JP2002256320A - 溶銑の脱珪・脱りん方法 - Google Patents

溶銑の脱珪・脱りん方法

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  • Refinement Of Pig-Iron, Manufacture Of Cast Iron, And Steel Manufacture Other Than In Revolving Furnaces (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 少ない設備費で全量安定処理可能な溶銑の脱
珪・脱りん方法を提供する。 【解決手段】 CaO 源と酸素源を添加し、溶銑の脱珪脱
りん処理を行うに際し、溶銑上の空間容積を溶銑1t当
たり0.20m3/t以上、0.6m3/t 以下とし、生石灰源とし
て、粉状のCaO 源添加を行う。更に、補正CaO 重量濃度
=全CaO 重量濃度−フリーライム重量濃度とするとき、
下記(1)式で定義するスラグ塩基度を1.2以上、2.5
未満とする。更に、CaO 源は塩基度1.4 相当分以上が5
mm未満の粉状、残りは5mm以上のCaO 源で添加する。更
に粒径5mm以上のCaO 源は精錬初期に、5mm未満の粉状
CaO 源は末期に添加する。 スラグ塩基度=(補正CaO 重量濃度)/(SiO2重量濃
度) (1)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として高炉溶銑
を原料とする鉄鋼の効率的な精錬方法、特に、少ない設
備費で全量安定処理可能な効率的な溶銑中の珪素、りん
の除去工程に関わる。
【0002】
【従来の技術】鉄鋼鋼材利用環境厳格化に対応するため
の高純度化、価格競争に伴う製造コスト削減の目的で、
溶銑を主たる原料とする鉄鋼製造プロセスにおいては溶
銑予備処理技術が発展して来ている。一方、精錬時に発
生する副産物であるスラグはその利用先が限定的である
ことからその処理方法が問題となっている。
【0003】溶銑に含まれる不純物元素である珪素、り
ん、硫黄、炭素の除去は、夫々目的とする元素特有の物
理化学的条件で分割して精錬・除去するのが反応の上で
は望ましいが、実操業においては、多段分割精錬を行う
と、移し替えに伴う熱エネルギー、鉄歩留のロス増加、
或いは精錬設備費用増加というマイナス面もあるので、
トータルでの効率を考えた場合にはある程度の離合・集
散に配慮したプロセスが種々提案されている。
【0004】特開平2-47212 号公報には、脱珪処理と脱
りん処理を同時に行う方法が記載されている。この方法
を利用すれば、脱りん処理に先立って必要とされていた
脱珪処理が省略され、同一プロセスで可能となり、か
つ、脱珪反応に伴う発熱をスクラップ溶解に使える、と
いう利点があるが、これを行うためには大きな反応容器
の容積が必要となる。即ち、脱珪と脱りんを同時に行わ
せるためには酸素供給速度を高める必要があるが、そう
すると必然として脱炭反応に伴うCOガス発生量が増大す
るのでスラグフォーミングが著しくなり、スロッピング
を助長し、操業安定性に欠けることがある。また、これ
を避けるためには大きな反応容器を必要とし、新設の場
合には設備費用が高価となる。
【0005】一方、脱珪や脱りん処理におけるフォーミ
ング防止方法については従来より種々提案されており、
その中でコークス粉等の炭材添加が効果的であることは
良く知られている。例えば、特開平5-287347号公報、あ
るいは特開平5-287348号公報には、トーピードカー処理
におけるフォーミング抑制方法として、炭材の吹込み方
法が提案されている。しかし、酸化精錬である脱珪・脱
りん処理において還元材である炭材を使用することは珪
素、りんの酸化に必要なスラグ中のFeO を還元するの
で、反応効率を落とし、本末転倒である。また、特開平
11-193414 号公報にある様に、そもそも空間容積の大き
な転炉を反応容器に使うという発想もあるが、この場合
にも、炉口部を中心に溶銑、スラグが付着し、実質的な
空間容積を縮小するので、望ましく無い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】反応容器として転炉を
用いること自体はトーピードカーや鍋を使用するのに比
べてスラグフォーミングによる体積増加、スロッピング
増という問題に対しては耐性が高いが、大きな内容積を
持つ転炉容器を新設するには設備費用が高くなる。ある
いは溶銑装入量を制限して精錬を行う必要があるがスロ
ッピングによる生産障害は少なくなるものの、生産性を
落とすという問題がある。一方、少ない設備費用で多量
の溶銑処理を行う上では、従来、転炉吹錬用として利用
していた転炉を利用することは空間容積確保の点で有利
ではあるが、これは、転炉吹錬容器が不足して生産量を
確保するのが困難となる。
【0007】また、酸化精錬である脱珪や脱りん処理に
おいてフォーミング抑制の為に炭材を添加する方法で
は、スラグの還元が進行し、スラグ−溶銑界面での脱り
ん反応に必要なFeO が不足し、脱りん効率を悪化させ
る。従って、脱珪処理と脱りん処理を一つの反応容器で
同時に行い、しかも設備費用の少ない、フォーミングに
よる問題が無く、しかも、生産性の高いプロセスを提供
することが本発明の目的である。
【0008】
【課題を解決するための手段】(1)CaO 源と酸素源を
添加し、溶銑の脱珪脱りん処理を行うに際し、溶銑上の
空間容積を溶銑1t当たり0.20m3/t以上、0.6m3/t以下
とし、粉状のCaO 源を使用することを特徴とする溶銑の
脱珪・脱りん方法。 (2)精錬後、下式で定義するスラグ塩基度が1.2 以
上、2.5 未満となる様にCaO 源を添加することを特徴と
する(1)記載の溶銑の脱珪・脱りん方法。 スラグ塩基度=(補正CaO 重量濃度)/(SiO2重量濃度) (1) (補正CaO 重量濃度)=(全CaO 重量濃度)−(フリーライム重量濃度)(2) (3)CaO 源添加に際し、計算塩基度1.4 相当分以上の
CaO 源を粒径5mm未満の粉状のCaO 源で、残りのCaO 源
は5mm以上のCaO 源で添加することを特徴とする(1)
または(2)記載の溶銑の脱珪・脱りん方法。 (4)粒径5mm以上のCaO 源は精錬初期、粒径5mm未満
の粉状CaO 源は精錬末期に添加することを特徴とする
(1)または(2)または(3)記載の溶銑の脱珪・脱
りん方法。
【0009】即ち、本発明は、最近一般に行われている
生石灰系フラックスによる溶銑の酸化脱りん処理を脱珪
処理と同時に行って事前脱珪処理を省略するための方法
として酸素供給速度を0.5Nm3/t/min〜1.7Nm3/t/minとす
るが、一般的に、0.5Nm3/t未満では同時脱珪脱りんは困
難となり、更に1.7Nm3/t/min超では、酸素供給に対する
りんのスラグ−溶銑界面への物質移動が追いつかなくな
り、脱炭反応が優先する結果を招き、脱りん反応におけ
る酸素効率の低下を招く。
【0010】一方、溶銑上の空間容積を確保することは
スラグフォーミングによるスロッピング回避の上で有効
ではあるが、設備新設等の過大な設備費用を抑えるた
め、空間容積は0.6m3/t を上限とした。また、後に述べ
る、本願発明の基本原理である粉状生石灰源使用による
フォーミング抑制効果により、空間容積は0.20m3/t以上
あれば良い。
【0011】
【発明の実施の形態】本願発明者らは、本願発明に至る
詳細な研究の結果、以下の様な事実を明らかとした。図
1は、実験室におけるスラグフォーミング高さに及ぼす
スラグの液相率との関係を実験的に求めた結果である。
実験方法は以下の通りである。即ち、鉄るつぼに微粉末
試薬を本研究対象とした溶銑予備処理スラグの組成範囲
に混合して加熱、溶解し、アルゴンガスを吹込んでフォ
ーミングを起こさせた。この状態におけるフォーミング
高さを測定し、スラグの状態図から求められる液相率と
フォーミング高さの関係求めた。この様に、固−液共存
のスラグでは、フォーミング高さは液相率で支配されて
いることが分かった。一方、実操業でのスロッピング現
象に及ぼす粉体生石灰使用の影響は顕著であることも明
らかとなった。即ち、塩基度をある程度確保するために
粉体生石灰を使用すると、著しいフォーミング抑制、ス
ロッピング頻度減少の作用があることがわかった。更
に、フォーミングが抑制されると炉内の炉口周囲を中心
とした地金、スラグの付着量が減少するので、スロッピ
ングによる生産障害が減る、という好循環となることが
分かった。
【0012】一方、従来、スラグの液相率が低下すると
流動性が悪化して、スラグ−メタル間の反応速度が小さ
くなる、という一般論に対し、ある程度粒径の小さな生
石灰を使うと、液相率は低くても、返って脱珪脱りん反
応速度は高くなることが分かった。これは、ある程度粒
径の小さな生石灰を使うと、これがスラグ中に懸濁し、
そこにりん、珪素が固溶されるが、粒径が小さいとその
反応の移動距離が短く、比表面積が大きいため、十分な
速度で珪素、りんの固定が行われるからである。例えば
10分程度の精錬時間であれば、5mm未満の粒径が望まし
い。これ以上の粒径になるとこの程度の精錬時間では生
石灰粒子の内部まで珪素、りんの固溶が完了しないの
で、未滓化のCaO が残留することとなる。即ち、何ら反
応に寄与しない無駄なCaO が増える結果となる。更に、
スラグの塩基度は固相率を増加してスロッピングを抑制
する効果が顕著となる1.2 以上とするのが望ましいが、
あまり高めても、必要な微紛生石灰の量が増えるばかり
であるので2.5 を上限とすべきである。ここで注意すべ
きことは、大きな粒径のCaO 源を使った場合、滓化が遅
いので未滓化のCaO が増える一方、スラグの液体の部分
は量が多いので、フォーミング抑制効果は期待できな
い、ということである。即ち、従来、スラグの塩基度は
(3)式のごとく、見かけの塩基度、としてスラグ中の
CaO の形態に関わらず、トータルのCaO 濃度とSiO2の濃
度の比として慣用的に用いられて来たが、スラグの液相
率を問題とすべきときには、(1)式で示した、フリー
ライム、即ち未滓化のCaO 分を差し引いた補正CaO 濃度
とSiO2の濃度比とすべきことを明らかとした。 見かけの塩基度 = (全CaO 重量濃度)/(SiO2重量濃度) (3)
【0013】従って、例えば、粒径の大きなCaO 源のみ
を用いて短時間処理を行った場合には、(3)式で示さ
れる見かけの塩基度が高くても、(1)式で示される塩
基度は低く、十分に液相率を下げられないのでフォーミ
ングが問題となるケースもある。
【0014】ここで、CaO 源としては脱珪反応が主とし
て起きる精錬初期には安価な塊状のCaO 源で良く、一
方、脱珪反応が終了して脱りんと脱炭反応が盛んになる
末期に粉状CaO 源を使用するのが望ましい。なぜなら
ば、精錬末期には脱炭反応によるCOガス発生速度が増大
し、フォーミングが起こり易くなるから、そこで脱りん
速度は低下させずに液相率を下げるのに有効な粉状CaO
源をこのタイミングで添加する。一方、精錬初期は塊状
CaO 源を使っても未だスラグの塩基度が低いため、粒径
が大きくても滓化速度が早いため未滓化は生じにくく、
また粒径の大きいCaO 源の方が安価であるため、この方
が望ましい。
【0015】図2は本願発明を実施するに好適な転炉タ
イプの反応容器の横断面図である。溶銑を本設備に装入
し、生石灰および、必要に応じて鉄鉱石等の固体酸素源
他副原料を上方から溶銑上に添加する。底部に設けた羽
口より窒素ガスをキャリヤーガスとして石灰石粉を底吹
きする。なお、必要な攪拌力を確保するため、窒素ガ
ス、石灰石粉の流量は適宜設定する。引き続き、酸素ガ
スをメインランスから溶銑上に吹き付け、脱りん処理を
開始する。スロッピングの状況に応じ、メインランスか
ら吹込んでいる酸素ガスをキャリアーガスとして粉状の
生石灰を溶銑上に吹き付ける。この場合、粉状の生石灰
を使うと、微細なカルシウムシリケートを生成し、スラ
グの固相率が高くなるので、フォーミングが抑制され
る。また、スラグの溶融部にP2O5として除去されたりん
は上記微細なカルシウムシリケートに固溶・固定され
る。一方、CaO 源として塊状の生石灰のみでは、生石灰
の滓化反応、即ち、カルシウムシリケート化が遅く、進
行しないので、低塩基度の液体スラグが多量に生成し、
フォーミングは抑制されないのでスロッピングを抑制す
るためには粉状の生石灰併用が望ましい。
【0016】勿論、この溶銑の同時脱珪・脱りん炉とし
ては小型の転炉を新設しても良いが、同一工場にある容
量の小さな転炉を使用することも可能である。更にま
た、本法を用いると、従来より装入溶銑量が増やせるの
で、例えば複数の転炉のうちを1基を本法による脱珪・
脱りん処理炉として用い、他方を従来の脱炭吹錬用転炉
として用いることも可能である。この様にすると、設備
費用は極めて安価である。次に、本発明の実施例、およ
び比較例を示す。
【0017】
【実施例1】高炉溶銑をスクラップとともに内容積110m
3 の転炉タイプの溶銑予備処理炉に装入した。この時の
溶銑上の空間体積は0.22m3/tである。次に、鉄鉱石を上
方添加し、底吹き攪拌を行いながら、メインランスより
酸素ガスと微粉生石灰を上吹き開始した。10min 間の脱
珪・脱りん処理を行った後、炉を傾動して出湯、排滓し
て処理を終了した。鉄歩留まり、炉外に溢れたスラグは
皆無であり安定した操業が可能であった。処理後のスラ
グ塩基度は1.6 であった。
【0018】
【実施例2】高炉溶銑をスクラップとともに内容積111m
3 の溶銑予備処理炉に装入した。この時の溶銑上の空間
体積は0.25m3/tである。次に、鉄鉱石、平均粒径25mmの
塊状の生石灰を上方から添加し、底吹き攪拌を行いなが
ら、酸素ガスの上吹きを開始し、脱珪・脱りん処理を開
始した。5min 後から粉状の生石灰を上方から添加して
更に5min 間処理を行った。処理後のスラグ塩基度は1.
7 であった。
【0019】
【比較例】高炉溶銑をスクラップとともに111m3 の転炉
タイプの溶銑予備処理炉に装入した。この時の溶銑上の
空間容積は0.4m3/t である。次に、平均粒径25mmの塊状
の生石灰と鉄鉱石を添加し、酸素ガスを上吹きしつつ脱
珪・脱りん処理を開始した。スロッピングが激しく、酸
素供給を止めて精錬を中断する必要が生じたため、20分
を要した。計算塩基度は3.5 としたが、塩基度を調査し
た結果、1.0 に留まっており、多量の未滓化生石灰が生
じていることが明らかとなった。また、脱りんも0.040%
までしか進行しておらず、不調であった。
【0020】
【表1】
【0021】
【発明の効果】本発明により、量産鋼の脱珪・脱りんプ
ロセスとして、短時間での脱珪と脱りん処理が、コンパ
クトな一つの反応容器にて可能となった。特に、工場内
に稼働率が低く、ヒートサイズも小さい転炉が存在する
場合にはこの方法を用いて溶銑予備処理炉として活用で
き、溶銑予備処理の持つメリットを最少設備費で享受で
きる。なお、新設の場合も脱炭吹錬用転炉と同一サイズ
の設備を設置するに比べ、安価である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に至る基礎研究の過程で得られたスラグ
フォーミング実験の結果を示す図である。
【図2】本発明を実施するに好適な転炉容器の横断面図
である。
【符号の説明】
1 転炉 2 溶銑 3 酸素ランス 4 石灰石粉ブロータンク 5 底吹き羽口 6 窒素ガスホルダー 7 酸素ガスホルダー 8 副原料ホッパー 9 スクラップ 10 生石灰粉ブロータンク
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 今井 正 愛知県東海市東海町5−3 新日本製鐵株 式会社名古屋製鐵所内 Fターム(参考) 4K014 AA01 AA03 AB03 AB04 AB12 AB28 AC03 AC08 AC14 AC16 AC17 AD00 AD27

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 CaO源と酸素源を添加し、溶銑の脱珪脱り
    ん処理を行うに際し、溶銑上の空間容積を溶銑1t当た
    り0.20m3/t以上、0.6m3/t以下とし、粒径5mm未満のCa
    O 源を使用することを特徴とする溶銑の脱珪・脱りん方
    法。
  2. 【請求項2】 精錬後、下式で定義するスラグ塩基度が
    1.2 以上、2.5 未満となる様にCaO 源を添加することを
    特徴とする請求項1記載の溶銑の脱珪・脱りん方法。 スラグ塩基度=(補正CaO 重量濃度)/(SiO2重量濃度) (1) (補正CaO 重量濃度)=(全CaO 重量濃度)−(フリーライム重量濃度)(2)
  3. 【請求項3】 CaO 源添加に際し、計算塩基度 1.4相当
    分以上のCaO 源を粒径5mm未満の粉状のCaO 源で、残り
    のCaO 源は5mm以上のCaO 源で添加することを特徴とす
    る請求項1または2記載の溶銑の脱珪・脱りん方法。
  4. 【請求項4】 粒径5mm以上のCaO 源は精錬初期、粒径
    5mm未満の粉状CaO 源は精錬末期に添加することを特徴
    とする請求項1または2または3記載の溶銑の脱珪・脱
    りん方法。
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JP2004143544A (ja) 溶銑の脱硫方法

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