JP2002134002A - 電界放射型電子源およびその製造方法 - Google Patents

電界放射型電子源およびその製造方法

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JP2002134002A JP2000326276A JP2000326276A JP2002134002A JP 2002134002 A JP2002134002 A JP 2002134002A JP 2000326276 A JP2000326276 A JP 2000326276A JP 2000326276 A JP2000326276 A JP 2000326276A JP 2002134002 A JP2002134002 A JP 2002134002A
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Yoshiaki Honda
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Tsutomu Kunugibara
勉 櫟原
Toru Baba
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Abstract

(57)【要約】 【課題】電子放出特性の経時安定性に優れた電界放射型
電子源およびその製造方法を提供する。 【解決手段】導電性基板たるn形シリコン基板1の表面
側に強電界ドリフト層6を形成し、強電界ドリフト層6
上に窒化シリコン膜よりなる電界緩和層9を形成し、電
界緩和層9上に金薄膜よりなる表面電極7を形成してい
る。n形シリコン基板1から強電界ドリフト層6に注入
された電子は、強電界ドリフト層6内を表面に向かって
ドリフトし表面電極7をトンネルして放出される。強電
界ドリフト層6は、酸化した多孔質多結晶シリコン層よ
りなり、多結晶シリコンのグレイン51、シリコン微結
晶63、グレイン51表面に形成された酸化シリコン膜
52、シリコン微結晶63の表面に形成された酸化シリ
コン膜64などにより構成される。電界緩和層9により
強電界ドリフト層6の電界強度を緩和する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体材料を用い
て電界放射により電子線を放射するようにした電界放射
型電子源およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、電界放射型電子源として、例
えば米国特許3665241号などに開示されているい
わゆるスピント(Spindt)型電極と呼ばれるものがあ
る。このスピント型電極は、微小な三角錐状のエミッタ
チップを多数配置した基板と、エミッタチップの先端部
を露出させる放射孔を有するとともにエミッタチップに
対して絶縁された形で配置されたゲート層とを備え、真
空中にてエミッタチップをゲート層に対して負極として
高電圧を印加することにより、エミッタチップの先端か
ら放射孔を通して電子線を放射するものである。
【0003】しかしながら、スピント型電極は、製造プ
ロセスが複雑であるとともに、多数の三角錐状のエミッ
タチップを精度良く構成することが難しく、例えば平面
発光装置やディスプレイなどへ応用する場合に大面積化
が難しいという問題があった。また、スピント型電極
は、電界がエミッタチップの先端に集中するので、エミ
ッタチップの先端の周りの真空度が低くて残留ガスが存
在するような場合、放射された電子によって残留ガスが
プラスイオンにイオン化され、プラスイオンがエミッタ
チップの先端に衝突するから、エミッタチップの先端が
ダメージ(例えば、イオン衝撃による損傷)を受け、放
射される電子の電流密度や効率などが不安定になった
り、エミッタチップの寿命が短くなってしまうという問
題が生じる。したがって、スピント型電極では、この種
の問題の発生を防ぐために、高真空(約10-5Pa〜約
10-6Pa)で使用する必要があり、コストが高くなる
とともに、取扱いが面倒になるという不具合があった。
【0004】この種の不具合を改善するために、MIM
(Metal Insulator Metal)方式やMOS(Metal Oxid
e Semiconductor)型の電界放射型電子源が提案されて
いる。前者は金属−絶縁膜−金属、後者は金属−酸化膜
−半導体の積層構造を有する平面型の電界放射型電子源
である。しかしながら、このタイプの電界放射型電子源
において電子の放射効率を高めるためには(多くの電子
を放射させるためには)、上記絶縁膜や上記酸化膜の膜
厚を薄くする必要があるが、上記絶縁膜や上記酸化膜の
膜厚を薄くしすぎると、上記積層構造の上下の電極間に
電圧を印加した時に絶縁破壊を起こす恐れがあり、この
ような絶縁破壊を防止するためには上記絶縁膜や上記酸
化膜の膜厚の薄膜化に制約があるので、電子の放出効率
(引き出し効率)をあまり高くできないという不具合が
あった。
【0005】また、近年では、特開平8−250766
号公報に開示されているように、シリコン基板などの単
結晶の半導体基板を用い、その半導体基板の一表面を陽
極酸化することにより多孔質半導体層(ポーラスシリコ
ン層)を形成して、その多孔質半導体層上に金属薄膜を
形成し、半導体基板と金属薄膜との間に電圧を印加して
電子を放射させるように構成した電界放射型電子源(半
導体冷電子放出素子)が提案されている。
【0006】しかしながら、上述の特開平8−2507
66号公報に記載の電界放射型電子源では、基板が半導
体基板に限られるので、大面積化やコストダウン化が難
しいという不具合がある。また、特開平8−25076
6号公報に記載の電界放射型電子源では電子放出時にい
わゆるポッピング現象が生じやすく、放出電子量にむら
が起こりやすいので、平面発光装置やディスプレイなど
に応用すると、発光むらができてしまうという不具合が
ある。
【0007】これに対して、本願発明者らは、特願平1
0−272340号、特願平10−272342号など
において大面積化の可能な電界放射型電子源を提案し
た。これらの電子源は、導電性基板と導電性薄膜(例え
ば、金薄膜)からなる表面電極との間に、多孔質多結晶
半導体層(例えば、陽極酸化処理により多孔質化された
多結晶シリコン層)を急速熱酸化(RTO)技術によっ
て急速熱酸化することによって形成した強電界ドリフト
層を介在させた構造を有し、導電性基板から強電界ドリ
フト層に注入された電子が強電界ドリフト層においてド
リフトするようになっている。この種の電界放射型電子
源は、例えば図8に示すように、導電性基板としてのn
形シリコン基板1の主表面側に、酸化した多孔質多結晶
シリコン層よりなる強電界ドリフト層6が形成され、強
電界ドリフト層6上に表面電極7が積層され、n形シリ
コン基板1の裏面にオーミック電極2が積層されてい
る。
【0008】図8に示す電界放射型電子源から電子を放
出させるには、図9に示すように、表面電極7に対向配
置されたコレクタ電極21を設け、表面電極7とコレク
タ電極21との間を真空とした状態で、表面電極7がn
形シリコン基板1(オーミック電極2)に対して高電位
側(正極)となるように表面電極7とn形シリコン基板
1との間に直流電圧Vpsを印加するとともに、コレクタ
電極21が表面電極7に対して高電位側(正極)となる
ようにコレクタ電極21と表面電極7との間に直流電圧
Vcを印加する。各直流電圧Vps,Vcを適宜に設定す
れば、n形シリコン基板1から注入された電子が強電界
ドリフト層6をドリフトし表面電極7を通して放出され
る(なお、図9中の一点鎖線は表面電極7を通して放出
された電子e- の流れを示す)。表面電極7には仕事関
数の小さな材料が採用され、表面電極7の膜厚は10〜
15nm程度に設定されている。
【0009】ここで、強電界ドリフト層6は、図10に
示すように、柱状の多結晶シリコンのグレイン51と、
グレイン51の表面に形成された薄い酸化シリコン膜5
2と、多結晶シリコンのグレイン51の間に介在するナ
ノメータオーダのシリコン微結晶63と、シリコン微結
晶63の表面に形成されシリコン微結晶63の結晶粒径
よりも小さい膜厚の酸化シリコン膜64とを少なくとも
含むと考えられる。この強電界ドリフト層6は上述した
陽極酸化処理を行う前の多結晶シリコン層に含まれてい
たグレインの表面が多孔質化し、残されたグレイン51
で結晶状態が維持されているものと考えられる。したが
って、強電界ドリフト層6に印加された電界の大部分は
酸化シリコン膜64を集中的に通り、注入された電子e
- はグレイン51の間で酸化シリコン膜64を通る強電
界により加速され図10の矢印Aの向き(図10中の上
向き)にドリフトする。なお、強電界ドリフト層6の表
面に到達した電子はホットエレクトロンであると考えら
れ、表面電極7を容易にトンネルし真空中に放出され
る。
【0010】上述の構成を有する電界放射型電子源で
は、表面電極7とオーミック電極2との間に流れる電流
をダイオード電流Ipsと呼び、コレクタ電極21と表面
電極7との間に流れる電流を放出電子電流Ieと呼ぶこ
とにすれば(図9参照)、ダイオード電流Ipsに対する
放出電子電流Ieの比率(=Ie/Ips)が大きいほど
電子放出効率が高くなる。なお、この電界放射型電子源
では、表面電極7とオーミック電極2との間に印加する
直流電圧Vpsを10〜20V程度の低電圧としても電子
を放出させることができる。また、この電界放射型電子
源は、電子放出特性の真空度依存性が小さく、しかも電
子放出時にポッピング現象が発生せず、電子を高い電子
放出効率で安定して放出することができる。
【0011】ところで、上述した構成例では導電性基板
としてn形シリコン基板1を用いているが、n形シリコ
ン基板1に代えてガラス基板のような絶縁性基板上にI
TO膜のような導電性層を形成した基板を用いることも
でき、このような構成の導電性基板を用いると、電子源
の大面積化および低コスト化が可能になる。このような
構成の導電性基板を用いた電界放射型電子源の一例を図
11に示す。図11に示す電界放射型電子源は、ガラス
基板よりなる絶縁性基板11と、絶縁性基板11の上に
形成したITO膜よりなる導電性層8とで構成した導電
性基板を用いており、導電性層8上に強電界ドリフト層
6が形成され、強電界ドリフト層6上に表面電極7が積
層されている。この電界放射型電子源における強電界ド
リフト層6は、導電性層8の上にノンドープの多結晶シ
リコン層を堆積させた後に、多結晶シリコン層を陽極酸
化処理にて多孔質化し、さらに酸化あるいは窒化するこ
とにより形成されている。
【0012】図11に示す電界放射型電子源から電子を
放出させるには、図8に示した電界放射型電子源と同様
に表面電極7に対向配置されたコレクタ電極21を設け
る。つまり、図12に示すように、表面電極7とコレク
タ電極21との間を真空とした状態で、表面電極7が導
電性層8に対して高電位側(正極)となるように表面電
極7と導電性層8との間に直流電圧Vpsを印加するとと
もに、コレクタ電極21が表面電極7に対して高電位側
(正極)となるようにコレクタ電極21と表面電極7と
の間に直流電圧Vcを印加する。各直流電圧Vps,Vc
を適宜に設定すれば、導電性層8から注入された電子が
強電界ドリフト層6をドリフトし表面電極7を通して放
出される(なお、図12中の一点鎖線は表面電極7を通
して放出された電子e- の流れを示す)。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】ところで、図8および
図11それぞれに示した各電界放射型電子源は、電子放
出特性の真空度依存性が小さく、しかも電子放出時にポ
ッピング現象が発生せず、電子を高い電子放出効率で安
定して放出することができる。しかしながら、上記従来
の各電界放射型電子源では、上述のダイオード電流Ips
が図13中のイのように経時変化し、放出電子電流Ie
が同図中のロのように経時変化してしまうという不具合
があった。すなわち、ダイオード電流Ipsが徐々に増加
する一方で、放出電子電流Ieが徐々に減少するので、
電子放出効率が徐々に低下してしまい、放出電子電流I
eの経時的な低下を抑制しようとすると消費電力が増加
してしまうという不具合があった。
【0014】このような不具合が発生する原因として
は、以下のことが考えられる。上記従来の電界放射型電
子源では、多孔質多結晶シリコン層を酸化することによ
り強電界ドリフト層6を形成しているので、強電界ドリ
フト層6の全体にわたって均一な膜質および膜厚で上述
の酸化シリコン膜52,64(図10参照)を形成する
ことが難しい。また、強電界ドリフト層6において、シ
リコン微結晶63が形成された領域における酸化シリコ
ン膜64の合計膜厚と、グレイン51が残っている領域
の酸化シリコン膜52の膜厚とを比較すると、酸化シリ
コン膜52の方が薄くなりやすい。これらの理由から、
従来構成の電界放射型電子源に駆動電圧(直流電圧Vp
s)を印加してダイオード電流Ipsを流していくと、酸
化シリコン膜52若しくは酸化シリコン膜64あるいは
各酸化シリコン膜52,64において膜厚の薄い部分
や、欠陥、不純物が多く含まれる部分などが徐々に絶縁
破壊を起こし、絶縁破壊を起こした部分では酸化シリコ
ン膜52,64の抵抗値が小さくなってダイオード電流
Ipsが経時的に増加する一方で、電子放出に寄与する電
流が減少して放出電子電流Ieが経時的に低下するもの
と考えられる。
【0015】したがって、この電界放射型電子源をディ
スプレイなどに応用した場合、酸化シリコン膜52,6
4の絶縁破壊にともなって消費電力や発熱量が徐々に増
加してしまうとともに、画面の輝度が徐々に暗くなって
しまうという不具合があった。
【0016】本発明は上記事由に鑑みて為されたもので
あり、その目的は、電子放出特性の経時安定性に優れた
電界放射型電子源およびその製造方法を提供することに
ある。
【0017】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、上記
目的を達成するために、導電性基板と、導電性基板の主
表面側に形成された酸化若しくは窒化した多孔質半導体
層よりなる強電界ドリフト層と、強電界ドリフト層の主
表面側に形成された導電性薄膜よりなる表面電極とを備
え、表面電極を導電性基板に対して正極として電圧を印
加することにより導電性基板から注入された電子が強電
界ドリフト層をドリフトし表面電極を通して放出される
電界放射型電子源であって、強電界ドリフト層と表面電
極との間に強電界ドリフト層の電界強度を緩和する電界
緩和層が設けられて成ることを特徴とするものであり、
強電界ドリフト層と表面電極との間に強電界ドリフト層
の電界強度を緩和する電界緩和層が設けられていること
によって、強電界ドリフト層中において絶縁破壊を起こ
しやすい部分の電界強度を小さくすることができ、当該
部分における絶縁破壊を防止することができて電子放出
効率などの電子放出特性の経時安定性を向上させること
ができ、ディスプレイなどに応用した場合に画面の輝度
が経時的に暗くなるのを防止することができる。なお、
電界緩和層を設けたことによって強電界ドリフト層に印
加される電界強度が小さくなるので、表面電極と導電性
基板との間に印加する電圧を電界緩和層が設けられてい
ない従来構成の場合と同じにすると、放出電子電流は電
界緩和層を設けていない場合よりも小さくなるが、上記
電圧を大きくすることにより、放出電子電流の大きさを
従来構成と同等の値にすることができる。
【0018】請求項2の発明は、請求項1の発明におい
て、上記電界緩和層が、窒化シリコン膜若しくは窒化シ
リコン膜を含み上記電子の散乱が起こりにくい多層膜か
らなるので、窒化シリコン膜の抵抗率が高いことにより
上記電界緩和層の膜厚を薄くすることができ且つ上記強
電界ドリフト層をドリフトした電子が窒化シリコン膜中
で散乱されにくいから、上記電界緩和層を設けたことに
よる電子放出効率の低下を抑制することができる。
【0019】請求項3の発明は、請求項1の発明におい
て、上記電界緩和層が、上記強電界ドリフト層の主表面
上に形成された窒化シリコン膜と、該窒化シリコン膜上
に形成された酸化シリコン膜とからなるので、窒化シリ
コン膜および酸化シリコン膜の抵抗率が高いことにより
上記電界緩和層の膜厚を薄くすることができ且つ上記強
電界ドリフト層をドリフトした電子が窒化シリコン膜中
で散乱されにくいから、上記電界緩和層を設けたことに
よる電子放出効率の低下を抑制することができ、しか
も、上記表面電極が酸化シリコン膜上に形成されている
から、上記表面電極が窒化シリコン膜上に形成されてい
る場合に比べて上記表面電極への電子の移動が起こりや
すくなり、電子放出効率を高めることができる。
【0020】請求項4の発明は、請求項1の発明におい
て、上記電界緩和層は、上記強電界ドリフト層の主表面
上に形成された第1の酸化シリコン膜と、該第1の酸化
シリコン膜上に形成された窒化シリコン膜と、該窒化シ
リコン膜上に形成された第2の酸化シリコン膜とからな
るので、窒化シリコン膜および各酸化シリコン膜の抵抗
率が高いことにより上記電界緩和層の膜厚を薄くするこ
とができ且つ上記強電界ドリフト層をドリフトした電子
が窒化シリコン膜中で散乱されにくいから、上記電界緩
和層を設けたことによる電子放出効率の低下を抑制する
ことができ、しかも、上記表面電極が上記第2の酸化シ
リコン膜上に形成されているから、上記表面電極が窒化
シリコン膜上に形成されている場合に比べて上記表面電
極への電子の移動が起こりやすくなり、電子放出効率を
高めることができる。
【0021】請求項5の発明は、請求項1の発明におい
て、上記電界緩和層が、少なくとも上記表面電極が剥離
しない程度に上記表面電極との密着性が高い材料により
形成されているので、上記表面電極の剥離による経時劣
化および電子放出特性の経時変化を抑制することができ
る。
【0022】請求項6の発明は、請求項5の発明におい
て、上記電界緩和層が、酸化クロム膜からなるので、酸
化クロム膜が電子の透過特性に優れいていることによ
り、上記電界緩和層を設けたことによる電子放出効率の
低下を抑制することができる。
【0023】請求項7の発明は、請求項1ないし請求項
6の発明において、上記電界緩和層が、上記強電界ドリ
フト層の抵抗値と同じオーダの抵抗値を有するので、表
面電極と導電性基板との間に印加する電圧に関して上記
電界緩和層を設けない従来構成からの増加分を少なくし
つつ上記強電界ドリフト層の電界強度を緩和することが
できる。
【0024】請求項8の発明は、請求項1ないし請求項
7の発明において、上記強電界ドリフト層が、少なくと
も、上記導電性基板の主表面側に形成された柱状の半導
体結晶と、半導体結晶間に介在するナノメータオーダの
半導体微結晶と、半導体結晶の表面に形成された第1の
絶縁膜と、半導体微結晶の表面に形成され当該半導体微
結晶の結晶粒径よりも小さな膜厚の第2の絶縁膜とから
なるので、電子放出特性の真空度依存性が小さく且つ電
子放出時にポッピング現象が発生せず安定して電子を放
出することができる。ここにおいて、上記電界緩和層が
設けられていることによって、第1の絶縁膜および第2
の絶縁膜の絶縁破壊が防止される。
【0025】請求項9の発明は、請求項1記載の電界放
射型電子源の製造方法であって、導電性基板の主表面側
に形成された強電界ドリフト層上に電界緩和層を形成す
る工程と、電界緩和層上に表面電極を形成する工程とを
備えることを特徴とし、電界緩和層を強電界ドリフト層
上に積層する工程を従来構成の電界放射型電子源の製造
方法に追加するだけで経時安定性の優れた電界放射型電
子源を提供することができる。
【0026】請求項10の発明は、導電性基板と、導電
性基板の主表面側に形成された酸化若しくは窒化した多
孔質半導体層よりなる強電界ドリフト層と、強電界ドリ
フト層の主表面側に形成された導電性薄膜よりなる表面
電極とを備え、強電界ドリフト層と表面電極との間に強
電界ドリフト層の電界強度を緩和する酸化層よりなる電
界緩和層が設けられ、表面電極を導電性基板に対して正
極として電圧を印加することにより導電性基板から注入
された電子が強電界ドリフト層をドリフトし表面電極を
通して放出される電界放射型電子源の製造方法であっ
て、導電性基板の主表面側に形成された強電界ドリフト
層上に電界緩和層の構成元素のうち酸素を除いた構成元
素により構成された被酸化層を形成する工程と、被酸化
層上に表面電極を形成する工程と、表面電極を形成した
後に酸化処理によって被酸化層を酸化することにより電
界緩和層を形成する工程とを備えることを特徴とし、経
時安定性の優れた電界放射型電子源を提供することがで
き、また、表面電極を形成した後の酸化処理によって被
酸化層を酸化することにより電界緩和層を形成している
から、電界緩和層が汚染されたり損傷を受けるのを防止
することができる。
【0027】請求項11の発明は、請求項10の発明に
おいて、上記酸化処理が、オゾンにより上記被酸化層を
酸化する処理なので、オゾンが上記表面電極を拡散して
上記被酸化層が酸化されるから、熱酸化に比べて低温で
上記被酸化層を酸化することができ、上記表面電極の構
成元素の凝集による断線や剥離などのダメージが発生す
るのを防ぐことができる。
【0028】請求項12の発明は、請求項10の発明に
おいて、上記酸化処理が、酸素プラズマにより上記被酸
化層を酸化する処理なので、熱酸化に比べて低温で上記
被酸化層を酸化することができ、上記表面電極の構成元
素の凝集による断線や剥離などのダメージが発生するの
を防ぐことができる。
【0029】
【発明の実施の形態】(実施形態1)図1(a)に本実
施形態の電界放射型電子源10の概略断面図を、図2
(a)〜(d)に電界放射型電子源10の製造方法にお
ける主要工程断面図を示す。なお、本実施形態では、導
電性基板として抵抗率が導体の抵抗率に比較的近い単結
晶のn形シリコン基板1(例えば、抵抗率が略0.01
Ωcm〜0.02Ωcmの(100)基板)を用いてい
る。
【0030】本実施形態の電界放射型電子源10の基本
構成は図8に示した従来構成と略同じであって、図1
(a)に示すように、n形シリコン基板1の主表面上に
酸化した多孔質多結晶シリコン層よりなる強電界ドリフ
ト層6が形成され、該強電界ドリフト層6上に窒化シリ
コン膜よりなる電界緩和層9が形成され、電界緩和層9
上に導電性薄膜(例えば、金薄膜)よりなる表面電極7
が形成されている。また、n形シリコン基板1の裏面に
はオーミック電極2が形成されている。なお、本実施形
態では、n形シリコン基板1の主表面上に強電界ドリフ
ト層6が形成されているが、n形シリコン基板1の主表
面と強電界ドリフト層6との間にノンドープの多結晶シ
リコン層が形成されていてもよい。
【0031】本実施形態の電界放射型電子源10では、
図8および図9に示した従来構成の電界放射型電子源と
同様の動作原理で電子を放出することができる。すなわ
ち、本実施形態の電界放射型電子源10から電子を放出
させるには、例えば、図3に示すように、表面電極7に
対向配置されたコレクタ電極21を設け、表面電極7と
コレクタ電極21との間を真空とした状態で、表面電極
7がn形シリコン基板1(オーミック電極2)に対して
高電位側(正極)となるように表面電極7とn形シリコ
ン基板1との間に直流電圧Vpsを印加するとともに、コ
レクタ電極21が表面電極7に対して高電位側(正極)
となるようにコレクタ電極21と表面電極7との間に直
流電圧Vcを印加すればよい。各直流電圧Vps,Vcを
適宜に設定すれば、n形シリコン基板1から注入された
電子が強電界ドリフト層6をドリフトし電界緩和層9お
よび表面電極7を通して放出される(なお、図3中の一
点鎖線は表面電極7を通して放出された電子e- の流れ
を示す)。表面電極7には仕事関数の小さな材料が採用
され、表面電極7の膜厚は10〜15nm程度に設定さ
れている。
【0032】ここで、強電界ドリフト層6は、図1
(b)に示すように、柱状の多結晶シリコンのグレイン
(半導体結晶)51と、グレイン51の表面に形成され
た第1の絶縁膜である薄い酸化シリコン膜52と、多結
晶シリコンのグレイン51の間に介在するナノメータオ
ーダのシリコン微結晶(半導体微結晶)63と、シリコ
ン微結晶63の表面に形成されシリコン微結晶63の結
晶粒径よりも小さい膜厚の第2の絶縁膜である酸化シリ
コン膜64とを少なくとも含むと考えられる。この強電
界ドリフト層6は後述の陽極酸化処理を行う前の多結晶
シリコン層3(図2参照)に含まれていたグレインの表
面が多孔質化し、残されたグレイン51で結晶状態が維
持されているものと考えられる。したがって、強電界ド
リフト層6に印加された電界の大部分は酸化シリコン膜
64を集中的に通り、注入された電子e- はグレイン5
1の間で酸化シリコン膜64を通る強電界により加速さ
れ図1(b)中の上向きにドリフトする。なお、強電界
ドリフト層6の表面に到達した電子はホットエレクトロ
ンであると考えられ、電界緩和層9でほとんど散乱され
ずに表面電極7を容易にトンネルし真空中に放出され
る。
【0033】上述の構成を有する電界放射型電子源10
では、表面電極7とオーミック電極2との間に流れる電
流をダイオード電流Ipsと呼び、コレクタ電極21と表
面電極7との間に流れる電流を放出電子電流Ieと呼ぶ
ことにすれば(図3参照)、ダイオード電流Ipsに対す
る放出電子電流Ieの比率(=Ie/Ips)が大きいほ
ど電子放出効率が高くなる。なお、この電界放射型電子
源10では、表面電極7とオーミック電極2との間に印
加する直流電圧Vpsを10〜20V程度の低電圧として
も電子を放出させることができる。また、この電界放射
型電子源は、電子放出特性の真空度依存性が小さく、し
かも電子放出時にポッピング現象が発生せず、電子を高
い電子放出効率で安定して放出することができる。
【0034】ところで、本実施形態の電界放射型電子源
10では、強電界ドリフト層6と表面電極7との間に、
上記直流電圧(駆動電圧)Vpsを印加した状態での強電
界ドリフト層6の電界強度を緩和する電界緩和層9が設
けられている点に特徴がある。ここにおいて、電界緩和
層9は、強電界ドリフト層6と表面電極7との間に介在
するから、強電界ドリフト層6をドリフトした電子がほ
とんど散乱されることなく表面電極7へ到達するように
電子が散乱しにくい材料により形成し、膜厚を薄くする
ことが望ましい。一方で電界緩和層9は強電界ドリフト
層6の電界強度を緩和するために設けたものであり、電
界緩和層9の抵抗値が強電界ドリフト層6の抵抗値に比
べて1桁以上小さいと強電界ドリフト層6の電界強度を
緩和する効果が小さく、強電界ドリフト層6の抵抗値よ
りも大きいと上記駆動電圧を大きくする必要あるので、
電界緩和層9の抵抗値は、強電界ドリフト層6の抵抗値
と同じオーダであることが望ましい。本実施形態では、
強電界ドリフト層6の厚さを1.5μmとし、電界緩和
層9の膜厚を50nmに設定してあるが、電界緩和層9
の膜厚は50nmに限定されるものではなく、強電界ド
リフト層6の抵抗値に応じて10nm〜100nmの範
囲で適宜設定すればよい。なお、強電界ドリフト層6の
抵抗値は、強電界ドリフト層6の厚さや駆動電圧などに
よっても異なるが、数十kΩ〜数十MΩ程度である。
【0035】しかして、本実施形態の電界放射型電子源
10では、強電界ドリフト層6と表面電極7との間に強
電界ドリフト層6の電界強度を緩和する電界緩和層9が
設けられていることによって、強電界ドリフト層6中の
酸化シリコン膜52,64において絶縁破壊を起こしや
すい部分の電界強度を小さくすることができ、当該部分
における絶縁破壊を防止することができて、ダイオード
電流Ipsおよび放出電子電流Ieそれぞれの経時変化を
抑制することができるから、電子放出効率などの電子放
出特性の経時安定性を向上させることができ、ディスプ
レイなどに応用した場合に画面の輝度が経時的に暗くな
るのを防止することができる。なお、電界緩和層9を設
けたことによって強電界ドリフト層6に印加される電界
強度が小さくなるので、表面電極7と導電性基板たるn
形シリコン基板1(オーミック電極2)との間に印加す
る駆動電圧(直流電圧Vps)を電界緩和層9が設けられ
ていない従来構成の場合と同じにすると、放出電子電流
Ieは電界緩和層9を設けていない場合よりも小さくな
るが、駆動電圧を大きくすることにより、放出電子電流
Ieの大きさを従来構成と同等の値にすることができ
る。
【0036】また、本実施形態の電界放射型電子源10
では、電界緩和層9が窒化シリコン膜により形成されて
おり、窒化シリコン膜は抵抗率が高いので電界緩和層9
の膜厚を薄くすることができ、しかも窒化シリコン膜は
電子の透過特性に優れ、強電界ドリフト層6をドリフト
した電子が電界緩和層9中で散乱されにくいから、電界
緩和層9を設けたことによる電子放出効率の低下を抑制
することができる。
【0037】ところで、本実施形態では、導電性基板と
してn形シリコン基板1を用いているが、導電性基板
は、電界放射型電子源10の負極を構成するとともに真
空中において上述の強電界ドリフト層6を支持し、なお
且つ、強電界ドリフト層6へ電子を注入するものであ
る。したがって、導電性基板は、電界放射型電子源10
の負極を構成し強電界ドリフト層6を支持することがで
きればよいので、n形シリコン基板に限定されるもので
はなく、クロムなどの金属基板であってもよいし、図1
1に示すようにガラスなどの絶縁性基板11の一表面側
(主表面側)に導電性層8を形成したものであってもよ
い。ガラス基板の一表面側に導電性層8を形成した基板
を用いる場合には、半導体基板を用いる場合に比べて、
電子源の大面積化および低コスト化が可能になる。
【0038】また、本実施形態においては、表面電極7
として金薄膜を用いているが、表面電極7の材料は金に
限定されるものではなく、例えば、アルミニウム、クロ
ム、タングステン、ニッケル、白金などの仕事関数が小
さな材料を用いてもよい。ここに、金の仕事関数は5.
10eV、アルミニウムの仕事関数は4.28eV、ク
ロムの仕事関数は4.50eV、タングステンの仕事関
数は4.55eV、ニッケルの仕事関数は5.15e
V、白金の仕事関数は5.65eVである。また、表面
電極7を厚み方向に積層された複数層の薄膜電極層から
なる導電性薄膜により構成してもよい。この場合、最上
層の薄膜電極層としては、耐酸化性に優れ仕事関数が小
さな性質を有する材料を採用し、最下層の薄膜電極層と
しては、仕事関数が小さくかつ電界緩和層9との密着性
が良い性質の材料を採用すればよい。ここに、最下層の
薄膜電極層の材料は、最上層の薄膜電極層の材料に比べ
て強電界ドリフト層6中へ拡散しにくい(つまり、強電
界ドリフト層6の材料中での拡散係数が小さい)性質を
有していることが望ましい。
【0039】上述のような仕事関数が小さくかつ電界緩
和層9との密着性が良い性質を有する表面電極7を採用
することにより、表面電極7が電界緩和層9から剥離す
るのを防止することができ、経時安定性が向上するとと
もに、歩留まりが高くなって低コスト化を図ることがで
きる。
【0040】また、最上層の薄膜電極層としては例えば
金を用い、最下層の薄膜電極層としては、クロムを用い
ればよいが、最下層の薄膜電極層としてはクロムの代わ
りに、ニッケル、白金、チタン、ジルコニウム、ロジウ
ム、ハフニウム、イリジウムのいずれかあるいはそれら
の酸化物を用いてもよい。最下層の薄膜電極層として、
クロム、ニッケル、白金、チタン、ジルコニウム、ロジ
ウム、ハフニウム、イリジウムのいずれかあるいはそれ
らの酸化物を用いることにより、最下層の薄膜電極層の
材料コストを比較的安価にすることができる。
【0041】また、本実施形態では、強電界ドリフト層
6を酸化した多孔質多結晶シリコン層により形成してい
るが、強電界ドリフト層6を窒化した多孔質多結晶シリ
コン層により形成してもよく、多孔質多結晶シリコン層
以外の多孔質半導体層を酸化若しくは窒化したものでも
よい。なお、強電界ドリフト層6を窒化した多孔質多結
晶シリコン層とした場合には図1(b)にて説明した各
酸化シリコン膜52,64がいずれも窒化シリコン膜と
なる。また、本実施形態では、電界緩和層9を窒化シリ
コン膜により形成しているが、電子散乱が少なく抵抗率
が高い酸化シリコン膜やアモルファスシリコン、アモル
ファス炭化シリコン、金属の酸化膜や窒化膜などにより
形成してもよい。
【0042】以下、図1の電界放射型電子源10の製造
方法について図2を参照しながら説明する。
【0043】まず、n形シリコン基板1の裏面にオーミ
ック電極2を形成した後、n形シリコン基板1の主表面
上に所定膜厚(例えば、1.5μm)のノンドープの多
結晶シリコン層(多結晶シリコン薄膜)3を例えばLP
CVD法によって形成(成膜)することにより図2
(a)に示すような構造が得られる。
【0044】上記ノンドープの多結晶シリコン層3を形
成した後、55wt%のフッ化水素水溶液とエタノール
とを略1:1で混合した混合液よりなる電解液の入った
陽極酸化処理槽を利用し、白金電極(図示せず)を負
極、n形シリコン基板1(オーミック電極2)を正極と
して、多結晶シリコン層3に光照射を行いながら所定の
条件で陽極酸化処理を行うことによって、多孔質多結晶
シリコン層4が形成され図2(b)に示すような構造が
得られる。本実施形態では、陽極酸化処理の条件とし
て、多結晶シリコン層3の表面が上記電解液に触れるよ
うにし、電流密度を30mA/cm2で一定、電流の通
電時間を10秒とした。また、多結晶シリコン層3に光
を照射する光源としては、500Wのタングステンラン
プを用いている。なお、本実施形態では、多結晶シリコ
ン層3を深さ方向においてn形シリコン基板1に達する
深さまで多孔質化しているが、深さ方向の途中まで多孔
質化するようにしてもよく、この場合にはn形シリコン
基板1と多孔質多結晶シリコン層4との間に多結晶シリ
コン層3の一部が残ることになる。
【0045】上述の陽極酸化処理が終了した後、急速加
熱法による急速熱酸化技術によって多孔質多結晶シリコ
ン層4の急速熱酸化を行うことにより、酸化した多孔質
多結晶シリコン層よりなる強電界ドリフト層6が形成さ
れ、その後、強電界ドリフト層6上にスパッタ法によっ
て所定膜厚(例えば、50nm)の電界緩和層9を形成
することにより、図2(c)に示す構造が得られる。急
速熱酸化の条件としては、ランプアニール装置を用い、
酸素ガスの流量を標準状態で0.3L/min(300
sccm)、酸化温度を900℃、酸化時間を1時間と
した。本実施形態では、多孔質多結晶シリコン層4の酸
化を急速熱酸化により行っているので、数秒で酸化温度
まで昇温することが可能であり、通常の炉心管タイプの
酸化装置で問題となる入炉時の巻き込み酸化を抑制する
ことができる。また、スパッタ法による電界緩和層9の
形成にあたっては、ターゲットとして窒化シリコンを用
い、チャンバ内を1×10-4Pa以下まで排気した後、
Arガスを標準状態で0.03L/min(30scc
m)の流量でチャンバ内に導入してチャンバ内の圧力を
5×10-1Paに調整し、その後、チャンバ内に配置さ
れた電極間に1W/cm2の高周波電力を供給して窒化
シリコン膜を成膜した。
【0046】電界緩和層9を形成した後は、電界緩和層
9上に表面電極7となる金薄膜を例えば蒸着により形成
することによって、図2(d)に示す構造の電界放射型
電子源10が得られる。
【0047】しかして、上述の製造方法を採用すること
により、電界緩和層9を強電界ドリフト層6上に積層す
る工程を従来構成の電界放射型電子源の製造方法に追加
するだけで経時安定性の優れた電界放射型電子源10を
提供することができる。
【0048】また、上述の製造方法で製造された電界放
射型電子源10は、電子放出特性の真空度依存性が小さ
く且つ電子放出時にポッピング現象が発生せず安定して
電子を放出することができ、また、導電性基板として単
結晶シリコン基板などの半導体基板の他にガラス基板な
どに導電性層(例えば、ITO膜)を形成した基板など
を使用することもできるから、スピント型電極に比べ
て、電子源の大面積化および低コスト化が可能になる。
【0049】なお、上述の多結晶シリコン層3の成膜
は、導電性基板が半導体基板の場合にはLPCVD法の
他にスパッタ法により行ってもよいし、あるいは、プラ
ズマCVD法によってアモルファスシリコンを成膜した
後にアニール処理を行うことにより結晶化させて成膜し
てもよい。また、導電性基板がガラス基板に導電性層を
形成した基板の場合には、CVD法により導電性層上に
アモルファスシリコンを成膜した後にアニールすること
により、多結晶シリコン層3を形成してもよい。また、
導電性層上に多結晶シリコン層3を形成する方法はCV
D法に限定されるものではなく、例えばCGS(Contin
uous Grain Silicon)法や触媒CVD法などを用いて
もよい。
【0050】また、上述の多孔質多結晶シリコン層4の
酸化方法としては、熱酸化法の他に、酸(例えば、希硫
酸、希硝酸、王水など)を用いた電気化学的な酸化でも
よいし、酸によって電気化学的に酸化する前に多孔質多
結晶シリコン層4の極表面が酸化する程度の時間だけ酸
化性の溶液(例えば、硝酸、硫酸、塩酸、過酸化水素水
など)に浸すことにより、シリコン原子を終端している
水素原子を酸素原子に置換してもよい。また、酸素とオ
ゾンとの少なくとも一方を含むガス雰囲気で紫外光を照
射して酸化してもよいし、酸素とオゾンとの少なくとも
一方を含むガス雰囲気でプラズマにさらすことにより酸
化してもよいし、少なくともオゾンを含むガス雰囲気で
加熱を行う(加熱温度は100℃〜600℃の温度範囲
で適宜設定すればよい)ことにより酸化してもよいし、
紫外光を照射するとともに加熱を行う(加熱温度は10
0℃〜600℃の温度範囲で適宜設定すればよい)こと
により酸化してもよいし、酸素とオゾンとの少なくとも
一方を含むガス雰囲気で紫外光を照射するとともに加熱
を行う(加熱温度は100℃〜600℃の温度範囲で適
宜設定すればよい)ことにより酸化してもよいし、これ
らを組み合わせるようにしてもよく、熱酸化法以外の方
法を採用することにより、比較的低温で多孔質多結晶シ
リコン層4を酸化することができ、図1(b)にて説明
した酸化シリコン膜52,64への不純物の拡散量が少
なくなり、絶縁耐圧が向上する。なお、多孔質多結晶シ
リコン層4を酸化する代わりに、窒化するようにしても
よい。
【0051】また、上述の電界緩和層9の形成方法はス
パッタ法に限定されるものではなく、蒸着法やイオンプ
レーティング法などを用いてもよい。
【0052】また、上述の表面電極7の形成方法は蒸着
に限定されるものではなく、例えばスパッタ法を用いて
もよい。
【0053】次に、本実施形態の電界放射型電子源10
を利用したディスプレイについて図4を参照しながら説
明する。
【0054】図4に示すディスプレイは、電界放射型電
子源10の表面電極7に対向配置されるガラス基板33
を備え、ガラス基板33の電界放射型電子源10と対向
する面にはストライプ状にコレクタ電極31が形成さ
れ、表面電極7を通して放射される電子線によって可視
光を発光する蛍光体層32がコレクタ電極31を覆うよ
うに形成されている。ここに、表面電極7はストライプ
状に形成されている。なお、電界放射型電子源10とガ
ラス基板33との間の空間は真空にしてある。
【0055】このディスプレイでは、表面電極7をスト
ライプ状に形成するとともに、コレクタ電極31を表面
電極7に直交するストライプ状に形成しておき、コレク
タ電極31および表面電極7を適宜選択して電圧(電
界)を印加することにより、電圧を印加した表面電極7
からのみ電子が放出される。そして、放出された電子
は、当該電子が放出された表面電極7において対向する
コレクタ電極31に電圧が印加されている領域から放出
された電子だけが加速され、該コレクタ電極31を覆う
蛍光体層32を光らせる。
【0056】要するに、図4に示す構成のディスプレイ
では、特定の表面電極7と特定のコレクタ電極31とに
電圧を印加することにより、蛍光体層32のうち前記電
圧が印加された両電極7,31の交差する領域に対応す
る部分を光らせることができる。そして、電圧を印加す
る表面電極7およびコレクタ電極31を適宜切り替える
ことにより、画像や文字などを表示することが可能にな
る。なお、このディスプレイでは、電界放射型電子源1
0から放出された電子で蛍光体層32の蛍光体を光らせ
るためには、コレクタ電極31に高電圧を印加し電子を
加速する必要があり、コレクタ電極31には、数百Vな
いし数kVの高電圧を印加すればよい。
【0057】(実施形態2)本実施形態の基本構成は実
施形態1と略同じであって、図5に示すように、電界緩
和層9を、強電界ドリフト層6上に形成した窒化シリコ
ン膜9aと窒化シリコン膜9a上に形成した酸化シリコ
ン膜9bとにより形成している点に特徴がある。要する
に、本実施形態では、電界緩和層9が窒化シリコン膜9
aを含む多層膜により構成されており、表面電極7が酸
化シリコン膜9b上に積層されている。ここにおいて、
窒化シリコン膜9aおよび酸化シリコン膜9bはいずれ
もスパッタ法により形成している。
【0058】しかして、本実施形態においても実施形態
1と同様の効果が得られる。ここに、本実施形態では、
窒化シリコン膜9aおよび酸化シリコン膜9bの各抵抗
率が高いことにより電界緩和層9の膜厚を薄くすること
ができ且つ強電界ドリフト層6をドリフトした電子が窒
化シリコン膜9a中で散乱されにくいから、電界緩和層
9を設けたことによる電子放出効率の低下を抑制するこ
とができる。しかも、本実施形態では、表面電極7が酸
化シリコン膜9a上に形成されているから、実施形態1
のように表面電極7が窒化シリコン膜よりなる電界緩和
層9上に形成されている場合に比べて表面電極7への電
子の移動が起こりやすくなり、電子放出効率を高めるこ
とができる。
【0059】なお、本実施形態では、窒化シリコン膜9
aの膜厚を40nm、酸化シリコン膜9bの膜厚を10
nmに設定してあるが、これらの膜厚は特に限定するも
のではなく、強電界ドリフト層6の厚さおよび抵抗値な
どに応じて適宜設定すればよい。ただし、窒化シリコン
膜9aの方が酸化シリコン膜9bよりも電子の散乱が少
ないので、窒化シリコン膜9aの膜厚を酸化シリコン膜
9bの膜厚よりも厚く設定するのが望ましい。
【0060】(実施形態3)本実施形態の基本構成は実
施形態1と略同じであって、図6に示すように、電界緩
和層9を、強電界ドリフト層6上に形成した第1の酸化
シリコン膜9cと第1の酸化シリコン膜9c上に形成し
た窒化シリコン膜9aと、窒化シリコン膜9a上に形成
した第2の酸化シリコン膜9bとにより形成している点
に特徴がある。要するに、本実施形態では、電界緩和層
9が窒化シリコン膜9aを含む多層膜により構成されて
おり、表面電極7が第2の酸化シリコン膜9b上に積層
されている。ここにおいて、窒化シリコン膜9aおよび
各酸化シリコン膜9c,9bはいずれもスパッタ法によ
り形成している。
【0061】しかして、本実施形態においても実施形態
1と同様の効果が得られる。ここに、本実施形態では、
窒化シリコン膜9aおよび各酸化シリコン膜9c,9b
の各抵抗率が高いことにより電界緩和層9の膜厚を薄く
することができ且つ強電界ドリフト層6をドリフトした
電子が窒化シリコン膜9a中で散乱されにくいから、電
界緩和層9を設けたことによる電子放出効率の低下を抑
制することができる。しかも、本実施形態では、表面電
極7が第2の酸化シリコン膜9a上に形成されているか
ら、実施形態1のように表面電極7が窒化シリコン膜よ
りなる電界緩和層9上に形成されている場合に比べて表
面電極7への電子の移動が起こりやすくなり、電子放出
効率を高めることができる。
【0062】なお、本実施形態では、第1の酸化シリコ
ン膜9cの膜厚を10nm、窒化シリコン膜9aの膜厚
を40nm、第2の酸化シリコン膜9bの膜厚を10n
mにそれぞれ設定してあるが、これらの膜厚は特に限定
するものではなく、強電界ドリフト層6の厚さおよび抵
抗値などに応じて適宜設定すればよい。ただし、窒化シ
リコン膜9aの方が各酸化シリコン膜9c,9bよりも
電子の散乱が少ないので、窒化シリコン膜9aの膜厚を
各酸化シリコン膜9c,9bの膜厚よりも厚く設定する
のが望ましい。
【0063】(実施形態4)本実施形態の基本構成は実
施形態1と略同じであって、実施形態1で説明した図1
に示す構成の電界放射型電子源10における電界緩和層
9を酸化クロム膜により形成している点に特徴がある。
ここにおいて、酸化クロム膜は、少なくとも表面電極7
が剥離しない程度に表面電極7との密着性が高い材料な
ので、電界緩和層9から表面電極7が剥離することによ
る経時劣化および電子放出特性の経時変化を抑制するこ
とができる。また、酸化クロム膜は電子の透過特性に優
れいているので、電界緩和層9を設けたことによる電子
放出効率の低下を抑制することができる。
【0064】しかして、本実施形態の電界放射型電子源
10においても実施形態1と同様の効果が得られる。
【0065】以下、本実施形態の電界放射型電子源10
の製造方法について図7を参照しながら説明するが、実
施形態1の製造方法と略同じなので、実施形態1で説明
した図2に示す構成と同様の構成要素には同一の符号を
付して簡単に説明する。
【0066】すなわち、本実施形態では、導電性基板た
るn形シリコン基板1の裏面にオーミック電極2を形成
した後、n形シリコン基板1の表面上にノンドープの多
結晶シリコン層3をLPCVD法によって形成すること
により図7(a)に示す構造が得られる。
【0067】その後、多結晶シリコン層3を陽極酸化処
理にて多孔質化して多孔質多結晶シリコン層4を形成す
ることによって図7(b)に示す構造が得られる。
【0068】多孔質多結晶シリコン層4の形成後は、多
孔質多結晶シリコン層4を熱酸化することにより酸化し
た多孔質多結晶シリコン層よりなる強電界ドリフト層6
を形成し、その後、強電界ドリフト層6上にクロム膜よ
りなる被酸化層19を電子ビーム蒸着法によって形成
し、さらに被酸化層19上に金薄膜からなる表面電極7
を形成することにより図7(c)に示す構造が得られ
る。なお、本実施形態では、被酸化層19の膜厚を20
nm、表面電極7の膜厚を15nmとしてあるが、これ
らの膜厚は特に限定するものではない。
【0069】表面電極7を形成した後、酸化処理によっ
て被酸化層19を酸化することにより酸化クロム膜から
なる電界緩和層9が形成され、図7(d)に示す構造の
電界放射型電子源10が得られる。ここに、酸化処理で
は、例えばオゾン発生器で発生させたオゾンを酸化処理
用のチャンバ内に導入することにより行えばよい。本実
施形態では、標準状態で5L/minの流量の酸素ガス
をオゾン発生器に導入し、オゾン発生器内で放電を行う
ことにより濃度が約5%のオゾンを発生させ、このオゾ
ンを酸化処理用のチャンバへ導入している。また、酸化
処理には導電性基板たるn形シリコン基板1を150℃
に加熱している。なお、本実施形態では、酸化クロム膜
が酸化層を構成している。
【0070】しかして、上述の製造方法によれば、導電
性基板たるn形シリコン基板1の主表面側に形成された
強電界ドリフト層6上に電界緩和層9の構成元素のうち
酸素を除いた構成元素であるクロムにより構成された被
酸化層19を形成する工程と、被酸化層19上に表面電
極7を形成する工程と、表面電極7を形成した後に酸化
処理によって被酸化層19を酸化することにより電界緩
和層9を形成する工程とを備えるので、経時安定性の優
れた電界放射型電子源10を提供することができる。ま
た、表面電極7を形成した後の酸化処理によって被酸化
層19を酸化することにより電界緩和層9を形成してい
るから、電界緩和層9が酸化処理時に汚染されたり損傷
を受けるのを防止することができる。しかも、酸化処理
が、オゾンにより被酸化層19を酸化する処理なので、
オゾンが表面電極7を拡散して被酸化層19が酸化され
るから、熱酸化に比べて低温で被酸化層19を酸化する
ことができ、表面電極7の構成元素である金の凝集によ
る断線や剥離などのダメージが発生するのを防ぐことが
できる。
【0071】なお、本実施形態では、上述の酸化処理に
おいて被酸化層19をオゾンにより酸化しているが、酸
素プラズマにより被酸化層19を酸化するようにして
も、熱酸化に比べて低温で被酸化層19を酸化すること
ができ、表面電極7の構成元素の凝集による断線や剥離
などのダメージが発生するのを防ぐことができる。
【0072】
【発明の効果】請求項1の発明は、導電性基板と、導電
性基板の主表面側に形成された酸化若しくは窒化した多
孔質半導体層よりなる強電界ドリフト層と、強電界ドリ
フト層の主表面側に形成された導電性薄膜よりなる表面
電極とを備え、表面電極を導電性基板に対して正極とし
て電圧を印加することにより導電性基板から注入された
電子が強電界ドリフト層をドリフトし表面電極を通して
放出される電界放射型電子源であって、強電界ドリフト
層と表面電極との間に強電界ドリフト層の電界強度を緩
和する電界緩和層が設けられて成るものであり、強電界
ドリフト層と表面電極との間に強電界ドリフト層の電界
強度を緩和する電界緩和層が設けられていることによっ
て、強電界ドリフト層中において絶縁破壊を起こしやす
い部分の電界強度を小さくすることができ、当該部分に
おける絶縁破壊を防止することができて電子放出効率な
どの電子放出特性の経時安定性を向上させることができ
るという効果があり、ディスプレイなどに応用した場合
に画面の輝度が経時的に暗くなるのを防止することがで
きる。なお、電界緩和層を設けたことによって強電界ド
リフト層に印加される電界強度が小さくなるので、表面
電極と導電性基板との間に印加する電圧を電界緩和層が
設けられていない従来構成の場合と同じにすると、放出
電子電流は電界緩和層を設けていない場合よりも小さく
なるが、上記電圧を大きくすることにより、放出電子電
流の大きさを従来構成と同等の値にすることができる。
【0073】請求項2の発明は、請求項1の発明におい
て、上記電界緩和層が、窒化シリコン膜若しくは窒化シ
リコン膜を含み上記電子の散乱が起こりにくい多層膜か
らなるので、窒化シリコン膜の抵抗率が高いことにより
上記電界緩和層の膜厚を薄くすることができ且つ上記強
電界ドリフト層をドリフトした電子が窒化シリコン膜中
で散乱されにくいから、上記電界緩和層を設けたことに
よる電子放出効率の低下を抑制することができるという
効果がある。
【0074】請求項3の発明は、請求項1の発明におい
て、上記電界緩和層が、上記強電界ドリフト層の主表面
上に形成された窒化シリコン膜と、該窒化シリコン膜上
に形成された酸化シリコン膜とからなるので、窒化シリ
コン膜および酸化シリコン膜の抵抗率が高いことにより
上記電界緩和層の膜厚を薄くすることができ且つ上記強
電界ドリフト層をドリフトした電子が窒化シリコン膜中
で散乱されにくいから、上記電界緩和層を設けたことに
よる電子放出効率の低下を抑制することができ、しか
も、上記表面電極が酸化シリコン膜上に形成されている
から、上記表面電極が窒化シリコン膜上に形成されてい
る場合に比べて上記表面電極への電子の移動が起こりや
すくなり、電子放出効率を高めることができるという効
果がある。
【0075】請求項4の発明は、請求項1の発明におい
て、上記電界緩和層は、上記強電界ドリフト層の主表面
上に形成された第1の酸化シリコン膜と、該第1の酸化
シリコン膜上に形成された窒化シリコン膜と、該窒化シ
リコン膜上に形成された第2の酸化シリコン膜とからな
るので、窒化シリコン膜および各酸化シリコン膜の抵抗
率が高いことにより上記電界緩和層の膜厚を薄くするこ
とができ且つ上記強電界ドリフト層をドリフトした電子
が窒化シリコン膜中で散乱されにくいから、上記電界緩
和層を設けたことによる電子放出効率の低下を抑制する
ことができるという効果があり、しかも、上記表面電極
が上記第2の酸化シリコン膜上に形成されているから、
上記表面電極が窒化シリコン膜上に形成されている場合
に比べて上記表面電極への電子の移動が起こりやすくな
り、電子放出効率を高めることができるという効果があ
る。
【0076】請求項5の発明は、請求項1の発明におい
て、上記電界緩和層が、少なくとも上記表面電極が剥離
しない程度に上記表面電極との密着性が高い材料により
形成されているので、上記表面電極の剥離による経時劣
化および電子放出特性の経時変化を抑制することができ
るという効果がある。
【0077】請求項6の発明は、請求項5の発明におい
て、上記電界緩和層が、酸化クロム膜からなるので、酸
化クロム膜が電子の透過特性に優れいていることによ
り、上記電界緩和層を設けたことによる電子放出効率の
低下を抑制することができるという効果がある。
【0078】請求項7の発明は、請求項1ないし請求項
6の発明において、上記電界緩和層が、上記強電界ドリ
フト層の抵抗値と同じオーダの抵抗値を有するので、表
面電極と導電性基板との間に印加する電圧に関して上記
電界緩和層を設けない従来構成からの増加分を少なくし
つつ上記強電界ドリフト層の電界強度を緩和することが
できるという効果がある。
【0079】請求項8の発明は、請求項1ないし請求項
7の発明において、上記強電界ドリフト層が、少なくと
も、上記導電性基板の主表面側に形成された柱状の半導
体結晶と、半導体結晶間に介在するナノメータオーダの
半導体微結晶と、半導体結晶の表面に形成された第1の
絶縁膜と、半導体微結晶の表面に形成され当該半導体微
結晶の結晶粒径よりも小さな膜厚の第2の絶縁膜とから
なるので、電子放出特性の真空度依存性が小さく且つ電
子放出時にポッピング現象が発生せず安定して電子を放
出することができるという効果がある。ここにおいて、
上記電界緩和層が設けられていることによって、第1の
絶縁膜および第2の絶縁膜の絶縁破壊が防止される。
【0080】請求項9の発明は、請求項1記載の電界放
射型電子源の製造方法であって、導電性基板の主表面側
に形成された強電界ドリフト層上に電界緩和層を形成す
る工程と、電界緩和層上に表面電極を形成する工程とを
備えるので、電界緩和層を強電界ドリフト層上に積層す
る工程を従来構成の電界放射型電子源の製造方法に追加
するだけで経時安定性の優れた電界放射型電子源を提供
することができるという効果がある。
【0081】請求項10の発明は、導電性基板と、導電
性基板の主表面側に形成された酸化若しくは窒化した多
孔質半導体層よりなる強電界ドリフト層と、強電界ドリ
フト層の主表面側に形成された導電性薄膜よりなる表面
電極とを備え、強電界ドリフト層と表面電極との間に強
電界ドリフト層の電界強度を緩和する酸化層よりなる電
界緩和層が設けられ、表面電極を導電性基板に対して正
極として電圧を印加することにより導電性基板から注入
された電子が強電界ドリフト層をドリフトし表面電極を
通して放出される電界放射型電子源の製造方法であっ
て、導電性基板の主表面側に形成された強電界ドリフト
層上に電界緩和層の構成元素のうち酸素を除いた構成元
素により構成された被酸化層を形成する工程と、被酸化
層上に表面電極を形成する工程と、表面電極を形成した
後に酸化処理によって被酸化層を酸化することにより電
界緩和層を形成する工程とを備えるので、経時安定性の
優れた電界放射型電子源を提供することができるという
効果があり、また、表面電極を形成した後の酸化処理に
よって被酸化層を酸化することにより電界緩和層を形成
しているから、電界緩和層が汚染されたり損傷を受ける
のを防止することができるという効果がある。
【0082】請求項11の発明は、請求項10の発明に
おいて、上記酸化処理が、オゾンにより上記被酸化層を
酸化する処理なので、オゾンが上記表面電極を拡散して
上記被酸化層が酸化されるから、熱酸化に比べて低温で
上記被酸化層を酸化することができ、上記表面電極の構
成元素の凝集による断線や剥離などのダメージが発生す
るのを防ぐことができるという効果がある。
【0083】請求項12の発明は、請求項10の発明に
おいて、上記酸化処理が、酸素プラズマにより上記被酸
化層を酸化する処理なので、熱酸化に比べて低温で上記
被酸化層を酸化することができ、上記表面電極の構成元
素の凝集による断線や剥離などのダメージが発生するの
を防ぐことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1を示し、(a)は概略断面図、
(b)は(a)の要部説明図である。
【図2】同上の製造プロセスを説明するための主要工程
断面図である。
【図3】同上の動作説明図である。
【図4】同上を応用したディスプレイの概略説明図であ
る。
【図5】実施形態2を示す要部断面図である。
【図6】実施形態3を示す要部断面図である。
【図7】実施形態4の製造プロセスを説明するための主
要工程断面図である。
【図8】従来例を示す概略断面図である。
【図9】同上の動作説明図である。
【図10】同上の原理説明図である。
【図11】他の従来例を示す概略断面図である。
【図12】同上の動作説明図である。
【図13】従来例の経時安定性の説明図である。
【符号の説明】
1 n形シリコン基板 2 オーミック電極 6 強電界ドリフト層 7 表面電極 9 電界緩和層 10 電界放射型電子源 51 グレイン 52 酸化シリコン膜 63 シリコン微結晶 64 酸化シリコン膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 相澤 浩一 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内 (72)発明者 本多 由明 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内 (72)発明者 渡部 祥文 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内 (72)発明者 櫟原 勉 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内 (72)発明者 馬場 徹 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内 Fターム(参考) 5C031 DD17 DD19 5C036 EG12 EH06 EH08

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電性基板と、導電性基板の主表面側に
    形成された酸化若しくは窒化した多孔質半導体層よりな
    る強電界ドリフト層と、強電界ドリフト層の主表面側に
    形成された導電性薄膜よりなる表面電極とを備え、表面
    電極を導電性基板に対して正極として電圧を印加するこ
    とにより導電性基板から注入された電子が強電界ドリフ
    ト層をドリフトし表面電極を通して放出される電界放射
    型電子源であって、強電界ドリフト層と表面電極との間
    に強電界ドリフト層の電界強度を緩和する電界緩和層が
    設けられて成ることを特徴とする電界放射型電子源。
  2. 【請求項2】 上記電界緩和層は、窒化シリコン膜若し
    くは窒化シリコン膜を含み上記電子の散乱が起こりにく
    い多層膜からなることを特徴とする請求項1記載の電界
    放射型電子源。
  3. 【請求項3】 上記電界緩和層は、上記強電界ドリフト
    層の主表面上に形成された窒化シリコン膜と、該窒化シ
    リコン膜上に形成された酸化シリコン膜とからなること
    を特徴とする請求項1記載の電界放射型電子源。
  4. 【請求項4】 上記電界緩和層は、上記強電界ドリフト
    層の主表面上に形成された第1の酸化シリコン膜と、該
    第1の酸化シリコン膜上に形成された窒化シリコン膜
    と、該窒化シリコン膜上に形成された第2の酸化シリコ
    ン膜とからなることを特徴とする請求項1記載の電界放
    射型電子源。
  5. 【請求項5】 上記電界緩和層は、少なくとも上記表面
    電極が剥離しない程度に上記表面電極との密着性が高い
    材料により形成されてなることを特徴とする請求項1記
    載の電界放射型電子源。
  6. 【請求項6】 上記電界緩和層は、酸化クロム膜からな
    ることを特徴とする請求項5記載の電界放射型電子源。
  7. 【請求項7】 上記電界緩和層は、上記強電界ドリフト
    層の抵抗値と同じオーダの抵抗値を有することを特徴と
    する請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の電界放
    射型電子源。
  8. 【請求項8】 上記強電界ドリフト層は、少なくとも、
    上記導電性基板の主表面側に形成された柱状の半導体結
    晶と、半導体結晶間に介在するナノメータオーダの半導
    体微結晶と、半導体結晶の表面に形成された第1の絶縁
    膜と、半導体微結晶の表面に形成され当該半導体微結晶
    の結晶粒径よりも小さな膜厚の第2の絶縁膜とからなる
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに
    記載の電界放射型電子源。
  9. 【請求項9】 請求項1記載の電界放射型電子源の製造
    方法であって、導電性基板の一表面側に形成された強電
    界ドリフト層上に電界緩和層を形成する工程と、電界緩
    和層上に表面電極を形成する工程とを備えることを特徴
    とする電界放射型電子源の製造方法。
  10. 【請求項10】 導電性基板と、導電性基板の主表面側
    に形成された酸化若しくは窒化した多孔質半導体層より
    なる強電界ドリフト層と、強電界ドリフト層の主表面側
    に形成された導電性薄膜よりなる表面電極とを備え、強
    電界ドリフト層と表面電極との間に強電界ドリフト層の
    電界強度を緩和する酸化層よりなる電界緩和層が設けら
    れ、表面電極を導電性基板に対して正極として電圧を印
    加することにより導電性基板から注入された電子が強電
    界ドリフト層をドリフトし表面電極を通して放出される
    電界放射型電子源の製造方法であって、導電性基板の主
    表面側に形成された強電界ドリフト層上に電界緩和層の
    構成元素のうち酸素を除いた構成元素により構成された
    被酸化層を形成する工程と、被酸化層上に表面電極を形
    成する工程と、表面電極を形成した後に酸化処理によっ
    て被酸化層を酸化することにより電界緩和層を形成する
    工程とを備えることを特徴とする電界放射型電子源の製
    造方法。
  11. 【請求項11】 上記酸化処理は、オゾンにより上記被
    酸化層を酸化する処理であることを特徴とする請求項1
    0記載の電界放射型電子源の製造方法。
  12. 【請求項12】 上記酸化処理は、酸素プラズマにより
    上記被酸化層を酸化する処理であることを特徴とする請
    求項10記載の電界放射型電子源の製造方法。
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