JP5109113B2 - IgE捕捉剤、並びに抗アレルギー性の医薬組成物、化粧料組成物、食料組成物、飲料組成物及び飼料組成物 - Google Patents

IgE捕捉剤、並びに抗アレルギー性の医薬組成物、化粧料組成物、食料組成物、飲料組成物及び飼料組成物 Download PDF

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Description

本発明は、IgE捕捉剤、並びに抗アレルギー性の医薬組成物、化粧料組成物、食料組成物、飲料組成物及び飼料組成物に関する。
免疫グロブリンE(IgE)は、I型過敏症反応(アナフィラキシー)において重要な役割を果たすものである。通常、抗原に対する抗体反応は、免疫グロブリンM(IgM)の産生で始まり、その後、他のアイソタイプの産生とともに、健常人では極めて低いレベルのIgEが産生される。しかし、アレルギーに対する遺伝的な背景をもつ場合、ある種の抗原刺激に対して多量のIgEを産生してしまうことがある。
産生されたIgEは、マスト細胞等の細胞膜表面にある高親和性IgE受容体(以下、FcεRI受容体という)に結合する。マスト細胞は、さまざまな組織中に広く分布しており、IgE依存性免疫反応においてエフェクター細胞として機能する。多価の(すなわちエピトープを複数有する)抗原やアレルゲン物質の存在により、FcεRI受容体に結合しているIgEが架橋され得るが、これは、前述したように多量のIgEが産生された結果、マスト細胞等の表面にIgEが多量に結合した場合に容易に起こる。IgEが架橋されたマスト細胞では、生化学的カスケードが活性化され、アレルギー反応を引き起こすメディエーター(例えば血管拡張作用を有するヒスタミン等)が放出される。そのため、IgEは、特に初期段階のアレルギー性炎症反応に関与し機能を発揮するものと認識されてきた。しかし、その後の段階においても種々の関係を有するのではないかと考えられていた。これに関して、最近、特定の抗原刺激がない状況下で、IgEそのものが、マスト細胞に対していくつかの生物学的な影響を与えることが報告された。例えば、FcεRI受容体のアップレギュレーション、細胞寿命、サイトカインの産生、PKC活性、アクチンフィラメント含有量の増加、及び細胞粘着性の増加への影響などが挙げられる。したがって、抗IgE療法による有効性を考慮するにあたっては、抗原依存的に反応性を高めるというIgEの機能だけでなく、抗原の非存在下ではIgE独自でマスト細胞を活性化させ得る機能についても、留意する必要がある。
実際には、アレルギー性喘息やアレルギー性鼻炎の患者において、抗IgE治療による様々な抗炎症効果が報告されており(例えば、非特許文献1参照。)、これは、IgE標的療法がアレルギー性炎症の治療において非常に効果的であることを示すものである。
ところで、様々な疾患に対する天然産物の効能には大変興味深いものがある。今日では、これら天然産物は、食料、錠剤及びカプセル等として多くの国で市販されており、新規機能性食品の主たる成分であるとも言える。
最近、これら天然産物の中でも、米油及び米胚芽油から抽出された成分が大変注目されている。米は、世界で年間5億万トン以上、日本国内でも年間1000万トンを越える生産高を持つ三大穀物の一つであるが、精米過程においてその約1割にも及ぶ米糠が生じる。そこで、この米糠をいかに有効利用すべきかという点も、前記抽出成分の研究が多く行われるようになった一つの要因と言える。
前記抽出成分としては、米糠油の成分であり様々な植物の成分でもあるフェルラ酸(ferulic acid;4-hydroxy-3-methoxycinnamic acid)がよく知られており、このフェルラ酸は、抗炎症性、抗神経毒性及び抗増殖性等の様々な効能を有することが認められている(例えば、特許文献1〜2、非特許文献2〜4参照。)。
また前記抽出成分としては、フェルラ酸エステル体の一般名称(総称)である「γ-オリザノール(γ-oryzanol)」もよく知られており、血中コテステロール濃度低下作用、皮膚の老化防止作用、紫外線吸収作用、及び酸化防止作用など種々の効果が認められている(例えば、特許文献3〜21、非特許文献5参照。)。しかしながら、γ-オリザノールがアレルギー性疾患の抑制能を有するという報告は無い。
特表平10-510803号公報 特表2001-504137号公報 特公昭44-58003号公報 特開昭53-64208号公報 特開昭55-55108号公報 特開平8-188521号公報 特開昭58-150600号公報 特開昭57-149248号公報 特開昭51-56441号公報 特開昭50-160262号公報 特開昭63-14797号公報 特開昭61-14796号公報 特開昭55-162740号公報 特開昭62-277326号公報 特開昭61-106512号公報 特開昭60-130598号公報 特開昭50-66746号公報 特開昭61-248407号公報 特開昭61-40298号公報 特開昭60-248611号公報 特開昭61-194022号公報 POOLE, J.A. et al., J. Allergy Clin. Immunol., 115, S376-85, 2005 FERNANDEZ, M.A. et al., J. Pharm. Pharmacol., 50, 1183-6, 1998 ONO, K. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 336, 444-9, 2005 YAN, J.J. et al., Br. J. Pharmacol., 133, 89-96, 2001 HOU, Y.Z. et al., Eur. J. Pharmacol., 499, 85-90, 2004
そこで、本発明が解決しようとする課題は、抗IgE療法において有用な、新規なIgE捕捉剤を提供することにある。さらには、抗アレルギー性を有する新規な医薬組成物、化粧料組成物、食料組成物、飲料組成物及び飼料組成物を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、米糠等から得られる米油から抽出されたγ-オリザノールが、優れたIgE捕捉能を有することを見出した。さらに、上記γ-オリザノールが、優れた抗アレルギー性を有することを見出した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1) γ-オリザノール、若しくはその薬理学的に許容し得る塩、又はそれらの水和物を含む、IgE捕捉剤。
(2) γ-オリザノール、若しくはその薬理学的に許容し得る塩、又はそれらの水和物を含む、抗アレルギー性医薬組成物。
(3) γ-オリザノール、若しくはその薬理学的に許容し得る塩、又はそれらの水和物を含む、抗アレルギー性化粧料組成物。
(4) γ-オリザノール、若しくはその薬理学的に許容し得る塩、又はそれらの水和物を含む、抗アレルギー性食料組成物。
(5) γ-オリザノール、若しくはその薬理学的に許容し得る塩、又はそれらの水和物を含む、抗アレルギー性飲料組成物。
(6) γ-オリザノール、若しくはその薬理学的に許容し得る塩、又はそれらの水和物を含む、抗アレルギー性飼料組成物。
上記(1)〜(6)に記載の発明において、γ-オリザノールとしては、例えば、フェルラ酸シクロアルテニルを含むものが挙げられる。
本発明によれば、米油抽出物であるγ-オリザノールの新規用途として、IgE捕捉剤を提供することができる。本発明は、γ-オリザノールが、FcεRI受容体と結合する前のIgEに結合することにより、IgEと上記受容体との結合反応を阻害できるという新規なメカニズムに基づくものであり、その結果、I型過敏症反応の前提となるIgEの感作が制限され、アレルゲン物質の存在下でも脱顆粒反応を有効に抑制することができるため、極めて有用である。また、有効成分となるγ-オリザノールは天然産物由来の成分であるため、副作用等の問題が少なく安全性に優れる点でも、本発明は有用である。
さらに本発明によれば、上記γ-オリザノールの新規用途として、優れた抗アレルギー性を有する新規な医薬組成物、化粧料組成物、食料組成物、飲料組成物及び飼料組成物を提供することもできる。
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施し得る。
1.本発明の概要
本発明者は、トラニラスト(tranilast)が抗アレルギー作用を有するという知見に着目し、共通の骨格を有するフェルラ酸エステル体を含有したγ-オリザノールにおける抗アレルギー作用の有無について検討した。
具体的には、anti-DNP-IgEを感作させたラットマスト細胞株RBL-2H3の抗原(DNP-HSA)刺激による脱顆粒反応を、β-ヘキソサミニダーゼ放出を指標にして測定する系において、γ-オリザノール類、並びに芳香族カルボン酸骨格を有するフェルラ酸及びトラニラストの効果について検討を行った。なお、上記γ-オリザノール類としては、米糠より常法に従って抽出したγ-オリザノールと、γ-オリザノールの一成分として知られているフェルラ酸シクロアルテニル(cycloartenyl ferulate;CAF)とを用いた。予め、anti-DNP-IgEと、各種濃度のγ-オリザノール、CAF、フェルラ酸及びトラニラストとをRBL-2H3細胞に処理した後、DNP-HSA刺激を行うと、γ-オリザノール及びCAFでは顕著な脱顆粒抑制作用が認められた。また、トラニラストでは高濃度処理の場合に限り中程度の抑制作用が認められたが、フェルラ酸では抑制作用はほとんど認められなかった。また、ラット背位皮膚を用いた受身皮膚アナフィラキシーテスト(Passive cutaneous anaphylaxis test;PCA test)も行ったが、同様の結果となった。すなわち、γ-オリザノールは強力なマスト細胞脱顆粒抑制作用を有するものであり、それはCAFによる作用、さらにはその類縁のエステル化合物による作用が大きく寄与している可能性が示された。
次いで本発明者は、上記抑制作用の機序を解明するため、CAFを用いてさらに詳細な検討を行った。予め、anti-DNP-IgEを各種濃度のCAFで処理した後、IgE抗体を用いてELISAを行った。その結果、CAFの濃度を高くするに伴いIgEの検出量が低下した。しかしSDS-PAGEでは、CAF処理したAnti-DNP-IgEも未処理のものも検出された。この結果は、CAF処理によってIgEは分解されないことを示している。また、CAF処理したIgEは、遠心処理により容易に回収することができ、上清中のanti-DNP-IgEの含有量は顕著に減少した。
以上の結果から、γ-オリザノールは、IgEと結合する(すなわちIgEを捕捉する)ことによりマスト細胞膜表面のFcεRI受容体とIgEとの結合を抑制することが示され、また、このIgE捕捉作用により、結果としてマスト細胞の脱顆粒反応が効果的に抑制されることが示された。そして、このような作用は、少なくともγ-オリザノールの一成分であるCAFによって再現されることが示された。
アレルギー患者では血中のIgE濃度が高いことが知られており、近年、IgE抗体を用いたアレルギー治療法が有力視されている。本発明者が見出したγ-オリザノールのIgE捕捉作用は、IgE抗体療法に代わる低分子化合物による新たな治療戦略の可能性を示すものである。
なお、上述したトラニラスト(1)、及びフェルラ酸(2)の構造式を以下に示す。また、フェルラ酸シクロアルテニル(CAF)の構造式を図1のBに示す。これらの化合物は、和光純薬社等から市販されており容易に入手することができる。
2.IgE捕捉剤
本発明のIgE捕捉剤は、前述したように、γ-オリザノール、若しくはその薬理学的に許容し得る塩、又はそれらの水和物を含むことを特徴とするものである。
なお本発明は、IgE捕捉剤の製造のための、γ-オリザノール、若しくはその薬理学的に許容し得る塩、又はそれらの水和物の使用も含むものである。
本発明において「IgEを捕捉すること」、すなわち「IgE捕捉能」及び「IgE捕捉作用」とは、IgEに結合することにより、IgEがマスト細胞等の細胞膜表面に存在するFcεRI受容体に結合するのを阻害することを意味し、換言すれば、IgEをマスト細胞等から隔離すること、と言うこともできる。詳しくは、IgEは、その定常領域(Fc部分)において細胞膜表面のFcεRI受容体と結合するため、上述のようにIgEを捕捉するためには、IgEのFc部分に結合し、FcεRI受容体との結合活性を低下させ得る物質が有効成分となる。
(1) 有効成分
γ-オリザノールとは、トリテルペンアルコール及び各種植物ステロール等のフェルラ酸エステル体の総称である。γ-オリザノールは、通常、米(米糠等)から得られる米油から抽出及び精製することができる。具体的には、“BLIGH, E.G. et al., A rapid method of total lipid extraction and purification., Can. J. Biochem. Physiol., 37, 911-7, 1959”に記載されている抽出及び精製方法を適用することができる。
γ-オリザノールに含まれる成分としては、例えば、フェルラ酸シクロアルテニル(CAF)、24-メチレンシクロアルタニルフェルレート、ベーターシトステリルフェルレート、及びカンペステリルフェルレート等が挙げられる。これらは1種のみ含まれていてもよいし2種以上含まれていてもよく、限定されるものではない。一般には、γ-オリザノールは、CAF及びその他のフェルラ酸エステル体を含む複数成分からなるものである。これら成分のうち、少なくともCAFについては、単独で高いIgE補足作用を有するため特に好ましく、またCAFの薬理学的に許容可能な塩又は水和物(後述する)などのCAF類縁活性成分(未同定のものも含む)も、CAFと同様に好ましい。後述のように、CAFが作用を発揮するにはその疎水性が重要である。従って、上記CAF類縁活性成分としては、CAFの疎水性領域を保存し得る範囲で、あるいはCAFの疎水性を保存し得る範囲で、CAFを改変し、IgE補足活性を有するCAF誘導体を作製することもできる。
γ-オリザノールにCAFが含まれる場合、その含有割合は、γ-オリザノール全体のなかでの活性物質の割合がある程度以上の純度で存在し、IgE捕捉作用を十分に発揮できる範囲であれば、限定されるものではない。
γ-オリザノールの薬理学的に許容可能な塩(以下、γ-オリザノールの塩)としては、限定はされないが、薬理学的に許容される酸付加塩又は塩基性塩が挙げられる。酸付加塩としては、例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸などの無機酸との塩;酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸との塩が挙げられる。塩基性塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、マグネシウム、アルミニウムなどの無機塩基との塩;カフェイン、ピペリジン、トリメチルアミン、ピリジン、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミンなどの有機塩基との塩;リジン、アルギニン、オルニチン等の塩基性アミノ酸との塩等が挙げられる。
γ-オリザノールの塩は、例えば、塩酸などの適切な酸、あるいは水酸化ナトリウム等の適切な塩基を用いる方法で調製することができる。具体的には、水中、又はメタノール、エタノール若しくはジオキサンなどの不活性な水混和性有機溶媒を含む液体中で、一般に知られている標準的なプロトコルを用いて処理することにより調製することができる。
本発明のIgE捕捉剤がγ-オリザノールの塩を有効成分として含む場合、当該塩は、1種のみであってもよいし2種以上であってもよく、限定はされない。
上述したγ-オリザノール及びその塩は、例えば、生体内で酸化、還元、加水分解、又は抱合などの代謝を受けるγ-オリザノール及びその塩をも包含するほか、生体内で酸化、還元、又は加水分解などの代謝を受けてγ-オリザノール及びその塩を生成する化合物をも包含する。
γ-オリザノール及びその塩は、化合物の構造上生じ得るすべての異性体(例えば、幾何異性体、不斉炭素に基づく光学異性体、回転異性体、立体異性体、及び互変異性体等)及びこれら異性体の2種以上の混合物をも包含し、便宜上の構造式の記載等に限定されるものではない。
γ-オリザノール及びその塩は、その種類により水和物の形で存在する場合もあり、本発明においては当該水和物もγ-オリザノール又はその塩に含むものとする。
本発明のIgE捕捉剤において、有効成分としてのγ-オリザノール、若しくはその塩、又はそれらの水和物の含有割合は、限定はされず、適宜設定することができるが、有効成分としてのγ-オリザノール、若しくはその塩、又はそれらの水和物は、より高純度となるよう精製されたものであることがより好ましい。
(2) その他の成分
本発明のIgE捕捉剤は、上述した有効成分以外にも他の成分を含むことができる。他の成分としては、例えば、後述する各種用法(使用形態)に応じて必要とされる(または好ましく用いられる)成分等が挙げられる。これら他の成分は、上述した有効成分により発揮されるIgE捕捉作用が損なわれない範囲で含有することができる。
(3) 用法、用量
本発明のIgE捕捉剤の投与は、例えば、非経口又は経口等の公知の用法で行うことができ、限定はされないが、好ましくは非経口投与、特に好ましくは経皮投与である。
これら各種用法に用いる製剤(経口剤や非経口剤等)は、薬剤製造上一般に用いられる賦形材、充填材、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、潤滑剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤、等張化剤等を適宜選択して使用し、常法により調製することができる。
本発明のIgE捕捉剤の投与量は、製剤中の有効成分の配合割合を考慮した上で、投与対象(患者)の年齢、体重、疾患の種類・進行状況や、投与経路、投与回数、投与期間等を勘案し、適宜、広範囲に設定することができる。
本発明のIgE捕捉剤を非経口剤又は経口剤として用いる場合について、以下に具体的に説明する。
非経口剤として用いる場合、その形態は限定されず、例えば、静脈内注射剤(点滴を含む)、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤、皮下注射剤、点鼻薬、坐剤、軟膏、クリーム及び塗布液等のいずれであってもよいが、中でも、軟膏、クリーム及び塗布液等の経皮投与を目的とするものが好ましく、特に好ましくは軟膏である。各種注射剤の場合は、例えば、単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態や、使用時に溶解液に再溶解させる凍結乾燥粉末の状態で提供され得る。当該非経口剤には、前述した有効成分のほかに、各種形態に応じ、公知の各種賦形材や添加剤を上記有効成分の効果が損なわれない範囲で含有することができる。例えば、各種注射剤の場合は、水、グリセロール、プロピレングリコールや、ポリエチレングリコール等の脂肪族ポリアルコール等が挙げられる。
非経口剤の投与量(1日あたり)は、限定はされず、有効な組織濃度が保たれるように適宜設定することができる。
経口剤として用いる場合、その形態は限定されず、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、トローチ剤、内用水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等のいずれであってもよいし、使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよい。当該経口剤には、前述した有効成分のほかに、各種形態に応じ、公知の各種賦形材や添加剤を上記有効成分の効果が損なわれない範囲で含有することができる。例えば、結合剤(シロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント、ポリビニルピロリドン等)、充填材(乳糖、糖、コーンスターチ、馬鈴薯でんぷん、リン酸カルシウム、ソルビトール、グリシン等)、潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ等)、崩壊剤(各種でんぷん等)、および湿潤剤(ラウリル硫酸ナトリウム等)等が挙げられる。
経口剤の投与量(1日あたり)は、限定はされず、有効な血液濃度が保たれるように適宜設定することができる。
経口剤中の有効成分の配合割合は、限定はされず、1日あたりの投与回数等を考慮して、適宜設定することができる。

3.組成物
本発明にかかる抗アレルギー性の医薬組成物、化粧料組成物、食料組成物、飲料組成物及び飼料組成物は、前述したように、いずれも、γ-オリザノール、若しくはその薬理学的に許容し得る塩、又はそれらの水和物を含むことを特徴とするものである。
なお本発明は、抗アレルギー性の医薬組成物、化粧料組成物、食料組成物、飲料組成物及び飼料組成物の製造のための、γ-オリザノール、若しくはその薬理学的に許容し得る塩、又はそれらの水和物の使用も含むものである。
上記の各組成物において有効成分となるγ-オリザノール、若しくはその薬理学的に許容し得る塩、又はそれらの水和物、並びに他の成分に関する説明については、上記2.(1),(2)における記載が同様に適用できる。
(1) 医薬組成物
本発明の抗アレルギー性医薬組成物の投与は、例えば、非経口又は経口等の公知の用法で行うことができ、限定はされないが、好ましくは非経口投与である。
これら各種用法に用いる製剤(経口剤や非経口剤等)は、薬剤製造上一般に用いられる賦形材、充填材、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、潤滑剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤、等張化剤等を適宜選択して使用し、常法により調製することができる。
本発明の抗アレルギー性医薬組成物の投与量は、製剤中の有効成分の配合割合を考慮した上で、投与対象(患者)の年齢、体重、疾患の種類・進行状況や、投与経路、投与回数、投与期間等を勘案し、適宜、広範囲に設定することができる。
本発明の抗アレルギー性医薬組成物を非経口剤又は経口剤として用いる場合についての説明は、上記2.(3)における記載が同様に適用できる。
なお本発明は、γ-オリザノール、若しくはその薬理学的に許容し得る塩、又はそれらの水和物の有効量を患者に投与することを特徴とする、アレルギー性疾患の治療及び/又は予防方法をも含むものである。アレルギー性疾患としては、例えば、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎、及びアレルギー性腸炎などが挙げられる。
(2) 化粧料組成物(化粧品)
本発明の化粧料組成物において、有効成分としてのγ-オリザノール、若しくはその薬理学的に許容し得る塩、又はそれらの水和物の含有割合は、限定はされず、各種化粧品の種類に応じて、適宜設定することができる。
また本発明の化粧料組成物を得る方法も、限定はされず、各種化粧品の種類に応じた公知の製造方法において、任意の手法及びタイミングで上記有効成分を含有させるようにすればよい。
本発明の化粧料組成物としては、例えば、化粧水、乳液、ファンデーション、及び口紅等の公知の化粧品が挙げられる。
本発明の化粧品により、消費者はアレルギー反応による各種症状の恐れを気にすることなく、あるいはその恐れを軽減して、使用することができる。
(3) 食料組成物(食品)
本発明の食料組成物において、有効成分としてのγ-オリザノール、若しくはその薬理学的に許容し得る塩、又はそれらの水和物の含有割合は、限定はされず、各種食品の種類に応じて、適宜設定することができる。
また本発明の食料組成物を得る方法も、限定はされず、各種食品の種類に応じた公知の製造方法において、任意の手法及びタイミングで上記有効成分を含有させるようにすればよい。
本発明の食料組成物としては、例えば、小麦粉利用食品、米粉利用食品、及びその他の食品が挙げられる。
小麦粉利用食品としては、例えば、食パン及び菓子パン等のパン類;クッキー及びホットケーキ等の菓子類;うどん、そば、中華そば及びパスタ等の麺類等が挙げられる。
米粉利用食品としては、例えば、餅、和菓子及びせんべい等が挙げられる。
その他の食品としては、例えば、ヨーグルト、アイスクリーム及びプリン等の公知のほぼ全ての食品が挙げられる。
本発明の食品により、消費者はアレルギー反応による各種症状の恐れを気にすることなく、あるいはその恐れを軽減して、食することができる。
(4) 飲料組成物(飲料)
本発明の飲料組成物において、有効成分としてのγ-オリザノール、若しくはその薬理学的に許容し得る塩、又はそれらの水和物の含有割合は、限定はされず、各種飲料の種類に応じて、適宜設定することができる。
また本発明の飲料組成物を得る方法も、限定はされず、各種飲料の種類に応じた公知の製造方法において、任意の手法及びタイミングで上記有効成分を含有させるようにすればよい。
本発明の飲料組成物としては、例えば、清涼飲料、野菜ジュース、果物ジュース、お茶、スープ、ミネラルウォーター等の水、コーヒー、乳飲料、豆乳、及び滋養強壮ドリンク等が挙げられる。
本発明の飲料により、消費者はアレルギー反応による各種症状の恐れを気にすることなく、あるいはその恐れを軽減して、飲むことができる。
(5) 飼料組成物
本発明の飼料組成物において、有効成分としてのγ-オリザノール、若しくはその薬理学的に許容し得る塩、又はそれらの水和物の含有割合は、限定はされず、各種飼料の種類に応じて、適宜設定することができる。
また本発明の飼料組成物を得る方法も、限定はされず、各種飼料の種類に応じた公知の製造方法において、任意の手法及びタイミングで上記有効成分を含有させるようにすればよい。
本発明の飼料組成物としては、例えば、牛、馬、豚、鶏、犬、及び猫等の各種家畜又は愛玩動物に与える飼料が挙げられ、また当該飼料に加える添加物、若しくはサプリメントとして加えるペレット及び液状等の形態のもの等も挙げられる。
本発明の飼料組成物により、家畜は、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎、アレルギー性腸炎、喘息などの様々なアレルギー反応による各種症状の軽減、あるいはアレルギーへの恐れの軽減を期待して摂取することができる。

以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.材料及び方法
(1) γ-オリザノールの精製法
米糠200gに対し、1Lの特級ヘキサンを加え、カップ型ホモジナイザーで12,000回転、5分間均一に攪拌した後、No.1濾紙にて吸引濾過を行った。この操作を再度繰り返した後、得られた脱脂糠をエバポレーターにてヘキサン除去した。
得られた脱脂糠に2倍量の蒸留水を加え、カップ型ホモジナイザーで12,000回転、5分間均一に攪拌した後、5,000G、20分間の遠心分離にて糠を沈殿として回収した。再度、蒸留水によって水溶性成分を抽出し、遠心分離後、得られた残滓糠をエバポレーター及び室温放置によって乾燥させた。
得られた残滓糠に対し、1Lのクロロホルム/メタノール混合溶媒(混合比1:1)を加え、カップ型ホモジナイザーで12,000回転、5分間均一に攪拌した後、No.1濾紙にて吸引濾過を行った。この操作を再度繰り返した後、得られた濾液をエバポレーターにて乾燥させ、精製γ-オリザノールを得た。
(2) PCA反応
岡らの方法(OKA, T. et al., Microtubule disruption suppresses allergic response through the inhibition of calcium influx in the mast cell degranulation pathway., J. Immunol., 174, 4584-9, 2005)を用い、アレルギーモデルとして受身皮膚アナフィラキシー(PCA)反応を行った。体重約300gの8週齢の雄のSprague-Dawleyラット(Charles River)を使用した。anti-DNP-IgE(200ng/ml:シグマ)を、麻酔下で皮内注射により背位皮膚に投与した。2時間後、1mlの食塩水に1%エバンスブルー(シグマ)と抗原(1mg/ml DNP-ヒト血清アルブミン(DNP-HSA))とを加えたものを、尾静脈から注射した(i.v.)。30分後、ラットの皮膚を剥ぎ、裏返して、撮影した。次いで、同一の円形の皮膚(約1cm2)を切り取り、99% N,N-ジメチルホルムアミド(和光純薬)中において55℃で24時間インキュベートすることで、血管外に浸出したエバンスブルーを抽出した。遠心処理して上清を回収し、マルチラベルカウンター(パーキンエルマー)により650nmでのODを測定した。浸出率(%)について、0から200ng/ml投与したものをそれぞれ0から100%として計算した。動物の扱い及び処理は、東京大学の施設ガイドラインに沿って実施した。
(3) β-ヘキソサミニダーゼ脱顆粒
β-ヘキソサミニダーゼの放出は、岡らの方法(J. Immunol., 174, 4584-9, 2005(上掲))を用い、マスト細胞の脱顆粒反応の指標として測定した。RBL-2H3細胞(American Type Culture Collection)は、ゆっくり攪拌した状態の24ウェルプレート中、37℃で培養した。上清中の酵素と、0.5% triton X-100放出酵素を、0.04M クエン酸ナトリウム中で、p-ニトロフェニル-N-アセチル-β-D-グルコサミド(シグマ)とともにインキュベートし、NaOHでpH10に調整した0.2M グリシンにより反応を停止した。マルチラベルカウンター(パーキンエルマー)により405nmでのODを測定した。脱顆粒率(%)を下記式を用いて計算した。
脱顆粒率(%) =〔上清のOD/(上清のOD + triton X-100のOD)〕×100
(4) 顕微鏡観察
カバーグラス上のRBL-2H3細胞を、3.7%ホルムアルデヒドにより37℃で10分間固定し、その後、PBSで洗浄した。細胞は、光学顕微鏡(ニコン)で観察した。
(5) ELISA
常法(BD biosciences)によりIgEの濃度を測定した。96ウェルプレートを抗マウスIgE捕捉モノクローナル抗体(PharMingen)でコートし、1% BSAを含むPBSでブロッキングした。精製標準anti-TNP-IgE(PharMingen)を2倍ずつ希釈し、又はγ-オリザノール若しくはフェルラ酸シクロアルテニル(CAF)(和光純薬)とインキュベートした。プレートは、IgEとインキュベートし、その後、ビオチン化抗マウスIgE(Serotec)とインキュベートした。プレートを洗浄し、SAv-HRPとインキュベートし、その後、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(シグマ)とインキュベートした。1M硫酸の添加により、呈色反応を停止した。マルチラベルカウンター(パーキンエルマー)により405nmでのODを測定した。
(6) SDS-PAGE
anti-DNP-IgE(シグマ)及びanti-TNP-IgE(PharMingen)の軽鎖及び重鎖を検出するために、SDS-PAGEを行った。遠心処理(20,000G、4℃、10分間)後のIgEを、SDS-PAGEの常法により処理した。IgEの軽鎖及び重鎖は、10% SDS-PAGEで分離し、銀染色(Silver staining II kit、和光純薬)により検出した。染色後のゲルは、デジタルカメラによりイメージ化して保存し、image-processing program(Scion image)を使用してタンパク質の量(強度)を定量した。コントロールを100%として、バンドの濃度(密度)(%)を計算した。
(7) 他の化学物質
フェルラ酸シクロアルテニル(CAF)(和光純薬)、cremophor EL(ナカライテスク)、パパイン(シグマ)を用いた。

2.結果
(1) フェルラ酸シクロアルテニル(CAF)の主成分であるγ-オリザノール
まず本発明者は、米由来のγ-オリザノールに含まれる化学的成分の同定を試みた。図1のAに示すように、少なくとも4種類のフェルラ酸エステルが存在し、CAF(図1のB参照)がγ-オリザノールの主成分であることが分かった。
(2) フェルラ酸シクロアルテニル(CAF)によるマスト細胞の脱顆粒反応阻害
まず本発明者は、in vivoでのPCA反応に関するγ-オリザノール及びCAFの効果を確認した。anti-DNP-IgEを皮内注射し、その後、エバンスブルーの浸出を誘引するDNP-HSAを静脈注射した。anti-DNP-IgEを、γ-オリザノール及びCAFと60分間インキュベートした後、ラットの背位皮膚にanti-DNP-IgEの混合溶液を皮内注射した。エバンスブルーの浸出は、γ-オリザノール(図2のA参照)及びCAF(図2のB参照)により、濃度依存的に阻害された。
次いで、本発明者は、in vitroにおいてマスト細胞の脱顆粒反応に関するCAFの効果を確認した。anti-DNP-IgEで感作させたRBL-2H3細胞は、DNP-HSA刺激後、β-ヘキソサミニダーゼを放出した。CAFとインキュベートしたanti-DNP-IgEをRBL-2H3細胞に添加した場合、DNP-HSA刺激後、脱顆粒反応は、CAFにより濃度依存的に阻害された(図3のA参照)。また阻害効果は、CAFとanti-DNP-IgEとのインキュベートの時間に依存した(図3のB参照)。本発明者はまた、抗原刺激後の細胞形状を確認した。anti-DNP-IgEにより感作していないRBL-2H3細胞では、DNP-HSA刺激によっても細胞の形態は変化しなかった(図3のC参照)。一方、anti-DNP-IgEで感作したRBL-2H3細胞は、DNP-HSA刺激により細胞の形態変化が生じた(図3のD参照)。しかし、RBL-2H3細胞をCAFとインキュベートしたanti-DNP-IgEで処理した場合、その後のDNP-HSA刺激により細胞形状は変化しなかった(図3のE参照)。
本発明者は、CAFが、既にanti-DNP-IgEで感作されたRBL-2H3細胞の脱顆粒反応を阻害し得るか検討した。その結果、CAFはあらかじめanti-DNP-IgEで感作したRBL-2H3細胞におけるDNP-HSA刺激による脱顆粒反応を抑制できなかった(図4参照)。
(3) フェルラ酸シクロアルテニル(CAF)によるIgE捕捉
上記の知見から、γ-オリザノール及びCAFは、IgEのFcεRI受容体への結合能に何らかの影響を持つと考えられる。この点を明らかにするため、本発明者はまず、ELISAによりIgE濃度に関するCAFの影響を測定した。anti-TNP-IgEをγ-オリザノール又はCAFとともに60分間インキュベートすると、ELISAで検出できる溶液中のIgE濃度は、γ-オリザノール又はCAFの濃度に依存して減少した(図5のA〜C参照)。また、IgE濃度に対するCAFの効果は、インキュベートの時間にも依存した(図5のD参照)。これらの結果から、CAFとのインキュベーション後は、ELISAでの抗IgE抗体はIgEを検出できないと考えられる。
IgEに対する上記CAFの効果に関しては、少なくとも2つの可能性があると思われる。1つの可能性は、抗IgE抗体からのIgEの捕捉(隔離)であり、もう1つの可能性は、IgEのコンフォメーション変化である。この点を調べるため、SDS-PAGEによりIgE分子を分析した。銀染色により、高分子と低分子のバンドが検出された(図6参照)。上のバンド(パパイン処理後のものでは確認されない)は、IgEの重鎖であり、下のバンドは、IgEの軽鎖である(図6のA及びD参照)。IgEをCAFとインキュベートすることによっては、IgE分子の電気泳動度及び量のいずれにも何の影響もみられなかった(図6のB、C、E及びFの左から3番目のバンド又はグラフを参照)。IgEをCAFとインキュベートしたときは、遠心処理後の上清におけるIgEの量が減少した(図6のB、C、E及びFの左から4番目のバンド又はグラフを参照)。これらの結果から、CAFはIgEを捕捉し、CAFとIgEとの複合体が遠心処理によって沈殿したと考えられる。
CAFは疎水性領域を有することから、本発明者は、CAFとIgEとの結合には両者間の疎水性相互作用が必要ではないかと考えた。そこで、本発明者は、IgEに対するCAFの効果に関して、界面活性剤の影響を確認した。低細胞障害性の界面活性剤(cremophor EL)の存在下で、γ-オリザノールとインキュベートしたanti-DNP-IgE、及びCAFとインキュベートしたanti-DNP-IgEは、いずれも、PCA反応におけるエバンスブルーの血管外への浸出(図7のA参照)、及び脱顆粒反応(図7のB参照)を阻害できなかった。これらの結果から、IgEの捕捉にはCAFの疎水性が必要であると考えられる。

3.考察
本実施例において、本発明者は、米糠から抽出されたγ-オリザノールについてのPCA反応における効果を確認した(図2参照)。その結果、図2のAに示すように、γ-オリザノールは当該反応を顕著に阻害することが分かった。フェルラ酸シクロアルテニル(CAF)はγ-オリザノールの主成分の一つであるため(図1参照)、次に本発明者は、PCA反応におけるCAFの効果を試験した。図2のBに示すように、CAFはPCA反応を阻害した。
CAFのこの阻害効果によりマスト細胞の脱顆粒反応が阻害されることを確認するため、さらに本発明者は、RBL-2H3細胞を用いて、脱顆粒反応におけるCAFの効果を確認した(図3参照)。その結果、図3のAに示すように、CAFは濃度依存的にマスト細胞の脱顆粒反応を阻害した。またこの阻害効果は、図3のBに示すように、CAFとanti-DNP-IgEとのインキュベーションの時間に依存した。さらに、IgEが一旦マスト細胞に結合すると、CAFは脱顆粒反応を阻害できなかった(図4参照)。これらの結果は、CAFが、IgEのFcεRI受容体への結合能に関して何らかの効果を有することを示している。
CAFがどのようにしてIgEの結合を阻害しているかを明らかにするため、本発明者は、まず、ELISAによりIgEの濃度測定を行った。図5に示すように、γ-オリザノール及びCAFは、抗IgE抗体により検出されるIgEの濃度を減少させた。しかしながら、SDS-PAGEによる分析では、IgEは、CAFとのインキュベーション後であっても、なお溶液中に存在していた(図6のBとEの左から3番目のバンドを参照)。他方では、CAFとインキュベートしたIgEは、遠心処理により上清から除去された(図6のB、C、E及びFの左から4番目のバンド又はグラフを参照)。したがって、本発明者は、CAFがIgEを捕捉したために、ELISAにおける抗IgE抗体では検出できないと考えた。IgEが遠心処理により上清から除去されることを考慮すると、CAFは大きなクラスターを形成していると考えられる。
さらに、γ-オリザノール及びCAFは、cremophor ELの存在下ではアレルギー反応を阻害できなかったことから(図7のA,B参照)、アレルギー反応を阻害するためにはCAFとIgEとの疎水性相互作用が必要であると考えられる。
CAFはフェルラ酸のエステルであり、フェルラ酸が多様な薬理学的活性を有することは既に報告されているため、本発明者は、アレルギー反応におけるフェルラ酸単独の効果を試験した。しかしながら、フェルラ酸(30μM未満)はPCA反応を弱めることができず、β-ヘキソサミニダーゼの放出阻害もしなかった。これらの結果により、CAFの疎水性がIgE捕捉作用を発揮するためには必要であると考えられる。
先に述べたように、アレルギー疾患におけるIgEの更なる重要性は、今日においても注目されている。したがって、IgEは、アレルギー疾患において鍵となる標的である。本発明者は、米糠から抽出されたγ-オリザノール中のCAFが、IgEを捕捉し、FcεRI受容体との結合を阻害することにより、結果としてアレルギー反応が低減されることを実証した。米糠に含まれるこのような天然産物は、アレルギー疾患の治療薬として使用することができ、またその予防を目的とした使用法、たとえば機能性食品への使用も可能である。
フェルラ酸シクロアルテニル(CAF)が、米糠から抽出されたγ-オリザノールの主たる成分の一つであることを示す図である。
Aは、米糠におけるフェルラ酸エステルの割合であり、Bは、CAFの構造である。
γ-オリザノール及びCAFがPCA反応を弱めることを示す図である。
anti-DNP-IgE(200ng/ml)を、表示された濃度のγ-オリザノール(A)又はCAF(B)と60分間インキュベートし、ラットの背位皮膚に注射した。上のパネルはPCA反応の典型的な写真を示している。下のグラフは、遊出したエバンスブルーに関する分析データである(試験例数:6〜8例)。
CAFがRBL-2H3細胞の脱顆粒反応を阻害することを示す図である。
anti-DNP-IgE(50ng/ml)を、表示された濃度のCAFと60分間インキュベートするか(A)、又は10μMのCAFと表示された時間でインキュベートした(B)。RBL-2H3細胞を、IgE及びCAFと15分間インキュベートし、10ng/ml DNP-HSAで15分間刺激した。DNP-HSAによるβ-ヘキソサミニダーゼの放出率(%)を計算し、その結果は、6例の試験の平均±SEとして表記した。
RBL-2H3細胞を感作させないか(C)、IgEで15分間感作させるか(D)、又はIgE及び10μMのCAFで15分間感作させた(E)。次いで、10ng/ml DNP-HSAで15分間刺激した。細胞をホルムアルデヒドで固定し、顕微鏡下で観察した。結果は、4例の試験中の代表的なものである。
CAFがIgE結合RBL-2H3細胞の脱顆粒反応を阻害できないことを示す図である。
RBL-2H3細胞を感作させないか(-IgE)、又は50ng/ml anti-DNP-IgEで15分間感作させた。続いて、30μMのCAF存在下又は非存在下で60分間インキュベートした。その後、細胞を10ng/ml DNP-HSAで15分間刺激した。DNP-HSAによるβ-ヘキソサミニダーゼの放出率(%)を計算し、その結果は、8例の試験の平均±SEとして表記した。
γ-オリザノール及びCAFがELISAにより検出されるIgE濃度を減少させることを示す図である。
anti-TNP-IgE(A及びBでは200ng/ml、Cでは50ng/ml)を、表示された濃度のγ-オリザノール(A)又はCAF(B及びC)と60分間インキュベートした。anti-TNP-IgE(200ng/ml)を、表示された時間10μM CAFとインキュベートした(D)。ELISAによりIgE濃度を測定し、その結果は、4例の試験の平均±SEとして表記した。
CAFがIgEを捕捉することを示す図である。
遠心処理後のanti-DNP-IgE(A〜C;10μg/ml)又はanti-TNP-IgE(D〜F;10μg/ml)を、2μMパパインの非存在下(コントロール)若しくは存在下(A及びD)で60分間インキュベートするか、又は30μM CAFと60分間インキュベートした(B及びE)。その後、溶液を、再度遠心処理するか(B及びE;20,000G、4℃、10分間)、又は遠心処理しなかった。B及びEにおける重鎖(HC)及び軽鎖(LC)のバンド密度を計算し、それぞれC及びFに示した。
CAFがcremophor ELの存在下ではアレルギー反応を阻害できないことを示す図である。
anti-DNP-IgE(200ng/ml)を、0.01% cremophor ELの存在下において、18μg/mlのγ-オリザノール(γ-ory)の非存在下若しくは存在下で60分間インキュベートするか、又は30μM CAFの存在下で60分間インキュベートした。その後、ラットの背位皮膚に注射した。上のパネルはPCA反応の典型的な写真を示している。下のグラフは、遊出したエバンスブルーに関する分析データである(試験例数:4例)。
anti-DNP-IgE(50ng/ml)を、0.01% cremophor ELの存在下又は非存在下において、18μg/mlのγ-オリザノール(γ-ory)の非存在下若しくは存在下で60分間インキュベートするか、又は30μM CAFの存在下で60分間インキュベートした。これらでRBL-2H3細胞を15分間感作させた。DNP-HSAによるβ-ヘキソサミニダーゼの放出率(%)を計算し、その結果は、4〜12例の試験の平均±SEとして表記した。

Claims (2)

  1. フェルラ酸シクロアルテニル、若しくはその薬理学的に許容し得る塩、又はそれらの水和物を含む(但し、γ-オリザノールに含まれる成分のうちフェルラ酸シクロアルテニル以外の成分、若しくはその薬理学的に許容し得る塩、又はそれらの水和物を含まない)、IgE捕捉剤。
  2. 界面活性剤を含まないものである、請求項1に記載のIgE捕捉剤。
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