JP2002228102A - 必要蒸気量に対する追従性を高めた多缶設置ボイラ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 多缶設置ボイラにおいて必要蒸気量に対する
追従性を向上する。 【解決手段】 ボイラ１を複数台設置し、各ボイラに稼
働優先順位を設定しておき、必要蒸気量に応じて稼働優
先順位の高い順に必要台数分のボイラで燃焼を行い、残
りのボイラは待機とする制御を行う台数制御装置２を設
けることで、ボイラ全体での燃焼量を調節している多缶
設置ボイラにおいて、燃焼を行っているボイラと、待機
中のボイラから選択したα台のボイラをローテーション
変更ボイラに設定し、ローテーション変更ボイラとした
ボイラのみで稼働優先順位の変更を行うものであり、前
記αの値は必要蒸気量急増時におけるボイラ燃焼台数増
加数量の予測値以上の値とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、必要蒸気量に対する追
従性を向上させた多缶設置ボイラに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】小型のボイラを複数台設置しておき、必
要蒸気量に応じて必要台数のボイラを燃焼する多缶設置
が行われている。多缶設置システムにおいては、蒸気集
合部での蒸気圧力値を計測することで必要蒸気量を算出
しておき、必要台数のボイラを燃焼させる。ボイラには
稼働優先順位を定めておき、蒸気圧力値が低下して必要
蒸気量が増加すると、稼働優先順位の高いボイラから順
に燃焼を開始し、蒸気圧力値が上昇して蒸気供給量が減
少すると、稼働優先順位の低いボイラから順に燃焼を停
止することで、必要蒸気量に応じた台数制御を行う。

【０００３】小型ボイラの多缶設置の場合、必要蒸気量
が急激に増加した際に蒸気供給量を増加させるため、稼
働優先順位が下位のボイラを起動させる。必要蒸気量の
増加幅が大きければ、稼働優先順位が下位であるため、
長時間燃焼せず冷缶状態にあるボイラも使用して蒸気の
供給を行うが、冷缶状態のボイラは燃焼を開始してもす
ぐに蒸気を供給することはできないため、蒸気の供給が
間に合わずに蒸気の不足を招くことがある。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、多缶設置ボイラにおいて必要蒸気量に対す
る追従性を向上することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】請求項１の発明は、ボイ
ラを複数台設置し、各ボイラに稼働優先順位を設定して
おき、必要蒸気量に応じて稼働優先順位の高い順に必要
台数分のボイラで燃焼を行い、残りのボイラは待機とす
る制御を行うことで、ボイラ全体での燃焼量を調節して
いる多缶設置ボイラにおいて、燃焼を行っているボイラ
と、待機中のボイラから選択したα台のボイラをローテ
ーション変更ボイラに設定し、ローテーション変更ボイ
ラとしたボイラのみで稼働優先順位の変更を行うもので
あり、前記αの値は必要蒸気量急増時におけるボイラ燃
焼台数増加数量の予測値以上の値とするものである。請
求項２の発明は、前記の多缶設置ボイラにおいて、ロー
テーション変更ボイラの稼働優先順位変更は、０.５時
間以上３時間以下のごく短い間隔で行うことを特徴とす
る。

【０００６】請求項１の発明によれば、燃焼待機中のボ
イラのうち、α台分のボイラは最近まで燃焼を行ってい
たためにある程度の熱を保有しているものとなるため、
必要蒸気量の急増により燃焼台数を増やした場合でも、
比較的短時間で蒸気の供給を行うことができ、必要蒸気
量に対する追従性が向上する。請求項２の発明によれ
ば、必要蒸気量に対する追従性を向上する際、燃焼を停
止している間に熱がなくなり、必要蒸気量急増時の燃焼
台数増加時に蒸気供給が遅れることや、必要以上の順位
変更による燃焼発停回数の増加を防止することができ
る。

【０００７】

【発明の実施の形態】本発明の一実施例を図面を用いて
説明する。図１は本発明を実施するボイラの設置状況、
図２は各ボイラの稼働優先順位と燃焼状況を示した図で
ある。Ａ〜Ｆの６台のボイラ１を並列に設置する。各ボ
イラからの蒸気配管をスチームヘッダーに接続してお
き、スチームヘッダーには圧力検出装置３を設けてい
る。各ボイラ１に対する運転指令は、各ボイラと接続し
ている台数制御装置２が行い、台数制御装置２は圧力検
出装置３とも接続しておく。

【０００８】台数制御装置２は、圧力検出装置３で検出
した蒸気圧力値に基づいて必要蒸気量を求め、各ボイラ
の運転を制御する。ボイラには稼働優先順位を定めてお
き、蒸気圧力値が低下して必要蒸気量が増加すると、稼
働優先順位の高いボイラから順に燃焼を開始し、蒸気圧
力値が上昇して蒸気供給量が減少すると、稼働優先順位
の低いボイラから順に燃焼を停止することで、必要蒸気
量に応じた台数制御を行う。

【０００９】図２に基づき、ボイラの運転状況を説明す
る。Ａ〜Ｆの段は時間Ｔ１から時間Ｔ４の各時点におけ
るボイラＡ〜ボイラＦの稼働優先順位と、ボイラの燃焼
状況を示している。Ａ〜Ｆの各段に記載した数字が各ボ
イラの稼働優先順位を示し、燃焼を行っているボイラは
稼働優先順位の数字を丸で囲んでいる。稼働優先順位の
数字を四角で囲んでいるものは、燃焼を行っていないが
＋α分としてローテーション変更ボイラの対象とするボ
イラであることを示している。本実施例では６台のボイ
ラを設置しているため、稼働優先順位は第１位から第６
位までとなる。

【００１０】時間Ｔ１時点の稼働優先順位は、第１位か
ら順に、ボイラＡ・ボイラＢ・ボイラＣ・ボイラＤ・ボ
イラＥ・ボイラＦとなる。台数制御装置２は、圧力検出
装置３によって検出している蒸気圧力値から、その時点
における必要蒸気量を算出する。必要蒸気量から定まる
ボイラの燃焼台数が２台であった場合、台数制御装置２
は、稼働優先順位が第１位と第２位であるボイラＡとボ
イラＢに対して燃焼指令を送る。時間Ｔ１の時点では、
ボイラＡ・Ｂは燃焼を行い、ボイラＣ・Ｄ・Ｅ・Ｆは燃
焼を行わずに待機させている。

【００１１】また、台数制御装置２は時間の計測も行っ
ており、燃焼時間を平均化するために行う全ボイラを対
象とする稼働優先順位の変更とは別に、１時間経過する
ごとに稼働優先順位の変更を行う。１時間ごとの稼働優
先順位の変更は、その時点で燃焼を行っていたボイラの
ほかに、＋α台分のボイラを追加したものをローテーシ
ョン変更ボイラとして設定し、ローテーション変更ボイ
ラ内だけで稼働優先順位を変更する。本実施例は、通常
は２台のボイラで蒸気供給を行えるが、必要蒸気量急増
時にはボイラの燃焼台数を２台増加しなければならない
ものであったとすると、＋αの値は２台となる。

【００１２】時間Ｔ２は時間Ｔ１後であって最初の順位
変更時である。時間Ｔ２時点でのボイラ燃焼台数は２台
であり、台数制御装置２は稼働優先順位が第１位のボイ
ラＡと第２位のボイラＢに対してのみ燃焼指令を送り、
ほかのボイラは停止している。台数制御装置２は、時間
Ｔ２時点で燃焼を行っていた稼働優先順位が第１位と第
２位のボイラＡ・Ｂと、＋α分として稼働優先順位がボ
イラＡ・Ｂに続く第３位と第４位のボイラＣ・Ｄ、合計
４台のボイラをローテーション変更ボイラに設定する。

【００１３】ボイラＡ・Ｂ・Ｃ・Ｄの稼働優先順位は、
第１位から第４位までであるため、順位変更は第１位か
ら第４位の順位で行う。台数制御装置２は、それまで第
４位であったボイラＤを第１位に変更し、それまで第１
位から第３位であったボイラＡ・Ｂ・Ｃは１ランクずつ
繰り下げる。燃焼を行うのは第１位と第２位の２台のボ
イラであるため、台数制御装置２は、順位変更により第
１位となったボイラＤに対して燃焼開始の指令を送り、
第３位となったボイラＢには燃焼停止の指令を送る。そ
の後は第１位になったボイラＤと第２位になったボイラ
Ａの２台のボイラが燃焼する。なお、ローテーション変
更ボイラでないボイラＥ及びボイラＦは、稼働優先順位
変更せずに第５位と第６位のままとしておく。

【００１４】時間Ｔ３は時間Ｔ２から１時間後の順位変
更時である。この場合も時間Ｔ２の場合と同様に、燃焼
を行っていたボイラＤ・Ａの２台と、＋α分としてボイ
ラＢ・Ｃの２台の合計４台をローテーション変更ボイラ
に設定する。順位変更は稼働優先順位が第４位であった
ボイラＣを第１位に変更し、それまで第１位から第３位
であったボイラＤ・Ａ・Ｂは１ランクずつ繰り下げる。
台数制御装置２は、第１位となったボイラＣの燃焼を開
始し、第３位となったボイラＡの燃焼を停止すること
で、ボイラＣとボイラＤの２台の燃焼とする。

【００１５】時間Ｔ４は必要蒸気量が急増し、それまで
より２台多い４台のボイラを燃焼しなければならなくな
った場合である。台数制御装置２は、それまで停止して
いた稼働優先順位が第３位のボイラＡと、第４位のボイ
ラＢにも燃焼指令を送り、２台のボイラを新たに燃焼さ
せる。新しく燃焼を開始するボイラＡは、時間Ｔ３で稼
働優先順位を変更するまで燃焼を行っていたものであ
り、ボイラＢも時間Ｔ２で稼働優先順位を変更するまで
は燃焼を行っていたものである。

【００１６】必要蒸気量の急増によって新しく燃焼を開
始したボイラは、少なくとも２回前の稼働優先順位変更
時には燃焼を行っていたものであるため、ボイラ内には
熱が残っており、ボイラを暖機しておいたのと同じ効果
がある。ローテーション変更ボイラとなったボイラ内で
の稼働優先順位の変更を行っておくことで、燃焼を行っ
ているボイラのほかに、＋α台分のボイラを暖機してお
くことができ、必要蒸気量の急増時にも蒸気が不足する
ことを防ぐことができる。

【００１７】特定のボイラに暖機用の圧力を設定してお
き、該ボイラの蒸気圧力が暖機用の圧力になるように制
御する場合には、暖機用圧力に制御するための手段が必
要になる。しかし、本発明のように蒸気発生のために燃
焼するボイラを切り換えることで暖機の効果を得る場
合、特別な装置は必要なく、制御内容を変更するだけで
簡単に行うことができる。

【００１８】順位変更を行う間隔は、長すぎるとボイラ
内の熱がなくなるために暖機の効果がなくなり、逆に短
すぎると、順位変更のたびに燃焼の発停を行うので発停
回数が多くなってしまう。そのため順位変更間隔は０.
５時間から３時間の範囲内が適当であり、間隔時間はボ
イラの種類等によって定める。＋αとする台数は、必要
蒸気量の増大幅が大きいと予測される場合ほど大きな値
に設定する。αの値を必要蒸気量急増時のボイラ燃焼台
数増加数より少ない値にすると、暖機ボイラ数が不足す
ることになるため、αの値はボイラ増加数以上の値にす
る必要がある。

【００１９】前記の実施例では、αの値を必要蒸気量急
増時の増加台数分としたが、αの値は必要蒸気量急増時
の増加台数よりも大きな値にする方がよい場合もある。
例えば通常は２台のボイラによる燃焼と３台のボイラに
よる燃焼を交互に行っており、必要蒸気量急増時にはボ
イラの燃焼台数を２台増加するという場合、３台のボイ
ラを燃焼している時に必要蒸気量が急増すれば、燃焼台
数は５台となる。この場合には、稼働優先順位が第５位
のボイラまでをローテーション変更ボイラとして暖機を
行っておく必要があるため、燃焼台数が２台の時に順位
変更を行うのであれば、αの値を３台とする必要があ
る。

【００２０】

【発明の効果】本発明を実施することにより、多缶設置
ボイラにおいて必要蒸気量の急増により燃焼台数が増加
する場合であっても、蒸気の供給が遅れることを防止
し、必要蒸気量に対する追従性を高くすることができ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の一実施例でのボイラのフローシート

【図２】 本発明の一実施例での稼働優先順位と燃焼状
態を示した説明図

【符号の説明】

１ ボイラ ２ 台数制御装置 ３ 圧力検出装置

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ボイラを複数台設置し、各ボイラに稼働
   優先順位を設定しておき、必要蒸気量に応じて稼働優先
   順位の高い順に必要台数分のボイラで燃焼を行い、残り
   のボイラは待機とする制御を行うことで、ボイラ全体で
   の燃焼量を調節している多缶設置ボイラにおいて、燃焼
   を行っているボイラと、待機中のボイラから選択したα
   台のボイラをローテーション変更ボイラに設定し、ロー
   テーション変更ボイラとしたボイラのみで稼働優先順位
   の変更を行うものであり、前記αの値は、必要蒸気量急
   増時におけるボイラ燃焼台数増加数量の予測値以上の値
   とすることを特徴とする必要蒸気量に対する追従性を高
   めた多缶設置ボイラ。
2. 【請求項２】 請求項１に記載の必要蒸気量に対する追
   従性を高めた多缶設置ボイラにおいて、ローテーション
   変更ボイラの稼働優先順位変更は、０.５時間以上３時
   間以下のごく短い間隔で行うことを特徴とする必要蒸気
   量に対する追従性を高めた多缶設置ボイラ。