JP2002220281A - 圧電磁器組成物及びこれを用いたインクジェット記録ヘッド - Google Patents

圧電磁器組成物及びこれを用いたインクジェット記録ヘッド

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JP2002220281A
JP2002220281A JP2001015079A JP2001015079A JP2002220281A JP 2002220281 A JP2002220281 A JP 2002220281A JP 2001015079 A JP2001015079 A JP 2001015079A JP 2001015079 A JP2001015079 A JP 2001015079A JP 2002220281 A JP2002220281 A JP 2002220281A
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    • B41J2202/01Embodiments of or processes related to ink-jet heads
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)
  • Compositions Of Oxide Ceramics (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】研削加工において、隔壁に折れやチッピング
(欠け)等の欠陥がなく、また長期間にわたり、安定し
たインク滴の吐出が可能なインクジェット記録ヘッドを
提供する。 【解決手段】インクジェット記録ヘッド10のアクチュ
エータ部をなす隔壁1を、Pb(Zr Ti)O3組成
系のPbの一部を、Ba、Srのうち一種以上の元素で
置換し、(Zr Ti)の一部を、(Zn1/3
2/3)、(Zn1/3Nb2/3)、(Ni1/2 Te1/2
のうち一種以上の成分で置換したペロブスカイト型化合
物を主体とし、他にFeをFe23換算で0.01〜
0.3重量%、AlをAl23換算で0.01〜0.0
4重量%、SiをSiO2換算で0.01〜0.04重
量%含有し、上記化合物の平均結晶粒子径が0.6〜7
μmで、4点曲げ強度が70MPa以上、破壊靱性値が
0.7MPam1/2以上である圧電磁器組成物を構成す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、優れた圧電定数d
と抗電界Ecを有し、かつ研削性に優れたチタン酸ジル
コン酸鉛系の圧電磁器組成物とこれを用いたインクジェ
ット記録ヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、圧電効果によって発生する変位を
機械的駆動源として利用したものに、超音波応用振動
子、超音波モータ、圧電アクチュエータ等があり、メカ
トロニクスの分野の進展とともに、注目されている。
【0003】例えば、圧電アクチュエータは、磁性体に
コイルを巻いた従来の電磁式アクチュエータと比較し
て、消費電力や発熱量が少なく、応答速度に優れるとと
もに、変位量が大きく、寸法、重量が小さい等の優れた
特徴を有している。そして、これら圧電アクチュエータ
等を構成する圧電材料としては、PbZrO3−PbT
iO3(以下、Pb(Zr Ti)O3という)組成系の
圧電磁器組成物が用いられているが、さらに大きな機械
的変位が得られることが要求されており、そのためには
圧電定数dの大きい圧電磁器組成物が望まれていた。
【0004】このような目的に合致する圧電磁器組成物
として、例えば、Pb(Zr Ti)O3の2成分組成
系に、第3成分として、Pb(Zn1/3 Sb2/3
3、Pb(Zn1/3 Nb2/3)O3、Pb(Ni1/2
Te1/2)O3の少なくとも一種を固溶させたペロブスカ
イト型化合物から成る焼結体が実用化されている。
【0005】また、特開平5−58729号公報には、
圧電特性以外に耐熱性や焼結性等の改善を目的として、
上記ペロブスカイト型化合物を主成分とし、副成分とし
て、NiO、CuO、Bi23、WO3の少なくとも一
種を0.01〜3mol%の範囲で含有した圧電磁器組
成物が開示されている。
【0006】一方、近年、低ランニングコストでカラー
画像や文字情報等を印刷する記録装置として、インクジ
ェット方式の記録装置が使用されており、この記録装置
に搭載されるインクジェット記録ヘッドに圧電アクチュ
エータが用いられている。
【0007】図3に従来のインクジェット記録ヘッドの
一例を示すように、このインクジェット記録ヘッド20
(以下、単にヘッドという)は、圧電磁器組成物にダイ
ヤモンドホイールによる研削加工にて一端が閉じられた
複数の溝を並設し、各溝をインクの流路22とするとと
もに、流路22を仕切る壁を隔壁21とした流路部材2
7と、上記各隔壁21の両側面上半分に形成された駆動
用電極23と、各隔壁21の頂部に接着にて接合され、
各流路22を覆う蓋板28と、上記流路部材27の開放
端部に接着にて接合されたノズル板26とから成り、上
記ノズル板26には、各流路22と連通し、流路22内
のインクを吐出するインク吐出孔25が形成され、上記
蓋板28には、各流路22と連通し、流路22内にイン
クを導入するインク供給孔24が形成されたものがあっ
た。なお、矢印は隔壁21を形成する圧電磁器組成物の
分極方向を示す。
【0008】そして、このヘッド20よりインク滴を吐
出するには、インク供給孔24より各流路22へインク
を導入し、隔壁21に備える駆動用電極23に通電して
隔壁21を形成する圧電磁器組成物の剪断モード変形に
よって隔壁21を屈曲変位させることにより、隔壁21
間にて仕切られた流路22内のインクを加圧し、その流
路22と連通するインク吐出孔25よりインク滴を吐出
するようになっており、インク滴の吐出性能を高めるた
めには、隔壁21の機械的変位量を大きくする必要があ
ることから、上記流路部材27を形成する圧電磁器組成
物として、Pb(Zr Ti)O3組成系の圧電磁器組
成物が用いられていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところが、高圧電定数
dを得るため、Pb(Zr Ti)O3組成系に対し、
(Zr Ti)の一部を(Zn1/3 Sb2/3)、(Zn
1/3 Nb2/3)、(Ni 1/2 Te1/2)のうち一種以上
の成分で置換したペロブスカイト型化合物から成る圧電
磁器組成物は研削加工を施すと、折れやチッピング(欠
け)による欠陥が生じ易い等、加工性が悪いという課題
があった。
【0010】また、上記圧電磁器組成物は抗電界Ecが
低く、分極処理を施した後、分極方向と異なる方向に電
界がかかると容易に分極の方向が変化し、分極度が劣化
するといった課題があった。
【0011】一方、インクジェット記録ヘッド20の流
路22を仕切る隔壁21は、幅が100μm以下、高さ
が150μm以上の薄肉壁であるため、流路部材27が
上述したペロブスカイト型化合物から成る圧電磁器組成
物であると、隔壁21及び流路22の形成において、ダ
イヤモンドホイールを用いた研削加工を施すと、隔壁2
1が折れたり、隔壁21にチッピング(欠け)等の欠陥
が多数発生し、安定して流路部材27を製作することが
できないといった課題があった。しかも、研削後の欠陥
が多いものを用いてヘッド20を製作し、インク滴を吐
出させるために駆動用電極23に通電して隔壁21を屈
曲変位させようとしても、隔壁21には欠陥があるため
に設計通りの変位量を得ることができず、インク滴の吐
出が不安定であったり、インク滴が吐出されないといっ
た課題があった。
【0012】また、隔壁21を屈曲変位させるには、隔
壁21の両側面上半分に形成された駆動用電極23に通
電し、隔壁21の分極方向と直交する方向に電界をかけ
る必要があるが、この時、隔壁21を形成する圧電磁器
組成物には分極方向に対して垂直な方向に大きな電界が
かかるため、圧電磁器組成物の分極度が徐々に劣化し、
インク滴を吐出するのに必要な隔壁21の変位量が得ら
れなくなるといった課題もあった。
【0013】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明は上記課
題に鑑み、FeをFe23に換算して0.01〜0.3
重量%、AlをAl23に換算して0.01〜0.04
重量%、SiをSiO 2に換算して0.01〜0.04
重量%含有し、残部が実質的に、Pb(ZrTi)O3
組成系のPbの一部を、Ba、Srのうち一種以上の元
素で置換し、かつ(Zr Ti)の一部を、(Zn1/3
Sb2/3)、(Zn1/3 Nb2/3)、(Ni1/2 Te
1/2)のうち一種以上の成分で置換したペロブスカイト
型化合物から成り、上記ペロブスカイト型化合物の平均
結晶粒子径が0.6〜7μmであるとともに、4点曲げ
強度が70MPa以上、破壊靱性値が0.7MPam
1/2以上である焼結体により圧電磁器組成物を構成した
ことを特徴とする。
【0014】また、本発明は、少なくとも一部が上記圧
電磁器組成物から成る複数の隔壁を並設し、各隔壁間を
インクの流路とした流路部材と、上記隔壁の両側面にそ
れぞれ形成された駆動用電極と、前記隔壁の頂面に接合
され、上記流路を覆う蓋板と、上記各流路と連通するイ
ンク吐出孔とからインクジェット記録ヘッドを構成した
ことを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について
説明する。
【0016】本発明の圧電磁器組成物は、副成分として
FeをFe23に換算して0.01〜0.3重量%、A
lをAl23に換算して0.01〜0.04重量%、S
iをSiO2に換算して0.01〜0.04重量%の範
囲で含有し、残部が実質的に、Pb(Zr Ti)O3
組成系のPbの一部を、Ba、Srのうち一種以上の元
素で置換し、かつ(Zr Ti)の一部を、(Zn1/3
Sb2/3)、(Zn1/ 3 Nb2/3)、(Ni1/2 Te
1/2)のうち一種以上の成分で置換したペロブスカイト
型化合物から成る焼結体であって、上記ペロブスカイト
型化合物の平均結晶粒子径が0.6〜7μmの範囲にあ
ることを特徴とする。
【0017】副成分として含有するFe、Al、Si
は、ペロブスカイト型化合物からなる結晶を粒成長させ
る作用があり、Fe、Al、Siの含有量が多すぎると
焼結体の機械的強度を大きく劣化させるため、従来では
圧電磁器組成物中にFe、Al、Siが殆ど含まれない
ように調整されていたが、本件発明者は、このFe、A
l、Siを上述した範囲内で含有させることにより、圧
電磁器組成物の機械的強度を大きく劣化させることな
く、研削加工時における欠けや割れの発生を抑えること
ができるとともに、さらには圧電定数dの向上並びに分
極度の劣化を抑える抗電界Ecを向上させることができ
ることを見出し、本発明に至った。
【0018】即ち、副成分として含有するAlとSi
は、焼結段階において粒界に液相を生成し易く、焼結終
了後において、焼結体の粒界にPbO−SiO2−Al2
3を主体とするガラス相を形成するため、少量のAl
とSiの含有によって、これらの副成分を含まない圧電
磁器組成物に比べて低い温度で焼結体を緻密化すること
ができるとともに、上記ペロブスカイト型化合物から成
る結晶を粒成長させることができる。このため研削加工
時に、研削面に作用する応力を低減することができる。
【0019】また、上記PbO−SiO2−Al23
主体とするガラス相は、上記ペロブスカイト型化合物よ
りも破壊靱性値が大きいため、焼結体の破壊靱性値を高
めることができる。
【0020】その為、本発明の圧電磁器組成物は、破壊
靱性値の向上と、ダイヤモンドホイールとの接触面積の
低減効果により、研削加工時に割れやチッピング(欠
け)が少なく、研削性を大幅に向上させることができる
とともに、低温での焼成が可能であることから、特殊な
焼成炉は必要なく、一般的に使用される焼成炉を用いる
ことができ、安価に製造することができる。
【0021】そして、Al及びSiの含有量をそれぞれ
Al23、SiO2に換算して0.01〜0.04重量
%としたのは、Al及びSiの含有量がそれぞれAl2
3、SiO2に換算して0.01重量%未満であると、
研削加工時に作用する応力を低減することができず、折
れやチッピング(欠け)等の欠陥を低減することができ
ないからであり、逆にAl及びSiの含有量がそれぞれ
Al23、SiO2に換算して0.04重量%を超える
と、結晶粒子の成長にともなってボイド等の欠陥が大き
くなり、圧電磁器の強度が低下するため、研削加工時に
折れやチッピング(欠け)等の欠陥が発生し易くなると
共に、圧電磁器組成物の圧電定数dが大きく低下するか
らである。
【0022】また、抗電界Ecを向上させることができ
る理由については明らかではないが、以下のようなメカ
ニズムによるものと考えられる。
【0023】Feは、焼結体中において、イオン半径と
の関係からABO3で表されるペロブスカイト型結晶構
造を有するPb(Zr Ti)O3組成系のBサイトに
入り、Bサイトを構成するZr又はTiと置換を起こす
ものと考えられる。この時、Fe3+はZr4+、Ti4+
りも価数が小さいため、電気的バランスをとるために結
晶格子内に酸素欠陥を生じるのであるが、ペロブスカイ
ト型結晶では格子中の酸素間距離が短いため、酸素欠陥
は移動、配列し易く、移動、配列した酸素欠陥は局部的
に内部電界を発生し、圧電磁器組成物の抗電界Ecを向
上させることができるものと思われる。
【0024】また、圧電磁器組成物中に適度な酸素欠陥
を発生させることにより、焼成時に物質の移動が起こり
易くなるため、Feを含まない従来の圧電磁器組成物に
比べて粒成長を促進させることができる。その為、結晶
の粒子径が適度な大きさを有することから、ダイヤモン
ドホイール等による研削加工時に、ダイヤモンドホイー
ルと圧電磁器組成物の研削面との接触面積を小さくで
き、研削面に作用する応力を低減して割れやチッピング
(欠け)の発生を大幅に低減することができる。
【0025】そして、Feの含有量をFe23に換算し
て0.01〜0.3重量%としたのは、FeがFe23
に換算して0.01未満であると、Feの含有量が少な
いために抗電界Ecを高める効果や、ペロブスカイト型
化合物からなる結晶を粒成長させる効果が小さく、ペロ
ブスカイト型化合物の平均結晶粒子径を0.6μm以上
とすることが難しいからであり、逆にFeの含有量がF
23に換算して0.3重量%を超えると、ペロブスカ
イト型化合物の元素との置換量が多くなり過ぎるため、
圧電磁器組成物の圧電定数dが大きく劣化するととも
に、ペロブスカイト型化合物の粒成長が大きくなり、そ
の平均結晶粒子径を7μm以下とすることが難しいから
である。なお、好ましくは0.01〜0.2重量%の範
囲で含有することが良い。
【0026】また、焼結体中におけるペロブスカイト型
化合物の結晶粒子径も重要な要件であり、ペロブスカイ
ト型化合物の平均結晶粒子径が0.6μm未満では、研
削加工時において、ダイヤモンドホイールとの接触面積
が大きくなり、研削加工時に作用する応力を低減するこ
とができないため、この時に生じる応力によって割れや
チッピング(欠け)を生じ易いからであり、逆に、ペロ
ブスカイト型化合物の平均結晶粒子径が7μmを超える
と、機械的強度が大きく低下するとともに、チッピング
(欠け)が発生した時のチッピングサイズが大きくなり
過ぎるからである。
【0027】さらに、本発明の圧電磁器組成物は、焼結
体の4点曲げ強度が70MPa以上、破壊靱性値が0.
7MPam1/2以上であることを特徴とする。
【0028】ここで、焼結体の4点曲げ強度を70MP
a以上、破壊靱性値を0.7MPam1/2以上としたの
は、4点曲げ強度又は破壊靱性値のいずれか一方が上述
した範囲を外れると、研削加工時における割れやチッピ
ング(欠け)等の欠陥を低減することができないから
で、好ましくは4点曲げ強度を75MPa以上、破壊靱
性値を0.75MPam1/2以上とすることが良い。
【0029】ところで、本発明の圧電磁器組成物の主体
をなすペロブスカイト型化合物は、前述したように、P
b(Zr Ti)O3組成系のPbの一部を、Ba、S
rのうち一種以上の元素で置換し、かつ(Zr Ti)
の一部を、(Zn1/3 Sb2 /3)、(Zn1/3
2/3)、(Ni1/2 Te1/2)のうち一種以上の成分
で置換したものであり、具体的には化1の組成式で表さ
れるものが好ましい。 (化1) Pb1-x-ySrxBay(Zn1/3 Sb2/3a(Zn1/3
Nb2/3b(Ni1/2Te1/2cZrdTi1-a-b-c-d
3 ただし、0≦x≦0.10 0≦y≦0.10 0<x
+y 0≦a≦0.08 0≦b≦0.04 0≦c≦0.0
1 0.015<a+b 0.43≦d≦0.55 ここで、Pb(Zr Ti)O3組成系のPbの一部を
SrやBaで置換するのは、大きな圧電定数dが得られ
るからで、Srの置換比率xとBaの置換比率yがそれ
ぞれ0.10より大きくなると、耐熱性が急激に低下す
るからであり、また、0<x+yとしたのは、Sr又は
Baのどちらかを置換しないと、圧電定数dを高めるこ
とができないからである。
【0030】また、Pb(Zr Ti)O3組成系の
(Zr Ti)の一部を、(Zn1/3Sb2/3)や(Zn
1/3 Nb2/3)で置換するのは、圧電定数dを大きくす
ることができるからで、(Zn1/3 Sb2/3)の置換比
率aが0.08を超えたり、(Zn1/3 Nb2/3)の置
換比率bが0.04を超えると、耐熱性が低下するから
であり、また、0.015<a+bとするのは、(Zn
1/3 Sb2/3)又は(Zn1/3 Nb2/3)を0.015
以上置換しないと、圧電定数dを高めることができない
からである。
【0031】さらに、Pb(Zr Ti)O3組成系の
(Zr Ti)の一部を、(Ni1/2Te1/2)で置換す
るのは、耐久性を高くするのに有効であるからで、(N
1 /2 Te1/2)の置換比率cが0.01を超えると、
150℃のエージングによる圧電特性の劣化が著しく大
きくなるからである。
【0032】また、Pb(Zr Ti)O3組成系の圧
電磁器組成物には、圧電定数dの極大値を示すMPB
(組成相境界)が存在し、Pb(Zr Ti)O3を構
成するPbZrO3とPbTiO3の固溶比率を変化させ
ることにより調整することができ、例えば圧電アクチュ
エータ用として用いる場合には、MPB近傍の組成値を
用いることが良く、このMPBは、x、a、b、cの量
により変化するため、置換比率dを0.43≦d≦0.
55とすることにより、前述した、x、a、b、cの組
成範囲内でMPBを捉えることができる。
【0033】このように、化1で表されるペロブスカイ
ト型化合物を用いることにより、圧電定数dを向上させ
ることができるだけでなく、耐熱性並びに耐久性に優れ
た圧電磁器組成物を得ることができる。
【0034】また、本発明の圧電磁器組成物は、Fe、
Al、Siから成る成分以外の残部は実質的にペロブス
カイト型化合物から成る焼結体であるが、ここで、残部
が実質的にペロブスカイト型化合物から成るとは、他に
積極的に含有させるものはなく、不純物以外はペロブス
カイト型化合物だけであることを指し、不純物として含
まれる成分(Fe、Al、Siは除く)は0.01重量
%未満の範囲であれば含んでいても構わない。
【0035】次に、本発明の圧電磁器組成物の製造方法
について説明する。
【0036】まず、出発原料として、基本成分のPb3
4、ZrO2、TiO2と、SrCO 3及び/又はBaC
3に、さらにZnO、Sb23、NiO、TeO2、N
2 5の各粉末を秤量し、次いでこの混合物を脱水、乾
燥したあと、850〜900℃の温度で1〜3時間仮焼
して、化1の組成式で表されるペロブスカイト型化合物
の仮焼粉体を作製する。この時、基本成分となる各粉末
中には、不純物としてFe、Al、Siを含有している
が、できるだけFe、Al、Siの含有が少ない粉末を
用いることが好ましい。
【0037】次に、得られた仮焼粉体に対し、焼結後に
おいて含有量が0.01〜0.3重量%となるようにF
23を、0.01〜0.04重量%となるようにAl
23及びSiO2をそれぞれ添加し、ボールミル等にて
混合、粉砕する。その後、この粉砕物に有機バインダー
(PVA、モビニール等)を添加して混練乾燥すること
により造粒粉とし、得られた造粒粉を成形して成形体を
作製する。
【0038】この時、焼結された圧電磁器組成物が緻密
化され、表面に存在するボイドの径が大きくならないよ
うにするために、成形圧は1×108N/m2以上とする
ことが良い。また、ボールミル等の粉砕ボールや成形時
の型材には、原料中にFe、Al、Siが混入し、含有
量が変わってしまうことを防止するため、できるだけF
e、Al、Siを含まないものを用いることが良く、例
えば、粉砕ボールにはジルコニアを用い、ボールミルの
内張材には樹脂等を用いることが良い。
【0039】しかる後、得られた成形体を鉛雰囲気下で
1〜3時間程度焼成するのであるが、この時、焼成温度
が1100℃未満であると、緻密化が不十分であるた
め、得られた圧電磁器組成物の機械的特性(曲げ強度や
破壊靱性値)を所望の範囲とすることができず、また、
1300℃を超えると、圧電磁器組成物中のペロブスカ
イト型化合物の平均粒子径が所望の範囲を超えてしま
う。
【0040】その為、1100〜1300℃の範囲で焼
成することが良く、このようにして製作することにより
本発明の圧電磁器組成物を得ることができる。
【0041】なお、上述した製造方法では、組成の制御
を行い易いことから、化1の組成で表される仮焼粉体に
対してFe、Al、Siを添加しているが、焼成後にお
けるFeの含有量がFe23に換算して0.01〜0.
3重量%、Al及びSiの含有量がそれぞれAl23
SiO2に換算して0.01〜0.04重量%とするこ
とができれば、積極的にFe23、Al23、SiO2
を添加せず、不純物としてFe、Al、Siを多めに含
む出発原料のみを用いて焼成しても構わない。
【0042】次に、本発明の圧電磁器組成物を用いた応
用例であるインクジェット記録ヘッドを図1及び図2を
用いて明する。
【0043】このインクジェット記録ヘッド10は、圧
電磁器組成物にダイヤモンドホイールによる研削加工に
て一端が閉じられた複数の溝を並設し、各溝をインクの
流路2とするとともに、流路2を仕切る壁を隔壁1とし
た流路部材7と、上記各隔壁1の両側面上半分に、蒸着
法、スパッタリング法、メッキ等の膜形成手段によって
形成された、白金、金、パラジウム、ロジウム、ニッケ
ル、アルミニウム等の金属や白金−金、パラジウム−
銀、白金−パラジウム等の合金から成る駆動用電極3
と、セラミックス、ガラス、シリコン等の絶縁材料から
成り、各隔壁1の頂部に接着にて接合され、各流路2を
覆う蓋板8と、セラミックス、ガラス、シリコン、樹脂
(ポリイミド樹脂等)等から成り、上記流路部材7の開
放端部に接着にて接合されたノズル板6とから成り、上
記ノズル板6には各流路2と連通し、流路2内のインク
を吐出するインク吐出孔5を、上記蓋板8には、各流路
2と連通し、流路2内にインクを導入するインク供給孔
4をそれぞれ形成してある。
【0044】そして、上記流路部材7を形成する圧電磁
器組成物を、FeをFe23換算で0.01〜0.3重
量%、Al及びSiをそれぞれAl23、SiO2換算
で0.01〜0.04重量%の範囲で含有し、残部が実
質的に、Pb(Zr Ti)O3組成系のPbの一部
を、Ba、Srのうち一種以上の元素で置換し、かつ
(Zr Ti)の一部を、(Zn1/3 Sb2/3)、(Z
1/3 Nb2/3)、(Ni 1/2 Te1/2)のうち一種以
上の成分で置換したペロブスカイト型化合物からなり、
上記ペロブスカイト型化合物の平均粒子径が0.6〜7
μmであるとともに、4点曲げ強度が70MPa以上、
破壊靱性値が0.7MPam1/2以上で、かつ抗電界E
cが100以上である焼結体により形成してある。な
お、矢印は隔壁1を形成する圧電磁器組成物の分極方向
を示す。
【0045】そして、このヘッド10よりインク滴を吐
出するには、インク供給孔4より各流路2へ顔料タイプ
の油性インクや水性染料インクあるいは紫外線硬化イン
ク等のインクを導入するとともに、隔壁1に形成された
駆動用電極3に電圧を印加して隔壁1を屈曲変位させ、
流路2内のインクを加圧することにより、インク吐出孔
5からインク滴を吐出するようになっている。
【0046】即ち、図2(a)(b)にその駆動原理を
示すように、例えば駆動用電極3b,3c及び駆動用電
極3h,3iにそれぞれ正極の電圧を、駆動用電極3
a,3d及び駆動用電極3g,3jにそれぞれ負極の電
圧を印加して分極方向に対して垂直な方向に電界を加え
ると、隔壁1を形成する圧電磁器組成物が剪断モードに
よるすべり振動を起こし、図2(a)に示すように隔壁
1a及び隔壁1bが流路2a側へ屈曲変位するととも
に、隔壁1d,1eが流路2d側へ屈曲変位するため、
流路2a,2d内に充填されたインクを加圧して、イン
ク吐出孔5よりインク滴を吐出させることができ、この
後、各駆動用電極3a〜3d,3g〜3jへの通電を遮
断すると、屈曲変位していた隔壁1a,1b,1d,1
eが弾性作用によって元の形状に戻り、流路2a,2d
内が減圧される結果、インク供給孔4からインクの供給
が行われ、さらに前述した駆動用電極3a〜3d,3g
〜3jへ極性を逆転して電圧を印加すると、図2(b)
に示すように隔壁1a,1bが流路2aに対して外側へ
屈曲変位するとともに、隔壁1d,1eが流路2dに対
して外側へ屈曲変位するため、流路2a,2d内がさら
に減圧されてインクが充填され、次に、各駆動用電極3
a〜3d,3g〜3jへの通電を遮断すると、屈曲変位
していた隔壁1a,1b,1d,1eが弾性作用によっ
て元の形状に戻り、次のインク滴の吐出段階に入ること
になり、これらの動作を順次繰り返すことでインク滴の
吐出を連続的に行うことができる。
【0047】そして、本発明によれば、隔壁1を形成す
る圧電磁器組成物を上述したペロブスカイト型化合物か
らなる焼結体により形成してあるため、インク滴を吐出
するのに必要な圧電定数dを有するとともに、駆動用電
極3に通電して分極方向と垂直な方向に電界をかけても
分極度の劣化が小さいため、長期にわたってインク滴の
吐出を行っても特性劣化の無いヘッド10を得ることが
できる。
【0048】また、流路部材7を形成するにあたり、圧
電磁器組成物をダイヤモンドホイールを用いた研削加工
によって、隔壁1を幅100μm以下、高さ150μm
〜500μm程度の薄肉に加工しても、研削面である隔
壁1の側面に折れやチッピング(欠け)等の欠陥が少な
く、ヘッド10の製造歩留りを向上させることができる
とともに、隔壁1には割れやチッピング(欠け)等の欠
陥が殆どないことから、隔壁1を変位させれば十分な変
位量を得ることができ、隔壁1の安定した屈曲変位によ
って全てのインク吐出孔5からインク滴を安定して吐出
させることが可能な信頼性の高いヘッド10とすること
ができる。
【0049】以上、本発明の圧電磁器組成物を用いた応
用例としてインクジェット記録ヘッド10を例にとって
説明したが、本発明にかかるヘッド10は、図1に示し
た構造だけに限定されるものではなく、本発明の要旨を
逸脱しない範囲で変更や改良できることは言うまでもな
い。また、本発明の圧電磁器組成物は、インクジェット
記録ヘッドに限らず、超音波応用振動子や超音波モータ
等の他の圧電アクチュエータにも用いることができる。
【0050】
【実施例】(実施例1)ここで、化1の組成式で表され
るペロブスカイト型化合物を主成分とし、副成分として
Fe23、Al23、SiO2を添加し、これらの添加
量を異ならせた圧電磁器組成物と、上記副成分を含まな
い従来の圧電磁器組成物とを用意し、4点曲げ強度、破
壊靱性値、圧電定数d、抗電界Ecをそれぞれ測定する
とともに、各圧電磁器組成物に研削加工を施した時の折
れやチッピングの有無について測定し、各測定結果につ
いて比較する実験を行った。
【0051】まず、圧電磁器組成物の原料粉末として、
Pb34、ZrO2、TiO2、SrCO3、BaCO3
ZnO、Sb23、NiO、TeO2、Nb25を用意
し、それぞれの金属元素のモル比率が表1となるように
秤量したものに溶媒として水を加え、ボールミルにて2
0時間湿式混合した。次にこの混合物を乾燥し、900
℃の温度で3時間熱処理を加えて仮焼粉体を得た。
【0052】次に、得られた仮焼粉体に、表1の範囲で
Fe23、Al23、SiO2を添加した後、溶媒とし
て水を加え、ZrO2製のボールを使用しボールミルに
て20時間湿式粉砕し、さらにスラリーにモビニールの
有機バインダーと混練したあと乾燥させて造粒粉を作製
し、1.5×108N/m2の成形圧で100mm×10
0mm、厚さ1.0mmの板状の成形体を形成し、脱脂
処理した後、1250℃前後の温度で焼成することによ
り、表1に示す圧電磁器組成物を得た。
【0053】なお、得られた各圧電磁器組成物の組成
を、XRF蛍光分析にて測定したところ、表1に示す組
成比から構成されており、焼成による組成ずれがなかっ
た。
【0054】そして、得られた圧電磁器組成物の上下面
に金の電極を蒸着法により被着し、80℃のシリコンオ
イル中で圧電磁器組成物の厚み方向に直流電圧を30分
間印加して、3〜5kV/mmの電界にて分極処理し
た。その後、ダイシング装置を用いて、溝幅70μm、
溝深さ400μm、ピッチ140μmの溝加工を施し、
この溝加工による複数の溝を流路とするとともに、流路
を仕切る壁を隔壁とした流路部材を製作した。なお、加
工に使用したダイヤモンドホイールは、砥粒粒度が#2
000(4〜8μm)であり、回転数25000rp
m、送り速度20mm/秒の条件にて研削加工を行っ
た。
【0055】その後、隔壁の折れやチッピングの有無を
双眼顕微鏡にて観察し、また、圧電磁器組成物を形成す
る各ペロブスカイト型化合物の平均結晶粒子径は、焼結
体表面又は断面を走査型電子顕微鏡(SEM)によりS
EM写真を撮影し、インターセプト法により平均結晶粒
径を測定した。
【0056】また、4点曲げ強度はJIS R 160
1に準拠して測定し、破壊靱性値はJIS R 160
7に準拠して測定し、圧電定数d15は、分極処理した厚
さ0.25mm、幅2.5mm、長さ10mmの短冊状
の試料を電子工業会(EMAS)の規格に基づく測定法
によって測定し、抗電界Ecはソーヤタワー回路を用い
て得た電束密度(D)−電界(E)ヒステリシス曲線か
ら電束密度Dが0となる電界を測定した。
【0057】それぞれの結果は表1に示す通りである。
なお、圧電定数d15及び抗電界Ecは、Fe23、Al
23、SiO2を添加していない従来の圧電磁器組成物
の圧電定数d15及び抗電界Ecをそれぞれ100とした
場合の相対値で示した。
【0058】
【表1】
【0059】この結果、表1より試料No.17ではA
l、Siが含有されておらず、試料No.18ではFe
が含有されていないため、圧電磁器組成物を形成するペ
ロブスカイト型化合物の平均結晶粒子径が0.5μmと
小さく、溝加工による隔壁の折れが発生した。
【0060】また、試料No.7,15ではFeの含有
量がFe23に換算して0.3重量%より多く、試料N
o.12,23ではAl、Siの含有量がそれぞれAl
23、SiO2に換算して0.04重量%より多いた
め、4点曲げ強度が70MPa以下と低く、隔壁の折れ
が発生し、チッピングサイズも15μmを超える大きな
ものになった。しかも、試料No.7,15は、抗電界
Ecが基準となる試料No.1,9に示す従来の圧電磁
器組成物よりも低い値であった。
【0061】さらに、試料No.8,25ではFeの含
有量がFe23に換算して0.3重量%より多く、Al
及びSiの含有量がAl23、SiO2に換算してそれ
ぞれ0.04重量%より多いため、4点曲げ強度が70
MPa以下と低く、隔壁の折れが発生し、圧電定数d及
び抗電界Ecも基準となる試料No.1,16に示す従
来の圧電磁器組成物よりも低い値であった。
【0062】また、試料No.14ではペロブスカイト
化合物の平均結晶粒子径が8μmと大きく、試料No.
19ではペロブスカイト化合物の平均結晶粒子径が0.
5μmと小さく、試料No.24では圧電磁器組成物の
4点曲げ強度が低いため、各試料共に隔壁の折れが発生
した。
【0063】これに対し、試料No.2〜6,10,1
1,13及び20〜22のように、Feの含有量が0.
01〜0.3重量%、AlおよびSiの含有量が0.0
1〜0.04重量%、平均結晶粒子径が0.6〜7μ
m、4点曲げ強度が70MPa以上の範囲にあるもの
は、隔壁の折れがみられず、また、圧電定数d及び抗電
界Ecを試料No.1,9,16に示す従来の圧電磁器
組成物と比較して高い値を得ることができた。
【0064】このように、Pb(Zr Ti)O3組成
系のPbの一部を、Ba、Srのうち一種以上の元素で
置換し、かつ(Zr Ti)の一部を、(Zn1/3
2/3)、(Zn1/3 Nb2/3)、(Ni1/2
1/2)のうち一種以上の成分で置換したペロブスカイ
ト型化合物を主成分とし、副成分としてFeをFe23
に換算して0.01〜0.3重量%、AlをAl23
換算して0.01〜0.04重量%、SiをSiO2
換算して0.01〜0.04重量%の範囲で含有し、上
記ペロブスカイト型化合物の平均結晶粒子径が0.6〜
7μmであるとともに、4点曲げ強度が70MPa以上
で、かつ破壊靱性値が0.7MPam1/2以上である圧
電磁器組成物であれば、従来の圧電磁器組成物と比較し
て高い圧電定数d及び抗電界Ecを得ることができ、さ
らには研削加工を施しても隔壁に大きなチッピングを生
じたり破損することがなく、研削性に優れていた。 (実施例2)次に、表1のうち、試料No.5,8の流
路部材を用い、各流路部材の隔壁の両側面上半分にスパ
ッタリング法にて白金からなる駆動用電極を形成し、し
かる後、インク供給孔を備えたアルミナセラミック製の
蓋板を、流路部材の各流路を塞ぐように隔壁の頂面にエ
ポキシ系樹脂により接着するとともに、流路部材の開放
端部に、各流路と連通するインク吐出孔を備えたポリイ
ミド樹脂製のノズル板をエポキシ系樹脂にて接着して図
1に示すヘッド10をそれぞれ製作した。なお、本発明
範囲外である試料No.8の圧電磁器組成物により形成
したものは、流路部材7の隔壁1に折れが無い部分を選
別してヘッド10を製作した。
【0065】そして、各ヘッド10の流路2内にインク
を充填し、駆動用電極3に20Vの電圧を100Hr印
加してインク吐出孔5よりインク滴を吐出させ、この時
のインク滴の飛翔状況を、放電管を光源としフィルム上
に記録させる高速度写真撮影装置によって観察した。
【0066】この結果、試料No.8の流路部材7を用
いて形成した従来のヘッド10では、インクの吐出速度
のバラツキが大きく、100Hr経過後、100個のイ
ンク吐出孔5のうち、30個のインク吐出孔5からイン
ク滴が吐出されなくなった。
【0067】これに対し、試料No.5の流路部材7を
用いて形成した本発明のヘッド10は、100Hr経過
後も、100個のインク吐出孔5の全てから安定してイ
ンク滴を吐出させることができ、信頼性の高いものであ
った。
【0068】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、Feを
Fe23に換算して0.01〜0.3重量%、AlをA
23に換算して0.01〜0.04重量%、SiをS
iO2に換算して0.01〜0.04重量%含有し、残
部が実質的に、Pb(Zr Ti)O3組成系のPbの
一部を、Ba、Srのうち一種以上の元素で置換し、か
つ(Zr Ti)の一部を、(Zn1/3 Sb2/3)、
(Zn1/3 Nb2/3)、(Ni1/2 Te1/2)のうち一
種以上の成分で置換したペロブスカイト型化合物から成
り、上記ペロブスカイト型化合物の平均結晶粒子径が
0.6〜7μmであるとともに、4点曲げ強度が70M
Pa以上、破壊靱性値が0.7MPam1/2以上である
焼結体により圧電磁器組成物を構成したことによって、
従来の圧電磁器組成物と比較して圧電定数d及び抗電界
Ecを向上させることができ、大きな機械的変位量を長
期間にわたって安定して維持することが要求される圧電
アクチュエータ用として好適に用いることができるとと
もに、ダイヤモンドホイールを用いた研削加工を施した
としても折れやチッピング(欠け)等の欠陥がなく、研
削性を大幅に向上させることができる。
【0069】また、少なくとも一部が前記圧電磁器組成
物から成る複数の隔壁を並設し、各隔壁間をインクの流
路として成る流路部材と、上記隔壁の両側面にそれぞれ
形成された駆動用電極と、前記隔壁の頂面に接合され、
上記流路を覆う蓋板と、上記各流路と連通するインク吐
出孔とからインクジェット記録ヘッドを構成したことに
よって、隔壁を形成する圧電磁器組成物における分極度
の劣化が少なく、また、隔壁に折れやチッピング(欠
け)等の欠陥がなく、さらには隔壁の屈曲変位によって
破損することも少ないため、インク滴の吐出性能を高め
ることができるとともに、長期間にわたり、安定してイ
ンク滴を吐出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェット記録ヘッドの一例を示
す一部を破断した斜視図である。
【図2】(a)(b)は本発明のインクジェット記録ヘ
ッドの駆動原理を説明した断面図である。
【図3】従来のインクジェット記録ヘッドの一例を示す
一部を破断した斜視図である。
【符号の説明】
1,21・・・隔壁 2,22・・・流路 3,23・
・・駆動用電極 4,24・・・インク供給孔 5,25・・・インク吐
出孔 6,26・・・ノズル板 7,27・・・流路部材
8,28・・・蓋板 10,20・・・インクジェット記録ヘッド
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B41J 2/055 H01L 41/08 U H01L 41/09 41/18 101E 41/187 101F

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】FeをFe23に換算して0.01〜0.
    3重量%、AlをAl 23に換算して0.01〜0.0
    4重量%、SiをSiO2に換算して0.01〜0.0
    4重量%含有し、残部が実質的に、Pb(Zr Ti)
    3組成系のPbの一部を、Ba、Srのうち一種以上
    の元素で置換し、かつ(Zr Ti)の一部を、(Zn
    1/3 Sb2/3)、(Zn1/3 Nb2/3)、(Ni1/2
    Te1/2)のうち一種以上の成分で置換したペロブスカ
    イト型化合物から成る焼結体であって、上記ペロブスカ
    イト型化合物の平均結晶粒子径が0.6〜7μm、上記
    焼結体の4点曲げ強度が70MPa以上、破壊靱性値が
    0.7MPam1/2以上であることを特徴とする圧電磁
    器組成物。
  2. 【請求項2】少なくとも一部が圧電磁器組成物から成る
    複数の隔壁を並設し、各隔壁間をインクの流路とした流
    路部材と、上記隔壁の両側面にそれぞれ形成された駆動
    用電極と、前記隔壁の頂面に接合され、上記流路を覆う
    蓋板と、上記各流路と連通するインク吐出孔とを備えた
    インクジェット記録ヘッドにおいて、上記圧電磁器組成
    物を、FeをFe23に換算して0.01〜0.3重量
    %、AlをAl23に換算して0.01〜0.04重量
    %、SiをSiO2に換算して0.01〜0.04重量
    %含有し、残部が実質的に、Pb(Zr Ti)O3
    成系のPbの一部を、Ba、Srのうち一種以上の元素
    で置換し、かつ(Zr Ti)の一部を、(Zn1/3
    Sb2/3)、(Zn1/3 Nb2/3)、(Ni1/2 Te
    1/2)のうち一種以上の成分で置換したペロブスカイト
    型化合物から成り、上記ペロブスカイト型化合物の平均
    結晶粒子径が0.6〜7μmで、4点曲げ強度が70M
    Pa以上、破壊靱性値が0.7MPam1/2以上である
    焼結体により形成したことを特徴とするインクジェット
    記録ヘッド。
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