出力等が大きく変わ
るため、同様の制御が困難であるといった懸念もある。
【0035】図3ないし図14は上記懸念を回避できる
本発明の第3実施形態を説明するための図であり、図3
は全体構成を示すブロック構成図、図4はCPUの機能
を説明するための機能ブロック図、図5〜図13はファ
ジイ制御の説明図、図14は制御結果を示す重量変化特
性図であり、図中、図1と同一符号は同一または相当部
分を示す。
【0036】本第3実施形態の加熱炉1では、材料w
は、その重量が常時天秤2によって測定されているとと
もに、その温度が熱電対6によって常時測定されてい
る。またヒーター3の温度は熱電対7によって常時測定
されている。そしてこれらの測定データは通信によって
CPU5に読み込まれる。該CPU5では、これらのデ
ータをもとに材料wの重量変化速度が所定の目標重量変
化速度となるように所要のヒータ出力を算出し、該ヒー
タ出力を発生させるための制御信号をサイリスタ4に出
力し、該サイリスタ4はCPU5からの制御信号をもと
にヒーター3の出力制御を行なう。
【0037】本第3実施形態では、CPU5は図4に示
す制御を行う。まず例えば過去10回の重量測定データ
(試料重量)をもとに重量変化速度実測値を求め、これ
と重量変化速度設定値(目標値)とから偏差eを求め
る。また重量変化速度の傾斜値de/dtを求める。次
に、炉体温度実測値より、該炉体温度の傾斜値dT /d
t を求める。さらに過去1分間のヒータへの出力値の積
算値Mtotal を求める。
【0038】そしてこれらのデータを入力要素としたフ
ァジィ推論により、例えば「偏差eが小さく、偏差の傾
斜値de/dtが小さく、炉体温度の傾斜値dT /dt
が大きく、出力値の1分間の積算値Mtotal が大きい場
合は、比例定数Kpを小さくし、積分係数Kiを大きく
し、微分係数Kdを小さくする」といった約500のル
ールに従い、後述する式の各係数(Kp,Ki,Kd)
を出力要素として求める。
【0039】このファジィ推論における演算プロセスは
図13に示すとおりである。即ち、上記偏差e,偏差の
傾斜値de/dt,炉体温度の傾斜値dT /dt,出力
値の1分間の積算値Mtotal 等が入力要素としてデータ
入力され、メンバシップ関数より上記入力要素ラベルと
その適合度が決定され、各入力要素ラベルの組合せに対
応する出力要素ラベルをルールより決定し、各出力要素
を重心法により計算し、各パラメータを決定する。
【0040】このような演算を数秒から数十秒周期で行
い、最適な係数を設定することで様々な測定環境に汎用
的に適用でき、さらに精度良くダイナミックTG制御が
可能となる。
【0041】ファジィ推論による本制御における入力要
素は、 (1) 偏差e (2) 偏差の傾斜値de/ dt (3) 炉体温度の傾斜値dT/dt (4) 過去1分間の出力積算値Motal で、これらのメンバシップ関数を図6〜図9に示す。
【0042】また出力要素は (1) 係数Kp (2) 係数Ki (3) 係数Kd で、これらのメンバシップ関数を図10〜図12に示
す。これらの図に示された、NS,NL,ZR,PS,
PM,PLは大きさを定性的に評価するためにメンバシ
ップ関数に与えた名称であり、下記の意味を持つ。
【0043】NL:負側大(Negative Lar
ge) NS:負側小(Negative Small) ZR:零(Zero) PS:正側小(Positive Small) PM:正側中(Positive Medium) PL:正側大(Positive Large) ここで図5の破線で示す状態におけるファジィ推論演
算プロセスを示す。状態における各入力要素は、 (1)偏差e=5 (2)偏差の傾斜値de/ dt=−1 (3)炉体温度の傾斜値dT/dt=−1 (4)過去1分間の出力積算値Motal =80 である。
【0044】各要素のメンバシップ関数よりラベルとそ
の適合度を求めると、図6〜図9に破線で示すように、 (1)偏差e:PL=0.6,PS=0.3 (2)偏差の傾斜値de/ dt:ZR=0.7,NS=
0.2 (3)炉体温度の傾斜値dT/dt:ZR=0.6,NS=
0.4 (4)過去1分間の出力積算値Motal :PS=0.8,Z
R=0.2 となる。
【0045】これらの入力要素の適合ラベル組合せに対
応した出力要素ラベルを経験則より記述したのが「ルー
ル」であるが、この「ルール」は各入力要素メンバシッ
プ関数ラベルの組合せである。本制御における入力要素
ラベル数はそれぞれ5、5、5、4であるため、ルール
数は、5×5×5×4=500(通り)である。その抜
粋を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】上述の状態の入力要素ラベルの組合せは
表2に示すように16通りあり(表2中の( )内の数
字は各適合度を示す)、ルールによりそれらに対応する
出力要素のラベルが決定する。また各入力要素適合度の
最少値をルールの適合度とする。表1のルールより上記
入力要素に対応する出力要素ラベルを探すと表3に示す
通りとなる。
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】これらの結果から各出力値を重心法により
計算する。この方法は、各ラベルの座標と考えその適合
度で重み付けをして合計した値を適合度の総和で割るこ
とで、メンバシップ関数を図形として考えた際の重心位
置の計算に相当する方法である。各出力要素Kp,K
i,Kdは式1,式2,式3に示すように、それぞれ2
6.2、65.5、37.1となる。
【0051】
【式1】
【0052】
【式2】
【0053】
【式3】
【0054】これらの出力値を下記の演算式に代入しヒ
ーター出力値を計算する。
【0055】M=Kp×e+Ki×∫edt+Kd×d
e/dt ここで、M:出力値(%) Kp:比例係数 Ki:積分係数 Kd:微分係数 dtは制御周期の単位時間、積分項は偏差eの累積値、
微分項は現在の偏差eと前回制御時の偏差との差を用い
ている。
【0056】これを例えばファジィ推論を1分周期で、
ヒータ出力値計算を6秒周期で行い、その出力値よりヒ
ータ出力制御を繰り返し行なうことで、所定の重量変化
速度を得るように制御する。
【0057】従来の方式で測定条件に合わせて所定の重
量変化速度を得るように制御を行なう場合、数多くの予
備実験や経験、制御方式等に関する専門知識が必要であ
り、非常に困難であった。
【0058】本第3実施形態では、測定条件に合わせた
最適なPIDの制御係数を、ファジィ推論により自動的
に計算することによって、利用者が制御方式等に関する
専門知識を持つ必要がなく、例えば熱伝導率の大きく異
なる材料や、熱容量の大きな匣を多段に重ねた場合、あ
るいは材料のチャージ量を増加させた場合など様々な条
件に汎用的に対応し、また外乱等によるバラツキも修正
し、精度良く制御を行なうことができる。
【0059】実際に評価を行った際の制御結果を図14
に示す。同図から明らかなように、本第3実施形態方式
を採用することにより、ハンチングを抑え一定の重量変
化速度で制御を行なうことができた。なお、ファジィ推
論の出力要素は、PIDの制御係数の増減量でも可能で
ある。
【0060】次に本発明の第4実施形態を説明する。本
第4実施形態における制御装置は上記第3実施形態と同
様に図3,図4に示す構成となっている。そしてCPU
5にはあらかじめ所要の重量変化速度目標値、最終到達
重量および上限温度が設定されており、該CPU5は、
上記重量変化速度目標値より計算開始係数Krを自動的
に決定する。ただし、このKrは0より大きく1以下の
値で、重量変化速度目標値が小さいほど1に近い値をと
る。
【0061】まず、ある温度プロファイルで材料wを加
熱する。その際に、CPU5は、天秤2によって測定さ
れた材料wの過去10回の重量データをもとに、重量変
化速度を常時計算する。その重量変化速度が設定値に計
算開始係数Krを掛けた値に到達したら、設定プロファ
イルでの加熱を終了し、所定の重量変化速度になるよう
なヒータ出力値を算出し、ヒータ3の出力を該計算値に
制御することで所定の重量変化速度を得る。
【0062】上記過程で材料wの重量があらかじめ設定
しておいた最終到達重量に達するか、または温度が上限
温度に達した場合、本制御の終了とみなしてその後は所
定の温度プロファイルに合わせて温度制御を行なう。
【0063】従来の方法では、重量変化速度設定値や、
測定材料が変わった場合、利用者が制御開始温度(時
間)等を設定する必要があり、材料や制御等に関する知
識,経験,予備実験等が要求され、また重量減少開始直
後の重量変化速度が設定通りに制御できない問題があっ
た。
【0064】本第4実施形態では、材料や重量変化速度
設定値に合わせた最適な制御開始温度(時間)を、材料
の重量変化速度寄り自動的に設定することにより、材料
や制御方式等に関する専門知識を必要とせず使用できる
ようになり、また、重量変化開始直後の制御も精度よく
所定の重量変化速度に制御可能になった。
【0065】上記第4実施形態は、量産に近い条件での
ダイナミックTG制御が可能な、材料の加熱制御方式で
あるが、これをさらに量産に近づけようと考えた場合、
炉体自体の容積の増加に伴う回路構成の多ゾーン化が予
想される。例えば、上中下の3ゾーン構成の炉床昇降式
炉の場合、炉体下部からの放熱の影響により下段ゾーン
は上段・中断に比べ高い出力値が必要である。このよう
な回路構成の炉に上述のダイナミックTG制御方式を適
用する場合、各ゾーンへの出力値を独立に計算すること
ができないため、出力値の補正等が必要である。しか
し、その補正値は炉体構造、ヒーター構成・種類等で全
く異なり、汎用的に対応することは困難である。
【0066】図15〜16は本発明の第5実施形態を説
明するための図であり、図1,図3と同一符号は同一又
は相当部分を示す。本第5実施形態では、炉体1は上下
方向中心のメインゾーン1aと、その上,下に位置する
上,下サブゾーン1b,1cとで構成されている。該各
ゾーン1a〜1cの材料wの合計重量は電子天秤2によ
って常時測定されている。
【0067】上記各ゾーン1a〜1cは別個独立に設け
られたヒータ出力制御回路を備えており、該各制御回路
は、各ゾーン用のヒータ3a〜3c、該各ヒータ3a〜
3cの温度を常時計測する熱電対7a〜7c、上記各ヒ
ータ3a〜3cへの給電回路をオンオフするサイリスタ
4a〜4cを備えている。
【0068】そして上記各熱電対7a〜7c及び天秤2
の検出データは通信によってCPU5に読み込まれる。
このCPU5は、これらのデータをもとに、材料wの重
量変化速度が所定の目標値となるようにメインゾーン1
aのヒータ3aにて発生させるべきヒーター出力を算出
し、サイリスタ4aにサイリスタ制御信号を出力する。
サイリスタ4aはCPU5からの制御信号をもとにヒー
ター4aの出力制御を行なう。
【0069】そして上記CPU5は、熱電対7aで測定
されたメインゾーン1aの温度を上,下サブゾーン1
b,1cの目標温度として温調器8a,8bに設定し、
該温調器8a,8bにより該サブゾーン1b,1cの温
度をメインゾーン1aの温度に一致させる温度制御を行
う。
【0070】本実施形態では、メインゾーン1aにおい
ては、上記実施形態におけるのと同様のヒータ出力制御
が行われ、サブゾーン1b,1cでは上記メインゾーン
1aにおける制御方式で制御されたヒーター温度を設定
値とし、温調器にて独立に制御される。
【0071】多ゾーンに分割された構造の炉は、そのゾ
ーン毎に必要な出力値が異なるため独立に制御すること
が望ましい。この独立制御の場合、各ゾーンを、材料w
の重量変化により計算されたヒータ出力値に基づいて制
御するには各ゾーン独立に計算することが必要となる
が、出力値の計算式は1つであるため各ゾーン独立に計
算することは不可能である。よって、計算された値を各
ゾーン毎に補正することが必要となるが、そのための補
正式を導くための予備実験の手間が大きく、しかも汎用
性に欠けるという問題がある。
【0072】本第5実施形態では、メインゾーンのみヒ
ータ出力制御を行い、上下サブゾーンについてはメイン
ゾーンの温度実測値を目標温度とする温度制御を行うよ
うにしたので、上記予備実験の手間等の問題を回避しつ
つ、炉内上下方向の温度分布のばらつきを低減でき、さ
らに汎用性の高いシステムをそのまま多ゾーン炉に適応
可能になった。
【0073】本実施形態では、多ゾーン炉においてダイ
ナミックTG制御を行なう場合、ある1つのゾーン(メ
インゾーンとする)を従来の出力値制御方式で制御し、
その他のゾーンはその出力値制御されたメインゾーンの
温度を設定温度とし、これを制御する方式を開発した。
これにより、様々な回路構成の炉に汎用的に対応し、各
ソーンを独立に制御することにより炉内温度分布が均一
になり、より量産に近い条件(匣20段以上)でのダイ
ナミックTG制御が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る熱処理炉の加熱制
御装置のブロック構成図である。
【図2】上記第1実施形態における重量変化速度自動制
御結果を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る熱処理炉の加熱制
御装置のブロック構成図である。
【図4】上記第2実施形態におけるCPUの制御内容を
示すブロック構成図である。
【図5】本発明の第3実施形態におけるファジィ制御を
説明するための炉体温度及び材料重量の時間変化を示す
特性図である。
【図6】上記ファジィ制御におけるメンバシップ関数を
示す図である。
【図7】上記ファジィ制御におけるメンバシップ関数を
示す図である。
【図8】上記ファジィ制御におけるメンバシップ関数を
示す図である。
【図9】上記ファジィ制御におけるメンバシップ関数を
示す図である。
【図10】上記ファジィ制御におけるメンバシップ関数
を示す図である。
【図11】上記ファジィ制御におけるメンバシップ関数
を示す図である。
【図12】上記ファジィ制御におけるメンバシップ関数
を示す図である。
【図13】上記ファジィ制御のプロセスを示すブロック
図である。
【図14】上記制御結果を示す特性図である。
【図15】本発明の第5実施形態に係る加熱炉の制御装
置を示すブロック構成図である。
【図16】上記第5実施形態における制御結果を示す特
性図である。
【符号の説明】
1 熱処理炉 3 ヒータ 4 サイリスタ 5 CPU(出力制御手段) w セラミックス成形体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 秋本 茂 京都府長岡京市天神2丁目26番10号 株式 会社村田製作所内 Fターム(参考) 3K058 BA19 CA12 CA22 CA28 CA69 CA92 CB01 4K056 AA12 BB06 CA10 FA04 FA11 4K063 AA06 AA12 BA04 CA03 CA09 FA29

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セラミックス成形体を加熱焼成する熱処
    理炉の加熱制御装置において、上記成形体を加熱しなが
    ら重量を常時測定し、その重量変化に基づいて所定の重
    量変化速度になるようにヒータ出力値を制御する出力制
    御手段を備えたことを特徴とする熱処理炉の加熱制御装
    置。
  2. 【請求項2】 請求項1において、上記出力制御手段
    は、重量変化速度の設定値と重量変化速度の実測値との
    偏差に基づいて、PID制御方式により成形体の重量変
    化速度が設定値となるようにヒータ出力値を制御する機
    能を有することを特徴とする熱処理炉の加熱制御装置。
  3. 【請求項3】 請求項2において、上記出力制御手段
    は、上記重量変化速度の設定値と実測値との偏差、該偏
    差の傾斜値、炉体温度の傾斜値等の測定環境に基づい
    て、ファジィ推論を用いて制御パラメータを測定条件に
    合わせて自動的にチューニングする機能を有することを
    特徴とする熱処理炉の加熱制御装置。
  4. 【請求項4】 請求項3において、上記出力制御手段
    は、重量変化速度の設定値より算出した所定の重量減少
    速度に到達したときファジィ推論を自動的に開始し、重
    量変化率の設定値が設定上限温度に到達したときファジ
    ィ推論を自動的に終了する機能を有することを特徴とす
    る熱処理炉の加熱制御装置。
  5. 【請求項5】 請求項2において、2つ以上の独立制御
    回路を備え、上記出力制御手段は、特定のゾーン(メイ
    ンゾーン)のみヒータ出力値制御を行い、該メインゾー
    ン以外のゾーンは該メインゾーンの検出温度を設定温度
    として温度制御する機能を有することを特徴とする熱処
    理炉の加熱制御装置。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし5の何れかに記載の加熱
    制御装置を備えたことを特徴とする熱処理炉。
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