JP2002212686A - 鉄基希土類合金磁石用急冷合金、及び鉄基希土類合金磁石の製造方法 - Google Patents

鉄基希土類合金磁石用急冷合金、及び鉄基希土類合金磁石の製造方法

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裕和 金清
Toshio Mitsugi
敏夫 三次
Satoru Hirozawa
哲 広沢
Yasutaka Shigemoto
恭孝 重本
Yusuke Shioya
裕介 汐谷
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 希土類元素が少ないながらも高い保磁力およ
び磁化を示し、減磁曲線の角形性にも優れた永久磁石を
提供する。 【解決手段】 組成式が(Fe1-mm100-x-y-zx
yz(TはCoおよびNiからなる群から選択された1
種以上の元素、QはBおよびCからなる群から選択され
た1種以上の元素、RはYを含む1種以上の希土類金属
元素、MはTi、Zr、およびHfからなる群から選択
された少なくとも1種の元素)で表現され、組成比率
x、y、zおよびmが、それぞれ、10<x<17at
%、8≦y≦9.3at%、0.5≦z≦6at%、お
よび0≦m≦0.5を満足する合金の溶湯を作製する。
次に、圧力30kPa以上の雰囲気ガス中で前記合金の
溶湯を急冷し、平均粒径50nm以下のR2Fe14B型
化合物相を含む急冷合金を作製する。この急冷合金から
作製したナノコンポジット磁石におけるR2Fe14B型
化合物相の粒界には強磁性の鉄基硼化物が微細な状態で
存在する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種モータやアク
チュエータに好適に使用される永久磁石の製造方法に関
し、特に複数の強磁性相を有する鉄基希土類合金磁石の
製造方法に関している。
【0002】
【従来の技術】近年、家電用機器、OA機器、および電
装品等において、より一層の高性能化と小型軽量化が要
求されている。そのため、これらの機器に使用される永
久磁石については、磁気回路全体としての性能対重量比
を最大にすることが求められており、例えば残留磁束密
度Brが0.5T(テスラ)以上の永久磁石を用いるこ
とが要求されている。しかし、従来の比較的安価なハー
ドフェライト磁石によっては、残留磁束密度Brを0.
5T以上にすることはできない。
【0003】現在、0.5T以上の高い残留磁束密度B
rを有する永久磁石としては、粉末冶金法によって作製
されるSm−Co系磁石が知られている。Sm−Co系
磁石以外では、粉末冶金法によって作製されるNd−F
e−B系磁石や、液体急冷法によって作製されるNd−
Fe−B系急冷磁石が高い残留磁束密度Brを発揮する
ことができる。前者のNd−Fe−B系磁石は、例えば
特開昭59−46008号公報に開示されており、後者
のNd−Fe−B系急冷磁石は例えば特開昭60−98
52号公報に開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、Sm−
Co系磁石は、原料となるSmおよびCoのいずれもが
高価であるため、磁石価格が高いという欠点を有してい
る。
【0005】Nd−Fe−B系磁石の場合は、安価なF
eを主成分として(全体の60重量%〜70重量%程
度)含むため、Sm−Co系磁石に比べて安価ではある
が、その製造工程に要する費用が高いという問題があ
る。製造工程費用が高い理由のひとつは、含有量が全体
の10原子%〜15原子%程度を占めるNdの分離精製
や還元反応に大規模な設備と多大な工程が必要になるこ
とである。また、粉末冶金法による場合は、どうしても
製造工程数が多くなる。
【0006】これに対し、液体急冷法によって製造され
るNd−Fe−B系急冷磁石は、溶解工程→液体冷却工
程→熱処理工程といった比較的簡単な工程で得られるた
め、粉末冶金法によるNd−Fe−B系磁石に比べて工
程費用が安いという利点がある。しかし、液体急冷法に
よる場合、バルク状の永久磁石を得るには、急冷合金か
ら作製した磁石粉末を樹脂と混ぜ、ボンド磁石を形成す
る必要があるので、成形されたボンド磁石に占める磁石
粉末の充填率(体積比率)は高々80%程度である。ま
た、液体急冷法によって作製した急冷合金は、磁気的に
等方性である。
【0007】以上の理由から、液体急冷法を用いて製造
したNd−Fe−B系急冷磁石は、粉末冶金法によって
製造した異方性のNd−Fe−B系焼結磁石に比べてB
rが低いという問題を有している。
【0008】Nd−Fe−B系急冷磁石の特性を改善す
る手法としては、特開平1−7502号公報に記載され
ているように、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、および
Wからなる群から選択された少なくとも一種の元素と、
Ti、V、およびCrからなる群から選択された少なく
とも一種の元素とを複合的に添加することが有効であ
る。このような元素の添加によって、保磁力HcJと耐食
性とが向上するが、残留磁束密度Brを改善する有効な
方法は、ボンド磁石の密度を向上すること以外に知られ
ていない。
【0009】Nd−Fe−B系磁石の場合、希土類元素
の濃度が比較的に低い組成、すなわち、Nd3.8Fe
77.219(原子%)の近傍組成を持ち、Fe3B型化合
物を主相とする磁石材料が提案されている(R. Coehoor
n等、J. de Phys, C8,1998, 669〜670頁)。この永久磁
石材料は、液体急冷法によって作製したアモルファス合
金に対して結晶化熱処理を施すことにより、軟磁性であ
るFe3B相および硬磁性であるNd2Fe14B相が混在
する微細結晶集合体から形成された準安定構造を有して
おり、「ナノコンポジット磁石」と称されている。この
ようなナノコンポジット磁石については、1T以上の高
い残留磁束密度Brを有することが報告されているが、
その保磁力HcJは160kA/m〜240kA/mと比
較的低い。そのため、この永久磁石材料の使用は、磁石
の動作点が1以上になる用途に限られている。
【0010】また、ナノコンポジット磁石の原料合金に
種々の金属元素を添加し、磁気特性を向上させる試みが
なされているが(特開平3-261104号公報、米国特許4,83
6,868号、特開平7−122412号公報、国際出願の
国際公開公報WO003/03403、W.C.Chan, et.al. "THE E
FFECTS OF REFRACTORY METALS ON THE MAGNETIC PROPER
TIES OF α-Fe/R2Fe14B-TYPE NANOCOMPOSITES", IEEE,
Trans. Magn. No. 5, INTERMAG. 99, Kyongiu, Korea p
p.3265-3267, 1999)、必ずしも充分な「コスト当りの
特性値」は得られていない。
【0011】本発明は、上記事情に鑑みてなされたもの
であり、その目的とするところは、高い保磁力(例えば
cJ≧480kA/m)を維持しながら、残留磁束密度
r≧0.85Tを満足する優れた磁気特性を持つ鉄基
合金磁石を安価に製造し得る永久磁石の製造方法を提供
することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明による鉄基希土類
合金磁石は、組成式が(Fe1-mm100-x-y-zx y
z(TはCoおよびNiからなる群から選択された1
種以上の元素、QはBおよびCからなる群から選択され
た1種以上の元素、RはLaおよびCeを実質的に含ま
ない1種以上の希土類金属元素、MはTi、Zr、およ
びHfからなる群から選択された金属元素であって、T
iを必ず含む少なくとも1種の金属元素)で表現され、
組成比率x、y、zおよびmが、それぞれ、10<x≦
20原子%、6≦y<10原子%、0.1≦z≦12原
子%、および0≦m≦0.5を満足し、2種類以上の強
磁性結晶相を含有し、硬磁性相の平均サイズが10nm
以上200nm以下、軟磁性相の平均サイズが1nm以
上100nm以下の範囲内にある。
【0013】ある好ましい実施形態において、組成比率
x、y、zおよびmは、それぞれ、10<x<17at
%、8≦y≦9.3at%、0.5≦z≦6at%を満
足する。
【0014】ある好ましい実施形態においては、R2
14B型化合物相、硼化物相、およびα−Fe相が同一
の金属組織内に混在している。
【0015】ある好ましい実施形態において、前記α−
Fe相および硼化物相の平均結晶粒径は1nm以上50
nm以下である。
【0016】ある好ましい実施形態において、前記硼化
物相は、強磁性の鉄基硼化物を含んでいる。
【0017】ある好ましい実施形態において、前記鉄基
硼化物は、Fe3Bおよび/またはFe236を含んでい
る。
【0018】ある好ましい実施形態においては、組成比
率xおよびzが、z/x≧0.1を満足する。
【0019】ある好ましい実施形態においては、前記R
の組成比率yが9.5原子%以下である。
【0020】ある好ましい実施形態においては、前記R
の組成比率yが9.0原子%以下である。
【0021】ある好ましい実施形態においては、厚さが
10μm以上300μm以下の薄帯形状を有している。
【0022】前記鉄基希土類合金磁石は粉末化されてい
てもよい。この場合、粉末粒子の平均粒径は30μm以
上250μm以下であることが好ましい。
【0023】ある好ましい実施形態においては、保磁力
cJ≧480kA/m、残留磁束密度Br≧0.7Tの
硬磁気特性を有する磁石が得られる。
【0024】更に好ましい実施形態では、残留磁束密度
Br≧0.85T、最大エネルギ積(BH)max≧12
0kJ/m3、固有保磁力HcJ≧480kA/mの硬磁
気特性を有している磁石が得られる。
【0025】本発明によるボンド磁石は、上記鉄基希土
類合金磁石の粉末を含む磁石粉末を樹脂で成形したもの
である。
【0026】本発明による鉄基希土類合金磁石用急冷合
金は、組成式が(Fe1-mm100- x-y-zxyz(T
はCoおよびNiからなる群から選択された1種以上の
元素、QはBおよびCからなる群から選択された1種以
上の元素、RはLaおよびCeを実質的に含まない1種
以上の希土類金属元素、MはTi、Zr、およびHfか
らなる群から選択された金属元素であって、Tiを必ず
含む少なくとも1種の金属元素)で表現され、組成比率
x、y、zおよびmが、それぞれ、10<x≦20原子
%、6≦y<10原子%、0.1≦z≦12原子%、お
よび0≦m≦0.5を満足する。
【0027】ある好ましい実施形態では、α−Feを実
質的に含まず、R2Fe14B型化合物相及びアモルファ
ス相を含む組織を有し、前記R2Fe14B型化合物相が
体積比率で全体の60%以上を占めている。
【0028】ある好ましい実施形態では、10<x<1
7at%、8≦y≦9.3at%、および0.5≦z≦
6at%を満足し、平均粒径50nm以下のR2Fe14
B型化合物相が60体積%以上含まれる。
【0029】本発明による鉄基希土類合金磁石用急冷合
金は、Fe、Q(QはBおよびCからなる群から選択さ
れた1種以上の元素)、R(Rは希土類元素)、および
Tiを含有する合金溶湯を冷却することによって作製さ
れ、アモルファス相を含み、熱処理によってα−Fe結
晶相の成長開始より先にR2Fe14B型結晶構造を持つ
化合物結晶相の成長を開始する組織を有している。
【0030】本発明による鉄基希土類合金磁石の製造方
法は、Fe、Q(QはBおよびCからなる群から選択さ
れた1種以上の元素)、R(Rは希土類元素)、および
Tiを含有する合金溶湯を作製する工程と、前記合金溶
湯を冷却し、アモルファス相を含む凝固合金を作製する
工程と、前記凝固合金を加熱することによって、R2
14B型結晶構造を持つ化合物結晶相の成長を開始さ
せ、その後にα−Fe結晶相の成長を開始させる工程と
を包含する。
【0031】ある好ましい実施形態では、ストリップキ
ャスト法を用いて前記合金溶湯を冷却する。
【0032】本発明による鉄基希土類合金磁石の製造方
法は、組成式が(Fe1-mm100- x-y-zxyz(T
はCoおよびNiからなる群から選択された1種以上の
元素、QはBおよびCからなる群から選択された1種以
上の元素、RはLaおよびCeを実質的に含まない1種
以上の希土類金属元素、MはTi、Zr、およびHfか
らなる群から選択された金属元素であって、Tiを必ず
含む少なくとも1種の金属元素)で表現され、組成比率
x、y、zおよびmが、それぞれ、10<x≦20原子
%、6≦y<10原子%、0.1≦z≦12原子%、お
よび0≦m≦0.5を満足する合金の溶湯を作製する工
程と、前記合金の溶湯を急冷することによって、R2
14B型結晶相とアモルファス相とが混在する急冷合金
を作製する冷却工程と、前記急冷合金を結晶化し、それ
によって2種類以上の強磁性結晶相を含有し、硬磁性相
の平均サイズが10nm以上200nm以下、軟磁性相
の平均サイズが1nm以上100nm以下の範囲内にあ
る組織を形成する工程とを包含する。
【0033】ある好ましい実施形態では、前記冷却工程
において、体積比率で60%以上のR2Fe14B型化合
物相を含む急冷合金を作製する。
【0034】ある好ましい実施形態において、前記冷却
工程は、圧力30kPa以上の雰囲気ガス中で前記合金
の溶湯を急冷し、平均粒径50nm以下のR2Fe14
型化合物相を含む急冷合金を作製することを含む。
【0035】ある好ましい実施形態において、前記冷却
工程は、前記合金溶湯を回転する冷却ロールの表面に接
触させ、過冷却液体状態にある合金を形成する工程と、
前記過冷却状態にある合金が冷却ロールから離れた後、
前記雰囲気ガスによって前記過冷却状態にある合金から
熱を奪い、前記R2Fe14B型化合物相の成長を行なう
工程とを包含する。
【0036】ある好ましい実施形態では、前記急冷合金
に対して結晶化熱処理を行ない、少なくともR2Fe14
B型化合物相、α−Fe相、および硼化物相を含む3種
類以上の結晶相を含有する組織を形成し、前記R2Fe
14B型化合物相の平均結晶粒径を20nm以上150n
m以下、前記α−Fe相および硼化物相の平均結晶粒径
を1nm以上50nm以下とする工程を包含する。
【0037】ある好ましい実施形態において、前記硼化
物相は、強磁性の鉄基硼化物を含んでいる。
【0038】ある好ましい実施形態において、前記鉄基
硼化物は、Fe3Bおよび/またはFe236を含んでい
る。
【0039】ある好ましい実施形態では、ストリップキ
ャスト法を用いて前記合金の溶湯を冷却する。
【0040】本発明によるボンド磁石の製造方法は、上
記いずれかの鉄基希土類合金磁石の製造方法によって作
製された鉄基希土類合金磁石の粉末を用意する工程と、
前記鉄基希土類合金磁石の粉末を用いてボンド磁石を作
製する工程とを包含する。
【0041】ある好ましい実施形態では、粉末の表面に
表面処理が施されている。
【0042】ある好ましい実施形態では、ボンド磁石に
対して表面処理が施されている。
【0043】
【発明の実施の形態】本発明の鉄基希土類合金磁石は、
Tiを含有する希土類−鉄−硼素系合金の溶湯を冷却
し、それによって凝固した急冷合金から形成されてい
る。この急冷凝固合金は、結晶相を含むものであるが、
必要に応じて加熱され、更に結晶化が進められる。
【0044】本発明者は、特定範囲の組成を有する鉄基
希土類合金へTiを添加することにより、合金溶湯の冷
却過程で生じやすいα−Fe相の析出・成長を抑制し、
硬磁気特性を担うR2Fe14B型化合物相の結晶成長を
優先的かつ均一に進行させることができることを見出
し、本発明を想到するに至った。
【0045】Tiを添加しなかった場合、Nd2Fe14
B相の析出・成長に先だってα−Fe相が析出し、成長
しやすい。そのため、急冷合金に対する結晶熱処理が完
了した段階では、軟磁性のα−Fe相が粗大化してしま
う。
【0046】これに対し、Tiを添加した場合は、α−
Fe相の析出・成長のキネティクス(kinetics)が遅く
なり、析出・成長に時間を要するため、α−Fe相の析
出・成長が完了する前にNd2Fe14B相の析出・成長
が開始すると考えられる。このため、α−Fe相が粗大
化する前にNd2Fe14B相が均一に分散した状態に大
きく成長する。また、TiはBに対する親和性が強く、
鉄基硼化物の中に濃縮されやすいようである。鉄基硼化
物内でTiとBが強く結合することにより、Ti添加は
鉄基硼化物を安定化すると考えられる。
【0047】本発明によれば、Tiの働きによって鉄基
硼化物やα−Fe相などの軟磁性相が微細化されるとも
に、Nd2Fe14B相が均一に分散し、しかもNd2Fe
14B相の体積比率が増加する。その結果、保磁力および
磁化(残留磁束密度)が増加し、減磁曲線の角形性が向
上する。
【0048】以下、本発明の鉄基希土類合金磁石をより
詳細に説明する。
【0049】本発明の鉄基希土類合金磁石は、好適に
は、その組成式が(Fe1-mm100- x-y-zxyz
表現される。ここで、TはCoおよびNiからなる群か
ら選択された1種以上の元素、QはB(硼素)およびC
(炭素)からなる群から選択された1種以上の元素、R
はLaおよびCeを実質的に含まない1種以上の希土類
金属元素、MはTi、Zr、およびHfからなる群から
選択された少なくとも1種の金属元素であり、Tiを必
ず含んでいる。
【0050】組成比率を規定するx、y、z、およびm
は、それぞれ、10<x≦20原子%、6≦y<10原
子%、0.1≦z≦12原子%、および0≦m≦0.5
の関係を満足することが好ましい。
【0051】本発明の鉄基希土類合金磁石は、希土類元
素の組成比率が全体の10原子%未満であるにもかかわ
らず、Tiの添加によって磁化(残留磁束密度)がTi
を添加しない場合と同等のレベルを維持するか、または
増加し、減磁曲線の角形性が向上するという予想外の効
果が発揮される。
【0052】本発明の鉄基希土類合金磁石では、軟磁性
相のサイズが微細であるため、各構成相が交換相互作用
によって結合し、硬磁性のR2Fe14B型化合物相以外
に鉄基硼化物やα−Feのような軟磁性相が存在してい
ても、合金全体としては優れた減磁曲線の角形性を示す
ことが可能になる。
【0053】本発明の鉄基希土類合金磁石は、好適に
は、R2Fe14B型化合物相の飽和磁化と同等、また
は、それよりも高い飽和磁化を有する鉄基硼化物やα−
Feを含有している。この鉄基硼化物は、例えば、Fe
3B(飽和磁化1.5T)やFe2 36(飽和磁化1.6
T)である。ここで、R2Fe14Bの飽和磁化は約1.
6Tであり、α−Feの飽和磁化は2.1Tである。
【0054】通常、Bの組成比率xが10原子%を超
え、しかも希土類元素Rの組成比率yが6原子%以上8
原子%以下の範囲にある場合、R2Fe233が生成され
るが、このような組成範囲にある原料合金を用いる場合
であっても、本発明のようにTiを添加することによ
り、R2Fe233の代わりに、R2Fe14B、および、
Fe236やFe3Bなどの鉄基硼化物を生成することが
できる。これらの鉄基硼化物は磁化向上に寄与する。
【0055】本発明者の実験によると、Tiを添加した
場合だけ、V、Cr、Mn、Nb、Moなどの他の種類
の金属を添加した場合と異なり、磁化の低下が生じず、
むしろ磁化が向上することが初めてわかった。また、T
iを添加した場合には、前述の他の添加元素と比べ、減
磁曲線の角形性が特に良好なものとなった。
【0056】また、このようなTi添加効果は、B濃度
が10at%を超える場合に顕著に発揮される。以下、
図1を参照しながら、この点を説明する。
【0057】図1は、Tiが添加されていないNd−F
e−B磁石の最大磁気エネルギ積(BH)maxと硼素濃
度との関係を示すグラフである。グラフ中、白いバーは
10〜14at%のNdを含有する試料のデータを示
し、黒いバーは8〜10at%のNdを含有する試料の
データを示している。これに対し、図2は、Tiが添加
されたNd−Fe−B磁石の最大磁気エネルギ積(B
H)maxと硼素濃度との関係を示すグラフである。グラ
フ中、白いバーは10〜14at%のNdを含有する試
料のデータを示し、黒いバーは8〜10at%のNdを
含有する試料のデータを示している。
【0058】図1からわかるように、Tiが添加されて
いない試料では、Ndの含有量にかかわらず、硼素が1
0at%を超えて多くなるにつれ、最大磁気エネルギ積
(BH)maxが低下している。この低下の程度は、Nd
の含有量が10〜14at%の場合により大きい。この
ような傾向は従来から知られており、Nd2Fe14B相
を主相とする永久磁石においては、硼素の量を10at
%以下に設定することが好ましいと考えられてきた。例
えば、米国特許4,836,868号は、硼素濃度は5〜9.5
at%の実施例を開示し、更に、硼素濃度の好ましい範
囲として4at%以上12at%未満、より好ましい範
囲として4at%以上10at%以下の範囲を教示して
いる。
【0059】これに対して、Tiが添加された試料で
は、図2からわかるように、硼素が10at%を超える
或る範囲で最大磁気エネルギ積(BH)maxが向上して
いる。この向上はNdの含有量が8〜10at%の場合
に特に顕著である。
【0060】このように本発明によれば、B濃度が10
at%を超えると磁気特性が劣化するという従来の技術
常識からは予期できない効果をTi添加によって得るこ
とが可能になる。
【0061】次に、本発明による鉄基希土類合金磁石の
製造方法を説明する。
【0062】本発明の製造方法によれば、前記の組成を
有する鉄基合金の溶湯を不活性雰囲気中で冷却し、それ
によってR2Fe14B型化合物相を全体の60体積%以
上含む急冷合金を作製する。急冷合金中のR2Fe14
型化合物相の平均サイズは例えば80nm以下である。
この急冷合金に対して、必要に応じて熱処理を行なえ
ば、急冷合金中に残存していた非晶質を結晶化させるこ
とができる。
【0063】好ましい実施形態では、上記合金溶湯を圧
力30kPa以上の雰囲気中で冷却する。それにより、
合金溶湯は、冷却ロールとの接触によって急冷されるだ
けでなく、冷却ロールから離れた後も、雰囲気ガスによ
る二次冷却効果を受けて適切に冷却される。
【0064】冷却ロールの回転周速度を適切に調節する
ことにより、冷却ロールから離れる際の合金の状態を過
冷却液体状態に制御することが可能であり、過冷却状態
の合金は、冷却ロールから離れた後、雰囲気ガスによっ
て抜熱され、結晶化される。
【0065】図3を参照しながら、大気雰囲気ガスによ
る二次冷却効果を説明する。図3は、冷却過程開始から
の経過時間(Time)と合金温度(Temperat
ure)との関係を模式的に示すグラフである。グラフ
には、雰囲気ガス圧力が30kPaを超える相対的に高
い場合における合金の冷却経路aと、雰囲気ガス圧力が
30kPaを下回る相対的に低い場合における合金の冷
却経路bとが示されており、併せて、α−Fe相、Nd
2Fe14B相、およびFe236相の析出領域が図示され
ている。ここでTmは合金の融点であり、Tgは合金のガ
ラス転移温度である。
【0066】図3からわかるように、雰囲気ガスの圧力
が低い場合(冷却経路b)、雰囲気ガスによる大きな二
次冷却効果を期待できないため、冷却ロールの回転速度
を高くし、冷却ロールによる急冷(一次冷却)の速度を
相対的に高くしている。合金は冷却ロールの表面から離
れた後、雰囲気ガスによって相対的に遅い速度で冷却さ
れる(二次冷却)。冷却経路bの折れ曲がっているポイ
ントが冷却ロールから合金の剥離した時点に相当してい
る。
【0067】一方、雰囲気ガスの圧力が相対的に高い場
合(冷却経路a)、雰囲気ガスによる冷却(二次冷却)
効果が強まり、Nd2Fe14B相が生成される領域を通
過する時間が短縮される。このために、Nd2Fe14
相の成長が抑制され、微細なNd2Fe14B相が得られ
るものと推定される。
【0068】このように、30kPaを下回るように雰
囲気ガス圧力を低くすると、急冷合金中に生成されるR
2Fe14B型化合物相の結晶粒径が粗大化するため、最
終的に得られる磁石特性が劣化してしまうことになる。
【0069】逆に、雰囲気ガスの圧力が常圧(大気圧)
を超えて高くなり過ぎると、合金溶湯と冷却ロールとの
間にまき込まれる雰囲気ガスの影響が大きくなり、冷却
ロールによる充分な冷却が達成されなくなる。その結
果、粗大なα−Feが析出し、良好な硬磁気特性が得ら
れなくなる。
【0070】本発明者の実験によれば、急冷時に雰囲気
ガスの圧力は、30kPa以上でしかも常圧(101.
3kPa)以下に制御することが好ましく、30kPa
以上90kPa以下の範囲にすることが更に好ましい。
より好ましい範囲は40kPa以上60kPa以下であ
る。
【0071】上記雰囲気ガス圧力のもとで、ロール表面
周速度の好ましい範囲は4メートル/秒(m/秒)以上
50m/秒以下である。ロール表面周速度が4m/秒よ
り遅くなると、急冷合金中に含まれるR2Fe14B型化
合物相の結晶粒が粗大化してしまうことになる。その結
果、熱処理によってR2Fe14B型化合物相は更に大き
くなり、磁気特性が劣化する可能性がある。
【0072】一方、ロール表面周速度が50m/秒より
速くなると、急冷合金がほぼ完全な非晶質となり、R2
Fe14B型化合物相がほとんど析出しない状態になる。
そのため、結晶化熱処理ではR2Fe14B型化合物相の
粒成長が著しく、組織が不均一化してしまうため、磁気
特性の向上が達成されない。
【0073】実験によると、ロール表面周速度の更に好
ましい範囲は5m/秒以上30m/秒以下であり、更に
好ましい範囲は5m/秒以上20m/秒以下である。
【0074】なお、本発明では、急冷合金中に粗大なα
−Feをほとんど析出させず、微細なR2Fe14B型化
合物相を有する組織、あるいは、微細なR2Fe14B型
化合物相を有する組織とアモルファス相が混在した組織
が作製される。これにより、熱処理後に鉄基硼化物相な
どの軟磁性相が硬磁性相の間(粒界)に微細に分散した
状態または薄く広がった状態で存在する高性能の複合型
永久磁石を得ることができる。なお、本明細書における
「アモルファス相」とは、原子配列が完全に無秩序化し
た部分によってのみ構成される相だけではなく、結晶化
の前駆体や微結晶(サイズ:数nm以下)、または原子
クラスタを部分的に含んでいる相をも含むものとする。
具体的には、X線回折や透過電子顕微鏡観察によって結
晶構造を明確に同定できない相を広く「アモルファス
相」と称することにする。
【0075】従来、本発明が対象とするような組成に類
似する組成を有する合金溶湯を冷却してR2Fe14B型
化合物相を60体積%以上含むような急冷合金を作製し
ようとすると、α−Feが多く析出した合金組織が得ら
れるため、その後の結晶化熱処理でα−Feが粗大化し
てしまうという問題があった。α−Feなどの軟磁性相
が粗大化すると、磁石特性が大きく劣化し、到底実用に
耐える永久磁石は得られない。
【0076】特に本発明で用いる原料合金組成のように
硼素の含有量が比較的多い場合、硼素が持つ高いアモル
ファス生成能のため、合金溶湯の冷却速度を遅くして
も、結晶相は生成されにくかった。そのため、従来技術
によれば、合金溶湯の冷却速度を充分に低下させてR2
Fe14B型化合物相の体積比率が60%を超えるような
急冷凝固合金を作製しようとすると、R2Fe14B型化
合物相以外にα−Feまたはその前駆体が多く析出して
しまい、その後の結晶化熱処理により、α−Fe相の粗
大化が進行し、磁石特性が大きく劣化してしまった。
【0077】以上のことから、従来、ナノコンポジット
磁石の保磁力を増大させるには、合金溶湯の冷却速度を
高め、急冷凝固合金の大部分がアモルファス相によって
占められるような状態にした後、そのアモルファス相か
ら結晶化熱処理により均一に微細化された組織を形成す
ることが好ましいとの常識が存在していた。これは、微
細な結晶相が分散した合金組織を持つナノコンポジット
を得るには、制御しやすい熱処理工程でアモルファス相
から結晶化を行なうべきと考えられていたからである。
【0078】このため、アモルファス生成能に優れたL
aを原料合金に添加し、その原料合金の溶湯を急冷する
ことによってアモルファス相を主相とする急冷凝固合金
を作製した後、結晶化熱処理でNd2Fe14B相および
α−Fe相の両方を析出・成長させ、いずれの相も数十
nm程度の微細なものとする技術が報告されている(W.
C.Chan, et.al. "THE EFFECTS OF REFRACTORY METALS O
N THE MAGNETIC PROPERTIES OF α-Fe/R2Fe14B-TYPE NA
NOCOMPOSITES", IEEE, Trans. Magn. No. 5, INTERMAG.
99, Kyongiu, Korea pp.3265-3267, 1999)。なお、こ
の論文は、Tiなどの高融点金属元素の微量添加(2a
t%)が磁石特性を向上させることと、希土類元素であ
るNdの組成比率を9.5at%よりも11.0at%
に増加させることがNd2Fe14B相およびα−Fe相
の両方を微細化する上で好ましいことを教示している。
上記高融点金属の添加は、硼化物(R2Fe233やFe
3B)の生成を抑制し、Nd2Fe14B相およびα−Fe
相の2相のみからなる磁石を作製するために行なわれて
いる。
【0079】これに対し、本発明では、添加Tiの働き
により、急冷凝固工程でα−Fe相の析出を抑え、更に
は、結晶化熱処理工程における鉄基硼化物やα−Fe相
などの軟磁性相の粗大化を抑制することができる。
【0080】本発明によれば、希土類元素量が比較的少
ない(9.3at%以下)原料合金を用いながら、磁化
(残留磁束密度)および保磁力が高く、減磁曲線の角形
性にも優れた永久磁石を製造することができる。
【0081】前述のように、本発明による磁石の保磁力
増加は、Nd2Fe14B相を冷却工程で優先的に析出・
成長させ、それによってNd2Fe14B相の体積比率を
増加させながら、しかし軟磁性相の粗大化を抑制したこ
とによって実現する。また、磁化の増加は、Tiの働き
により、急冷凝固合金中に存在する硼素リッチな非磁性
アモルファス相から強磁性鉄基硼化物などの硼化物相を
生成し、結晶化熱処理後に残存する非磁性アモルファス
相の体積比率を減少させたために得られたものと考えら
れる。
【0082】上述のようにして得られた急冷合金に対し
ては、必要に応じて、結晶化熱処理を行ない、R2Fe
14B型化合物相、硼化物相、およびα−Fe相を含む3
種類以上の結晶相を含有する組織を形成することが好ま
しい。この組織中、R2Fe1 4B型化合物相の平均結晶
粒径は10nm以上200nm以下、硼化物相およびα
−Fe相の平均結晶粒径は1nm以上50nm以下とな
るように熱処理温度および時間を調節する。R2Fe14
B型化合物相の平均結晶粒径は通常30nm以上となる
が、条件によっては50nm以上になる。硼化物相やα
−Fe相などの軟磁性相の平均結晶粒径は30nm以下
となることが多く、典型的には数nmの大きさにしかな
らない。
【0083】最終的な磁石におけるR2Fe14B型化合
物相の平均結晶粒径はα−Fe相の平均結晶粒径よりも
大きい。図4は、この磁石の金属組織を模式に示してい
る。図4からわかるように、相対的に大きなR2Fe14
B型化合物相の間に微細な軟磁性相が分散して存在して
いる。このようにR2Fe14B型化合物相の平均サイズ
が比較的大きい場合であっても、軟磁性相の平均サイズ
が充分に小さいため、各構成相が交換相互作用によって
結合し、その結果、軟磁性相の磁化方向が硬磁性相によ
って拘束されるので、合金全体としては優れた減磁曲線
の角形性を示すことが可能になる。
【0084】本発明の製造方法による場合、前述のよう
に硼化物が生成されやすい理由は、R2Fe14B型化合
物相が大半を占める凝固合金を作製すると、急冷合金中
に存在するアモルファス相がどうしても硼素を過剰に含
むこととなるため、この硼素が結晶化熱処理で他の元素
と結合して析出・成長しやすくなるためであると考えら
れる。しかし、熱処理前のアモルファス相に含まれる硼
素と他の元素が結合して、磁化の低い化合物が生成され
ると、磁石全体として磁化が低下してしまう。
【0085】本発明者の実験によれば、Tiを添加した
場合だけ、V、Cr、Mn、Nb、Moなどの他の種類
の金属を添加した場合と異なり、磁化の低下が生じず、
むしろ磁化が向上することがわかった。また、M(特に
Ti)を添加した場合には、前述の他の添加元素と比
べ、減磁曲線の角形性が特に良好なものとなった。これ
らのことから、磁化の低い硼化物の生成を抑制する上で
Tiが特に重要な働きをしていると考えられる。特に、
本発明で用いる原料合金の組成範囲のうち、硼素および
Tiが比較的に少ない場合は、熱処理によって強磁性を
有する鉄基硼化物相が析出しやすい。この場合、非磁性
のアモルファス相中に含まれる硼素が鉄基硼化物中に取
り込まれる結果、結晶化熱処理後に残存する非磁性アモ
ルファス相の体積比率が減少し、強磁性の結晶相が増加
するため、残留磁束密度Brが向上すると考えられる。
【0086】以下、図5を参照しながら、この点をより
詳細に説明する。
【0087】図5は、Tiを添加した場合、および、T
iに代えてNbなどを添加した場合における急冷凝固合
金の結晶化過程における微細組織の変化を模式的に示す
図である。Tiを添加した場合は、α−Feが析出する
温度よりも高い温度領域において各構成相の粒成長が抑
制されており、優れた硬磁気特性が維持される。これに
対し、Nb、V、Crなどの金属元素を添加した場合
は、α−Feが析出するような比較的高い温度領域で各
構成相の粒成長が著しく進行し、各構成相の交換結合が
弱まってしまう結果、減磁曲線の角形性が大きく低下す
る。
【0088】まず、Nb、Mo、Wを添加した場合を説
明する。この場合、α−Feが析出しない比較的低い温
度領域で熱処理を行なえば、減磁曲線の角形性に優れた
良好な硬磁気特性を得ることが可能である。しかし、こ
のような温度で熱処理を行なった合金では、R2Fe14
B型微細結晶相が非磁性のアモルファス相中に分散して
存在していると推定され、ナノコンポジット磁石の構成
は形成されていない。また、更に高い温度で熱処理を行
なうと、アモルファス相中からα−Fe相が析出する。
このα−Fe相は、Tiを添加した場合と異なり、析出
後、急激に成長し、粗大化する。このため、各構成相間
の交換結合が弱くなり、減磁曲線の角形性が大きく劣化
してしまうことになる。
【0089】一方、Tiを添加した場合は、熱処理によ
り、R2Fe14B型結晶相、鉄基硼化物相、α−Fe
相、およびアモルファス相を含むナノコンポジット構造
が得られ、各構成相か均一に微細化する。また、Tiを
添加した場合は、α−Fe相の成長が抑制される。
【0090】VやCrを添加した場合は、これらの添加
金属がFeに固溶し、Feと反強磁性的に結合するた
め、磁化が大きく低下してしまう。また、VやCrを添
加した場合、熱処理に伴う粒成長が充分に抑制されず、
減磁曲線の角形性が劣化する。
【0091】このようにTiを添加した場合のみ、α−
Fe相の粗大化を適切に抑制し、強磁性の鉄基硼化物を
形成することが可能になる。更に、Tiは、液体急冷時
にFe初晶(後にα−Feに変態するγ−Fe)の晶出
を遅らせ、過冷却液体の生成を容易にする元素として硼
素や炭素とともに重要な働きをするため、合金溶湯を急
冷する際の冷却速度を102℃/秒〜105℃/秒程度の
比較的低い値にしても、α−Feを大きく析出させるこ
となく、R2Fe14B型結晶相とアモルファス相とが混
在する急冷合金を作製することが可能になる。このこと
は、種々の液体急冷法の中から、特に量産に適したスト
リップキャスト法の採用を可能にするため、低コスト化
にとって重要である。
【0092】合金溶湯を急冷して原料合金を得る方法と
して、ノズルオリフィスによる溶湯の流量制御を行なわ
ずに溶湯をタンディッシュから直接に冷却ロール上に注
ぐストリップキャスト法は生産性が高く、製造コストの
低い方法である。R−Fe−B系希土類合金の溶湯をス
トリップキャスト法によっても達成可能な冷却速度範囲
でアモルファス化するには、通常、B(硼素)を10原
子%以上添加する必要がある。このようにBを多く添加
した場合は、急冷合金に対して結晶化熱処理を行った
後、非性磁性のアモルファス相の他、粗大なα−Feや
軟磁性相であるNd2Fe233相が析出するため、均質
な微細結晶組織が得られない。その結果、強磁性相の体
積比率が低下し、磁化の低下およびNd2Fe14B相の
存在比率の低下により、保磁力の大幅な低下を招来す
る。しかしながら、本発明のようにTiを添加すると、
上述した現象が観察されるため、予想外に磁化が向上す
る。
【0093】なお、急冷合金がアモルファス相を多く含
む場合よりも、Nd2Fe14B相を多く含む状態にある
方が、最終的な磁石特性は高いものが得やすい。急冷凝
固合金中に占めるNd2Fe14B相の体積比率は、全体
の半分以上、具体的には60体積%以上になることが好
ましい。この60体積%という値は、メスバウアースペ
クトル分光法で測定されたものである。
【0094】[組成の限定理由]Qは、その全量がB
(硼素)から構成されるか、または、BおよびC(炭
素)の組み合わせから構成される。Qの総量に対するC
の原子比率割合は0.25以下であることが好ましい。
【0095】Qの組成比率xが10原子%以下になる
と、急冷時の冷却速度が102℃/秒〜105℃/秒程度
と比較的低い場合、R2Fe14B型結晶相とアモルファ
ス相とが混在する急冷合金を作製することが困難にな
り、その後に熱処理を施しても480kA/m未満のH
cJしか得られない。また、液体急冷法の中でも工程費用
が比較的安いストリップ・キャスト法を採用できなくな
り、永久磁石の価格が上昇してしまうことになる。一
方、Qの組成比率xが20原子%を超えると、結晶化熱
処理後も残存するアモルファス相の体積比率が増し、同
時に、構成相中で最も高い飽和磁化を有するα−Feの
存在比率が減少するため、残留磁束密度Brが低下して
しまう。以上のことから、Qの組成比率xは10原子%
を超え、20原子%以下となるように設定することが好
ましい。より好ましい組成比率xの範囲は10原子%以
上17原子%以下である。
【0096】Rは、希土類元素(Yを含む)の群から選
択された1種以上の元素である。LaまたはCeが存在
すると、保磁力および角形性が劣化するため、Laおよ
びCeを実質的に含まないことが好ましい。ただし、微
量のLaやCe(0.5原子%以下)が不可避的に混入
する不純物として存在する場合は、磁気特性上、問題な
い。したがって、0.5原子%以下のLaやCeを含有
する場合は、LaやCeを実質的に含まないといえる。
【0097】Rは、より具体的には、PrまたはNdを
必須元素として含むことが好ましく、その必須元素の一
部をDyおよび/またはTbで置換してもよい。Rの組
成比率yが全体の6原子%未満になると、保磁力の発現
に必要なR2Fe14B型結晶構造を有する化合物相が充
分に析出せず、480kA/m以上の保磁力HcJを得る
ことができなくなる。また、Rの組成比率yが10原子
%以上になると、強磁性を有する鉄基硼化物やα−Fe
の存在量が低下する。故に、希土類元素Rの組成比率y
は6原子%以上10原子%未満の範囲、例えば、6原子
%以上9.5原子%以下に調節することが好ましい。よ
り好ましいRの範囲は8原子%以上9.3原子%以下で
あり、最も好ましいRの範囲は8.3原子%以上9.0
原子%以下である。
【0098】添加金属元素Mは、Tiを必須としてお
り、更にZrおよび/またはHfを含んでいても良い。
Tiは、前述した効果を得るためには必須の元素であ
り、保磁力HcJおよび残留磁束密度Brの向上および減
磁曲線の角形性の改善に寄与し、最大エネルギー積(B
H)maxを向上させる。
【0099】金属元素Mの組成比率zが全体の0.5原
子%未満になると、Ti添加の効果が充分に発現しな
い。一方、金属元素Mの組成比率zが全体の12原子%
を超えると、結晶化熱処理後も残存するアモルファス相
の体積比率が増すため、残留磁束密度Brの低下を招来
しやすい。以上のことから、金属元素Mの組成比率zは
0.5原子%以上12原子%以下の範囲とすることが好
ましい。より好ましいzの範囲の下限は1.0原子%で
あり、より好ましいzの範囲の上限は8.0原子%であ
る。更に好ましいzの範囲の上限は6.0原子%であ
る。
【0100】また、Qの組成比率xが高いほど、Q(例
えば硼素)を過剰に含むアモルファス相が形成されやす
いので、金属元素Mの組成比率zを高くすることが好ま
しい。具体的には、z/x≧0.1を満足させるように
組成比率を調節することが好ましく、z/x≧0.15
を満足させることがより好ましい。
【0101】なお、Tiは特に好ましい働きをするた
め、金属元素MはTiを必ず含むことが好ましい。この
場合、金属元素M全体に対するTiの割合(原子比率)
は、70%以上であることが好ましく、90%以上であ
ることが更に好ましい。
【0102】Feは、上述の元素の含有残余を占める
が、Feの一部をCoおよびNiの一種または二種の遷
移金属元素(T)で置換しても所望の硬磁気特性を得る
ことができる。Feに対するTの置換量が50%を超え
ると、0.7T以上の高い残留磁束密度Brが得られな
い。このため、置換量は0%以上50%以下の範囲に限
定することが好ましい。なお、Feの一部をCoで置換
することによって、減磁曲線の角形性が向上するととも
に、R2Fe14B相のキュリー温度が上昇するため、耐
熱性が向上する。CoによるFe置換量の好ましい範囲
は0.5%以上40%以下である。
【0103】次に、本発明の好ましい実施形態を説明す
る。
【0104】[液体急冷装置]本実施形態では、例え
ば、図6に示す急冷装置を用いて原料合金を製造する。
酸化しやすい希土類元素RやFeを含む原料合金の酸化
を防ぐため、不活性ガス雰囲気中で合金製造工程を実行
する。不活性ガスとしては、ヘリウムまたはアルゴン等
の希ガスや窒素を用いることができる。なお、窒素は希
土類元素Rと比較的に反応しやすいため、ヘリウムまた
はアルゴンなどの希ガスを用いることが好ましい。
【0105】図6の装置は、真空または不活性ガス雰囲
気を保持し、その圧力を調整することが可能な原料合金
の溶解室1および急冷室2を備えている。図6(a)は
全体構成図であり、図6(b)は、一部の拡大図であ
る。
【0106】図6(a)に示されるように、溶解室1
は、所望の磁石合金組成になるように配合された原料2
0を高温にて溶解する溶解炉3と、底部に出湯ノズル5
を有する貯湯容器4と、大気の進入を抑制しつつ配合原
料を溶解炉3内に供給するための配合原料供給装置8と
を備えている。貯湯容器4は原料合金の溶湯21を貯
え、その出湯温度を所定のレベルに維持できる加熱装置
(不図示)を有している。
【0107】急冷室2は、出湯ノズル5から出た溶湯2
1を急冷凝固するための回転冷却ロール7を備えてい
る。
【0108】この装置においては、溶解室1および急冷
室2内の雰囲気およびその圧力が所定の範囲に制御され
る。そのために、雰囲気ガス供給口1b、2b、および
8bとガス排気口1a、2a、および8aとが装置の適
切な箇所に設けられている。特にガス排気口2aは、急
冷室2内の絶対圧を30kPa〜常圧(大気圧)の範囲
内に制御するため、ポンプに接続されている。
【0109】溶解炉3は傾動可能であり、ロート6を介
して溶湯21を貯湯容器4内に適宜注ぎ込む。溶湯21
は貯湯容器4内において不図示の加熱装置によって加熱
される。
【0110】貯湯容器4の出湯ノズル5は、溶解室1と
急冷室2との隔壁に配置され、貯湯容器4内の溶湯21
を下方に位置する冷却ロール7の表面に流下させる。出
湯ノズル5のオリフィス径は、例えば0.5〜2.0m
mである。溶湯21の粘性が大きい場合、溶湯21は出
湯ノズル5内を流れにくくなるが、本実施形態では急冷
室2を溶解室1よりも低い圧力状態に保持するため、溶
解室1と急冷室2との間に圧力差が形成され、溶湯21
の出湯がスムーズに実行される。
【0111】冷却ロール7は、熱伝導度の点からAl合
金、銅合金、炭素鋼、真鍮、W、Mo、青銅から形成さ
れ得る。ただし、機械的強度および経済性の観点から、
Cu、Fe、またはCuやFeを含む合金から形成する
ことが好ましい。CuやFe以外の材料で冷却ロールを
作製すると、急冷合金の冷却ロールに対する剥離性が悪
くなるため、急冷合金がロールに巻き付くおそれがあり
好ましくない。冷却ロール7の直径は例えば300〜5
00mmである。冷却ロール7内に設けた水冷装置の水
冷能力は、単位時間あたりの凝固潜熱と出湯量とに応じ
て算出し、調節される。
【0112】図6に示す装置によれば、例えば合計10
kgの原料合金を10〜20分間で急冷凝固させること
ができる。こうして形成した急冷合金は、例えば、厚
さ:10〜300μm、幅:2mm〜3mmの合金薄帯
(合金リボン)22となる。
【0113】[液体急冷法]まず、前述の組成式で表現
される原料合金の溶湯21を作製し、図6の溶解室1の
貯湯容器4に貯える。次に、この溶湯21は出湯ノズル
5から減圧Ar雰囲気中の水冷ロール7上に出湯され、
冷却ロール7との接触によって急冷され、凝固する。急
冷凝固方法としては、冷却速度を高精度に制御できる方
法を用いる必要がある。
【0114】本実施形態の場合、溶湯21の冷却凝固に
際して、冷却速度を1×102〜1×108℃/秒とする
ことが好ましく、1×104〜1×106℃/秒とするこ
とが更に好ましい。
【0115】合金の溶湯21が冷却ロール7によって冷
却される時間は、回転する冷却ロール7の外周表面に合
金が接触してから離れるまでの時間に相当し、その間
に、合金の温度は低下し、過冷却液体状態になる。その
後、過冷却状態の合金は冷却ロール7から離れ、不活性
雰囲気中を飛行する。合金は薄帯状で飛行している間に
雰囲気ガスに熱を奪われる結果、その温度は更に低下す
る。本発明では、雰囲気ガスの圧力を30kPa〜常圧
の範囲内に設定しているため、雰囲気ガスによる抜熱効
果が強まり、合金中にNd2Fe14B型化合物を均一微
細に析出・成長させることができる。なお、適切な量の
Tiなどの元素Mを原料合金中に添加していない場合に
は、上述したような冷却過程を経た急冷合金中には、α
−Feが優先的に析出・成長するため、最終的な磁石特
性が劣化してしまうことになる。
【0116】本実施形態では、ロール表面速度を10m
/秒以上30m/秒以下の範囲内に調節し、かつ、雰囲
気ガスによる二次冷却効果を高めるために雰囲気ガス圧
力を30kPa以上にすることによって、平均粒径80
nm以下の微細なR2Fe14B型化合物相を60体積%
以上含む急冷合金を作製している。
【0117】なお、本発明で用いる合金溶湯の急冷法
は、上述の片ロール法に限定されず、双ロール法、ガス
アトマイズ法、ノズルやオリフィスによる流量制御を行
なわない方法であるストリップキャスト法、更には、ロ
ール法とガスアトマイズ法とを組み合わせた冷却法など
であってもよい。
【0118】上記急冷法の中でも、ストリップキャスト
法の冷却速度は比較的低く、102〜105℃/秒であ
る。本実施形態では、適切な量のTiを合金に添加する
ことにより、ストリップキャスト法による場合でもFe
初晶を含まない組織が大半を占める急冷合金を形成する
ことができる。ストリップキャスト法は、工程費用が他
の液体急冷法の半分程度以下であるため、片ロール法に
比べて大量の急冷合金を作製する場合に有効であり、量
産化に適した技術である。原料合金に対して元素Mを添
加しない場合や、元素Tiの代わりにCr、V、Mn、
Mo、Ta、および/またはWを添加した場合には、ス
トリップキャスト法を用いて急冷合金を形成しても、F
e初晶を多く含む金属組織が生成するため、所望の金属
組織を形成することができない。
【0119】[熱処理]本実施形態では、熱処理をアル
ゴン雰囲気中で実行する。好ましくは、昇温速度を5℃
/秒〜20℃/秒として、550℃以上850℃以下の
温度で30秒以上20分以下の時間保持した後、室温ま
で冷却する。この熱処理によって、アモルファス相中に
準安定相の微細結晶が析出・成長し、ナノコンポジット
組織構造が形成される。本発明によれば、熱処理の開始
時点で既に微細なNd2Fe14B型結晶相が全体の60
体積%以上存在しているため、α−Fe相や他の結晶相
の粗大化が抑制され、Nd2Fe14B型結晶相以外の各
構成相(軟磁性相)が均一に微細化される。
【0120】なお、熱処理温度が550℃を下回ると、
熱処理後もアモルファス相が多く残存し、急冷条件によ
っては、保磁力が充分なレベルに達しない場合がある。
また、熱処理温度が850℃を超えると、各構成相の粒
成長が著しく、残留磁束密度Brが低下し、減磁曲線の
角形性が劣化する。このため、熱処理温度は550℃以
上850℃以下が好ましいが、より好ましい熱処理温度
の範囲は570℃以上820℃以下である。
【0121】本発明では、雰囲気ガスによる二次冷却効
果のため、急冷合金中に充分な量のNd2Fe14B型化
合物相が均一かつ微細に析出している。このため、急冷
合金に対して敢えて結晶化熱処理を行なわない場合で
も、急冷凝固合金自体が充分な磁石特性を発揮し得る。
そのため、結晶化熱処理は本発明に必須の工程ではない
が、これを行なうことが磁石特性向上のためには好まし
い。なお、従来に比較して低い温度の熱処理でも充分に
磁石特性を向上させることが可能である。
【0122】熱処理雰囲気は、合金の酸化を防止するた
め、不活性ガス雰囲気が好ましい。0.1kPa以下の
真空中で熱処理を行っても良い。
【0123】熱処理前の急冷合金中には、R2Fe14
型化合物相およびアモルファス相以外に、Fe3B相、
Fe236、およびR2Fe233相等の準安定相が含ま
れていても良い。その場合、熱処理によって、R2Fe
233相は消失し、R2Fe14B相の飽和磁化と同等、ま
たは、それよりも高い飽和磁化を示す鉄基硼化物(例え
ばFe236)やα−Feを結晶成長させることができ
る。
【0124】本発明の場合、最終的にα−Feのような
軟磁性相が存在していても、軟磁性相と硬磁性相とが交
換相互作用によって磁気的に結合するため、優れた磁気
特性が発揮される。
【0125】熱処理後におけるR2Fe14B型化合物相
の平均結晶粒径は、単軸結晶粒径である300nm以下
となる必要があり、20nm以上150nm以下である
ことが好ましく、20nm以上100nm以下であるこ
とが更に好ましい。これに対し、硼化物相やα−Fe相
の平均結晶粒径が50nmを超えると、各構成相間に働
く交換相互作用が弱まり、減磁曲線の角形性が劣化する
ため、(BH)maxが低下してしまう。これらの平均結
晶粒径が1nmを下回ると、高い保磁力を得られなくな
る。以上のことから、硼化物相やα−Fe相などの軟磁
性相の平均結晶粒径は1nm以上50nm以下であるこ
とが好ましく、30nm以下であることが更に好まし
い。
【0126】なお、熱処理前に急冷合金の薄帯を粗く切
断または粉砕しておいてもよい。
【0127】熱処理後、得られた磁石を微粉砕し、磁石
粉末(磁粉)を作製すれば、その磁粉から公知の工程に
よって種々のボンド磁石を製造することができる。ボン
ド磁石を作製する場合、鉄基希土類合金磁粉はエポキシ
樹脂やナイロン樹脂と混合され、所望の形状に成形され
る。このとき、ナノコンポジット磁粉に他の種類の磁
粉、例えばSm−Fe−N系磁粉やハードフェライト磁
粉を混合してもよい。
【0128】上述のボンド磁石を用いてモータやアクチ
ュエータなどの各種の回転機を製造することができる。
【0129】本発明の磁石磁末を射出成形ボンド磁石用
に用いる場合は、平均粒度が200μm以下になるよう
に粉砕することが好ましく、より好ましい粉末の平均粒
径は30μm以上150μm以下である。また、圧縮成
形ボンド磁石用に用いる場合は、粒度が300μm以下
になるように粉砕することが好ましく、より好ましい粉
末の平均粒径は30μm以上250μm以下である。さ
らに好ましくは、粒径分布に2つのピークを持ち、平均
粒径が50μm以上200μm以下にある。
【0130】なお、粉末の表面にカップリング処理や化
成処理、鍍金などの表面処理を施すことにより、成形方
法を問わずボンド磁石成形時の成形性や得られるボンド
磁石の耐食性および耐熱性を改善できる。また、成形後
のボンド磁石表面に樹脂塗装や化成処理、鍍金などの表
面処理を施した場合も、粉末の表面処理と同様にボンド
磁石の耐食性および耐熱性を改善できる。
【0131】
【実施例】まず、Qの組成比率xおよびMの組成比率z
が、それぞれ10<x<15原子%および0.1<z<
10原子%を満足する実施例と比較例について説明す
る。
【0132】表1に示す組成を有する試料(No.1〜
No.12)の各々について、純度99.5%以上の
B、C、Fe、Co、Ti、Nd、Pr、Tb、および
Dyの材料を用いて総量が30グラム)となるように秤
量し、石英るつぼ内に投入した。ここで、試料No.1
〜No.8は本発明の実施例に相当し、試料No.9〜
No.12は比較例に相当する。
【0133】
【表1】
【0134】表1において、例えば「Q」と表示してい
る欄の「B7+C4」は7原子%のB(ボロン)と4原
子%のC(炭素)を添加したことを示し、「R」と表示
している欄の「Nd3+Pr3」は3原子%のNdと3
原子%のPrを添加したことを示している。
【0135】溶湯作製に用いた石英るつぼは、底部に直
径0.8mmのオリフィスを有しているため、上記原料
は石英るつぼ内で溶解された後、合金溶湯となってオリ
フィスから下方に滴下することになる。原料の溶解は、
圧力が1.33kPaのアルゴン雰囲気下において高周
波加熱法を用いて行った。本実施例では、溶湯温度を1
500℃に設定した。
【0136】合金溶湯の湯面を26.7kPaのArガ
スで加圧することによって、オリフィスの下方0.7m
mの位置にある銅製ロールの外周面に対して溶湯を噴出
させた。ロールは、その外周面の温度が室温程度に維持
されるように内部が冷却されながら高速で回転する。こ
のため、オリフィスから滴下した合金溶湯はロール周面
に接触して熱を奪われつつ、周速度方向に飛ばされるこ
とになる。合金溶湯はオリフィスを介して連続的にロー
ル周面上に滴下されるため、急冷によって凝固した合金
は薄帯状に長く延びたリボン(幅:2〜3mm、厚さ:
20〜50μm)の形態を持つことになる。
【0137】本実施例で採用する回転ロール法(単ロー
ル法)の場合、冷却速度はロール周速度および単位時間
当たりの溶湯流下量によって規定される。この溶湯流下
量は、オリフィス径(断面積)と溶湯圧力とに依存す
る。本実施例では、オリフィスを直径0.8mm、溶湯
圧力を26.7kPa、流下レートを約0.5〜1kg
/分とした。
【0138】ロール周速度は表1の通りとした。
【0139】次に、No.1〜No.12の急冷合金を
Arガス中で熱処理した。具体的には、表1の最右欄に
示す熱処理温度で各急冷合金を6分間保持した後、室温
まで冷却した。その後、振動型磁力計を用いて各試料の
磁気特性を測定した。下記の表2は、この測定結果を示
している。
【0140】
【表2】
【0141】表2からわかるように、実施例の磁気特性
は、比較例の磁気特性に比較して極めて優れたものであ
った。また、Tiを添加した場合でも、希土類元素R
(Nd)の組成比率yが6≦y<10原子%の範囲を外
れると、組織の均一微細化というTi添加効果が充分に
発揮されず、残留磁束密度Brの低下が顕著に生じた。
【0142】図7は、No.2およびNo.3の試料
(実施例)とNo.11の試料(比較例)の減磁曲線を
示している。図7のグラフの縦軸は磁化を示し、横軸は
減磁界の強度を示している。図7からわかるように、実
施例の減磁曲線の角形性は比較例の角形性に比較して極
めて良好である。比較例の場合、結晶粒径が大きいため
に角形性が劣化したものと考えられる。
【0143】次に、実施例の各試料について、その構成
相をCu−Kαの特性X線で調査した。その結果、R2
Fe14B相に加え、Fe236相およびα−Fe相の存
在が確認された。一方、No.9およびNo.10の試
料(比較例)の場合、硬磁性であるR2Fe14B型化合
物相は確認されず、軟磁性相であるR2Fe233とα−
Feとからなる組織が形成されていることがわかった。
また、No.11の試料(比較例)では、硬磁性相であ
るR2Fe14B相と軟磁性相であるα−Feとからなる
混合組織が形成されていたが、強磁性の鉄基硼化物を確
認することはできなかった。
【0144】図8は、No.2およびNo.3の試料
(実施例)とNo.11の試料(比較例)の熱処理後に
おけるX線回折パターンを示している。図8のグラフの
縦軸は回折強度、横軸は回折角度を示している。
【0145】図8からわかるように、実施例では、Nd
2Fe14B相、α−Fe相、およびFe236相から構成
された金属組織が形成された。これに対して、比較例で
は、Nd2Fe14B相およびα−Fe相しか観察され
ず、合金組織中でBが過剰に存在していると考えられ
る。
【0146】なお、No.1〜No.8の各試料につい
て、熱処理後の金属組織を透過型電子顕微鏡により調査
した結果、何れの試料も平均結晶粒径10nm〜25n
m以下のナノ結晶組織を有していた。また、No.2の
試料をアトムプローブにより分析したところ、Tiの一
部は各構成相中のFeと置換していたが、Tiの大部分
は粒界に存在していた。
【0147】次に、Qの組成比率xおよびMの組成比率
zが、それぞれ15≦x≦20原子%および3.0<z
<12原子%を満足する実施例と、満足しない参考例に
ついて説明する。
【0148】表3に示す組成を有する試料(No.13
〜No.19)の各々について、純度99.5%以上の
B、C、Fe、Co、Ti、およびNdの材料を用いて
総量が30gグラム)となるように秤量し、石英るつぼ
内に投入した。
【0149】
【表3】
【0150】表3において、例えば「M」と表示してい
る欄の「Ti8」は8原子%のTiを添加したことを示
し、「−」の表示はTiを添加してないことを示してい
る。
【0151】試料No.13〜19についても、前述の
試料No.1〜12に対する条件と同様の方法で急冷凝
固工程を実行した。
【0152】こうして得た急冷合金の組織をCuKαの
特性X線によって調べたところ、いずれの試料もアモル
ファス合金であった。急冷合金がアモルファスであった
理由は、合金中のB濃度が比較的高く、非晶質化しやす
かったためである。
【0153】次に、No.12〜No.19の急冷合金
をArガス中で熱処理した。具体的には、表3の最右欄
に示す熱処理温度で各急冷合金を6分間保持した後、室
温まで冷却した。その後、振動型磁力計を用いて各試料
の磁気特性を測定した。下記の表4は、この測定結果を
示している。
【0154】
【表4】
【0155】表4からわかるように、No.13〜16
の試料の磁気特性は、No.17〜19の試料(参考
例)の磁気特性に比較して優れたものであった。
【0156】図9は、No.13およびNo.17の試
料の減磁曲線を示している。図9のグラフの縦軸は磁化
を示し、横軸は減磁界の強度を示している。図9からわ
かるように、No.13の試料の減磁曲線の角形性はN
o.17の試料の角形性に比較して極めて良好である。
【0157】図10および図11は、それぞれ、No.
13およびNo.17の試料の熱処理前後におけるX線
回折パターンを示している。
【0158】図10からわかるように、Tiを添加した
例の場合、熱処理前(as−spun)における合金で
は結晶性を示す回折ピークは観察されないが、660℃
で6分間の熱処理を行なった後には、Nd2Fe14B型
結晶構造を持つ化合物相の生成を示す回折ピークが観察
されている。このとき、α−Fe相の回折ピークも観察
されているが、その強度は大きくない。熱処理温度が7
80℃の場合は、α−Fe相の回折ピークの強度が相対
的に増加しており、α−Fe相の結晶化温度がNd2
14Bの結晶化温度よりも高いことが推定される。
【0159】これに対し、Tiを添加していない場合、
図11に示されるように、600℃で6分間の熱処理を
行なった後、Nd2Fe14B型結晶構造を持つ化合物相
の生成を示す回折ピークは観察されず、α−Fe相の回
折ピークが明確に観察された。このことは、Nd2Fe
14B相の結晶化よりも先にα−Fe相が析出・成長して
いることを示している。熱処理温度が780℃の場合、
α−Fe相の回折ピークの強度が非常に強くなり、α−
Fe相の粗大化が生じている。
【0160】このように、Qの組成比率xが15原子%
以上である場合は、Mの組成比率zを3.0より多くす
ることが好ましい。
【0161】次に、Nd9Fe78.710.3Ti2(at
%)の組成を有する合金について、急冷雰囲気圧やロー
ル表面速度を変えた溶湯の冷却を行なった。
【0162】溶湯作製に用いた石英るつぼは、底部に直
径0.8mmのオリフィスを有しているため、上記原料
は石英るつぼ内で溶解された後、合金溶湯となってオリ
フィスから下方に滴下することになる。原料の溶解は、
圧力が1.33kPaのアルゴン雰囲気下において高周
波加熱法を用いて行った。本実施例では、溶湯温度を1
500℃に設定した。
【0163】合金溶湯の湯面を26.7kPaのArガ
スで加圧することによって、オリフィスの下方0.7m
mの位置にある銅製ロールの外周面に対して溶湯を流下
させた。他の条件は前述した実施例の場合とほぼ同様で
ある。
【0164】本実施例では、下記表5に示すよう急冷雰
囲気圧力、ロール表面速度、および熱処理温度を変化さ
せた。
【0165】
【表5】
【0166】上記の液体急冷法によって作製された急冷
合金の組織をCu-Kαの特性X線によって調べた。N
o.20〜25の試料では、いずれも、Nd2Fe14
相が全体の60体積%以上は含まれていることをTEM
(透過型電子顕微鏡)により確認した。また、Nd2
14B相以外に、α−Fe相およびFe233の存在も
観察された。図12はNo.21の試料のX線回折パタ
ーンを示している。図12中、「as−spun」と記
載されているプロファイルが結晶化熱処理前の急冷合金
のX線回折パターンである。また、図12には、後述す
る結晶化熱処理後のX線回折パターンも示されている。
【0167】No.26の試料ではNd2Fe14B相、
α−Fe相、およびFe236相による回折ピークが確
認されたが、No.27の試料ではハローパターンのみ
が観察され、試料No.28ではα−Fe相による強い
回折ピークとNd2Fe14B相による僅かの回折ピーク
が観察された。なお、試料No.26の場合、非晶質相
が多く存在していた。
【0168】次に、No.20〜No.26の急冷合金
をArガス中で熱処理した。具体的には、上記表5の最
右欄に示す熱処理温度で各急冷合金を6分間保持した
後、室温まで冷却した。その後、振動型磁力計を用いて
各試料の磁気特性を測定した。下記の表6は、この測定
結果を示している。
【0169】
【表6】
【0170】表6からわかるように、No.20〜25
の試料では、残留磁束密度Br≧0.85T、固有保磁
力HcJ≧480kA/m、最大エネルギ積(BH)max
≧120kJ/m3の優れた硬磁気特性が得られた。
【0171】図13は、No.21の試料とNo.26
の試料の減磁曲線を示している。図13のグラフの縦軸
は磁化を示し、横軸は減磁界の強度を示している。図1
3からわかるように、No.21の試料の減磁曲線の角
形性はNo.26の試料の角形性に比較して極めて良好
である。No.26の試料の場合、結晶粒径が大きいた
めに角形性が劣化しているものと考えられる。
【0172】次に、熱処理後における実施例の各試料に
ついて、Cu−Kαの特性X線を用いて構成相を調査
し、TEMを用いて結晶サイズを測定した。その結果、
2Fe14B相の平均結晶粒径は20〜100nmの範
囲にあり、α−Fe相および鉄基ホウ化物相の平均結晶
粒径は10〜50nmの範囲にあった。
【0173】一方、No.26およびNo.28の試料
の場合、熱処理の前後で構成相の種類に差は生じなかっ
たが、試料No.27の場合、R2Fe14B型化合物相
に加え、α−Fe相およびFe236の析出・成長が確
認された。
【0174】以上のことから、急冷雰囲気圧は30kP
a以上にすることが好ましく、また、急冷雰囲気を30
kPa以上にする場合はロール表面速度を10m/秒以
上30m/秒以下にすることが好ましい。
【0175】
【発明の効果】本発明によれば、Tiを添加した合金溶
湯の急冷を行なうことにより、磁石に必要な希土類元素
の量を低減しながら保磁力および磁化が充分に高く優れ
た磁気特性を発揮する永久磁石が得られる。
【0176】また、本発明によれば、Tiを添加するこ
とにより、液体急冷法を用いて急冷合金を作製する際
に、冷却速度を低下させても、液体冷却工程時のα−F
e相の析出が抑制される。したがって、ストリップキャ
スト法のように比較的冷却速度が遅く、量産化に適した
液体急冷法を用いることが可能になるため、製造コスト
の低減に極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】Tiが添加されていないNd−Fe−Bナノコ
ンポジット磁石の最大磁気エネルギ積(BH)maxと硼
素濃度との関係を示すグラフである。グラフ中、白いバ
ーは10〜14at%のNdを含有する試料のデータを
示し、黒いバーは8〜10at%のNdを含有する試料
のデータを示している。
【図2】Tiが添加されたNd−Fe−Bナノコンポジ
ット磁石の最大磁気エネルギ積(BH)maxと硼素濃度
との関係を示すグラフである。グラフ中、白いバーは1
0〜14at%のNdを含有する試料のデータを示し、
黒いバーは8〜10at%のNdを含有する試料のデー
タを示している。
【図3】大気雰囲気ガスによる二次冷却効果を示す図で
ある。横軸は冷却過程開始からの経過時間(Time)
を示し、縦軸は冷却されつつある合金の温度(Temp
erature)を示している。
【図4】本発明による磁石におけるR2Fe14B型化合
物相と(Fe、Ti)−B相を示す模式図である。
【図5】Tiを添加した場合、および、Tiに代えてN
bなどを添加した場合における急冷凝固合金の結晶化過
程における微細組織の変化を模式的に示す図である。
【図6】(a)は、本発明による鉄基希土類合金磁石の
ための急冷合金を製造する方法に用いる装置の全体構成
例を示す断面図であり、(b)は急冷凝固が行われる部
分の拡大図である。
【図7】No.2およびNo.3の試料(実施例)とN
o.11の試料(比較例)の減磁曲線を示すグラフであ
る。
【図8】No.2およびNo.3の試料とNo.11の
試料の熱処理後におけるX線回折パターンを示すグラフ
である。
【図9】No.14およびNo.19の試料の減磁曲線
を示すグラフである。
【図10】No.14の熱処理前後におけるX線回折パ
ターンを示すグラフである。
【図11】No.19の試料の熱処理前後におけるX線
回折パターンを示すグラフである。
【図12】No.21の試料の急冷合金(結晶化熱処理
前)におけるX線回折パターンと、結晶化熱処理(64
0℃6分)後におけるX線回折パターンを示すグラフで
ある。縦軸は回折ピークの強度(Intensity)、横軸は
回折角度である。
【図13】No.21の試料とNo.26の試料の減磁
曲線を示すグラフである。
【符号の説明】
1b、2b、8b、および9b 雰囲気ガス供給口 1a、2a、8a、および9a ガス排気口 1 溶解室 2 急冷室 3 溶解炉 4 貯湯容器 5 出湯ノズル 6 ロート 7 回転冷却ロール 21 溶湯 22 合金薄帯
フロントページの続き (31)優先権主張番号 特願2000−291485(P2000−291485) (32)優先日 平成12年9月26日(2000.9.26) (33)優先権主張国 日本(JP) (72)発明者 広沢 哲 大阪府三島郡島本町江川2丁目15番17号 住友特殊金属株式会社山崎製作所内 (72)発明者 重本 恭孝 大阪府三島郡島本町江川2丁目15番17号 住友特殊金属株式会社山崎製作所内 (72)発明者 汐谷 裕介 大阪府三島郡島本町江川2丁目15番17号 住友特殊金属株式会社山崎製作所内 Fターム(参考) 4E004 DB02 DB03 DB15 DB16 TA01 TA03 TB02 TB04 5E040 AA04 CA01 NN01 NN06

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 組成式が(Fe1-mm100-x-y-zx
    yz(TはCoおよびNiからなる群から選択された1
    種以上の元素、QはBおよびCからなる群から選択され
    た1種以上の元素、RはLaおよびCeを実質的に含ま
    ない1種以上の希土類金属元素、MはTi、Zr、およ
    びHfからなる群から選択された金属元素であって、T
    iを必ず含む少なくとも1種の金属元素)で表現され、
    組成比率x、y、zおよびmが、それぞれ、 10<x≦17原子%、 6≦y<9.3原子%、 0.1≦z≦6原子%、および 0≦m≦0.5 を満足する鉄基希土類合金磁石用急冷合金。
  2. 【請求項2】 α−Feを実質的に含まず、R2Fe14
    B型化合物相及びアモルファス相を含む組織を有し、前
    記R2Fe14B型化合物相が体積比率で全体の60%以
    上を占めている請求項2に記載の鉄基希土類合金磁石用
    急冷合金。
  3. 【請求項3】 平均粒径50nm以下のR2Fe14B型
    化合物相が60体積%以上含まれる請求項2に記載の鉄
    基希土類合金磁石用急冷合金。
  4. 【請求項4】 Fe、Q(QはBおよびCからなる群か
    ら選択された1種以上の元素)、R(Rは希土類元
    素)、およびTiを含有する合金溶湯を冷却することに
    よって作製され、アモルファス相を含み、熱処理によっ
    てα−Fe結晶相の成長開始より先にR2Fe14B型結
    晶構造を持つ化合物結晶相の成長を開始する組織を有し
    ている鉄基希土類合金磁石用急冷合金。
  5. 【請求項5】 Fe、Q(QはBおよびCからなる群か
    ら選択された1種以上の元素)、R(Rは希土類元
    素)、およびTiを含有する合金溶湯を作製する工程
    と、 前記合金溶湯を冷却し、アモルファス相を含む凝固合金
    を作製する工程と、 前記凝固合金を加熱することによって、R2Fe14B型
    結晶構造を持つ化合物結晶相の成長を開始させ、その後
    にα−Fe結晶相の成長を開始させる工程と、 を包含する鉄基希土類合金磁石の製造方法。
  6. 【請求項6】 ストリップキャスト法を用いて前記合金
    溶湯を冷却する請求項5に記載の鉄基希土類合金磁石の
    製造方法。
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