JP2002153295A - β−1,4−ガラクトシルマルトースの連続的製造方法 - Google Patents

β−1,4−ガラクトシルマルトースの連続的製造方法

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JP2002153295A
JP2002153295A JP2000356157A JP2000356157A JP2002153295A JP 2002153295 A JP2002153295 A JP 2002153295A JP 2000356157 A JP2000356157 A JP 2000356157A JP 2000356157 A JP2000356157 A JP 2000356157A JP 2002153295 A JP2002153295 A JP 2002153295A
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maltose
galactosyl
liquid
lactose
galactosylmaltose
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JP2000356157A
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Kazufumi Murakami
和史 村上
Tetsuya Ito
哲也 伊藤
Takateru Fujita
孝輝 藤田
Kozo Hara
耕三 原
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YOKOHAMA KOKUSAI BIO KENKYUSHO
Ensuiko Sugar Refining Co Ltd
Yokohama Kokusai Bio Kenkyusho KK
Original Assignee
YOKOHAMA KOKUSAI BIO KENKYUSHO
Ensuiko Sugar Refining Co Ltd
Yokohama Kokusai Bio Kenkyusho KK
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 全体操作を簡略化したβ−1,4−ガラクト
シルマルトースの製造方法を提供すると共に、晶析法に
より高純度β−1,4−ガラクトシルマルトースの生産
を工業的規模で簡便に行うことができる製造方法を提供
すること。 【解決手段】 内部に充填剤層が形成された塔の複数を
無端に連結した系内にラクトースとマルトースを原料と
して含む原料液及び溶離液をそれぞれ供給し、該液を一
方向に循環流として流す操作と、この系に導入されたガ
ラクトシル基転移酵素を含む酵素液又は固定化した該酵
素を、ラクトース及びマルトースと反応させ、生成した
β−1,4−ガラクトシルマルトースに富む区分液とグ
ルコースに富む区分液をそれぞれ上記系外に抜出す操作
と、前記原料液及び溶離液の各液を供給する入口の位置
及び各区分液を該系から抜出す出口の位置を間欠的に移
動させ、上記入口及び出口に対して充填剤を液の流れと
は見かけ上反対方向に移動させる擬似移動層式クロマト
分離の操作を行うことを特徴とするβ−1,4−ガラク
トシルマルトースの連続的製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はβ−1,4−ガラク
トシルマルトースの連続的製造方法に関する。この物質
は、α−アミラーゼ活性の測定に用いられるβ−1,4
−ガラクトシルマルトース誘導体やα−アミラーゼ阻害
剤として有用な物質の製造原料として使用される。
【0002】
【従来の技術】膵液や尿などの体液に含有されるα−ア
ミラーゼの活性を測定することによって、各種疾患の診
断が行われている。α−アミラーゼの活性測定用基質の
一つとしてβ−1,4−ガラクトシルマルトースの還元
性末端にフェニル基、ナフチル基、またはそれらの誘導
体をアグリコンとして結合させた化合物が知られている
(特開平6−315399号公報)。この基質を用いる
活性測定法はα−グリコシダーゼやグルコアミラーゼ等
の共役酵素を使用しないため、体液中のα−アミラーゼ
活性を高感度で簡便に測定することが可能である。この
ように、β−1,4−ガラクトシルマルトース誘導体は
臨床検査において非常に有用な化合物であり、この物質
はβ−1,4−ガラクトシルマルトースを原料として製
造することができる。また、β−1,4−ガラクトシル
マルトースは、α−アミラーゼ阻害剤として有効である
ことが知られているガラクトシルマルトビオノラクトン
(特開平8−291192号公報)の原料としても用い
られている。
【0003】しかしながら、これらに用いられるβ−
1,4−ガラクトシルマルトースは98%以上の高純度
であることが必要であり、工業的にはその製造方法は十
分に確立されてはいない。β−1,4−ガラクトシルマ
ルトースは、マルトースの非還元性末端にガラクトース
がβ−1, 4結合した3糖であり、糖供与体としてラク
トースを、糖受容体としてマルトースを用い、β−ガラ
クトシダーゼの糖転移反応により合成することが出来
る。しかしながら、この酵素反応は平衡反応であり、目
的とするβ−1,4−ガラクトシルマルトースの生成率
が10%程度と低く、さらにβ−1,4−ガラクトシル
マルトースと同時に異性体であるβ−1,6−ガラクト
シルマルトースや糖供与体として用いるラクトース自身
にガラクトースが転移したガラクトシルラクトースが生
成する。
【0004】これらの化合物は、各種分画処理において
β−1,4−ガラクトシルマルトースと同様の挙動を示
すため、工業的規模でのβ−1,4−ガラクトシルマル
トースの分画は困難である。そこで、一般的には糖供与
体としてラクトースを、糖受容体としてマルトオリゴ糖
を用い、β−ガラクトシダーゼの糖転移反応によりガラ
クトシルマルトオリゴ糖をまず生成し、得られたガラク
トシルマルトオリゴ糖からβ−1,4−ガラクトシルマ
ルトースを製造する方法が行われている。ガラクトシル
マルトオリゴ糖からβ−1,4−ガラクトシルマルトー
スを製造する方法には2つあり、第一の方法は生成した
ガラクトシルマルトオリゴ糖画分から分画によってガラ
クトシルラクトースを除去し、得られたガラクトシルマ
ルトオリゴ糖にタカアミラーゼを作用させガラクトシル
マルトースを生成させ、再度分画することによって高純
度のβ−1,4−ガラクトシルマルトースを製造する方
法(特開平8−173180号公報)である。第二の方
法はガラクトシルマルトオリゴ糖反応液にβ−1,6−
ガラクトシルマルトオリゴ糖には作用せず、β−1,4
−ガラクトシルマルトースのみを遊離するサーモモノス
ポラ属放線菌のα−アミラーゼを作用させ、β−1,4
−ガラクトシルマルトースを得、共存するガラクトシル
ラクトースはβ−ガラクタナーゼを作用させることによ
り低分子化し、最終的に分画によって高純度のβ−1,
4−ガラクトシルマルトースを製造する方法(特開平1
1−215997号公報)である。
【0005】しかし、これらの方法は何れもガラクトシ
ルマルトオリゴ糖を合成した後、種々の酵素剤を作用さ
せることによってβ−1,4−ガラクトシルマルトース
を製造しているため、糖受容体としてマルトースを用い
る方法に比べ操作が煩雑である。さらに、98%以上の
高純度β−1,4−ガラクトシルマルトースを得るため
には、通常のODSカラム、ゲルろ過、イオンクロマト
等のカラムクロマトでの分離を行う必要があるが、β−
ガラクトシダーゼ以外の酵素剤を多量に用いること、さ
らに通常のカラムクロマトではβ−1,4−ガラクトシ
ルマルトースの回収率が低くなることによって製品は高
価にならざるを得なかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明者らは
上記の酵素反応が平衡反応であり、原料のラクトースと
マルトースが2糖同士であってカラム内で分離し難く、
生成物であるβ−1,4−ガラクトシルマルトースとグ
ルコースが原料から容易に分離可能である点に着目し、
擬似移動層分離装置内に原料を連続注入し、ガラクトシ
ル基転移活性を有する酵素液、又は固定化した酵素によ
り連続的に反応を行いながら、生成したβ−1,4−ガ
ラクトシルマルトースを酵素反応系外へ分離して、反応
を目的物の生成方向に進め、総括的な反応率を平衡反応
以上に高めることによって、β−1,4−ガラクトシル
マルトース含有率の高い反応液を得ることに成功した。
さらに、晶析法を用いることにより、得られた反応液か
ら効率的に純度98%以上の高純度β−1,4−ガラク
トシルマルトースを製造することに成功し、本発明を完
成させた。
【0007】本発明の目的は、擬似移動層分離装置にマ
ルトース、ラクトースを含む原料糖液を連続的に注入
し、β−ガラクトシダーゼを介した酵素反応とクロマト
分離とを同時に行うことによって全体操作を簡略化した
β−1,4−ガラクトシルマルトースの製造方法を提供
すると共に、構造異性体であるβ−1,6−ガラクトシ
ルマルトース及びガラクトシルラクトースが混在してい
る分画液から、晶析法を用いることにより、高純度のβ
−1,4−ガラクトシルマルトース生産を工業的規模で
簡便に行うことができる製造方法を提供することにあ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の本発明
は、内部に充填剤層が形成された塔の複数を無端に連結
した系内にラクトースとマルトースを原料として含む原
料液及び溶離液をそれぞれ供給し、該液を一方向に循環
流として流す操作と、この系に導入されたガラクトシル
基転移酵素を含む酵素液又は固定化した該酵素を、ラク
トース及びマルトースと反応させ、生成したβ−1,4
−ガラクトシルマルトースに富む区分液とグルコースに
富む区分液をそれぞれ上記系外に抜出す操作と、前記原
料液及び溶離液の各液を供給する入口の位置及び各区分
液を該系から抜出す出口の位置を間欠的に移動させ、上
記入口及び出口に対して充填剤を液の流れとは見かけ上
反対方向に移動させる擬似移動層式クロマト分離の操作
を行うことを特徴とするβ−1,4−ガラクトシルマル
トースの連続的製造方法である。
【0009】請求項2記載の本発明は、請求項1記載の
方法で得たβ−1,4−ガラクトシルマルトースに富む
区分液を晶析することを特徴とする純度98%以上のβ
−1,4−ガラクトシルマルトースを製造する方法であ
る。請求項3記載の本発明は、β−1,4−ガラクトシ
ルマルトースに富む区分液が、純度20〜98%のβ−
1,4−ガラクトシルマルトース溶液である請求項2記
載の方法である。請求項4記載の本発明は、β−1,4
−ガラクトシルマルトースに富む区分液が、β−1,4
−ガラクトシルマルトースと共にガラクトース、グルコ
ース、ラクトース、マルトース、マルトオリゴ糖、ガラ
クトシル−ラクトース、ガラクトシル−マルトオリゴ糖
及びβ−1,6−ガラクトシル−マルトースよりなる群
から選ばれる少なくとも1種類の化合物が共存するもの
である請求項2又は3に記載の方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】上記した請求項1記載の本発明
は、擬似移動層分離装置にラクトース、マルトースを原
料として含む原料液を連続的に注入すると共に、ガラク
トシル基転移活性を持つ酵素液及び溶離液をそれぞれ供
給して、β−1,4−ガラクトシルマルトースを生成さ
せ、生成したβ−1,4−ガラクトシルマルトースを酵
素反応系内から分離して、β−1,4−ガラクトシルマ
ルトースに富む液を擬似移動層分離装置から連続的に抜
出すことを特徴とする。また、上記の操作は、擬似移動
層分離装置内にガラクトシル基転移酵素を固定化したカ
ラムを導入することによっても同様な反応分離操作を行
うことが可能である。
【0011】上記において擬似移動層分離装置として
は、内部に充填剤層を形成し、複数の塔を配管で無端に
連結した系と、この系の所定位置に原料、溶離液、酵素
液を供給し、かつその供給位置を間歇的に循環流の下流
側に切換え移動することができる液供給系と同期して間
歇的に循環流の下流側に切換え移動することのできる液
抜出し系と、これらの液供給系及び液抜出系の切換え移
動を行わせる制御手段の組合せによって構成されたもの
を用いることができる。
【0012】請求項2記載の発明は、β−1,4−ガラ
クトシルマルトースを含む反応液から高純度β−1,4
−ガラクトシルマルトースを製造する方法であり、晶析
工程を含むことを特徴とする方法に関する。
【0013】本発明の方法を図面により説明する。図1
は、本発明の方法を実施するのに用いられる擬似移動層
分離装置の概略図を示したものである。実際の装置は、
充填剤充填塔である10本の塔(カラム)1〜10を5
本づつ2列に配列し、配管11によって無端状に連結さ
れているが、図1では便宜上カラムを直線状に配置した
状態で示した。この装置における、10本のカラムから
なる系に対して酵素液、原料液、溶離液がそれぞれポン
プ12, 13, 14により所定のカラム内に供給され、
反応生成物であるA区分液、C区分液が所定のカラムか
らポンプ15, 16により抜出され、一定時間毎に循環
流の下流側に1カラムづつ、カラムとの連結が切換え移
動されるようになっている。
【0014】すなわち、図1に示した状態では、酵素
液、原料液はポンプ12, 13よりカラム5の塔頂に供
給するように連結されていると共に、溶離液はポンプ1
4によってカラム1の塔頂に供給するように連結され、
かつA区分液はポンプ16によってカラム8の塔末か
ら、C区分液はカラム2の塔末から、それぞれ液を抜出
すように連結が切換えられる。以下、同様にして各液の
供給位置、抜出し位置が一定時間毎に1カラムづつ循環
流の下流側に移動するように切換えられる。
【0015】塔の内部には、アンバーライト、ダイヤイ
オンなどの充填剤の層が形成されており、複数の塔が無
端に連結された系内は供給された液が一方向に循環流と
して流れるように構成されている。酵素反応によって生
成したβ−1,4−ガラクトシルマルトースに富む区分
液(A区分液)は、充填剤に対する親和力が弱いが、他
の生成物であるグルコースに富む区分液(C区分液)
は、充填剤に対する親和力が強い。これら区分液は、上
記したように、それぞれ別々に系外に抜出す。さらに、
本発明においては、原料液、酵素液及び溶離液の各液を
供給する入口の位置並びに各区分液を系外に抜出すため
の出口の位置を弁の切換えによって間欠的に移動できる
ように構成している。そのため、この入口や出口に対し
て充填剤を液の流れとは見かけ上、反対方向に移動させ
る疑似移動層式クロマト分離の操作を行うことができ、
これによってβ−1,4−ガラクトシルマルトースに富
む区分液を系外に抜出し、連続的に製造することができ
る。原料としては、マルトースの比率が乳糖より高い方
が良く、例えばマルトースと乳糖の比率が2:1程度で
あると、β−1,4−ガラクトシルマルトースの収率が
良い。カラム温度は、20〜80℃にて製造が可能であ
るが、酵素の至適温度に近い温度で反応を行う方が良
い。また、カラムの切り換え時間によって反応時間を制
御することが可能であるが、原料がカラム内を移動する
速度と同程度に切り換え時間を設定すると、反応時間が
長くなり、効率的であるが、あまり反応時間が長すぎる
と、逆反応が進行し、収率低下を招くことがある。
【0016】上記装置によって、以上の操作を行うこと
により、カラム内に供給された酵素液と原料液から、酵
素反応によって生成物であるβ−1,4−ガラクトシル
マルトースとグルコースを生成し、親和力の弱いβ−
1,4−ガラクトシルマルトースはA区分側から、親和
力の強いグルコースはC区分側から抜出される。反応カ
ラムである3,4,5,6,7,8においては、生成物
であるβ−1,4−ガラクトシルマルトースとグルコー
スが除去されることによって、平衡反応が生成物側に移
動し、高収率でβ−1,4−ガラクトシルマルトースに
富む液が得られることになる。
【0017】得られた液は、珪藻土ろ過(ラジオライト
#100) 、脱塩、濃縮工程を経て晶析を行い、純度が98
%以上の高純度β−1,4−ガラクトシルマルトースを
得ることができるが、効率的にβ−1,4−ガラクトシ
ルマルトースを晶析させるためには、糖混合液(A区分
液)中のβ−1,4−ガラクトシルマルトース濃度が糖
組成比で20%以上、好ましくは20〜98%の水溶液
とする。また、その溶液温度は溶液が凍結せず、製造工
程上熱損失の比較的少ない0〜95℃の範囲が好適であ
る。溶液の過飽和度や粘度を調節するために、メタノー
ル、エタノール、アセトン等の有機溶媒を添加させるこ
とも可能である。通常、30〜95℃の比較的高温の糖
混合液を助晶缶にとり、これに種晶を添加し、ゆっくり
攪拌しながら冷却を行い、晶出を促してマスキット(種
晶含有過飽和物)にすれば良い。
【0018】晶出したマスキットからβ−1,4−ガラ
クトシルマルトース結晶及びそれを含有する粉末を得る
には、分蜜方法など公知の方法を利用することが出来
る。分蜜方法とは、マスキットをバスケット型遠心分離
機にかけ、結晶と蜜とを分離する方法であり、必要によ
り該結晶に少量の冷水又は冷アルコール溶液などをスプ
レーして洗浄することも容易であり、より高純度のβ−
1,4−ガラクトシルマルトースを製造するのに適して
いる。このようにして得られるβ−1,4−ガラクトシ
ルマルトース結晶及びそれを含有する粉末は非吸湿性で
あり、粘着、固着の懸念もなく容易に取り扱うことがで
き、β−1,4−ガラクトシルマルトース誘導体等の原
料に適している。
【0019】このように、本発明の製造方法を用いれ
ば、従来の方法では十分に精製することが出来なかった
糖混合液、すなわちマルトースとラクトースにβ−ガラ
クトシダーゼを作用させて得た糖混合液からも純度98
%以上という高純度のβ−1,4−ガラクトシルマルト
ースを得ることが可能である。さらに、従来行っている
ような酵素分解工程や分画工程を省くことが出来る。
【0020】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明する
が、本発明はこれらに限定されるものではない。下記の
実施例における糖組成は試料を高速液体クロマトグラフ
ィー(HPLC)により分析し、ピーク面積から算出し
た。HPLCは以下の条件で行った。
【0021】カラム:Asahipak NH2P−5
0(昭和電工(株)製) 移動相:71%アセトニトリル 流速:0.8ml/ min カラム温度:35℃ 検出器:示差屈折計
【0022】実施例1 単位充填層として内径3.6cm、長さ150cmで、加熱
ジャッケットを装着したステンレスカラム10本を用い
て、図1の擬似移動層分離装置にて実験を行った。
【0023】原料糖はマルトース(商品名:サンマルト
S、三和澱粉工業(株)製)20kgとラクトース10
kg、固形分濃度42%、pH6.0に調整した。酵素
液はガラクトース転移酵素(β−ガラクトシダーゼ、商
品名:ビオラクタFN5、大和化成(株)製)を用い、
酵素濃度は50U/mlに調製した。 擬似移動層分離
装置の充填剤としては、アンバーライトCR1310
(クロマト分離用ゲル型強酸性カチオン交換樹脂、オル
ガノ(株)製) のナトリウム型を用いた。各ゾーンのカ
ラム数は溶離液供給口から下流方向に2本、2本、4
本、2本とした。カラム内の温度は60℃に設定し、1
サイクルの時間は5時間とした。また、各流速は次のと
おりにした。
【0024】原料液供給量:1.1ml/min 酵素液供給量:0.2ml/min 溶離液供給量:17.5ml/min A区分液抜出流量:9.4ml/min C区分液抜出流量:10.4ml/min
【0025】運転の結果、150時間後に表1に示す糖
濃度と組成のA区分液とC区分液が得られた。次に、こ
のA区分液の回収を行い、β−1,4−ガラクトシルマ
ルトース52.5%を含む糖混合液を4.9kg得るこ
とができた。また、回分反応と上記の擬似移動層分離装
置による反応のラクトース反応率、β−1,4−ガラク
トシルマルトース収率、β−1,4−ガラクトシルマル
トース選択率は、下記の式1、2、3に従って計算し、
その結果を表2に示した。
【0026】
【数1】
【0027】
【数2】
【0028】
【数3】
【0029】
【表1】表1 運転150時間後の各区分液の糖濃度と
組成
【0030】
【表2】表2 回分反応と擬似移動層分離装置による反
応との比較
【0031】表2の結果から、擬似移動層分離装置によ
る反応の方が、ラクトース反応率、β−1,4−ガラク
トシルマルトース収率並びにβ−1,4−ガラクトシル
マルトース選択率において、それぞれ5.5%、10.
3%、11.0%も回分反応に比べて高く、効率的な連
続反応による目的物の生産が可能であることが証明され
た。
【0032】得られた糖混合液(固形分4.9kg) を
けい藻土ろ過後、エバポレーターにて55℃で濃度72
%まで濃縮した。その後、大気圧に戻し、種晶5gを加
え30℃まで1時間あたり1℃の割合で温度を下げなが
ら結晶化を行った。さらに、微結晶を消去するために5
0℃まで加温し、続いて温度降下、温度上昇を4回繰り
返した。本操作によって50〜100μmに成長した、
純度98.1%のβ−1,4−ガラクトシルマルトース
結晶を1.2kg得ることができた。さらに、回収した
結晶は再結晶化を行うことにより、純度99.0%以上
に高めることが可能であった。
【0033】実施例2 表3に示した固形分5kgの糖混合液に種晶を0.5g
加え、エバポレーターで緩やかに回転しながら晶析させ
た。生じた結晶はろ過により回収し、冷水で洗浄した。
ろ紙上の結晶は乾燥機で乾燥させ、純度と回収率を算出
した。結果を表4に示した。
【0034】
【表3】表3 糖混合液の糖組成(%) 1,4Gal-G2:β- 1,4−ガラクトシルマルトース 1,6Gal-G2:β- 1,6−ガラクトシルマルトース Gal-Lac :ガラクトシルラクトース Lac:ラクトース
【0035】
【表4】表4 β- 1,4−ガラクトシルマルトース晶
析試験
【0036】表4の結果から明らかなように、β−1,
4−ガラクトシルマルトースの純度が低くなると、晶析
日数が長くなる上に回収率も低下した。しかし、糖混合
液中のβ−1,4−ガラクトシルマルトース純度が20
%以上であれば、1回の晶析で純度90%以上のβ−
1,4−ガラクトシルマルトースが得られることが判明
した。
【0037】
【発明の効果】本発明の方法によれば、高純度のβ−
1,4−ガラクトシルマルトースを工業的規模で安価
に、かつ容易に製造することが出来る。すなわち、本発
明に従い原料糖液と酵素溶液を連続的に供給することに
よって、反応を効率的に行い、目的とするβ−1,4−
ガラクトシルマルトースを高収率で得られる。なお、目
的物に混在するβ−1,6- ガラクトシルマルトース、
ガラクトシルラクトース等の異性体は、晶析法により簡
便に除くことができ、極めて純度の高いβ−1,4−ガ
ラクトシルマルトースを製造することが可能である。従
って、本発明の方法は実用上多大な効果をもたらすもの
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の方法を実施するために用いられる疑
似移動層分離装置の概略図である。
【符号の説明】
1〜10 カラム 11 配管 12〜16 ポンプ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 伊藤 哲也 神奈川県横浜市鶴見区大黒町13番46号 株 式会社横浜国際バイオ研究所内 (72)発明者 藤田 孝輝 神奈川県横浜市鶴見区大黒町13番46号 株 式会社横浜国際バイオ研究所内 (72)発明者 原 耕三 神奈川県横浜市鶴見区大黒町13番46号 株 式会社横浜国際バイオ研究所内 Fターム(参考) 4B064 AF04 CA21 CA34 CB30 CC03 CD09 CE10 CE15 DA13

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内部に充填剤層が形成された塔の複数を
    無端に連結した系内にラクトースとマルトースを原料と
    して含む原料液及び溶離液をそれぞれ供給し、該液を一
    方向に循環流として流す操作と、この系に導入されたガ
    ラクトシル基転移酵素を含む酵素液又は固定化した該酵
    素を、ラクトース及びマルトースと反応させ、生成した
    β−1,4−ガラクトシルマルトースに富む区分液とグ
    ルコースに富む区分液をそれぞれ上記系外に抜出す操作
    と、前記原料液及び溶離液の各液を供給する入口の位置
    及び各区分液を該系から抜出す出口の位置を間欠的に移
    動させ、上記入口及び出口に対して充填剤を液の流れと
    は見かけ上反対方向に移動させる擬似移動層式クロマト
    分離の操作を行うことを特徴とするβ−1,4−ガラク
    トシルマルトースの連続的製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の方法で得たβ−1,4−
    ガラクトシルマルトースに富む区分液を晶析することを
    特徴とする純度98%以上のβ−1,4−ガラクトシル
    マルトースを製造する方法。
  3. 【請求項3】 β−1,4−ガラクトシルマルトースに
    富む区分液が、純度20〜98%のβ−1,4−ガラク
    トシルマルトース溶液である請求項2記載の方法。
  4. 【請求項4】 β−1,4−ガラクトシルマルトースに
    富む区分液が、β−1,4−ガラクトシルマルトースと
    共にガラクトース、グルコース、ラクトース、マルトー
    ス、マルトオリゴ糖、ガラクトシルラクトース、ガラク
    トシルマルトオリゴ糖及びβ−1,6−ガラクトシルマ
    ルトースよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の化
    合物が共存するものである請求項2又は3に記載の方
    法。
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