JP2002117523A - 記録媒体用基板、記録媒体用基板の製造方法、および記録媒体 - Google Patents

記録媒体用基板、記録媒体用基板の製造方法、および記録媒体

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JP2002117523A
JP2002117523A JP2000309374A JP2000309374A JP2002117523A JP 2002117523 A JP2002117523 A JP 2002117523A JP 2000309374 A JP2000309374 A JP 2000309374A JP 2000309374 A JP2000309374 A JP 2000309374A JP 2002117523 A JP2002117523 A JP 2002117523A
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recording medium
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temperature
manufacturing
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Katsunori Suzuki
克紀 鈴木
Shoji Sakaguchi
庄司 坂口
Akiyoshi Iso
亜紀良 磯
Yoichi Tei
用一 鄭
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Fuji Electric Co Ltd
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Fuji Electric Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高温・高湿および低温環境下に長時間放置し
た後でも表面におけるフクレの発生が非常に少ない、熱
可塑性樹脂から成る基板、その製造方法、およびその基
板を使用した記録媒体を提供する。 【解決手段】 熱可塑性樹脂から成る記録媒体用基板上
における基板構成材料の酸化劣化物量を、基板の重量に
基づいて30ppb以下にする。そのような基板は、熱
可塑性樹脂から記録媒体用基板を成形した後に、酸素濃
度が0.7%以下の不活性ガス雰囲気下でアニールする
ことによりことに提供される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コンピュータの外
部記憶装置、およびその他のデジタルデータの各種磁気
記録装置に搭載される磁気、光および光磁気記録媒体用
の基板、そのような基板の製造方法、並びにそのような
基板を具える磁気、光および光磁気記録媒体に関するも
のである。さらに詳しくは、プラスチック製であるが、
高温・高湿環境下または低温環境下に長時間放置した後
でも基板表面に発生するフクレを最小限に抑えた耐環境
安定性の高い記録媒体用基板、そのような基板の製造方
法、並びにそのような基板を具える磁気、光および光磁
気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】記録媒体としては、磁気記録媒体、光記
録媒体、および光磁気記録媒体が知られている。
【0003】従来、磁気記録媒体(ハードディスク)の
磁気ディスク基板としては、Al基板のような非磁性金
属基板やガラス基板のようなセラミック基板などが用い
られてきた。
【0004】そして、高度な表面精度が要求される磁気
記録媒体に関しては、非磁性金属基板を使用した場合、
非磁性金属基板上にはスパッター法などによりCo合金
磁性層が形成されるが、走行方向に粒子の長軸を配向さ
せて磁気特性を向上させるために、基板表面にテクスチ
ャーをつける等の高度な精密加工が必要とされる。
【0005】この非磁性金属の磁気ディスク基板は、一
般的に、加熱溶融した金属材料を圧延して加熱焼鈍した
後、規定の寸法に加工されたブランク材を用いて作成さ
れる。規定の寸法に加工されたブランク材に内外径処理
を施し、さらに表面精度を向上させるためにラッピング
加工が行われる。ついで、表面硬度向上等を目的とし
て、Ni−Pメッキ層を13μmの厚さで形成し、その
表面をポリッシュで平均粗さ(Ra)が10Åになるよ
うに研磨した後、ダイヤモンドスラリーを使用して最終
ラッピング加工が行われる。その後、コンタクト・スタ
ート・ストップ(CSS)ゾーンに、例えばバンプ高さ
が190Å、バンプ密度が30×30μm 2になるよう
にレーザーゾーンテクスチャーを施すことにより磁気デ
ィスク基板が作成される。
【0006】このように作成された磁気ディスク基板を
具えた磁気記録媒体の構成は多様であるが、例えば、基
板を精密洗浄した後、基板上に、DCスパッタ法により
Cr下地層500Å、Co−14Cr−4Ta磁性層3
00Å、カーボン保護層80Åを順次形成し、表面にテ
ープバニッシュを行った後、ディップコート法またはス
ピンコート法により厚さ20Åのフッ素系潤滑層を形成
して、磁気記録媒体が形成される。
【0007】また、光記録媒体、例えばコンパクトディ
スクは、光ディスク基板の上に少なくとも反射層と保護
層とを含み、反射層からの反射光を用いて情報を読み書
きするものである。さらに、書き込み可能な光ディスク
(CD−R、CD−RW、PD等)は、光ディスク基板
の上に、少なくとも記録層、反射層、および保護層が積
層されており、記録層に対してレーザー光を用いて情報
の読み書きを行うものである。
【0008】さらに、光磁気記録媒体は、光磁気ディス
ク基板の上に、たとえば保護膜に挟持された磁性記録
層、反射膜および保護コートを具え、レーザー光と磁気
を用いて情報を記録し、磁性層によるレーザー光の反射
を用いて情報を読み出すものである。
【0009】上記の中でも特に磁気記録媒体(ハードデ
ィスク)に関して言えば、従来の磁気ディスク基板およ
び磁気記録媒体の製造方法は、近年の高密度化にしたが
って益々複雑化している。一方では、高機能を維持した
ままで従来以上に安価な磁気記録媒体が求められてい
る。この相反する要求を解決する磁気ディスク基板とし
て、プラスチックを用いた磁気記録媒体が提案されてい
る(例えば、特開平5−4231号公報、特開平5−6
535号公報、特開平5−28488号公報など)。プ
ラスチック、例えば、ポリカーボネート、ポリアクリ
ル、ポリオレフィン等を用いることにより、磁気ディス
ク基板を成形技術によって作製でき、成形時にCSSゾ
ーンも同時に形成できるため、生産性に優れ工業的に有
利であり、その結果、安価な磁気記録媒体を提供するこ
とが可能となった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、高度な
表面精度および形状安定性が要求される磁気ディスク基
板に関しては、プラスチック基板は、非金属基板やセラ
ミック基板と比較して、一般に引張り強度、伸び、弾性
等の機械的強度が低く、さらに熱膨張係数が大きいため
に高温・高湿下、および低温下での信頼性試験では吸湿
および放湿によって、基板に直径数μm、高さ数nmの
フクレが発生することがある。
【0011】また、一般的な光磁気記録媒体において
も、この信頼性試験によってフクレは発生していた。
【0012】光磁気記録媒体においては、レーザーと基
板の間との距離が大きいことからフクレによる重大な問
題は生じていなかった。しかしながら、ハードディスク
のように、数10nmの高さをヘッドが飛ぶために、平
均粗さ(Ra)が10Å以下、円周方向の面振れ最大値
が20μm以下というレベルの非常に高精度な表面精度
が要求されるデバイスにおいては、基板表面のフクレに
より磁気ヘッドが浮上せず、実際の読み書きが行えない
という問題を引き起こす。
【0013】本発明は、かかる従来の実情を鑑みて提案
されたものであり、本発明の課題は、高温・高湿環境下
および低温環境下に長時間放置しても基板表面のフクレ
の発生が最小限に抑えられた記録媒体用基板、その基板
の製造方法、およびそのような基板を具えた記録媒体を
提供することにある。
【0014】なお、本発明は、どのようなプラスチック
製記録媒体用基板にも適用することができ、上記構成を
有する各種記録媒体用基板および各種記録媒体、並びに
上記製法から得られた各種記録媒体用基板および各種記
録媒体にのみ適用されるものではないが、ハードディス
クに特に好適である。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、このよう
な課題を解決するために、高温・高湿および低温環境下
に長時間放置した後に発生する基板表面のフクレの大部
分は、その核に、基板を製造する過程で生じた基板構成
材料の酸化劣化物、すなわち、樹脂および添加物の酸化
劣化物が存在していること、そして、フクレの密度とそ
れらの劣化物量とが明瞭な相関性をもつことを見出し、
基板をアニールして基板表面に存在する基板構成材料の
酸化劣化物を除去することにより、フクレの発生源をあ
らかじめ取り除くことができ、発生するフクレの数を低
減させることができることを見出した。
【0016】すなわち、本発明の第1の形態である記録
媒体用基板は、熱可塑性樹脂から成る記録媒体用基板で
あって、基板上における基板構成材料の酸化劣化物量
が、基板の重量に基づいて30ppb以下であることを
特徴とする。また、第2の形態は、上記第1の形態の基
板の製造方法であり、熱可塑性樹脂から記録媒体用基板
を成形する工程、および成形された基板をアニールする
工程を具え、そのアニール工程は、酸素濃度が0.7%
以下の不活性ガス雰囲気下で実施されることを特徴とす
る。
【0017】第3の形態である基板の製造方法は、上記
第2の形態の製造方法において、アニール工程は、アニ
ール温度T(℃)およびアニール時間τ(hr)が、関係
【0018】
【数2】τ≧3.20×10-9×exp{6890/
(273+T)}
【0019】を満たす条件下で実施されることを特徴と
する。
【0020】第4の形態である基板の製造方法は、上記
第3の形態の製造方法において、アニール温度は使用さ
れた樹脂のガラス転移温度(Tg)より20℃以上低い
温度であり、アニール時間は50時間以下であることを
特徴とする。
【0021】第5の形態である基板の製造方法は、上記
第2〜第4のいずれか1の形態の製造方法において、ア
ニール工程は、基板が縦置きで保持され、かつ揮発ガス
を放出することができる通気性を有する環境下で実施さ
れることを特徴とする。
【0022】さらに、第6の形態である記録媒体用基板
は、上記第2〜5のいずれか1の形態の製造方法により
製造されたことを特徴とする。
【0023】さらにまた、第7の形態は、記録媒体であ
り、上記第1または第6の形態の基板を具えることを特
徴とする。
【0024】
【発明の実施の形態】本発明の基板は、いかなる製造方
法により製造された、いかなる構造の磁気記録媒体、光
記録媒体、および光磁気記録媒体においても使用される
ことができる。
【0025】本発明の基板は熱可塑性樹脂から成るもの
である。本発明において用いられる熱可塑性樹脂は、一
般的には高耐熱性・低吸湿性の熱可塑性樹脂であり、樹
脂構造に由来したガラス転移温度(Tg)は135℃〜
170℃であることが好ましく、この範囲内では高いほ
ど好ましい。記録媒体用基板に慣用の熱可塑性樹脂であ
れば制限なく使用することができ、具体的にはポリカー
ボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリオ
レフィン系樹脂などを挙げることができる。特に高耐熱
性・低吸湿性で、剛直構造のポリオレフィン系樹脂、例
えばノルボルネン系ポリシクロオレフィン樹脂などを用
いることが望ましい。
【0026】熱可塑性樹脂には、通常、慣用の添加剤が
配合されている。慣用の添加剤は、具体的は、フェノー
ル系、リン系などの酸化防止剤、ベンゾフェノン系など
の紫外線安定剤、アミン系などの帯電防止剤、脂肪族ア
ルコール、エステルなどの滑剤などである。
【0027】高温・高湿および低温環境下に長時間放置
した後に発生する基板表面のフクレの大部分は、その核
に、基板構成材料の酸化劣化物が存在している。基板構
成材料の酸化劣化物とは、基板を製造する過程で、すな
わち、ペレット作製、乾燥および成形時などに発生し
た、基板の材料である熱可塑性樹脂の酸化・分解物およ
び熱可塑性樹脂に配合された上記の添加剤の酸化・分解
物である。
【0028】本発明の基板は、基板上における基板構成
材料の酸化劣化物量が、基板の重量に基づいて30pp
b以下である。本発明者らは、基板表面に存在する基板
構成材料の酸化劣化物の量と、発生するフクレの数との
間に相関関係があることを見出した。本発明は、いかな
る理論にも拘束されるものではないが、熱可塑性樹脂か
ら成る基板は、高温・高湿条件と低温条件との両方が生
じる環境下に長時間放置されると、酸化劣化物には親水
性成分が多いため、吸湿してしまう。すなわち、その部
分に水分が凝集し、フクレが発生してしまうと考えられ
る。したがって、フクレの発生源である酸化劣化物の量
が低ければ低いほど、発生するフクレの数が低減され
る。
【0029】基板上における基板構成材料の酸化劣化物
量は、基板の重量に基づいて30ppb以下であり、好
ましくは25ppb以下である。酸化劣化物量が30p
pbより多いと高温・高湿および低温環境下に長時間放
置した後に発生する基板表面のフクレにより記録媒体の
安定性が損なわれるため好ましくない。
【0030】基板上における基板構成材料の酸化劣化物
量が、基板の重量に基づいて30ppb以下である熱可
塑性樹脂から成る基板は、熱可塑性樹脂から基板を成形
した後に、特定の条件下でアニールを行うことにより製
造することができる。
【0031】基板構成材料の酸化劣化物は、樹脂やその
添加剤が酸化・分解したものであるから、樹脂および添
加剤に比較して、これらの劣化物の沸点は低い。そのた
め、不活性ガス中で樹脂およびその添加剤の酸化を防止
した状態で、適当な温度で加熱することにより、樹脂や
その添加剤の劣化物を揮散させ、基板表面から取り除く
ことができる。
【0032】ところで、熱可塑性樹脂から成る基板の作
製に通常使用される射出成形においては、300℃以上
の溶融樹脂を80℃〜130℃の金型に1秒以内で流し
込み、数秒から数10秒間で凝縮させ、得られた成形品
を常温雰囲気中に取り出す。これらの急激な温度変化を
受けながら基板は作製されるため、残留応力を0にする
ことは非常に難しい。しかしながら、応力が残留してい
ると、その応力が徐々に開放されていくので、基板形状
がいつまでも安定することがない。そのため、成形時に
残留する応力の開放を一度に完了してしまうために、通
常、成形された基板にアニール工程が施される。通常は
空気中70℃で24時間程度の条件で行われる。
【0033】本発明におけるアニール工程は、酸素濃度
が0.7%以下の不活性ガス雰囲気下で実施される。不
活性ガス中の酸素濃度を低減させると、樹脂およびその
添加剤に由来した劣化物の量は減少する。これは、不活
性ガスにより樹脂およびその添加剤の酸化が抑止された
状態が保たれ、同時に適当な温度で加熱されることによ
り、樹脂やその添加剤由来の劣化物を揮散させ、基板表
面から取り除くことが可能となるからである。アニール
工程における不活性ガス中の酸素濃度は、好ましくは、
0.7%以下であり、より好ましくは0.15%以下で
ある。なお、不活性ガスとしては、安価であるN2、A
rが好ましいが、他の安定なガスであるHe、Ne、K
r、Xeを使用してもよい。
【0034】アニールを不活性ガス中で行うことによ
り、残留応力を開放させると同時に、基板表面の劣化物
を揮散させて取り除くことができる。したがって、製造
工程を増やすことなく、フクレ密度を最小限に抑えた熱
可塑性樹脂から成る基板を製造することができる。
【0035】アニール工程は、アニール温度T(℃)お
よびアニール時間τ(hr)が、関係式
【0036】
【数3】τ≧3.20×10-9×exp{6890/
(273+T)}
【0037】を満たす条件下で実施されることが好まし
い。
【0038】本発明者らは次のとおりの実験を行って、
基板表面に発生するフクレの数(以下、フクレ密度とい
う)のアニール温度および時間依存性を検討し、上記の
関係式を導き出した。
【0039】市販されている最大射出成形圧力70tの
射出成形装置にスタンバーを固定した金型において、高
耐熱ポリオレフィン樹脂(Tg 140℃)を用いて、
樹脂温度320℃、射出速度120mm/s、型締め圧
力90kg/cm2、金型温度固定側/可動側=110
℃/110℃という成形条件にて射出成形を行った。
【0040】その後、1時間以内に、酸素濃度0.02
%のN2ガス雰囲気下で、アニール温度を50℃にし
て、アニール時間を0.15時間、0.5時間、1時
間、3時間、5時間と変えて、基板を縦置きに保持した
状態でアニールを行うことにより、φ95mm×1.2
7mmのディスク基板を得た。さらに、アニール温度を
70℃、90℃、110℃とし、それぞれアニール時間
を0.15時間、0.5時間、1時間、3時間、5時間
と変えて同様にアニールを行った。アニールは、各条件
下で、25枚の基板を1つのカセットに入れて実施し
た。
【0041】カセット中心近くの5枚の基板を用いて、
それぞれの基板上にDCスパッタ法により下地Cr層5
00Å、Co−14Cr−4Ta磁性層300Å、カー
ボン保護層80Åを順次形成し、さらにスパッタ後の表
面にテープバニッシュを行い、スピンコート法でフッ素
系潤滑剤(アウジモント製FOMBLIN Z−DO
L)の20Åの層を形成し、磁気記録媒体を得た。
【0042】得られた磁気記録媒体を高温・高湿雰囲気
(60℃・80%RH)に10時間放置し、次に、速や
かに−40℃まで冷却し、その状態で10時間放置し
た。その後、常温・常湿環境に速やかに戻して、フクレ
密度を測定した。その結果を図1に示す。
【0043】アニール温度を高くするほど、フクレの密
度は短時間に急激に減少することがわかった。これに対
し、アニール温度が低いと、フクレ密度が減少するのに
は、非常に長い時間が必要となることがわかった。この
傾向は、アニール温度による揮発ガスの揮散しやすさを
反映したものと考えられる。
【0044】そこで、フクレ密度が50個/面となるア
ニール時間と、アニールの絶対温度の逆数との関係を図
2のようにプロットした。但し、アニール温度が50℃
の時には、フクレ密度が50個/面になる場合がないた
め、プロットされたのはアニール温度が70℃、90
℃、110℃の場合であった。この結果から、フクレ密
度が50個/面となるアニール時間の対数とアニールの
絶対温度の逆数との間に直線関係(アレニウス則)が成
り立っていることが分かった。それをフィッティングし
た直線が、以下の式となる。
【0045】
【数4】τ=3.20×10-9×exp{6890/
(273+T)}
【0046】したがって、本発明のアニール工程は、次
の関係式を満たす条件下で実施されることが好ましい。
【0047】
【数5】τ≧3.20×10-9×exp{6890/
(273+T)}
【0048】基板の変形を起さないようにするために、
アニール温度は、使用される樹脂のTgよりも20℃以
上低い温度であることが好ましい。また、あまりに長時
間のアニールはタイムロスとなるだけであり、生産効率
上好ましくない。また、応力開放の観点からも50時間
以内で十分である。
【0049】したがって、前述したアニール温度と時間
との関係式を満たし、かつアニール時間は50時間以
下、アニール温度は樹脂のTgよりも20℃以上低い温
度でアニール工程を実施することが好ましい。
【0050】さらに、基板保持の形態としては、図3の
ような縦置きアニールカセットを用いて基板を縦置きに
する形態と、図4のような横置きアニールカセットを用
いて基板を横置きにする形態とが考えられる。本発明の
アニール工程においては、基板からの揮発ガスが再付着
しないように基板が保持されることが好ましい。したが
って、基板を縦置きに保持してアニールを行うことが好
ましい。縦置き保持は、通常のプロセスカセットを使用
できるため、プロセス設計の点からも優位である。
【0051】さらにまた、基板周囲は、基板上の酸化劣
化物を加熱することから発生した揮発ガスが揮散しやす
いような通気性を有することが好ましく、そのような通
気性は、不活性ガスの気流およびプロセスカセットの十
分な間隙により担保される。
【0052】なお、基板を熱可塑性樹脂から成形する工
程においては、用いられる熱可塑性樹脂に応じて温度、
圧力、および射出速度が適宜決定される。基板の表面精
度および形状安定性を向上させるためには、一般的に、
高温高圧下で高射出速度で樹脂を成形することが好まし
い。
【0053】さらに、金型温度は用いられる樹脂に応じ
て、できるだけ高い温度とし、金型の固定面と可動面と
の温度差がない方が、厚み方向および半径方向の両方で
線膨張係数が小さい、すなわち、スキン層に残留する応
力が少ない基板を成形することができる。いずれにせ
よ、適当な射出成形条件を選択することは、当業者にと
って容易である。
【0054】本発明による記録媒体は、基板上に、中間
層、下地層、磁性層、保護層、潤滑層等の記録媒体の用
途に応じて通常使用される各層を形成することにより製
造される。
【0055】
【実施例】本発明を、以下に実施例を挙げて説明する
が、本発明は本実施例にのみ限定されるものではない。
【0056】(実施例1)市販されている最大射出成形
圧力70tの射出成形装置にスタンバーを固定した金型
において、高耐熱ポリオレフィン樹脂(日本ゼオン
(株)製ZEONEX、Tg140℃)を用いて、樹脂
温度320℃、射出速度120mm/s、型締め圧力9
0kg/cm2、金型温度固定側/可動側=110℃/
110℃という成形条件にて射出成形を行った。その
後、1時間以内に、図3に示す縦置きカセットに成形さ
れた25枚の基板を入れて、酸素濃度0.02%のN2
ガス雰囲気下で、温度90℃で10時間アニールを行う
ことにより、φ95mm×1.27mmのディスク基板
を得た。そのカセットの中心に位置する1枚の基板をサ
ンプルとし、樹脂およびその添加剤由来の酸化劣化物量
の評価に用いた。
【0057】酸化劣化物の評価は、1枚の基板を120
℃に加熱し、発生した有機系ガスを活性炭に吸着させ、
その後その吸着物を活性炭からパージ&トラップ(P&
T)法で脱着し、ガスクロマトグラフィー質量分析装置
(P&T GC−MS:(株)島津製作所製)にて、定
量することにより行った。
【0058】測定された酸化劣化物の量を表1に示し、
さらに、図5において酸素濃度に対して中黒のひし形と
してプロットする。
【0059】(実施例2)酸素濃度0.08%のN2
ス雰囲気下でアニールを行う以外は実施例1と同様にデ
ィスク基板を製造し、基板表面の酸化劣化物量を測定し
た。測定された酸化劣化物の量を図5において酸素濃度
に対して中黒のひし形としてプロットする。
【0060】(実施例3)酸素濃度0.2%のN2ガス
雰囲気下でアニールを行う以外は実施例1と同様にディ
スク基板を製造し、基板表面の酸化劣化物量を測定し
た。測定された酸化劣化物の量を図5において酸素濃度
に対して中黒のひし形としてプロットする。
【0061】(比較例1)酸素濃度2%のN2ガス雰囲
気下でアニールを行う以外は実施例1と同様にディスク
基板を製造し、基板表面の酸化劣化物量を測定した。測
定された酸化劣化物の量を図5において酸素濃度に対し
て黒塗りのひし形としてプロットする。
【0062】(比較例2)酸素濃度20%のN2ガス雰
囲気下でアニールを行う以外は実施例1と同様にディス
ク基板を製造し、基板表面の酸化劣化物量を測定した。
測定された酸化劣化物の量を図5において酸素濃度に対
して中黒のひし形としてプロットする。
【0063】酸素濃度と酸化劣化物量の関係 実施例1〜3および比較例1、2から、不活性ガス中の
酸素濃度を低減させることによって、樹脂およびその添
加物由来の酸化劣化物量は大きく減少することがわか
る。これは、酸素濃度の少ない状態でアニールを行う
と、基板表面の酸化を抑制した状態で、かつ、低沸点成
分である樹脂および添加剤の酸化劣化物が揮発していく
ことにより、それらの成分が減少するからだと考えられ
る。
【0064】(比較例3)図4に示す横置きカセットを
用いてアニール時の基板の保持を横置きにする以外は実
施例1と同様にディスク基板を製造し、基板表面の酸化
劣化物量を測定した。測定された酸化劣化物の量を表1
に示す。
【0065】
【表1】
【0066】基板保持方法と酸化劣化物量との関係 実施例1および比較例3を比較すると、縦置きの方が横
置きよりも酸化劣化物量が少ないことがわかる。
【0067】横置きアニールにおいては、酸化劣化物の
揮発ガスが、周りの基板に再付着しているが、縦置きの
アニールでは、揮発ガスが上部の方へ抜けていったため
に、このような結果になったと推測される。
【0068】この結果から、アニール時には、基板から
の揮発ガスが再付着しない基板の保持方法をとる必要が
あり、そのためには、縦置きアニールが優れていること
がわかった。
【0069】(実施例4)実施例1に記載のとおり、得
られた25枚の基板から、カセットの中心に位置する1
枚の基板を実施例1のサンプルとして取り出した後に、
カセット中心近くの5枚の基板を取り出して本実施例の
サンプルとした。それぞれの基板上にDCスパッタ法に
より下地Cr層500Å、Co−14Cr−4Ta磁性
層300Å、カーボン保護層80Åを順次形成し、さら
にスパッタ後の表面にテープバニッシュを行い、スピン
コート法でフッ素系潤滑剤(アウジモント製FOMBL
INZ−DOL)の20Åの層を形成し、磁気記録媒体
(ハードディスク)を得た。
【0070】得られた磁気記録媒体を高温・高湿雰囲気
(60℃・80%RH)に10時間放置し、次に、速や
かに−40℃まで冷却し、その状態で10時間放置し
た。その後、常温・常湿環境に速やかに戻して、フクレ
密度を測定した。測定結果を表1に示し、さらに図5に
おいて酸素濃度に対して白抜きの四角形としてプロット
する。
【0071】(実施例5)実施例2で得たディスク基板
を用いる以外は、実施例4と同様に、磁気記録媒体を製
造し、環境試験を行い、フクレ密度を測定した。測定結
果を図5において酸素濃度に対して白抜きの四角形とし
てプロットする。
【0072】(実施例6)実施例3で得たディスク基板
を用いる以外は、実施例4と同様に、磁気記録媒体を製
造し、環境試験を行い、フクレ密度を測定した。測定結
果を図5において酸素濃度に対して白抜きの四角形とし
てプロットする。
【0073】(比較例4)比較例1で得たディスク基板
を用いる以外は、実施例4と同様に、磁気記録媒体を製
造し、環境試験を行い、フクレ密度を測定した。測定結
果を図5において酸素濃度に対して白抜きの四角形とし
てプロットする。
【0074】(比較例5)比較例2で得たディスク基板
を用いる以外は、実施例4と同様に、磁気記録媒体を製
造し、環境試験を行い、フクレ密度を測定した。測定結
果を図5において酸素濃度に対して白抜きの四角形とし
てプロットする。
【0075】酸素濃度とフクレ密度の関係 実施例4〜6および比較例4、5から、不活性ガス中の
酸素濃度を低減させることによって、環境試験後に発生
するフクレの密度が減少することがわかる。そして、酸
素濃度とフクレ密度との関係と、実施例1〜3および比
較例1、2により示された酸素濃度と酸化劣化物量との
関係が相関関係にあることもわかる。
【0076】したがって、酸素濃度を低減させた不活性
ガス中でのアニール工程により、基板表面の酸化劣化物
量を減少せしめることによって、フクレの発生を最小限
に抑えることができる。
【0077】フクレ密度が50個/面であるとき記録媒
体の安定性が維持された。図5のグラフからフクレ密度
が50個/面以下となるのは、アニール時の不活性ガス
中の酸素濃度が0.7%以下であることがわかり、した
がって、基板表面の酸化劣化物の量を30ppb以下に
すればよいことがわかる。
【0078】(比較例6)比較例3で得たディスク基板
を用いる以外は、実施例4と同様に、磁気記録媒体を製
造し、環境試験を行い、フクレ密度を測定した。測定結
果を表1に示す。
【0079】基板保持方法とフクレ密度との関係 前述のとおり、縦置きの方が横置きよりも酸化劣化物量
が少なかったので、フクレ密度も少ないことが予想され
た。実施例4および比較例6を比較することにより、縦
置きの方が横置きよりもフクレ密度が少ないことが確認
された。
【0080】
【発明の効果】本発明の基板は、高耐熱性熱可塑性樹脂
が射出成形されてなるものであるが、高温・高湿および
低温環境下に長時間放置した後でも表面におけるフクレ
の発生が非常に少ない。したがって、本発明により得ら
れた基板を用いることにより、耐環境安定性の高い記録
媒体を、大量且つ安価に生産することが可能となり、工
業的な価値が極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】アニール温度、アニール時間、および環境試験
後のフクレ密度の関係を示すグラフである。
【図2】アニール温度と、フクレ密度が50個/面の時
のアニール時間との関係を示すグラフである。
【図3】本発明のアニール工程で好適に使用される縦置
きアニールカセットの断面概略図である。
【図4】本発明のアニール工程で使用することができる
横置きアニールカセットの断面概略図である。
【図5】アニール工程における不活性ガス中の酸素濃度
と、酸化劣化物量および環境試験後のフクレ密度との関
係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 成形基板 2,12 アニールカセット
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 磯 亜紀良 神奈川県川崎市川崎区田辺新田1番1号 富士電機株式会社内 (72)発明者 鄭 用一 神奈川県川崎市川崎区田辺新田1番1号 富士電機株式会社内 Fターム(参考) 5D006 CB01 CB07

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱可塑性樹脂から成る記録媒体用基板で
    あって、前記基板上における基板構成材料の酸化劣化物
    量が、基板の重量に基づいて30ppb以下であること
    を特徴とする記録媒体用基板。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の記録媒体用基板の製造
    方法であって、熱可塑性樹脂から記録媒体用基板を成形
    する工程、および成形された基板をアニールする工程を
    具え、前記アニール工程は、酸素濃度が0.7%以下の
    不活性ガス雰囲気下で実施されることを特徴とする記録
    媒体用基板の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記アニール工程は、アニール温度T
    (℃)およびアニール時間τ(hr)が、関係式 【数1】τ≧3.20×10-9×exp{6890/
    (273+T)} を満たす条件下で実施されることを特徴とする請求項2
    に記載の記録媒体用基板の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記アニール温度は使用された樹脂のガ
    ラス転移温度(Tg)より20℃以上低い温度であり、
    前記アニール時間は50時間以下であることを特徴とす
    る請求項3に記載の記録媒体用基板の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記アニール工程は、基板が縦置きで保
    持され、かつ揮発ガスを放出することができる通気性を
    有する環境下で実施されることを特徴とする請求項2〜
    4のいずれか1項に記載の記録媒体用基板の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項2〜5のいずれか1項に記載の製
    造方法により製造されたことを特徴とする記録媒体用基
    板。
  7. 【請求項7】 請求項1または6に記載された記録媒体
    用基板を具えることを特徴とする記録媒体。
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