JP2001189124A - 電界放射型電子源およびその製造方法 - Google Patents

電界放射型電子源およびその製造方法

Info

Publication number
JP2001189124A
JP2001189124A JP2000316988A JP2000316988A JP2001189124A JP 2001189124 A JP2001189124 A JP 2001189124A JP 2000316988 A JP2000316988 A JP 2000316988A JP 2000316988 A JP2000316988 A JP 2000316988A JP 2001189124 A JP2001189124 A JP 2001189124A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
electron source
conductive substrate
electrode
field emission
manufacturing
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2000316988A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3587157B2 (ja
Inventor
Yoshifumi Watabe
祥文 渡部
Yukihiro Kondo
行廣 近藤
Koichi Aizawa
浩一 相澤
Takuya Komoda
卓哉 菰田
Yoshiaki Honda
由明 本多
Takashi Hatai
崇 幡井
Tsutomu Kunugibara
勉 櫟原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Panasonic Electric Works Co Ltd
Original Assignee
Matsushita Electric Works Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Matsushita Electric Works Ltd filed Critical Matsushita Electric Works Ltd
Priority to JP2000316988A priority Critical patent/JP3587157B2/ja
Publication of JP2001189124A publication Critical patent/JP2001189124A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3587157B2 publication Critical patent/JP3587157B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Cold Cathode And The Manufacture (AREA)
  • Electrodes For Cathode-Ray Tubes (AREA)
  • Cathode-Ray Tubes And Fluorescent Screens For Display (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】放出する電子のエネルギが全面にわたってほぼ
一定であって、しかも全体としての電子放出効率が従来
より高い電界放射型電子源を提供する。 【解決手段】p形シリコン基板16の主表面に設けたn
形領域8aを一方の電極とし、多孔質化された半導体層
であるドリフト部6aを介して他方の電極である表面電
極7が設けられる。ドリフト部6aは陽極酸化処理によ
り多孔質化され、多孔質化された領域Dpの厚みがほぼ
均一とされている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体材料を用い
て電界放射により電子線を放射するようにした電界放射
型電子源およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、特開平8−250766号公
報に開示されているようにシリコン基板などの単結晶の
半導体基板を用い、その半導体基板の一表面を陽極酸化
することにより多孔質半導体層(ポーラスシリコン層)
を形成して、その多孔質半導体層上に金属薄膜を形成
し、半導体基板と金属薄膜との間に電圧を印加して電子
を放射させるように構成した電界放射型電子源(半導体
冷電子放出素子)が知られている。
【0003】上記公報に記載された電界放射型電子源
は、単結晶の半導体基板が必須構成であるから大面積化
が困難であって、平面ディスプレイ装置のように大面積
の電子源を要する用途には適していないものである。
【0004】これに対して、本願発明者らは、特願平1
0−272340号、特願平10−272342号など
において大面積化の可能な電界放射型電子源を提案し
た。これらの電子源は、導電性基板と金属薄膜からなる
表面電極との間に、多孔質多結晶半導体層(たとえば、
多孔質化された多結晶シリコン層)を急速熱酸化(RT
O)技術によって急速熱酸化することによって形成した
強電界ドリフト層を介在させた構造を有し、導電性基板
から強電界ドリフト層に注入された電子が強電界ドリフ
ト層においてドリフトするようになっている。この種の
電界放射型電子源は、たとえば図8に示すように、導電
性基板としてのn形シリコン基板11の主表面側に、酸
化した多孔質多結晶シリコン層よりなる強電界ドリフト
層6のドリフト部6a(図示する構成では強電界ドリフ
ト層6の全体がドリフト部6aとして機能する)を介し
て金属薄膜よりなる表面電極7が積層され、n形シリコ
ン基板11の裏面にオーミック電極2が積層された形状
に形成される。
【0005】図8に示す電界放射型電子源から電子を放
出させるには、図9に示すように、表面電極7に対向配
置されたコレクタ電極12を設け、表面電極7とコレク
タ電極12との間を真空とした状態で、表面電極7がn
形シリコン基板11(オーミック電極2)に対して高電
位側となるように表面電極7とn形シリコン基板11と
の間に直流電圧Vpsを印加するとともに、コレクタ電
極12が表面電極7に対して高電位側となるようにコレ
クタ電極12と表面電極7との間に直流電圧Vcを印加
する。各直流電圧Vps,Vcを適宜に設定すれば、n
形シリコン基板11から注入された電子が強電界ドリフ
ト層6をドリフトし表面電極7を通して放出される(な
お、図9中の一点鎖線は表面電極7を通して放出された
電子e-の流れを示す)。表面電極7には仕事関数の小
さな材料が採用され、表面電極7の膜厚は10〜15n
m程度に設定されている。
【0006】ここで、強電界ドリフト層6のドリフト部
6aは、図10に示すように、柱状の多結晶シリコンか
らなるグレイン21と、グレイン21の表面に形成され
た薄いシリコン酸化膜22と、多結晶シリコンのグレイ
ン21の間に介在するナノメータオーダの微結晶シリコ
ン23と、微結晶シリコン23の表面に形成され微結晶
シリコン23の結晶粒径よりも小さい膜厚の絶縁膜であ
るシリコン酸化膜24とを少なくとも含むと考えられ
る。このドリフト部6aは上述した処理を行う前の多結
晶シリコンに含まれていたグレインの表面が多孔質化
し、残されたグレイン21で結晶状態が維持されている
ものと考えられる。したがって、ドリフト部6aに印加
された電界の大部分はシリコン酸化膜24を集中的に通
り、注入された電子e- はグレイン21の間でシリコン
酸化膜24を通る強電界により加速され図10の矢印A
の向き(図10中の上向き)にドリフトする。なお、ド
リフト部6aの表面に到達した電子はホットエレクトロ
ンであると考えられ、表面電極7を容易にトンネルし真
空中に放出される。
【0007】上述の構成を有する電界放射型電子源で
は、表面電極7とオーミック電極2との間に流れる電流
をダイオード電流Ipsと呼び、コレクタ電極12と表
面電極7との間に流れる電流を放出電子電流Ieと呼ぶ
ことにすれば(図9参照)、ダイオード電流Ipsに対
する放出電子電流Ieの比率(=Ie/Ips)が大き
いほど電子放出効率が高くなる。なお、この電界放射型
電子源では、表面電極7とオーミック電極2との間に印
加する直流電圧Vpsを10〜20V程度の低電圧とし
ても電子を放出させることができる。また、この電界放
射型電子源は、電子放出特性の真空度依存性が小さく、
しかも電子放出時にポッピング現象が発生せず、電子を
高い電子放出効率で安定して放出することができる。
【0008】ところで、上述した構成例では導電性基板
としてn形シリコン基板11を用いているが、n形シリ
コン基板11に代えてガラス基板のような絶縁性基板上
にITO膜のような導電体層を形成した基板を用いるこ
ともでき、このような構成の導電性基板を用いると、電
子源の大面積化および低コスト化が可能になる。このよ
うな構成の導電性基板の一例を図11に示す。図11に
示す導電性基板は、ガラス基板よりなる絶縁性基板13
と、絶縁性基板13の上に形成したITO膜よりなる導
電体層8bとで構成した導電性基板を用いており、導電
体層8bには強電界ドリフト層6(つまりドリフト層6
a)を介して金属薄膜よりなる表面電極7が形成が積層
されている。この電界放射型電子源では、強電界ドリフ
ト層6が導電体層8bの上にノンドープの多結晶シリコ
ン層を堆積させた後に、多結晶シリコン層を陽極酸化処
理にて多孔質化し、さらに酸化あるいは窒化することに
より形成されている。
【0009】図11に示す電界放射型電子源から電子を
放出させるには、図8に示した電界放射型電子源と同様
に表面電極7に対向配置されたコレクタ電極12を設け
る。つまり、図12に示すように、表面電極7とコレク
タ電極12との間を真空とした状態で、表面電極7が導
電体層8bに対して高電位側となるように表面電極7と
導電体層8bとの間に直流電圧Vpsを印加するととも
に、コレクタ電極12が表面電極7に対して高電位側と
なるようにコレクタ電極12と表面電極7との間に直流
電圧Vcを印加する。各直流電圧Vps,Vcを適宜に
設定すれば、導電体層8bから注入された電子が強電界
ドリフト層6をドリフトし表面電極7を通して放出され
る(なお、図12中の一点鎖線は表面電極7を通して放
出された電子e- の流れを示す)。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述した多
孔質多結晶半導体層からなるドリフト部6aが形成され
た強電界ドリフト層6を有する電界放射型電子源では、
多結晶シリコンを陽極酸化処理によって多孔質化し、窒
化あるいは急速熱酸化による酸化を施してドリフト部6
aを形成しているものであるから、図13に示すよう
に、ドリフト部6aにおいて多孔質化された領域Dpの
厚みが不均一なものになっている。
【0011】これは、現状の陽極酸化処理において、導
電性基板に多結晶シリコン層を形成した被処理物を対極
とともにエッチャントに浸漬した状態で、導電性基板の
導電体層8bを正極として導電性基板と対極との間に定
電流を連続的に通電していることに起因していると考え
られる。つまり、多結晶シリコンが多孔質化される速度
にはばらつきがあり、先に多孔質化された部分に電荷が
集中することになるから、定電流を連続的に通電してい
ると電界の集中する部位の周辺の多孔質化が集中的に促
進されるからであると考えられる。
【0012】上述したように、ドリフト部6aでは多孔
質化された領域Dpに存在する微結晶シリコン23の表
面に形成されたシリコン酸化膜24において電界がもっ
とも強くなるから、多孔質化された領域Dpの厚みが不
均一であると強電界ドリフト層6の各領域での電界強度
にばらつきが生じることになる。つまり、表面電極7の
全面から一様に電子を放出させることができず、表面電
極7から放出される電子のエネルギに場所による分布が
生じることになる。
【0013】その結果、この電界放射型電子源をディス
プレイ装置の電子源に用いるとすれば、ディスプレイ装
置の画面に輝度むらが生じることになる。また、多孔質
の領域Dpの厚みが図13に示すような分布であると、
ドリフト部6aの内部では電界強度の小さい部分が多く
なって、このような部位では極端な場合には電子の放出
がなされず、結局は電子源全体としての電子放出効率を
十分に高めることができない場合もある。ディスプレイ
装置の電子源では電子放出効率の低いと輝度を高めるこ
とができず画面が暗くなる。
【0014】本発明は上記事由に鑑みて為されたもので
あり、その目的は、放出する電子のエネルギが全面にわ
たってほぼ一定であって、しかも全体としての電子放出
効率が従来より高い電界放射型電子源およびその製造方
法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、一方
の電極となる導電性基板と、導電性薄膜よりなり他方の
電極となる表面電極と、導電性基板と表面電極との間に
設けられ陽極酸化処理により多孔質化された領域を有す
る半導体層であるドリフト部とを有し、導電性基板と表
面電極との間に表面電極を高電位側として電圧を印加し
たときにドリフト部に作用する電界により導電性基板か
ら注入された電子がドリフトして表面電極を通して放出
されるようにし、ドリフト部における多孔質化された領
域の厚み寸法のばらつきを規定範囲内としたことを特徴
とするものである。この構成によれば、ドリフト部にお
いて多孔質化された領域の厚みがほぼ均一であることに
よって、導電性基板と表面電極との間に電圧を印加した
ときに多孔質化された領域にほぼ均等に電界が作用して
ドリフト部のほぼ全面から電子が放出されることにな
り、電子の放出量にむらがなく、かつ電子の放出効率が
従来構成よりも高くなるのであって、電子の放出量が従
来構成よりも増大する。その結果、ディスプレイ装置の
電子源として利用すれば、輝度が高くむらの少ないディ
スプレイ装置を提供することが可能になる。
【0016】ここに、本発明における導電性基板は、半
導体基板に不純物をドープすることにより導電性領域を
形成したもの、ガラス基板のような絶縁性基板の表面に
金属薄膜を形成したものを含むものとする。
【0017】請求項2の発明は、請求項1の発明におい
て、ドリフト部における多孔質化された前記領域の厚み
寸法の最大値と最小値との差を0.5μm以下としたも
のである。この構成によれば、ドリフト部における多孔
質化された領域に作用する電界がほぼ均一になり、電子
の放出量の面内での分布のばらつきを抑制することがで
きる。
【0018】請求項3の発明は、請求項1または請求項
2の発明において、多孔質化された領域の厚みが表面電
極と導電性基板との距離にほぼ等しいことを特徴とす
る。この構成によれば、導電性基板と表面電極との間に
電圧を印加することにより生じる電界の大部分が多孔質
化された領域に作用することになり、電界を無駄なく電
子の放出に利用できて電子の放出効率が高くなる。
【0019】請求項4の発明は、請求項1ないし請求項
3の発明において、前記導電性基板が、絶縁性基板の一
表面に陽極酸化処理時に用いるフッ酸に対する耐食性を
有する導電体層を設けて形成されていることを特徴とす
る。この構成によれば、陽極酸化処理の際に導電体層を
損傷することがなく、導電体層の断線や損傷が生じにく
くなる。その結果、ディスプレイ装置の電子源として利
用すれば、画素落ちなどの不良発生率が少なく、歩留ま
りよくディスプレイ装置を製造することができる。
【0020】請求項5の発明は、請求項1記載の電界放
射型電子源の製造方法であって、陽極酸化処理では、前
記導電性基板と陽極酸化処理が施される半導体層とを備
える被処理物を対極とともにエッチャントに浸漬した状
態で、導電性基板と対極との間にパルス状の電流を極性
を交互に反転して通電することを特徴とする。この方法
では、パルス状の電流を極性が交互に反転するように通
電するから、半導体層の多孔質化と、電解によるガスの
発生とが交互に繰り返されることになる。つまり、多孔
質化された領域は電流が流れやすくなり半導体層を多孔
質化する期間に多孔質化が促進された部位の近傍ほど電
解中の期間にガスが多く発生するのであって、次に多孔
質化を行うときにはガスが多く発生した部位ほど多孔質
化が抑制されることになるから、多孔質化の進行が速い
部位は、次回の多孔質化の際には進行が抑制されること
になる。このような動作の繰り返しによって、多孔質化
された領域の厚みをほぼ均一にすることが可能になる。
【0021】請求項6の発明は、請求項5の発明におい
て、導電性基板を正極とする期間におけるパルス状の電
流の1回当たりの電荷量を制御することを特徴とする。
この方法では、多孔質化の進行速度を調節することがで
きる。
【0022】請求項7の発明は、請求項5の発明におい
て、導電性基板を負極とする期間におけるパルス状の電
流の1回当たりの電荷量を制御することを特徴とする。
この方法では電解時のガスの発生量を調節することがで
き、多孔質化の抑制の程度を調節することができる。
【0023】請求項8の発明は、請求項1記載の電界放
射型電子源の製造方法であって、陽極酸化処理では、前
記導電性基板と陽極酸化処理が施される半導体層とを備
える被処理物を対極とともにエッチャントに浸漬した状
態で、ドリフト部における多孔質化された領域の厚み寸
法のばらつきが規定範囲内となる程度の一定電流密度の
電流を導電性基板と対極との間に流すことを特徴とす
る。この方法によれば陽極酸化時の電流密度を制御する
ことによって被処理物の多孔度を調節して被処理物の厚
み方向への陽極酸化の進行を調節することができ、結果
的にドリフト部における多孔質化された領域の厚み寸法
を均一化することができる。
【0024】請求項9の発明は、請求項1記載の電界放
射型電子源の製造方法であって、陽極酸化処理では、前
記導電性基板と陽極酸化処理が施される半導体層とを備
える被処理物を対極とともにエッチャントに浸漬した状
態で、ドリフト部における多孔質化された領域の厚み寸
法のばらつきが規定範囲内となる程度の強さの光を前記
被処理物の表面に照射することを特徴とする。この方法
によれば陽極酸化時の光照射によって被処理物の多孔度
を調節して被処理物の厚み方向への陽極酸化の進行を調
節することができ、結果的にドリフト部における多孔質
化された領域の厚み寸法を均一化することができる。
【0025】請求項10の発明は、請求項1記載の電界
放射型電子源の製造方法であって、陽極酸化処理では、
前記導電性基板と陽極酸化処理が施される半導体層とを
備える被処理物を対極とともにエッチャントに浸漬した
状態で、ホールの供給方向が前記被処理物の厚み方向に
揃うとともにドリフト部における多孔質化された領域の
厚み寸法のばらつきが規定範囲内となる程度の磁界を前
記被処理物に作用させることを特徴とする。この方法に
よれば半導体層に含まれるグレインの影響をほとんど受
けることなく多孔質化が被処理物の厚み方向に進行しや
すくなる。その結果、ドリフト部における多孔質化され
た領域の厚み寸法の均一化につながる。
【0026】
【発明の実施の形態】(第1の実施の形態)本実施形態
では、図2に示すように、電界放射型電子源(以下、電
子源という)10に対向してガラス基板14を配設し、
ガラス基板14における電子源10との対向面にコレク
タ電極12および蛍光体層15を設けることによってデ
ィスプレイ装置を構成する例を示す。蛍光体層15はコ
レクタ電極12の表面に塗布されており、電子源10か
ら放射される電子により可視光を発光する。また、ガラ
ス基板14は図示しないスペーサによって電子源10と
離間させてあり、ガラス基板14と電子源10との間に
形成される気密空間を真空にしてある。
【0027】本実施形態で用いる電子源10は、図2な
いし図4に示すように、p形シリコン基板16の主表面
側に導電体層としての複数本のn形領域8aがストライ
プ状に形成された導電性基板と、各n形領域8aにそれ
ぞれ重なる形でストライプ状に形成された多孔質多結晶
シリコンよりなるドリフト部6aおよびドリフト部6a
の間を埋めてドリフト部6aと面一となった多結晶シリ
コンよりなる分離部6bを有する強電界ドリフト層6
と、強電界ドリフト層6の上でドリフト部6aおよび分
離部6bに跨ってn形領域8aに直交する方向のストラ
イプ状に形成された複数本の導電性薄膜(たとえば、金
薄膜)よりなる表面電極7とを備えている。
【0028】上述した電子源10は、ストライプ状に形
成されたn形領域8aと、n形領域8aに直交するスト
ライプ状に形成された表面電極7との間に強電界ドリフ
ト層6のドリフト部6aが挟まれているから、表面電極
7とn形領域8aとの組を適宜選択して選択した組間に
電圧を印加することにより、選択された表面電極7とn
形領域8aとの交点に相当する部位のドリフト部6aに
のみ強電界が作用して電子が放出される。つまり、表面
電極7とn形領域8aとからなる格子の格子点に電子源
を配置したことに相当し、電圧を印加する表面電極7と
n形領域8aとの組を選択することによって所望の格子
点から電子を放出させることが可能になる。なお、n形
領域8aへのコンタクトは、図3に示すようにドリフト
部6aの端部をエッチングしてn形領域8aの表面の一
部を露出させることにより形成され、電線Wを介して外
部回路に接続される。なお、n形領域8aは、キャリア
濃度を1×1018〜5×1019cm-3としてあり、n形
領域8aと表面電極7との間に印加する電圧は10〜3
0V程度になっている。
【0029】以下に、本実施形態における電子源10の
製造過程について説明する。まず図5(a)に示す構造
を得るために、p形シリコン基板16の主表面上に熱拡
散用あるいはイオン注入用のマスクを設け、次に熱拡散
技術あるいはイオン注入技術によってp形シリコン基板
16内の主表面側にリン(P)などのドーパントを導入
することによりストライプ状のn形領域8aを形成し、
最後にマスクを除去する。
【0030】次に、n形領域8aを形成したp形シリコ
ン基板16の主表面上にLPCVD法により膜厚が1.
5μmのノンドープの多結晶シリコン層3を形成するこ
とにより図5(b)に示す構造が得られる。ただし、多
結晶シリコン層3の成膜方法は、LPCVD法に限定さ
れるものではなく、たとえばスパッタ法あるいはプラズ
マCVD法によってアモルファスシリコン層を形成した
後、アモルファスシリコン層に対してアニール処理を行
うことにより結晶化させて多結晶シリコン層3を形成す
る方法でもよい。
【0031】その後、多結晶シリコン層3の上にマスク
層としてのフォトレジスト層を塗布形成し、フォトリソ
グラフィ技術によってn形領域8aの上方の部位を開孔
することにより図5(c)のようにストライプ状にパタ
ーニングされたレジスト層9が形成される。
【0032】さらに、p形シリコン基板16の裏面に図
示しないオーミック電極を形成した後、前記レジスト層
9をマスクとして利用し陽極酸化処理を施すことによ
り、多結晶シリコン層3に多孔質多結晶シリコンのドリ
フト部6aを形成する。陽極酸化は、図6に示す装置を
用いて行われる。すなわち、フッ酸とエタノールと水と
を適量混合したエッチャントを投入した処理層31を恒
温水槽32の中に入れてエッチャントの温度を制御し、
図5(c)のように導電性基板と多結晶シリコン層3と
が形成された被処理物30のp形シリコン基板16と白
金電極である対極33とをエッチャントに浸漬してp形
シリコン基板16と対極33との間に通電する。この間
には多結晶シリコン層3の露出した部分にランプ34か
らの光照射を行う。p形シリコン基板16と対極33と
の間に通電する電流パターンは、ファンクションジェネ
レータ35およびガルバノスタット36により制御され
る。つまり、ファンクションジェネレータ35では通電
電流の極性および通電時間を制御し、ガルバノスタット
36では通電電流の電流値を制御する。本実施形態にお
ける電流パターンでは、p形シリコン基板16を正極と
する期間と負極とする期間を交互に設けてあり、各期間
にそれぞれパルス状の電流を通電する。
【0033】ここに、多孔質化はp形シリコン基板16
を正極とする期間に進行し、多孔質化された領域は電流
が流れやすくなる。一方、p形シリコン基板16を負極
とする期間には電解によるガスが多孔質化された領域付
近に発生し、次にp形シリコン基板16を正極とすると
きの多孔質化を抑制することになる。つまり、p形シリ
コン基板16を正極とする期間において多孔質化の進行
が速い部位は、次回の多孔質化の際には進行が抑制され
ることになる。このような動作の繰り返しによって、多
孔質化された領域Dpはほぼ均一な厚みになるのであ
る。
【0034】パルス状の電流の1回当たりの通電期間
(つまりパルス幅)や1回当たりの電流密度は、エッチ
ャントの組成およびエッチャントの温度によって適宜に
設定される。つまり、エッチャントの組成やエッチャン
トの温度に応じて陽極酸化処理時の電荷量が調節され
る。また、上述のようにフッ酸とエタノールと水とを混
合したエッチャントを用いる場合には、エッチャントの
温度を0℃から室温の温度範囲に制御し、p形シリコン
基板16を正極とする期間には電流密度が1〜200m
A/cm2 の範囲になり、p形シリコン基板16を負極
とする期間には電流密度が−2〜−100mA/cm2
の範囲になるようにパルス状の電流を通電するのが望ま
しい。また、正極とする期間においてパルス状の電流の
時間幅は1秒以下とするのが望ましい。なお、ランプ3
4としては500Wのタングステンランプを用いてい
る。
【0035】上述のような陽極酸化処理によってストラ
イプ状の多孔質多結晶シリコン層が形成され、これがド
リフト部6aになる。その後、レジスト層9を除去する
ことにより図5(d)に示す構造が得られる。ただし、
多孔質化は多結晶シリコン層3の厚み方向の途中までと
してある。また、陽極酸化処理の際の通電方向を交互に
変化させるとともに電流をパルス状に通電したことによ
って、図1に示すように、多孔質の領域Dpの厚みをほ
ぼ均一にすることが可能になる。
【0036】陽極酸化処理の後には、ランプアニール装
置を用い、乾燥酸素雰囲気中で多孔質多結晶シリコン層
5を急速熱酸化(RTO)することによって、熱酸化さ
れた多孔質多結晶シリコンよりなるドリフト部6aが形
成され、図5(e)に示す構造が得られる。
【0037】その後、多結晶シリコン層3上に、ストラ
イプ状の開口パターンを有するメタルマスクを用いて蒸
着法によって、金薄膜よりなるストライプ状の表面電極
7が形成され、図5(f)に示す構造の電子源10が得
られる。表面電極7は膜厚を10nmとしてある。表面
電極7のパターニング方法としては、フォトリソグラフ
ィ技術およびエッチング技術を利用してもよいし、フォ
トリソグラフィ技術およびリフトオフ法を利用してもよ
い。
【0038】上述したように、ドリフト部6aを形成す
る陽極酸化処理においてパルス状の電流を与え、かつ通
電時の極性を交互に反転させたことによって、ドリフト
部6aにおいて多孔質化された領域Dpの厚みをほぼ均
一にすることができる。その結果、n形領域8aと表面
電極7との組として選択されたドリフト部6aでは、ほ
ぼ全面から電子を放出させることが可能になり、従来の
ように多孔質化された領域Dpの厚みが不均一である場
合に比較すると、電子の放出効率が高まるとともに電子
の放出量が多くなる。
【0039】ところで、ドリフト部6aの微細構造は図
10に示したように柱状のグレイン21とナノメータオ
ーダの微結晶シリコン23とを備える構造を有してお
り、この構造により電子放出時のポッピング現象の発生
が抑制されている。また、ポッピング現象の発生をさら
に抑制するためにはドリフト部6aの厚み寸法が2μm
以下であることが望ましい。そこで、本実施形態ではド
リフト部6aが形成される多結晶シリコン層3の厚み寸
法を1.5μmとしている。ここに、ドリフト部6aの
厚み寸法のばらつきの程度として領域Dpの厚み寸法の
最大値と最小値との差を用い、この差を0.5μm以下
とすると、電子放出時にドリフト部6aに作用する電界
の強さは、ドリフト部6aのもっとも薄い部分を100
としてドリフト部6aのもっとも厚い部分で67以上に
なるから、ドリフト部6aにおける電界強度のばらつき
を比較的小さくすることができる。
【0040】なお、陽極酸化処理時にはマスク層として
レジスト層9を利用したが、マスク層としてストライプ
状に形成した酸化シリコン膜や窒化シリコン膜を利用し
てもよく、酸化シリコン膜や窒化シリコン膜を利用した
場合には、陽極酸化処理後にマスク層を除去する工程は
不要である。
【0041】また、本実施形態では、導電性基板として
p形シリコン基板16を採用し、導電体層としてn形領
域8aを採用しているが、導電性基板はp形シリコン基
板に限定されるものではなく、導電体層もn形領域8a
に限定されるものではない。たとえば、ガラスのような
絶縁性基板にクロムのような金属薄膜からなる導電体層
を設けたものを導電性基板として用いてもよい。強電界
ドリフト層6は多結晶シリコン層5を用いて形成されて
いるが、単結晶シリコン、アモルファスシリコン、シリ
コン以外の半導体も採用することが可能であり、いずれ
の場合も上述のようなパルス状の電流の極性を交互に反
転させるようにした陽極酸化処理によってドリフト部6
aを形成することで、ドリフト部6aにおける多孔質化
された領域Dpの厚みをほぼ均一にすることができる。
表面電極7の材料は仕事関数が小さければよく、金のほ
かにアルミニウム、クロム、タングステン、ニッケル、
白金、あるいはこれらの金属の合金なども使用可能であ
る。さらに、表面電極7の膜厚を10nmとしたが膜厚
についても適宜に選択することができる。
【0042】(第2の実施の形態)本実施形態では、ガ
ラス基板の一表面に導電体層としての白金薄膜を設けた
ものを導電性基板として用いる。ガラス基板の材料は製
造過程における処理温度に応じて、石英ガラス、無アル
カリガラス、低アルカリガラス、ソーダライムガラスか
ら選択される。また、導電体層として白金を選択してい
るのはフッ酸に対して耐食性を有するからである。
【0043】しかして、本実施形態では、ガラス基板で
ある絶縁性基板13の一表面にスパッタ法によって0.
2μmの白金薄膜を導電体層8bとして形成し、その
後、図7(a)のように、イオンミリングによって導電
体層8bをストライプ状にパターニングする。
【0044】次に、図7(b)のように絶縁性基板13
および導電体層8bを覆うようにノンドープの多結晶シ
リコン層3を0.5μmの厚みになるように成膜し、さ
らに図7(c)のように、導電体層8bの上の多結晶シ
リコン層3を残すようにしてRIEによるパターニング
を行う。このパターンニングにより強電界ドリフト層6
におけるドリフト部6aとなる部位のパターンが形成さ
れることになる。そこで、導電体層8bを一方の電極と
して第1の実施の形態と同様の陽極酸化処理を行い、多
結晶シリコン層3の多孔質化を行う。多孔質化の深さは
多結晶シリコン層3の厚みにほぼ等しくし、多孔質化の
領域を導電体層8bにほぼ到達させる。ここで、陽極酸
化処理の際にエッチャントがフッ酸を含んでいても導電
体層8bはフッ酸に対する耐食性を有するから導電体層
8bが腐食されることはない。陽極酸化処理の後には、
ランプアニール装置を用い、乾燥酸素雰囲気中で急速熱
酸化(RTO)することによって、熱酸化された多孔質
多結晶シリコンよりなるドリフト部6aが形成される。
【0045】その後、図7(d)のように、絶縁性基板
13およびドリフト部6aを覆うようにEB蒸着法によ
って金薄膜を形成し、パターニングによってストライプ
状の表面電極7が形成され、電子源10を形成すること
ができる。
【0046】ただし、本実施形態では絶縁性基板13に
多結晶シリコン層3を設けているから、電子源の周辺部
分で多結晶シリコン層3に半導体素子を形成することに
よって電子源の駆動回路などを絶縁性基板13に一括し
て形成することができる。
【0047】本実施形態ではドリフト部6aにおける多
孔質化の領域の厚みが多結晶シリコン層3の厚みにほぼ
等しいから、ドリフト層6aにおける多孔質化された部
分に全電圧が印加されることになり、印加した電圧を無
駄なく電子の放出に利用することができて電子の放出量
を大きくすることができる。なお、導電性基板として絶
縁性基板13に導電体層8bを設けたものを用いている
が、フッ酸に対する耐食性を有する材料であれば白金以
外でもよく、他の導電性材料を耐食性材料で保護するこ
とにより導電体層を形成してもよい。他の構成および動
作は第1の実施の形態と同様である。
【0048】(第3の実施の形態)上述した各実施形態
では、被処理物30の陽極酸化処理の際にパルス状の電
流を交互に極性を入れ換えながら流すようにした例を示
したが、本実施形態では陽極酸化処理の際にp形シリコ
ン基板16と対極33との間に定電流を流す点で相違す
る。ドリフト部6aを陽極酸化処理により形成する際に
は電流密度を大きくすれば多孔度が増加するという知見
が得られており、電流密度を大きくするほど多孔度が増
加することにより被処理物30の厚み方向における陽極
酸化の進行速度が低下することになる。すなわち、電流
密度が小さい場合には局所的に多孔質化が進行すること
により被処理物30に局所的に電流の流れやすい部分が
形成され、その部位のみで厚み方向における陽極酸化の
進行速度が増加することになるのに対して、本実施形態
では電流密度を比較的大きく設定することによって、被
処理物30の多孔質化が局所的に進行するのを防止し、
結果的に電流密度を小さく設定している場合よりも被処
理物30の厚み方向(深さ方向)における多孔質化の進
行速度を低減させているのである。ただし、電流密度を
変更しても多孔質化される全量が変化しないように電荷
量は変化させないように制御する。つまり、電流密度を
増加させれば陽極酸化処理を施す時間は短縮する。
【0049】具体的に言えば、電流密度は一定に設定す
る場合には通常は25mA/m2に設定していたが、7
5mA/m2に設定することによって、ドリフト部6a
における多孔質化された領域Dpの厚み寸法の最大値と
最小値との差を0.5μm以下にすることが可能になっ
た。なお、50mA/m2以上であれば領域Dpの厚み
寸法の最大値と最小値との差を0.5μm以下にするこ
とが可能である。他の構成および方法は第1の実施の形
態と同様である。
【0050】(第4の実施の形態)本実施形態は、被処
理物30に照射する光量を第1の実施の形態よりも増加
させたものである。第1の実施の形態においてはランプ
34として500Wのタングステンランプを1灯のみ用
いていたが、本実施形態では、図8に示すように、同仕
様のランプ34を3灯用いている。この装置を用いるこ
とにより、陽極酸化処理の際に被処理物30の表面の輝
度を10000cd/m2以上に高めることが可能にな
り、第3の実施の形態において電流密度を高めた場合と
同様に、多孔質化が促進され、被処理物30に局所的に
電流の流れやすい部分が形成されるのを防止することが
できる。すなわち、被処理物30に照射する光量が少な
い場合よりも被処理物30の厚み方向(深さ方向)にお
ける多孔質化の進行速度を低減させることになり、ドリ
フト部6aにおいて多孔質化された領域Dpの厚み寸法
の最大値と最小値との差を0.5μm以下にすることが
可能になる。他の構成および方法は第1の実施の形態と
同様である。
【0051】(第5の実施の形態)本実施形態は、図9
に示すように、被処理物30に磁界を作用させるために
高温水槽32の近傍に電磁石37を配置したものであ
る。電磁石37は陽極酸化処理において被処理物30に
供給されるホールの供給方向を被処理物30の厚み方向
に揃えるように磁界を作用させるために設けられてい
る。この装置を用いることにより、陽極酸化処理の際に
ホールの供給方向が多孔質化を進行させようとする方向
に揃うことになるから、ドリフト部6aに存在している
グレイン21の影響をほとんど受けずに多孔質化が被処
理物30の厚み方向に進行しやすくなる。その結果、磁
界の強さを適宜に調節することによって、ドリフト部6
aにおいて多孔質化された領域Dpの厚み寸法の最大値
と最小値との差を0.5μm以下にすることが可能にな
る。他の構成および方法は第1の実施の形態と同様であ
る。
【0052】なお、陽極酸化処理の際にパルス状の電流
の極性を交互に反転させる技術、電流密度を制御する技
術、光の照射量を制御する技術、磁界を作用させる技術
は単独で用いるほか、適宜に組み合わせて用いるように
してもよい。
【0053】
【発明の効果】請求項1の発明は、一方の電極となる導
電性基板と、導電性薄膜よりなり他方の電極となる表面
電極と、導電性基板と表面電極との間に設けられ陽極酸
化処理により多孔質化された領域を有する半導体層であ
るドリフト部とを有し、導電性基板と表面電極との間に
表面電極を高電位側として電圧を印加したときにドリフ
ト部に作用する電界により導電性基板から注入された電
子がドリフトして表面電極を通して放出されるように
し、ドリフト部における多孔質化された領域の厚み寸法
のばらつきを規定範囲内としたことを特徴とするもので
あり、ドリフト部において多孔質化された領域の厚みが
ほぼ均一であるから、導電性基板と表面電極との間に電
圧を印加したときに多孔質化された領域にほぼ均等に電
界が作用してドリフト部のほぼ全面から電子が放出され
ることになり、電子の放出量にむらがなく、かつ電子の
放出効率が従来構成よりも高くなるのであって、電子の
放出量が従来構成よりも増大するという利点がある。
【0054】請求項2の発明は、請求項1の発明におい
て、ドリフト部における多孔質化された前記領域の厚み
寸法の最大値と最小値との差を0.5μm以下としたも
のであり、ドリフト部における多孔質化された領域に作
用する電界がほぼ均一になり、電子の放出量の面内での
分布のばらつきを抑制することができるという利点があ
る。
【0055】請求項3の発明は、請求項1または請求項
2の発明において、多孔質化された領域の厚みが表面電
極と導電性基板との距離にほぼ等しいものであり、導電
性基板と表面電極との間に電圧を印加することにより生
じる電界の大部分が多孔質化された領域に作用すること
になり、電界を無駄なく電子の放出に利用できて電子の
放出効率が高くなるという利点がある。
【0056】請求項4の発明は、請求項1ないし請求項
3の発明において、前記導電性基板が、絶縁性基板の一
表面に陽極酸化処理時に用いるフッ酸に対する耐食性を
有する導電体層を設けて形成されているものであり、陽
極酸化処理の際に導電体層を損傷することがなく、導電
体層の断線や損傷が生じにくくなるという利点がある。
【0057】請求項5の発明は、請求項1記載の電界放
射型電子源の製造方法であって、陽極酸化処理では、前
記導電性基板と陽極酸化処理が施される半導体層とを備
える被処理物を対極とともにエッチャントに浸漬した状
態で、導電性基板と対極との間にパルス状の電流を極性
を交互に反転して通電することを特徴とし、パルス状の
電流を極性が交互に反転するように通電するから、半導
体層の多孔質化と、電解によるガスの発生とが交互に繰
り返される。つまり、多孔質化された領域は電流が流れ
やすくなり半導体層を多孔質化する期間に多孔質化が促
進された部位の近傍ほど電解中の期間にガスが多く発生
するのであって、次に多孔質化を行うときにはガスが多
く発生した部位ほど多孔質化が抑制されることになるか
ら、多孔質化の進行が速い部位は、次回の多孔質化の際
には進行が抑制される。このような動作の繰り返しによ
って、多孔質化された領域の厚みをほぼ均一にすること
が可能になるという効果を奏する。
【0058】請求項6の発明は、請求項5の発明におい
て、導電性基板を正極とする期間におけるパルス状の電
流の1回当たりの電荷量を制御することを特徴とし、多
孔質化の進行速度を調節することができるという効果が
ある。
【0059】請求項7の発明は、請求項6の発明におい
て、導電性基板を負極とする期間におけるパルス状の電
流の1回当たりの電荷量を制御することを特徴とし、電
解時のガスの発生量を調節することができ、多孔質化の
抑制の程度を調節することができるという効果がある。
【0060】請求項8の発明は、請求項1記載の電界放
射型電子源の製造方法であって、陽極酸化処理では、前
記導電性基板と陽極酸化処理が施される半導体層とを備
える被処理物を対極とともにエッチャントに浸漬した状
態で、ドリフト部における多孔質化された領域の厚み寸
法のばらつきが規定範囲内となる程度の一定電流密度の
電流を導電性基板と対極との間に流すことを特徴として
おり、陽極酸化時の電流密度を制御することによって被
処理物の多孔度を調節して被処理物の厚み方向への陽極
酸化の進行を調節することができるから、ドリフト部に
おける多孔質化された領域の厚み寸法を均一化すること
ができるという利点がある。
【0061】請求項9の発明は、請求項1記載の電界放
射型電子源の製造方法であって、陽極酸化処理では、前
記導電性基板と陽極酸化処理が施される半導体層とを備
える被処理物を対極とともにエッチャントに浸漬した状
態で、ドリフト部における多孔質化された領域の厚み寸
法のばらつきが規定範囲内となる程度の強さの光を前記
被処理物の表面に照射することを特徴としており、陽極
酸化時の光照射によって被処理物の多孔度を調節して被
処理物の厚み方向への陽極酸化の進行を調節することが
できるから、ドリフト部における多孔質化された領域の
厚み寸法を均一化することができるという利点がある。
【0062】請求項10の発明は、請求項1記載の電界
放射型電子源の製造方法であって、陽極酸化処理では、
前記導電性基板と陽極酸化処理が施される半導体層とを
備える被処理物を対極とともにエッチャントに浸漬した
状態で、ホールの供給方向が前記被処理物の厚み方向に
揃うとともにドリフト部における多孔質化された領域の
厚み寸法のばらつきが規定範囲内となる程度の磁界を前
記被処理物に作用させることを特徴としており、半導体
層に含まれるグレインの影響をほとんど受けることなく
多孔質化が被処理物の厚み方向に進行しやすくなるか
ら、ドリフト部における多孔質化された領域の厚み寸法
の均一化につながるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す断面図であ
る。
【図2】同上の概略斜視図である。
【図3】同上の要部斜視図である。
【図4】同上の断面図である。
【図5】同上の製造過程を示す主要部の工程図である。
【図6】同上の製造装置の概略構成図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態を示す主要部の工程
図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態における製造装置の
概略構成図である。
【図9】本発明の第5の実施の形態における製造装置の
概略構成図である。
【図10】従来例を示す断面図である。
【図11】同上の動作説明図である。
【図12】同上の原理説明図である。
【図13】他の従来例を示す断面図である。
【図14】同上の動作説明図である。
【図15】従来の問題点を示す断面図である。
【符号の説明】
6 強電界ドリフト層 6a ドリフト部 6b 分離部 7 表面電極 8a n形領域 8b 導電体層 11 n形シリコン基板 13 絶縁性基板 16 p形シリコン基板 30 被処理物 33 対極 Dp 多孔質化された領域
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 相澤 浩一 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内 (72)発明者 菰田 卓哉 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内 (72)発明者 本多 由明 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内 (72)発明者 幡井 崇 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内 (72)発明者 櫟原 勉 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一方の電極となる導電性基板と、導電性
    薄膜よりなり他方の電極となる表面電極と、導電性基板
    と表面電極との間に設けられ陽極酸化処理により多孔質
    化された領域を有する半導体層であるドリフト部とを有
    し、導電性基板と表面電極との間に表面電極を高電位側
    として電圧を印加したときにドリフト部に作用する電界
    により導電性基板から注入された電子がドリフトして表
    面電極を通して放出されるようにし、ドリフト部におけ
    る多孔質化された領域の厚み寸法のばらつきを規定範囲
    内としたことを特徴とする電界放射型電子源。
  2. 【請求項2】 ドリフト部における多孔質化された前記
    領域の厚み寸法の最大値と最小値との差を0.5μm以
    下としたことを特徴とする請求項1記載の電界放射型電
    子源。
  3. 【請求項3】 多孔質化された領域の厚みが表面電極と
    導電性基板との距離にほぼ等しいことを特徴とする請求
    項1または請求項2記載の電界放射型電子源。
  4. 【請求項4】 前記導電性基板が、絶縁性基板の一表面
    に陽極酸化処理時に用いるフッ酸に対する耐食性を有す
    る導電体層を設けて形成されていることを特徴とする請
    求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電界放射
    型電子源。
  5. 【請求項5】 請求項1記載の電界放射型電子源の製造
    方法であって、陽極酸化処理では、前記導電性基板と陽
    極酸化処理が施される半導体層とを備える被処理物を対
    極とともにエッチャントに浸漬した状態で、導電性基板
    と対極との間にパルス状の電流を極性を交互に反転して
    通電することを特徴とする電界放射型電子源の製造方
    法。
  6. 【請求項6】 導電性基板を正極とする期間におけるパ
    ルス状の電流の1回当たりの電荷量を制御することを特
    徴とする請求項5記載の電界放射型電子源の製造方法。
  7. 【請求項7】 導電性基板を負極とする期間におけるパ
    ルス状の電流の1回当たりの電荷量を制御することを特
    徴とする請求項5記載の電界放射型電子源の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項1記載の電界放射型電子源の製造
    方法であって、陽極酸化処理では、前記導電性基板と陽
    極酸化処理が施される半導体層とを備える被処理物を対
    極とともにエッチャントに浸漬した状態で、ドリフト部
    における多孔質化された領域の厚み寸法のばらつきが規
    定範囲内となる程度の一定電流密度の電流を導電性基板
    と対極との間に流すことを特徴とする電界放射型電子源
    の製造方法。
  9. 【請求項9】 請求項1記載の電界放射型電子源の製造
    方法であって、陽極酸化処理では、前記導電性基板と陽
    極酸化処理が施される半導体層とを備える被処理物を対
    極とともにエッチャントに浸漬した状態で、ドリフト部
    における多孔質化された領域の厚み寸法のばらつきが規
    定範囲内となる程度の強さの光を前記被処理物の表面に
    照射することを特徴とする電界放射型電子源の製造方
    法。
  10. 【請求項10】 請求項1記載の電界放射型電子源の製
    造方法であって、陽極酸化処理では、前記導電性基板と
    陽極酸化処理が施される半導体層とを備える被処理物を
    対極とともにエッチャントに浸漬した状態で、ホールの
    供給方向が前記被処理物の厚み方向に揃うとともにドリ
    フト部における多孔質化された領域の厚み寸法のばらつ
    きが規定範囲内となる程度の磁界を前記被処理物に作用
    させることを特徴とする電界放射型電子源の製造方法。
JP2000316988A 1999-10-18 2000-10-17 電界放射型電子源およびその製造方法 Expired - Fee Related JP3587157B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000316988A JP3587157B2 (ja) 1999-10-18 2000-10-17 電界放射型電子源およびその製造方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP11-295953 1999-10-18
JP29595399 1999-10-18
JP2000316988A JP3587157B2 (ja) 1999-10-18 2000-10-17 電界放射型電子源およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2001189124A true JP2001189124A (ja) 2001-07-10
JP3587157B2 JP3587157B2 (ja) 2004-11-10

Family

ID=26560477

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000316988A Expired - Fee Related JP3587157B2 (ja) 1999-10-18 2000-10-17 電界放射型電子源およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3587157B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6844664B2 (en) 2001-04-24 2005-01-18 Matsushita Electric Works, Ltd. Field emission electron source and production method thereof
JP2017517141A (ja) * 2014-04-08 2017-06-22 ウィリアム・マーシュ・ライス・ユニバーシティ 電子装置における可撓性で導電性の薄膜および無機層の製造と使用

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6844664B2 (en) 2001-04-24 2005-01-18 Matsushita Electric Works, Ltd. Field emission electron source and production method thereof
JP2017517141A (ja) * 2014-04-08 2017-06-22 ウィリアム・マーシュ・ライス・ユニバーシティ 電子装置における可撓性で導電性の薄膜および無機層の製造と使用

Also Published As

Publication number Publication date
JP3587157B2 (ja) 2004-11-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6791248B2 (en) Field emission electron source
US6249080B1 (en) Field emission electron source, method of producing the same, and use of the same
KR100367282B1 (ko) 전계 방사형 전자원 및 그 제조방법
JP2000100316A (ja) 電界放射型電子源
JPH11329213A (ja) 電界放射型電子源およびその製造方法および平面発光装置およびディスプレイ装置および固体真空デバイス
JP2001035354A (ja) 電界放射型電子源およびその製造方法
JP3587157B2 (ja) 電界放射型電子源およびその製造方法
JP3587156B2 (ja) 電界放射型電子源およびその製造方法
US20040180516A1 (en) Method for electrochemical oxidation
JP3855608B2 (ja) 電界放射型電子源およびその製造方法
US7268476B2 (en) Field emission-type electron source and method of producing the same
JP3528762B2 (ja) 電界放射型電子源およびその製造方法
JP3508652B2 (ja) 電界放射型電子源およびその製造方法
JP3687527B2 (ja) 電界放射型電子源の製造方法、電界放射型電子源
JP3687520B2 (ja) 電界放射型電子源およびその製造方法
JP4135309B2 (ja) 電界放射型電子源の製造方法
JP3079086B2 (ja) 電界放射型電子源の製造方法
JP3363429B2 (ja) 電界放射型電子源およびその製造方法
JP3084280B2 (ja) 電界放射型電子源の製造方法および平面発光装置の製造方法およびディスプレイ装置の製造方法
JP2006040725A (ja) 電子線露光用電子源
JP3648599B2 (ja) 電界放射型電子源の製造方法
JP2003328189A (ja) 陽極酸化方法、電気化学酸化方法、電界放射型電子源およびその製造方法
JP2002134002A (ja) 電界放射型電子源およびその製造方法
JP2001118500A (ja) 電界放射型電子源およびその製造方法
JP2003045352A (ja) ブラウン管用電子銃

Legal Events

Date Code Title Description
TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20040720

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20040802

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20070820

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080820

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090820

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090820

Year of fee payment: 5

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090820

Year of fee payment: 5

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090820

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100820

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110820

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120820

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130820

Year of fee payment: 9

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees