JP2017018135A - ガラクトオリゴ糖含有組成物およびそれを生産する方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ガラクトオリゴ糖を含有する組成物を生産する方法、及び、ガラクトオリゴ糖含有組成物の提供。
【解決手段】1またはそれ以上のガラクトオリゴ糖を含有する組成物を生産する方法であって、a)ガラクトシル供与体、及び、ガラクトシル受容体が特定の割合で含む混合物を提供する段階、b)β−ガラクトシダーゼ活性を有し、最大でも0.6のT値を有する酵素を提供して、前記酵素を前記混合物と接触させる段階、(ここで、T値=生産されたガラクトースの量(モル)/使用されたラクトースの量(モル)である)、及び、c)酵素により放出させたガラクトシル供与体のガラクトシル基をガラクトシル受容体に転移させることで、ガラクトオリゴ糖を含有する組成物を得る段階、を含む方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、ガラクトオリゴ糖含有組成物ならびにそれを生産する効率的な方法に関する。
ヒトの母乳は、母乳で育てられる乳児の有益な健康効果の一部の原因とされる、多くの異なるオリゴ糖類を含むことが知られている(Kunz et al.(2000))。例えば、FOS、GOSまたはイヌリンなどの一部のオリゴ糖類はいわゆるプレバイオティクスであり、プレバイオティクスとは、それらが胃腸系の有益な細菌を促進し、有害な細菌を嫌うことを意味する。オリゴ糖類は、それらの健康促進効果のゆえに、乳児用調製粉乳および臨床栄養などの機能性食品において頻繁に使用される。
オリゴ糖類の生産にはいくつかのアプローチがある。1つのアプローチは、天然に生じる供給源からオリゴ糖を単離することに基づく。フルクトースオリゴ糖(FOS)およびイヌリンは、例えばキクイモ(エルサレムアーティチョーク)、ゴボウ、チコリ、リーキ、タマネギおよびアスパラガス中で天然に認められ、これらの作物から単離し得る。チコリの根からのイヌリンの調製は、例えばFrank(2002)に述べられている。オリゴ糖類の生産へのこのアプローチは、適切な作物の利用可能性によって限定され、またより複雑なオリゴ糖類を実現することは不可能であると考えられる。
別のアプローチは、酵素がオリゴ糖類の合成を触媒する酵素的合成に基づく。Yun(1996)は、フルクトシルトランスフェラーゼ活性を有する酵素を使用し、スクロースを酵素のための基質として用いるフルクトオリゴ糖の酵素的生産を述べている。酵素的合成の別の例は国際公開第01/90,317号に記載されており、これは、特別なβ−ガラクトシダーゼ酵素を使用し、ラクトースを基質として用いて式Gal−Gal−Glcのガラクトオリゴ糖(GOS)を生産する方法を開示する。
国際公開第01/90,317号
本発明の1つの目的は、ガラクトオリゴ糖を生産する改善された方法を提供することである。さらに、ガラクトオリゴ糖を含有する改善された組成物を提供することが本発明の1つの目的である。
本発明人は、驚くべきことに、β−ガラクトシダーゼ活性を有し、好ましくは最大でも0.9のT値を有する酵素が、ガラクトシル受容体がガラクトシル供与体とは異なる、特別な型のガラクトオリゴ糖の極めて有効な合成のために使用できることを認めた。
したがって、本発明の一態様は、1またはそれ以上のガラクトオリゴ糖を含有する組成物を生産する方法であって、
a)−脱離基に結合したガラクトシル基を含むガラクトシル供与体、
−ガラクトシル供与体とは異なるガラクトシル受容体
を含む混合物であって、ガラクトシル受容体とガラクトシル供与体のモル比が少なくとも1:10であり、少なくとも0.05モル/Lのガラクトシル受容体を含む混合物を提供する段階、
b)β−ガラクトシダーゼ活性を有する酵素を提供し、前記酵素を混合物と接触させる段階、
c)酵素にガラクトシル供与体の脱離基を放出させ、ガラクトシル供与体のガラクトシル基をガラクトシル受容体に転移させて、このようにしてガラクトオリゴ糖を形成し、それにより1またはそれ以上のガラクトオリゴ糖を含有する組成物を得る段階
を含む方法に関する。
本発明は、高い収率での、複雑なガラクトオリゴ糖組成物の安価で効率的な生産を開発する。本発明はさらに、組成物から除去するには費用のかかる望ましくない副産物を生じさせ得る、ガラクトシル供与体の自己ガラクトシル化の程度を低減すると思われる。
好ましくは、酵素は、β−ガラクトシダーゼ活性に加えてトランスガラクトシル化活性を有する。また、酵素が最大でも0.9のT値を有することも好ましいと考えられる。
本発明に関連して、β−ガラクトシダーゼ酵素の「トランスガラクトシル化活性」という用語は、酵素が供与体分子、例えばラクトース分子からガラクトシル基を非水分子、例えば別のラクトース分子に転移する能力に関する。
T値は、ラクトースをガラクトシル供与体および受容体の両方として使用するβ−ガラクトシダーゼ酵素のトランスガラクトシル化効率の尺度である。β−ガラクトシダーゼ酵素のT値の測定は、実施例2で述べるアッセイおよび式に従って実施される。T値は、式:
T値=生産されたガラクトースの量(モル)/使用されたラクトースの量(モル)
を用いて計算される。
トランスガラクトシル化活性を全く有さないラクターゼ酵素は、各々の使用されたモルのラクトースについて1モルのガラクトースを生産し、1のT値を有する。極めて高いトランスガラクトシル化活性を有するβ−ガラクトシダーゼは、ラクトースからのほとんどすべてのガラクトシル基を、ガラクトースを生成する代わりにトランスガラクトシル化のために使用し、その結果として0に近いT値を有する。
さらに、本発明の一態様は、1またはそれ以上のガラクトオリゴ糖を含有する組成物に関し、前記組成物は本明細書で述べる方法によって得られる。
本発明のさらなる目的および利点を以下で述べる。
図1−aは、酵素と共にインキュベートする前の実施例3で述べる混合物(ラクトースおよびL−フコースを含む)のHPLCクロマトグラムを示す。図1−bは、酵素と共にインキュベートした後の実施例3の混合物のHPLCクロマトグラムを示し、L−フコース含有ガラクトオリゴ糖のピーク(ピーク6、7および8)が明確に存在する。 酵素反応の間の実施例3の混合物のラクトース、グルコースおよびガラクトースの濃度(任意単位)のプロットを含む。 酵素反応の間の実施例3の混合物のオリゴ糖、Gal−Fuc、Gal−Gal−Fuc/Gal−Gal−GlcおよびGal−Gal−Gal−Fuc/Gal−Gal−Gal−Glcの濃度(任意単位)のプロットを含む。 酵素反応の間の実施例4の混合物のオリゴ糖、Gal−Fuc、Gal−Gal−Fuc/Gal−Gal−GlcおよびGal−Gal−Gal−Fuc/Gal−Gal−Gal−Glcの濃度(任意単位)のプロットを含む。 酵素反応の間の実施例5の混合物のオリゴ糖、Gal−GalNAc、Gal−Gal−GalNAc/Gal−Gal−GlcおよびGal−Gal−Gal−GalNAc/Gal−Gal−Gal−Glcの濃度(任意単位)のプロットを含む。 酵素反応の間の実施例6の混合物のオリゴ糖、Gal−Xyl、Gal−Gal−Xyl/Gal−Gal−GlcおよびGal−Gal−Gal−Xyl/Gal−Gal−Gal−Glcの濃度(任意単位)のプロットを含む。
上述したように、本発明の一態様は、1またはそれ以上のガラクトオリゴ糖を含有する組成物を生産する方法であって、
a)−脱離基に結合したガラクトシル基を含むガラクトシル供与体、
−ガラクトシル供与体とは異なるガラクトシル受容体
を含む混合物であって、ガラクトシル受容体とガラクトシル供与体のモル比が少なくとも1:10であり、少なくとも0.05モル/Lのガラクトシル受容体を含む混合物を提供する段階、
b)β−ガラクトシダーゼ活性を有し、好ましくは最大でも0.9のT値を有する酵素を提供し、前記酵素を混合物と接触させる段階、および
c)酵素にガラクトシル供与体の脱離基を放出させ、ガラクトシル供与体のガラクトシル基をガラクトシル受容体に転移させて、このようにしてガラクトオリゴ糖を形成し、それにより1またはそれ以上のガラクトオリゴ糖を含有する組成物を得る段階
を含む方法に関する。
本発明に関連して、「グリコシル基」という用語は、単糖または二糖もしくは三糖などの低分子量オリゴ糖から、または対応する糖アルコールから1または2個のヒドロキシル基を除去することによって得られる基に関する。この用語は、本明細書ではガラクトシル供与体、ガラクトシル受容体およびオリゴ糖の様々な構築ブロックを表すために使用される。
最も一般的な糖類の略語およびそれらの対応するグリコシル基を以下に示す。
Figure 2017018135
本発明に関連して、「オリゴ糖」という用語は、異なるかまたは同じ型であってよい少なくとも2個のグリコシル基、好ましくは少なくとも3個のグリコシル基を含む分子に関する。少なくとも2個のグリコシル基は、好ましくはO−グリコシル結合によって結合されている。オリゴ糖は、グリコシル基の直鎖であり得るかまたは分枝構造を有し得る。オリゴ糖は、例えば化学量論式、例えば(Gal)3Glcとして、または一般式、例えばGal−Gal−Gal−Glc、Gal−Gal−Glc−GalもしくはGal−(Gal−)Glc−Galとして表され得る。化学量論式は、オリゴ糖またはオリゴ糖の群がいずれのグリコシル基を含むかについての情報を提供するが、これらの相対的な位置に関する情報は提供せず、一方一般式は、グリコシル基の相対的な位置についての一般的な情報も含む。
本発明に関連して「ホモオリゴ糖」という用語は、1つだけの型のグリコシル基を含むオリゴ糖に関する。ホモオリゴ糖の例はGal−Gal−Gal−GalおよびGlc−Glc−Glcである。
本発明に関連して「ヘテロオリゴ糖」という用語は、異なるグリコシル基を含むオリゴ糖、例えばGal−Gal−GlcまたはGal−Gal−Fucに関する。
本発明に関連して、「オリゴ糖」という用語と共に使用される「ガラクト」という接頭語は、オリゴ糖がガラクトシル基を反復単位として含むことを指示する。「ホモ」または「ヘテロ」という接頭語は、「ガラクト」という接頭語と共に使用され得る。Gal−Gal−GlcおよびGal−Gal−Gal−Galはどちらもガラクトオリゴ糖である。Gal−Gal−Glcはヘテロガラクトオリゴ糖であり、Gal−Gal−Gal−Galはホモガラクトオリゴ糖である。
本発明に関連して、「X」は、本明細書で定義されるガラクトシル受容体を表す。「−X」は、ガラクトシル受容体に対応するグリコシル基、特に別の基に結合したグリコシル基を表す。「−」は、結合を記号で表す。グリコシル基は、好ましくはグリコシル基の3、4、5または6位を介して、および好ましくはO−グリコシル結合によって結合されている。本発明に関連して、「Gal−」は、好ましくはガラクトシル基の1位を介して、および好ましくはO−グリコシル結合によって別の基に結合したガラクトシル基を表す。
本発明に関連して、「−Gal−」は、2つの他の基に結合したガラクトシル基を表す。左側の結合は、好ましくはガラクトシル基の4位または6位を介して、および好ましくはO−グリコシル結合によって行われる。右側の結合は、好ましくはガラクトシル基の1位を介して、および好ましくはO−グリコシル結合によって行われる。
2個のガラクトシル基の間の結合は、典型的には1−4または1−6結合であり、通常はO−グリコシル結合である。ガラクトシル基と窒素含有受容体の間の結合は、選択的にN−グリコシル結合であり得る。
本発明に関連して、「方法」および「工程」という用語は交換可能に使用される。
段階a)は、その中でオリゴ糖が生産される混合物を提供することを含む。
混合物は、好ましくは液体混合物であり、例えばガラクトシル受容体およびガラクトシル供与体を含む水溶液であり得る。
本発明の一部の実施形態では、段階a)の混合物のガラクトシル受容体とガラクトシル供与体のモル比は、少なくとも1:5、好ましくは少なくとも1:1、なお一層好ましくは少なくとも5:1である。例えば、段階a)の混合物のガラクトシル受容体とガラクトシル供与体のモル比は、少なくとも10:1、例えば少なくとも15:1であり得る。
段階a)の混合物のガラクトシル受容体とガラクトシル供与体のモル比は、例えば1:10〜100:1の範囲内であり得る。
本発明の一部の実施形態では、段階a)の混合物のガラクトシル受容体とガラクトシル供与体のモル比は、1:10〜50:1の範囲内、好ましくは1:5〜30:1の範囲内、なお一層好ましくは1:1〜20:1の範囲内である。例えば、段階a)の混合物のガラクトシル受容体とガラクトシル供与体のモル比は、例えば2:1〜40:1の範囲内、好ましくは4:1〜30:1の範囲内、なお一層好ましくは10:1〜25:1の範囲内であり得る。
上述したように、ガラクトシル供与体は、脱離基に共有結合したガラクトシル基を含む。ガラクトシル基は、好ましくはβ−D−ガラクトピラノシル基である。さらに、ガラクトシル基は、好ましくはガラクトシル基の1位からO−グリコシド結合によって脱離基に結合している。
ガラクトシル供与体の脱離基は、例えばグリコシル基および/または糖アルコール基であり得る。脱離基が単糖または二糖または対応する糖アルコールのグリコシル基である場合、ガラクトシル基は、好ましくはガラクトシル基の1位からO−グリコシド結合によって脱離基に結合しており、前記結合は単糖型脱離基の4位または二糖型脱離基の4’位に連結する。
本発明に関連して、「Yおよび/またはX」という語句は、「Y」または「X」または「YおよびX」を意味する。同様の論理で、「X1、X2、...Xi−1および/またはXi」という語句は、「X1」または「X2」または...または「Xi−1」または「Xi」または成分の任意の組合せ:X1、X2、...Xi−1およびXiを意味する。
本発明の一部の実施形態では、ガラクトシル供与体は最大でも1000g/モルのモル重量を有する。例えば、ガラクトシル供与体は最大でも500g/モルのモル重量を有し得る。ガラクトシル供与体は最大でも350g/モルのモル重量を有することが一層好ましいと考えられる。
二糖は、現在のところ好ましい型のガラクトシル供与体である。あるいはまたは付加的に、三糖もガラクトシル供与体として使用し得る。したがって、混合物は異なるガラクトシル供与体の組合せを含み得ることが想定される。
本発明の一部の好ましい実施形態では、ガラクトシル供与体はラクトースである。有用なガラクトシル供与体の別の例はラクツロースである。さらに、有用なガラクトシル供与体の一例はラクチトールである。
本発明に関連して「ラクトース」という用語は、乳糖とも称される、ウシ乳の最も主要な糖である二糖、β−D−ガラクトピラノシル−(1→4)−D−グルコースに関する。
ガラクトシル供与体は、任意の有用なガラクトシル供与体供給源によって、工業的に精製された供給源、例えば精製ラクトースおよび/または天然供給源、例えばホエー透過物、すなわち乳清の限外ろ過によって調製される脱タンパクホエーの両方によって提供され得る。
ガラクトシル受容体は、酵素からガラクトシル基を受け取ることができる任意の分子であり得、典型的にはヒドロキシル基、好ましくはアルコール性ヒドロキシル基を含む。「受け取る」という用語は、供与体のガラクトシル基が、例えばO−グリコシル結合によって、受容体に共有結合されることを意味する。
本発明の一部の実施形態では、ガラクトシル受容体は1またはそれ以上のアルコール性ヒドロキシル基を含む。例えば、ガラクトシル受容体はポリオールであり得る。
本発明に関連して「ポリオール」という用語は、少なくとも2個のアルコール性ヒドロキシル基を含む分子に関する。
本発明の一部の好ましい実施形態では、ガラクトシル受容体はラクトースではない。さらに、ガラクトシル受容体はグルコースでないことが好ましいと考えられる。
本発明の一部の好ましい実施形態では、ガラクトシル受容体はガラクトシル供与体とは異なる。ラクトースなどの比較的安価なガラクトシル供与体をガラクトシル供給源として使用し、フコースなどの生物学的に興味深い受容体をガラクトシル受容体として使用することが特に好ましい。
本発明の一部の実施形態では、ガラクトシル受容体は、ラクトース、ガラクトースまたはグルコースではない。
本発明の一部の実施形態では、ガラクトシル受容体は、グルコースまたは一般式Gal−(Gal)iGlc[式中、iは負ではない整数、すなわち例えば0、1、2、3または4である]のオリゴ糖ではない。
本発明の一部の実施形態では、ガラクトシル受容体は、ガラクトースまたは一般式Gal−(Gal)iGal[式中、iは負ではない整数である]のオリゴ糖ではない。
様々なモル重量を有するガラクトシル受容体を使用し得るが、少なくとも100g/モルのモル重量を有するガラクトシル受容体が現在のところ好ましい。
本発明の一部の実施形態では、ガラクトシル受容体は最大でも1000g/モルのモル重量を有する。例えば、ガラクトシル受容体は最大でも500g/モルのモル重量を有し得る。ガラクトシル受容体は最大でも350g/モルのモル重量を有することがなお一層好ましいと考えられる。ガラクトシル受容体は、例えば最大でも200g/モルのモル重量を有し得る。
本発明の一部の好ましい実施形態では、ガラクトシル受容体は糖である。ガラクトシル受容体は、例えば単糖であり得る。あるいは、ガラクトシル受容体は二糖であり得る。
例えば、ガラクトシル受容体はペントースであり得る。ガラクトシル受容体は、例えばアラビノースであり得る。有用なペントースの別の例はキシロースである。さらに、有用なペントースの一例はリボースである。ガラクトシル受容体は、例えばアラビノース、キシロースおよびリボースから成る群より選択されるペントースであり得る。
ヘキソースは、有用なガラクトシル受容体の別の群である。ガラクトシル受容体は、例えばマンノースであり得る。有用なヘキソースの別の例はガラクトースである。さらに、有用なヘキソースの一例はタガトースである。有用なヘキソースのさらなる例はフルクトースである。ガラクトシル受容体は、例えばマンノース、ガラクトース、タガトースおよびフルクトースから成る群より選択されるヘキソースであり得る。
本発明の一部の好ましい実施形態では、ガラクトシル受容体はデオキシヘキソースである。ガラクトシル受容体は、例えばフコース、例えばD−フコース、L−フコースまたはそれらの混合物であり得る。
あるいは、ガラクトシル受容体は、例えば二糖または三糖などのオリゴ糖であり得る。有用な二糖の一例はマルトースである。有用な二糖の別の例はラクツロースである。
さらに、ガラクトシル受容体の1つの有用な群は糖誘導体である。
本発明に関連して「糖誘導体」という用語は、1またはそれ以上の非ヒドロキシル官能基を含む糖に関する。そのような官能基の例は、カルボキシル基、アミノ基、N−アセチルアミノ基および/またはチオール基である。1位にアルデヒド基または2位にケトン基を含む糖は、その糖が上述した非ヒドロキシル官能基のいくつかを含まない限り、糖誘導体とはみなされない。
有用な糖誘導体の一例はN−アセチルガラクトサミンである。有用な糖誘導体の別の例はシアル酸である。さらに、有用な糖誘導体の一例はシアリルラクトースである。したがって、ガラクトシル受容体は、N−アセチルガラクトサミン、シアル酸およびシアリルラクトースから成る群より選択される糖誘導体であり得る。
有用なガラクトシル受容体の別の群は糖アルコールである。したがって、本発明の一部の実施形態では、ガラクトシル受容体は糖アルコールである。有用な糖アルコールの例は、ソルビトール、キシリトール、ラクチトールおよび/またはマルチトールである。
上記のガラクトシル受容体と異なり、本発明人は、N−アセチルグルコサミンおよびグルコースがあまり効率的でないガラクトシル受容体であることを認めた。したがって、本発明の一部の実施形態では、ガラクトシル受容体はグルコースまたはN−アセチルグルコサミンではない。
混合物は、1番目の型のガラクトシル受容体とは異なる1またはそれ以上のさらなるガラクトシル受容体を含み得る。混合物の異なる型のガラクトシル受容体は、例えば本明細書で言及するガラクトシル受容体型の中から選択され得る。
本発明の一部の好ましい実施形態では、生産されたガラクトシル化受容体は新しい型のガラクトシル受容体として働き、同様にガラクトシル化することができる。このようにして、化学量論式Gali+1X[式中、iは負ではない整数である]を有するガラクトオリゴ糖を生産し得る。通常、最も主要な種はGalX、Gal2XおよびGal3Xである。
本発明の他の好ましい実施形態では、生産されたガラクトシル化受容体は新しい型のガラクトシル受容体として働き、同様にガラクトシル化することができる。このようにして、一般式Gal−(Gal)i−X[式中、iは負ではない整数である]を有するガラクトオリゴ糖を生産し得る。通常、最も主要な種はGal−X、Gal−Gal−XおよびGal−Gal−Gal−Xである。
本発明の一部の実施形態では、段階a)の混合物は、最大でも0.7モル/L、好ましくは最大でも0.4モル/L、なお一層好ましくは最大でも0.2モル/Lの濃度でガラクトシル供与体を含む。混合物は、例えば0.001〜0.7モル/Lの範囲内、好ましくは0.01〜0.5モル/Lの範囲内、なお一層好ましくは0.02〜0.2モル/Lの範囲内の濃度でガラクトシル供与体を含み得る。
あるいは、段階a)の混合物は、最大でも0.3モル/L、好ましくは最大でも0.1モル/L、なお一層好ましくは最大でも0.05モル/Lの濃度でガラクトシル供与体を含み得る。混合物は、例えば0.001〜0.2モル/Lの範囲内、好ましくは0.005〜0.1モル/Lの範囲内、なお一層好ましくは0.01〜0.05モル/Lの範囲内の濃度でガラクトシル供与体を含み得る。
ガラクトシル化されたガラクトシル受容体およびガラクトシル化されたガラクトシル供与体は、限られた程度でガラクトシル供与体として働き得るが、ガラクトシル化されたガラクトシル受容体およびガラクトシル化されたガラクトシル供与体は、本発明に関連してガラクトシル供与体とはみなされず、本明細書で言及するガラクトシル供与体の濃度または比率に寄与しないことが留意されるべきである。
ガラクトシル受容体は種々の濃度範囲で使用され得る。しかし、過剰のガラクトシル受容体は通常、本発明のガラクトオリゴ糖含有組成物から除去しなければならないので、混合物をガラクトシル受容体で飽和させないようにすることが好ましい。
本発明の一部の実施形態では、段階a)の混合物は、少なくとも0.05モル/L、好ましくは少なくとも0.10モル/L、なお一層好ましくは少なくとも0.30モル/Lの量でガラクトシル受容体を含む。なお一層高い濃度のガラクトシル受容体が好ましいと考えられ、したがって段階a)の混合物は、例えば少なくとも0.5モル/L、好ましくは少なくとも0.7モル/L、なお一層好ましくは少なくとも1モル/Lの量でガラクトシル受容体を含み得る。
混合物は、例えば0.05モル/L〜5モル/Lの範囲内、好ましくは0.1モル/L〜2モル/Lの範囲内、なお一層好ましくは0.3モル/L〜1モル/Lの範囲内の濃度でガラクトシル受容体を含み得る。
しかし、一部の実施形態では比較的低濃度のガラクトシル受容体が好ましく、この場合混合物は、例えば最大でも2モル/L、好ましくは最大でも0.5モル/L、なお一層好ましくは最大でも0.2モル/Lの濃度でガラクトシル受容体を含み得る。例えば、混合物は、0.05モル/L〜2モル/Lの範囲内、好ましくは0.06モル/L〜1モル/Lの範囲内、なお一層好ましくは0.08モル/L〜0.8モル/Lの範囲内の濃度でガラクトシル受容体を含み得る。
ガラクトシル受容体およびガラクトシル供与体に加えて、混合物は、酵素反応についての条件を最適化するために様々な添加物をさらに含み得る。
混合物は、例えば、混合物のpHを酵素のpH最適値に調整するために1またはそれ以上のpH緩衝剤を含み得る。あるいはまたは加えて、混合物は、1またはそれ以上の金属イオンを含有する水溶性塩を含み得る。特定の酵素に依存して、例えばCa2+、Zn2+またはMg2+などの金属イオンを使用し得る。しかし、一部の酵素は混合物中の金属イオンの存在に対して非感受性であることに留意しなければならない。
オリゴ糖を合成する従来の方法は、しばしば、例えばグリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)などの水分活性低下剤を使用する。本発明は、好都合には、そのような水分活性低下剤を使用せずにガラクトオリゴ糖の効率的な合成を実施することを可能にする。したがって、本発明の一部の好ましい実施形態では、混合物は、混合物の重量に対して最大でも5重量%、好ましくは最大でも1重量%、なお一層好ましくは最大でも0.1重量%の量で水分活性低下剤を含む。例えば、混合物は、混合物の重量に対して最大でも0.05重量%の量で水分活性低下剤を含み得る。
段階a)の混合物または混合物を形成する成分は、酵素との反応の前に、反応の間の微生物増殖を避けるために熱処理されていてもよい。通常の熱処理工程、例えば低温殺菌法(例えば72℃で15秒間)、高温殺菌法(例えば90℃で15秒間)またはUHT処理(例えば140℃で4秒間)を使用し得る。熱処理温度に不安定な酵素の場合は注意しなければならない。
段階b)は、好ましくはβ−ガラクトシダーゼ活性を有し、および好ましくは最大でも0.9のT値を有する酵素を提供することを含む。本発明の方法は、付加的な酵素、例えばβ−ガラクトシダーゼ活性またはトランスグリコシル化活性とは異なる酵素活性を有する酵素の使用をさらに含み得ることが留意されるべきである。
本発明に関連して「β−ガラクトシダーゼ活性」という用語は、ラクトースなどのβ−D−ガラクトシド中の末端非還元β−D−ガラクトース残基の加水分解の酵素触媒に関する。本発明で使用される酵素は、好ましくはEC3.2.1.23のクラスに属する。
本発明の一部の実施形態では、酵素のT値は、最大でも0.8、好ましくは最大でも0.7、なお一層好ましくは最大でも0.6である。例えば、酵素のT値は最大でも0.5であり得る。好ましくは、酵素のT値は最大でも0.4であり得る。酵素のT値は最大でも0.3であることがなお一層好ましいと考えられる。
最大でも0.2などの、なお一層低いT値は好ましいと考えられる。
有用な酵素は、例えば配列番号:1のDNA配列によってコードされるペプチドに由来し得る。有用な酵素が由来し得るそのようなペプチドの一例は、配列番号:2のアミノ酸配列を有するペプチドである。
配列番号:1および配列番号:2は、PCT出願国際公開第01/90,317号に見出すことができ、その中でそれらは配列番号:1および配列番号:2と称されている。加えて、さらなる有用な酵素もPCT出願国際公開第01/90,317号において見出され得る。
本発明の一部の好ましい実施形態では、酵素は、配列番号:2のペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、酵素は、配列番号:2のペプチドと少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、なお一層好ましくは少なくとも97.5%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。一部の場合には、酵素は、配列番号:2のペプチドと少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
本発明に関連して「配列同一性」という用語は、等しい長さの2つのアミノ酸配列の間または等しい長さの2つの核酸配列の間の同一性の程度の定量的尺度に関する。比較する2つの配列が等しい長さでない場合は、それらを可能な限りの最良適合に整列しなければならない。配列同一性は、
(Nref−Ndif)×100/(Nref)
[式中、Ndifは、整列したとき2つの配列中で同一でない残基の総数であり、Nrefは、2つの配列の1つにおける残基の数である]
として計算することができる。したがって、DNA配列AGTCAGTCは、配列AATCAATCと75%の配列同一性を有する(Ndif=2およびNref=8)。ギャップは特定の残基の非同一性として数えられ、すなわちDNA配列AGTGTCは、DNA配列AGTCAGTCと75%の配列同一性を有する(Ndif=2およびNref=8)。配列同一性は、例えば、National Center for Biotechnology Information(NCBI),USAによって提供されるBLASTpアルゴリズムのような適切なBLASTプログラムを使用して計算することができる。
本発明の他の好ましい実施形態では、酵素のアミノ酸配列は、配列番号:2のペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有する。例えば、酵素のアミノ酸配列は、配列番号:2のペプチドと少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、なお一層好ましくは少なくとも97.5%の配列同一性を有し得る。一部の場合には、酵素のアミノ酸配列は、配列番号:2のペプチドと少なくとも99%の配列同一性を有し得る。
本発明の一部の好ましい実施形態では、酵素は、配列番号:2のMet(1)からGly(1752)までのアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、酵素は、配列番号:2のMet(1)からGly(1752)までのアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、なお一層好ましくは少なくとも97.5%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。一部の場合には、酵素は、配列番号:2のMet(1)からGly(1752)までのアミノ酸配列と少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
本発明の他の好ましい実施形態では、酵素のアミノ酸配列は、配列番号:2のMet(1)からGly(1752)までのアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する。例えば、酵素のアミノ酸配列は、配列番号:2のMet(1)からGly(1752)までのアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、なお一層好ましくは少なくとも97.5%の配列同一性を有し得る。一部の場合には、酵素のアミノ酸配列は、配列番号:2のMet(1)からGly(1752)までのアミノ酸配列と少なくとも99%の配列同一性を有し得る。したがって、酵素は、例えば配列番号:2のMet(1)からGly(1752)までのアミノ酸配列を有し得る。
本発明の一部の好ましい実施形態では、酵素は、配列番号:2のMet(1)からIle(1174)までのアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、酵素は、配列番号:2のMet(1)からIle(1174)までのアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、なお一層好ましくは少なくとも97.5%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。一部の場合には、酵素は、配列番号:2のMet(1)からIle(1174)までのアミノ酸配列と少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
本発明の他の好ましい実施形態では、酵素のアミノ酸配列は、配列番号:2のMet(1)からIle(1174)までのアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する。例えば、酵素のアミノ酸配列は、配列番号:2のMet(1)からIle(1174)までのアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、なお一層好ましくは少なくとも97.5%の配列同一性を有し得る。一部の場合には、酵素のアミノ酸配列は、配列番号:2のMet(1)からIle(1174)までのアミノ酸配列と少なくとも99%の配列同一性を有し得る。
本発明の一部の現在好ましい実施形態では、酵素は、配列番号:2のMet(1)からIle(1174)までのアミノ酸配列を有する。
本発明の一部の実施形態では、酵素は、配列番号:2のVal(33)からIle(1174)までのアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、酵素は、配列番号:2のVal(33)からIle(1174)までのアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、なお一層好ましくは少なくとも97.5%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。一部の場合には、酵素は、配列番号:2のVal(33)からIle(1174)までのアミノ酸配列と少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
本発明の他の実施形態では、酵素のアミノ酸配列は、配列番号:2のVal(33)からIle(1174)までのアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有し得る。例えば、酵素のアミノ酸配列は、配列番号:2のVal(33)からIle(1174)までのアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、なお一層好ましくは少なくとも97.5%の配列同一性を有し得る。一部の場合には、酵素のアミノ酸配列は、配列番号:2のVal(33)からIle(1174)までのアミノ酸配列と少なくとも99%の配列同一性を有し得る。したがって、酵素は、例えば配列番号:2のVal(33)からIle(1174)までのアミノ酸配列を有し得る。
本発明の一部の現在好ましい実施形態では、酵素は、配列番号:2のVal(33)からIle(1174)までのアミノ酸配列を有する。
本発明の一部の実施形態では、酵素は、例えば表1に示すアミノ酸配列と少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。酵素は、例えば表1に示すアミノ酸配列を含み得る。あるいは、酵素のアミノ酸配列は、表1に示すアミノ酸配列と少なくとも99%の配列同一性を有し得る。酵素は、例えば表1に示すアミノ酸配列を有し得る。
(表1)
表1 有用なアミノ酸配列(AAS)
Figure 2017018135
本発明の一部の実施形態では、酵素は、例えば表2に示すアミノ酸配列と少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。酵素は、例えば表2に示すアミノ酸配列を含み得る。あるいは、酵素のアミノ酸配列は、表2に示すアミノ酸配列と少なくとも99%の配列同一性を有し得る。酵素は、例えば表2に示すアミノ酸配列を有し得る。
(表2)
表2 有用なアミノ酸配列(AAS)
Figure 2017018135
本発明の一部の実施形態では、酵素は、例えば表3に示すアミノ酸配列と少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。酵素は、例えば表3に示すアミノ酸配列を含み得る。あるいは、酵素のアミノ酸配列は、表3に示すアミノ酸配列と少なくとも99%の配列同一性を有し得る。酵素は、例えば表3に示すアミノ酸配列を有し得る。
(表3)
表3 有用なアミノ酸配列(AAS)
Figure 2017018135
本発明の一部の実施形態では、酵素は、例えば表4に示すアミノ酸配列と少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。酵素は、例えば表4に示すアミノ酸配列を含み得る。あるいは、酵素のアミノ酸配列は、表4に示すアミノ酸配列と少なくとも99%の配列同一性を有し得る。酵素は、例えば表4に示すアミノ酸配列を有し得る。
(表4)
表4 有用なアミノ酸配列(AAS)
Figure 2017018135
本発明の一部の実施形態では、酵素は1またはそれ以上のグリコシル化されたアミノ酸を含み得る。あるいはまたは加えて、酵素は1またはそれ以上のリン酸化されたアミノ酸を含み得る。あるいは、酵素のアミノ酸のいずれもグリコシル化またはリン酸化されていない。
本発明の一部の好ましい実施形態では、酵素は少なくとも2つのサブユニットを含み、各々のサブユニットは上記で定義された酵素から成る。
酵素は、好ましくは混合物と接触し、それによりガラクトシル受容体およびガラクトシル供与体の両方と接触する。
本発明の一部の実施形態では、混合物は酵素を含む。酵素は、例えば単独酵素分子としてまたは酵素分子の可溶性凝集体として、溶解形態で混合物中に存在し得る。
本発明の他の実施形態では、酵素は混合物から離れているが、酵素を混合物と接触させることにより、酵素はガラクトシル受容体およびガラクトシル供与体と接触する。例えば、固定相固体上に固定化された酵素を使用し得る。有用な固定相固体の例は、例えばフィルタ、酵素含有粒子の充填層または同様の構造体である。
あるいは、固定相固体は、例えば、混合物の一部を形成する、自由流動微粒子固相、例えば有機または無機ビーズであり得る。
固定化技術および適切な固相型を含む酵素の工業的使用に関する詳細は、あらゆる目的に関して参照により本明細書に組み込まれる、Buchholz(2005)に見出すことができる。
酵素は、好ましくは許容される収量のガラクトオリゴ糖を得るのに十分な活性で使用される。最適活性は工程の特定の実施に依存し、当業者によって容易に決定され得る。
ガラクトシル供与体の高い代謝回転数およびガラクトオリゴ糖の高い収率が必要である場合は、酵素を比較的高い活性で使用することが好ましいと考えられる。例えば、酵素の活性は、ガラクトシル供与体の代謝回転数が少なくとも0.02モル/(L×時)、好ましくは少なくとも0.2モル/(L×時)、なお一層好ましくは少なくとも2モル/(L×時)となる活性であり得る。
酵素反応は段階c)の間に起こる。ガラクトシル受容体およびガラクトシル供与体が酵素と接触したほぼ直後であり得る、混合物が最適な状態に暴露されるとすぐに、トランスガラクトシル化が通常開始され、本発明の一部の実施形態では、段階b)とc)は同時に起こる。
酵素は、ガラクトシル供与体の脱離基を放出し、ガラクトシル供与体のガラクトシル基をガラクトシル受容体に転移することができる。例えば、ガラクトシル供与体がラクトースである場合は、グルコースが放出され、ガラクトシル基が受容体に転移される。酵素は、酵素反応の間触媒として働く。
本発明の一部の好ましい実施形態では、酵素は、既にガラクトシル化されたガラクトシル受容体にガラクトシル基をさらに転移し、それにより2、3またはなお一層多くのガラクトシル基を含むガラクトシル受容体を生成する。
混合物のpHは、好ましくは酵素の最適pHに近い。本発明の一部の実施形態では、段階c)の間の混合物のpHはpH3〜9の範囲内である。例えば、段階c)の間の混合物のpHは、pH4〜8の範囲内、例えばpH5〜7.5の範囲内であり得る。
pHと同様に、混合物の温度も、好ましくは使用される酵素の最適温度に調整される。本発明の一部の実施形態では、段階c)の間の温度は10〜80℃の範囲内である。段階c)の間の温度は、20〜70℃の範囲内、好ましくは25〜60℃の範囲内、なお一層好ましくは30〜50℃の範囲内であり得る。
本発明に関連して、「酵素の最適pH」という用語は、酵素が最も高いトランスガラクトシル化活性を有するpHに関する。同じように、「酵素の最適温度」という用語は、酵素が最も高いトランスガラクトシル化活性を有する温度に関する。
発明人は、本発明の方法が、驚くべきことに、比較的低濃度のガラクトシル供与体を使用した場合でも高い収量のガラクトオリゴ糖を提供することを発見した。比較的低濃度のガラクトシル供与体は、加えて、供与体の自己ガラクトシル化、すなわち1番目のガラクトシル供与体のガラクトシル基が、ガラクトシル受容体ではなく2番目のガラクトシル供与体に転移することの程度を低減する。
本発明の一部の好ましい実施形態では、段階c)は、混合物へのさらなるガラクトシル供与体の添加を含む。これは、比較的低濃度のガラクトシル供与体を使用する場合に特に好ましい。さらなるガラクトシル供与体を添加することにより、混合物中のガラクトシル供与体が枯渇することが回避され、酵素反応の間ガラクトシル供与体の濃度が制御され得る。
さらなるガラクトシル供与体の添加は、ガラクトシル供与体の個別の添加、例えば酵素反応の間に少なくとも1回の添加を含み得る。あるいはまたは加えて、さらなるガラクトシル供与体の添加は、酵素反応の間の連続的な添加であり得る。さらなるガラクトシル供与体は、好ましくは段階a)で使用されるのと同じ型である。
本発明の一部の好ましい実施形態では、段階c)の間の混合物のガラクトシル供与体の濃度は、0.01〜1モル/Lの範囲内、好ましくは0.01〜0.5モル/Lの範囲内、好ましくは0.03〜0.3モル/Lの範囲内の濃度に維持される。
例えば、段階c)の間の混合物のガラクトシル供与体の濃度は、0.02〜0.1モル/Lの範囲内の濃度に維持され得る。
段階c)は、さらなるガラクトシル受容体の添加をさらに含み得る。これは、段階c)の間の混合物のガラクトシル受容体の濃度を制御することを可能にし、例えば、所望する場合はガラクトシル受容体の濃度を実質的に一定に保持することを可能にする。
2または3個の転移されたガラクトシル基を含む、有意の量のガラクトオリゴ糖を生産するために、工程は、ガラクトシル受容体よりも多くのガラクトシル供与体を消費すべきである。それにより、ガラクトシル受容体のより多くが2または3回ガラクトシル化される。したがって、本発明の一部の好ましい実施形態では、消費されるガラクトシル供与体と消費されるガラクトシル受容体のモル比は、少なくとも1:1、好ましくは少なくとも5:1、なお一層好ましくは少なくとも10:1である。
しばしば、組成物のガラクトオリゴ糖を富化および/または精製し、ガラクトシル受容体、ガラクトシル供与体および放出される脱離基の濃度を低減する必要がある。
したがって、本発明の一部の好ましい実施形態では、本発明の方法は、
d)段階c)の組成物のガラクトオリゴ糖を富化すること
の段階をさらに含む。
本発明に関連して、「ガラクトオリゴ糖を富化する」という用語は、乾燥重量ベースで組成物のガラクトオリゴ糖の相対量を増大させることに関する。これは、典型的には組成物のその他の固体の一部、例えば低分子量糖類および場合により酵素も、必要に応じて除去することによって行われる。
段階d)の富化は、例えばクロマトグラフィ分離および/またはナノろ過を含み得る。そのような工程に関する詳細は、あらゆる目的に関して参照により本明細書に組み込まれる、Walstra et al.(2006)に記載されている。
本発明の一部の実施形態では、富化は、最大でも200g/モルのモル重量を有する分子の少なくとも50%(乾燥重量ベースで重量/重量)が段階c)の組成物から除去されることを含む。例えば、富化は、最大でも200g/モルのモル重量を有する分子の少なくとも80%(乾燥重量ベースで重量/重量)が段階c)の組成物から除去されることを含み得る。
本発明の他の実施形態では、富化は、最大でも350g/モルのモル重量を有する分子の少なくとも50%(乾燥重量ベースで重量/重量)が段階c)の組成物から除去されることを含む。例えば、富化は、最大でも350g/モルのモル重量を有する分子の少なくとも80%(乾燥重量ベースで重量/重量)が段階c)の組成物から除去されることを含み得る。
富化の代わりにまたは富化に加えて、段階d)は、組成物中のガラクトオリゴ糖の濃度を増大させる1またはそれ以上の工程を含むことが好ましいと考えられる。有用な濃縮段階の例は、例えば逆浸透、蒸発および/または噴霧乾燥である。
本発明の方法によって提供されるガラクトオリゴ糖含有組成物は、例えば乾燥粉末の形態またはシロップの形態であり得る。
乾燥粉末の生産は、典型的には濃縮、蒸発および/または噴霧乾燥などの1またはそれ以上の工程段階を必要とする。したがって、本発明の一部の好ましい実施形態では、段階d)は、粉末形態の組成物を得るために液体形態の組成物を濃縮する、蒸発させるおよび/または噴霧乾燥することをさらに含む。粉末組成物を得るために段階d)の液体組成物を噴霧乾燥することは特に好ましい。段階d)は、例えば、富化段階、次いで濃縮段階、例えばナノろ過、逆浸透または蒸発、次いで噴霧乾燥段階を含み得る。あるいは、段階d)は、濃縮段階、次いで富化段階、次いで噴霧乾燥段階を含み得る。富化の前に組成物のガラクトオリゴ糖を濃縮することは、その後の富化工程をよりコスト効率的にし得る。
効率的な噴霧乾燥は、1またはそれ以上の補助剤、例えばマルトデキストリン、乳タンパク質、カゼイン塩、濃縮ホエータンパク質および/または脱脂粉乳の添加を必要とし得る。
本発明の工程は、例えばバッチ工程として実施され得る。本発明の工程は、選択的にフェドバッチ工程として実施され得る。本発明の工程は、選択的に連続工程として実施され得る。
本発明の工程は、酵素および/または未使用のガラクトシル受容体を混合物にもどす再循環をさらに含み得る。再循環は、例えば段階d)の一部を形成し得る。例えば、段階d)は、ガラクトオリゴ糖含有組成物からガラクトシル受容体および/または酵素を分離し、ガラクトシル受容体および/または酵素を段階a)またはc)に再循環させることを含み得る。バッチ工程またはフェドバッチ工程の場合は、ガラクトシル受容体および/または酵素を次のバッチの混合物に再循環させ得る。
連続工程の場合は、ガラクトシル受容体を段階a)または段階c)に対応する工程ラインの部分にもどして再循環させ得る。酵素は、段階b)または段階c)に対応する工程ラインの部分にもどして再循環させ得る。
段階a)およびb)に関連する詳細および特徴は、生産工程の実際上の開始に関連する必要はないが、少なくとも工程の間のどこかで生じるべきであることが留意されねばならない。しかし、本発明の一部の実施形態では、ガラクトシル供与体の濃度は、段階c)の全期間中、段階a)で述べる範囲内に保持される。
本発明の方法がバッチまたはフェドバッチ工程として実施される場合、段階a)は、好ましくは合成が開始するときの混合物の組成物に関する。方法が連続工程である場合は、段階a)は、好ましくは定常状態操作下での合成の間の混合物の組成物に関する。
ガラクトシル化されたガラクトシル供与体は、ガラクトシル化されたガラクトシル受容体から分離することが難しい、望ましくない不純物とみなされ得るので、ガラクトシル化されたガラクトシル供与体のレベルはできるだけ低く保持されることが望ましいと考えられ得る。本発明の一部の好ましい実施形態では、段階a)の混合物は最大でも0.5モル/Lのガラクトシル化されたガラクトシル供与体を含む。ガラクトシル化されたガラクトシル供与体は、例えば最大でも0.1モル/Lのガラクトシル化されたガラクトシル供与体を含み得る。なお一層好ましくは、ガラクトシル化されたガラクトシル供与体は、最大でも0.01モル/Lのガラクトシル化されたガラクトシル供与体を含み、好ましくはガラクトシル化されたガラクトシル供与体を実質的に含まない。
さらに、本発明の一態様は、ガラクトオリゴ糖を含有する組成物であって、本明細書で定義される方法によって得られる組成物に関する。
本発明のさらなる態様は、ガラクトオリゴ糖含有組成物、例えば上述した組成物であり、前記ガラクトオリゴ糖含有組成物は、
−一般式Gal−Xを有する第一ガラクトオリゴ糖、
−例えば一般式Gal−Gal−Xなどの、化学量論式(Gal)2Xを有する第二ガラクトオリゴ糖、
−例えば一般式Gal−Gal−Gal−Xなどの、化学量論式(Gal)3Xを有する第三ガラクトオリゴ糖
[式中、Xはグリコシル基であり、ラクトシルまたはグルコシルではない]
を含有する。
本明細書で述べるガラクトオリゴ糖含有組成物は、例えば食品成分であり得る。
上述したように、「X」または「−X」は、好ましくは本明細書で言及するガラクトシル受容体の1つのグリコシル基である。
本発明の一部の実施形態では、「X」または「−X」は、グルコースではない単糖のグリコシル基である。本発明の他の実施形態では、「−X」は、ラクトースではない二糖のグリコシル基である。
本発明の一部の好ましい実施形態では、「X」または「−X」はフコシル基である。本発明の他の好ましい実施形態では、「X」または「−X」はガラクトシル基である。
本発明の一部の好ましい実施形態では、ガラクトオリゴ糖含有組成物は、
−ガラクトオリゴ糖Gal−X、(Gal)2Xおよび(Gal)3Xの総量と、
−ガラクトオリゴ糖Gal−Glc、Gal2Glc、Gal3Glcの総量
との間で少なくとも5:95のモル比を有する。例えば、上記モル比は、少なくとも1:4、好ましくは少なくとも1:1、なお一層好ましくは少なくとも2:1であり得る。上記モル比は少なくとも5:1、好ましくは少なくとも10:1、なお一層好ましくは少なくとも20:1であることがさらに好ましいと考えられる。
本発明の他の好ましい実施形態では、ガラクトオリゴ糖含有組成物は、
−ガラクトオリゴ糖Gal−X、Gal−Gal−XおよびGal−Gal−Gal−Xの総量と、
−ガラクトオリゴ糖Gal−Glc、Gal−Gal−Glc、Gal−Gal−Gal−Glcの総量
との間で少なくとも5:95のモル比を有する。例えば、上記モル比は、少なくとも1:4、好ましくは少なくとも1:1、なお一層好ましくは少なくとも2:1であり得る。上記モル比は、少なくとも5:1、好ましくは少なくとも10:1、なお一層好ましくは少なくとも20:1であることがさらに好ましいと考えられる。
さらには、ガラクトオリゴ糖含有組成物は、式Gal−Glc、Gal−Gal−GlcおよびGal−Gal−Gal−Glcのいずれのガラクトオリゴ糖も含まないことが可能である。
本発明の一部の実施形態では、ガラクトオリゴ糖含有組成物は、第一ガラクトオリゴ糖、第二ガラクトオリゴ糖および第三ガラクトオリゴ糖の間で50〜99:1〜45:0.5〜25の範囲内のモル比を有する。
本発明の他の実施形態では、ガラクトオリゴ糖含有組成物は、第一ガラクトオリゴ糖、第二ガラクトオリゴ糖および第三ガラクトオリゴ糖の間で20〜45:20〜45:20〜45の範囲内のモル比を有する。
本発明のさらなる実施形態では、ガラクトオリゴ糖含有組成物は、第一ガラクトオリゴ糖、第二ガラクトオリゴ糖および第三ガラクトオリゴ糖の間で0.5〜25:1〜45:50〜98の範囲内のモル比を有する。
本発明の一部の好ましい実施形態では、ガラクトオリゴ糖含有組成物は、ガラクトオリゴ糖含有組成物の総重量の少なくとも10重量%の、第一ガラクトオリゴ糖、第二ガラクトオリゴ糖および第三ガラクトオリゴ糖の総量を含有する。例えば、ガラクトオリゴ糖含有組成物は、ガラクトオリゴ糖含有組成物の総重量の少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも30重量%、なお一層好ましくはガラクトオリゴ糖含有組成物の総重量の少なくとも40重量%の、第一ガラクトオリゴ糖、第二ガラクトオリゴ糖および第三ガラクトオリゴ糖の総量を含有し得る。
なお一層高いレベルの第一、第二および第三ガラクトオリゴ糖が好ましいと考えられる。したがって、本発明の一部の好ましい実施形態では、ガラクトオリゴ糖含有組成物は、ガラクトオリゴ糖含有組成物の総重量の少なくとも50重量%の、第一ガラクトオリゴ糖、第二ガラクトオリゴ糖および第三ガラクトオリゴ糖の総量を含有する。例えば、ガラクトオリゴ糖含有組成物は、ガラクトオリゴ糖含有組成物の総重量の少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、なお一層好ましくはガラクトオリゴ糖含有組成物の総重量の少なくとも80重量%の、第一ガラクトオリゴ糖、第二ガラクトオリゴ糖および第三ガラクトオリゴ糖の総量を含有し得る。
さらに、本発明の一態様は、本明細書で述べるガラクトオリゴ糖含有組成物を含む食品に関する。
本発明の一部の実施形態では、食品は、乳児用調製粉乳および臨床栄養のための製品などの機能性食品である。
本発明の他の実施形態では、食品は、例えばパンまたは同様の製品などの焼いた生地を含む、焼いた製品である。
本発明のさらなる実施形態では、食品は乳製品、例えば牛乳などの生鮮乳製品またはヨーグルトなどの発酵乳製品である。
本発明のなおさらなる実施形態では、食品はペットフード製品である。
本発明の態様の1つに関連して述べる実施形態および特徴は、同時に本発明のその他の態様にも適用されることが留意されるべきである。
本発明を、ここで、以下の非限定的な実施例においてさらに詳細に説明する。
酵素の調製
発酵培地750mLの作業容量に、12時間増殖させたOD600が3.0の、100mg/Lアンピシリンを添加したLysogeny broth(LB)培地の種培養物2mLを接種した。発酵は、2%(w/v)酵母抽出物、2%(w/v)ダイズペプトン、1%(w/v)グルコースおよび100mg/Lアンピシリンを含むEC培地で実施した。OLGA347 β−ガラクトシダーゼを発現する大腸菌(E.coli)株を先に述べられているように(Jφrgensen et al.,米国特許第6,555,348 B2号、実施例1および2)調製した。発酵槽はApplikonからであり、総容量2Lのガラス製凹面底容器を有し、2つのRushton羽根車を備えていた。発酵の間、pHは、2M NaOHおよび2M H3PO4の適切な添加によってpH6.5に維持し、温度は37℃に制御した。1〜2L/分の速度で空気を通気させることによって酸素を供給し、撹拌速度を高めることによってpO2を30%に維持した。増殖の後にオフラインでOD600を読み取った。約10時間の増殖後OD600値29.7で遠心分離によって培養物を採取した。培養上清650mLを−20℃で保存した。細胞ペレットをスクロース緩衝液200mL(30mM トリス−HCl、40%スクロース、2mM EDTA、pH7.5)に再懸濁し、室温で10分間インキュベートすることにより、ペリプラズムタンパク質を浸透圧ショックによって細胞ペレットから単離した。遠心分離後、上清を廃棄し、ペレットを冷水200mLに再懸濁した。飽和MgCl2溶液83μLを添加し、ペリプラズムタンパク質を含む上清を遠心分離段階によって収集した。ペリプラズム画分を、0.2μM Millipak 40フィルタを通してろ過滅菌し、−20℃で保存した。
ペリプラズム画分200mLおよび培養上清650mLのβ−ガラクトシダーゼ活性を、プロトコール(J.Sambrook and D.W.Russell,Molecular Cloning−A laboratory manual,3rd edition(2001),pp.17.48−17.51)に従い、o−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(OPNG)を基質として使用して測定した。活性の大部分はペリプラズム画分中で認められた(98%に相当する525単位)。
β−ガラクトシダーゼ酵素のT値の決定
β−ガラクトシダーゼ酵素のT値を、以下に示すアッセイおよび式に従って決定する。
アッセイ:
試験するβ−ガラクトシダーゼ酵素、10mMクエン酸ナトリウム、1mMクエン酸マグネシウム、1mMクエン酸カルシウム、Milli−Q水(Millipore,USA)から成り、6.5のpHを有する酵素溶液3.3mLを調製する。酵素溶液は、本アッセイ条件下で添加されたラクトースの33%(w/w)を1時間で使用するのに十分な量のβ−ガラクトシダーゼ酵素を含むべきである。酵素溶液の温度は37℃でなければならない。
T0の時点で、ラクトース一水和物82.5mg(生化学用、Merck Germany)を酵素溶液に添加して混合し、その後混合物を37℃で4時間インキュベートする。T0の正確に1時間後、試料100μLを収集し、Milli−Q水で1:5に希釈して、10分間85℃に加熱することによって不活性化する。不活性化した混合物を、特性付けまで−20℃に保持する。
特性付け:
生産されたガラクトースの量(モル)および使用されたラクトースの量(モル)の測定は、任意の適切な分析技術を用いて実施し得る。例えば、希釈した混合物を、Richmond et al.(1982)およびSimms et al.(1994)によって述べられている方法に従い、HPLCによって分析し得る。他の有用な分析技術は、El Razzi(2002)に記載されている。
適切な分析技術の別の例は、ISO 5765−2:2002(IDF 79−2:2002)「粉乳、ドライアイス混合物およびプロセスチーズ−ラクトース含量の測定−第2部:ラクトースのガラクトース部分を利用する酵素的方法」である。
T値の計算:
アッセイの希釈混合物の特性付けから得られたデータを使用して、以下の式に従ってT値を計算する:
T値=生産されたガラクトースの量(モル)/使用されたラクトースの量(モル)
例−OLGA347酵素のT値:
上記アッセイを、実施例1のOLGA347酵素を用いて実施した。
アッセイから得られた希釈混合物を、変換された(すなわち使用された)ラクトースおよび生成されたガラクトースに関して分析HPLCによって分析した。HPLC装置はWatersからであり、示差屈折計(RI検出器)およびBioRad Aminex HPX−87Cカラム(300×7.8mm、125−0055)を備えた。糖類の溶出は、0.05g/L酢酸カルシウム、流速0.3mL/分および注入量20μLを用いて均一濃度で実施した。
得られたデータを自動化ソフトウエアによって適切に基線補正し、ピークを個別に同定して積分した。ラクトース一水和物(生化学用、Merck,Germany)、D−(+)−グルコース一水和物(生化学用、Merck Eurolab,France)およびD−(+)−ガラクトース(≧99%、Sigma−Aldrich,Italy)の外標準を使用することによって定量化を実施した。
各々の時点Tに対するラクトースの変換およびガラクトースの形成を定量化したデータから計算した。T=1時間の時点で、収集した試料100μL中のラクトースの29%が変換されており、これはラクトース2.3μmolに対応する。T=1の時点で、ガラクトース0.5μmolが収集した100μL試料中で形成されていた。T値は、したがって、0.5μmol/2.3μmol=0.2と計算することができる。
アッセイから得られた希釈混合物を、変換された(すなわち使用された)ラクトースおよび生成されたガラクトースに関して酵素的方法ISO 5765−2によっても分析した。R−BiopharmからのBoehringer Mannheimラクトース/D−ガラクトース試験キット(カタログ番号10 176 303 035)を使用し、プロトコールに従って試験を実施した。酵素的方法は、OLGA347酵素のT値が0.2であることを確認した。
例−従来のラクターゼ酵素のT値:
上記アッセイを、市販の従来のラクターゼ酵素Lactozym Pure 2600L(Novozymes,Denmark)を用いて実施した。アッセイから得られた希釈混合物を、OLGA347酵素に関して述べたように分析した。三糖および四糖は検出可能な量で存在せず、等しい量のグルコースおよびガラクトースが認められた。対応するT値は1である。
大腸菌(Escherichia coli)からの市販のβ−ガラクトシダーゼ(製品番号:G6008、Sigma−Aldrich,Germany)およびニホンコウジカビ(アスペルギルス・オリザエ、Aspergillus oryzae)からの市販のβ−ガラクトシダーゼ(製品番号:G5160、Sigma−Aldrich,Germany)のT値も決定し、どちらの酵素も約1のT値を有する。
供与体分子の逐次添加によるL−フコシル含有ヘテロガラクトオリゴ糖の合成
L−(−)−フコース700mg(99%、Sigma−Aldrich,Slovakia)およびラクトース一水和物20mg(生化学用、Merck,Germany)を緩衝液5mL(10mMクエン酸ナトリウム、20mM Na2HPO4、pH6.5)に溶解し、37℃の温度に維持した。実施例1におけるように調製した、OLGA347酵素2mLを添加した。この時点をT=0と定義する。6時間の期間中、ラクトース一水和物20mgを30分間隔で添加した。試料100μLをT=0、1、2、3、4、5および7時間の時点で取得した。試料の取得および特性付けは実施例2におけるように実施した。質量分析を、100〜1000amuのAgilent 1100 API−ES LC/MSD Quadropole走査質量を用いて実施した(ガス温度:350℃、乾燥ガス流速:13.0L/分、噴霧圧:60psig)。検出されるイオンは、分析物と溶液からのナトリウムカチオンとの間の錯体形成によって生じ、M(Na+)=M+23Daの検出質量をもたらす。
T=0時間およびT=7時間からのHPLCクロマトグラムをそれぞれ図1aおよび図1bに示す。ピークをMSによって同定し(データは示していない)、図に表示している。説明:1=ラクトース、2=グルコース、3=ガラクトース、4=L−フコース、5=スクロース、6=Gal−Fuc二糖、7=Gal−Gal−FucおよびGal−Gal−Glc三糖、8=Gal−Gal−Gal−FucおよびGal−Gal−Gal−Glc四糖。図において、グルコースおよびガラクトースの濃度が上昇し、グルコースはガラクトースより約4倍豊富であることが認められる。これは、ガラクトースがガラクトオリゴ糖の形成のための供与体分子として使用されており、残存するグルコースは溶液中に放出されるという仮説と一致する。ラクトースの濃度は、ラクトースの連続的な添加のために上昇する。このピークはまた、酵素反応において形成されるアロラクトースおよびGal−Gal二糖を含む。さらに、Gal−Fuc二糖、Gal−Gal−GlcおよびGal−Gal−Fuc三糖ならびにGal−Gal−Gal−GlcおよびGal−Gal−Gal−Fuc四糖が形成される。
ラクトース、グルコースおよびガラクトースに関して時間の関数としての計算されたピーク面積のプロットを図2に示す。説明:菱形=ラクトース、十字=グルコース、三角=ガラクトース。ラクトース、アロラクトースおよびGal−Gal二糖の濃度が上昇することならびに酵素反応の間にグルコースが溶液中に放出されると共にグルコースの濃度が直接的に上昇することが認められる。ガラクトースの濃度はグルコースに比べて低く、濃度は緩やかにしか上昇しない。これは、ラクトースの切断から提供されるほとんどすべてのガラクトースがガラクトオリゴ糖を形成するために使用されたことを指示する。さらに、L−フコースはガラクトオリゴ糖を形成する酵素反応において受容体分子として使用されるので、L−フコースの濃度は実験の経過中低下する(データは示していない)。
図3は、酵素反応からの生成物に関する時間の関数としての計算されたピーク面積のプロットを示す。説明:星印=Gal−Fuc二糖、丸印=Gal−Gal−GlcおよびGal−Gal−Fuc三糖、中空の四角=Gal−Gal−Gal−GlcおよびGal−Gal−Gal−Fuc四糖。Gal−Fuc二糖および三糖と四糖の両方が形成される。三糖はGal−Gal−GlcおよびGal−Gal−Fucの形態であり、四糖はGal−Gal−Gal−GlcおよびGal−Gal−Gal−Fucの形態である。
Gal−Fuc二糖の濃度は直線的に上昇し、T=6時間からT=7時間まではプラトーに達する傾向を示す。Gal−Gal−GlcおよびGal−Gal−Fuc三糖の濃度は直線的に上昇し、T=4時間から指数的上昇の傾向を示す。Gal−Gal−Gal−GlcおよびGal−Gal−Gal−Fuc四糖の濃度は直線的に上昇する。
L−フコース含有ガラクトオリゴ糖の量(総炭水化物のw/w)は、T=7時間のHPLCおよびMSデータに基づき以下のように推定される:Gal−Fuc=8%、Gal−Gal−Fuc=3%、Gal−Gal−Gal−Fuc=1%。全体で、L−フコース含有ガラクトオリゴ糖はT=7時間の反応時間後に12%を構成する。クロマトグラフィによる遊離L−フコースの除去後、計算されたL−フコース含有ガラクトオリゴ糖の量は28%である。
D−フコシル含有ヘテロガラクトオリゴ糖の合成
D−(+)−フコース110mg(≧98%、Sigma−Aldrich,Slovakia)およびラクトース一水和物55mg(生化学用、Merck,Germany)を緩衝液1mL(10mMクエン酸ナトリウム、20mM Na2HPO4、pH6.5)に溶解した。実施例1におけるように調製した、OLGA347酵素100μLを添加した。この時点をT=0と定義する。試料100μLをT=0、2、4、6および22時間の時点で取得した。試料の取得およびHPLC特性付けは実施例2におけるように実施した。MS特性付けは実施例3におけるように実施した。
図4は、酵素反応からの生成物に関する時間の関数としての計算されたピーク面積のプロットを示す。説明:星印=Gal−Fuc二糖、丸印=Gal−Gal−GlcおよびGal−Gal−Fuc三糖、中空の四角=Gal−Gal−Gal−GlcおよびGal−Gal−Gal−Fuc四糖。Gal−Fuc二糖および三糖と四糖の両方が形成される。三糖はGal−Gal−GlcおよびGal−Gal−Fucの形態であり、四糖はGal−Gal−Gal−GlcおよびGal−Gal−Gal−Fucの形態である。
Gal−Fuc二糖の濃度はT=0からT=6時間まで最大の上昇を示す。T=6からT=22時間までは上昇の割合がより低い。Gal−Gal−GlcおよびGal−Gal−Fuc三糖の濃度は、T=0からT=6時間まで2番目に大きい上昇を示す。T=6からT=22時間までは濃度がT=4時間のレベルに低下する。Gal−Gal−Gal−GlcおよびGal−Gal−Gal−Fuc四糖の濃度はT=0からT=6時間まで上昇する。T=6からT=22時間までは濃度がT=4時間のレベルに低下する。
D−フコース含有ガラクトオリゴ糖の量(総炭水化物のw/w)は、T=22時間からのHPLCおよびMSデータに基づいて推定される。Gal−Fuc=20%、Gal−Gal−Fuc=6%およびGal−Gal−Gal−Fuc=1%。全体で、D−フコース含有ガラクトオリゴ糖はT=22時間の反応時間後に27%を構成する。クロマトグラフィによる遊離D−フコースの除去後、計算されたD−フコース含有ガラクトオリゴ糖の量は55%である。
N−アセチルガラクトサミン含有ヘテロガラクトオリゴ糖の合成
実験は、N−アセチル−D−ガラクトサミン(GalNAc)110mg(98%、Sigma−Aldrich,Germany)を受容体分子として用いて、実施例4におけるように実施した。試料100μLをT=0、4および23時間の時点で取得した。試料の取得およびHPLC特性付けは実施例2におけるように実施した。MS特性付けは実施例3におけるように実施した。
図5は、酵素反応からの生成物に関する時間の関数としての計算されたピーク面積のプロットを示す。説明:星印=Gal−GalNAc二糖、丸印=Gal−Gal−GlcおよびGal−Gal−GalNAc三糖、中空の四角=Gal−Gal−Gal−GlcおよびGal−Gal−Gal−GalNAc四糖。Gal−GalNAc二糖および三糖と四糖の両方が形成される。三糖はGal−Gal−GlcおよびGal−Gal−GalNAcの形態であり、四糖はGal−Gal−Gal−GlcおよびGal−Gal−Gal−GalNAcの形態である。
Gal−GalNAc二糖の濃度は、T=0からT=23時間まで直線的に上昇し、T=23時間に最も豊富なガラクトオリゴ糖である。Gal−Gal−GlcおよびGal−Gal−GalNAc三糖の濃度は、T=0からT=4時間まで最大の上昇を示す。T=4からT=23時間までは濃度の上昇の割合がより低く、T=23時間でほぼGal−GalNAcレベルに達する。Gal−Gal−Gal−GlcおよびGal−Gal−Gal−Fuc四糖の濃度はT=0からT=23時間まで上昇し、最大の上昇はT=0からT=4時間までである。N−アセチルガラクトサミン含有ガラクトオリゴ糖の量(総炭水化物のw/w)は、T=23時間からのHPLCおよびMSデータに基づいて推定される。Gal−GalNAc=8%、Gal−Gal−GalNAc=5%およびGal−Gal−Gal−GalNAc=2%。全体で、GalNAc含有ガラクトオリゴ糖はT=23時間の反応時間後に15%を構成する。クロマトグラフィによる遊離GalNAcの除去後、計算されたN−アセチルガラクトサミン含有ガラクトオリゴ糖の量は40%である。
キシロシル含有ヘテロガラクトオリゴ糖の合成
実験は、D−(+)−キシロース110mg(≧99%、Sigma−Aldrich,USA)を受容体分子として用いて、実施例4におけるように実施した。試料100μLをT=0、5および23時間の時点で取得した。試料の取得およびHPLC特性付けは実施例2におけるように実施した。MS特性付けは実施例3におけるように実施した。
図6は、酵素反応からの生成物に関する時間の関数としての計算されたピーク面積のプロットを示す。説明:星印=Gal−Xyl二糖、丸印=Gal−Gal−GlcおよびGal−Gal−Xyl三糖、中空の四角=Gal−Gal−Gal−GlcおよびGal−Gal−Gal−Xyl四糖。Gal−Xyl二糖および三糖と四糖の両方が形成される。三糖はGal−Gal−GlcおよびGal−Gal−Xylの形態であり、四糖はGal−Gal−Gal−GlcおよびGal−Gal−Gal−Xylの形態である。
Gal−Xyl二糖の濃度はT=0からT=5時間まで最大の上昇を示す。T=5からT=23時間までは濃度がT=4時間のレベルに低下する。Gal−Gal−GlcおよびGal−Gal−Xyl三糖の濃度は、T=0からT=5時間まで2番目に大きい上昇を示す。T=5からT=23時間までは濃度がT=4時間のレベルに低下する。Gal−Gal−Gal−GlcおよびGal−Gal−Gal−Fuc四糖の濃度はT=0からT=5時間まで上昇する。T=5からT=23時間までは、濃度は観察可能なレベルで変化しない。
キシロシル含有ガラクトオリゴ糖の量(総炭水化物のw/w)は、T=23時間からのHPLCおよびMSデータに基づいて推定される。Gal−Xyl=15%、Gal−Gal−Xyl=3%、Gal−Gal−Gal−Xyl=0.5%。全体で、キシロシル含有ガラクトオリゴ糖はT=23時間の反応時間後に18.5%を構成する。クロマトグラフィによる遊離キシロースの除去後、計算されたキシロシル含有ガラクトオリゴ糖の量は41%である。

Claims (14)

  1. 下記の一般式で表される1またはそれ以上のガラクトオリゴ糖を含有する組成物を生産する方法であって、
    Gal(Gal)
    (ここで、Galはガラクトシル基を表し、Xはマンノシル、フコシル、N−アセチルガラクトサミニル、N−アセチルグルコサミニル、フルクトシル、タガトシルおよびマルトシルから選択されるガラクトシル受容体を表し、iは負でない整数である)
    a)−脱離基に結合したガラクトシル基を含み、最大でも350g/モルのモル重量を有するガラクトシル供与体、
    −ガラクトシル供与体とは異なり、マンノース、フコース、N−アセチルガラクトサミン、N−アセチルグルコサミン、フルクトース、タガトースおよびマルトースから選択されるガラクトシル受容体
    を含む混合物であって、ガラクトシル受容体とガラクトシル供与体のモル比が1:5〜20:1であり、少なくとも0.05モル/Lのガラクトシル受容体および0.7モル/L以下のガラクトシル供与体を含む混合物を提供する段階、
    b)β−ガラクトシダーゼ活性を有し、最大でも0.6のT値を有する酵素を提供して、前記酵素を前記混合物と接触させる段階であって、前記T値は以下の式により決められる、酵素を混合物と接触させる段階、
    T値=生産されたガラクトースの量(モル)/使用されたラクトースの量(モル)
    (ここで、生産されたガラクトースの量(モル)ならびに使用されたラクトースの量(モル)は、ラクトース一水和物82.5mgを、当該ラクトースの33%(w/w)を6.5のpHおよび37℃の温度で1時間、使用するのに十分な酵素を含む酵素溶液3.3mLと混合するアッセイにより決定される)、および
    c)酵素にガラクトシル供与体の脱離基を放出させ、ガラクトシル供与体のガラクトシル基をガラクトシル受容体に転移させることでガラクトオリゴ糖を形成し、それによりガラクトオリゴ糖を含有する組成物を得る段階
    を含む方法。
  2. 前記酵素のT値が0.5以下である、請求項1に記載の方法。
  3. ガラクトシル供与体の脱離基がグリコシル基である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記段階a)の混合物に含まれるガラクトシル供与体が0.4モル/L以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記ガラクトシル供与体が、ラクトースまたはラクチトールである、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. ガラクトシル受容体が、マンノース、フコース、N−アセチルガラクトサミン、およびN−アセチルグルコサミンから選択される、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. ガラクトシル受容体が、マンノース、フコース、およびN−アセチルグルコサミンから選択される、請求項6に記載の方法。
  8. 酵素が、
    −配列番号:2のMet(1)からIle(1174)までのアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列、または
    −配列番号:2のVal(33)からIle(1174)までのアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列
    を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 酵素が、配列番号:2のVal(33)からIle(1174)までのアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
  10. 酵素が、配列番号:2のVal(33)からIle(1174)までのアミノ酸配列からなる、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
  11. 段階c)がさらなるガラクトシル供与体の添加を含む、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
  12. 段階c)の間、混合物のガラクトシル供与体の濃度が0.01〜1モル/Lの範囲内の濃度に維持される、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
  13. d)段階c)の組成物のガラクトオリゴ糖を富化する段階
    をさらに含む、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
  14. 富化がクロマトグラフィ分離および/またはナノろ過を含む、請求項9に記載の方法。
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