JP2002148975A - ニッケルベルト、被覆ベルト及びその製造方法 - Google Patents

ニッケルベルト、被覆ベルト及びその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電鋳により形成され、加熱処理や熱劣化によ
る硬度及び強度の低下が極めて小さく、耐熱性、耐久性
に優れた無端状ニッケルベルトを提供すること。また、
該無端状ニッケルベルトを金属ベルト基材とし、耐熱
性、離型性、表面平滑性、耐久性などに優れた被覆ベル
トを提供すること。 【解決手段】 電鋳により形成された炭素含有量が0.
01〜0.1質量%の無端状ニッケルベルト。金属ベル
ト基材(A)上に、直接または少なくとも一層の弾性層
(B)を介して、離型層(C)が形成された被覆ベルトにお
いて、該金属ベルト基材(A)が、電鋳により形成された
炭素含有量が0.01〜0.1質量%の無端状ニッケル
ベルトであることを特徴とする被覆ベルト、並びにその
製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電鋳(elect
roforming)により形成され、加熱処理や熱劣
化による硬度及び強度の低下が極めて小さく、耐熱性、
耐久性に優れた無端状ニッケルベルトに関する。また、
本発明は、該無端状ニッケルベルトを金属ベルト基材と
し、その上に、所望により弾性層を介して、離型層が形
成された被覆ベルトとその製造方法に関する。本発明の
無端状ニッケルベルト及び被覆ベルトは、例えば、電子
写真複写機や静電記録装置などの画像形成装置における
定着ベルト、転写ベルト、搬送ベルトなどとして好適に
使用することができる。
【0002】
【従来の技術】電子写真方式や静電記録方式の複写機、
ファクシミリ、レーザービームプリンターなどの画像形
成装置においては、一般に、感光体表面を一様かつ均
一に帯電する工程、像露光を行って、感光体表面に静
電潜像を形成する工程、静電潜像にトナーを付着させ
て、トナー像を形成する工程、感光体上のトナー像を
転写紙やOHPシートなどの転写材上に転写する工程、
転写材上のトナー像を定着する工程を含む一連の工程
によって、画像を形成している。
【0003】トナーとしては、結着樹脂と着色剤とを含
有する着色微粒子が用いられている。トナー像の定着
は、一般に、転写材上のトナーを加熱加圧して、トナー
の結着樹脂を溶融または軟化させ、トナーを転写材上に
固着させることにより行われている。
【0004】このような画像形成装置において、各部に
は、定着ローラ、加圧ローラ、搬送ローラ、帯電ロー
ラ、転写ローラなどの各種ローラ部材が配置されてお
り、各工程での機能を分担している。これらのローラ部
材としては、一般に、アルミニウムなどの芯金上に、直
接または弾性層を介して、フッ素樹脂などの耐熱性樹脂
からなる離型層が形成されたものが使用されている。
【0005】近年、装置の小型化、省エネルギー化、印
字・複写の高速化などの要求に応えるために、このよう
なローラ部材に代えて、無端状ベルト部材(エンドレス
ベルトまたはチューブ)を用いることが提案されてい
る。例えば、従来の定着ローラは、電源を投入した後、
該定着ローラ内に内蔵する加熱手段により、その表面が
定着温度にまで加熱されるのに比較的長時間を必要とす
るため、複写機などの画像形成装置の使用に待ち時間が
生じるという問題があった。これに対して、無端状ベル
ト部材からなる定着ベルトは、その内面に接触する加熱
手段を配置することにより、薄い定着ベルトを介するだ
けで、転写材上のトナー像をほぼ直接的に加熱して定着
させることができるため、電源投入後の待ち時間をなく
すことができる。金属ベルト基材を用いた定着ベルトで
は、電磁誘導加熱方式を適用することもできる。
【0006】このような定着ベルトは、一般に、ポリイ
ミド樹脂や金属からなるベルト基材の上に、直接または
弾性層を介して、離型層を形成した構造を有している。
離型層は、多くの場合、フッ素樹脂などの耐熱性と離型
性に優れた耐熱性樹脂からなる耐熱性樹脂層である。耐
熱性樹脂からなる離型層は、弾力性に乏しいため、ベル
ト基材と離型層との間に弾性層を配置して、定着性を向
上させることが多い。離型層がフッ素ゴム層等の弾力性
と離型性とを備えたゴム層である場合、中間の弾性層を
省略することができる。転写ベルト、帯電ベルト、搬送
ベルトなどでは、ベルト基材単独、もしくはベルト基材
と離型層からなるベルト部材であってもよい。
【0007】このようなベルト部材の金属ベルト基材と
して、電鋳により形成された無端状ニッケルベルトが知
られている。電鋳法では、導電性を有する母型(電型、
鋳型)に電気メッキまたは無電解メッキにより金属を析
出させた後、この金属を母型から剥離して製品とする。
母型が金属の場合には、剥離のための表面処理を施し、
非金属の場合には、メッキを行なうための導電性処理を
施す。電鋳によれば、母型の形状を忠実かつ正確に複写
することができ、精度の高い製品を得ることができる。
【0008】無端状電鋳ニッケルベルトは、例えば、ス
テンレス製の円筒状母型を陰極とし、その表面にニッケ
ルメッキ浴を用いて電気メッキを施してニッケルメッキ
膜を形成し、これを脱型することにより製造することが
できる。ところが、無端状電鋳ニッケルベルとは、耐熱
性が不充分であり、例えば、その表面にフッ素樹脂層な
どの離型層を形成する際の加熱処理(例えば、高温での
フッ素樹脂の焼成)によって、硬度及び強度が著しく低
下する。また、無端状電鋳ニッケルベルトは、高温条件
下での使用により硬度及び強度が低下する。したがっ
て、このような無端状電鋳ニッケルベルトを基材とする
ベルト部材は、耐熱性及び耐久性に劣るという問題があ
った。
【0009】このような問題を解決する方法として、特
許第2706432号公報には、0.05〜0.6重量
%(質量%)のマンガン(Mn)を含むニッケル・マンガ
ン合金から形成されたマイクロビッカース硬度が450
〜650の無端状電鋳シートを基材とする電子写真用定
着ベルトが提案されている。しかし、単にマンガンを含
有させた無端状電鋳ニッケルベルトは、場所による硬度
のバラツキが生じやすく、これを基材とする定着ベルト
は、回転時に強度の弱い部分から破壊する現象が生じや
すいという問題があった。
【0010】また、前記公報には、弾性層と離型層とを
有する定着ベルトの製造方法として、無端状電鋳ニッケ
ルベルト基材の外周面にプライマーを塗布した後、シリ
コーンゴム層を設けて、200℃で120分間の熱処理
を行ない、次いで、該シリコーンゴム層の上にフッ素ゴ
ムとフッ素樹脂との混合物層を設けて、280℃で30
分間焼き付ける方法が開示されている。
【0011】しかし、このような製造方法では、離型層
の焼成温度がシリコーンゴムの耐熱温度を越えるため、
焼成時の加熱処理により下層のシリコーンゴム層が劣化
しやすい。したがって、無端状電鋳ニッケルベルト基材
上に弾性層と離型層とをこの順に形成する製造方法で
は、無端状ニッケルベルト基材の耐熱性を向上させたと
しても、弾性層が劣化しやすく、ベルト部材の耐久性に
悪影響を及ぼす。しかも、この製造方法では、シリコー
ンゴム層を形成した後、その表面を研削して形状を整え
る必要がある。また、フッ素樹脂とフッ素ゴムとの混合
物を形成した後にも、その表面を研磨して表面平滑性を
高める必要がある。
【0012】従来、ローラ部材の製造方法として、芯金
上にシリコーンゴムなどの弾性層を形成し、その上にフ
ッ素樹脂チューブを被せて、加熱収縮させて離型層とす
る方法が知られている。この方法を金属ベルト基材を用
いたベルト部材の製造方法に適用すれば、弾性層を劣化
させることなく離型層を形成することができる。しか
し、この方法は、フッ素樹脂チューブの加熱収縮時にシ
ワが発生しやすく、しかもフッ素樹脂層を薄くすること
ができないという問題がある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、電鋳
により形成され、加熱処理や熱劣化による硬度及び強度
の低下が極めて小さく、耐熱性、耐久性に優れた無端状
ニッケルベルトを提供することにある。また、本発明の
課題は、該無端状ニッケルベルトを金属ベルト基材と
し、耐熱性、離型性、表面平滑性、耐久性などに優れた
被覆ベルトを提供することにある。
【0014】さらに、本発明の課題は、該無端状ニッケ
ルベルトを金属ベルト基材とし、その上に弾性層を介し
て離型層が形成された被覆ベルトの製造方法であって、
弾性層の劣化を引き起こすことがなく、離型層の破
れやシワの発生などの問題がなく、フッ素樹脂などか
らなる離型層の厚みを薄くすることができ、弾性層と
離型層との密着性を向上させることも可能で、研削工
程を省略することができ、柔軟で硬度のバラツキがな
い弾性層を形成することができる被覆ベルトの製造方法
を提供することにある。
【0015】本発明者らは、前記課題を達成するために
鋭意研究した結果、電鋳により形成された無端状ニッケ
ルベルト(「無端状電鋳ニッケルベルト」ともいう)の
炭素含有量を0.01〜0.1質量%という限定された
範囲内に制御することにより、耐熱性が顕著に改善さ
れ、耐久性に優れた無端状電鋳ニッケルベルトの得られ
ることを見出した。本発明の無端状電鋳ニッケルベルト
は、高度の耐熱性と耐久性の観点から、硫黄含有量が
0.1質量%以下、マンガン含有量が0.5質量%以
下、そして、ビッカース硬度(HV)が300〜450
であることが好ましい。
【0016】このような耐熱性、耐久性に優れた無端状
電鋳ニッケルベルトを金属ベルト基材として使用し、そ
の上に、所望により弾性層を介して、離型層を形成する
ことにより、耐熱性、離型性、表面平滑性、耐久性など
に優れた被覆ベルトを得ることができる。
【0017】さらに、該無端状電鋳ニッケルベルトを金
属ベルト基材とし、円筒状金型を用いて、離型層を先に
形成した後、弾性層を形成する製造方法を採用すること
により、弾性層の劣化などの問題点のない高性能・高品
質の被覆ベルトの得られることを見出した。本発明は、
これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、電鋳に
より形成された炭素含有量が0.01〜0.1質量%の
無端状ニッケルベルトが提供される。また、本発明によ
れば、金属ベルト基材(A)上に、直接または少なくと
も一層の弾性層(B)を介して、離型層(C)が形成された
被覆ベルトにおいて、該金属ベルト基材(A)が、電鋳に
より形成された炭素含有量が0.01〜0.1質量%の
無端状ニッケルベルトであることを特徴とする被覆ベル
トが提供される。
【0019】さらに、本発明によれば、金属ベルト基材
(A)上に、少なくとも一層の弾性層(B)を介して、離型
層(C)が形成された被覆ベルトの製造方法において、
〔I〕該金属ベルト基材(A)として、電鋳により形成さ
れた炭素含有量が0.01〜0.1質量%の無端状ニッ
ケルベルトを使用し、かつ、〔II〕下記の工程: (1)円筒状金型の内面に耐熱性樹脂材料を塗布して、
耐熱性樹脂からなる離型層(C)を形成する工程、(2)
所望により、離型層(C)の内面にフッ素樹脂を含有する
ゴム組成物を塗布し加硫して、ゴム組成物からなる弾性
層(B2)を形成する工程、(3)円筒状金型の中空内に
金属ベルト基材(A)を挿入する工程、及び(4)金属ベ
ルト基材(A)の外面と離型層(C)または弾性層(B2)の
内面との間の空隙にゴム材料を注入し加硫して、ゴムか
らなる弾性層(B1)を形成する工程により各層を形成す
ることを特徴とする被覆ベルトの製造方法が提供され
る。
【0020】
【発明の実施の形態】1.無端状電鋳ニッケルベルト 本発明の無端状ニッケルベルトは、無端状電鋳ニッケル
ベルトであって、より具体的には、電鋳により形成され
た炭素含有量が0.01〜0.1質量%の無端状ニッケ
ルベルトである。本発明の無端状電鋳ニッケルベルト
は、それ単独で金属ベルト基材として使用することがで
きるが、定着ベルト等の用途に用いる場合には、通常
は、その外周面に、直接またはシリコーンゴム層などの
弾性層を介して、フッ素樹脂層などの離型層が形成され
た被覆ベルトとして使用する。
【0021】本発明の無端状電鋳ニッケルベルトは、炭
素含有量が0.01〜0.1質量%の範囲内にあること
が必要である。炭素含有量を0.01〜0.1質量%の
範囲内に制御することにより、金属ベルト基材として要
求される水準の硬度を維持しながら、熱老化によっても
硬度及び強度が低下しない無端状電鋳ニッケルベルトを
得ることができる。炭素含有量が過大であると、炭素が
ニッケルの結晶粒界に析出し、強度低下の原因となる。
本発明の無端状電鋳ニッケルベルトは、多くの場合、
0.05〜0.1質量%の範囲内で、ビッカース硬度と
耐熱性を高度にバランスさせやすい。炭素含有量が過小
でも過大でも、耐熱性が低下して、連続的な加熱条件下
でビッカース硬度と強度が著しく低下する。
【0022】本発明の無端状電鋳ニッケルベルトの硫黄
含有量は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましく
は0.05質量%以下である。硫黄含有量は、ゼロ
(0.00質量%以下)でもよいが、その下限は、多く
の場合0.01質量%または0.02質量%程度であ
る。硫黄含有量が過大であると、連続的な加熱条件下で
硫黄がニッケルの結晶粒界に析出して硬度及び強度の低
下を引き起こす。
【0023】本発明の無端状電鋳ニッケルベルトもマン
ガン(Mn)含有量は、好ましくは0.5質量%以下で
ある。マンガン含有量は、ゼロ(0.00質量%以下)
でもよいが、マンガンを含有させる場合には、硬度と耐
熱性の観点から、好ましくは0.05〜0.5質量%、
より好ましくは0.1〜0.5質量%の範囲内の含有量
に制御することが望ましい。無端状電鋳ニッケルベルト
が少量のマンガンを含有していると、マンガンが硫黄を
固溶して結晶粒内に留めて粒界への析出を防止し、それ
によって、熱老化時の脆化を抑制すると推定される。マ
ンガン含有量が過大であると、熱老化時に硬く脆くな
る。
【0024】本発明の無端状電鋳ニッケルベルトは、ビ
ッカース硬度(HV)が好ましくは300以上、より好
ましくは300〜450、特に好ましくは400〜45
0である。ビッカース硬度が低すぎると、金属ベルト基
材としての必要な強度を得ることが難しくなる。ビッカ
ース硬度は、高くてもよいが、あまり高すぎると、耐熱
性、耐久性が低下することがある。
【0025】本発明の無端状電鋳ニッケルベルトは、炭
素含有量を制御することにより、さらには、硫黄及びマ
ンガン含有量をも制御することにより、耐熱性、耐久性
に優れており、具体的に、230℃の雰囲気中で2日間
保持する熱老化試験後のビッカース硬度の初期値に対す
る変化率が好ましくは10%以内、より好ましくは6%
以内である。この変化率は、ゼロ%であることが特に好
ましい。この変化率が大き過ぎると、連続的な加熱条件
下で、硬度及び強度が著しく低下する。
【0026】本発明の無端状電鋳ニッケルベルトは、硫
酸ニッケルや塩化ニッケルを主成分とするワット浴やス
ルファミン酸ニッケルを主成分とするスルファミン酸浴
などのニッケルメッキ浴を用いて、電鋳法により形成さ
れる。電鋳法は、母型の表面に厚メッキを行ない、これ
を母型から剥離して製品を得る方法である。無端状電鋳
ニッケルベルトを得るには、ステンレス、黄銅、アルミ
ニウムなどからなる円筒を母型とし、その表面にニッケ
ルメッキ浴を用いてニッケルメッキ膜を形成する。母型
がシリコン樹脂や石膏などの不導体である場合には、黒
鉛、銅粉、銀鏡、スパッタリングなどにより、導電性処
理を行なう。金属母型への電鋳では、ニッケルメッキ膜
の剥離を容易にするために、母型の表面に酸化膜、化合
物膜、黒鉛粉塗布膜などの剥離膜を形成するなどの剥離
処理を行なうことが好ましい。
【0027】ニッケルメッキ浴は、ニッケルイオン源、
アノード溶解剤、pH緩衝剤、その他の添加剤からな
る。ニッケルイオン源としては、硫酸ニッケル、塩化ニ
ッケル、スルファミン酸ニッケルなどが挙げられる。ア
ノード溶解剤としては、ワット浴の場合、塩化ニッケル
がこの役割を果たしており、この他のニッケル浴では、
塩化アンモニウム、臭化ニッケルなどが用いられてい
る。ニッケルメッキは、一般に、pH3.0〜6.2の
範囲で行なわれるが、この間の望ましい範囲に調整する
ために、ホウ酸、ギ酸、 酢酸ニッケルなどのpH緩衝
剤が用いられる。その他の添加剤としては、平滑化、ピ
ット防止、結晶微細化、残留応力の低減などを目的とし
て、例えば、光沢剤、ピット防止剤、内部応力減少剤な
どが用いられる。
【0028】本発明では、無端状電鋳ニッケルベルトの
炭素含有量、硫黄含有量、マンガン含有量、ビッカース
硬度などを所望の範囲内に制御するために、ニッケルメ
ッキ浴で使用する各成分の種類や添加量を調整する。例
えば、マンガンを含有させるには、ニッケルメッキ浴
に、硫酸マンガンやスルファミン酸マンガンなどのマン
ガン化合物を添加する。硫黄含有量を所望の範囲に制御
するには、ニッケルイオン源や光沢剤などとして、硫黄
原子を含有しないか、硫黄原子の含有量が少ない化合物
を使用する。
【0029】炭素含有量を所望の範囲に制御するには、
光沢剤の種類や添加量を調整する方法が好ましい。光沢
剤は、一般に、第一種光沢剤と第二種光沢剤とに分類さ
れ、高光沢を得るために両者が併用されることが多い。
これらのうち、第一種光沢剤は、=C−SO2−の構造
を持つ有機化合物であり、例えば、スルホン酸塩(例え
ば、1,3,6−トリナフタリンスルホン酸ナトリウム
等の芳香族スルホン酸塩)、スルホンイミド(例えば、
サッカリン)、スルホンアミド、スルフィン酸などが用
いられる。これらの中でも、芳香族スルホン酸塩が好ま
しい。
【0030】第二種光沢剤としては、C=O、C=C、
C≡N、C=N、C≡C、N−C=S、N=N、−CH
2−CH−O−等の構造を持つ有機化合物が挙げられ
る。これらの中でも、1,4−ブチンジオールなどのア
ルキンジオールやクマリンなどが代表的なものである。
本発明において、無端状電鋳ニッケルベルトの炭素含有
量を所望の範囲内に制御するには、例えば、ニッケルメ
ッキ浴へアルキンジオールを添加して、炭素を共析させ
る方法が好ましい。炭素含有量は、アルキンジオールの
添加量を調整することにより制御することができる。よ
り具体的には、第一光沢剤として、例えば芳香族スルホ
ン酸塩を使用し、第二光沢剤として、例えば1,4−ブ
チンジオールの如きアルキンジオールを用いて、その
際、アルキンジオールの添加量を20〜100ppmの
範囲に調整する方法が挙げられる。ただし、本発明は、
特定の方法に限定されるものではなく、炭素含有量を前
記範囲内に制御できるならば如何なる方法でも採用する
ことができる。
【0031】ニッケルメッキ浴の組成としては、例え
ば、硫酸ニッケル200〜350g/L、塩化ニッケル
20〜50g/L、ホウ酸20〜40g/L、適量の界
面活性剤、適量の光沢剤などを含有するワット浴を挙げ
ることができる。スルファミン酸浴の組成としては、ス
ルファミン酸ニッケル200〜450g/L、塩化ニッ
ケル0〜30g/L、ホウ酸20〜40g/L、適量の
界面活性剤、適量の光沢剤などを含有するものを挙げる
ことができる。マンガンを含有させる場合には、各浴中
に、硫酸マンガンやスルファミン酸マンガンを好ましく
は150g/L以下、より好ましくは100g/L以下
の範囲で添加することが好ましい。pHは、好ましくは
3.5〜4.5である。浴温は、好ましくは40〜60
℃である。電流密度は、好ましくは0.5〜15A/d
2であり、高濃度浴の場合には、3〜40A/dm2
である。
【0032】無端状電鋳ニッケルベルトの厚み、幅、内
径などは、用途に応じて適宜定めることができ、特に限
定されないが、厚みは、通常10〜1000μm、好ま
しくは15〜500μm、より好ましくは20〜100
μm程度である。熱伝導性、機械的強度、可撓性などの
バランスの観点から、30〜80μm程度の厚みである
ことが最も好ましい。電子写真複写機の定着ベルトや転
写ベルトなどの用途に適用する場合には、幅を転写紙な
どの転写材の幅に応じて適宜定めることができる。
【0033】2.被覆ベルトの構成 本発明の被覆ベルトは、金属ベルト基材(A)上に、直
接または少なくとも一層の弾性層(B)を介して、離型層
(C)が形成された被覆ベルトであって、該金属ベルト基
材(A)が、電鋳により形成された炭素含有量が0.01
〜0.1質量%の無端状ニッケルベルトからなるもので
ある。
【0034】本発明の被覆ベルトの層構成について、図
面を参照しながら説明する。図1は、本発明の被覆ベル
トの層構成の一例を示す断面図であり、金属ベルト基材
1の上に離型層3が形成された層構成を有している。図
2は、本発明の被覆ベルトの層構成の他の一例を示す断
面図であり、金属ベルト基材1の上に弾性層2が形成さ
れ、該弾性層2の上に離型層3が形成された層構成を有
している。図3は、本発明の被覆ベルトの他の一例を示
す断面図であり、金属ベルト基材1の上に第一弾性層
2′及び第二弾性層2″がこの順に形成され、第二弾性
層2″の上に離型層3が形成されている。ただし、各層
の実際の形成工程は、これらの層構成の順と同じでない
場合がある。後述するように、円筒状金型を用いる被覆
ベルトの製造方法では、離型層3を形成した後、第二弾
性層2″または弾性層2を形成することができる。
【0035】弾性層を設ける場合には、通常は1層でよ
いが、必要に応じて2層以上とすることができる。弾性
層を形成する材料としては、シリコーンゴム、フッ素ゴ
ムなどの耐熱性に優れたゴム材料であることが好まし
い。また、シリコーンゴムやフッ素ゴムなどのゴムにフ
ッ素樹脂を混合したゴム組成物を用いることもできる。
例えば、図3に示す層構成の被覆ベルトにおいて、第一
弾性層2′をシリコーンゴムまたはフッ素ゴムからなる
ゴム層とし、第二弾性層2″をゴムとフッ素樹脂との混
合物からなるゴム組成物層とすることができ、それによ
って、第一弾性層2′と離型層3(フッ素樹脂層)との
間の密着性を高めることができる。
【0036】弾性層の厚み(2層以上ある場合には、合
計厚み)は、用途に応じて適宜定めることができ、特に
限定されないが、画像形成装置の定着ベルトなどの用途
では、通常、0.1〜5mm、好ましくは0.5〜3m
mである。弾性層が2層以上である場合には、各層の厚
みは任意に定めることができるが、シリコーンゴムやフ
ッ素ゴムなどの柔軟性を有するゴム層の厚みを30〜7
0%程度とすることが好ましい。
【0037】離型層は、通常、フッ素樹脂、ポリイミド
樹脂、ポリアミドイミド樹脂などの離型性を有する耐熱
性樹脂を用いて形成されるが、所望により、シリコーン
ゴムやフッ素ゴム、あるいはフッ素ゴムとフッ素樹脂と
の混合物、シリコーンゴムとフッ素樹脂との混合物など
の離型性と弾性とを兼ね備えたゴム層またはゴム組成物
層とすることができる。後者の場合、離型層が弾性を有
するので、弾性層を省略することができる。
【0038】離型層が耐熱性樹脂層である場合、その厚
みは、通常0.1〜150μm、好ましくは1〜100
μm、より好ましくは5〜50μmである。離型層が弾
性を有するゴム層である場合には、通常、10μm〜5
mm、好ましくは20μm〜3mm程度である。被覆ベ
ルトの幅や外径などは、用途に応じて適宜定めることが
できる。
【0039】3.離型層 離型層は、前述した通り、通常、フッ素樹脂などの離型
性を有する耐熱性樹脂を用いて形成されるが、所望によ
り、シリコーンゴムやフッ素ゴム、あるいはフッ素ゴム
とフッ素樹脂との混合物、シリコーンゴムとフッ素樹脂
との混合物などの離型性と弾性とを兼ね備えたゴム層ま
たはゴム組成物層とすることができる。
【0040】耐熱性樹脂としては、150℃以上の温度
で連続使用しても、溶融もしくは軟化することがなく、
劣化も実質的に進行しない耐熱性を有する樹脂が好まし
い。本発明の被覆ベルトが定着ベルトなどとして高温条
件下で使用される場合を想定すると、耐熱性樹脂は、連
続使用可能温度が200℃以上の高度に耐熱性を有する
合成樹脂であることがより好ましい。このような耐熱性
樹脂としては、例えば、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、
ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポ
リエーテルケトン樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、
ポリベンズオキサゾール樹脂、ポリフェニレンスルフィ
ド樹脂、ビスマレイミド樹脂などを挙げることができ
る。これらの中でも、耐熱性と離型性に優れる点で、フ
ッ素樹脂が好ましい。
【0041】本発明で使用するフッ素樹脂としては、例
えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テト
ラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエー
テル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘ
キサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン
/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリ
クロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン
/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTF
E)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などを挙げる
ことができる。
【0042】これらのフッ素樹脂は、それぞれ単独で、
あるいは2種以上を組み合わせて使用することができ
る。被覆ベルトを定着ベルトや加圧ベルトなどとして用
いる場合には、これらのフッ素樹脂の中でも、耐熱性の
観点からPTFE及びPFAが好ましい。溶融流動性が
あり、かつ、表面平滑性に優れたフッ素樹脂被膜が得ら
れ易いことから、PFAがより好ましい。
【0043】フッ素樹脂は、液状フッ素樹脂塗料として
使用することができるが、成形性や離型性を高める上
で、粉体の形状(粉体塗料)で使用することが好まし
い。フッ素樹脂粉体の平均粒子径は、特に限定されない
が、粉体塗装法により均一な厚みの薄い被膜を形成する
上で、10μm以下であることが好ましい。その下限
は、通常1μm程度である。特に、平均粒子径10μm
以下のPFA粉体を用いることが好ましい。フッ素樹脂
粉体を塗装するには、汎用の各種粉体塗装法を採用する
ことができるが、それらの中でも、粉体を帯電させて塗
布する静電塗装法(静電粉体吹き付け法)を用いること
が、均一で、よく締まった塗着粉体層を形成する上で好
ましい。
【0044】フッ素樹脂は、無端状電鋳ニッケルベルト
基材の上に塗装した後、常法に従って焼成する。フッ素
樹脂層と無端状電鋳ニッケルベルトとの間に弾性層を配
置する場合には、円筒状金型の内面に、好ましくは粉体
塗装法によりフッ素樹脂塗膜を形成した後、常法に従っ
て、フッ素樹脂を焼成する。焼成後のフッ素樹脂被膜の
厚みは、通常、0.1〜150μm、好ましくは1〜1
00μm、より好ましくは5〜50μm程度である。弾
性層が下層にある場合、弾性層の柔軟性を充分に生かす
には、この厚みを30μm以下にすることができる。
【0045】フッ素樹脂粉体を粉体塗装することによ
り、液状フッ素樹脂塗料の場合のように、塗料中にフッ
素樹脂粒子を分散させるための界面活性剤が配合されて
いないので、純粋なフッ素樹脂の被膜が形成できる。こ
れによって、焼成後に炭化した不純物がフッ素樹脂被膜
中に残存することがないので、表面平滑性及び離型性に
優れたフッ素樹脂層を形成することができる。
【0046】ポリイミド層を形成する場合には、無端状
電鋳ニッケルベルト基材上または円筒状金型内面にポリ
イミドワニスを塗布し、乾燥後、加熱して脱水・閉環
(イミド化)させる。耐熱性樹脂が熱可塑性樹脂の場合
には、その溶液を塗布し乾燥させる。その他の耐熱性樹
脂層の厚みも、フッ素樹脂層の場合と同様に調整するこ
とが好ましい。
【0047】フッ素樹脂層などの耐熱性樹脂層と弾性層
との間の密着力を向上させるために、円筒状金型内面に
形成した耐熱性樹脂被膜の活性化処理を行うことが好ま
しい。耐熱性樹脂被膜の活性化処理法としては、UVラ
ンプ、エキシマランプ等による紫外線照射、コロナ放
電、プラズマ処理、電子線照射、イオン照射、レーザー
照射等の照射による物理的処理;金属ナトリウムによる
化学的処理;処理液による湿式エッチング処理;などが
挙げられる。これらの活性化処理によって、例えば、フ
ッ素樹脂被膜の表面からフッ素原子が引き抜かれたり、
耐熱性樹脂被膜の表面が親水化されたりするので、弾性
層との間の密着力が高まる。また、耐熱性樹脂層表面に
は、弾性層の材質に適した接着剤を塗布することができ
る。
【0048】4.弾性層 弾性層を形成する材料としては、シリコーンゴム、フッ
素ゴムなどの耐熱性に優れたゴム材料を使用する。ま
た、弾性層を形成する材料として、シリコーンゴムやフ
ッ素ゴムなどのゴムにフッ素樹脂を混合したゴム組成物
を用いることもできる。弾性層は、1層でもよいが、2
層またはそれ以上の多層とすることもできる。
【0049】弾性層の形成に使用されるゴム材料として
は、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどの耐熱性に優れた
ゴムが用いられる。耐熱性ゴムとは、被覆ベルトを例え
ば定着ベルトや加圧ベルトとして使用した場合、定着温
度での連続使用に耐える程度の耐熱性を有するものをい
う。具体的には、150℃以上の温度で連続使用して
も、溶融もしくは軟化することがなく、劣化も実質的に
進行しない耐熱性を有するゴム材料が好ましい。
【0050】ゴム材料としては、耐熱性が特に優れてい
る点で、ミラブルまたは液状のシリコーンゴム、フッ素
ゴム、またはこれらの混合物が好ましい。具体的には、
ジメチルシリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、メ
チルフェニルシリコーンゴム、ビニルシリコーンゴム等
のシリコーンゴム;フッ化ビニリデンゴム、テトラフル
オロエチレン−プロピレンゴム、テトラフルオロエチレ
ン−パーフルオロメチルビニルエーテルゴム、ホスファ
ゼン系フッ素ゴム、フルオロポリエーテルなどのフッ素
ゴム;などが挙げられる。これらの中でも、金型内に注
入しやすい液状シリコーンゴムを用いることが好まし
い。これらのゴムは、それぞれ単独で、あるいは2種以
上を組み合わせて使用することができる。
【0051】ゴム材料には、所望により、カーボンブラ
ック、マイカ、酸化チタンなどの無機充填材や、天然樹
脂などの有機充填材を配合することができる。充填材の
配合割合は、ゴム材料100重量部に対して、通常10
0重量部以下、好ましくは80重量部以下である。ゴム
材料には、軽量化や柔軟性のために有機マイクロバルー
ンを配合することもできる。弾性層の厚みは、用途や設
置する機械装置の構造、目標とする弾性、用いる材料の
硬度等を勘案して適宜設定されるが、通常0.1〜5m
m、好ましくは0.5〜3mmである。
【0052】離型層(C)(特にフッ素樹脂層)と弾性層
(B)との間の密着性を高めるために、両者の中間に、フ
ッ素樹脂を含有する耐熱性ゴム組成物層を設けることが
できる。円筒状金型の内面にフッ素樹脂被膜を形成した
後、フッ素樹脂を含有する耐熱性ゴム組成物層を形成す
る。加熱処理により、耐熱性ゴム組成物層をフッ素樹脂
層などの離型層(C)と融着させることができる。
【0053】耐熱性ゴム材料としては、短時間であって
も、フッ素樹脂の融点に相当する高温に耐えられるシリ
コーンゴムやフッ素ゴムが好ましいが、高耐熱性の点で
フッ素ゴムが特に好ましい。耐熱性ゴム材料中に含有さ
せるフッ素樹脂の種類は、特に限定されず、前述の如き
各種フッ素樹脂を使用することができる。耐熱性ゴム材
料中に含有させるフッ素樹脂は、低温で溶融するフッ素
樹脂であることが、耐熱性ゴム材料の熱処理温度を低く
することができるので好ましい。低温で溶融するフッ素
樹脂としては、融点が350℃以下のフッ素樹脂が好ま
しく、融点305℃以下のPFAが特に好ましい。耐熱
性ゴム材料中のフッ素樹脂の含有量は、特に限定されな
いが、最外層のフッ素樹脂被膜との融着性の点から、耐
熱性ゴム材料100重量部に対して、5重量部以上が好
ましく、耐熱性ゴム層の柔軟性の点から50重量部以下
が好ましい。
【0054】5.被覆ベルトの製造方法 無端状電鋳ニッケルベルトの上に、直接、フッ素樹脂な
どの離型層が形成された被覆ベルトは、無端状電鋳ニッ
ケルベルトの上に、所望によりプライマー処理を行なっ
た後、離型性と耐熱性とを兼ね備えた耐熱性樹脂層やゴ
ム層を直接形成する方法により製造することができる。
【0055】これに対して、無端状電鋳ニッケルベルト
の上に、弾性層を介して、フッ素樹脂などの耐熱性樹脂
からなる離型層を配置した被覆ベルトを製造する場合、
無端状電鋳ニッケルベルトの上に弾性層を形成した後、
その上にフッ素樹脂などの耐熱性樹脂層を形成する方法
を採用すると、フッ素樹脂の焼成等の加熱処理により、
下層の弾性層が劣化し、両者の界面での密着性も損われ
やすい。
【0056】そこで、本発明では、弾性層と離型層を有
する被覆ベルトの耐久性を向上させるために、金属ベル
ト基材(A)上に、少なくとも一層の弾性層(B)を介し
て、離型層(C)が形成された被覆ベルトの製造方法にお
いて、金属ベルト基材(A)として、電鋳により形成され
た炭素含有量が0.01〜0.1質量%の無端状ニッケ
ルベルトを使用するとともに、下記の一連の工程 (1)円筒状金型の内面に耐熱性樹脂材料を塗布して、
耐熱性樹脂からなる離型層(C)を形成する工程、(2)
所望により、離型層(C)の内面にフッ素樹脂を含有する
ゴム組成物を塗布し加硫して、ゴム組成物からなる弾性
層(B2)を形成する工程、(3)円筒状金型の中空内に
金属ベルト基材(A)を挿入する工程、及び(4)金属ベ
ルト基材(A)の外面と離型層(C)または弾性層(B2)の
内面との間の空隙にゴム材料を注入し加硫して、ゴムか
らなる弾性層(B1)を形成する工程により各層を形成す
ることが好ましい。工程(4)の後、弾性層と離型層と
を有する被覆ベルトを円筒状金型から脱型する。
【0057】図4は、本発明の被覆ベルトの一具体例の
製造工程を示す説明図である。第1工程では、円筒状金
型4の内面に耐熱性樹脂材料を塗布して、耐熱性樹脂層
3を形成する。すなわち、図4(a)の断面図に示すよ
うに、円筒状金型4の内面に耐熱性樹脂材料を塗布し
て、耐熱性樹脂層3を形成する。耐熱性樹脂材料とし
て、例えば、フッ素樹脂粉体を使用する場合には、円筒
状金型4の内面にフッ素樹脂粉体を塗装し、焼成して、
フッ素樹脂被膜を形成する。耐熱性樹脂材料として、ポ
リイミドワニスを使用する場合には、円筒状金型4の内
面にポリイミドワニスを塗布し、乾燥させた後、加熱処
理してイミド化して、ポリイミド樹脂被膜を形成する。
熱可塑性樹脂の場合には、その溶液を塗布し、乾燥して
熱可塑性樹脂被膜を形成する。耐熱性樹脂層を形成した
後、弾性層との密着性を高めるため、必要に応じて、耐
熱性樹脂層内面の活性化処理を行ったり、接着剤の塗布
を行うことができる。
【0058】第2工程では、所望により、耐熱性樹脂層
の内面に、フッ素樹脂を含有する耐熱性ゴム組成物を塗
布し、該フッ素樹脂の融点以上の温度で加熱処理して、
フッ素樹脂を含有するゴム組成物からなる弾性層(B2)
を形成する。この第2工程は、図面を省略している。す
なわち、図4には、弾性層が1層の場合が示されてい
る。
【0059】第3工程では、円筒状金型4の中空内に金
属ベルト基材(A)を挿入する。図4(b)に示すよう
に、円筒状金型4の中空内に、支持体5を差し込んだ金
属ベルト基材1を挿入する。金属ベルト基材1の表面に
は、弾性層との密着性を高めるため、接着剤を塗布して
おいてもよい。円筒状金型4の中心と金属ベルト基材1
の中心が一致するようにセットする(軸心を合わせ
る)。金属ベルト基材を差し込む支持体5としては、ス
テンレス製の棒や筒などの変形し難い耐熱性材料からな
るものが好ましい。
【0060】第4工程では、金属ベルト基材1と耐熱性
樹脂層3との間の隙間に、ゴム材料を注入し、次いで、
加硫して弾性層を形成する。具体的には、図4(c)に
示すように、耐熱性樹脂層3と金属ベルト基材1との間
の隙間に、未加硫のゴム材料2を注入し、加硫して、加
硫ゴム層を形成する。加硫条件は、使用するゴムの種類
に応じて選択される。液状シリコーンゴムの場合には、
熱加硫を行う。ゴムの材料の注入には、インジェクショ
ン、押し出しなどの適当な方法を採用することができ
る。ゴム材料の注入や加硫に際し、通常は、円筒状金型
の一端または両端を密封する。
【0061】図4(d)に示すように、ゴム材料の加硫
後、耐熱性樹脂層及びゴム層とともに、金属ベルト基材
1を円筒状金型4から引き抜く。また、金属ベルト基材
1から支持体5を抜き取る。かくして、金属ベルト基材
1上に弾性層と耐熱性樹脂からなる離型層とがこの順に
形成された被覆ベルトが得られる。
【0062】弾性層(B1)と耐熱性樹脂層(C)との中間
に、接着性を向上させるために、例えば、耐熱性ゴム材
料にフッ素樹脂を含有させたゴム組成物層(B2)を形成
する場合には、図4(a)に示す第1工程の後、第2工
程として、耐熱性樹脂層3の表面に、ゴム組成物を塗布
し、該フッ素樹脂の融点以上の温度で加熱処理して、耐
熱性樹脂層と融着したゴム組成物層を形成する。次い
で、図3(b)〜(d)に示す各工程を実施する。この
方法では、第1工程の後、耐熱性樹脂層内面のエッチン
グ処理などの活性化処理工程を省略しても、ゴム組成物
層(B2)を介して、ゴム層(B1)との間の密着性を充分に
高めることが可能である。この方法では、弾性層が2層
(B1,B2)となる。
【0063】本発明で使用する円筒状金型は、鉄、ステ
ンレス、アルミニウムなどの金属製であることが好まし
いが、フッ素樹脂の焼成温度やポリイミド前駆体のポリ
イミド化時の熱処理温度に耐える耐熱性を持つものであ
れば、これらに限定されるものではない。円筒状金型の
内面に良好な離型性を持たせることが、最終工程で、耐
熱性樹脂層及び加硫ゴム層と共にローラ基材を円筒状金
型から引き抜く(脱型する)のを容易にする上で好まし
い。円筒状金型内面に離型性を持たせるには、平滑化処
理を行うことが好ましい。
【0064】円筒状金型の内面を平滑化処理するには、
例えば、アルミニウム製の場合には、引き抜き材を使用
したり、その他の材質であれば、クロムメッキ、ニッケ
ルメッキなどの表面処理を行う方法がある。平滑化処理
により、円筒状金型内面の表面粗さ(Rz)を20μm
以下とすることが好ましい。ホーニング処理等により、
Rzで5μm以下とすることがより好ましい。円筒状金
型内面の平滑化処理により、脱型が容易になることに加
えて、表面平滑性に優れた耐熱性樹脂層(離型層)を形成
することができる。
【0065】円筒状金型の長さは、所望の用途に用いる
ベルト部材の被覆部分の長さであり、その内径は、実質
的に金属ベルト基材の外径と被覆層との厚みの和により
規定される。円筒状金型の厚みは、フッ素樹脂の焼成
時、ポリイミド前駆体のイミド化時、ゴムの加硫時など
における熱伝導を考慮して適宜決定されるが、通常、1
〜10mm程度であることが好ましい。ただし、好まし
い厚みは、材質によって選択される。なお、円筒状金型
の外形は、必ずしも円筒状である必要はなく、筒状の内
面を有するものであればよい。
【0066】上記製造方法によれば、フッ素樹脂などの
耐熱性樹脂からなる離型層を先に形成しておき、弾性層
を後から形成することができるため、耐熱性樹脂層の加
熱処理による弾性層の劣化を防ぐことができる。また、
研削処理などの煩雑な操作を行なうことなく、表面平滑
性に優れた被覆ベルトを得ることができる。
【0067】6.作用 本発明では、電鋳により形成された炭素含有量が0.0
1〜0.1質量%の無端状ニッケルベルトを金属ベルト
基材として用いるため、金属ベルト基材の耐熱性、耐久
性、硬度、強度などのバランスに優れている。本発明の
無端状電鋳ニッケルベルトを金属ベルト基材とする被覆
ベルトは、画像形成装置の定着ベルトなどの用途に好適
であり、高温の定着温度等の高温条件下で連続使用して
も、耐久性が損われることがない。
【0068】本発明の製造方法によれば、フッ素樹脂な
どの耐熱性樹脂からなる離型層を先に形成しておき、弾
性層を後から形成することができるため、耐熱性樹脂層
の加熱処理による弾性層の劣化を防ぐことができる。ま
た、研磨処理などの煩雑な操作を行なうことなく、表面
平滑性に優れた被覆ベルトを得ることができる。有機マ
イクロバルーンを含有するゴム材料を注入して熱加硫を
行うと、耐熱性樹脂被膜の表面がより平滑で離型性にも
優れるものになる。円筒状金型の内面を平滑化処理して
おくことにより、耐熱性樹脂層の表面をさらに平滑にす
ることができる。
【0069】フッ素樹脂被膜の形成方法として、円筒状
金型の内面にフッ素樹脂粉体を塗装し、焼成して、フッ
素樹脂被膜を形成すると、フッ素樹脂ワニスなどの液状
塗料を用いた場合に比較して、界面活性剤などの不純物
が被膜中に残留せず、離型性に優れた表面が得られる。
従来の技術において、PFAチューブを用いえ被覆する
場合には、厚みが50μm以上になり、ゴム層の柔らか
さを充分に生かせない場合があった。これに対して、本
発明では、所望により、フッ素樹脂被膜などの耐熱性樹
脂層の厚みを30μm以下にまで薄くすることができる
ため、ゴム層の柔らかさを充分に生かすことができる。
したがって、本発明の被覆ベルトは、高度の柔軟性が要
求される用途に適用することが可能である。
【0070】本発明では、金属ベルト基材として無端状
電鋳ニッケルベルトを用いているため、これを定着ベル
トの用途に使用する場合、ヒーターを用いた加熱方式以
外に、電磁誘導加熱方式を採用することができる。
【0071】
【実施例】以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明
について、より具体的に説明する。なお、ここでは、定
着ベルトとしての実験結果を示すが、本発明の被覆ベル
トは、定着ベルトの用途に限定されるものではない。物
性等の測定法は、以下のとおりである。 (1)炭素、硫黄、マンガンの含有量 ICP発光分析により測定した。
【0072】(2)ビッカース硬度 ビッカース硬度(VH)は、圧子として対面角136度
のダイヤモンドの正四角錐を用いた押し込み硬さの一種
である。一定の荷重で圧子を押し込んだときに生じる四
辺形のくぼみの対角線の長さを測定すると、対角線の長
さからくぼみの表面積が求められる。荷重をこの表面積
で割った値がビッカース硬度であり、単位をつけずに数
値のみで表わす。具体的には、ビッカース硬さ試験機を
用いて、荷重100gf、荷重保持時間15秒の条件で
ビッカース硬度を測定した。
【0073】(3)熱老化試験 無端状電鋳ニッケルベルトを230℃の雰囲気中で2日
間保持した後、ビッカース硬度(VH1)を測定し、下
記式により初期値(VH0)に対する変化率を算出し
た。 変化率(%)=〔(VH0−VH1)/VH0 〕×100
【0074】(4)定着ベルトの耐久試験 各実施例及び比較例で作製した被覆ベルトを定着ベルト
として定着ユニットに装着した。キャノン製複写機を使
用して4色のカラートナー(シアン、マゼンタ、イエロ
ー、ブラック)により未定着画像を形成したA4複写紙
を、1分間に4枚の割合で定着ユニットに通し、ニップ
幅3mmで加圧して、30万枚連続定着試験を行なっ
た。 定着性 オフセットの有無を目視で観察し、オフセットがない場
合を良好(○)、オフセットが認められた場合を不良
(×)と〕評価した。 ベルト破壊 ベルト破壊の有無を目視で観察し、ベルト破壊に至る複
写枚数を示した。 微小クラック ベルト表面の微小クラックの発生の有無を目視で観察
し、微小クラック発生に至る複写枚数を示した。
【0075】[実施例1]硫酸ニッケル(NiSO4
6H2O)300g/L、塩化ニッケル(NiCl 2・6
2O)30g/L、ホウ酸30g/L、光沢剤(芳香
族スルホン酸塩)0.2g/L、及びアルキンジオール
(すなわち、1,4−ブチンジオール)20ppmを含
有するニッケルメッキ浴(ニッケル電鋳浴)を調製し
た。ニッケルメッキ浴には、ピット防止のため、少量の
界面活性剤を加えた。外径300mmφ、長さ300m
mのステンレス製母型を陰極とし、上記ニッケルメッキ
浴を用いて、浴温50℃、pH4.0、電流密度3A/
dm2で電鋳を行ない、炭素含有量0.1質量%、硫黄
含有量0.02質量%、マンガン含有量ゼロ%、ビッカ
ース硬度(VH)300、厚み50μmの無端状電鋳ニ
ッケルベルト(A)を作製した。この無端状ニッケルベ
ルトは、230℃の雰囲気中で2日間保持する熱老化試
験後のビッカース硬度の初期値に対する変化率が約7%
であった。
【0076】[実施例2〜8、及び比較例1〜2]ニッ
ケル電鋳浴の組成を表1に示すとおりに変えたこと以外
は、実施例1と同様にして、無端状電鋳ニッケルベルト
(B〜J)を作製した。結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】表1の結果から明らかなように、炭素含有
量が0.01〜0.1質量%の範囲内にある無端状電鋳
ニッケルベルト(実施例1〜8)は、ビッカース硬度
(VH)が300〜450の範囲で、かつ、230℃で
の熱老化試験後の硬度保持率が高い値を示している。こ
れに対して、炭素含有量が0.01質量%未満の場合
(比較例1)及び0.1質量%を越える場合(比較例2)に
は、ビッカース硬度の耐熱性が極めて悪く、熱老化試験
後にビッカース硬度が大幅に低下している。
【0079】[実施例9]内径32mmφ、長さ300
mmのステンレス製円筒状金型の内面をクロムメッキ
し、その面(表面粗さ20μm以下)にPFA粉体(デ
ュポン社製、MP−102)を粉体塗装し、380℃で
30分間熱処理して、フッ素樹脂被膜(厚み30μm)
を形成した。このフッ素樹脂被膜の内面に、テトラエッ
チ液(潤工社製)を塗布し、水洗してエッチング処理を
行った。フッ素樹脂被膜のエッチング処理面に、シリコ
ーン系接着剤(東レダウコーニング社製、DY39−0
12)を塗布して、風乾した。外径30mmφ、長さ3
00mmのステンレス製支持体に内径30mmφ、長さ
300mmの無端状電鋳ニッケルベルト(A)を差し込
み、該ニッケルベルト表面に、前記と同じシリコーン系
接着剤を塗布し乾燥させた後、前述のフッ素樹脂被膜を
形成した円筒状金型の中空内に、両者の軸心が一致する
ように挿入した。
【0080】円筒状金型内面のフッ素樹脂被膜と無端状
電鋳ニッケルベルトとの間の隙間に液状シリコーンゴム
(信越化学製、KE1380)を流し込み、160℃で
15分間加熱してゴムを熱加硫し、厚さ1mmのゴム層
を形成した。その後、脱型して、フッ素樹脂被覆ベルト
を得た。得られたフッ素樹脂被覆ベルトは、表面に被膜
のシワや破れがなく、表面の波打ち・凹凸もなかった。
【0081】このようにして得られたフッ素樹脂被覆ベ
ルトを定着ベルトとして、電子写真複写機の定着ユニッ
トにセットした。定着ベルトに対向して配置する加圧ロ
ーラには、アルミニウム製芯金に厚み2mmのシリコー
ンゴム層と厚み20μmのフッ素樹脂層とをこの順に積
層したローラ部材を用いた。ハロゲンランプヒータで、
定着ベルトのフッ素樹脂層の表面温度が200℃になる
ように昇温した。キャノン製複写機を使用して4色のカ
ラートナー(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)
により未定着画像を形成したA4複写紙を、1分間に4
枚の割合で定着ユニットに通し、ニップ幅3mmで加圧
して、30万枚連続定着試験を行なった。オフセットな
どの定着性、ベルトの破壊の有無、微小なクラックの発
生状況を表に示す。微小クラックは、定着性に影響を与
えるものではないが、成長すれば定着ベルト破壊の原因
となる。結果を表2に示す。
【0082】[実施例10〜16]無端状電鋳ニッケル
ベルトを表2に示すものに代えたこと以外は、実施例9
と同様にして被覆ベルトを作製し、評価した。結果を表
2に示す。
【0083】[比較例3]内径32mmφ、長さ300
mmのステンレス製円筒状金型の内面をクロムメッキ
し、外径30mmφ、長さ300mmのステンレス製支
持体に内径30mmφ、長さ300mmの無端状電鋳ニ
ッケルベルト(I)を差し込み、そして、該ニッケルベ
ルト表面にシリコーン系接着剤を塗布・乾燥させた後、
円筒状金型の中空内に、両者の軸心が一致するように挿
入した。この円筒状金型と無端状電鋳ニッケルベルトと
の間の隙間に液状シリコーンゴム(信越化学製、KE1
380)を流し込み、160℃で15分間熱処理して加
硫し、厚さ1mmのゴム層を形成した後、脱型した。次
いで、得られたゴム層の表面を研削して、表面の凹凸を
整えた。研削したゴム層の表面に、PTFE塗料(ダイ
キン社製、EK4300)を塗布し、100℃で20分
間乾燥後、380℃で10分間熱処理して、フッ素樹脂
被膜を形成した。
【0084】このようにして得られたフッ素樹脂被覆ベ
ルトを実施例1と同様にして定着ユニットにセットし、
フッ素樹脂表面温度が180℃になるように昇温した。
キャノン製複写機を使用して4色カラートナーにより未
定着画像を形成したA4キャノン製複写機を、1分間に
4枚の割合で定着ユニットに通し、ニップ幅3mmで加
圧して連続定着試験を行なった。フッ素樹脂表面の凹凸
が激しく、1枚目から画像が大きく乱れるとともに、色
の濃淡に激しいバラツキが生じ、良好な画像が得られな
かった。また、熱劣化により被覆ベルトが破壊して、通
紙できなくなった。結果を表2に示す。
【0085】[比較例4]比較例3において、無端状電
鋳ニッケルベルト(I)に代えて、無端状電鋳ニッケル
ベルト(J)を用いたこと以外は、実施例3と同様にし
て被覆ベルトを作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0086】[比較例5]比較例4と同様にして、無端
状電鋳ニッケルベルト(J)上にゴム層を形成し、次い
で、得られたゴム層の表面を研削して、表面の凹凸を整
えた。このゴム層の表面にPFA収縮チューブ(グンゼ
社製)を被覆し、熱収縮させた。その結果、研削後にも
ゴム層表面の凹凸が大きいため、この凹凸がフッ素樹脂
層の表面に反映され、表面に凹凸が発生した。得られた
フッ素樹脂被覆ベルトを用いて連続定着試験を行ったと
ころ、3万枚で熱劣化により定着ベルトが破壊して通紙
できなくなった。結果を表2に示す。
【0087】[比較例6]内径32mmφ、長さ300
mmのアルミニウム製円筒状金型の内面にPTFE塗料
(ダイキン社製、EK4300)を塗布し、100℃で
20分間乾燥後、380℃で30分間熱処理してフッ素
樹脂被膜を形成した。このフッ素樹脂被膜内面にテトラ
エッチ液(潤工業社製)を塗布し、水洗して、エッチン
グ処理を行った。このエッチング処理したフッ素樹脂被
膜の内面にシリコーン系接着剤(東レダウコーニング社
製、DY−39−012)を塗布して、風乾した。外径
30mmφ、長さ300mmのアルミニウム製支持体
に、内径30mmφ、長さ300mmの無端状電鋳ニッ
ケルベルト(J)を差し込み、ベルト表面に、前記と同
じシリコーン系接着剤を塗布・乾燥させた後、フッ素樹
脂被膜を形成した円筒状金型の中空内に、両者の軸心が
一致するように挿入した。円筒状金型内面のフッ素樹脂
被膜と無端状電鋳ニッケルベルトとの間の隙間に液状シ
リコーンゴム(信越化学製、KE1380)を流し込
み、160℃で15分間熱処理してゴムを加硫した後、
脱型した。得られたフッ素樹脂被覆ベルトを用いて連続
定着試験を行ったところ、1000枚でオフセットが発
生し、3万枚で熱劣化により定着ベルトが破壊して、通
紙できなくなった。結果を表2に示す。
【0088】
【表2】
【0089】表2の結果から、本発明の被覆ベルト(実
施例9〜16)は、例えば、定着ベルトとして連続的な
高温条件下で用いた場合に、優れた耐久性を示し、定着
性にも優れることが分かる。
【0090】
【発明の効果】本発明によれば、電鋳により形成され、
加熱処理や熱劣化による硬度及び強度の低下が極めて小
さく、耐熱性、耐久性に優れた無端状ニッケルベルトが
提供される。また、本発明によれば、該無端状ニッケル
ベルトを金属ベルト基材とし、耐熱性、離型性、表面平
滑性、耐久性などに優れた被覆ベルトが提供される。本
発明の被覆ベルトは、電子写真複写機などの画像形成装
置における定着ベルトなどとして好適である。
【0091】さらに、本発明によれば、該無端状ニッケ
ルベルトを金属ベルト基材とし、その上に弾性層を介し
て離型層が形成された被覆ベルトの製造方法であって、
弾性層の劣化を引き起こすことがなく、離型層の破れや
シワの発生などの問題がなく、フッ素樹脂などからなる
離型層の厚みを薄くすることができ、弾性層と離型層と
の密着性を向上させることも可能で、研削工程を省略す
ることができ、柔軟で硬度のバラツキがない弾性層を形
成することができる被覆ベルトの製造方法が提供され
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の被覆ベルトの一例の層構成を示す断面
図である。
【図2】本発明の被覆ベルトの他の一例の層構成を示す
断面図である。
【図3】本発明の被覆ベルトの他の一例の層構成を示す
断面図である。
【図4】本発明の弾性層と離型層とを有する被覆ベルト
の製造方法を示す説明図である。
【符号の説明】
1:金属ベルト基材 2:弾性層 2′:第一弾性層 2″:第二弾性層 3:離型層 4:円筒状金型 5:支持体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松藤 茂雄 大阪府大阪市此花区島屋一丁目1番3号 住友電気工業株式会社大阪製作所内 (72)発明者 滝口 敏彦 大阪府大阪市此花区島屋一丁目1番3号 住友電気工業株式会社大阪製作所内 (72)発明者 加藤 千明 大阪府泉南郡熊取町大字野田950番地 住 友電工ファインポリマー株式会社内 Fターム(参考) 2H033 AA23 BA11 BA12

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電鋳により形成された炭素含有量が0.
    01〜0.1質量%の無端状ニッケルベルト。
  2. 【請求項2】 硫黄含有量が0.1質量%以下である請
    求項1記載の無端状ニッケルベルト。
  3. 【請求項3】 マンガン(Mn)含有量が0.5質量%
    以下である請求項1または2記載の無端状ニッケルベル
    ト。
  4. 【請求項4】 ビッカース硬度(HV)が300〜45
    0である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無端状
    ニッケルベルト。
  5. 【請求項5】 230℃の雰囲気中で2日間保持する熱
    老化試験後のビッカース硬度の初期値に対する変化率が
    10%以内である請求項1乃至4のいずれか1項に記載
    の無端状ニッケルベルト。
  6. 【請求項6】 金属ベルト基材(A)上に、直接または
    少なくとも一層の弾性層(B)を介して、離型層(C)が形
    成された被覆ベルトにおいて、該金属ベルト基材(A)
    が、電鋳により形成された炭素含有量が0.01〜0.
    1質量%の無端状ニッケルベルトであることを特徴とす
    る被覆ベルト。
  7. 【請求項7】 無端状ニッケルベルトの硫黄含有量が
    0.1質量%以下である請求項6記載の被覆ベルト。
  8. 【請求項8】 無端状ニッケルベルトのマンガン(M
    n)含有量が0.5質量%以下である請求項6または7
    記載の被覆ベルト。
  9. 【請求項9】 無端状ニッケルベルトのビッカース硬度
    (HV)が300〜450である請求項6乃至8のいず
    れか1項に記載の被覆ベルト。
  10. 【請求項10】 無端状ニッケルベルトが、230℃の
    雰囲気中で2日間保持する熱老化試験後のビッカース硬
    度の初期値に対する変化率が10%以内のものである請
    求項6乃至9のいずれか1項に記載の被覆ベルト。
  11. 【請求項11】 離型層(C)が、耐熱性樹脂層である請
    求項6乃至10のいずれか1項に記載の被覆ベルト。
  12. 【請求項12】 耐熱性樹脂層が、フッ素樹脂層である
    請求項11記載の被覆ベルト。
  13. 【請求項13】 少なくとも一層の弾性層(B)として、
    シリコーンゴム層またはフッ素ゴム層を有する請求項6
    乃至12のいずれか1項に記載の被覆ベルト。
  14. 【請求項14】 少なくとも一層の弾性層(B)として、
    2層の弾性層(B1,B2)を有し、かつ、そのうちの離型層
    (C)と接触する弾性層(B2)がフッ素樹脂を含有するゴ
    ム組成物層である請求項6乃至13のいずれか1項に記
    載の被覆ベルト。
  15. 【請求項15】 金属ベルト基材(A)上に、少なくとも
    一層の弾性層(B)を介して、離型層(C)が形成された被
    覆ベルトの製造方法において、〔I〕該金属ベルト基材
    (A)として、電鋳により形成された炭素含有量が0.0
    1〜0.1質量%の無端状ニッケルベルトを使用し、か
    つ、〔II〕下記の工程: (1)円筒状金型の内面に耐熱性樹脂材料を塗布して、
    耐熱性樹脂からなる離型層(C)を形成する工程、(2)
    所望により、離型層(C)の内面にフッ素樹脂を含有する
    ゴム組成物を塗布し加硫して、ゴム組成物からなる弾性
    層(B2)を形成する工程、(3)円筒状金型の中空内に
    金属ベルト基材(A)を挿入する工程、及び(4)金属ベ
    ルト基材(A)の外面と離型層(C)または弾性層(B2)の
    内面との間の空隙にゴム材料を注入し加硫して、ゴムか
    らなる弾性層(B1)を形成する工程により各層を形成す
    ることを特徴とする被覆ベルトの製造方法。
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