JP2001247774A - ポリマーアロイ及びその製造方法 - Google Patents

ポリマーアロイ及びその製造方法

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JP2001247774A JP2000061325A JP2000061325A JP2001247774A JP 2001247774 A JP2001247774 A JP 2001247774A JP 2000061325 A JP2000061325 A JP 2000061325A JP 2000061325 A JP2000061325 A JP 2000061325A JP 2001247774 A JP2001247774 A JP 2001247774A
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polymer alloy
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JP2000061325A
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English (en)
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Kazutaka Murata
一高 村田
Takanori Anazawa
孝典 穴澤
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Kawamura Institute of Chemical Research
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Kawamura Institute of Chemical Research
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 架橋重合体と熱可塑性樹脂からなるポリ
マーアロイにおいて、架橋重合体のガラス転移温度Tg
cと熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgsのうち、低温
側に現れるガラス転移温度をTgLとし、高温度側に現
れるガラス転移温度をTgHとする場合、当該ポリマー
アロイが3つのガラス転移温度Tg1、Tg2及びTg
3を有し、ポリマーアロイの3つのガラス転移温度Tg
1、Tg2及びTg3が、TgLよりも60℃低い温度
とTgHとの間に存在するポリマーアロイ。 【効果】 1つのガラス転移温度を示すポリマーアロイ
と比較して、力学的特性に優れており、また、2つのガ
ラス転移温度を示すポリマーアロイと比較しても同等以
上の力学物性を示し、かつ透明性に優れたものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、透明性を有し、破
断強度、破断伸度、弾性率、耐衝撃性、耐摩耗性などの
力学特性に優れたポリマーアロイ及びその製造方法に関
し、更に詳しくは、熱可塑性樹脂と架橋重合体から成る
ポリマーアロイ及びその製造方法に関する。本発明のポ
リマーアロイは、保護フィルム、保護膜、各種コーティ
ング材などとして各種分野で使用される。
【0002】
【従来の技術】活性エネルギー線硬化型の組成物は、硬
化時間が極めて短く、作業効率が良い上、溶剤の揮発に
よる環境汚染がないことから、塗料、封止剤などに広く
利用されている。しかしながら、該組成物からなる硬化
樹脂は、軟質系で表面硬度、耐熱性、強度が不十分なも
のであるか、或いは、硬質系で堅くて脆いためにクラッ
クが発生し易いものであるか、のどちらかの範疇に属
し、同程度の剛性を有する熱可塑性樹脂と比較して、強
靱性に劣っていた。このような欠点を改良するために、
活性エネルギー線硬化型樹脂を熱可塑性樹脂と樹脂複合
体化することにより、活性エネルギー線硬化型樹脂を改
良する試みがなされている。
【0003】特開平11−80556号公報には、ビス
フェノール型(メタ)アクリレートをアクリル樹脂、ポ
リスルホン樹脂、ポリイミド樹脂によって改良する方法
が開示されている。また、1998年度財団法人川村理
化学研究所報告には、エチレンオキサイド変性ビスフェ
ノール型アクリレートをポリカーボネートによって改良
する方法が開示されている。また、特開平7−3399
1号公報には、感光性樹脂と熱可塑性樹脂とからなり、
この両者が擬似的均一相溶構造を形成して成る、ガラス
転移点(Tg)が1つの樹脂複合体、及びその製造方法
が開示されている。さらに、特開平7−102175号
公報には、感光性樹脂と熱可塑性樹脂とを溶剤に溶解
し、冷却・相分離させた後に光照射して感光性樹脂を硬
化させる樹脂複合体の製造方法、及び、該製造方法によ
り得られる共連続又は球状ドメイン構造を有し、2つの
Tgを示す樹脂複合体が開示されている。さらにまた、
1998年度財団法人川村理化学研究所報告には、エチ
レンオキサイド変性ビスフェノール型アクリレートとポ
リサルホンとからなり、この両者が共連続構造を形成し
て成る樹脂複合体及びその製造方法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記し
た特開平11−80556号公報に記載の方法では、樹
脂の親和性を向上させるために、N,N−ジメチルアク
リルアミドなどのアミド系の重合性化合物の併用が必須
であるため、雰囲気湿度により樹脂の水分吸収度が変化
し、特性が大きく変化するという問題があった。
【0005】また、1998年度財団法人川村理化学研
究所報告に記載の方法では、エチレンオキサイド変性ビ
スフェノール型アクリレートとポリカーボネートとから
成る樹脂組成物の場合、明確な相分離構造を持たない疑
似相溶系に近いものであって、力学的特性の向上の程度
は、せいぜい紫外線硬化樹脂の硬化物とポリカーボネー
トとの両者の特性の、組成の重み付き相加平均の程度で
あり、構成素材の特性が十分に生かされたものとは言え
なかった。
【0006】また、特開平7−33991号公報に記載
の樹脂複合体は、擬似相溶系であるため、力学的特性の
向上の程度は、せいぜい感光性樹脂と熱可塑性樹脂の両
者の特性の相加平均の程度であり、構成素材の特性を十
分発揮させたものとはいえなかった。
【0007】さらに、特開平7−102175号公報に
記載の方法は、樹脂との親和性に乏しいポリスルホン系
樹脂を使用し、有機溶媒を添加して均一混合状態とし、
該均一混合溶液を急速に冷却してミクロ相分離を発生さ
せ、その状態で急速に樹脂を硬化させて該相分離構造を
固定する方法であるため、僅かな製造条件の違いによっ
て特性が大きく低下しがちであり、製造安定性や製品の
均一性に欠ける上、得られる樹脂複合体もボイドが発生
するなどの原因で特性向上の程度も十分なものではなか
った。
【0008】さらにまた、1998年度財団法人川村理
化学研究所報告に記載の方法は、エチレンオキサイド変
性ビスフェノール型アクリレートとポリサルホンから成
る網目状の共連続構造を有する完全に相分離を進行させ
たものであり、構成素材の特性を十分発揮させたものと
はいえなかった。
【0009】本発明が解決しようとする課題は、一般に
脆く力学的特性が不足している活性エネルギー線架橋重
合体の力学特性が改良され、しかも、光学的に透明なポ
リマーアロイを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者等は上記問題を
解決するため鋭意検討した結果、ガラス転移温度(以
下、Tgと略称する。)を3つ有する構造を形成する
と、光学的透明性を保持しながら力学的特性を最も向上
させ得ること、及び製造安定性も高いことを見出し本発
明を完成するに到った。
【0011】即ち、本発明は上記課題を解決するため
に、(I)架橋重合体と熱可塑性樹脂からなるポリマー
アロイにおいて、架橋重合体のガラス転移温度Tgcと
熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgsのうち、低温側に
現れるガラス転移温度をTgLとし、高温度側に現れる
ガラス転移温度をTgHとする場合、当該ポリマーアロ
イが3つのガラス転移温度Tg1、Tg2及びTg3を
有し、ポリマーアロイの3つのガラス転移温度Tg1、
Tg2及びTg3が、TgLよりも60℃低い温度とT
gHとの間に存在することを特徴とするポリマーアロイ
を提供する。
【0012】また、本発明は上記課題を解決するため
に、(II)ポリマーアロイが、光透過率が70%以上の
塗膜状又はフィルム状成形物である上記(I)項に記載
のポリマーアロイを提供する。
【0013】また、本発明は上記課題を解決するため
に、 (III)架橋重合体が、活性エネルギー線により架
橋重合可能な化合物の架橋重合体である上記(I)又は
(II)項に記載のポリマーアロイを提供する。
【0014】また、本発明は上記課題を解決するため
に、(IV)熱可塑性樹脂が、ポリサルホン系重合体、ポ
リカーボネート系重合体、フェノキシ樹脂、塩素含有重
合体なる群から選ばれる1以上の線状重合体である上記
(I)、(II)又は (III)項に記載のポリマーアロイ
を提供する。
【0015】さらに、本発明は上記課題を解決するため
に、(V)活性エネルギー線により硬化し架橋重合体を
与える化合物と熱可塑性樹脂との均一混合液の賦形物に
活性エネルギー線を照射することを特徴とする架橋重合
体と熱可塑性樹脂からなる上記(I)項に記載のポリマ
ーアロイの製造方法を提供する。
【0016】また、本発明は上記課題を解決するため
に、(VI)活性エネルギー線により硬化し架橋重合体を
与える化合物が、1分子中に2〜6個の(メタ)アクリ
ロイル基を有し、かつ、分子量が100〜1000の範
囲にある化合物である上記(V)項に記載のポリマーア
ロイの製造方法を提供する。
【0017】また、本発明は上記課題を解決するため
に、(VII) 活性エネルギー線により硬化し架橋重合体
を与える化合物と熱可塑性樹脂とを、この両者を溶解す
る溶剤に溶解して均質混合溶液を調製し、当該均質溶液
を任意の形状に賦形し、該賦形物から溶剤を揮発除去し
て、該化合物と熱可塑性樹脂の均一混合液とした後、活
性エネルギー線を照射する上記(V)又は(VI)項に記
載のポリマーアロイの製造方法を提供する。
【0018】また、本発明は上記課題を解決するため
に、(VIII)活性エネルギー線が紫外線である上記
(V)、(VI)又は(VII) 項に記載のポリマーアロイ
の製造方法を提供する。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明のポリマーアロイは、ポリ
マーアロイを構成する架橋重合体のガラス転移温度Tg
cと本ポリマーアロイを構成する熱可塑性樹脂のガラス
転移温度Tgsのうち低温側に現れるガラス転移温度を
TgLとして、高温度側をTgHとする場合、TgLよ
りも60℃低い温度(TgL−60℃)とTgHとの間
に、3つのガラス転移温度Tg1、Tg2及びTg3
(但し、Tg1<Tg2<Tg3とする)を有すること
を特徴とする。但し、Tgc<Tgs(即ち、TgL=
Tgc、TgH=Tgs)であっても良いし、Tgs<
Tgc(即ち、TgL=Tgs、TgH=Tgc)であ
ってもよい。Tgc=Tgsの場合やTgc≒Tgsの
場合には、本発明は判別できなくなる場合もある。
【0020】本発明のポリマーアロイのTgは、通常、
架橋重合体のガラス転移温度Tgcと熱可塑性樹脂のガ
ラス転移温度Tgsとの間に現れるが、TgcとTgs
のうち、低温側に現れるTg(TgL)より60℃以内
の範囲で低温側に現れる場合も見られる。これは、一方
の樹脂成分が架橋性重合体であるために、ポリマーアロ
イとすることにより、架橋性重合物の架橋密度が低下し
たり、或いは、熱可塑性樹脂が主成分である相に架橋性
重合物のモノマーやオリゴマーが取り込まれるなどの理
由によると推測される。また、そのため、Tgc=Tg
sの場合やTgc≒Tgsの場合においても、Tg1、
Tg2、Tg3の3つのTgが観察される場合があり、
これらも本発明に含まれる。(TgL−60℃)より低
い温度域にTg1が発現する場合には、通常、可塑化効
果が大きくなって、強度などの力学物性が著しく低下す
る。
【0021】ガラス転移温度(Tg)は任意の測定方
法、例えば、動的粘弾性、示差熱量分析(DSC)など
で測定することができるが、高感度であることから動的
粘弾性測定によることが好ましい。動的粘弾性の測定周
波数や昇温速度は、試料の特性に合わせて任意に設定す
ることができる。動的粘弾性測定によるTgは、tan
δ(=損失弾性率/貯蔵弾性率)の温度依存性のグラフ
におけるピークとして与えられる。Tg1、Tg2及び
Tg3のいずれかのピークが小さく、かつ、隣のピーク
と近接している場合には、隣のピークの肩として測定さ
れる場合もあるが、この場合には、肩の位置にTgが存
在するものと見なす。
【0022】一般に、架橋重合体のガラス転移温度Tg
cと熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgsとの間にTg
が1つ存在する場合には、このポリマーアロイは完全に
(もしくは疑似的に)相溶状態であることを示してお
り、力学特性は、一般的にそれを構成する重合体の特性
の、組成の重み付き相加平均となる。また、構成する重
合体が光学的に透明である場合には、ポリマーアロイも
通常透明となる。
【0023】一般に、TgcとTgsとの間に、もしく
はこれらのTgとそれぞれ一致して、2つのTgを有す
る場合には、ポリマーアロイを構成する重合体が相分離
していることを示しており、このポリマーアロイの力学
特性は、相溶系に比べてより高くなる場合もあり、より
低くなる場合もあり、相分離の形状によって大きく変わ
りうることが知られている。また、光学的には通常不透
明である。
【0024】本発明のポリマーアロイは、その力学特性
を、該ポリマーアロイを構成する重合体の特性の、組成
の重み付き相加平均以上にすることができる。また、透
明性についても、本発明のポリマーアロイは相分離して
いながら、光学的に透明な成形物とすることができる。
本発明の3つのTgを示すポリマーアロイの微細構造に
ついては現在のところ定かではないが、ポリマーアロイ
が相溶した状態(Tgが1つ)と、相分離した構造(T
gが2つ)が混在する状態、又はこれら二者の中間の相
分離状態と考えられる。
【0025】本発明において、製造条件を変化させた場
合の、tanδの3つのピークの相対的な大きさは、通
常、Tg1とTg3のピークは同調して増減し、Tg2
のピークはこれらとは相補的に変化する。一般的に言っ
て、Tg1とTg3のピークが小さい場合には、ポリマ
ーアロイの特性は1つのピークを示す相溶系に近づき、
Tg2のピークが小さい場合には、2つのピークを示す
相分離系に近づく。本発明において、Tg1、Tg2、
Tg3のピークの大きさの相対的な関係は、系や用途・
目的によって、好ましい値に制御することができる。こ
れによって、本発明のポリマーアロイは、光学的透明性
を保持しながら(擬似的)相溶系と同等以上の力学物性
を発揮させることができる。
【0026】本発明のポリマーアロイにおいては、Tg
1、Tg2、Tg3は、全て(TgL−60℃)とTg
Hとの間(一致しても良い)にあるが、(TgL−60
℃)とTg1の乖離の程度や、Tg3とTgHの乖離の
程度は製造条件や系によって変わりうる。一般的にはこ
れらの乖離が大きいほど(即ち、Tg1、Tg2、Tg
3がお互いに近いほど)相溶系の特性に近づき、これら
の乖離が小さいほど(即ち、Tg1、Tg2、Tg3が
互いに離れているほど)相分離系のそれに近づく。本発
明のポリマーアロイは、製造条件の他、製造後の熱処理
によっても、これらの関係を多少変化させうる。先に述
べたtanδの3つのピークの相対的な大きさの関係
と、Tg1、Tg2、Tg3間の距離の関係は、通常同
時に変化する。
【0027】本発明のポリマーアロイは、任意の形状の
成形物に成形できる。例えば、塗膜、フィルム(シー
ト、リボンなどを含む)、繊維、注型物、含浸物、その
他複雑な形状でありうる。しかし、架橋重合体として活
性エネルギー線架橋重合体を使用する場合には、製造の
都合上、活性エネルギー線が到達しうる厚みである必要
があり、厚みは5mm未満であることが好ましく、厚みは
薄く、一定であることが好ましい。従って、用途にもよ
るが、厚みが好ましくは500μm以下、さらに好まし
くは200μm以下のフィルム状又は塗膜状であること
が好ましい。また、特に高い透明度を必要とする場合に
は、膜厚10μm以下のフィルム状又は塗膜状が好まし
い。
【0028】本発明のポリマーアロイは相分離構造が不
明瞭であり、光学顕微鏡、或いは電子顕微鏡では相分離
構造を明確に確認できない場合がある。この場合、成形
物がフィルム状又は塗膜状である場合には、光学的には
透明体となる。光透過率は、200μm 程度の厚みのフ
ィルムや塗膜の場合、通常70%以上、より良好な場合
には80%以上である。
【0029】本発明の、架橋重合体と熱可塑性樹脂から
なるポリマーアロイは、架橋重合性化合物、即ち架橋重
合して架橋重合体となる化合物、と熱可塑性樹脂とを均
一に混合した状態で、架橋重合性化合物を架橋重合させ
る方法で得ることができる。
【0030】本発明の架橋重合体は、活性エネルギー線
架橋重合体、即ち、活性エネルギー線の照射により硬化
して架橋重合体となる化合物が硬化した架橋重合体;熱
硬化による架橋重合体;熱、活性エネルギー線、水など
による後架橋重合体などであってよいが、活性エネルギ
ー線架橋重合体であることが、目的とする構造が形成さ
れる条件範囲の広さ、高い生産性等から好ましい。
【0031】熱硬化による架橋重合体は任意であり、例
えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂などが
挙げられる。活性エネルギー線架橋重合体を与える化合
物としては、例えば、本発明の製造方法で使用できる活
性エネルギー線硬化性化合物が挙げられる。
【0032】本発明に使用する熱可塑性樹脂は、架橋重
合性化合物と均一に混合するものであり、好ましくは2
00℃以下の温度で均一に混合するものであり、さらに
好ましくは100℃以下の温度で均一に混合するもので
ある。本発明において、熱可塑性樹脂とは、架橋重合体
でない重合体をいい、直鎖状重合体と枝分かれ重合体を
含む。従って、軟化点が分解温度より高く、熱可塑性を
示さない重合体も含む。本発明で使用する熱可塑性樹脂
は、非晶性であっても結晶性であってもよい。結晶性重
合体の場合には、その融点が200℃以下のものが好ま
しく、融点が150℃以下のものが特に好ましい。熱可
塑性樹脂として用いる結晶性重合体の融点が高いもの
は、200℃以下の温度では架橋重合体を与える化合物
との相溶性に劣り傾向にあるので、好ましくない。
【0033】本発明のポリマーアロイで使用できる熱可
塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−
メチルスチレン、スチレン/マレイン酸共重合体、スチ
レン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/メチルメ
タクリレート共重合体の如きスチレン系重合体;ポルス
ルホンやポリエーテルスルホンの如きポリスルホン系重
合体;ポリブチルメタクリレートの如きポリ(メタ)ア
クリレート系重合体;ポリアクリロニトリル系重合体;
ポリマレイミド系重合体;ビスフェノールAタイプポリ
カーボネート、ビスフェノールZタイプポリカーボネー
ト等のポリカーボネート系重合体;ニトロセルロース、
酢酸セルロース、エチルセルロースの如きセルロース誘
導体;ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体
の如き酢酸ビニル系重合体;熱可塑性ポリウレタン系重
合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポ
リエチレンや塩素化ポリプロピレンの如き塩素含有重合
体;ポリアミド系重合体;ポリ乳酸系重合体;ポリイミ
ド系重合体;ポリフェニレンオキサイド;ポリフェニレ
ンサルファイド/ポリスルホン共重合体の如きポリエー
テル系やポリチオエーテル系重合体;テレフタル酸やイ
ソフタル酸などより得られる芳香族ポリエステル系重合
体;ポリカプロラクトンの如きポリエステル系重合体;
フェノキシ樹脂;ポリエチレングリコール系重合体、ポ
リビニルピロリドン系重合体;ポリビニルホルマールや
ポリビニルブチラールの如きビニルアセタール系重合
体;ブタジエンゴム、アクリロニトリロ−ブタジエンゴ
ム、スチレン−ブタジエンゴムの如きジエン系ゴム;ク
ロロプレンゴム、イソプレンゴムの如きプレン系ゴム;
アクリルゴムの如き未架橋ゴム、などが挙げられる。
【0034】熱可塑性樹脂は、向上させるべき特性、例
えば、破断強度、破断伸度、弾性率、耐衝撃性、耐摩擦
性、屈折率、親水性、などにより適当なものを選択する
ことができる。例えば、弾性率を向上させるためには、
芳香族ポリエステル系重合体などの高弾性率の熱可塑性
樹脂を選択することができるし、破断伸度を向上させる
ためには、ポリウレタン系重合体などの高破断伸度の熱
可塑性樹脂を選択することができる。
【0035】これらの中で、ポリスルホン系重合体、ポ
リカーボネート系重合体、フェノキシ樹脂、塩素含有重
合体が、力学特性改良効果においてバランスが取れてい
る、あるいは、本発明に使用可能な架橋重合体の範囲が
広い、などの理由で好ましい。
【0036】なお、ポリメチルメタクリレートや、ポリ
メチルメタクリレートを主成分とするポリメチルアクリ
レート等との共重合体は、活性エネルギー線硬化性架橋
重合体との相溶性が過度に高く、Tgが1つであるポリ
マーアロイとなりがちであり、Tgが3つのポリマーア
ロイを得ることがかなり困難であるため好ましいものと
はいえない。一方、ポリエーテルスルホンは、架橋重合
体として活性エネルギー線硬化性架橋重合体を使用する
場合には、一般に相溶性が過度に低く、Tgが3つのポ
リマーアロイを得ることがかなり困難であるため、好ま
しいものとはいえない。
【0037】本発明のポリマーアロイには、その他の成
分、例えば、フッ素系化合物、シリコーンなどの滑剤;
色素、顔料、蛍光色素などの着色剤や紫外線吸収剤;酸
化防止剤;エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂;防黴剤;
抗菌剤;無機や有機の粉末;強化繊維等を混合あるいは
共重合の形で含有させることができる。また、繊維強化
プラスチック、ラミネートシートなどの複合体とするこ
とも可能である。
【0038】本発明のポリマーアロイは、例えば、下記
に示す本発明の製造方法により製造することができる。
【0039】即ち、本発明の製造方法は、活性エネルギ
ー線により硬化し架橋重合体を与える化合物と熱可塑性
樹脂との均一混合液の賦形物に活性エネルギー線を照射
することを特徴とする架橋重合体と熱可塑性樹脂からな
るポリマーアロイであって、架橋重合体のガラス転移温
度Tgcと熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgsのう
ち、低温側に現れるガラス転移温度をTgLとし、高温
度側に現れるガラス転移温度をTgHとする場合、当該
ポリマーアロイが3つのガラス転移温度Tg1、Tg2
及びTg3を有し、ポリマーアロイの3つのガラス転移
温度Tg1、Tg2及びTg3が、TgLよりも60℃
低い温度とTgHとの間に存在するポリマーアロイの製
造方法である。
【0040】本発明の製造方法では、まず、活性エネル
ギー線架橋重合性化合物、即ち活性エネルギー線の照射
により硬化して架橋重合体を与える化合物、と熱可塑性
樹脂とを混合し、相溶した均一混合液(以下、この均一
混合液を単に「均一混合液」と略称する場合がある)を
調製する。
【0041】活性エネルギー線架橋重合性化合物につい
ては、使用する熱可塑性樹脂と均一混合液を形成するこ
とが可能なものであれば任意である。活性エネルギー線
架橋重合性化合物は、好ましくは200℃以下の温度、
さらに好ましくは100℃以下の温度で均一混合液を形
成可能なものである。活性エネルギー線架橋重合性化合
物は、ラジカル重合性、アニオン重合性、カチオン重合
性等任意のものであってよい。活性エネルギー線架橋重
合性化合物は、重合開始剤の非存在下で架橋重合するも
のに限らず、重合開始剤の存在下でのみ活性エネルギー
線により架橋重合するものも使用することができる。活
性エネルギー線架橋重合性化合物としては、重合性の炭
素−炭素二重結合を分子内に2つ以上有するものが好ま
しく、中でも、反応性の高い(メタ)アクリル系化合物
やビニルエーテル類、また光重合開始剤の不存在下でも
硬化するマレイミド系化合物が好ましい。
【0042】活性エネルギー線架橋重合性化合物は、単
独で用いることもでき、2種類以上を混合して用いるこ
ともできる。活性エネルギー線架橋重合性化合物は、単
独では本発明のポリマーアロイを形成し得ず、他の成分
と混合使用した場合にのみ可能なもの、例えば、固体状
の化合物であっても良い。また、硬度、反応性などを制
御するために、単独では架橋重合体を与えない単官能の
活性エネルギー線重合性化合物を混合使用することもで
きる。
【0043】活性エネルギー線架橋重合性化合物として
好ましく使用することができる(メタ)アクリル系単量
体としては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)
アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アク
リレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリ
レート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレ
ート、2,2’−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキ
シポリエチレンオキシフェニル)プロパン、2,2’−
ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレン
オキシフェニル)プロパン、ヒドロキシジピバリン酸ネ
オペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシク
ロペンタニルジアクリレート、ビス(アクロキシエチ
ル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、N−メチレン
ビスアクリルアミドの如き2官能単量体;トリメチロー
ルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロール
エタントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクロキシ
エチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス
(アクロキシエチル)イソシアヌレートの如き3官能単
量体;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレー
トの如き4官能単量体;ジペンタエリスリトールヘキサ
(メタ)アクリレートの如き6官能単量体、などが挙げ
られる。
【0044】また、活性エネルギー架橋重合性化合物と
して、架橋重合性の重合性オリゴマー(プレポリマーと
も呼ばれる)を用いることもでき、例えば、重量平均分
子量が500〜50000のものが挙げられる。そのよ
うな架橋重合性の重合性オリゴマーしては、例えば、エ
ポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸エステル、ポリエーテ
ル樹脂の(メタ)アクリル酸エステル、ポリブタジエン
樹脂の(メタ)アクリル酸エステル、分子末端に(メ
タ)アクリロイル基を有するポリウレタン樹脂、などが
挙げられる。
【0045】マレイミド系の架橋重合性の活性エネルギ
ー線架橋重合性化合物としては、例えば、4,4’−メ
チレンビス(N−フェニルマレイミド)、2,3−ビス
(2,4,5−トリメチル−3−チエニル)マレイミ
ド、1,2−ビスマレイミドエタン、1,6−ビスマレ
イミドヘキサン、トリエチレングリコールビスマレイミ
ド、N,N’−m−フェニレンジマレイミド、m−トリ
レンジマレイミド、N,N’−1,4−フェニレンジマ
レイミド、N,N’−ジフェニルメタンジマレイミド、
N,N’−ジフェニルエーテルジマレイミド、N,N’
−ジフェニルスルホンジマレイミド、1,4−ビス(マ
レイミドエチル)−1,4−ジアゾニアビシクロ−
[2,2,2]オクタンジクロリド、4,4’−イソプ
ロピリデンジフェニル=ジシアナート・N,N’−(メ
チレンジ−p−フェニレン)ジマレイミドの如き2官能
マレイミド;N−(9−アクリジニル)マレイミドの如
きマレイミド基とマレイミド基以外の重合性官能基とを
有するマレイミド、などが挙げられる。
【0046】マレイミド系の架橋重合性オリゴマーとし
ては、例えば、ポリテトラメチレングリコールマレイミ
ドカプリエート、ポリテトラメチレングリコールマレイ
ミドアセテートの如きポリテトラメチレングリコールマ
レイミドアルキレート、などが挙げられる。
【0047】活性エネルギー線架橋重合性化合物は、分
子内に2〜6個の(メタ)アクリロイル基又はマレイミ
ド基を有するものが好ましく、分子量(分子量分布を有
するものである場合には平均分子量)が100〜100
0の化合物であるものが好ましい。分子量がこの範囲を
越えると、熱可塑性樹脂との相溶性に劣る傾向にある。
しかしながら、これを越える分子量の化合物であって
も、後述の単官能の活性エネルギー線重合性化合物を添
加混合することで使用可能となることもある。(平均)
分子量がこの範囲未満であると、揮発性が強まり、作業
環境の悪化をもたらす傾向にある。
【0048】単官能の活性エネルギー線重合性化合物と
して使用することができる単官能(メタ)アクリル系単
量体としては、例えば、メチルメタクリレート、アルキ
ル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリ
レート、アルコキシポリエチレングリコール(メタ)ア
クリレート、フェノキシジアルキル(メタ)アクリレー
ト、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリ
レート、アルキルフェノキシポリエチレングリコール
(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレ
ングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキ
ル(メタ)アクリレート、グリセロールアクリレートメ
タクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレー
ト、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレ
ート、2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシ
プロピルアクリレート、エチレンオキサイド変性フタル
酸アクリレート、ω−アルコキシカプロラクトンモノア
クリレート、2−アクリロイルオキシプロピルハイドロ
ジェンフタレート、2−アクリロイルオキシエチルコハ
ク酸、アクリル酸ダイマー、2−アクリロイスオキシプ
ロピリヘキサヒドロハイドロジェンフタレート、フッ素
置換アルキル(メタ)アクリレート、塩素置換アルキル
(メタ)アクリレート、シラノ基を有する(メタ)アク
リレート、などが挙げられる。
【0049】単官能の活性エネルギー線重合性化合物と
して使用できる単官能マレイミド系単量体としては、例
えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、
N−ブチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、の如
きN−アルキルマレイミド;N−シクロヘキシルマレイ
ミドの如きN−脂環族マレイミド;N−ベンジルマレイ
ミド;N−フェニルマレイミド、N−(アルキルフェニ
ル)マレイミド、N−ジアルコキシフェニルマレイミ
ド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、2,3−
ジクロロ−N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミ
ド、2,3−ジクロロ−N−(2−エチル−6−メチル
フェニル)マレイミドの如きN−(置換又は非置換フェ
ニル)マレイミド;N−ベンジル−2,3−ジクロロマ
レイミド、N−(4’−フルオロフェニル)−2,3−
ジクロロマレイミドの如きハロゲンを有するマレイミ
ド;ヒドロキシフェニルマレイミドの如き水酸基を有す
るマレイミド;N−(4−カルボキシ−3−ヒドロキシ
フェニル)マレイミドの如きカルボキシ基を有するマレ
イミド;N−メトキシフェニルマレイミドの如きアルコ
キシ基を有するマレイミド;N−[3−(ジエチルアミ
ノ)プロピル]マレイミドの如きアミノ基を有するマレ
イミド;N−(1−ピレニル)マレイミドの如き多環芳
香族マレイミド;N−(ジメチルアミノ−4−メチル−
3−クマリニル)マレイミド、N−(4−アニリノ−1
−ナフチル)マレイミドの如き複素環を有するマレイミ
ド、などが挙げられる。
【0050】本発明における架橋重合性化合物と熱可塑
性樹脂との配合の割合は、用いる樹脂の種類により異な
るが、架橋重合物と熱可塑性樹脂との混合重量比が9
0:10〜10:90の範囲が好ましく、80:20〜
20:80の範囲の範囲が特に好ましい。
【0051】熱可塑性樹脂は、好ましくは200℃以下
の温度で、使用する活性エネルギー線架橋重合性化合物
と均一混合液を形成することが可能なものであり、本発
明のポリマーアロイに使用可能な熱可塑性樹脂として例
示した材料の中から選択使用することができる。勿論、
熱可塑性樹脂は、単独で用いることもできるし、二種類
以上を混合して使用することもできる。
【0052】均一混合液は、架橋重合性化合物と熱可塑
性樹脂が均一に混合した混合液である。但し、例えば、
鎖状高分子の分子量分布などに起因する極少量の不溶部
分が存在することは許容される。本発明の均一混合液の
重合温度における粘度は1〜1000000cps(1
-31〜102Pa・s)の範囲が好ましく、5〜100
000cps(5×10-2〜10Pa・s)の範囲がさ
らに好ましい。
【0053】均一混合液は、活性エネルギー線架橋重合
性化合物と熱可塑性樹脂の他に、例えば、紫外線重合開
始剤;色素、顔料、蛍光色素などの着色剤や紫外線吸収
剤;酸化防止剤;無機や有機の粉末;強化繊維等を含有
することができる。
【0054】活性エネルギー線として紫外線、可視光
線、赤外線などの光線を用いる場合には、重合速度を速
める目的で、均一混合液に光重合開始剤を添加すること
が好ましい。
【0055】均一混合液に、必要に応じて添加すること
ができる光重合開始剤は、本発明で使用する光線に対し
て活性であり、活性エネルギー線架橋重合性化合物を架
橋重合させることが可能なものであれば、特に制限がな
く、例えば、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始
剤、カチオン重合開始剤であって良い。そのような光重
合開始剤としては、例えば、p−tert−ブチルトリクロ
ロアセトフェノン、2,2′−ジエトキシアセトフェノ
ン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパ
ン−1−オンの如きアセトフェノン類;ベンゾフェノ
ン、4,4′−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、2
−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、
2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサ
ントンの如きケトン類;ベンゾイン、ベンゾインメチル
エーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイ
ンイソブチルエーテルの如きベンゾインエーテル類;ベ
ンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフ
ェニルケトンの如きベンジルケタール類、などが挙げら
れる。
【0056】光重合開始剤は、均一混合液に溶解あるい
は分散した状態で用いることができるが、均一混合液に
溶解するものであることが好ましい。光重合開始剤を用
いる場合の均一混合液中の光重合開始剤濃度は、0.0
1〜20重量%の範囲が好ましく、0.5〜10重量%
の範囲が特に好ましい。但し、活性エネルギー線架橋重
合性化合物が光重合開始剤を兼ねる場合や、活性エネル
ギー線架橋重合性化合物と共重合する光重合開始剤であ
る場合にはこの限りではない。
【0057】均一混合液は好ましくは0〜200℃、さ
らに好ましくは10〜180℃の温度範囲で調製され
る。この範囲以上の温度では、活性エネルギー線架橋重
合性化合物が熱により変性する場合がある。
【0058】均一混合液の調製は、熱可塑性樹脂及び活
性エネルギー線架橋重合性化合物を両者が可溶な溶媒に
溶解させた後、溶媒を除去し、均一混合液を得ることも
好ましい。溶剤を使用することによる効果としては、第
1に熱可塑性樹脂と活性エネルギー線架橋重合性化合物
の混合に要する時間を大幅に短縮することができ、第2
に、粘度の高い均一混合液を得ることができる点が挙げ
られる。
【0059】溶剤を用いる場合には、使用する溶剤は、
揮発、抽出などの何らかの方法で除去可能なものであれ
ば任意であるが、揮発性溶剤であることが好ましい。揮
発性溶剤は沸点が150℃以下であることが好ましく、
120℃以下であることがさらに好ましい。このような
溶剤としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、
トリクロロエタン、テトラクロロエタンの如き塩素系溶
剤;アセトン、2−ブタノンの如きケトン系溶剤;酢酸
エチル、酢酸ブチルの如きエステル系溶剤;ジエチルエ
ーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランの如き
エーテル系溶剤;トルエン、シクロヘキサンの如き炭化
水素系溶剤;蟻酸の如き酸;クロロフェノールの如きフ
ェノール類;液化二酸化炭素、液化アンモニアの如き液
化ガス;超臨界二酸化炭素の如き超臨界流体、などが挙
げられる。
【0060】溶剤除去方法も任意であるが、揮発による
除去であることが好ましい。揮発方法も任意であり、例
えば、風乾、熱風乾燥、赤外線乾燥、真空乾燥等であり
得る。溶剤は、その後の賦形及び活性エネルギー線照射
よって形成される相分離構造に大きな影響を与えない程
度ならば残存していても良い。多少の粘度変化や相溶性
の変化は、活性エネルギー線照射条件で補正可能であ
る。
【0061】均一混合液は、塗膜状、フィルム状(シー
ト状、リボン状などを含む)、繊維状、注型物、含浸物
などの任意の形状に賦形される。但し、活性エネルギー
線により硬化可能な形状であることが必要である。例え
ば、活性エネルギー線が到達可能な厚みである必要があ
り、賦形物が被服物で被われている場合には、被服物は
使用する活性エネルギー線を透過させるものである必要
がある。賦形方法も任意であり、例えば、塗布、流延、
浸漬、注型、含浸、押し出し、などであり得る。均一混
合液の調製が溶媒を使用する方法である場合には、賦形
は溶媒除去の前であっても、後であっても、同時であっ
ても、また、一部除去の後であっても良い。均一混合液
の粘度が高い場合や、賦形物が塗膜やフィルムのような
厚みの小さいものである場合には、賦形後に溶剤除去を
行なうことが好ましい。
【0062】次いで、均一混合液の賦形物に、所定の温
度にて活性エネルギー線を照射する。活性エネルギー線
の照射温度は、均一混合液が相溶状態を保っている温
度、即ち照射前に相分離しない温度である必要がある。
この時、均一混合液が過冷却状態であっても良い。
【0063】均一混合液に活性エネルギー線を照射する
と、架橋重合性化合物の重合の進行に伴ってミクロ相分
離が進行するが、架橋重合性化合物体が架橋構造を形成
するため、相分離の進行過程のいずれかの段階で構造が
固定化される。本発明の3つのTgを有するポリマーア
ロイは、均一混合液成分の相溶性の良否、均一混合液の
粘度、重合温度、活性エネルギー線強度を制御すること
により得られる。本発明の3つのTgを有するポリマー
アロイの形成条件は、系、即ち、架橋重合性化合物体と
熱可塑性樹脂の組み合わせによって異なり、一概には規
定できない。しかしながら、貧相溶性、低粘度、高照射
温度、低活性エネルギー線強度の条件が過剰であると、
相分離が進行してしまい、2つのTgを有するポリマー
アロイとなる。反対に、良相溶性、高粘度、低温、強強
度の条件が過剰であると、相分離が進行する前に構造が
固体化されてしまい、(疑似)相溶構造となり、1つの
Tgを示す。本発明の組成物はこの中間の条件を選択す
ることにより得られる。通常、相溶性と粘度は、系によ
り決定されるから、系が固定された場合には、主として
制御するパラメーターは、照射温度、活性エネルギー線
強度及びこれらの時間プログラムである。これらを適宜
調節することで、目的の特性に最適化することができ
る。ポリマーアロイの構造に変化を与えずに完全硬化す
るまでの時間を短縮するために、硬化後半で温度を上昇
させることも好ましい。
【0064】活性エネルギー線としては、均一混合液を
硬化させることが可能なものであれば任意であり、紫外
線、可視光線、赤外線の如き光線;エックス線、ガンマ
線の如き電離放射線;電子線、ベータ線、中性子線、重
粒子線の如き粒子線が挙げられるが、取り扱い性や装置
価格の面から光線が好ましく、紫外線が特に好ましい。
全面照射の場合、紫外線強度は0.1〜1000mw/cm
2 であることが好ましい。紫外線はレーザー光であるこ
とも好ましい。照射は、必要に応じて、パターニング照
射であって良い。
【0065】また、硬化速度を速め、硬化を完全に行う
目的で、活性エネルギー線の照射を低酸素濃度雰囲気で
行うことが好ましい。低酸素濃度雰囲気としては、窒素
気流中、二酸化炭素気流中、アルゴン気流中、真空又は
減圧雰囲気が好ましい。
【0066】硬化した本発明のポリマーアロイは、必要
に応じて熱処理を施すことも可能である。熱処理を施す
ことにより、特性をさらに向上させたり、熱安定性を増
すことができる。
【0067】
【実施例】以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説
明する。しかしながら、本発明は以下の実施例の範囲に
限定されるものではない。
【0068】なお、以下の実施例において、紫外線源と
して、160Wのメタルハライドランプ(アイグラフィ
ックス製)を用いた。紫外線照射強度は約70mW/cm
2 であった。また、紫外線照射時間は90秒間とした。
【0069】次に、以下の実施例におけるガラス転移温
度の測定方法、引張破壊試験方法、光透過率の測定方
法、相分離構造の観察方法について説明する。
【0070】(ガラス転移温度の測定)ガラス転移温度
(Tg)は、動的粘弾性測定法で1Hzでの複素弾性率
の温度変化を測定し、tanδ (損失弾性率/貯蔵弾性
率)のピーク温度で評価した。動的粘弾性測定は、レオ
メトリックス株式会社製の「RSA−II」を使用し
た。昇温速度は毎分2℃とした。サンプルが塗膜の場合
には、基材から剥離したフィルム状のものを測定した。
【0071】(引張破壊試験)引張破壊試験は、島津製
作所製の引張試験機(オートグラフAGS−H)を使用
した。サンプルが塗膜の場合には、基材から剥離したフ
ィルム状のものを用いた。幅3mm、厚み約0.15m
mの試験片として、サンプル長10mm、引張速度を毎
分5mmで試験を行った。
【0072】(光透過率の測定)日本電色工業株式会社
製の濁度計「NDH−300A」を用いて、塗膜又はフ
ィルムの平行光透過率を測定した。フィルムの厚みは1
00±20μm とした。
【0073】[実施例1]活性エネルギー線架橋重合性
化合物として、「ニューフロンティア BPE−4」
(第一工業製薬株式会社製のエチレンオキサイド変性ビ
スフェノールAジアクリレート;以下、「BPE4」と
省略する。)5g、光重合開始剤として、「イルガキュ
ア184」(チバ・ガイギー社製の1−ヒドロキシシク
ロヘキシルフェニルケトン)0.1g及び熱可塑性樹脂
として、「ユーデル 3703」(アムコ株式会社製の
ポリサルホン;以下、「PSF」と省略する。)5gを
塩化メチレン50gに溶解させて均質混合溶液(1)を
得た。
【0074】このようにして得た均質混合溶液(1)を
ガラス板上に塗布した後、溶媒を揮発させ、均一混合液
の未硬化の塗膜を得た。次いで、この塗膜にガラス板の
カバーを密着装着して、未硬化の賦形物を2枚のガラス
板に挟まれた状態とした。
【0075】該賦形物をガラス板ごと温度調節したステ
ージ上で昇温したところ、賦形物は室温(25℃)〜1
00℃で無色透明であった。賦形物を100℃に保持し
た状態で紫外線を照射して架橋重合性化合物を重合させ
て、賦形物を硬化させた。
【0076】得られた硬化物(ポリマーアロイ)をガラ
ス板から剥離して得たフィルム(膜厚=約150μm )
は、室温で無色透明で、その光透過率は90%であっ
た。このフィルム状硬化物のTgを測定したところ、1
10℃にメインのtan δピークが見られ、75℃と17
0℃付近に肩付きピークが現れ、3つのTgが発現し
た。なお、「BPE4」の単独硬化物のTg(Tgc)
とポリサルホンのTg(Tgs)はそれぞれ約60℃と
196℃であった。
【0077】また、得られたフィルム状硬化物の引張破
壊試験を行った結果、引張強度が71MPa、弾性率が
1.95GPaであった。「BPE4」の単独硬化物
は、その引張強度が42MPa、弾性率が1.40GP
aであるため、力学的特性が大きく向上していることが
判る。
【0078】また、走査型電子顕微鏡(SEM:日立製
作所製、S−800)と透過型電子顕微鏡(TEM:日
立製作所製、200kV)用いてフィルム状硬化物の断面
の構造を観察したが、何れの方法でも明確な相分離構造
を観察することができなかった。
【0079】[比較例1](Tgが1つであるポリマー
アロイの例) 実施例1において、紫外線照射温度を50℃としたこと
以外は、実施例1と同様にして、フィルム状硬化物を得
た。
【0080】得られたフィルム状硬化物のTgを測定し
たところ、80℃に1つだけ確認することができた。ま
た、実施例1と同様にして、SEM及びTEMを用い
て、フィルム状硬化物の断面の構造を観察したが、何れ
の方法でも相分離構造を観察することができなかった。
【0081】また、この比較例で得たフィルム状硬化物
は無色透明であり、その光透過率は90%であった。こ
のフィルム状硬化物の引張試験を行った結果、引張強度
が46MPa、弾性率が1.44GPaであった。
【0082】[比較例2](Tgが2つであるポリマー
アロイの例) 実施例1において、紫外線照射温度を180℃とした以
外は、実施例1と同様にして、フィルム状硬化物を得
た。
【0083】得られたフィルム状硬化物のTgを測定し
たところ、90℃と180℃に2つのTgを確認するこ
とができた。
【0084】また、この比較例で得たフィルム状硬化物
はやや乳白濁しており、その光透過率は78%であっ
た。このフィルム状硬化物の引張試験を行った結果、引
張強度が55MPa、弾性率が1.70GPaであっ
た。
【0085】[実施例2]架橋重合性モノマーとして、
「NK−エステル A−200」(新中村化学株式会社
のポリエチレングリコールジアクリレート;以下、「A
−200」と省略する。)5g、光重合開始剤として、
「イルガキュア184」0.1g及び熱可塑性樹脂とし
て、「ユーピロン Z−200」(三菱瓦斯化学株式会
社のビスフェノールZ型ポリカーボネート(以下、PC
zと省略する。))5gを塩化メチレン50gに溶解さ
せて均質混合溶液(2)を得た。
【0086】実施例1において、均質混合溶液(1)に
代えて、均質混合溶液(2)を用い、紫外線照射温度を
50℃とした以外は、実施例1と同様にして、フィルム
状硬化物(ポリマーアロイ)を得た。
【0087】紫外線照射前の塗膜は室温以上で無色透明
であり、均質に混合していることを確認することができ
た。得られたフィルム状硬化物は、無色透明(光透過率
=90%)であった。このフィルム状硬化物のTgを測
定したところ、51℃、125℃及び170℃に3つの
Tgを観察することができた。なお、「A200」の単
独硬化物のTg(Tgc)と「PCz」のTg(Tg
s)はそれぞれ46℃と約180℃であった。
【0088】また、得られたフィルム状硬化物の引張破
壊試験を行った結果、引張強度が62MPa、弾性率が
1.75GPaであった。「A200」の単独硬化物
は、その引張強度が12MPa、弾性率が0.20GP
aであるため、力学的特性が大きく向上していることが
判る。
【0089】また、実施例1と同様にして、SEM及び
TEMを用いて、フィルム状硬化物の断面の構造を観察
したが、何れの方法でも相分離構造を観察することがで
きなかった。
【0090】[比較例3]実施例2において、紫外線照
射温度を10℃とした以外は、実施例2と同様にして、
フィルム状硬化物を得た。
【0091】得られたフィルム状硬化物のTgを測定し
たところ、105℃付近に1つだけ確認することができ
た。
【0092】また、この比較例で得たフィルム状硬化物
はほぼ透明であり、その光透過率は90%であった。こ
のフィルム状硬化物の引張試験を行った結果、引張強度
が54MPa、弾性率が1.3GPaであった。
【0093】[比較例4]実施例2において、紫外線照
射温度を140℃とした以外は、実施例2と同様にし
て、フィルム状硬化物を得た。
【0094】得られたフィルム状硬化物のTgを測定し
たところ、50℃と170℃に2つのTgを確認するこ
とができた。
【0095】また、この比較例で得たフィルム状硬化物
はほぼ透明であり、その光透過率は86%であった。こ
のフィルム状硬化物の引張試験を行った結果、引張強度
が56MPa、弾性率が1.7GPaであった。
【0096】[実施例3]架橋重合性モノマーとして、
「カヤラッド R−684」(日本化薬株式会社のジキ
シクヘンタジルジアクリレート;以下、「R684」と
省略する。)5g、光重合開始剤として、「イルガキュ
ア184」0.1g及び熱可塑性樹脂として、ポリ塩化
ビニル(和光純薬株式会社製)5gをテトラヒドロフラ
ン(以下、THFと省略する。)60gに溶解して、均
質混合溶液(3)を得た。
【0097】実施例1において、均質混合溶液(1)に
代えて、均質混合溶液(3)を用い、かつ、紫外線照射
温度を100℃とした以外は、実施例1と同様にして、
フィルム状硬化物(ポリマーアロイ)を得た。
【0098】紫外線照射前の塗膜は室温以上で無色透明
であり、均質に混合していることを確認することができ
た。得られたフィルム状硬化物は、無色透明(光透過率
=90%)であった。このフィルム状硬化物のTgを測
定したところ、60℃、93℃及び145℃に3つのT
gを観察することができた。なお、「R684」の単独
硬化物のTg(Tgc)とポリ塩化ビニルのTg(Tg
s)はそれぞれ約174℃と62℃であった。
【0099】また、得られたフィルム状硬化物の引張破
壊試験を行った結果、引張強度が84MPa、弾性率が
2.3GPa、判断伸度が12%であった。「R68
4」の単独硬化物は、その引張強度が35MPa、弾性
率が2.2GPa、破断伸度が2%であるため、力学的
特性が大きく向上していることが判る。
【0100】また、実施例1と同様にして、SEM及び
TEMを用いて、フィルム状硬化物の断面の構造を観察
したが、何れの方法でも相分離構造を観察することがで
きなかった。
【0101】[比較例5]実施例3において、紫外線照
射温度を30℃とした以外は、実施例3と同様にして、
フィルム状硬化物を得た。
【0102】得られたフィルム状硬化物のTgを測定し
たところ、75℃付近に1つだけ確認することができ
た。
【0103】また、この比較例で得たフィルム状硬化物
はほぼ透明であり、その光透過率は90%であった。こ
のフィルム状硬化物の引張試験を行った結果、引張強度
が56MPa、弾性率が2.1GPa、破断伸度が3%
であった。
【0104】[比較例6]実施例3において、紫外線照
射温度を140℃とした以外は、実施例3と同様にし
て、フィルム状硬化物を得た。
【0105】得られたフィルム状硬化物のTgを測定し
たところ、60℃と140℃に2つのTgを確認するこ
とができた。
【0106】また、この比較例で得たフィルム状硬化物
はほぼ透明であり、その光透過率は85%であった。こ
のフィルム状硬化物の引張試験を行った結果、引張強度
が71MPa、弾性率が2.2GPa、破断伸度が7%
であった。
【0107】[実施例4]架橋重合性モノマーとして、
「カヤラッド HDDA」(日本化薬株式会社の1.6
ヘキサンジオール ジアクリレート;以下、「HDD
A」と省略する。)5g、光重合開始剤として、「イル
ガキュア184」0.1g及び熱可塑性樹脂として、
「PKHH」(ユニオン・カーバイド株式会社製のフェ
ノキシ樹脂)5gを塩化メチレン50gに溶解させて、
均質混合溶液(4)を得た。
【0108】実施例1において、均質混合溶液(1)に
代えて、均質混合溶液(4)を用い、かつ、紫外線照射
温度を50℃とした以外は、実施例1と同様にして、フ
ィルム状硬化物(ポリマーアロイ)を得た。
【0109】紫外線照射前の塗膜は室温以上で無色透明
であり、均質に混合していることを確認することができ
た。得られたフィルム状硬化物は、無色透明(光透過率
=90%)であった。このフィルム状硬化物のTgを測
定したところ、63℃、70℃及び90℃に3つのTg
を観察することができた。なお、「HDDA」の単独硬
化物のTg(Tgc)と「PKHH」のTg(Tgs)
はそれぞれ約64℃と約100℃であった。
【0110】また、得られたフィルム状硬化物の引張破
壊試験を行った結果、引張強度が85MPa、弾性率が
1.9GPa、判断伸度が9%であった。「HDDA」
の単独硬化物は、その引張強度が20MPa、弾性率が
0.7GPa、破断伸度が5%であるため、力学的特性
が大きく向上していることが判る。
【0111】また、実施例1と同様にして、SEM及び
TEMを用いて、フィルム状硬化物の断面の構造を観察
したが、何れの方法でも相分離構造を観察することがで
きなかった。
【0112】[比較例7]実施例4において、紫外線照
射温度を15℃とした以外は、実施例4と同様にして、
フィルム状硬化物を得た。
【0113】得られたフィルム状硬化物のTgを測定し
たところ、68℃付近に1つだけ確認することができ
た。
【0114】また、この比較例で得たフィルム状硬化物
はほぼ透明であり、その光透過率は90%であった。こ
のフィルム状硬化物の引張試験を行った結果、引張強度
が62MPa、弾性率が1.8GPa、破断伸度が5%
であった。
【0115】[比較例8]実施例4において、紫外線照
射温度を140℃とした以外は、実施例4と同様にし
て、フィルム状硬化物を得た。
【0116】得られたフィルム状硬化物のTgを測定し
たところ、62℃と95℃に2つのTgを確認すること
ができた。
【0117】また、この比較例で得たフィルム状硬化物
はほぼ透明であり、その光透過率は90%であった。こ
のフィルム状硬化物の引張試験を行った結果、引張強度
が68MPa、弾性率が1.9GPa、破断伸度が6%
であった。
【0118】[実施例5]架橋重合性モノマーとして、
「ウレタンアクリレート AT−600」(共栄社化学
株式会社製;以下、「AT600」と省略する。)5
g、光重合開始剤として、「イルガキュア184」0.
1g及び熱可塑性樹脂として、PCz 5gを塩化メチ
レン50gに溶解させて、均質混合溶液(5)を得た。
【0119】実施例1において、均質混合溶液(1)に
代えて、均質混合溶液(5)を用い、かつ、紫外線照射
温度を110℃とした以外は、実施例1と同様にして、
フィルム状硬化物(ポリマーアロイ)を得た。
【0120】紫外線照射前の塗膜は室温以上で無色透明
であり、均質に混合していることを確認することができ
た。得られたフィルム状硬化物は、無色透明(光透過率
=90%)であった。このフィルム状硬化物のTgを測
定したところ、75℃、120℃及び140℃付近に3
つのTgを観察することができた。なお、「AT60
0」の単独硬化物のTg(Tgc)と「PCz」のTg
(Tgs)はそれぞれ約94℃と約180℃であった。
【0121】また、得られたフィルム状硬化物の引張破
壊試験を行った結果、引張強度が90MPa、弾性率が
2.3GPaであった。「AR600」の単独硬化物
は、その引張強度が44MPa、弾性率が1.8GPa
であるため、力学的特性が大きく向上していることが判
る。
【0122】また、実施例1と同様にして、SEM及び
TEMを用いて、フィルム状硬化物の断面の構造を観察
したが、何れの方法でも相分離構造を観察することがで
きなかった。
【0123】[比較例9]実施例5において、紫外線照
射温度を30℃とした以外は、実施例5と同様にして、
フィルム状硬化物を得た。
【0124】得られたフィルム状硬化物のTgを測定し
たところ、98℃付近に1つだけ確認することができ
た。
【0125】また、この比較例で得たフィルム状硬化物
はほぼ透明であり、その光透過率は90%であった。こ
のフィルム状硬化物の引張試験を行った結果、引張強度
が62MPa、弾性率が1.8GPaであった。
【0126】[比較例10]実施例5において、紫外線
照射温度を180℃とした以外は、実施例5と同様にし
て、フィルム状硬化物を得た。
【0127】得られたフィルム状硬化物のTgを測定し
たところ、92℃と160℃に2つのTgを確認するこ
とができた。
【0128】また、この比較例で得たフィルム状硬化物
はほぼ透明であり、その光透過率は90%であった。こ
のフィルム状硬化物の引張試験を行った結果、引張強度
が85MPa、弾性率が2.2GPaであった。
【0129】
【発明の効果】本発明のポリマーアロイは、一般に脆く
力学的特性が不足している活性エネルギー線架橋重合体
の力学特性が改良されたものであって、しかも、光学的
に透明である。また、本発明のポリマーアロイは、1つ
のガラス転移温度を示すポリマーアロイと比較して、力
学的特性に優れており、また、2つのガラス転移温度を
示すポリマーアロイと比較しても同等以上の力学物性を
示し、かつ透明性に優れたものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08L 81/06 C08L 81/06 101/04 101/04 Fターム(参考) 4F070 AA32 AA36 AA75 AB17 AC72 AC73 AC76 AC77 AC78 AC80 AC82 AC83 AC88 AC89 AC90 AE08 HA02 HA03 HA04 HA05 HB01 4J002 AB02W AC02W AC06W AC07W AC08W AC09W BC03W BC04W BC06W BC07W BC09W BD04W BD10W BD18W BF02W BF03W BG04W BG05W BG05X BG07X BG10W BG13X BH01X BH02W BH02X BJ00W CD19X CF04W CF18W CF19W CG01W CH06W CK02W CK02X CL00W CM04W CN03W FD150 GG02 GH00

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 架橋重合体と熱可塑性樹脂からなるポリ
    マーアロイにおいて、架橋重合体のガラス転移温度Tg
    cと熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgsのうち、低温
    側に現れるガラス転移温度をTgLとし、高温度側に現
    れるガラス転移温度をTgHとする場合、当該ポリマー
    アロイが3つのガラス転移温度Tg1、Tg2及びTg
    3を有し、ポリマーアロイの3つのガラス転移温度Tg
    1、Tg2及びTg3が、TgLよりも60℃低い温度
    とTgHとの間に存在することを特徴とするポリマーア
    ロイ。
  2. 【請求項2】 ポリマーアロイが、光透過率が70%以
    上の塗膜状又はフィルム状成形物である請求項1記載の
    ポリマーアロイ。
  3. 【請求項3】 架橋重合体が、活性エネルギー線により
    架橋重合可能な化合物の架橋重合体である請求項1又は
    2記載のポリマーアロイ。
  4. 【請求項4】 熱可塑性樹脂が、ポリサルホン系重合
    体、ポリカーボネート系重合体、フェノキシ樹脂、塩素
    含有重合体なる群から選ばれる1以上の線状重合体であ
    る請求項1、2又は3記載のポリマーアロイ。
  5. 【請求項5】 活性エネルギー線により硬化し架橋重合
    体を与える化合物と熱可塑性樹脂との均一混合液の賦形
    物に活性エネルギー線を照射することを特徴とする架橋
    重合体と熱可塑性樹脂からなる請求項1記載のポリマー
    アロイの製造方法。
  6. 【請求項6】 活性エネルギー線により硬化し架橋重合
    体を与える化合物が、1分子中に2〜6個の(メタ)ア
    クリロイル基を有し、かつ、分子量が100〜1000
    の範囲にある化合物である請求項5記載のポリマーアロ
    イの製造方法。
  7. 【請求項7】 活性エネルギー線により硬化し架橋重合
    体を与える化合物と熱可塑性樹脂とを、この両者を溶解
    する溶剤に溶解して均質混合溶液を調製し、当該均質溶
    液を任意の形状に賦形し、該賦形物から溶剤を揮発除去
    して、該化合物と熱可塑性樹脂の均一混合液とした後、
    活性エネルギー線を照射する請求項5又は6記載のポリ
    マーアロイの製造方法。
  8. 【請求項8】 活性エネルギー線が紫外線である請求項
    5、6又は7記載のポリマーアロイの製造方法。
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