JP3742543B2 - 溶銑の脱珪脱硫方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
効率的な溶銑の脱珪脱硫方法に関するものであって、銑鉄を原料とする鋼の精錬プロセスに広く利用される。
【0002】
【従来の技術】
鋼材使用環境の厳格化に伴い、りん、硫黄に代表される鋼中の不純物元素の低減に対する要求は厳しい。一方、鉄鋼材料は大量に利用される基礎素材であり、品質もさることながら、安価であることも重要であり品質、コストを両立させるためより効率的な製造プロセスを求めて技術開発がなされている。こうした中、珪素、りん、硫黄を事前に取り除いた銑鉄を転炉吹錬にて鋼を得る、いわゆる溶銑予備処理技術が発展して来ている。
【0003】
近年、環境問題に対する社会的関心が高まる中、鉄鋼精錬工程において発生する様々な副産物の処理方法についても問題が提起されている。特に、製鉄副産物であるスラグの中で製銑工程で発生する高炉スラグはセメントの強度を確保する上で有効であることが証明され、セメント用素材として利用されているが、製鋼工程で発生する溶銑脱りんスラグは基本的に(CaO重量%)/(SiO2重量%)(以下塩基度と略す)が高く、未滓化のCaO を多量に含むため、膨張・風化性が問題とされ、建築、土木用材としての有効な再利用先に乏しい。そのため、風化・膨張の問題が生じない様に、長期にわたりエージング処理を行っているが、完全に風化・膨張問題を抑えることは難しく、埋め立て等の処理を余儀なくされているのが現状である。更には、スラグ中に含まれるフッ素は環境への溶出が問題となっており、製鋼プロセスでは蛍石等、ハロゲン化物を添加することは望ましくなく、本来、使用しないのが望ましいが完全に使用しない方法は未だ確立されていない。
【0004】
こうした点から、スラグの利財化とともに、フッ化物等、ハロゲン化物を使用せず、スラグ発生量自体が少ないプロセスを確立することは重要な課題である。こうした観点から、各分割精錬工程におけるスラグを再利用する試みが種々なされている。例えば、特開昭57-140808 号公報には転炉スラグに酸化鉄、石灰、蛍石などの助剤を添加して冷却後、粉砕するなどして溶銑の脱硫、または脱りん工程に使用する、という記載がある。また、特開昭57-145916 号公報にはやはり転炉で生成したスラグを溶銑の予備脱りん、脱硫工程に戻して利用する、という記述がある。更には、特開昭61-44115号公報には、転炉でMn鉱石を添加した、MnO 濃度が6%以上の転炉スラグを脱珪、脱りん、脱硫工程に戻して利用することにより、溶銑中のMn濃度を高め、トータルでMnの利用効率を高める方法が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記引用技術はいずれも転炉スラグの再利用をはかってトータルのスラグ生成量を低減する試みである。しかし、鉄鋼の精錬プロセスにおいては、転炉以降の二次精錬工程で発生するスラグがあり、この量も無視し得ない。ここで、二次精錬スラグとは転炉出鋼時に溶鋼鍋に流出したものと二次精錬工程で生成する脱酸生成物、あるいはフラックスに由来するものであり、鋳造工程で溶鋼鍋より溶鋼を排出した後に残留するスラグのことを指す。従来二次精錬工程で発生するスラグの有効な再利用方法は提案されていない。二次精錬工程では多くの場合、アルミニウムを添加して脱酸が行われるので、その生成物であるAl2O3 をかなり高濃度で含む、という特徴がある。また、このスラグにはCaO 分を含み、更にはFeO 、MnO を併せて10%程度含んでいる。そこで、二次精錬スラグを溶銑の脱珪・脱硫工程に戻して再利用する方法が考えられる。しかし、従来トーピードカーや鍋等の小さい反応容器にて脱珪処理を行う際に二次精錬スラグを使用するとその中に含まれるAl2O3 の影響により、スラグの泡立ちが著しく助長され、溶銑が容器からはみ出し、操業が成り立たなくなり、鉄ロスが増加する等の問題を生じるので、送酸速度を著しく落とし、長時間精錬を余儀なくされ、結果として生産性を著しく落とす結果を招く。また、脱珪、脱りん等酸化精錬期に戻して使用してもFeO やMnO は還元があまり進まず、鉄分、マンガン分の有効な回収は期待出来ないという課題があった。
【0006】
更に、転炉スラグにはMnO 、FeO 、CaO と言った回収出来れば有用な成分を含むが、基本的に酸化精錬である溶銑脱りん処理に戻したのではCaO 分は有効に使われたとしてもFeO やMnO の還元は不十分である。更に、特開昭57-140808 号公報には転炉スラグに酸化鉄、石灰、蛍石などの助剤を添加して冷却後、粉砕するなどして溶銑の脱硫工程に使用する、という記述があるが、脱硫反応を促進するには還元雰囲気とする必要があり、酸化力の高い転炉スラグを脱硫工程に戻したのでは、FeO やMnO の還元が促進されたとしても脱硫反応自体の効率が低下するので、脱硫剤使用量が増え、スラグ発生量が減らないばかりか、熱ロスが増加する、発生したスラグ量が多くなり、排滓による鉄ロス、時間延長等が生じ、好ましくない。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためになされた本発明は、次のとおりである。
(1)転炉型の反応容器を用い、CaO 源と酸化源を添加して溶銑の脱珪精錬を行う第一工程と、溶銑に脱硫剤を吹込んで脱硫を行う第二工程からなる溶銑の脱珪・脱硫方法において、第一工程において二次精錬スラグを添加することを特徴とする溶銑の脱珪・脱硫処理方法であり、
(2)転炉型の反応容器を用い、CaO 源と酸化源を添加して溶銑の脱珪精錬を行う第一工程と、溶銑に脱硫剤を吹込んで脱硫を行う第二工程からなる溶銑の脱珪・脱硫方法において、第一工程において転炉工程で生成する転炉スラグを添加することを特徴とする溶銑の脱珪・脱硫処理方法
である。
【0008】
まず第一に、転炉型の反応容器を用いると、二次精錬工程で生成するスラグを再利用する際に問題となるAl2O3 によるフォーミング助長と炉内からの溢れ出しを避けることが出来る。更に、転炉型反応容器の場合、炉上ホッパーより通常粒径25mm内外の塊状の精錬剤を落とし込む方法が副原料の添加方法としては高速で簡便で都合が良いが、溶銑処理温度で、滓化促進剤である蛍石等のハロゲン化物を使用しない場合には、生石灰が滓化せず、塩基性スラグを生成せず、反応効率が低下する、という問題がある。それに対し、二次精錬スラグ中のAl2O3 はCaO の融点を著しく下げる作用があるので、塊状の生石灰の滓化を促進することができ、蛍石などのハロゲン化物を使用しなくても反応効率を高め、排出スラグの風化・膨張を低減し、しかも生成したスラグからのフッ素の溶出問題を解決することが出来る。更に、第二工程として酸素供給を止めて還元反応である脱硫処理を行うと、スラグ中に含まれるFeO やMnO が還元され、鉄歩留、Mn還元回収率が向上する。
【0009】
転炉滓を再利用した場合には、単に従来の溶銑の脱りん工程に戻す場合に比べ、脱珪処理時ではFeO 、MnO の還元はある程度進み、引き続き行われる脱硫時には脱硫効率をそれ程落とすことなく、更に還元が生じ、これらの有効利用がはかられる。
【0010】
一般に反応容器としてトーピードカーや溶銑鍋を用いて脱硫処理を行った場合、脱硫スラグの溶銑からの完全な分離は困難であり、かつ完全に分離するためには長時間を要する。残留した脱硫スラグは後工程での復硫の原因となり、例えば極低硫黄鋼が製造出来なくなるなどの問題を生じるが、転炉を利用すれば出湯時にスラグを効率的に溶銑から分離することが出来る。更に、二次精錬スラグや転炉スラグを利用すると、最終的なスラグ量は使用しない場合に比べて増加するが、この場合には脱硫後のスラグ中の硫黄濃度が低いので、たとえスラグが溶銑と同時に出てしまっても後工程での復硫が少ないので、極低硫黄鋼が容易に製造出来る、あるいは復硫分を見越して余分な脱硫剤を使用しての過脱硫処理を行う必要性も低下する、という効果を奏する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に第1図を参照しつつ、本発明の好ましい実施の形態を示す。
第1図は溶銑の処理炉を示すもので、図中1は転炉タイプの精錬容器、2はその中に装入された溶銑である。3は精錬容器1中の溶銑2に酸素ガスを吹き付けるために設けられている酸素ガス上吹きランス、4、5は炭酸カルシウムあるいは脱硫剤を吹込むためのブロータンクであり、6はガスとともに粉体を吹込むための羽口、7は窒素ガスホルダーである。9は生石灰、固体酸素源等の副原料を上方から添加するためのホッパーである。脱珪期においては炭酸カルシウムを溶銑中に吹込むと、次式の反応によりCO2 ガスを多量に生成し、安価な攪拌方法が得られる。
【数1】
CaCO3=CaO + CO2 (C)
【0012】
スクラップ10とともにスクラップシュート11で二次精錬スラグあるいは転炉スラグ12を装入し、更に溶銑2を装入する。炉上ホッパーより生石灰、鉄鉱石等の精錬剤を上方添加して前記方法にて溶銑を攪拌しつつ脱珪処理を行う。更に、脱硫処理を行うために上吹き酸素ガスを止め、吹込み羽口6より脱硫剤を窒素ガスにて吹込み、脱硫処理を行う。転炉型の反応容器であるために二次精錬スラグを利用した場合でもAl2O3 によるスラグのフォーミング助長による問題は回避出来る。また、二次精錬スラグに含まれるFeO 、MnO の還元、回収が可能となり、転炉スラグを利用した場合、脱珪反応で生じたSiO2の溶融・滓化作用により転炉スラグも溶融・滓化し、含まれるFeO 、MnO の還元が充分行われるが、本法では脱硫処理時に更にこれらの還元・回収が進み、総じて1炉内の精錬にて脱珪・脱硫、およびこれら後工程で発生するスラグ中の有用成分の回収が可能となる。
【0013】
一方、脱硫処理時には微粉である脱硫剤を吹込むことにより、脱硫剤が溶銑中を浮上する間に溶銑の脱硫反応が充分行われることによって、脱珪時に発生したスラグの悪影響をそれ程うけることなく、効率的な脱硫処理が可能となる。また、前記二次精錬スラグ、または転炉スラグを添加するので、スラグの塩基度はある程度確保できるため、スラグの固相率が高く、浮上後の脱硫剤に含まれるCaS がトップスラグに混合・溶解されて溶銑側へ戻る、いわゆる復硫反応は軽微である。また、脱硫期に入ると酸素ガスを止めるので急激にFeO 、MnO 濃度が低下し、スラグの固相率が急激に増加し、脱硫効率を落とすことがない。望ましくは脱珪処理後のスラグの塩基度を1.0 以上確保しておくことがスラグの固相率確保の点から望ましく、本法では、そのCaO 分として二次精錬スラグ、または転炉スラグが利用できる上にFeO 、MnO も回収できる。
【0014】
【実施例】
本発明による実施例を以下に示す。
(実施例1)
転炉型の精錬炉において、溶銑265tを、二次精錬スラグ7.2tとともに酸素ガスを上吹きしつつ脱珪処理を行った。この時、炉底に設けた羽口より窒素ガスにて石灰石粉を吹込み、攪拌を行った。次に、酸素ガスを止め、炉底に設けた羽口より脱硫剤を吹込み、脱硫処理を行った。新たな生石灰添加は行わなかったが、脱珪後スラグの塩基度は1.4 が確保できた。また、精錬中、溶銑のマンガン濃度上昇が見られた。蛍石等のハロゲン化物は使用しなかった。その後、溶銑脱りん、転炉脱炭を施したが、復硫は見られなかった。
【0015】
(実施例2)
転炉型の精錬炉において、溶銑298tを、転炉スラグ2.0t、生石灰1.0tとともに酸素ガスを上吹きしつつ脱珪処理を行った。この時、炉底に設けた羽口より窒素ガスにて石灰石粉を吹込み、攪拌を行った。次に、酸素ガスを止め、炉底に設けた羽口より脱硫剤を吹込み、脱硫処理を行った。新たな生石灰添加は行わなかったが、脱珪後スラグの塩基度は1.3 が確保できた。また、精錬中、溶銑のマンガン濃度上昇が見られた。蛍石等のハロゲン化物は使用しなかった。その後、溶銑脱りん、転炉脱炭工程を経たが、復硫は僅か0.001%に収まった。
【0016】
(比較例)
比較例は二次精錬滓を使用しなかった例であり、脱珪、脱硫は反応は進行したが、マンガン濃度は処理前後で低下した。また、脱珪期には炉上ホッパーより粒径25mm内外の塊状生石灰を添加したが、蛍石等の滓化促進剤を添加しなかったため、脱珪期の滓化が悪く、塩基度は0.7 に留まった。そのためにマンガンの酸化ロスが見られ、引き続き行った脱硫処理での脱硫剤効率が低く、多量の脱硫剤を要した。また、後工程での復硫が大きかった。
【0017】
【表1】
Figure 0003742543
【0018】
【発明の効果】
本発明により、蛍石等のハロゲン化物を使用せず、脱珪、脱硫処理が可能となり、二次精錬スラグの有効利用、即ち鉄分、マンガン分の回収、およびCaO 分の利用がはかれ、後工程での復硫が減少し、総じて、製鋼工程でのスラグ発生量が低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を実施するに好適な転炉タイプの反応炉の横断面図である。
【符号の説明】
1 転炉
2 溶銑
3 酸素ガス上吹きランス
4 ブロータンク
5 ブロータンク
6 吹込み羽口
7 窒素ガスホルダー
8 酸素ガスホルダー
9 炉上ホッパー
10 スクラップ
11 スクラップシュート
12 二次精錬スラグ、または、転炉スラグ

Claims (2)

  1. 転炉型の反応容器を用い、CaO 源と酸化源を添加して溶銑の脱珪精錬を行う第一工程と、溶銑に脱硫剤を吹込んで脱硫を行う第二工程からなる溶銑の脱珪・脱硫方法において、第一工程において二次精錬スラグを添加することを特徴とする溶銑の脱珪脱硫方法。
  2. 転炉型の反応容器を用い、CaO 源と酸化源を添加して溶銑の脱珪精錬を行う第一工程と、溶銑に脱硫剤を吹込んで脱硫を行う第二工程からなる溶銑の脱珪・脱硫方法において、第一工程において転炉工程で生成する転炉スラグを添加することを特徴とする溶銑の脱珪脱硫方法。
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