JP2002255625A - 硫黄組成物の製造方法 - Google Patents

硫黄組成物の製造方法

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JP2002255625A JP2001056546A JP2001056546A JP2002255625A JP 2002255625 A JP2002255625 A JP 2002255625A JP 2001056546 A JP2001056546 A JP 2001056546A JP 2001056546 A JP2001056546 A JP 2001056546A JP 2002255625 A JP2002255625 A JP 2002255625A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】硫黄組成物の製造時における反応を容易に制御
し、得られる成形物の表面状態や作業性を改善し、かつ
硫黄組成物の機械的強度、遮水性、着火性、耐硫黄酸化
細菌性等を改善でき、一般及び産業廃棄物を骨材として
利用しうる硫黄組成物を効率良く得ることができる硫黄
組成物の製造方法を提供すること。 【解決手段】硫黄、硫黄変性剤及び骨材を混合する硫黄
組成物の製造方法において、硫黄変性剤の使用量を硫黄
量の2〜20質量%とし、硫黄と硫黄変性剤とを反応さ
せ、GPCで測定した分子量が320〜500の変性硫
黄前駆体を生成させ、該変性硫黄前駆体の反応系内にお
ける割合が5〜45質量%の状態において、若しくは反
応系の粘度が140℃に換算して20〜200mPa・
sの状態において骨材を添加・混合する硫黄組成物の製
造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般及び産業廃棄
物を骨材として土木用、建設用等の資材に使用すること
を可能にし、特に、廃棄物の再資源化技術の一環として
有用な、硫黄、硫黄変性剤及び骨材を混合する硫黄組成
物の製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】硫黄は、119℃を越えると溶融し、常温
では固体である性質を利用して、土木用、建設用等の資
材の一つとしての利用が古くから試みられている。例え
ば、舗装材料(米国特許第4290816号明細書)、
建築材料用結合材(特公昭55−49024号公報)あ
るいは廃棄物封鎖用結合材(特公昭62−15274号
公報)として使用が検討されている。これまで硫黄はそ
の用途の一つに結合材があり、各種の骨材と混合して成
形物が製造され、土木建設資材として使用されている。
【0003】ところで、一般及び産業廃棄物は、埋め立
て、焼却等の方法で処分されるが、そのための処分場所
は近年ますます少なくなってきており、その再利用が極
力求められている。例えば、焼却灰等の産業廃棄物を、
土木埋立材や建設資材等とするには、圧縮・曲げ・引張
り強度及び耐衝撃性等の機械的強度が十分であり、産業
廃棄物中に含まれる重金属化合物の溶出を防ぐための遮
水性、裸火で着火しない難燃性が必要である。更に、土
中・海中で使用する場合には、表面硫黄を腐食する硫黄
酸化細菌に対する耐久性等も必要とされる。そこで、硫
黄単独を結合材として産業廃棄物と混合した成形物が提
案されているが、該成形物は物性上の多くの課題があ
り、使用方法が限定されている。このため、硫黄を利用
して産業廃棄物を完全封鎖し、土木建設資材として使用
可能な硫黄組成物を製造する改良技術が求められてい
る。その改良方法の一つとして、ジシクロペンタジエン
の添加による硫黄の改善が検討されている。このよう
な、ジシクロペンタジエンと硫黄との反応は、一種の重
合反応といわれており、最初ジシクロペンタジエンと硫
黄とが反応し、環状S8が開環して硫黄とシクロペンタ
ジエンとが結合した前駆体が生成すると考えられてお
り、生成時の発熱により硫黄がラジカル連鎖反応により
高分子化する。そのため、大きな発熱を伴い、粘度の急
上昇も起きる。従って、ジシクロペンタジエンと硫黄と
の反応は、急激な温度上昇及び粘度上昇のため、反応が
制御できず、急激に固化して成形できない状態になると
いう問題がある。また、これまでジシクロペンタジエン
を添加する場合の製造条件については十分検討されてお
らず、ジシクロペンタジエン濃度、温度等の反応条件
と、製造される結合材の望ましい性状との関係もまだ十
分に判っていないのが実状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、硫黄
組成物の製造時における反応を容易に制御し、得られる
成形物の表面状態や作業性を改善し、かつ硫黄組成物の
機械的強度、遮水性、着火性、耐硫黄酸化細菌性等を改
善できる硫黄組成物の製造方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、一般及び産業廃棄物を骨材として
利用した場合であっても、機械的強度、遮水性、着火
性、耐硫黄酸化細菌性等が改善された硫黄組成物を効率
良く得ることができ、且つ製造時の反応制御を容易に行
うことが可能な硫黄組成物の製造方法を提供することに
ある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、硫黄、
硫黄変性剤及び骨材を混合する硫黄組成物の製造方法に
おいて、硫黄変性剤の使用量を硫黄量の2〜20質量%
とし、硫黄と硫黄変性剤とを反応させ、GPCで測定し
た分子量が320〜500の変性硫黄前駆体を生成さ
せ、該変性硫黄前駆体の反応系内における割合が5〜4
5質量%の状態において骨材を添加・混合することを特
徴とする硫黄組成物の製造方法が提供される。また本発
明によれば、硫黄、硫黄変性剤及び骨材を混合する硫黄
組成物の製造方法において、硫黄変性剤の使用量を硫黄
量の2〜20質量%とし、硫黄と硫黄変性剤とを反応さ
せ、GPCで測定した分子量が320〜500の変性硫
黄前駆体を生成させ、反応系の粘度が140℃に換算し
て20〜200mPa・sの状態において骨材を添加・
混合することを特徴とする硫黄組成物の製造方法が提供
される。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の硫黄組成物の製造におい
て、使用される原料は主に硫黄、骨材、硫黄変性剤であ
り、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分をこ
れに加えることもできる。本発明においては、これら原
料を溶融混合したもの、並びにその成形物を硫黄組成物
と呼び、該硫黄組成物中には、変性硫黄の他に、硫黄変
性剤と未反応の硫黄や変性硫黄前駆体を含んでいても良
い。本発明では硫黄に硫黄変性剤を反応させた初期の状
態のGPCで測定した分子量が320〜500のものを
特に変性硫黄前駆体という。
【0007】本発明において原料として用いる硫黄と
は、通常の硫黄単体であり、一般に市販されているもの
が使用できる。例えば天然産又は石油や天然ガスの脱硫
によって生成した硫黄等が使用できる。本発明において
硫黄の使用量は、通常、得られる硫黄組成物全体の10
〜50質量%、好ましくは15〜40質量%である。
【0008】本発明において原料として用いる硫黄変性
剤とは、シクロペンタジエンの単体、2〜4量体を主体
に構成される混合物をいう。該混合物は、ジシクロペン
タジエンの含有量が70質量%以上、好ましくは85質
量%以上のものをいう。従って、いわゆるジシクロペン
タジエンと称する市販品の多くを使用することができ
る。硫黄変性剤の使用量は、上記硫黄量の2〜20質量
%である。硫黄変性剤の使用量が少ないと硫黄の反応に
よる粘度上昇が遅く、多いと硫黄の反応による粘度上昇
が急激であるから、作業上、硫黄変性剤の使用量を上記
範囲とする必要がある。また硫黄組成物の難燃性、遮水
性、耐硫黄酸化細菌性、機械的強度等の性質は、硫黄変
性剤の使用量に関係し、通常は使用量が多いほどそれぞ
れの性能が改善され、硫黄量の約10質量%で改善効果
は飽和し、それ以上では変化は少ないので硫黄量の2〜
10質量%であれば実質的に性能は満足される。従っ
て、硫黄変性剤の好ましい使用量は硫黄量の2〜10質
量%である。使用量が硫黄の20質量%を超えると、粘
弾性が顕著になり、硫黄変性剤の使用量が硫黄の2質量
%未満では資材の強度が不足するおそれがある。
【0009】本発明において原料として用いる骨材は、
硫黄組成物の性能を低下させないものであれば特に限定
されないが、主に産業廃棄物等の無機系資材を好ましく
使用することができる。上記産業廃棄物としては、例え
ば、焼却灰・焼却飛灰、都市ごみ高温溶融炉から発生す
る溶融飛灰、電力事業及び一般産業から排出される石炭
灰、流動床焼却装置で使用した流動砂、研磨屑、各種金
属製造時に副生する副生物(例えば、鉄鋼スラグ・ダス
ト、フェロニッケルスラグ、アルミドロス、銅スラグ)
等から選ばれる一種もしくは二種以上の無機系資材を混
合したもの等が挙げられる。
【0010】焼却灰としては、都市ごみ焼却炉や産業廃
棄物焼却炉等各種の燃焼炉から排出され、主成分が、シ
リカ、アルミナ、酸化カルシウム、酸化鉄等の酸化物で
あり、鉛、カドミウム、砒素等の有害金属の含有量も多
い、従来、汚水を出さない最終処分場で埋め立て処理さ
れてきたものが使用できる。石炭灰としては、発電用、
加熱用等各種の石炭焚燃焼炉から排出され、コンクリー
トや土木資材混合材として利用されているものが使用で
きる。鉄鋼スラグとしては、製鉄業から副生するスラグ
等が挙げられ、具体的には、高炉から排出される高炉ス
ラグ、平炉や転炉から排出される平炉スラグ、転炉スラ
グ等が使用できる。鉄鋼スラグの主成分は、シリカ、ア
ルミナ、酸化カルシウム、酸化鉄等の酸化物やその他無
機硫化物も含まれる。
【0011】本発明においては、骨材として、上記以外
の他の骨材、例えば、粘土鉱物、活性炭、カーボンファ
イバー、グラスファイバー、ビニロン繊維、アラミド繊
維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、砂、砂利等
の有害物質を含有しない無機系資材、有機系資材等を使
用することもできる。更にこれら他の骨材と前記産業廃
棄物等の無機系資材を任意に組み合わせて使用すること
もできる。本発明において、骨材の使用量は、通常、硫
黄組成物全体の50〜90質量%、好ましくは60〜8
5質量%である。
【0012】本発明においては、本発明の目的を損なわ
ない範囲において、原料として上記硫黄、硫黄変性剤及
び骨材に加えて、他の材料を使用することもできる。該
他の材料としては、例えば、珪酸ソーダ、硫化ソーダ、
キレート剤等の重金属封鎖安定剤;アスファルト、硫酸
ニッケル、硫酸コバルト、硫酸銀、各種ポリマー等が挙
げられる。他の材料の使用量は、得られる硫黄組成物の
総量に対して、30質量%以下となるように配合するこ
とが好ましい。
【0013】本発明の製造方法では、まず、硫黄と硫黄
変性剤とを反応させ、ゲルパーミエイションクロマトグ
ラフィー(GPC)で測定した分子量が320〜500の
変性硫黄前駆体を生成させる。そして、この反応系中に
おいて前記変性硫黄前駆体が5〜45質量%、好ましく
は10〜40質量%生成している状態において骨材を添
加・混合する方法(以下、第1の方法という)、若しくは
反応系の粘度が140℃に換算して20〜200mPa
・sの状態において骨材を添加・混合する方法(以下、
第2の方法という)を採用する。前記分子量の測定は、
硫黄変性剤を加えた硫黄を二硫化炭素やトルエン等に溶
かし、GPCにより行うことができる。その測定は、例
えば、クロロホルム溶媒を使用し室温において、1ml
/分の流速で、二硫化炭素1mass/Vol%濃度試
料溶液を、UV254nm検出器を用い、ポリスチレン
で測定した検量線により行うことができる。
【0014】本発明において、硫黄と硫黄変性剤とを反
応させるには、例えば、まず、硫黄を通常120〜15
5℃、好ましくは135〜145℃に加熱して溶融す
る。硫黄溶融後、全体を攪拌しつつ適当な粘度計、例え
ば、B型粘度計で粘度を測定しながら好ましくは135
〜150℃、特に好ましくは135〜145℃に温度を
維持する。そこへ所定量の硫黄変性剤を少しずつ添加し
て混合する方法等により行うことができる。反応系の温
度が150℃を越えると付加反応が進行するものの、通
常は付加反応の生成熱(発熱)により160℃以上とな
りゴム状硫黄が生成するため好ましくない。一方、系の
温度が130℃であると付加反応が進行するものの発熱
により140℃程度となり所望の硫黄重合物の生成速度
が遅くなり製造時間短縮にならないので好ましくない。
従って、溶融硫黄の保持温度は135℃〜150℃に設
定し硫黄変性剤を添加することが好ましい。当然、硫黄
変性剤の添加量が多くなれば付加反応時の発熱が大きく
なるため溶融硫黄の保持温度を低くする必要があるが1
35℃未満であると付加反応開始が遅くなるので好まし
くない。また150℃を超えると硫黄重合物の生成速度
が速くなり制御が難しく製造条件範囲が狭くなるので好
ましくない。
【0015】上記反応開始後の温度上昇は、硫黄に対し
て硫黄変性剤を5質量%添加したときは、添加から約1
0分間で約10℃の温度上昇が認められる。前記硫黄と
硫黄変性剤との反応によって生成する変性硫黄前駆体
は、硫黄変性剤による8員環を形成している硫黄への付
加反応により生成すると考えられており、変性硫黄前駆
体の生成によって温度上昇し、系の粘度は通常10〜2
0mPa・sで硫黄そのものの粘度と変わらずほぼ一定
となる。その後、5〜30分程度で温度上昇が終了し、
粘度が上昇を開始した時に変性硫黄前駆体の生成がなさ
れたとみなすことができる。
【0016】前記第1の方法における反応系において、
骨材の添加時期を規定する、変性硫黄前駆体が5〜45
質量%、好ましくは10〜40質量%生成している状態
は、予備実験等により実際の変性硫黄前駆体の生成量が
上記範囲となる条件を確認して実施することができる。
この際、変性硫黄前駆体が5〜45質量%生成している
状態とは、未反応の硫黄及び変性硫黄前駆体中に変性硫
黄前駆体が上記割合で存在している状態、未反応の硫
黄、変性硫黄前駆体及び変性硫黄中に変性硫黄前駆体が
上記割合で存在している状態、変性硫黄前駆体及び変性
硫黄中に変性硫黄前駆体が上記割合で存在している状態
のいずれであっても良く、またこれらの反応系中にその
他の成分が含まれる場合もある。従って、変性硫黄前駆
体が全て生成した後であっても変性硫黄分の割合によっ
ては変性硫黄前駆体が5〜45質量%生成している状態
となりうる。
【0017】一方、前記第2の方法における反応系にお
いて、骨材の添加時期を規定する、反応系の粘度は、1
40℃に換算して20〜200mPa・s、好ましくは
20〜100mPa・s、特に好ましくは20〜90m
Pa・sになったときである。従って、反応系が上記粘
度範囲となっていることをB型粘度計等で確認し、骨材
を添加する時期を決定することができる。このように骨
材添加時期を変性硫黄前駆体の生成割合ではなく、溶融
粘度(B型粘度計等で測定)という現象面からとらえた場
合には、実際の作業上は容易である。前記溶融粘度は、
その溶融温度により若干上下するので適宜実験により定
めることができる。例えば、上記140℃に換算した溶
融粘度範囲は、150℃のときであれば、その範囲が1
5〜200mPa・s、好ましい範囲が15〜100m
Pa・sに相当する。また、135℃のときであれば、
下限値が20mPa・sよりやや大きくなるであろう
が、25mPa・sよりは低いであろうし、上限値は2
00mPa・sである。更に、これらの間の温度であれ
ば、比例計算すれば容易に当該粘度を決定することがで
きる。粘度が当該範囲の上限を超えてから骨材を添加す
ると、硫黄重合反応が進行し、骨材と十分に混合するこ
とが困難になる。一方、粘度が当該範囲未満において骨
材を添加すると、変性硫黄前駆体の生成が十分でなく硫
黄の重合が速やかに進行しない恐れがある。
【0018】本発明において、上記骨材の添加は、13
0℃〜160℃にて予備加熱乾燥した骨材を用いて行う
のが好ましい。混合に使用する混合機は、混合が十分に
行えるものであれば良く、例えば、固液攪拌用を用いる
ことがよい。具体的には例えば、インターナルミキサ
ー、ロールミル、ドラムミキサー、スクリュー押出し
機、パグミル、ポニーミキサー、リボンミキサー等が使
用できる。骨材を添加・混合する際の温度は、135〜
155℃が好ましく、骨材添加後の混合時間は、通常、
約5〜60分間、好ましくは10〜30分間である。該
混合時間は更に延ばすことができるが長時間混合するこ
とにより成形品強度が高くなるものの作業性が悪くな
る。骨材を添加・混合する際の温度が155℃を超える
と粘度上昇が急激で混合時に骨材と硫黄との馴染みが悪
くなるので好ましくない。一方、該温度が135℃未満
であると混合時の硫黄の反応が遅いため所要時間が長く
なり製造時間の短縮とならないので好ましくない。
【0019】上記骨材添加後の混合終了は、変性された
硫黄の重量平均分子量によって適宜決定することができ
る。例えば、混合終了の目安となる該分子量としては、
GPCによる重量平均分子量として500を超え、20
00以下、好ましくは600〜1500の範囲が好まし
い。平均分子量が500以下であると所望の圧縮強度が
得られない恐れがあるので好ましくなく、また2000
を越えると作業性が悪くなりかつ成形時に気泡の混入や
成形体の表面状態が悪くなるので好ましくない。分子量
の測定は、硫黄変性剤を加えた硫黄を二硫化炭素やトル
エン等に溶かし、GPCによって行うことができる。そ
の測定は、例えば、クロロホルム溶媒を使用し室温にお
いて、1ml/分の流速で、二硫化炭素1mass/V
ol%濃度試料溶液を、UV254nm検出器を用いポ
リスチレンで測定した検量線によって行うことができ
る。
【0020】ところで、硫黄、硫黄変性剤及び骨材を用
いる硫黄組成物の製造方法において、骨材添加順序は、
本発明の製造方法以外に、例えば、(1)硫黄と硫黄変性
剤と骨材との混合物を同時に反応させる方法、(2)硫黄
と骨材との混合物に硫黄変性剤を反応させる方法が考え
られる。しかし、上記(1)の方法では、硫黄変性剤が骨
材に吸着され硫黄と反応するのが非常に遅く製造時間が
長くなる。また、硫黄変性剤が骨材に吸着されるため
に、その使用量は所定量以上が必要となってしまい好ま
しくない。一方、上記(2)の方法では、骨材の主成分で
あるシリカ、アルミナ等に硫黄変性剤が吸着され硫黄と
の反応が極端に遅く、かつ加熱乾燥した骨材と硫黄変性
剤が接触するとパーオキサイドが生成するため安全上か
らの問題もあり好ましくない。また、予め硫黄変性剤と
硫黄との2成分を反応させてバインダー(通常粘度10
0mPa・s)を調製した後に、該バインダーと骨材と
を混合する方法も考えられる。この方法では、圧縮強度
が高い硫黄組成物が得られるが、骨材との混合時にバイ
ンダーを再度溶融する必要があり、作業が煩雑化し、更
に、骨材混合後の製造時間が本発明よりも長くなる。本
発明の製造方法では、特定量の変性硫黄前駆体が生成し
た溶融物中に骨材を添加するので、骨材と混合すると同
時に硫黄の高分子量化が進行し、短時間で所望の硫黄組
成物を得ることができる。
【0021】本発明の硫黄組成物は、用途に応じて任意
の形状に成形することができ、例えば造粒装置、型枠に
よる製造等により、粒状、板状、直方体、正方体等の形
状にすることができる。溶融状態の硫黄組成物を粒状化
する方法としては、特に限定されず、例えば、該溶融物
を冷却固化しながら造粒して粒状物とする造粒方法や、
溶融物を冷却固化して得た成形物を粉砕して粒状物とす
る方法等が挙げられる。造粒方法としては、例えば、通
常のドラムや、水平若しくは傾斜板を具備した、転動造
粒機又は振動造粒機を用い、転動造粒法又は振動造粒法
により行なうことが好ましい。これらの方法の条件は、
硫黄、硫黄変性剤及び骨材の種類や配合割合等に応じて
得られる硫黄組成物からなる粒状物がコンクリートやモ
ルタル用の骨材として適した粒径になるように適宜選択
して決定しうる。例えば、JIS標準篩に基づき、通常
2〜44.4mmの任意の大きさの粒子を製造するよう
に設定することが好ましく、用途に応じて適宜粒径が選
択されることは言うまでもない。
【0022】転動造粒法を採用した場合の粒状物の粒径
は、回転板やドラムの傾斜角度、回転速度等によって調
整できる。ただし、所望する粒径により回転板やドラム
のサイズを考慮して選定する必要は特になく、例えば、
同一回転板の傾斜角度を変えることによって、2〜4
4.4mmの任意の大きさの粒子を製造することができ
る。傾斜角度は一般に0〜70°の範囲で調整される。
振動造粒法を採用した場合の粒状物の粒径は、振動数や
振幅、傾斜角度によって調整することができる。例え
ば、振動数は3000回/分程度、振幅は0.3mm以
上、振動時間は30分間〜3時間で、溶融状態の硫黄組
成物が飛散しない範囲で選定される。傾斜角度は通常0
〜60°の範囲で調整される。振動方式は、往復式でも
回転式でも又はこれらの組合せ方式でも良い。なお、回
転ドラム等を使用し、実質的に振動を与えて造粒するこ
とも可能である。
【0023】溶融状態の硫黄組成物を成形した後に破砕
して粒状物を得ることができるが、任意の大きさの粒子
を製造し難いことから造粒法により粒状物を得る方が好
ましい。なお、破砕して得た粒状物については、コンク
リートやモルタルの骨材の使用に適した粒径分布を得る
ために、必要に応じてふるい分けして使用しても構わな
い。他の造粒法として、溶融した硫黄を水中に落下させ
る方法があるが、この方法は、水中に重金属が溶出する
こと、造粒物表面に錆が発生することから骨材の被覆が
完全でない場合があるので好ましくない。
【0024】本発明の製造方法により得られる固化され
た硫黄組成物の圧縮強度は、通常10〜100MN/m
2、好ましくは20〜100MN/m2、より好ましくは
30〜100MN/m2である。硫黄組成物の密度は、
強度、特に圧縮強度に影響し密度が高いほど成形体中に
気泡の混入が少なく、そのため硫黄と骨材とが十分混合
され成形物は完全な連続相となり、表面も滑らかな成形
体あるいは粒状物となる。硫黄組成物の表面が滑らかで
あれば、微細な凹凸がクラック発生の起点になることを
防止でき、従って、機械的強度や有害物質の溶出を遮蔽
する性能に優れ、かつ製品の美観にも優れる硫黄組成物
が得られるという利点がある。本発明により得られる固
化された硫黄組成物の密度は、例えば、骨材に石炭灰を
使用したときには、通常2.40〜2.51g/c
3、好ましくは2.45〜2.51g/cm3の範囲に
ある。密度が2.40g/cm3未満であると成形体中
に気泡が混入するため圧縮強度が低下する。密度は高い
ほど密に金型に充填され気泡の混入が少ない。
【0025】本発明の製造方法により得られる硫黄組成
物は、例えば、造粒物にしてセメント、コンクリート、
石膏等と混合して使用することもできる。本発明の製造
方法により得られる硫黄組成物は、土木・建築用資材に
好ましく使用することができ、成形体であれば、任意の
構造を作製可能な特性を生かし、パネル材、床材、壁
材、瓦、水中構造物等として利用することができる。ま
た、粒状物であれば、埋立材、路盤材、盛土材、コンク
リート用骨材等として利用することができる。
【0026】
【発明の効果】本発明の製造方法では、硫黄、硫黄変性
剤、骨材を混合する際に、特定の変性硫黄前駆体が所定
量生成した段階で骨材を添加・混合するので、硫黄組成
物の製造時間が短縮でき、かつ硫黄と骨材とが十分に混
合することができる。従って、例えば、完全な連続相を
有し、表面も滑らかな成形体あるいは粒状物等であって
も効率良く製造することができる。
【0027】
【実施例】以下、実施例および比較例によって具体的に
説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものでは
ない。実施例1 5リッターのダルトン製混練機に、固体硫黄686gを
入れ加熱し、120℃で溶融後、140℃に保持した。
その際の粘度をB型粘度計で測定したところ18mPa
・sであった。続いて、約90℃に加熱溶融したジシク
ロペンタジエン39g(固体硫黄量に対して約5質量%)
をゆっくりと添加し、150rpmの回転数で撹拌し
た。反応が始まり、発熱反応により12分後(誘導期間
と称す)、反応温度が10℃上昇し系の温度が150℃
となった。その後、温度上昇が終了したことを確認し、
その際の粘度を測定したところ20mPa・sであっ
た。その一部を採取しGPCにより分子量を測定した結
果、重量平均分子量は390であった。この際、反応系
内の重量平均分子量390の変性硫黄前駆体の含有割合
は、約20質量%程度であった。次に上記状態におい
て、150℃にて加熱乾燥した骨材(高炉スラグ240
0g及び石炭灰480g)を投入し、混合を開始した。
混合物の温度を150℃にコントロールし20分間混合
した。混合終了後、得られた溶融状態の硫黄組成物を粒
状物と成形体にした。成形体は、溶融状態の硫黄組成物
を型枠に流し込んで冷却し、直径5cm、高さ10cm
の円柱型検体を作製した。別に粒状物10gをとり二硫
化炭素100mlを用いソックスレー抽出を6時間行っ
た。この抽出液を1mass/Vol%に二硫化炭素で
希釈しGPC分析により硫黄とシクロペンタジエンとの
付加体および硫黄重合物等からなる変性硫黄の分子量を
求めた。その結果、重量平均分子量は790であった。
成形体の圧縮強度は75.70MN/m2であり、成形
体の密度は2.51g/cm3であった。また、成形体
の表面は滑らかであった。
【0028】比較例1 攪拌混合槽に固体硫黄950gを入れ加熱し、120℃
で溶融後、140℃に保持した。その時の粘度をB型粘
度計で測定したところ18mPa・sであった。続い
て、約90℃に加熱溶融したジシクロペンタジエン50
gをゆっくりと添加し、約5分間静かに攪拌した後14
5℃まで温度を上げた。反応が始まり、次第に反応温度
および粘度が上昇していき、その後温度上昇が終了した
ことを確認後、反応温度を150℃にコントロールし
た。約1時間で粘度は100mPa・sに達した。次い
で、冷却しジシクロペンタジエン変性硫黄バインダーを
得た。ダルトン混練機に上記バインダー725gを投入
し120℃で溶融した。ダルトン混練機混合槽の温度を
150℃に上げ、150℃にて乾燥した骨材2880g
を添加し、150℃にコントロールしながら混練を20
分間実施した。混練り後、粒状物と成形体を作製した。
GPCにより測定した上記バインダーの重量平均分子量
は2050であった。また、成形体の圧縮強度は65.
8MN/m2であり、成形体の密度は2.46g/cm3
であった。成形体の表面状態は荒れが認められ、密度も
実施例1に比較し低い結果であった。製造時間は、1時
間20分を要した。実施例1では32分間で成形体が製
造できた。
【0029】実施例2 5リッターのダルトン製混練機に固体硫黄686gを入
れ加熱し、120℃で溶融後、140℃に保持した。そ
の際の粘度をB型粘度計で測定したところ18mPa・
sであった。続いて、約90℃に加熱溶融したジシクロ
ペンタジエン39g(固体硫黄量に対して約5質量%)を
ゆっくりと添加し、150rpmの回転数で撹拌した。
反応が始まり、発熱反応により12分後反応温度が10
℃上昇し、系の温度が150℃となった。その後、さら
に3分間撹拌した。この際の粘度をB型粘度計で測定し
たところ25mPa・sであった。その一部を採取しG
PCにより分子量を測定した結果、重量平均分子量は4
12であった。この際、反応系内の重量平均分子量42
2の変性硫黄前駆体の含有割合は、約27質量%程度で
あった。続いて、160℃に加熱乾燥した骨材(高炉ス
ラグ2400g及び石炭灰480g)を投入し混練を開
始した。混練物温度を155℃にコントロールし20分
間混練した。混練終了後、溶融物を粒状物と成形体にし
た。成形体は、溶融物を型枠に流し込んで冷却し直径5
cm、高さ10cmの円柱型検体を作製した。得られた
変性硫黄の重量平均分子量をソックスレー抽出により求
めたところ1100であった。成型体の圧縮強度は6
4.4MN/m2であり、成型体の密度は2.48g/
cm3であった。
【0030】実施例3 固体硫黄の使用量を562gとした以外は実施例1と同
様に成型体を調製した。得られた成形物の圧縮強度は6
0.3MN/m2であり、成型体の密度は2.47g/
cm3であった。また、得られた変性硫黄の重量平均分
子量をソックスレー抽出により求めたところ780であ
った。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08G 75/00 C08G 75/00 (72)発明者 田島 吉雄 神奈川県横浜市中区千鳥町8番地 日石三 菱株式会社中央技術研究所内 (72)発明者 橋本 博 神奈川県横浜市中区千鳥町8番地 日石三 菱株式会社中央技術研究所内 Fターム(参考) 4G012 PA27 PA29 PB14 PC01 PC11 PC12 PC13 PC15 PD01 4G056 AA06 CB21 DA09 4J030 BA05 BA47 BB08 BB65 BC02 BF14 BF19 BG34

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 硫黄、硫黄変性剤及び骨材を混合する硫
    黄組成物の製造方法において、硫黄変性剤の使用量を硫
    黄量の2〜20質量%とし、硫黄と硫黄変性剤とを反応
    させ、GPCで測定した分子量が320〜500の変性
    硫黄前駆体を生成させ、該変性硫黄前駆体の反応系内に
    おける割合が5〜45質量%の状態において骨材を添加
    ・混合することを特徴とする硫黄組成物の製造方法。
  2. 【請求項2】 硫黄、硫黄変性剤及び骨材を混合する硫
    黄組成物の製造方法において、硫黄変性剤の使用量を硫
    黄量の2〜20質量%とし、硫黄と硫黄変性剤とを反応
    させ、GPCで測定した分子量が320〜500の変性
    硫黄前駆体を生成させ、反応系の粘度が140℃に換算
    して20〜200mPa・sの状態において骨材を添加
    ・混合することを特徴とする硫黄組成物の製造方法。
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