JP2002213102A - 木造建物の柱脚接合部の制震工法及び制震構造 - Google Patents
木造建物の柱脚接合部の制震工法及び制震構造Info
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Abstract
く水平耐力の大きい制震技術を容易に導入し得る木造建
物の柱脚接合部の制震工法及び制震構造を提供する。 【解決手段】 木造柱に、水平貫通孔と、同水平貫通孔
の中央部から同木造柱の軸方向に下面まで貫通する鉛直
貫通孔とを設け、前記水平貫通孔に低降伏点鋼製の水平
梁を両端支持形式で設置し、前記鉛直貫通孔に前記礎石
に反力をとるアンカーボルトを設け、前記水平梁の中央
部に前記アンカーボルトの上端を連結し、前記礎石に対
する木造柱の浮き上がりを利用して前記低降伏点鋼製の
水平梁を塑性変形させ震動エネルギーを吸収する構造と
した。
Description
柱を直置きして同木造柱の浮き上がりを許容する、木造
建物の柱脚接合部の制震工法及び制震構造の技術分野に
属し、更に云えば、様式美確保を目的とする文化財建物
等の既存の伝統木造建物に好適に実施される、木造建物
の柱脚接合部の制震工法及び制震構造に関する。
き上がりを許容する木造建物は、その構造から、地震時
や暴風時の水平力に対しては、長期鉛直荷重に伴う摩擦
抵抗、および柱の剛体回転機構のみで抵抗していた。
抗、および柱の剛体回転機構のみでは、建築基準法で要
求される最低レベル地震入力の1/2以下程度の水平耐
力しか保有せず、また暴風時の水平力に対しても十分と
言えないのが実情である。
柱の浮き上がりを許容する木造建物の柱脚接合部に、水
平耐力の大きい制震手段を導入する技術は非常に有益で
あり、急務とされている。
段を導入する技術は多数開示され実施に供されている。
特に、建築構造の柱脚接合部に低降伏点鋼を配し該低降
伏点鋼の塑性変形によって震動エネルギーを吸収する制
震技術は、安価な低降伏点鋼を採用するので経済的に優
れており、例えば、特開平7−224434号公報、特
開平8−13848号公報等に種々開示されている。
各公報等に開示されている技術はいずれも露出型であ
り、様式美、すなわち外観を確保することを重要な目的
とする既存の伝統木造建物に実施するためには、かなり
厳しい制約条件の下で実施せざるを得ず、実現は困難を
極めた。
物としての様式美を損なうことなく水平耐力の大きい制
震技術を容易に導入し得る木造建物の柱脚接合部の制震
工法及び制震構造を提供することにある。また、安価な
低降伏点鋼を採用することにより経済的にも優れた木造
建物の柱脚接合部の制震工法及び制震構造を提供するこ
とにある。更には、暴風時や微少レベルの地震に対して
は耐震効果を十分に発揮することができる木造建物の柱
脚接合部の制震工法及び制震構造を提供することにあ
る。
決するための手段として、請求項1に記載した発明に係
る木造建物の柱脚接合部の制震工法は、礎石の上に木造
柱を直置きして同木造柱の浮き上がりを許容する木造建
物の柱脚接合部の制震工法において、前記木造柱に、水
平貫通孔と、同水平貫通孔の中央部から同木造柱の軸方
向に下面まで貫通する鉛直貫通孔とを設け、前記水平貫
通孔に低降伏点鋼製の水平梁を両端支持形式で設置し、
前記鉛直貫通孔に前記礎石に反力をとるアンカーボルト
を設け、前記水平梁の中央部に前記アンカーボルトの上
端を連結し、前記礎石に対する木造柱の浮き上がりを利
用して前記低降伏点鋼製の水平梁を塑性変形させ震動エ
ネルギーを吸収する構造としたことを特徴とする。
柱脚接合部の制震構造は、礎石の上に木造柱を直置きし
て同木造柱の浮き上がりを許容する木造建物の柱脚接合
部の制震構造において、前記木造柱には、水平貫通孔
と、同水平貫通孔の中央部から同木造柱の軸方向に下面
まで貫通する鉛直貫通孔とが設けられていること、前記
水平貫通孔には低降伏点鋼製の水平梁が両端支持形式で
設置され、前記鉛直貫通孔には前記礎石に反力をとるア
ンカーボルトが設けられ、前記水平梁の中央部に前記ア
ンカーボルトの上端が連結されていること、をそれぞれ
特徴とする。
載した木造建物の柱脚接合部の制震構造において、アン
カーボルトを、筒状の座屈補剛部材に挿入した形態で一
体化構造としたことを特徴とする。
項1に記載した発明に係る木造建物の柱脚接合部の制震
工法の実施形態を示している。この制震工法は、礎石1
の上に木造柱2を直置きして同木造柱2の浮き上がりを
許容する木造建物、特には、様式美確保を重要な目的と
する文化財建物等の既存の伝統木造建物に好適に実施さ
れる。実際に当該工法を前記伝統木造建物に実施する場
合には、柱や壁等において外観からは見えない場所に書
された歴史的事実を発見する等の目的で建物を解体し、
構築する際に合わせて行うと効率的である。但し、当該
工法は、既存木造建物、新築木造建物を問わずに実施す
ることができる。
通孔5と、同水平貫通孔5の中央部から同木造柱2の軸
方向に下面まで貫通する鉛直貫通孔6とを設け、前記水
平貫通孔5に低降伏点鋼製の水平梁3を両端支持形式で
設置し、前記鉛直貫通孔6に前記礎石1に反力をとるア
ンカーボルト4を設け、前記水平梁3の中央部に前記ア
ンカーボルト4の上端を連結し、前記礎石1に対する木
造柱2の浮き上がりを利用して前記低降伏点鋼製の水平
梁3を塑性変形させ震動エネルギーを吸収する構造とし
た(請求項1記載の発明)。
柱状の木造柱2の下面中央部から鉛直方向上方へドリル
やノミ等の孔開け工具を用いて断面が円形の鉛直貫通孔
6を形成すると共に、前記礎石1における前記鉛直貫通
孔6に一致する部位にも断面が円形の鉛直貫通孔9を形
成し、一連の鉛直貫通孔6、9とする。
は、アンカーボルト4を通すに必要十分な大きさとす
る。勿論、鉛直貫通孔6、9の断面形状は円形に限定さ
れず、方形状に形成しても実施できる。また、前記礎石
1の下端面部には、前記アンカーボルト4下端のアンカ
ー部4aの納まりを考慮して凹部を設ける。ちなみに、
前記礎石1の上端面部に設けられた凹部は既設のダボ孔
である。更に、前記木造柱2に形成した鉛直貫通孔6の
所要高さは、前記一連の鉛直貫通孔6、9へ通すアンカ
ーボルト4の上端部に相当する高さとする。
孔開け工具を用いて、アンカーボルト4の上端が十分に
納まる高さで且つ前記木造柱2に形成した鉛直貫通孔6
と連通する、断面が方形状の水平貫通孔5を形成する。
具体的に該水平貫通孔5は前記木造柱2の下端面から3
0〜70cm程度の高さに設けている。勿論、水平貫通孔
5の断面形状は方形状に限定されず、円形に形成しても
実施できる。
アンカーボルト4を通し、該アンカーボルト4を、その
下端のアンカー部4aで前記礎石1に反力をとるように
して設ける。なお、該アンカー部4aは前記礎石1へ引
っ掛ける態様で実施しているが前記礎石1に固着する態
様で実施しても良い。
カーボルト4の上端に、前記水平貫通孔5を利用してア
イボルト8を固着し、該アイボルト8の中空部に前記低
降伏点鋼製の水平梁3を隙間無くきっちり嵌め込みつつ
その中央部まで貫通させ、前記アンカーボルト4と水平
梁3とを連結し一体化したT字形部材とする。前記アイ
ボルト8は予めアンカーボルト4の上端に固着した状態
で一連の鉛直貫通孔6、9へ通して実施しても良い。図
示例のアイボルト8とアンカーボルト4とは、両者の固
着部分を雄ネジと雌ネジに形成して固着しているが勿論
これに限定されない。
地震を超える程度の地震で降伏する耐力を保有する水平
梁3を好適に使用する。図示例の水平梁3の縦断面形状
は略正方形状でありその一辺の長さは20mm程度の大き
さで実施しているが、もちろんこれに限定されず、設計
上所望の降伏耐力に応じてその大きさ及び形状も異な
る。また、図示例の実施形態は、前記T字形部材に係る
前記アンカーボルト4のアンカー部4aの上面が前記礎
石1に当接した状態で、前記水平梁3が前記水平貫通孔
5の縦断面略中央に位置するような構造設計で実施して
いる。
両端部を隙間無くきっちり固定する凹部又は貫通孔を内
側面に有するくさび7、7を前記水平貫通孔5の両端か
らそれぞれ嵌め込み、前記水平梁3の両端部を定着支持
する。前記くさび7、7は、木製又は鋼製であり、中地
震を超える程度の地震が発生したとしても木造柱2から
抜け出ないような設計できっちり木造柱2へ嵌め込み定
着させることに留意する。よって、前記低降伏点鋼製の
水平梁3は前記木造柱2の軸力を確実に伝達することが
できる。なお、前記くさび7の外側(露出)面は、様式
美確保のため、木造柱2の外周面の形状にそろえること
が好ましい。
全てに繰り返し行い、木造建物の柱脚接合部の制震工法
を終了する。なお、所望の震動エネルギーを吸収する構
造設計とすることができれば、前記木造建物の柱脚接合
部の全てに当該制震工法を実施する必要はもちろん無
い。
物の柱脚接合部の制震工法を実施した制震構造は、前記
礎石1の上に木造柱2を直置きして同木造柱2の浮き上
がりを許容する木造建物の柱脚接合部の制震構造におい
て、前記木造柱2には、水平貫通孔5と、同水平貫通孔
5の中央部から同木造柱2の軸方向の下面まで貫通する
鉛直貫通孔6とが設けられている。前記水平貫通孔5に
は低降伏点鋼製の水平梁3が両端支持形式で設置され、
前記鉛直貫通孔6には前記礎石1に反力をとるアンカー
ボルト4が設けられ、前記水平梁3の中央部に前記アン
カーボルト4の上端が連結されている(請求項2記載の
発明)。
伏点鋼製の水平梁3とアンカーボルト4から成るT字形
部材は、同水平梁3の両端がくさび7、7でしっかり定
着支持され、アンカーボルト4下端のアンカー部4aが
礎石1で反力をとる構造とされている。
る程度の地震時の水平力が発生した場合には、木造柱2
の柱脚部に曲げ回転変形が発生し、木造柱2の底面が傾
斜回転することにより該底面中央に配設されたアンカー
ボルト4に引張力が発生して当該木造柱2が浮き上がる
(図3に例示)。この反力は、アンカーボルト4上端に
設置した低降伏点鋼製の水平梁3へ伝達され、該水平梁
3が曲げ降伏して塑性変形することにより、震動(地
震)エネルギーの一部を前記水平梁3の履歴エネルギー
として吸収する。
暴風が発生した場合には、前記水平梁3は降伏せず、耐
震構造と同等の強度を確保することができるので安全性
を向上させることができる。
の高さが高くなり座屈の虞がある場合には、前記アンカ
ーボルト4を、筒状の座屈補剛部材(図示省略)に挿入
した形態で一体化構造として実施する(請求項3記載の
発明)。これにより、木造柱2の浮き上がりに伴う圧縮
力によりアンカーボルト4の座屈を回避することがで
き、所望の震動エネルギーを吸収することができる。
が、本発明は、図示例の実施形態の限りではなく、その
技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に
行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むこと
を念のために言及する。例えば、木造柱の形状も円柱に
限らず、角柱でも当然に実施できる。また、低降伏点鋼
製の水平梁3の降伏耐力もこれに限定されず、所望の構
造設計に応じて調整される。
係る木造建物の柱脚接合部の制震工法及び制震構造によ
れば、耐震補強部材(T字形部材)を木造柱に内蔵して
実施できるので、伝統木造建物としての様式美を損なう
ことなく水平耐力の大きい制震技術を実施することがで
きる。また、安価な低降伏点鋼を採用するので経済的に
も優れている。更に、暴風時や微少レベルの地震に対し
ては耐震効果を十分に発揮することができる。
及び制震構造を示した断面図である。
る。
Claims (3)
- 【請求項1】礎石の上に木造柱を直置きして同木造柱の
浮き上がりを許容する木造建物の柱脚接合部の制震工法
において、 前記木造柱に、水平貫通孔と、同水平貫通孔の中央部か
ら同木造柱の軸方向に下面まで貫通する鉛直貫通孔とを
設け、前記水平貫通孔に低降伏点鋼製の水平梁を両端支
持形式で設置し、前記鉛直貫通孔に前記礎石に反力をと
るアンカーボルトを設け、前記水平梁の中央部に前記ア
ンカーボルトの上端を連結し、前記礎石に対する木造柱
の浮き上がりを利用して前記低降伏点鋼製の水平梁を塑
性変形させ震動エネルギーを吸収する構造としたことを
特徴とする、木造建物の柱脚接合部の制震工法。 - 【請求項2】礎石の上に木造柱を直置きして同木造柱の
浮き上がりを許容する木造建物の柱脚接合部の制震構造
において、 前記木造柱には、水平貫通孔と、同水平貫通孔の中央部
から同木造柱の軸方向に下面まで貫通する鉛直貫通孔と
が設けられていること、 前記水平貫通孔には低降伏点鋼製の水平梁が両端支持形
式で設置され、前記鉛直貫通孔には前記礎石に反力をと
るアンカーボルトが設けられ、前記水平梁の中央部に前
記アンカーボルトの上端が連結されていること、をそれ
ぞれ特徴とする、木造建物の柱脚接合部の制震構造。 - 【請求項3】アンカーボルトを、筒状の座屈補剛部材に
挿入した形態で一体化構造としたことを特徴とする、請
求項2に記載した木造建物の柱脚接合部の制震構造。
Priority Applications (1)
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JP2001013196A JP4558218B2 (ja) | 2001-01-22 | 2001-01-22 | 木造建物の柱脚接合部の制震工法及び制震構造 |
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2001
- 2001-01-22 JP JP2001013196A patent/JP4558218B2/ja not_active Expired - Fee Related
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