JP2002200623A - 樹脂複合体の製造法 - Google Patents

樹脂複合体の製造法

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JP2002200623A
JP2002200623A JP2001038391A JP2001038391A JP2002200623A JP 2002200623 A JP2002200623 A JP 2002200623A JP 2001038391 A JP2001038391 A JP 2001038391A JP 2001038391 A JP2001038391 A JP 2001038391A JP 2002200623 A JP2002200623 A JP 2002200623A
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resin composite
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polymer
semi
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English (en)
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Sacchin Jane
ジェーン・サッチン
Kazutaka Murata
一高 村田
Takanori Anazawa
孝典 穴澤
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Kawamura Institute of Chemical Research
DIC Corp
Original Assignee
Kawamura Institute of Chemical Research
Dainippon Ink and Chemicals Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明が解決しようとする課題は、一般に脆
いエネルギー線重合体の力学特性、特に引張強度を改善
し、しかも光学的に透明な樹脂複合体を容易に得ること
が出来るエネルギー線重合体と鎖状重合体との樹脂複合
体の製造法を提供することにある。 【解決手段】 (A)エネルギー線重合性化合物と
(B)鎖状重合体とを均一に混合したエネルギー線硬化
性組成物の賦形物に、エネルギー線を照射して該賦形物
を流動性のない透明な固体状の半硬化物と成し(第1照
射工程)、次いで該半硬化物を第1照射工程の照射時の
温度より高い温度で、且つ該半硬化物のガラス転移温度
(Tg1)以上の温度にて更にエネルギー線を照射する
第2照射工程を施すことにより、第1照射工程で得た半
硬化物より相分離が進行し、且つ該半硬化物中のエネル
ギー線重合性化合物の重合性基の反応率が向上した、相
分離した硬化物を得ることを特徴とする樹脂複合体の製
造法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、破断強度、破断伸
度、弾性率、耐衝撃性、耐摩耗性などの力学特性に優れ
た、鎖状重合体とエネルギー線重合性化合物の硬化物か
ら成る樹脂複合体、特に光学的に透明性を有する樹脂複
合体の製造法に関する。本発明の樹脂複合体は保護フィ
ルム、保護膜、各種コーティング材等の各種分野で有用
である。
【0002】
【従来の技術】エネルギー線硬化性樹脂は、硬化時間が
極めて短く、作業効率が良いうえ、溶剤の揮発による環
境汚染がないことから、塗料、封止剤などに広く利用さ
れている。しかしながら、エネルギー線硬化性樹脂硬化
物は、一般的に、軟質系で表面硬度、耐熱性、強度が不
十分であるか、或いは、硬質系で堅くて脆いためにクラ
ックが発生し易いものであるかのどちらかの範疇に属
し、同程度の剛性を有する鎖状重合体と比較して強靱性
に劣っていた。
【0003】このような欠点を改良するために、エネル
ギー線硬化性樹脂を鎖状重合体と樹脂複合体化すること
により、エネルギー線硬化性樹脂を改良する試みがなさ
れて来た。また、エネルギー線重合性化合物は硬化の際
に、著しい体積収縮が生じる場合あり、鎖状重合体と複
合化することにより体積収縮率を低く抑えることができ
るという効果もある。
【0004】例えば、特開平11−80556号公報に
は、ビスフェノール型(メタ)アクリレートをアクリル
樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリイミド樹脂により改良す
る方法が開示されている。また、財団法人川村理化学研
究所報告(平成10年)には、エチレンオキサイド変性
ビスフェノール型アクリレートをポリカーボネートで改
良する方法が報告されている。
【0005】また、特開平7−33991号公報には、
感光性樹脂と鎖状重合体とからなり、この両者が擬似的
均一相溶構造を形成して成る、ガラス転移点(Tg)が
1つの樹脂複合体、及びその製造方法が開示されてい
る。更に、特開平7−102175号公報には、感光性
樹脂と鎖状重合体とを溶剤に溶解し、相分離させた後に
光照射して感光性樹脂を硬化させる樹脂複合体の製造方
法、及び、該製造方法により得られる共連続又は球状ド
メイン構造を有し、2つのガラス転移温度を示す樹脂複
合体が開示されている。
【0006】更に、財団法人川村理化学研究所報告(平
成10年)には、エチレンオキサイド変性ビスフェノー
ル型アクリレートとポリサルホンとからなり、この両者
が共連続構造を形成して成る樹脂複合体及びその製造方
法が報告されている。
【0007】しかし、特開平11−80556号公報に
記載の方法では、樹脂の親和性を向上させるために、
N,N−ジメチルアクリルアミドなどのアミド系重合性
化合物の併用が必須であるため、雰囲気湿度により樹脂
の水分吸収度が変化し、特性が大きく変化するという問
題があった。
【0008】また、財団法人川村理化学研究所報告(平
成10年)に記載の方法では、エチレンオキサイド変性
ビスフェノール型アクリレートとポリカーボネートとか
ら成る樹脂複合体の場合、透明な樹脂複合体が得られる
が、明確な相構造を持たない疑似相溶系に近いものであ
るために、力学的特性の向上の程度は、せいぜい紫外線
硬化樹脂の硬化物とポリカーボネートの特性の重み付き
相加平均程度であり、構成素材の特性が十分に生かされ
たものとは言えず、更に、この相加平均程度の特性を得
るために、長時間の熱処理を必要とする問題があった。
【0009】また、特開平7−33991号公報に記載
の樹脂複合体も、擬似相溶系であるため、透明な樹脂複
合体が得られるが、力学的特性の向上の程度は、せいぜ
い感光性樹脂と鎖状重合体の特性の相加平均程度であ
り、構成素材の特性を十分発揮させたものとは言えず、
またこの程度の特性向上を得るために長時間の熱処理を
必要とする問題があった。
【0010】更に、特開平7−102175号公報に記
載の方法は、樹脂との親和性に乏しいポリスルホン系樹
脂を使用し、有機溶剤を添加して均一混合状態とし、該
均一混合溶液を急速に温度変化させてミクロ相分離を発
生させ、その状態で急速に樹脂を硬化させて該相構造を
固定する方法であるため、僅かな製造条件の違いによっ
て特性が大きく低下しがちであり、製造安定性や製品の
均一性に欠ける上、得られる樹脂複合体もボイドが発生
するなどの原因で特性向上の程度も十分なものではな
く、塗膜として重要な透明性が損なわれるという問題が
あった。
【0011】また財団法人川村理化学研究所報告(平成
10年)に記載の方法は、エチレンオキサイド変性ビス
フェノール型アクリレートとポリサルホンから成る網目
状の共連続構造を有する完全に相分離を進行させたもの
であり、塗膜として重要な透明性が損なわれるという問
題があった。
【0012】一方、エネルギー線重合体と鎖状重合体と
の樹脂複合体は、長時間の高温度域での熱処理を施して
架橋密度を向上させる方法が用いられているが、この方
法ではエネルギー線硬化樹脂の特徴である短時間硬化と
いう特徴が失われる。更に、この方法では長時間の熱処
理にも関わらず、得られる特性はブレンドする2つの樹
脂の単体での特性を結ぶ相加平均値程度までの特性向上
が見られるにすぎなかった。
【0013】即ち、従来のエネルギー線重合体と鎖状重
合体の樹脂複合体の製造法では、エネルギー線重合性化
合物の重合が不十分であったり、或いは相分離の大きさ
が大きくなったり、界面の接着性が低下してしまうため
に、十分な力学的強度を有する複合体を得ることができ
なかった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、一般に脆いエネルギー線重合体の力学特
性、特に引張強度を改善し、しかも光学的に透明な樹脂
複合体を容易に得ることが出来る、エネルギー線重合体
と鎖状重合体との樹脂複合体の製造法を提供することに
ある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
解決するため鋭意検討した結果、エネルギー線重合性化
合物と鎖状重合体とを含有するエネルギー線硬化性組成
物に比較的低温度でエネルギー線を照射した後、必要に
応じて熱処理を施し、次いで更に高温度にてエネルギー
線を照射することにより、優れた力学特性を有する樹脂
複合体が得られることを見出して本発明を完成するに到
った。
【0016】即ち、本発明は、(A)エネルギー線重合
性化合物と(B)鎖状重合体とを均一に混合したエネル
ギー線硬化性組成物の賦形物に、エネルギー線を照射し
て該賦形物を流動性のない透明な固体状の半硬化物と成
し(第1照射工程)、次いで該半硬化物を第1照射工程
の照射時の温度より高い温度で、且つ該半硬化物のガラ
ス転移温度(Tg1)以上の温度にて更にエネルギー線
を照射する第2照射工程を施すことにより、第1照射工
程で得た半硬化物より相分離が進行し、且つ該半硬化物
中のエネルギー線重合性化合物の重合性基の反応率が向
上した、相分離した硬化物を得ることを特徴とする樹脂
複合体の製造法である。
【0017】また本発明は、第2照射工程の前に、第1
照射工程で得られた半硬化物をTg1以上の温度で保持
する(相分離工程)ことをも含む樹脂複合体の製造法
や、相分離工程の温度が、特にTg1〜(Tg1+15
0℃)の範囲である樹脂複合体の製造法や、第1照射工
程における、エネルギー線照射前のエネルギー線硬化性
組成物の粘度が特に100Pa・s以上であることを特
徴とする樹脂複合体の製造法や、第1照射工程を特に−
50℃〜+150℃の範囲の温度で行うことを特徴とす
る樹脂複合体の製造法を含む。
【0018】また本発明は、第1照射工程により得られ
る半硬化物中のエネルギー線重合性化合物の重合性基の
反応率が30〜80%であることを特徴とする樹脂複合
体の製造法であり、第1照射工程により得られる半硬化
物の膜厚100±20μmのフィルムの可視光領域の平
行光透過率が70%以上の透明性を有する樹脂複合体の
製造法や、第2照射工程の照射温度が、第1照射工程の
照射温度より高い温度であって、且つTg1〜(Tg1
+150℃)の範囲であることを特徴とする樹脂複合体
の製造法を含む。
【0019】更に、本発明は用いられるエネルギー線硬
化性組成物が、(A)エネルギー線重合性化合物100
重量部に対し、(B)鎖状重合体7〜900重量部を含
有する樹脂複合体の製造法であり、特に、(A)エネル
ギー線重合性化合物が、分子内に重合性炭素・炭素二重
結合を2つ以上有する化合物であり、特に(A)エネル
ギー線重合性化合物が、分子内に(メタ)アクリロイル
基を有する化合物である樹脂複合体の製造法を含む。
【0020】更に本発明は、用いられる(B)鎖状重合
体が、スチレン系重合体、ポリスルホン系重合体、ポリ
カーボネート系重合体、ポリエステル系重合体、ポリ塩
化ビニル、ポリビニルアセタール系重合体、フェノキシ
樹脂、ポリ酢酸ビニル、熱可塑性ポリウレタン、セルロ
ース誘導体、及びポリ(メタ)アクリレート系重合体か
ら選ばれる1種以上の重合体である樹脂複合体の製造法
や、得られる樹脂複合体の引張強度が、(A)エネルギ
ー線重合性化合物の硬化物の引張強度と(B)鎖状重合
体の引張強度の相加平均値以上であり得る樹脂複合体の
製造法や、樹脂複合体の膜厚100±20μmでの可視
光領域の光透過率が70%以上であり得る樹脂複合体の
製造法や、得られる樹脂複合体が2つのガラス転移温度
を有することを特徴とする樹脂複合体の製造法を含むも
のである。
【0021】
【発明の実施の形態】本発明の樹脂複合体の製造方法
は、エネルギー線重合性化合物、即ち紫外線や電子線な
どのエネルギー線の照射により重合体となる化合物と鎖
状重合体とを含有し、これらが相溶した均一なエネルギ
ー線硬化性組成物にエネルギー線を照射して、流動性が
なく透明な固体状の半硬化物を得た後、必要に応じて相
分離をさせ、次いでより高温度に保持した状態で更にエ
ネルギー線を照射してエネルギー線重合性化合物を十分
に硬化させることにより、相分離した、光学的に透明で
力学特性に優れた樹脂複合体を得る方法である。
【0022】本発明に用いる(A)エネルギー線重合性
化合物は、(B)鎖状重合体と均一に混合したエネルギ
ー線硬化性組成物を形成することが可能なものであれば
任意である。但し、エネルギー線重合性化合物は、単独
ではエネルギー線硬化性組成物を形成し得ず、他の成
分、例えば単官能のエネルギー線重合性化合物と混合使
用した場合にのみ可能なもの、例えば、単独では鎖状重
合体と非相溶な化合物や固体状の化合物であっても本発
明に用いることが出来る。
【0023】(A)エネルギー線重合性化合物は、エネ
ルギー線の照射により重合体となる化合物であり、得ら
れる樹脂複合体の物性を向上させるためには架橋重合性
化合物、即ち重合して架橋重合体となる化合物であるこ
とが好ましい。(A)エネルギー線重合性化合物は、そ
の重合様式は任意であり、付加重合性、縮合重合性、開
環重合性等であって良く、またラジカル重合性、アニオ
ン重合性、カチオン重合性等任意のものであってよい。
【0024】エネルギー線重合性化合物は、重合開始剤
の非存在下で重合するものに限らず、重合開始剤の存在
下でのみエネルギー線により重合するものも使用するこ
とができる。エネルギー線重合性化合物としては、連鎖
重合性のものが、反応速度が高いために好ましく、重合
性の炭素−炭素二重結合を分子内に有するものが好まし
く、架橋重合性となるために重合性の炭素−炭素二重結
合を分子内に2つ以上有するものが更に好ましい。
【0025】中でも反応性の高い(メタ)アクリル系化
合物やビニルエーテル類、また光重合開始剤の非存在下
でも硬化するマレイミド系化合物が好ましく、特に分子
内に2〜6個の(メタ)アクリロイル基又はマレイミド
基を有するものが好ましい。エネルギー線重合性化合物
は、単独で用いることもでき、2種類以上を混合して用
いることもできる。
【0026】(A)エネルギー線重合性化合物として好
ましく使用することができる(メタ)アクリル系単量体
としては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)ア
クリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリ
レート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレ
ート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレー
ト、2,2’−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシ
ポリエチレンオキシフェニル)プロパン、2,2’−ビ
ス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオ
キシフェニル)プロパン、ヒドロキシジピバリン酸ネオ
ペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロ
ペンタニルジアクリレート、ビス(アクロキシエチル)
ヒドロキシエチルイソシアヌレート、N−メチレンビス
アクリルアミドの如き2官能単量体;
【0027】トリメチロールプロパントリ(メタ)アク
リレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレ
ート、トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート、
カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシ
アヌレートの如き3官能単量体;ペンタエリスリトール
テトラ(メタ)アクリレートの如き4官能単量体;ジペ
ンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートの如き
6官能単量体などが挙げられる。
【0028】また、(A)エネルギー架橋重合性化合物
として、架橋重合性のオリゴマー(プレポリマーとも呼
ばれる)を用いることもでき、例えば、重量平均分子量
が500〜50000のものが挙げられる。そのような
架橋重合性の重合性オリゴマーしては、例えば、エポキ
シ樹脂の(メタ)アクリル酸エステル、ポリエーテル樹
脂の(メタ)アクリル酸エステル、ポリブタジエン樹脂
の(メタ)アクリル酸エステル、分子末端に(メタ)ア
クリロイル基を有するポリウレタン樹脂などが挙げられ
る。
【0029】(A)エネルギー線重合性化合物として好
ましく用いられるマレイミド系単量体としては、例え
ば、4,4’−メチレンビス(N−フェニルマレイミ
ド)、2,3−ビス(2,4,5−トリメチル−3−チ
エニル)マレイミド、1,2−ビスマレイミドエタン、
1,6−ビスマレイミドヘキサン、トリエチレングリコ
ールビスマレイミド、N,N’−m−フェニレンジマレ
イミド、m−トリレンジマレイミド、N,N’−1,4
−フェニレンジマレイミド、N,N’−ジフェニルメタ
ンジマレイミド、N,N’−ジフェニルエーテルジマレ
イミド、N,N’−ジフェニルスルホンジマレイミド、
1,4−ビス(マレイミドエチル)−1,4−ジアゾニ
アビシクロ−[2,2,2]オクタンジクロリド、4,
4’−イソプロピリデンジフェニル=ジシアナート・
N,N’−(メチレンジ−p−フェニレン)ジマレイミ
ドの如き2官能マレイミド;N−(9−アクリジニル)
マレイミドの如きマレイミド基とマレイミド基以外の重
合性官能基とを有するマレイミドなどが挙げられる。
【0030】(A)エネルギー線重合性化合物として好
ましく用いられるマレイミド系のオリゴマーとしては、
例えば、ポリテトラメチレングリコールマレイミドカプ
リエート、ポリテトラメチレングリコールマレイミドア
セテートの如きポリテトラメチレングリコールマレイミ
ドアルキレートなどが挙げられる。
【0031】(A)エネルギー線重合性化合物は、分子
量(分子量分布を有するものである場合には重量平均分
子量)が100〜3000であることが好ましく、更に
好ましくは100〜1000である。分子量が3000
を越えると、鎖状重合体との相溶性に劣る傾向にある。
しかしながら、これを越える分子量の化合物であって
も、後述の単官能のエネルギー線重合性化合物を添加混
合することで使用可能となることもある。(重量平均)
分子量が100未満であると、揮発性が強まり、作業環
境の悪化をもたらす傾向にある。
【0032】本発明に用いる(B)鎖状重合体は、第1
照射工程を施す温度域で(A)エネルギー線重合性化合
物と均一に混合するものであり、且つ、使用するエネル
ギー線に対して不活性なものである。エネルギー線に対
して不活性とは、架橋や分解反応が実質的に生じないも
のをいう。本発明において、鎖状重合体とは、架橋重合
体でない重合体をいい、直鎖状重合体と枝分かれ重合体
を含む。本発明で使用する鎖状重合体は、非晶性であっ
ても結晶性であってもよい。勿論、鎖状重合体は単独で
用いることもできるし、2種類以上を混合して使用する
こともできる。
【0033】本発明の樹脂複合体で用いられる(B)鎖
状重合体は、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチル
スチレン、スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/
アクリロニトリル共重合体、スチレン/メチルメタクリ
レート共重合体の如きスチレン系重合体;ポルスルホン
やポリエーテルスルホンの如きポリスルホン系重合体;
ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレー
ト、ポリメチルアクリレートの如きポリ(メタ)アクリ
レート系重合体;ポリアクリロニトリル系重合体;ポリ
マレイミド系重合体;
【0034】ビスフェノールAタイプポリカーボネー
ト、ビスフェノールZタイプポリカーボネート等のポリ
カーボネート系重合体;ニトロセルロース、酢酸セルロ
ース、エチルセルロースの如きセルロース誘導体;ポリ
酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体の如き酢酸
ビニル系重合体;熱可塑性ポリウレタン系重合体;ポリ
塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン
や塩素化ポリプロピレンの如き塩素含有重合体;ポリア
ミド系重合体;ポリ乳酸系重合体;ポリイミド系重合
体;ポリフェニレンオキサイド;ポリフェニレンサルフ
ァイド/ポリスルホン共重合体の如きポリエーテル系や
ポリチオエーテル系重合体;
【0035】テレフタル酸やイソフタル酸などより得ら
れる芳香族ポリエステル系重合体;ポリカプロラクトン
の如きポリエステル系重合体;フェノキシ樹脂;ポリエ
チレングリコール系重合体、ポリビニルピロリドン系重
合体;ポリビニルホルマールやポリビニルブチラールの
如きビニルアセタール系重合体;ブタジエンゴム、アク
リロニトリロ−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン
ゴムの如きジエン系ゴム;クロロプレンゴム、イソプレ
ンゴムの如きプレン系ゴム;アクリルゴムの如き未架橋
ゴム等が挙げられる。
【0036】本発明に用いられる(B)鎖状重合体は、
これらの中でも、スチレン/マレイン酸共重合体、スチ
レン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/メチルメ
タクリレート共重合体の如きスチレン系重合体、ポルス
ルホンの如きポリスルホン系重合体、ポリカーボネート
系重合体、ポリエステル系重合体、ポリ塩化ビニル、ポ
リビニルアセタール系重合体、フェノキシ樹脂、ポリ酢
酸ビニル、熱可塑性ポリウレタン、セルロース誘導体、
及びポリ(メタ)アクリレート系重合体などが特に好ま
しい。
【0037】これら(B)鎖状重合体は樹脂によって特
性が異なり、目的に応じて適宜選択される。即ち、スチ
レン系重合体は高い透明性、高強度・高弾性等を付与で
き、ポリカーボネート系重合体では透明性や高い耐衝撃
性などを、ポリスルホン系重合体では高強度などを、ポ
リエステル系重合体、フェノキシ樹脂、ポリビニルホル
マールでは高強度と柔軟性などを、ポリ酢酸ビニル、熱
可塑性ポリウレタン、ポリビニルブチラールでは高い柔
軟性を、ポリ塩化ビニルは経済性、高強度などを各々、
得られる樹脂複合体に付与することができる。
【0038】本発明の製造法では、まず、(A)エネル
ギー線重合性化合物と(B)鎖状重合体とを混合し、相
溶したエネルギー線硬化性組成物を調製する。(A)エ
ネルギー線重合性化合物と(B)鎖状重合体とは、第1
照射工程を施す温度域で、均一に相溶する組み合わせが
選ばれる。但し、エネルギー線硬化性組成物がその他の
成分を含有する場合には、その他の成分は必ずしも均一
に溶解する必要はなく、分散するものであっても良い。
【0039】エネルギー線硬化性組成物は、常温で液体
であっても固体であっても良いが、常温で固体である場
合は、第1照射工程を施す温度で流動性を有するものが
好ましい。該組成物の粘度は、第1照射工程の温度に於
ける粘度が、好ましくは100Pa・s以上、更に好ま
しくは500Pa・s以上である。該粘度の上限につい
ては、粘度が高くて通常の粘度計では測定困難な場合に
も本発明が目的とする硬化物を得ることが出来、特に制
限されないが、好ましくは1000000Pa・s以
下、更に好ましくは500000Pa・s以下である。
【0040】本発明のエネルギー線硬化性組成物におい
て、(A)エネルギー線重合性化合物と(B)鎖状重合
体との好ましい組み合わせは、多くの組み合わせが可能
でありえる。例えば、ポリエチレングリコールジ(メ
タ)アクリレートやポリプロピレングリコールジ(メ
タ)アクリレートに対しては、スチレン系重合体、ポリ
エステル系重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、
フェノキシ樹脂、熱可塑性ポリウレタン、セルロース誘
導体、ポリ(メタ)アクリレート系重合体等の組合せが
好ましい。
【0041】ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)
アクリレートに対しては、スチレン系重合体、ポリカー
ボネート、ポリエステル系重合体、ポリ塩化ビニル、ポ
リ酢酸ビニル、フェノキシ樹脂、熱可塑性ポリウレタ
ン、セルロース誘導体、ポリ(メタ)アクリレート系重
合体等の組合せが好ましい。
【0042】またネオペンチルグリコールジ(メタ)ア
クリレートに対しては、スチレン系重合体、ポリカーボ
ネート、ポリエステル系重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ
酢酸ビニル、フェノキシ樹脂、熱可塑性ポリウレタン、
ポリ(メタ)アクリレート系重合体等の組合せが好まし
く、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート
に対しては、スチレン系重合体、ポリカーボネート、ポ
リエステル系重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニ
ル、ポリビニルフォルマール、フェノキシ樹脂、熱可塑
性ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレート系重合体な
どの組合せが好ましい。
【0043】同様に、トリメチロールプロパントリ(メ
タ)アクリレートに対しては、スチレン系重合体、ポリ
エステル系重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、
フェノキシ樹脂、熱可塑性ポリウレタン、セルロース類
等が、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレ
ートに対しては、スチレン系重合体、ポリエステル系重
合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブ
チラール、熱可塑性ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリ
レート系重合体、セルロース類等の組合せが好ましい。
【0044】ヒドロキシジピバリン酸ネオペンチルグリ
コールジ(メタ)アクリレートに対しては、スチレン系
重合体、ポリエステル系重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ
酢酸ビニル、ポリビニルフォルマール、フェノキシ樹
脂、熱可塑性ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレート
系重合体などの組合せが好ましい。
【0045】ジシクロペンタニルジアクリレートに対し
ては、スチレン系重合体、ポリカーボネート、ポリエス
テル系重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリ
ビニルフォルマール、フェノキシ樹脂、熱可塑性ポリウ
レタン、ポリ(メタ)アクリレート系重合体、セルロー
ス類などの組合せが好ましい。またビス(アクロキシエ
チル)ヒドロキシエチルイソシアヌレートに対しては、
スチレン系重合体、ポリエステル系重合体、ポリ酢酸ビ
ニル、フェノキシ樹脂、熱可塑性ポリウレタン、ポリ
(メタ)アクリレート系重合体等の組合せが、ペンタエ
リスリトールテトラ(メタ)アクリレートに対しては、
スチレン系重合体、ポリエステル系重合体、ポリ塩化ビ
ニル、ポリ酢酸ビニル、熱可塑性ポリウレタン、ポリ
(メタ)アクリレート系重合体、セルロース類等の組合
せが好ましい。
【0046】また、ビスフェノールジ(メタ)アクリレ
ートに対しては、スチレン系重合体、ポリサルホン、ポ
リカーボネート、ポリエステル系重合体、ポリ塩化ビニ
ル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルフォルマール、フェノ
キシ樹脂、熱可塑性ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリ
レート系重合体等の組合せが、ビスフェノールグリシジ
ルエーテルジ(メタ)アクリレートに対しては、ポリエ
ステル系重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポ
リビニルフォルマール、フェノキシ樹脂、熱可塑性ポリ
ウレタン、ポリ(メタ)アクリレート系重合体等の組合
せが好ましい。
【0047】更に、ポリエチレングリコールグリシジル
エーテルジ(メタ)アクリレートやポリプロピレングリ
コールグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレートに対
しては、スチレン系重合体、ポリエステル系重合体、フ
ェノキシ樹脂、ポリビニルフォルマール、ポリ酢酸ビニ
ル、熱可塑性ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレート
系重合体、セルロース誘導体等の組み合わせが好まし
い。
【0048】本発明に用いるエネルギー線硬化性組成物
中の(A)エネルギー線重合性化合物と(B)鎖状重合
体との配合割合は、用いる樹脂の種類や求める特性によ
り異なるが、(A)エネルギー線重合性化合物:(B)
鎖状重合体の重量比が(100:7)〜(100:90
0)の範囲が好ましく、(100:15)〜(100:
400)の範囲がより好ましく、(100:20)〜
(100:300)の範囲が更に好ましい。この範囲外
では物性の向上が不十分となりがちである。
【0049】エネルギー線硬化性組成物には、必要に応
じて、その他の成分を混合して使用することもできる。
その他の成分としては、例えば、反応性溶剤、光重合開
始剤、改質剤、着色剤、酸化防止剤、防黴剤、抗菌剤な
どが挙げられる。改質剤としては、例えば、親水化剤、
滑剤、撥水剤、レベリング剤、無機や有機の粉末や繊維
等の強化材が挙げられる。また、繊維強化プラスチッ
ク、ラミネートシートなどの複合体とすることも可能で
ある。
【0050】エネルギー線硬化性組成物に混合できる反
応性溶剤としては、エネルギー線重合性化合物と共重合
可能な単官能重合単量体を挙げることができる。反応性
溶剤は、エネルギー線重合性化合物と鎖状重合体の相溶
性の向上、エネルギー線硬化性組成物の粘度調節、形成
される樹脂複合体の物性調節などの目的で適宜選択し混
合することが出来る。
【0051】単官能のエネルギー線重合性化合物として
使用することができる単官能(メタ)アクリル系単量体
としては、特に制限無く公知慣用のものが使用でき、例
えば、メチルメタクリレート、アルキル(メタ)アクリ
レート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アルコキ
シポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェ
ノキシジアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシポ
リエチレングリコール(メタ)アクリレート、アルキル
フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレー
ト、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メ
タ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリ
レート、
【0052】グリセロールアクリレートメタクリレー
ト、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒ
ドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−
アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルア
クリレート、エチレンオキサイド変性フタル酸アクリレ
ート、ω−アルコキシカプロラクトンモノアクリレー
ト、2−アクリロイルオキシプロピルハイドロジェンフ
タレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、ア
クリル酸ダイマー、
【0053】2−アクリロイスオキシプロピリヘキサヒ
ドロハイドロジェンフタレート、フッ素置換アルキル
(メタ)アクリレート、塩素置換アルキル(メタ)アク
リレート、スルホン酸ソーダエトキシ(メタ)アクリレ
ート、スルホン酸−2−メチルプロパン−2−アクリル
アミド、燐酸エステル基を有する(メタ)アクリレー
ト、スルホン酸エステル基を有する(メタ)アクリレー
ト、シラノ基を有する(メタ)アクリレート、((ジ)
アルキル)アミノ基を有する(メタ)アクリレート、4
級((ジ)アルキル)アンモニウム基を有する(メタ)
アクリレート、(N−アルキル)アクリルアミド、
(N、N−ジアルキル)アクリルアミド、アクロロイル
モリホリンなどが挙げられる。
【0054】また単官能のエネルギー線重合性化合物と
して使用できる単官能マレイミド系単量体としては、例
えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、
N−ブチルマレイミド、N−ドデシルマレイミドの如き
N−アルキルマレイミド;N−シクロヘキシルマレイミ
ドの如きN−脂環族マレイミド;N−ベンジルマレイミ
ド;N−フェニルマレイミド、N−(アルキルフェニ
ル)マレイミド、N−ジアルコキシフェニルマレイミ
ド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、
【0055】2,3−ジクロロ−N−(2,6−ジエチ
ルフェニル)マレイミド、2,3−ジクロロ−N−(2
−エチル−6−メチルフェニル)マレイミドの如きN−
(置換又は非置換フェニル)マレイミド;N−ベンジル
−2,3−ジクロロマレイミド、N−(4’−フルオロ
フェニル)−2,3−ジクロロマレイミドの如きハロゲ
ンを有するマレイミド;ヒドロキシフェニルマレイミド
の如き水酸基を有するマレイミド;
【0056】N−(4−カルボキシ−3−ヒドロキシフ
ェニル)マレイミドの如きカルボキシ基を有するマレイ
ミド;N−メトキシフェニルマレイミドの如きアルコキ
シ基を有するマレイミド;N−[3−(ジエチルアミ
ノ)プロピル]マレイミドの如きアミノ基を有するマレ
イミド;N−(1−ピレニル)マレイミドの如き多環芳
香族マレイミド;N−(ジメチルアミノ−4−メチル−
3−クマリニル)マレイミド、N−(4−アニリノ−1
−ナフチル)マレイミドの如き複素環を有するマレイミ
ドなどが挙げられる。
【0057】エネルギー線硬化性組成物に混合すること
の出来る光重合開始剤は、本発明で使用するエネルギー
線に対して活性であり、エネルギー線硬化性組成物を硬
化させることが可能なものであれば、特に制限はなく、
例えば、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カ
チオン重合開始剤であって良い。エネルギー線として紫
外線、可視光線、赤外線などの光線を用いる場合には、
光重合開始剤を混合することが好ましい。
【0058】そのような光重合開始剤としては、例え
ば、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,
2′−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2
−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの如きアセ
トフェノン類;ベンゾフェノン、4、4′−ビスジメチ
ルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、
2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサント
ン、2−イソプロピルチオキサントンの如きケトン類;
【0059】ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、
ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチ
ルエーテルの如きベンゾインエーテル類;ベンジルジメ
チルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケト
ンの如きベンジルケタール類;N−アジドスルフォニル
フェニルマレイミドの如きアジドなどが挙げられる。
【0060】また、光重合開始剤として、マレイミド系
化合物の如き重合性光重合開始剤を用いることもでき
る。重合性光重合開始剤は、例えば、エネルギー線重合
性化合物として使用できる化合物として例示した多官能
マレイミドの如き多官能単量体の他に、エネルギー線硬
化性組成物に混合使用できる単官能マレイミド系単量体
として例示したような単官能単量体であっても良い。エ
ネルギー線硬化性組成物に添加する光重合開始剤の使用
量は、非重合性光重合開始剤の場合、0.1〜20重量
%の範囲が好ましく、0.5〜15重量%の範囲が特に
好ましい。
【0061】エネルギー線硬化性組成物に添加すること
ができる改質剤としては、例えば、親水性向上剤として
作用するシリカゲル、酸化チタンの如き無機粉末、セル
ロースの如き有機粉末;界面活性剤;滑剤、撥水剤、レ
ベリング剤として作用するシリコンオイル、フッ素系化
合物やエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。
エネルギー線硬化性組成物に添加することができる着色
剤としては、任意の染料や顔料、蛍光色素が挙げられ
る。
【0062】(A)エネルギー線重合性化合物と(B)
鎖状重合体を混合してエネルギー線硬化性組成物を製造
する方法は任意である。混合時間短縮のため、構成成分
が変質しない範囲で温度を上げた状態で混合することも
好ましい。そのような混合温度として、150℃以下が
好ましく、120℃以下が更に好ましい。また、混合時
間短縮のため、エネルギー線重合性化合物と鎖状重合体
の共通溶剤を用いて任意の順序で混合し、均質に混合し
たエネルギー線硬化性組成物を調製した後、溶剤を揮発
除去する方法も好ましい。
【0063】溶剤を揮発除去させる方法も任意である
が、エネルギー線硬化性組成物を調製した段階で、溶剤
を減圧や薄膜蒸留などの方法で除去し、その後に賦形す
る方法や、溶剤を含有するエネルギー線硬化性組成物を
塗膜状などに賦形した後、溶剤を除去してエネルギー線
硬化性組成物の賦形物を得る方法などが可能である。
【0064】溶剤は任意であるが、揮発性溶剤であるこ
とが好ましい。揮発性溶剤は沸点が150℃以下である
ことが好ましく、120℃以下であることが更に好まし
い。このような溶剤としては、例えば、塩化メチレン、
クロロホルム、トリクロロエタン、テトラクロロエタン
の如き塩素系溶剤;メタノール、エタノールの如きアル
コール系溶剤;アセトン、2−ブタノンの如きケトン系
溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチルの如きエステル系溶剤;
ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフ
ランの如きエーテル系溶剤;トルエン、シクロヘキサン
の如き炭化水素系溶剤;蟻酸の如き酸;クロロフェノー
ルの如きフェノール類;液化二酸化炭素、液化アンモニ
アの如き液化ガス;超臨界二酸化炭素の如き超臨界流体
などが挙げられる。
【0065】溶剤除去方法も任意であり、例えば、風
乾、熱風乾燥、赤外線乾燥、真空乾燥、電磁波による乾
燥等であり得る。溶剤は、その後のエネルギー線の第1
照射工程によって形成される高次構造に大きな影響を与
えない程度ならば残存していても良い。多少の粘度変化
や相溶性の変化は、エネルギー線照射条件で補正可能で
ある。
【0066】エネルギー線硬化性組成物は、塗膜状、フ
ィルム状(シート状、リボン状などを含む)、繊維状、
注型物、含浸物等の任意の形状に賦形される。但し、エ
ネルギー線により硬化可能な形状であることが必要であ
る。例えば、エネルギー線が到達可能な厚みである必要
があり、賦形物が被服物で被われている場合には、被服
物は使用するエネルギー線を透過させるものである必要
がある。
【0067】賦形方法も任意であり、例えば、塗布、流
延、浸漬、注型、含浸、押し出しなどであり得る。エネ
ルギー線硬化性組成物の調製が溶剤を使用する方法であ
る場合には、賦形は溶剤除去の前であっても、後であっ
ても、同時であっても、また一部除去の後であっても良
い。エネルギー線硬化性組成物の粘度が高い場合や、賦
形物が塗膜やフィルムのような厚みの小さいものである
場合には、賦形後に溶剤除去を行なうことが好ましい。
【0068】本発明の第1照射工程は、上述したエネル
ギー線硬化性組成物にエネルギー線を照射して、流動性
がなく透明な固体状の半硬化物を得る工程である。第1
照射工程を施す前のエネルギー線硬化性組成物の賦形物
は常温で或いは加熱すると流動性のある粘調液となる
が、第1照射工程を施した後の半硬化物は、半硬化物の
Tg1以上の温度で加熱しても流動性は見られなくな
る。
【0069】本発明においては、第1照射工程後に得ら
れる半硬化物は透明性を有するものである。硬化物の透
明性は、硬化物の厚みを100μmとした場合の可視光
域での平行光透過率が70%以上であることが好まし
く、80%以上であることが更に好ましい。尚、硬化物
の膜厚が100μmに満たない場合や100μmを越え
る場合、ランバート・ベールの法則で100μmでの光
透過率を見積もることも可能である。
【0070】本発明では第1照射工程後に得られる半硬
化物は、エネルギー線重合性化合物の半重合体と鎖状重
合体が相分離していない(即ち、分子レベルで均一に混
合している)か、或いは相分離していても相分離の初期
にある(即ち、相分離のコントラストが低い)ことが好
ましく、本発明では、特に相分離していない状態が好ま
しい。半硬化物の相分離が進行した状態では、第1照射
工程後に得られる半硬化物は透明性が低下した状態とな
り、樹脂複合体の透明性が損なわれたり、力学特性が低
下するなどの問題が生じ易い。
【0071】相分離の進行状態は、半硬化物の透明性か
ら簡便に知ることができる。即ち、透明性の低い半硬化
物は相分離が進行していることを示している。しかし、
相分離の寸法が小さい場合には、相分離していながら透
明性を示す場合がある。従ってより正確には、硬化物の
ガラス転移温度(以後、「Tg1」と表す)の測定から
知ることができる。
【0072】本発明の第1照射工程後の硬化物は1つの
ガラス転移温度を有することが、引き続く各工程の自由
度が高くなる上、本発明の効果が十分に発揮されるため
特に好ましいが、2つのガラス転移温度を有する場合で
も目的とする樹脂複合体を得ることは可能である。この
場合は、本発明で言う半硬化物のガラス転移温度Tg1
は、低温度側のガラス転移温度である。
【0073】ガラス転移温度は、一般的なガラス転移温
度(Tg)の測定方法、例えば示差熱分析(DSC)、
動的粘弾性測定(DMA)、比溶や線膨張係数の温度変
化等によって測定できる。例えばDMAでは、温度対t
anδ(=損失弾性率/貯蔵弾性率)のグラフにおける
ピークとしてガラス転移温度が得られる。
【0074】この場合、相分離していない状態ではピー
クが1つだけ現れ、不十分に相分離した状態ではブロー
ドなピークや、肩付きピークなどの十分に分離していな
いピークとして現れる。一方、相分離した状態ではta
nδピークは分離した状態で2つ観察される。但し、ブ
レンドするエネルギー線重合性化合物の単独硬化物のT
gと鎖状重合体のTgに差がない場合には相分離しても
ピークが1つとなったり、ブロードなピークとして現れ
る場合がある。
【0075】このような場合には、第1照射工程後の硬
化物の硬度が十分な場合には、電子顕微鏡観察によって
相分離の進行程度を確認することができる。相分離して
いない場合には、電子顕微鏡像は相構造を示さないし、
不十分に相分離している場合はコントラストの低い相構
造が観察される。また相分離の程度は、核磁気共鳴吸収
法などで縦緩和時間又は横緩和時間を調べることによっ
ても知ることが可能である。
【0076】第1照射工程後に得られる半硬化物中のエ
ネルギー線重合性化合物の重合性基の反応率(以後、単
に「反応率」と称する場合がある。)は30〜80%の
範囲にあることが好ましい。
【0077】第1照射工程を室温で行い、活性エネルギ
ー線を十分に照射して得られる硬化物の中には、反応率
が60〜80%であるが、フィルムや塗膜などとして
は、ある程度満足できる強度を有するものがある。しか
し、この硬化物は、樹脂複合体としてはまだ十分に向上
した性能を有していないものであり、本発明に於いて
は、これらの硬化物の改良をも含むものであり、本発明
においていは、この硬化物をも「半硬化物」と称する。
【0078】硬度などの物性が飽和するまでエネルギー
線を照射しているにも関わらず、樹脂複合体として不十
分なのは、おそらくエネルギー線重合体と鎖状重合体が
分子レベルでほぼ均一に混合した状態、つまり異分子で
ある鎖状重合体がエネルギー線重合体の架橋網目内に入
り込む為に、エネルギー線重合体の重合度が阻害されて
低くなっていると考えられ、更に高強度のエネルギー線
を長時間照射しても十分な重合度は得られ難く、また加
熱処理によっても十分な重合度は得られない。
【0079】一方、第1照射工程後の反応率が30〜6
5%の場合、エネルギー線重合性化合物の架橋重合は飽
和に達しない不完全な程度であり、賦形物の半硬化物は
ゲル状のものも含まれる。このような半硬化物は、第1
照射工程を0℃以下などの低温で行う場合や、特に
(A)エネルギー線重合性化合物として架橋重合性化合
物を使用する場合に、該温度でエネルギー線硬化性組成
物の硬度がほぼ飽和に達する程度の十分なエネルギー線
線量の照射によって得ることが出来る。或いは、該温度
やそれより高温におけるエネルギー線照射の不十分な量
の照射によっても得ることが出来る。
【0080】反応率が30〜65%であるような半硬化
物は複合体として、フィルムや塗膜としても十分な強度
を有するものではなく、引き続き行う相分離工程や第2
照射工程を施すことにより良好な性質を持つ樹脂複合体
が得られる。この場合の半硬化物の反応率は35〜60
%がより好ましく、特に40〜55%が好ましい。
【0081】半硬化物の反応率が30%未満の場合は、
第1照射工程に次いで行う第2照射工程や相分離工程の
際に、相分離が大きく進行し、透明性や力学特性が低下
しがちであるために好ましくなく、また、反応率が80
%を越える場合には、第2照射工程を施しても十分な硬
化処理を行えなかったり、相分離工程で相分離の進行が
不十分となり、力学特性の改良効果が小さくなり易い。
【0082】(A)エネルギー線硬化性化合物の反応率
は、(フーリエ変換)赤外吸収スペクトロメトリー(F
T―IR)測定やラマン散乱測定、或いは高分解能核磁
気共鳴吸収(NMR)測定により、重合性基部分のスペ
クトルの面積変化などから求めることが出来る。
【0083】第1照射工程で得られるエネルギー線硬化
性組成物の半硬化物は、エネルギー線重合性化合物が鎖
状重合体の存在下で架橋重合し、鎖状重合体や未反応の
エネルギー線重合性化合物を取り込んだ架橋構造を含む
ものと考えられる。つまり、この硬化物の高次構造は、
架橋重合体の架橋網目内に鎖状重合体が分子レベルで入
り込んだ、所謂、半相互侵入網目構造(セミIPN構
造)に近い構造であるか或いは相分離が生じているとし
ても不十分な相構造を有すると考えられる。
【0084】第1照射工程のエネルギー線の照射は、
(A)エネルギー線重合性化合物と(B)鎖状重合体と
を均一に混合した状態で行う必要がある。即ち、エネル
ギー線硬化性組成物が相溶状態を保っている温度、即ち
照射前に相分離しない温度で実施する必要がある。エネ
ルギー線硬化性組成物が相溶状態を保っているかどうか
は、エネルギー線硬化性組成物が透明であることを目視
で確認したり、光学顕微鏡などを用い凝集粒子の有無を
確認するなどの方法で知ることができる。この時、エネ
ルギー線硬化性組成物が過冷却状態であっても良い。
【0085】上述したような反応率と相分離程度を有す
る半硬化物は、エネルギー線硬化性組成物の粘度、第1
照射工程の温度、エネルギー線強度と照射線量等の制御
により得ることが出来る。照射温度は、使用する樹脂の
種類やブレンド組成によって異なるために一概には規定
できないが、該組成物の粘度が好ましくは100Pa・
s以上、更に好ましくは500Pa・s以上となる温度
に於いて行うことにより、透明性に優れた相分離してい
ない半硬化物が得ることが可能となる。
【0086】上記の範囲以外では相分離が大きく進行し
易く、硬化物の透明性が失われがちであるために好まし
くない。該粘度の上限については、通常の粘度計では測
定困難な高粘度においても、本発明が目的とする硬化物
を得ることが出来、特に制限されないが、好ましくは1
000000Pa・s以下、更に好ましくは50000
0Pa・s以下となる温度で行われる。一般的には、エ
ネルギー線重合性化合物と鎖状重合体の相溶性が悪いも
のほどより高粘度で行うことが好ましい。
【0087】またエネルギー線硬化性組成物のガラス転
移温度(以下、Tg0と表す)以下の温度で第1照射工
程を行うことが、ガラス転移温度が1つの半硬化物を得
やすく、特に好ましい。但し、使用するエネルギー線重
合性化合物や鎖状重合体の種類や組成、或いはエネルギ
ー線の種類や強度によっては、Tg0以上の温度での処
理によっても1つのガラス転移温度を有する半硬化物が
得られる場合がある。
【0088】エネルギー線重合性化合物と鎖状重合体と
の親和性が高くて、相分離し難い組み合わせや組成の場
合や、エネルギー線重合性化合物の架橋重合をすばやく
進行させ得るエネルギー線の種類や高強度、反応開始剤
の種類や添加量を用いる場合には、Tg0以上温度での
処理によっても1つのガラス転移温度を有する半硬化物
が得られ易い。
【0089】Tg0の測定は、動的粘弾性(DMA)に
よる測定は通常困難であるため、示差熱分析(DSC)
が好適である。尚、第1照射工程の照射温度は−50℃
〜+150℃の範囲が好ましく、0℃〜+120℃の範
囲が更に好ましく、0℃〜+80℃の範囲が最も好まし
い。この範囲より低温では、エネルギー線硬化性組成物
の(A)エネルギー線重合性化合物と(B)鎖状重合体
とが均一に混合しなかったり、半硬化物の反応率が過小
になりがちである。
【0090】また、この範囲より高温では、透明な半硬
化物が得られなかったり、本発明の効果が発揮されない
などの不都合が生じがちである。一般的には、第1照射
工程の照射温度は、エネルギー線硬化性組成物の粘度が
低い場合や、エネルギー線照射強度が弱い場合には、よ
り低温度で行うことが好ましい。
【0091】本発明のエネルギー線とは、エネルギー線
の中で、本発明で使用するエネルギー線硬化性組成物を
硬化させることの出来るエネルギー線を言う。本発明が
目的とする反応率を有する半硬化物は、エネルギー線の
強度や照射時間をコントロールすることにより容易に得
ることが可能である。例えば、エネルギー線として、紫
外線を使用する場合、通常、強度は0.1〜1000m
W/cm2、好ましくは0.5〜500mW/cm2の範
囲、照射時間は5分間以下、好ましくは3分間以下の範
囲を用いることができる。
【0092】また、反応率が30〜65%の半硬化物を
得るためには、エネルギー線架橋重合性化合物の硬化物
を得るために通常用いられているエネルギー線の照射線
量より小さな線量を用いることが好ましく、エネルギー
線の強度や時間のいずれか、或いは強度と照射時間の両
方を小さくすることで得ることができる。
【0093】しかし、エネルギー線の強度や照射時間の
範囲は、使用する樹脂の種類やブレンド組成により異な
る上に、使用するエネルギー線の種類や重合開始剤濃度
により著しく異なるために、一概には規定できないが、
例えば、エネルギー線として、紫外線を使用する場合、
通常、強度は0.1〜300mW/cm2、好ましくは
0.5〜200mW/cm2の範囲、照射時間は5分間以
下、より好ましくは3分間以下の範囲である。
【0094】エネルギー線としては、エネルギー線硬化
性組成物を硬化させることが可能なものであれば任意で
あり、紫外線、可視光線、赤外線の如き光線;エックス
線、ガンマ線の如き電離放射線;電子線、ベータ線、中
性子線、重粒子線の如き粒子線が挙げられるが、取り扱
い性や装置価格の面から光線が好ましく、紫外線が特に
好ましい。紫外線はレーザー光であることも好ましく、
また照射は全面照射であっても走査式の照射であっても
良い。
【0095】エネルギー線照射は、硬化速度を速め、少
ない線量で硬化させる目的で、エネルギー線の照射を低
酸素濃度雰囲気で行うことも好ましい。低酸素濃度雰囲
気としては、窒素気流中、二酸化炭素気流中、アルゴン
気流中、真空又は減圧雰囲気が好ましい。
【0096】本発明では、必要に応じて、第1照射工程
と第2照射工程の間に、第1照射工程で得られた半硬化
物を、Tg1(第1照射工程で得られた硬化物のガラス
転移温度)以上の温度で保持することにより、相分離を
進行させる工程(この工程を「相分離工程」と称する)
を施しても良い。
【0097】第1照射工程後に得られた半硬化物は重合
硬化により粘度が大幅に向上しているため、或いは、半
硬化物中にはエネルギー線重合性化合物の架橋網目が形
成されているため、相分離が大きく進行することが抑制
され、光散乱を生じない程度に微小な相構造が形成され
る。また、第2照射工程が施される半硬化物は、相分離
しているために第2照射工程で効率的にエネルギー線重
合性化合物の重合反応が進行し反応率が向上する。
【0098】更に、第2照射工程が施される半硬化物の
相構造が小さいために相分離工程後においても透明性を
維持し、最終的に樹脂複合体に透明性と優れた力学特性
が付与されるものと考えられる。
【0099】本発明の相分離工程での相分離は、第1照
射工程後に得られる半硬化物を好ましくはTg1〜(T
g1+150℃)、更に好ましくはTg1〜(Tg1+
130℃)の温度に保持することにより行われる。Tg
1未満では相分離するための分子運動が困難であるため
に、相分離が生じない。また(Tg1+150℃)を越
える場合には、相分離の進行が大きくなりがちであり、
透明性が損なわれたり、力学特性が低下しがちである。
【0100】相分離工程の処理時間は、使用する樹脂の
種類やブレンド組成、処理温度により大きく異なるが、
好ましくは0.1〜24時間、更に好ましくは0.2〜5
時間、最も好ましくは0.3〜2時間の範囲で行われる
が、本発明が目的とする効果が現れる、最小の時間が好
ましい。相分離工程においては、エネルギー線重合性化
合物の重合性基の反応率が実質的に増加せず、到達反応
率まで増加しない必要があるが、多少の増加は許容され
る。
【0101】第2照射工程は、第1照射工程で得られた
半硬化物、又は相分離工程で相分離させた半硬化物を第
1照射工程の照射温度より高く、且つTg1以上(但
し、Tg1は第1照射工程で得られた硬化物のガラス転
移温度)の温度にて、更にエネルギー線を照射する工程
である。
【0102】第2照射工程では、(1)第1照射工程
後、相分離工程を行わないで第2照射工程を行う場合と
(2)相分離工程を行った後、第2照射工程を行う場合
で第2照射工程の性格がやや異なる。(2)相分離工程
を施した場合は、単純にエネルギー線重合性化合物の未
反応基を重合させて、反応率を向上させる工程と位置づ
けられ、本工程で相分離が生じる或いは進行する必要は
ないが、(1)相分離工程を行わない場合は、本工程で
相分離と重合を同時に進行させる。
【0103】(1)相分離工程を行わない場合について
説明する。第1照射工程後の半硬化物は、相分離してい
ないか或いは相分離が不十分な状態にある。また、重合
性基の反応率が十分に向上していない状態にある。第2
照射工程をTg1以上の温度で行うことによって相分離
が誘発される。相分離するとエネルギー線重合性化合物
の半硬化物が凝集するため未反応部分は反応し易くな
る。
【0104】未反応基が多い部分は架橋密度が低いた
め、より相分離し易い環境にある。エネルギー線を照射
した状態で相分離が進行するために、相分離が大きく進
行することなく完全に硬化し、良好な力学特性が得られ
る。第2照射工程の照射温度は、Tg1〜(Tg1+1
50℃)が好ましく、(Tg1+10℃)〜(Tg1+
130℃)が特に好ましい。Tg1未満では相分離の進
行が弱く力学特性の向上効果は小さくなり好ましくな
く、この温度範囲を越えると樹脂複合体が白濁化しがち
であり、また、特性が低下しがちであるため好ましくな
い。
【0105】第2照射工程の適温は、使用するエネルギ
ー線重合性化合物や鎖状高分子の種類や組成により異な
るが、上記範囲内で、樹脂複合体が白濁化しない範囲、
また特性が低下しない範囲で高温であることが好まし
い。このような照射温度は、各々の樹脂組成物について
の簡単な試験により求めることが出来る。また第2照射
工程を昇温しながら行うことも効果的である。
【0106】(2)相分離工程を施す場合は、相分離工
程では相分離は誘発されるがエネルギー線照射下で行っ
ていないために、相分離工程を経た硬化物の反応率は第
1照射工程後の反応率と大きく異なることはなく、樹脂
複合体としては不十分なものである。相分離工程後は相
分離しているために、エネルギー線重合性化合物の半硬
化物が凝集しており、エネルギー線重合性化合物の未反
応基は反応し易い状態にある。そのため第2照射工程を
施すことにより効率的に反応率が向上する。
【0107】この場合の第2照射工程の照射温度は第1
照射工程の照射温度より低くても、或いはTg1以下の
温度であってもある程度の重合は進行するが、第1照射
工程の照射温度より高く、且つTg1以上で行う場合よ
り効率的に反応率が向上する。第2照射工程の照射温度
は、Tg1〜(Tg1+150℃)が好ましく、(Tg
1+10℃)〜(Tg1+130℃)が特に好ましい。
また、第2照射工程を昇温しながら行うことも効果的で
あり、相分離工程から連続的に、相分離工程と同温度
で、或いは該温度から昇温しつつ行うことも好ましい。
【0108】第2照射工程で使用することが出来るエネ
ルギー線、照射雰囲気、照射時間、照射強度について
は、第1照射工程の場合と同じである。第2照射工程で
使用するエネルギー線は第1照射工程で使用するエネル
ギー線と同じものであっても異なるものであっても良
い。
【0109】但し、第1照射工程で反応率の小さな半硬
化物を得るために低強度、低時間で照射処理を行った場
合については、第2照射工程のエネルギー線の照射強度
及び時間は第1照射工程より高強度及び長時間で行うこ
とが好ましいが、第1照射工程と同じ強度を用いても長
時間照射或いは高強度のエネルギー線を照射することに
よって目的とする反応率を得ることは可能である。エネ
ルギー線として、紫外線を使用する場合、1〜1000
mW/cm2の範囲の強度が好ましく、10〜500m
W/cm2の範囲が更に好ましい。
【0110】第2照射工程で得られる樹脂複合体の重合
性基の反応率は、相分離工程の有無に関わらず、第1照
射工程後に得られる半硬化物や相分離工程後の半硬化物
の反応率より高くする。該樹脂複合体の重合性基の反応
率は使用する樹脂の種類やブレンド組成により異なり、
一概には規定できないが、該樹脂複合体の重合性基の反
応率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%
以上、最も好ましくは90%以上である。
【0111】また、エネルギー線重合性化合物として、
ウレタン系プレポリマーなどの分子量が高い化合物を使
用する場合、エネルギー線重合性化合物だけを単独で重
合させても重合度が向上し難い傾向が見られる。このよ
うなプレポリマーなどを使用する場合には、樹脂複合体
の反応率が80%未満でも本発明が目的とする効果が得
られる場合がある。
【0112】いずれの場合も、第2照射工程は、得られ
る樹脂複合体中の重合性基の反応率が飽和する程度にエ
ネルギー線を照射することが好ましい。樹脂複合体の重
合性基の反応率は、第1照射工程後に得られた半硬化物
の反応率と同様な方法で求めることができる。
【0113】川村理化学研究所報告(平成10年)や特
開平7−33991号公報などに開示されている疑似相
溶ブレンド系ではエネルギー線重合性化合物が形成する
架橋網目の中に鎖状重合体が均質に侵入した構造を有す
るために、十分なエネルギー線照射によっても重合性基
の反応率がある程度以上向上しないのに対し、本発明で
は相分離工程で架橋重合性化合物と鎖状重合体が分離す
るために、第2照射工程を施すことにより効率的に反応
率が向上する。そのため、本発明の製造法で得られた樹
脂複合体は、優れた力学的特性を示す上、透明体とする
ことが出来る。
【0114】特に、本発明の樹脂複合体は、特開平7−
33991号公報や川村理化学研究所報告(平成10
年)などに開示されているような、低温度域でエネルギ
ー線硬化性組成物に十分なエネルギー線を照射すること
によって得られる、相分離が殆ど進行していない透明な
擬相溶状態にある樹脂複合体より、更に高い力学特性、
特に高い引張強度を示す。
【0115】擬相溶状態の樹脂複合体の場合、組成を横
軸に、特性(引張強度)を縦軸に図示すると、該構造体
の特性は、通常は複合化する2つの樹脂の単体での特性
を結ぶ直線上(以後、この直線上の値を「組成の重み付
き相加平均値」又は単に「相加平均値」と呼ぶ場合があ
る)に現れるが、本発明の樹脂複合体の特性、特に引張
強度は相加平均値を越える値とすることが出来る。
【0116】本発明の製造法で得られる樹脂複合体は透
明とすることが出来るが、透明であってもガラス転移温
度を測定すると2つのガラス転移温度を有する場合が多
く、相分離した状態にあることが分かる。但し、エネル
ギー線重合性化合物の硬化物のガラス転移温度と鎖状重
合体のガラス転移温度に差がない場合には、相分離の様
子をガラス転移温度の測定で知ることが困難な場合があ
る。その場合は、電子顕微鏡観察や核磁気共鳴吸収法な
どにより知ることもできる。
【0117】本発明の樹脂複合体の相構造は、透過型電
子顕微鏡(TEM)によってはコントラストが低く、観
察されない場合もあるが、観察される場合もある。相構
造が観察できる場合、相構造の大きさは非常に小さく、
構造周期や粒子径は0.5μm以下が好ましく、更に0.
2μm以下が好ましく、特に0.1μm以下のナノオー
ダーのスケールが好ましい。このように、本発明の樹脂
複合体は相分離の構造が光の波長に比べて小さいため
に、相分離していながら光学的に透明であると推測され
る。
【0118】電子顕微鏡で相構造が観察されない場合、
界面がエネルギー線硬化樹脂と鎖状重合体が入り組んだ
構造を有する考えられ、界面の接着性に優れた相構造を
持つため、大きな特性向上が見られたものと推定され
る。
【0119】本発明の製造法で得られる樹脂複合体は、
光学的透明体とすることが出来る。本発明で言う光学的
透明体とは、樹脂複合体の膜厚100±20μmのフィ
ルムでの可視光領域の光透過率が70%以上であること
を言い、より好ましくは80%以上である。尚、複合体
の膜厚が100μmに満たない場合や120μmを越え
る場合、ランバート・ベールの法則で100μmでの光
透過率を見積もることも可能である。
【0120】このため、本発明の製造法で得られる樹脂
複合体は、フィルムや塗膜の形状に成形することが好ま
しく、強靱性と透明性に優れるフィルムや塗膜が得られ
る。これらフィルムや塗膜の厚みは、好ましくは1mm
以下、更に好ましくは0.5mm以下、最も好ましくは
0.3mm以下である。
【0121】本発明の樹脂複合体は透明であるが相分離
したものである。相分離の度合いは、第1照射工程後の
半硬化物の反応率によっても制御することができる。反
応率が50〜80%の場合、相分離していても電子顕微
鏡などでも明確な相構造が確認できない樹脂複合体が得
られ易く、反応率が30〜65%の場合は、電子顕微鏡
などで相構造を観察可能な樹脂複合体が得られ易い。
【0122】明確な相構造が観察できない理由は明らか
ではないが、0.1μm以下の小さな相構造を有するこ
とに加え、厚い界面を有すると推測され、相構造が不明
瞭となると考えられる。また重合性基の反応率は、(フ
ーリエ変換)赤外吸収スペクトロメトリー(FT―I
R)測定やラマン散乱測定、或いは高分解能核磁気共鳴
吸収(NMR)測定により、重合性基部分のスペクトル
の面積変化などから求めることが出来る。
【0123】
【実施例】以下に実施例を用いて本発明を更に詳細に説
明する。しかしながら、本発明は以下の実施例の範囲に
限定されるものではない。
【0124】なお、以下の実施例において、紫外線源と
して、160Wのメタルハライドランプ(アイグラフィ
ックス製)を用いた。紫外線照射強度は約70mW/c
2であった。また、紫外線照射時間は特に条件として
記載しない限り90秒間とした。次に、以下の実施例に
おける反応率測定法、ガラス転移温度の測定方法、引張
破壊試験方法、光透過率の測定方法、粘度測定法につい
て説明する。
【0125】(反応率測定)第1照射工程後に得られる
半硬化物と樹脂複合体の重合性基の反応率はFT−IR
測定より求めた。FT−IRは日本分光社製のFT−I
R 550を使用した。反応率は810cm-1のアクリ
ル基のピーク面積と1730cm-1のカルボニルのピー
ク面積の比を求め、硬化前後で比較して算出した。
【0126】(ガラス転移温度の測定)ガラス転移温度
(Tg)の測定は、示査走査型熱量計(DSC;パーキ
ンエルマー株式会社製)を用いた。約5mgのサンプル
を用いて、毎分20℃の速度で測定した。また、最終的
に得られる樹脂複合体のガラス転移温度は、動的粘弾性
測定(RSA−II;レオメトリックス株式会社製)よ
り得られるtanδの温度分散のピーク温度より求めた
場合もある。測定周波数は1Hz、毎分2℃で昇温し
た。
【0127】(引張破壊試験)引張破壊試験は、島津製
作所製の引張試験機(オートグラフAGS−H)を使用
した。サンプルが塗膜の場合には、基材から剥離したフ
ィルム状のものを用いた。幅3mm、厚み約0.12m
mの試験片として、サンプル長10mm、引張速度を毎
分5mmとし試験を行った。
【0128】(光透過率の測定)日本電色工業株式会社
製の濁度計「NDH−300A」を用いて、塗膜又はフ
ィルムの平行光透過率を測定した。フィルムの厚みは約
120μm とした。
【0129】(粘度測定)エネルギー線硬化性組成物の
粘度はレオメトリックス社製の動的粘弾性測定装置RD
S−IIを使用し測定した。直径25mmφのパラレル
プレートを使用し、サンプル厚1.5mmとした。複素
粘性率の周波数分散を測定し、周波数=0への外挿値を
求め、粘度とした。
【0130】[実施例1]エネルギー線重合性化合物と
して、「ニューフロンティア BPE−4」(第一工業
製薬株式会社製のエチレンオキサイド変性ビスフェノー
ルAジアクリレート;以下、「BPE4」と省略す
る。)5g、光重合開始剤として、「イルガキュア18
4」(チバ・ガイギー社製の1−ヒドロキシシクロヘキ
シルフェニルケトン)0.1g及び鎖状重合体として、
「ユーデル 3703」(アムコ株式会社製のポリサル
ホン;以下、「PSF」と省略する。)5gを塩化メチ
レン50gに溶解させてエネルギー線硬化性組成物
(1)を得た。
【0131】このようにして得たエネルギー線硬化性組
成物(1)をガラス板上に塗布した後、溶剤を揮発さ
せ、エネルギー線硬化性組成物の未硬化の無色透明な塗
膜を得た。この未硬化の塗膜は常温では固体状であった
が、100℃に加熱すると流動性が見られた。溶媒キャ
スト後のエネルギー線硬化性組成物(1)のガラス転移
温度は42℃であった。次いで、この塗膜にガラス板の
カバーを密着装着して、未硬化の塗膜を2枚のガラス板
に挟まれた状態とした。
【0132】該塗膜をガラス板ごと0℃に保持し窒素雰
囲気下で紫外線を照射した。無色透明な半硬化塗膜が得
られた。この半硬化塗膜は150℃まで加熱しても流動
性は見られなかった。またこの半硬化塗膜のガラス転移
温度は50℃であり、FT−IR測定より求めた反応率
は約52%であった。この半硬化塗膜を65℃に保持
し、窒素雰囲気で再び紫外線を照射した。無色透明な塗
膜状樹脂複合体(約120μm)が得られた。塗膜状樹
脂合体の光透過率は約89%であり、FT−IR測定よ
り求めた反応率は約88%であった。
【0133】塗膜状樹脂複合体の引張破壊試験を行った
結果、引張強度が65MPa、弾性率が1.70GPa
であった。「BPE4」の単独硬化物は、その引張強度
が42MPa、弾性率が1.40GPaであり、複合体
の力学的特性が大きく向上していることが判る。また、
「PSF」の引張強度は71MPa、弾性率は1.60
GPaであり、相加平均値は引張強度が57MPa、弾
性率が1.50GPaであり、相加平均値を上回る特性
が得られた。実施例により得られた塗膜状樹脂複合体
は、比較例1で示す長時間の熱処理を施したものに比
べ、非常に短時間処理で力学的特性に優れた性質が得ら
れる。
【0134】また、走査型電子顕微鏡(SEM:日立製
作所製、S−800)と透過型電子顕微鏡(TEM:日
立製作所製、200kV)を用いてブレンド硬化塗膜の断
面構造を観察したが、何れの方法でも明確な相構造を観
察することができなかった。更に、BPE4は0℃以上
で流動性を有していた。
【0135】[参考例1、比較例1]参考例1として、
実施例1において、未硬化の塗膜を室温(25℃)に保
持して窒素雰囲気で紫外線を照射した。無色透明な塗膜
状樹脂複合体(120μm)が得られた。塗膜状複合体
の光透過率は89%であり、複合体の反応率は十分な照
射を行ったにも関わらず78%であった。参考例1の塗
膜状樹脂複合体の引張強度は25MPa、弾性率は0.
8GPaであり、非常に劣るものであった。
【0136】次いで、比較例1として、参考例1の塗膜
状樹脂複合体を160℃で3時間熱処理を施した。比較
例1の塗膜状樹脂複合体は無色透明で光透過率は89%
であり、複合体の反応率は83%であった。比較例1の
塗膜状樹脂複合体の引張強度は56MPa、弾性率は
1.2GPaであった。3時間の高温熱処理を施したに
も関わらず、特性は相加平均値、実施例1より劣ってい
る。
【0137】[実施例2]実施例1の第1照射工程後に
得られた無色透明の硬化塗膜を160℃で3時間熱処理
した後、160℃に保持して、紫外線を照射した。無色
透明な塗膜状複合体(120μm)が得られた。光透過
率は89%であり、反応率は約92%であった。実施例
2の塗膜状複合体の引張強度は82MPa、弾性率は
1.8GPaであり、相加平均値に比べ著しく高く、興
味深いことに補強樹脂として働くPSFの強度より高強
度であった。
【0138】SEMを用いてブレンド硬化塗膜の断面構
造を観察したが、明確な相構造を観察することはできな
かった。また、DSCにより実施例2の塗膜状複合体の
ガラス転移温度(Tg)を測定したところ、88.5℃
と152.8℃に2つのガラス転移温度が観察された。
【0139】[比較例2]実施例2において、実施例1
の第1照射工程後に得られた無色透明の硬化塗膜の熱処
理温度を210℃とした以外は実施例2と同様な方法で
塗膜状樹脂複合体を作製した。比較例2で得られた塗膜
状樹脂複合体は白濁化しており、光透過率は47%であ
った。引張強度は54MPa、弾性率は1.3GPaと
著しく特性が低下した。
【0140】[実施例3]エネルギー線重合性化合物と
して、「BPE−4」7g、光重合開始剤として、「イ
ルガキュア184」0.14g及び鎖状重合体として、
「PSF」3gを塩化メチレン50gに溶解させてエネ
ルギー線硬化性組成物(2)を得た。
【0141】このようにして得たエネルギー線硬化性組
成物(2)をガラス板上に塗布した後、溶剤を揮発さ
せ、エネルギー線硬化性組成物の未硬化の無色透明な塗
膜を得た。溶媒キャスト後のエネルギー線硬化性組成物
(2)のガラス転移温度は7.5℃であった。この塗膜
の0℃での粘度は約20000(Pa・s)であり、実
施例1の未硬化塗膜より若干柔らかいものであった。次
いで、この塗膜にガラス板のカバーを密着装着して、未
硬化の塗膜を2枚のガラス板に挟まれた状態とした。
【0142】該塗膜をガラス板ごと0℃に保持し窒素雰
囲気下で紫外線を照射した。無色透明な半硬化塗膜が得
られた。この半硬化塗膜のガラス転移温度は18℃、光
透過率は90%、反応率は52%であった。この硬化塗
膜を120℃で3時間熱処理した後、120℃に保持
し、窒素雰囲気で再び紫外線を照射した。無色透明な塗
膜状樹脂複合体(約120μm)が得られた。塗膜状樹
脂合体の光透過率は約89%で、反応率は94%であっ
た。
【0143】また、実施例3で得られた塗膜状樹脂複合
体の引張破壊試験を行った結果、引張強度が68MP
a、弾性率が1.65GPaであった。相加平均値は引
張強度が51MPa、弾性率が1.46GPaである。
相加平均値を大きく上回る特性が得られた。TEMを用
いて、相構造を観察したところ、粒子径が40〜50n
mの海島構造的な構造が観察された。
【0144】[参考例2、比較例3]参考例2として、
実施例3において、未硬化の塗膜を室温(25℃)に保
持して窒素雰囲気で紫外線を照射した。無色透明な塗膜
状樹脂複合体(120μm)が得られた。塗膜状複合体
の光透過率は89%で、複合体の反応率は十分な照射を
行ったにも関わらず80%であった。参考例2の塗膜状
樹脂複合体の引張強度は42MPa、弾性率は1.3G
Paであり、非常に劣るものであった。
【0145】次いで、比較例3として、参考例2の塗膜
状樹脂複合体を120℃で3時間熱処理を施した。比較
例3の塗膜状樹脂複合体は無色透明で光透過率は89%
で、反応率は84%であった。比較例3の塗膜状樹脂複
合体の引張強度は48MPa、弾性率は1.35GPa
であった。特性は相加平均値、実施例3より劣ってい
る。
【0146】[実施例4]エネルギー線重合性化合物と
して、「BPE−4」3g、光重合開始剤として、「イ
ルガキュア184」0.06g及び鎖状重合体として、
「PSF」7gを塩化メチレン50gに溶解させてエネ
ルギー線硬化性組成物(3)を得た。
【0147】このようにして得たエネルギー線硬化性組
成物(3)をガラス板上に塗布した後、溶剤を揮発さ
せ、エネルギー線硬化性組成物の未硬化の無色透明な塗
膜を得た。溶媒キャスト後のエネルギー線硬化性組成物
(3)のガラス転移温度は89℃であった。次いで、こ
の塗膜にガラス板のカバーを密着装着して、未硬化の塗
膜を2枚のガラス板に挟まれた状態とした。
【0148】該塗膜をガラス板ごと25℃に保持し窒素
雰囲気下で紫外線を照射した。無色透明な半硬化塗膜が
得られた。この半硬化塗膜の反応率は約48%、光透過
率は90%、ガラス転移温度は100℃であった。この
硬化塗膜を180℃で3時間熱処理した後、180℃に
保持し、窒素雰囲気で再び紫外線を照射した。無色透明
な塗膜状樹脂複合体(約120μm)が得られた。塗膜
状樹脂合体の光透過率は約89%であり、反応率は90
%であった。
【0149】また、実施例4で得られた塗膜状樹脂複合
体の引張破壊試験を行った結果、引張強度が82MP
a、弾性率が1.65GPaであった。相加平均値は引
張強度が62MPa、弾性率が1.54GPaである。
相加平均値を上回る特性が得られた。TEMを用いて、
相構造を観察したところ、粒子径が40〜50nmの海
島構造的な構造と相関長が50〜70nmの共連続的構
造が入り交じった相構造が観察された。
【0150】[参考例3、比較例4]参考例3として、
実施例4において、未硬化の塗膜を室温(25℃)に保
持して窒素雰囲気で紫外線を照射した。無色透明な塗膜
状樹脂複合体(120μm)が得られた。塗膜状複合体
の光透過率は89%で、複合体の反応率は十分な照射を
行ったにも関わらず68%であった。参考例3の塗膜状
樹脂複合体の引張強度は53MPa、弾性率は1.4G
Paであり、劣るものであった。
【0151】次いで、比較例4として、参考例3の塗膜
状樹脂複合体を180℃で3時間熱処理を施した。比較
例4の塗膜状樹脂複合体は白濁化し、光透過率は68%
であり、反応率は72%であった。比較例4の塗膜状樹
脂複合体の引張強度は55MPa、弾性率は1.4GP
aであった。特性は相加平均値より劣っている。
【0152】[実施例5、比較例5]架橋重合性単量体
として、「カヤラッド R−684」(日本化薬株式会
社のジキシクヘンタジルジアクリレート;以下、「R6
84」と省略する。)5g、光重合開始剤として、「イ
ルガキュア184」0.1g及び鎖状重合体として、
「ユーピロン Z-200」(PCz;三菱瓦斯化学株
式会社製のビスフェノールZ型ポリカーボネート)5g
を塩化メチレン60gに溶解して、エネルギー線硬化性
組成物(4)を得た。
【0153】実施例1のエネルギー線硬化性組成物
(1)に代えて、エネルギー線硬化性組成物(4)を用
いて、実施例1と同様な方法で未硬化の無色透明の塗膜
状の賦形物を得た。該賦形物を100℃に加熱すると流
動性が見られた。該賦形物を室温(25℃)に保持し窒
素雰囲気下で紫外線を照射した。無色透明な半硬化塗膜
(120μm)が得られた。半硬化塗膜を150℃に加
熱したが流動性は見られなかった。また、半硬化塗膜の
反応率は約64%、光透過率は90%、ガラス転移温度
は約85℃であった。この塗膜を150℃で2時間熱処
理を施した。無色透明な塗膜が得られた。光透過率は9
0%であった。
【0154】熱処理後の塗膜を150℃に保持して、紫
外線照射したところ、光透過率90%の無色透明な塗膜
状樹脂複合体が得られ、反応率は90%であった。実施
例5の塗膜状樹脂複合体の引張破壊試験を行った結果、
引張強度が93MPa、弾性率が2.3GPaであっ
た。後述する比較例5及び相加平均値に比べ、大きく特
性が向上しているのが判る。「R684」の単独硬化物
は、引張強度が35MPa、弾性率が2.2GPaであ
り、「PCz」の引張強度が80MPa、弾性率が1.
3GPaであった。相加平均値は引張強度が58MP
a、弾性率が1.75GPaであった。
【0155】また、実施例1と同様にして、SEM及び
TEMを用いて、実施例5の塗膜状樹脂複合体の断面構
造を観察したが、何れの方法でも相構造を観察すること
ができなかった。尚、「R684」は25℃で流動性が
見られた。比較例5として、150℃で2時間熱処理を
施しただけで、第2’照射工程を施していない硬化塗膜
の引張特性を測定した。引張強度が57MPa、弾性率
が1.6GPaであり、反応率は70%であった。尚、
R684の反応率は固体高分解能NMRのC=0ピーク
の面積比より求めた。
【0156】[実施例6、比較例6]架橋重合性単量体
として、「ウレタンアクリレート AH−600」(共
栄社化学株式会社;以下、「AH600」と略記する)
7g、光重合開始剤として、「イルガキュア184」
0.14g及び鎖状重合体として、「PKHH」(ユニ
オン・カーバーイド株式会社製のフェノキシ樹脂)3g
をテトラヒドロフラン70gに溶解しエネルギー線硬化
性組成物(6)を得た。
【0157】実施例1のエネルギー線硬化性組成物
(1)に代えて、エネルギー線硬化性組成物(6)を用
い、実施例1と同様な方法で未硬化の無色透明の塗膜状
の賦形物を得た。該賦形物は100℃に加熱すると流動
性が見られた。該賦形物を室温(25℃)に保持し窒素
雰囲気下で紫外線を照射した。無色透明な半硬化塗膜
(120μm)が得られた。半硬化塗膜のガラス転移温
度は約61℃、反応率は60%であり、150℃に加熱
しても流動性は見られなかった。
【0158】この塗膜を120℃で4時間熱処理を施し
た。無色透明な塗膜が得られた。光透過率は89%であ
った。熱処理後の塗膜を120℃に保持して、紫外線照
射したところ、光透過率89%の無色透明な塗膜状樹脂
複合体が得られた。反応率は88%であった。実施例6
の塗膜状樹脂複合体の引張破壊試験を行った結果、引張
強度が76MPa、弾性率が2.0GPaであった。後
述する比較例6及び相加平均値に比べ、大きく特性が向
上しているのが判る。「AH600」の単独硬化物は、
引張強度が62MPa、弾性率が1.85GPaであ
り、「PKHH」の引張強度が63MPa、弾性率が
1.9GPaであった。相加平均値は引張強度が62M
Pa、弾性率が1.86GPaとなる。
【0159】また、実施例1と同様にして、SEM及び
TEMを用いて、実施例6の塗膜状樹脂複合体の断面構
造を観察したが、何れの方法でも相構造を観察すること
ができなかった。動的粘弾性測定でガラス転移温度を測
定したところ、tanδピークは95℃付近に大きなピ
ーク、72℃付近に肩付きピークが見られ、相分離して
いることが確認された。また、「AH600」は25℃
で流動性が見られた。比較例6として、120℃で4時
間熱処理を施しただけで、第2’照射工程を施していな
い硬化塗膜の引張特性を測定した。引張強度が50MP
a、弾性率が1.4GPaであった。
【0160】[実施例7、比較例7]架橋重合性単量体
として、「ライトアクリレート PTMGA-250」
(共栄社化学株式会社のポリテトラメチレングリコール
ジアクリレート;以下、「PTMGA250」と略記す
る)6g、光重合開始剤として、「イルガキュア18
4」0.12g及び鎖状重合体して、「クリアパクト
TS?50」(大日本インキ化学工業株式会社製のメチ
ルメタクリレートとスチレンの共重合体;以下、「MS
樹脂」と省略する。)4gを塩化メチレン80gに溶解
し、エネルギー線硬化性組成物(7)を得た。
【0161】実施例1のエネルギー線硬化性組成物
(1)に代えて、エネルギー線硬化性組成物(7)を用
いて、実施例1と同様な方法で未硬化の無色透明の塗膜
状の賦形物を得た。該賦形物は100℃に加熱すると流
動性が見られた。賦形物を室温(25℃)に保持し窒素
雰囲気下で紫外線を照射した。無色透明な半硬化塗膜
(120μm)が得られた。硬化塗膜のガラス転移温度
は約90℃、反応率は73%、150℃に加熱しても流
動性は見られなかった。
【0162】この塗膜を120℃で4時間熱処理を施し
た。無色透明な塗膜が得られた。光透過率は90%であ
った。熱処理後の塗膜を120℃に保持して、紫外線照
射したところ、光透過率90%の無色透明な塗膜状樹脂
複合体が得られ、反応率は93%であった。実施例7の
塗膜状樹脂複合体の引張破壊試験を行った結果、引張強
度が42MPa、弾性率が1.5GPaであった。後述
する比較例7及び相加平均値に比べ、大きく特性が向上
しているのが判る。
【0163】「PTMGA250」の単独硬化物は、引
張強度が11MPa、弾性率が0.3GPaであり、
「MS樹脂」の引張強度が68MPa、弾性率が2.6
GPaであった。相加平均値は引張強度が31MPa、
弾性率が1.2GPaとなる。また、実施例1と同様に
して、SEM及びTEMを用いて、実施例6の塗膜状樹
脂複合体の断面構造を観察したが、何れの方法でも相構
造を観察することができなかった。
【0164】「PTMGA250」は25℃で流動性が
見られた。比較例7として、120℃で4時間熱処理を
施しただけで、第2照射工程を施していない硬化塗膜の
引張特性を測定した。引張強度が30MPa、弾性率が
0.8GPa、反応率は76%であった。
【0165】[実施例8、比較例8]架橋重合性単量体
として、「ニューフロンティア PE−200」(第一
工業製薬株式会社製のポリエチレングリコールジアクリ
レート;以下、「PE200」と略記する)6g、光重
合開始剤として、「イルガキュア184」0.12g及
び鎖状重合体として、「スチレン−アクリロニトリル共
重合体」(サイエンティフィック・ポリマー社製、アク
リロニトリル32%含、Mw=185000;以下、
「AS樹脂」と省略する。)4gを温水で加熱溶解し
て、エネルギー線硬化性組成物(8)を得た。
【0166】エネルギー線硬化性組成物(8)を加熱下
でガラス板に塗布して未硬化の無色透明の塗膜状賦形物
を得た。該賦形物を室温(25℃)に保持し窒素雰囲気
下で強度10mW/cm2の紫外線を5秒間照射し、無
色透明な半硬化塗膜(120μm)を得た。半硬化塗膜
の反応率は約46%、透明性は90%、ガラス転移温度
は約43℃であった。紫外線源は10Wの高圧水銀ラン
プ(コアラ社製)を使用した。
【0167】この半硬化塗膜を100℃で2時間保持し
相分離させた。次いで、相分離後の塗膜を100℃で強
度70mW/cm2の紫外線を照射し、光透過率90%
の無色透明な塗膜状樹脂複合体を得た。塗膜状樹脂複合
体の反応率は94%であった。実施例8の塗膜状樹脂複
合体の引張破壊試験を行った結果、引張強度が55MP
a、弾性率が1.6GPaであった。
【0168】後述する比較例8及び相加平均値に比べ、
大きく特性が向上しているのが判る。「PE200」の
単独硬化物は、引張強度が11MPa、弾性率が0.2
GPaであり、「AS樹脂」の引張強度が80MPa、
弾性率が2.6GPaであった。相加平均値は引張強度
が39MPa、弾性率が1.2GPaである。また、実
施例1と同様にして、TEMを用いて、実施例8の塗膜
状樹脂複合体の相構造を観察したところ、相関長が0.
1μm以下の共連続的構造が観察された。
【0169】比較例8として、エネルギー線硬化性組成
物(4)の未硬化のキャスト塗膜を室温(25℃)で強
度70mW/cm2の紫外線を2分間照射し、塗膜状樹
脂複合体を作製して引張特性を測定した。引張強度が2
8MPa、弾性率が0.9GPaであった。また、比較
例8の樹脂複合体の反応率は82%、透明性は90%で
あった。十分に紫外線を照射したが、高い重合度は得ら
れなかった。TEMを用いて、比較例8の相構造観察を
行ったが、相構造は観察できなかった。
【0170】[実施例9、比較例9]架橋重合性単量体
として、「エポキシエステル 200EA」(共栄社化
学株式会社のエポキシエステル ジアクリレート;以
下、「200EA」と省略する。)6g、光重合開始剤
として、「イルガキュア184」0.12g及び鎖状重
合体として、「ポリビニルホルマール」(サイエンティ
フィックポリマー株式会社製、Mw=7万、ホルマール
80%、アセテート12%;以下、「PVF」と省略す
る。)4gをテトラヒドロフラン80gに溶解して、エ
ネルギー線硬化性組成物(9)を得た。
【0171】実施例1のエネルギー線硬化性組成物
(1)に代えて、エネルギー線硬化性組成物(9)を用
いて、実施例1と同様な方法で未硬化の無色透明の塗膜
状の賦形物を得た。該賦形物を0℃に保持し窒素雰囲気
下で紫外線を30秒間照射した。無色透明な半硬化塗膜
(120μm)が得られた。半硬化塗膜の反応率は52
%、透明性は90%、ガラス転移温度は約65℃であっ
た。
【0172】この半硬化塗膜を100℃で1時間保持
し、相分離を行った。無色透明な塗膜が得られた。相分
離後の塗膜を100℃に保持して、紫外線を照射したと
ころ、反応率が92%、光透過率90%の無色透明な塗
膜状樹脂複合体が得られた。実施例9の塗膜状樹脂複合
体の引張破壊試験を行った結果、引張強度が35MP
a、弾性率が1.2GPaであった。後述する比較例9
及び相加平均値に比べ、大きく特性が向上しているのが
判る。
【0173】「200EA」の単独硬化物は、引張強度
が5MPa、弾性率が0.1GPaであり、「PVF」
の引張強度が63MPa、弾性率が2.3GPaであっ
た。相加平均値は引張強度が28MPa、弾性率が1.
2GPaである。また、実施例1と同様にして、TEM
を用いて、実施例9の塗膜状樹脂複合体の断面構造を観
察した。相関長が0.1μm程度の共連続的な構造が観
察された。
【0174】比較例9として、エネルギー線硬化性組成
物(9)の未硬化のキャスト塗膜を室温(25℃)で紫
外線を2分間照射し、塗膜状樹脂複合体を作製して引張
特性を測定した。引張強度が20MPa、弾性率が0.
4GPaであった。また、比較例9の樹脂複合体の反応
率は82%、透明性は90%であった。十分に紫外線を
照射したが、高い重合度は得られなかった。TEMを用
いて、比較例9の相構造観察を行ったが、相構造は観察
できなかった。
【0175】[実施例10、比較例10]架橋重合性単
量体として、「BPE4」5g、光重合開始剤として、
「イルガキュア184」と「イルガキュア819」を各
0.1g及び鎖状重合体として、「ポリアリレート(芳
香族ポリエステル)」(U−ポリマー U−100、ユ
ニチカ株式会社製、「PAr」と省略する。)5gを塩
化メチレン80gに溶解して、エネルギー線硬化性組成
物(10)を得た。
【0176】実施例1のエネルギー線硬化性組成物
(1)に代えて、エネルギー線硬化性組成物(10)を
用い、実施例1と同様な方法で未硬化の無色透明の塗膜
状の賦形物を得た。該賦形物を10℃に保持し窒素雰囲
気下で実施例8で用いた強度10mW/cm2の紫外線
を30秒間照射した。無色透明な半硬化塗膜(120μ
m)が得られた。半硬化塗膜の反応率は45%、透明性
は90%、ガラス転移温度は約50℃であった。
【0177】この半硬化塗膜を120℃で1時間保持
し、相分離を行った。無色透明な塗膜が得られた。相分
離後の塗膜を150℃に保持して、紫外線を照射したと
ころ、反応率が90%、光透過率90%の無色透明な塗
膜状樹脂複合体が得られた。実施例10の塗膜状樹脂複
合体の引張破壊試験を行った結果、引張強度が82MP
a、弾性率が2.2GPaであった。後述する比較例1
0及び相加平均値に比べ、大きく特性が向上しているの
が判る。
【0178】「BPE4」の単独硬化物は、引張強度が
42MPa、弾性率が1.40GPaであり、「PA
r」の引張強度が70MPa、弾性率が1.5GPaで
あった。相加平均値は引張強度が56MPa、弾性率が
1.45GPaである。また、実施例1と同様にして、
TEMを用いて、実施例10の塗膜状樹脂複合体の断面
構造を観察した。相関長が0.1μm程度の共連続的な
構造が観察された。
【0179】比較例10として、エネルギー線硬化性組
成物(10)の未硬化のキャスト塗膜を室温(25℃)
で紫外線を2分間照射し、塗膜状樹脂複合体を作製して
引張特性を測定した。引張強度が45MPa、弾性率が
1.2GPaであった。また、比較例10の樹脂複合体
の反応率は75%、透明性は90%であった。十分に紫
外線を照射したが、高い重合度は得られなかった。TE
Mを用いて、比較例10の相構造観察を行ったが、相構
造は観察できなかった。
【0180】
【発明の効果】本発明は一般に脆いエネルギー線重合体
の力学特性、特に引張強度を改善し、しかも光学的に透
明な樹脂複合体を容易に得ることが出来るエネルギー線
重合体と鎖状重合体との樹脂複合体の製造法を提供する
ことができる。
フロントページの続き (72)発明者 穴澤 孝典 千葉県佐倉市大崎台4−35−5 Fターム(参考) 4F204 AA44 EA03 EB01 EK17 EK18 4J011 PA53 PA65 PA66 PA68 PA69 PA84 PA88 PA89 PA90 PA95 PA98 PC02 4J026 AA02 AA17 AA25 AA28 AA38 AA45 AB02 AB07 AB17 AB19 AB40 BA28 DB31 DB36 DB40 FA05 GA06

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)エネルギー線重合性化合物と
    (B)鎖状重合体とを均一に混合したエネルギー線硬化
    性組成物の賦形物に、エネルギー線を照射して該賦形物
    を流動性のない透明な固体状の半硬化物と成し(第1照
    射工程)、次いで該半硬化物を第1照射工程の照射時の
    温度より高い温度で、且つ該半硬化物のガラス転移温度
    (Tg1)以上の温度にて更にエネルギー線を照射する
    第2照射工程を施すことにより、第1照射工程で得た半
    硬化物より相分離が進行し、且つ該半硬化物中のエネル
    ギー線重合性化合物の重合性基の反応率が向上した、相
    分離した硬化物を得ることを特徴とする樹脂複合体の製
    造法。
  2. 【請求項2】 第2照射工程の前に、第1照射工程で得
    られた半硬化物をTg1以上の温度で保持する(相分離
    工程)ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂複合体の
    製造法。
  3. 【請求項3】 相分離工程の温度が、Tg1〜(Tg1
    +150℃)の範囲である請求項2に記載の樹脂複合体
    の製造法。
  4. 【請求項4】 第1照射工程における、エネルギー線照
    射前のエネルギー線硬化性組成物の粘度が100Pa・
    s以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか
    一つに記載の樹脂複合体の製造法。
  5. 【請求項5】 第1照射工程を−50℃〜+150℃の
    範囲の温度で行うことを特徴とする請求項1〜3のいず
    れか一つに記載の樹脂複合体の製造法。
  6. 【請求項6】 第1照射工程により得られる半硬化物中
    のエネルギー線重合性化合物の重合性基の反応率が30
    〜80%である請求項1〜5のいずれか一つに記載の樹
    脂複合体の製造法。
  7. 【請求項7】 第1照射工程により得られる半硬化物が
    膜厚100±20μmでの可視光領域の平行光透過率が
    70%以上の透明性を有するものである請求項1〜6の
    いずれか一つに記載の樹脂複合体の製造法。
  8. 【請求項8】 第2照射工程の照射温度が、第1照射工
    程の照射温度より高い温度であって、且つTg1〜(T
    g1+150℃)の範囲である請求項1〜7のいずれか
    一つに記載の樹脂複合体の製造法。
  9. 【請求項9】 エネルギー線硬化性組成物が、(A)エ
    ネルギー線重合性化合物100重量部に対し、(B)鎖
    状重合体7〜900重量部を含有することを特徴とする
    請求項1〜8のいずれか一つに記載の樹脂複合体の製造
    法。
  10. 【請求項10】 (A)エネルギー線重合性化合物が、
    分子内に重合性炭素・炭素二重結合を2つ以上有する化
    合物である請求項1〜9のいずれか一つに記載の樹脂複
    合体の製造法。
  11. 【請求項11】 (A)エネルギー線重合性化合物が、
    分子内に(メタ)アクリロイル基を有する化合物である
    請求項10に記載の樹脂複合体の製造法。
  12. 【請求項12】 (B)鎖状重合体が、スチレン系重合
    体、ポリスルホン系重合体、ポリカーボネート系重合
    体、ポリエステル系重合体、ポリ塩化ビニル、ポリビニ
    ルアセタール系重合体、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニ
    ル、熱可塑性ポリウレタン、セルロース誘導体、及びポ
    リ(メタ)アクリレート系重合体から選ばれる1種以上
    の重合体である請求項1〜11のいずれか一つに記載の
    樹脂複合体の製造法。
  13. 【請求項13】 樹脂複合体の引張強度が、(A)エネ
    ルギー線重合性化合物の硬化物の引張強度と(B)鎖状
    重合体の引張強度の相加平均値以上であることを特徴と
    する請求項1〜12のいずれか一つに記載の樹脂複合体
    の製造法。
  14. 【請求項14】 樹脂複合体の膜厚100±20μmで
    の可視光領域の光透過率が70%以上であることを特徴
    とする請求項1〜12のいずれか一つに記載の樹脂複合
    体の製造法。
  15. 【請求項15】 樹脂複合体が、2つのガラス転移温度
    を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一
    つに記載の樹脂複合体の製造法。
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