JP2002176975A - エリンギ株、その作出法及びそれを使用する高血圧症治療剤 - Google Patents

エリンギ株、その作出法及びそれを使用する高血圧症治療剤

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JP2002176975A JP2000377553A JP2000377553A JP2002176975A JP 2002176975 A JP2002176975 A JP 2002176975A JP 2000377553 A JP2000377553 A JP 2000377553A JP 2000377553 A JP2000377553 A JP 2000377553A JP 2002176975 A JP2002176975 A JP 2002176975A
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eryngii
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Fumiharu Eguchi
文陽 江口
Yasuo Watanabe
泰雄 渡辺
Michihiro Fujiwara
道弘 藤原
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 治療効果が明確で、且つ長期連用による副作
用の心配がない、安全性の高い抗高血圧症エリンギ株を
提供する。 【解決手段】 栄養要求性突然変異株から得た2菌株の
エリンギから調製したプロトプラストを細胞融合して作
成するエリンギ株。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エリンギ株、その
作成法及びそれを用いた高血圧症治療剤、特に抗高血圧
症効果を有するエリンギ株に関する。
【0002】
【従来の技術】食生活の多様性や美食ブームから一般的
に若年層から肥満化の傾向にある。さらに、超高齢化社
会やストレス化社会への突入に従って、加齢や生活習慣
に関わる疾患が増加することが予測される。殊に、循環
系疾患の中でも高血圧症は肥満や運動不足から増加する
傾向にある。従来の高血圧疾患に対する適切なる治療法
として、Ca拮抗薬、β受容体作動薬、アンギオテンシ
ン転換酵素阻害薬を用いる方法が効果的で広範に利用さ
れている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの薬物
の長期にわたる投与によって副作用が問題となることも
多い。副作用の発現は、患者にとって薬物治療を拒否す
る原因ともなることも事実である。特に、高齢患者では
代謝機能の低下によって予期しない重篤な副作用が発現
することもある。このため、薬物ではなく副作用を生じ
る可能性が低い自然食品や健康食品(機能性食品を含
む)に対する関心も高まっている。本発明は、上記従来
技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、抗
高血圧症の治療効果が明確で、且つ長期連用によっても
副作用が極めて少ないエリンギ株、その作成法、及び高
血圧症治療剤を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明者らが鋭意検討を行った結果、エリンギが抗
高血圧作用を有し、さらに特定の操作により細胞融合す
ることで、特に優れた抗高血圧症作用を有するエリンギ
株を得、本発明を完成するに至った。
【0005】すなわち、本発明の第1の要旨は、寄託番
号がFERM P−18133であるエリンギ株にあ
る。
【0006】本発明の第2の要旨は、栄養要求性突然変
異株(一核菌糸)から得た2菌株のエリンギから調製し
たプロトプラストを細胞融合することを特徴とするエリ
ンギ株の作出法にある。
【0007】本発明の第3の要旨は、エリンギ株を主成
分とする高血圧症治療剤にある。
【0008】さらに、前記高血圧症治療剤において、エ
リンギ株の乾燥粉末を熱水抽出したものを主成分とする
ことが好適である。
【0009】
【発明の実施の形態】エリンギ(Pleurotus eryngii)
は、担子菌類に属し、その子実体(キノコ)は、日本で
はエリンギ、エリンギ茸等として市販され、食用に供さ
れている。エリンギの栽培方法は公知であり、近年は日
本でも人工栽培されるようになった。
【0010】エリンギは公知であるが、エリンギに抗高
血圧症治療効果があること、及び栄養要求性突然変異株
のエリンギから調製したプロトプラストを細胞融合する
ことで特に抗高血圧症エリンギ株が作成できることはこ
れまで全く知られておらず、本発明者らによって初めて
明らかにされたものである。
【0011】以下、本発明の好適な実施形態を詳細に説
明する。本発明において特徴的な抗高血圧症エリンギ株
は、以下のようにプロトプラストを細胞融合して作出す
ることができる。(1)抗高血圧症エリンギ株の作出法(ポリエチレング
リコール法) 栄養要求性突然変異株(一核菌糸)から得た2菌株のエリ
ンギから調製したプロトプラストを等量ずつ(5×10
個)混合して,遠心分離 (700×g、10分)で沈澱させ
た。その沈澱プロトプラストを0.3mol/lマンニトールを
含有したポリエチレングリコール溶液(分子量6000、濃
度20%、pH8.0)に懸濁して,1分間ごとに15秒間ガラス
棒で静かに撹はんする操作を室温で10分間行って細胞融
合した。
【0012】本発明の抗高血圧症エリンギ株はアイソザ
イム分析により、通常のエリンギ株と区別することがで
きる。(2)菌株特性の解析(アイソザイム分析) SMY(1%サッカロース、1%麦芽抽出物、0.4%酵母
抽出物)液体培地で12日間培養した菌糸体をナイロンメ
ッシュでろ過,集菌後,蒸留水で2回,0.05mol/l Tris
-HCl緩衝液(pH7.0)で2回洗浄した。菌糸体の生重量
を測定し,0.05mol/l Tris-HCl緩衝液(pH7.0)を菌糸
体生重量に対して2分の1量加えて,ホモジナイザー
(ヒスコトロン:日音医理化器機社製)を用いて約1500
0r.p.m.で1分間,3回繰り返して菌糸体を磨砕した。
得られた菌糸体懸濁液を0℃,27000×gの条件で40分間
遠心分離し,上清を粗酵素液とした。等電点電気泳動の
ゲルには,2mm厚の5%ポリアクリルアミドゲル(pH3.5
〜9.5/アンフォライン)を用いた。泳動層の電極液は,
+極に 0.1mol/l HPO,−極に0.1mol/l NaOHを使
用した。ろ紙に4μl 吸着させた粗酵素液をゲル上に添
加しエステラーゼ(EST)では,700V,15W,15mA,
リンゴ酸脱水素酵素(MDH),アルコール脱水素酵素
(ADH),カテコールオキシダーゼ(Cx)では,11
00V,15W,15mAの条件で5時間泳動した。アイソザイム
の検出は,ゲルを活性染色して行った。
【0013】実験結果のうち、エステラーゼ(EST)
とカテコールオキシダーゼ(Cx)のアイソザイムのパ
ターンを図1に示した。一般のエリンギ株のパターンを
1〜3に、本発明にかかる細胞融合株=抗高血圧症株の
パターンを4に示した。これらのパターンを比較する
と、本発明にかかる細胞融合株と通常のエリンギ株とで
は、EST、Cx共に明らかに異なるパターンを示すこ
とがわかる。
【0014】なお、本発明にかかる細胞融合株は、平成
12年11月29日付でFERMP−18133として
工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託してある。
【0015】本発明による抗高血圧症エリンギ株を使用
して高血圧症治療剤を製造することができる。高血圧症
治療として用いる際の投与量としては、症状等により異
なるが、成人一日あたり、おおよそ1〜15gのエリン
ギ乾燥粉末に相当する量を摂取すれば十分に効果が期待
できる。エリンギの有効量を効率的に摂取するために
は、乾燥粉末の抽出液として摂取することが好適であ
る。抽出液としては、エリンギ子実体乾燥粉末を約80
℃の熱水で抽出したものが好ましい。また、抽出物は、
抽出液でもその乾燥物でもよい。なお、熱水抽出による
回収率は乾燥粉末に対し、固形分で60%程度である。
本発明においては、エリンギの子実体を用いることが
好適であるが、菌株の劣化を招かない育種管理を行った
その菌糸にも効果が期待できる。
【0016】本発明の高血圧症治療剤は、通常内服薬と
して投与されるが、熱水抽出物を用いる場合には、注射
薬とすることも可能である。内服薬の場合には、常法に
より散剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、茶剤、懸濁化
剤、流エキス剤、液剤、シロップ剤等とすることができ
る。なお、製剤化の際には、通常の製剤化担体、例え
ば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯
臭剤等を必要に応じて用いることができる。注射剤の場
合には、常法により水性又は非水性の溶液剤、懸濁剤、
乳濁剤等とすることができ、必要に応じて、防腐剤、湿
潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤等を添加
することも可能である。
【0017】
【実施例】〈実施例1〉以下、本発明にかかる抗高血圧
症エリンギ株より製造した高血圧症治療剤の効果確認方
法を示す。 (1)抽出液の調製 上記の抗高血圧症エリンギ株から栽培されたエリンギの
乾燥子実体を粉砕し、16メッシュのふるいにかけて、
エリンギ粉末とした。また、この粉体2、5、10、1
5、20gをそれぞれ600mlの熱水(80℃)中で2
時間抽出し、熱水抽出液を得た。
【0018】(2)試験動物の飼育、試料の投与方法 日本チャールスリバー(株)より購入した7週齢、体重
約160gの雄性自然発症高血圧ラット(SHR)30
頭及び正常血圧のウィスター京都ラット(WKY)5頭
を、MF粉末(オリエンタル酵母工業(株)製)に8%
NaClを添加した飼料で1週間予備飼育した。その後、S
HR各個体の血圧値を測定し、平均値がほぼ等しくなる
ように1群5頭の6群に分け、下記の要領でさらに12
週間飼育し、20週齢まで飼育した。
【0019】[a]SHR対照群 抽出液を投与せず飼育した。 [b]SHR抽出液投与群 各熱水抽出液を経口投与した(5群設定)。抽出液投与
量は、体重60kgのヒトが熱水抽出液を1日に600ml
飲用する方法に準拠し、ラットの体重に換算して決定し
た。 [c]WKY群 15gの熱水抽出液を経口投与し飼育した。
【0020】SHRで血圧が上昇する8週齢以降は、Na
Cl無添加のMF粉末飼料と飲料水を各群とも自由摂取さ
せた。飼育室の環境は、温度26±2℃、湿度50%、
白色蛍光灯で1日12時間の採光下(7〜19時明期)
とした。
【0021】(3)血圧・心拍数測定 各ラットを38℃の加温器中で数分間加温させ順応した
後、非観血式自動血圧測定装置(BP-98A;株ソフトロン
製)を用いて、ラットの尾脈波から収縮期血圧を測定し
た。各ラットの血圧は毎回3回測定した値の平均値を記
録した。血圧測定の際、心拍数も同様に記録した。
【0022】(4)血液・尿検査 実験最終日の前日に全ラットを絶食させ、翌日に深麻酔
(ネンブタール,45mg/kg,i.p.)し、左心室から20G採
血針で可能な限り採血を行った。心採血を行う24時間
前から代謝ケージでラットを飼育し採尿を行った。採取
した血液及び尿は、自動血液分析装置(Auto Lab.)で
分析した。
【0023】(5)体重測定 飼育期間中、週1回体重を測定し、飼料摂取量は毎日測
定した。
【0024】(6)統計学的解析 得られた成績は、群間比較をWilcoxon U-testで解析
し、1%以内の危険率を持って有意な差があると判定し
た。
【0025】血圧変動を図2に示す。8週齢でSHRの
血圧はWKYの血圧と比較して著明な上昇が認められ
た。さらにSHRの血圧上昇は進み、14週齢で205
mg以上となった。しかし、14週齢(抽出液投与6週
目)以降では、SHR対照群と比較してSHR抽出液投
与群は血圧上昇は著明な抑制が観察された。SHRの中
では血圧抑制効果は15g投与群が他の用量と比較して
大きかった。即ち、SHRの血圧上昇に対して抽出液投
与は明らかな用量依存的、且つ、用量増加に逆釣り鐘状
の阻害効果を有することが明らかとなった。一方、SH
Rの血圧に効果的であった用量(15g)においてもW
KYの血圧には影響を及ぼさなかった。よって、エリン
ギの熱水抽出物は、用量依存的に高血圧症である動物の
血圧を降圧させる効果があり、更に正常血圧には影響を
及ぼさないことが明確となった。
【0026】心拍数変動を図3に示す。どの群において
も、心拍数に異常は確認されなかった。よって、エリン
ギの熱水抽出物は、血圧抑制効果は示しても心拍数には
異常をきたさないことが明確となった。
【0027】血液検査値を表1に示す。
【表1】 エリンギ抽出物質投与による血液検査値への影響 SHR SHR SHR SHR 分析項目 対照群 2g投与群 5g投与群 10g投与群 WBC (103/μl) 3.9±0.5 4.2±0.4 4.6±0.3 5.6±0.6* T-Cho (mg/dl) 45.6±2.0 51.3±2.6 53.4±3.4 59.4±1.9* F-Cho (mg/dl) 13.1±2.5 13.5±2.0 11.3±9.3 11.0±1.7 HDL-Cho (mg/dl) 43.6±4.1 42.9±3.9 45.6±5.1 50.4±5.2 LDL-Cho (mg/dl) 9.1±1.5 8.3±1.9 7.2±1.4 6.3±1.5* TG (mg/dl) 42.1±3.5 39.5±4.8 35.8±5.3 26.9±6.6* BUN (mg/dl) 25.3±1.9 25.9±1.3 22.5±2.4 26.3±2.4 Creatinin(mg/dl) 0.72±0.1 0.68±0.3 0.65±0.2* 0.58±0.0* A/G ratio 1.4±0.2 1.7±0.2 2.4±0.1* 2.6±0.3* レニン 2.6±0.4 2.5±0.3 2.2±0.3 2.5±0.4 アンシ゛オテンシン 63.4±5.7 50.3±5.9 48.3±9.1 54.2±8.5 SHR SHR WKY 分析項目 15g投与群 20g投与群 15g投与群 WBC (103/μl) 6.1±0.5* 6.0±0.5* 6.3±0.3* T-Cho (mg/dl) 63.4±1.8* 60.8±2.3* 59.1±2.4* F-Cho (mg/dl) 10.0±1.5 10.0±1.9 10.8±1.6 HDL-Cho (mg/dl) 49.8±4.6 52.1±5.6* 53.9±3.5* LDL-Cho (mg/dl) 6.1±1.2* 6.4±1.8* 6.3±1.1* TG (mg/dl) 23.4±5.9* 29.4±4.9* 31.9±2.9* BUN (mg/dl) 23.1±2.1 21.3±2.5 19.6±1.5 Creatinin(mg/dl) 0.55±0.3* 0.53±0.1* 0.55±0.0* A/G ratio 2.5±0.1* 2.5±0.2* 2.8±0.2* レニン 1.9±0.5 2.0±0.2* 2.9±0.4* アンシ゛オテンシン 45.8±5.8* 48.2±5.1* 45.8±2.1* *有意差有り
【0028】SHR対照群と比較してSHR抽出液投与
群は白血球(WBC)、総コレステロール(T-Cho)、HDL-コレ
ステロール及びA/G比値などに著明な上昇が認められ、L
DL-コレステロール、中性脂肪(TG)、及びクレアチニン
値に著明な低下が計測された。これらパラメーターの改
善効果は高血圧抑制効果の強い群と密接な関連性を有す
ることが推察される。
【0029】尿検査値を表2に示す。
【表2】 エリンギ抽出物質投与による尿検査値への影響 SHR SHR SHR SHR 分析項目 対照群 2g投与群 5g投与群 10g投与群 尿 (ml/day) 8.1±1.2 9.0±2.1 12.3±1.3* 15.6±1.8* PH 7.4 7.5 7.5 7.4 尿タンハ゜ク 0 0 0 0 尿糖 0 0 0 0 潜血 0 0 0 0 ウロヒ゛リノーケ゛ン 0 0 0 0 Na (mEq/l) 142.1±2.3 146.8±3.0 143.3±2.3 142.9±1.6 K (mEq/l) 6.4±0.3 7.3±0.6 7.6±1.0 7.4±0.4* Ca (mg/dl) 9.6±0.5 9.3±0.4 9.5±0.9 9.4±0.8 Cl (mEq/l) 99.5±2.1 94.9±3.1 98.5±0.8 96.4±0.9 Mg (mg/dl) 3.0±0.1 3.4±0.3 3.6±0.2* 3.7±0.3* P (mg/dl) 7.5±0.3 7.9±1.0 8.0±1.3 7.6±0.6 Fe (μg/l) 183.6±19.6 149.1±12.3 156.5±20.6 148.3±17.3 SHR SHR WKY 分析項目 15g投与群 20g投与群 15g投与群 尿 (ml/day) 16.5±1.6* 12.3±1.5* 13.3±0.9* PH 7.5 7.5 7.4 尿タンハ゜ク 0 0 0 尿糖 0 0 0 潜血 0 0 0 ウロヒ゛リノーケ゛ン 0 0 0 Na (mEq/l) 144.3±1.5 145.6±2.0 143.0±3.6 K (mEq/l) 7.6±0.9 7.8±0.6* 7.5±0.6* Ca (mg/dl) 9.4±1.0 9.7±0.8 9.4±0.3 Cl (mEq/l) 93.8±2.0 96.5±0.9 95.8±1.6 Mg (mg/dl) 3.8±0.2* 3.7±0.4* 3.5±0.3* P (mg/dl) 7.9±0.6 8.2±0.6 8.0±0.6 Fe (μg/l) 146.8±20.5 138.3±12.0 139.6±16.5 *有意差有り
【0030】SHR対照群と比較してSHR抽出液投与
群で尿量は著明な増量を示した。強力な利尿作用を有す
るにも関わらず、尿タンパク、尿糖、潜血、ウロビリノ
ーゲンは検出されず、電解質の中ではカリウムとマグネ
シウムの変動が最大26%であったが、この増量は異常
が認められなかった病理的所見から考慮し、血圧降下に
関与するものと考えられる。
【0031】体重変動を図4に示す。なお、試験中、各
群の飼料摂取量に特に差は認められなかった。20g投
与群においては10週齢(抽出液投与2週目)よりエリ
ンギ粉末の大量摂取による食物繊維及び腸管吸収成分の
影響と思われる軟便、下痢症状が認められ、体重増加抑
制にはその影響が大きいと考えられる。
【0032】本発明の細胞融合エリンギ株の特に優れた
抗高血圧症作用を調べるために、比較例として一般のエ
リンギ株を用いて熱水抽出液を調製し、一般株と細胞融
合株との抗高血圧症効果の比較を行った。
【0033】比較例1 (1)抽出液の調製 一般株から栽培されたエリンギの乾燥子実体を粉砕し、
16メッシュのふるいにかけて、エリンギ粉末とした。
また、この粉体15gを600mlの熱水(80℃)中で
2時間抽出し、熱水抽出液を得た。
【0034】(2)試験動物への試料の投与方法 前述の8週齢の雄性自然発症高血圧ラット(SHR)5
頭に12週間、15gの熱水抽出液を経口投与し、20
週齢まで飼育した。その他の飼育条件は、前述の通りと
した。
【0035】(3)血圧測定 各ラットを38℃の加温器中で数分間加温させ順応した
後、非観血式自動血圧測定装置(BP-98A;株ソフトロン
製)を用いて、ラットの尾脈波から収縮期血圧を測定し
た。各ラットの血圧は毎回3回測定した値の平均値を記
録した。
【0036】(4)細胞融合株と一般株との抗高血圧症
効果の比較 細胞融合株投与群、一般株投与群、及び対照群の血圧変
動を図5に示した。
【0037】対照群と比較すると、細胞融合株投与群、
一般株投与群共に降圧効果が見られたが、細胞融合株投
与群と一般株投与群とを比較すると、細胞融合株投与群
の方がその効果が著しく高いことが認められた。
【0038】以上のことから、栄養要求性突然変異株か
ら得た2菌株のエリンギから調製したプロトプラストを
細胞融合して得られるエリンギ株は、特に優れた抗高血
圧症作用があることが理解される。また、エリンギは食
用キノコであることから、長期連用による安全性も極め
て高い。
【0039】なお、その作用機序については現在のとこ
ろ明らかではないが、血液検査及び尿検査において総コ
レステロール、HDL-コレステロール、クレアチニンの改
善及び尿量増加が降圧作用を呈した群で認められたこ
と、心拍数変動が見られなかったことから、腎機能系改
善効果を含む循環系での改善作用が降圧効果の一因とな
ることが推察される。
【0040】〈実施例2〉また、本発明の細胞融合株及
び両親株の抗高脂血症作用を調べるために、細胞融合
株、両親株を用いて熱水抽出液を調製し、抗高血圧症効
果の比較を行った。なお、親株1は菌糸の成長速度が良
好な株、親株2は木粉培地での培地含水率の適応範囲が
広い株であり、細胞融合株は両親株の利点を兼ね備えて
いる。
【0041】(1)抽出液の調製 上記の細胞融合株及び親株1、2から栽培されたエリン
ギの乾燥子実体を粉砕し、16メッシュのふるいにかけ
て、エリンギ粉末とした。この粉体15gをそれぞれ6
00mlの熱水(80℃)中で2時間抽出し、熱水抽出液
を得た。
【0042】(2)試験動物の飼育、試料の投与方法 日本チャールスリバー(株)より購入した7週齢、体重
約160gの雄性ウィスター京都ラット(WKY)20
頭を、MF粉末(オリエンタル酵母工業(株)製)に1
0%ラードと1%コレステロールを添加した高脂肪食で
1週間予備飼育した。その後、尾根部より採血してWK
Y各個体の血中総コレステロール値を測定し、平均値が
ほぼ等しくなるように1群5頭の4群に分け、下記の要
領でさらに12週間飼育し、20週齢まで飼育した。な
お、抽出液投与量は、体重60kgのヒトが熱水抽出液を
1日に600ml飲用する方法に準拠し、ラットの体重に
換算して決定した。
【0043】[a]対照群 抽出液を投与せず、高脂肪食のみで飼育した。 [b]親株1抽出液投与群 高脂肪食と共に、親株1熱水抽出液を経口投与した。 [c]親株2抽出液投与群 高脂肪食と共に、親株2熱水抽出液を経口投与した。 [d]細胞融合株抽出液投与群 高脂肪食と共に、細胞融合株熱水抽出液を経口投与し
た。
【0044】飼料と飲料水は各群とも自由摂取とした。
飼育室の環境は、温度26±2℃、湿度50%、白色蛍
光灯で1日12時間の採光下(7〜19時明期)とし
た。
【0045】(3)血液検査 実験最終日の前日に全ラットを絶食させ、翌日に深麻酔
(ネンブタール,45mg/kg,i.p.)し、左心室から20G採
血針で可能な限り採血を行った。採取した血液は、自動
血液分析装置(Auto Lab.)で分析した。
【0046】(4)統計学的解析 得られた成績は、群間比較をWilcoxon U-testで解析
し、1%以内の危険率を持って有意な差があると判定し
た。
【0047】(5)細胞融合株と両親株との抗脂血圧症
効果の比較 細胞融合株投与群、親株投与群、及び対照群の血液検査
値を表3に示す。
【0048】
【表3】 細胞融合株及び両親株での抗高血圧症効果の比較 分析項目 対照群 細胞融合株 親株1 親株2 (mg/dl) 投与群 投与群 投与群 T-Cho 218.5±9.3 87.9±7.2** 102.8±3.6* 145.8±5.2* HDL-Cho 36.1±2.9 45.6±3.1* 39.9±3.7 43.6±4.0* TG 155.8±8.4 75.6±3.9* 80.3±5.9* 77.8±6.3* GOT 189.4±5.9 133.4±9.1* 139.1±5.1* 146.3±8.9* GPT 118.9±3.9 60.2±5.3* 66.3±3.3* 67.9.±5.1* *対照群との間で有意差有り **対照群との間及び両親株との間で有意差有り
【0049】対照群と比較すると、細胞融合株投与群及
び両親株投与群共にHDL-コレステロール値に著明な上昇
が認められ、総コレステロール(T-Cho)、中性脂肪(T
G)、GOT、及びGPT値に著明な低下が計測された。さら
に、HDL-コレステロール値は、上昇しているにも係わら
ず、総コレステロール値が低下していることから、LDL-
コレステロール値の降下に影響を及ぼしていることが示
唆される。また、細胞融合株投与群と両親株投与群とを
比較すると、細胞融合株投与群の方がその効果が著しく
高く、特に総コレステロール値の低下には有意差が認め
られた。
【0050】以上のことから、本発明の細胞融合エリン
ギ株は、特に優れた血中コレステロール上昇抑制効果を
持ち、抗高脂血症作用も期待できることが認められた。
【0051】
【発明の効果】本発明によれば、長期連用による副作用
の心配がなく、安全性が極めて高い抗高血圧症エリンギ
株が提供され、高血圧症の予防、治療に極めて有用であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における抗高血圧症エリンギ株と通常の
エリンギ株のエステラーゼ(EST)とカテコールオキ
シダーゼ(Cx)のアイソザイムのパターンである。
【図2】本発明における各群のラットの血圧変化図であ
る。
【図3】本発明における各群のラットの心拍数変化図で
ある。
【図4】本発明における各群のラットの体重変化図であ
る。
【図5】本発明における細胞融合株投与群と一般株投与
群のラットの血圧変化図である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) //(C12N 1/15 C12R 1:645) C12R 1:645) C12N 15/00 B (72)発明者 藤原 道弘 福岡県福岡市中央区梅光園2−17−14 Fターム(参考) 4B018 LB10 LE03 LE05 MD82 ME04 MF01 4B024 AA01 BA80 DA11 GA07 GA21 HA20 4B065 AA71X AA71Y AB02 AC20 BD14 BD16 CA44 4C088 AA02 AC17 BA05 NA14 ZA42

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 寄託番号がFERM P−18133で
    あるエリンギ株。
  2. 【請求項2】 栄養要求性突然変異株(一核菌糸)から
    得た2菌株のエリンギから調製したプロトプラストを細
    胞融合することを特徴とする請求項1に記載のエリンギ
    株の作出法。
  3. 【請求項3】 エリンギ株を主成分とする高血圧症治療
    剤。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の高血圧症治療剤におい
    て、エリンギ株の乾燥粉末を熱水抽出したものを主成分
    とすることを特徴とする高血圧症治療剤。
  5. 【請求項5】 請求項3又は4に記載の高血圧症治療剤
    において、エリンギ株が寄託番号FERM P−181
    33のエリンギ株であることを特徴とする高血圧症治療
    剤。
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