JP2002097553A - 耐火性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼材 - Google Patents
耐火性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼材Info
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Abstract
たマルテンサイト系ステンレス鋼材を提供する。 【解決手段】質量%で,C≦0.02,Si≦0.50,Mn≦1.5,P≦
0.030,S≦0.0050,Cr:10.0〜15.0,Ni:0.5〜6.0,Mo:0.3〜
3.0,N≦0.03,Al≦0.15,Ti:0.003〜0.050 を含有し,必要
に応じCu≦3.0,W≦1.0,Sn≦1.0,Nb≦0.05,V≦0.1 の1
種又は2種以上を含有し、更にCa:0.0005 〜0.005%,B:
0.0005〜0.0050% の1種又は2種を含有し、更にNiとMo
の含有量が下式の関係を満たし、残部Fe及び不可避的不
純物からなり、体積分率で10%未満の残留オーステナイ
ト相と残部が焼戻マルテンサイトより成る金属組織を有
し、600 ℃の耐力が常温耐力に対し2/3以上とする。 A=[Mo]-4.41[Ni]+22.94≧0
Description
どの建築構造部材として使用される耐火性に優れたマル
テンサイト系ステンレス鋼材に関する。
要請から、建築構造用鋼材には高温強度が必要とされ
る。一般構造用炭素鋼では300℃以上の高温に曝され
ると急激に強度が低下するため、鋼材表面への重度の耐
火被覆施工などが必要とされてきたが、耐火被覆施工に
は建設コスト増大などの問題があるため、従来より、耐
火被覆を必要としないか必要としても軽度の施工で済む
耐火性に優れた鋼材が要求されてきており、これに対し
て600℃での降伏強度が常温降伏強度規格値の2/3
以上を保証し、常温の引張強度が490Mpaあるいは
570Mpa級の、特開平2−77523号公報に見ら
れるような低合金鋼鋼材が実用化されてきている。
耐火鋼で所望の耐火性能は得られるが、低合金系である
ため、防錆性、耐食性が不十分で裸使用は困難であり、
防錆塗装が必須となっている。すなわち、耐火被覆は省
略できても防錆塗装は省略できず、このため施工コスト
が嵩んでいる。
る鋼材としては、各種ステンレス鋼が想定されるが、実
際に柱や梁などの建築構造に使用されている鋼材として
は、意匠性などが重視される極く限られた用途でのオー
ステナイト系ステンレス鋼(例えばSUS304)を除
けば殆ど見られない。その最大の理由は、構造物に必須
となる強度、靭性と溶接性をバランス良く満たす鋼種が
なかったためであるが、最近では特開平11−3235
07号公報に見られるように、溶接性に有害なCを低減
してNiを添加したマルテンサイト系ステンレス鋼を建
築構造用材料に展開する技術が提唱されてきている。し
かしながら、前述の耐火性の要請に対して回答を与える
技術には至っていない。
インパイプにおいて、特開平9−316611号公報に
見られる溶接性、耐食性に優れ、パイプラインとして十
分な高温強度を有するマルテンサイト系ステンレス鋼材
が提案されてきている。しかしながら、パイプラインで
定義される高温は100ないし150℃程度であり、建
築用耐火鋼材で規定される600℃に比べると遥かに低
い。
な低C系マルテンサイト系ステンレス鋼において、常温
での強度・靭性は無論のこと、構造物施工に必須の良好
な溶接性を兼備した上で、さらに600℃の高温条件で
十分な強度が得られる鋼材は未だ提示されていないのが
現状である。
を克服する技術を提供することを目的とするものであ
り、特に600℃での耐力が常温での耐力規格最小値の
2/3以上を保証するマルテンサイト系ステンレス鋼材
を提供することを目的とする。
テンサイト系ステンレス鋼材の建築構造材料として必要
とされる溶接性、強度、靭性、耐食性に配慮した多くの
実験を行い、次に板、形鋼、鋼管などに成形する過程で
問題となる熱間加工性を評価し、これらの結果に基づい
て鋼成分を特定範囲に絞り込んだ。その後、この特定成
分組成の鋼材において、高温耐力がNi,Mo量、およ
び金属組織(特に残留オーステナイト量)に大きく依存
することを知見し、高温耐力の面からNi,Mo量と金
属組織を最適化した。
ものであり、その要旨は以下の通りである。 (1)質量%で、 C :0.02%以下、 Si:0.50%以下、 Mn:1.5%以下、 P :0.030%以下、 S :0.0050%以下、 Cr:10.0〜15.0%、 Ni:0.5〜6.0%、 Mo:0.3〜3.0%、 N :0.03%以下、 Al:0.15%以下、 Ti:0.003〜0.050% を含有し、 NiとMoの含有量が下記(1)式の関係を満たし、残
部がFeおよび不可避的不純物からなり、体積分率で1
0%未満の残留オーステナイト相と残部が焼戻マルテン
サイトより成る金属組織を有し、600℃における耐力
が常温での耐力に対して2/3以上であることを特徴と
する耐火性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼材。 A=[Mo]−4.41[Ni]+22.94≧0 ・・・(1) (2)質量%で、 C :0.02%以下、 Si:0.50%以下、 Mn:1.5%以下、 P :0.030%以下、 S :0.0050%以下、 Cr:10.0〜15.0%、 Ni:0.5〜6.0%、 Mo:0.3〜3.0%、 N :0.03%以下、 Al:0.15%以下、 Ti:0.003〜0.050% を含有し、さらに Cu:3.0%以下、 W :1.0%以下、 Sn:1.0%以下、 Nb:0.05%以下、 V :0.1%以下 の1種または2種以上を含有し、 NiとMoの含有量が下記(1)式の関係を満たし、残
部がFeおよび不可避的不純物からなり、体積分率で1
0%未満の残留オーステナイト相と残部が焼戻マルテン
サイトより成る金属組織を有し、600℃における耐力
が常温での耐力に対して2/3以上であることを特徴と
する耐火性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼材。 A=[Mo]−4.41[Ni]+22.94≧0 ・・・(1) (3)質量%で、 C :0.02%以下、 Si:0.50%以下、 Mn:1.5%以下、 P :0.030%以下、 S :0.0050%以下、 Cr:10.0〜15.0%、 Ni:0.5〜6.0%、 Mo:0.3〜3.0%、 N :0.03%以下、 Al:0.15%以下、 Ti:0.003〜0.050% を含有し、さらに Ca:0.0005〜0.005%、 B :0.0005〜0.0050% の1種または2種を含有し、 NiとMoの含有量が下記(1)式の関係を満たし、残
部がFeおよび不可避的不純物からなり、体積分率で1
0%未満の残留オーステナイト相と残部が焼戻マルテン
サイトより成る金属組織を有し、600℃における耐力
が常温での耐力に対して2/3以上であることを特徴と
する耐火性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼材。 A=[Mo]−4.41[Ni]+22.94≧0 ・・・(1) (4)質量%で、 C :0.02%以下、 Si:0.50%以下、 Mn:1.5%以下、 P :0.030%以下、 S :0.0050%以下、 Cr:10.0〜15.0%、 Ni:0.5〜6.0%、 Mo:0.3〜3.0%、 N :0.03%以下、 Al:0.15%以下、 Ti:0.003〜0.050% を含有し、さらに Cu:3.0%以下、 W :1.0%以下、 Sn:1.0%以下、 Nb:0.05%以下、 V :0.1%以下 の1種または2種以上を含有し、さらに Ca:0.0005〜0.005%、 B :0.0005〜0.0050% の1種または2種を含有し、 NiとMoの含有量が下記(1)式の関係を満たし、残
部がFeおよび不可避的不純物からなり、体積分率で1
0%未満の残留オーステナイト相と残部が焼戻マ肝汐イ
ドより成る金属組織を有し、600℃における耐力が常
温での耐力に対して2/3以上であるを特徴とする耐火
性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼材。 A=[Mo]−4.41[Ni]+22.94≧0 ・・・(1)
する。先ず、本発明における成分の限定理由について述
べる。 C:Cは、溶接熱影響部の硬さを上昇させ、靭性を低下
させる元素である。また、耐食性にも有害な元素であ
る。このため可及的低レベルが望ましく、現在の精錬技
術で工業的かつ経済的に到達可能な範囲として0.02
%以下とした。
添加されて残留しているもので、靱性、熱間加工性に有
害なフェライト相を形成する元素であるため、脱酸に必
要とされる最小限の含有量とすべきであり、0.5%以
下を適正範囲とした。
化物として固定して無害化する元素であると共にオース
テナイト安定化元素でもあり、靭性、熱間加工性に有害
なフェライトの形成を抑制する作用を有するため含有さ
せるが、含有し過ぎてもその効果は飽和するため、上限
を1.5%とした。
であり、10.0%以上の含有が必要であるが、反面フ
ェライト安定化元素でもあり、含有量が多いと靭性、熱
間加工性に有害なフェライト相が形成されるため、1
5.0%を上限とした。
あり、かつオーステナイトを安定化させフェライト生成
を防止する効果をもつ元素である。このため、0.5%
を下限として含有させる。しかしながら、多量に含有さ
せると600℃における高温耐力が低下するため、その
上限を6.0%とした。なお、Niの含有量は後述のM
o含有量との関係で最適化される。
元素であると共に、高温耐力を維持する上で必要かつ不
可欠の元素である。このため、0.3%を下限として含
有させるが、フェライト形成能の強い元素であるため、
溶接部靭性にも配慮して含有量上限を3.0%とした。
を上昇させ、靭性を低下させる元素である。このため可
及的低レベルが望ましく、現在の精錬技術で工業的かつ
経済的に到達可能な範囲として0.03%以下とした。
素であると共に脱硫を促進して前記のS含有量を安定的
に確保するために含有させるが、過度に含有させると酸
化物系介在物が多くなることに加えて窒化物も生成され
るようになり靭性が低下する。このため、含有量の上限
を0.15%とした。
存在し、溶接熱影響部の粒成長を抑止して靭性を改善す
る効果を有する。また、Mnと同様、熱間加工性に有害
なSを硫化物として固定して無害化する効果も有する。
このため、0.003%を下限として含有させるが、過
剰に含有させると粗大窒化物が現われて熱間加工性が低
下すると共に、炭化物が形成されて靭性劣化をきたすた
め、上限を0.050%とした。
2.94)≧0:高温耐力に及ぼすMo,Ni量の影響
を図1に示す。これより、本発明のNi含有量で高温耐
力の点から、特に望ましい条件はA≧0となる範囲であ
る。
力、耐食性、溶接性や靭性、熱間加工性を改善するため
に、以下に述べる元素の1種以上を選択的に添加する。 Cu:CuはNiと同様、耐食性改善に有効な元素であ
ると共に、フェライト生成防止効果を有する元素である
ため含有させるが、過剰に含有させると熱間加工性が劣
化するので、上限を3.0%とした。
るのに有効な元素であるため、Mo含有量が低い場合に
は補足的に含有させても良いが、高価な元素でもあるこ
とから、含有量の上限は1.0%とした。
を有するため、Wと同様に、Mo含有量が低い場合には
補足的に含有させても良いが、過剰に含有させると熱間
加工性や溶接性が劣化するので、上限を1.0%とし
た。
を僅かながら改善させる効果を有すると共に、溶接熱影
響部硬さを低下させるのに有効である。しかしながら多
く含有させても効果は飽和するので、含有量の上限をそ
れぞれ0.05%、0.1%、0.15%とした。
0.0005〜0.0050% Ca:Caは、熱間加工性改善に有効な元素であり、必
要に応じて0.0005%以上含有させるが、含有量が
多すぎると粗大酸化物による靭性劣化を招くため、含有
量の上限を0.005%とした。
り、0.0005%を下限として含有させるが、0.0
050%を超えて含有させると溶接割れを起こすため、
適正範囲を0.0005〜0.0050%とした。
物元素であり、高温耐力には直接影響しないが、靭性や
熱間加工性に害する作用をもつため可及的に低レベルと
するのが望ましい。現在の精錬技術で工業的かつ経済的
に到達可能な範囲として、P:0.03%以下、S:
0.005%以下が望ましい。
定理由について述べる。以上述べた組成よりなる鋼は、
主に成分によって支配される耐食性、溶接熱影響部硬さ
に代表される溶接性、熱間加工性といった諸特性におい
ては、良好な特性を発揮する。しかしながら、高温耐力
については金属組織にも強く依存するため、目的とする
良好な高温耐力を得るには金属組織の最適化が必要とな
る。
度を調整するが、この状態での金属組織構成要素は、焼
戻マルテンサイトの基地に残留オーステナイトが共存す
る組織となる。金属組織の調整は、熱延条件、焼戻し温
度等を調整することにより行う。残留オーステナイトの
共存比率は、高温耐力に著しい影響を与える。図2に例
示するように、成分組成が前記の適性範囲にあっても、
残留オーステナイトの体積分率がl0%を超えると高温
耐力が低下するため、本発明では、最終製品状態での鋼
材に含まれる残留オーステナイト分率を体積分率として
10%以下に制限した。
分率は、オーステナイト相(fcc構造)とマルテンサ
イトおよび焼戻マルテンサイト(bcc構造)のX線回
折による回折ピークの面積比から求められ、体積%で定
義するものである。また、本発明における残留オーステ
ナイト量の適正範囲は、「島津評論」、Vol.43 No.2
−3,P.269 〜272 (1986)に記載の回転振動法による定
量結果をもとに規定したものである。
する。表1に示す組成の鋼を溶製して造塊法にて鋳造し
た後、該鋳片を1200℃に加熱して熱間圧延を施し、
室温まで冷却した後、表2の温度で焼戻処理を施した。
焼戻処理後の鋼材について残留オーステナイト量をX線
回折法によって定量すると共に、JIS Z2241に
従った常温引張試験およびJIS G0567に従った
600℃での高温引張試験を行った。
9の本発明では、目的とする常温耐力の2/3以上の6
00℃耐力が得られる。一方、比較例No.14,15
は、残留オーステナイト量が本発明範囲を外れており、
また、比較例No.11,12ではMo含有量と残留オ
ーステナイト量が本発明の範囲を外れているため、所期
の600℃耐力が得られていない。
成分に加えて金属組織を最適化することにより、耐火性
に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼が得られる。
の関係を示す。
Claims (4)
- 【請求項1】 質量%で、 C :0.02%以下、 Si:0.50%以下、 Mn:1.5%以下、 P :0.030%以下、 S :0.0050%以下、 Cr:10.0〜15.0%、 Ni:0.5〜6.0%、 Mo:0.3〜3.0%、 N :0.03%以下、 Al:0.15%以下、 Ti:0.003〜0.050% を含有し、NiとMoの含有量が下記(1)式の関係を
満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、体
積分率で10%未満の残留オーステナイト相と残部が焼
戻マルテンサイトより成る金属組織を有し、600℃に
おける耐力が常温での耐力に対して2/3以上であるこ
とを特徴とする耐火性に優れたマルテンサイト系ステン
レス鋼材。 A=[Mo]−4.41[Ni]+22.94≧0 ・・・(1) - 【請求項2】 質量%で、 C :0.02%以下、 Si:0.50%以下、 Mn:1.5%以下、 P :0.030%以下、 S :0.0050%以下、 Cr:10.0〜15.0%、 Ni:0.5〜6.0%、 Mo:0.3〜3.0%、 N :0.03%以下 Al:0.15%以下、 Ti:0.003〜0.050% を含有し、さらに Cu:3.0%以下、 W :1.0%以下、 Sn:1.0%以下、 Nb:0.05%以下、 V :0.1%以下 の1種または2種以上を含有し、NiとMoの含有量が
下記(1)式の関係を満たし、残部がFeおよび不可避
的不純物からなり、体積分率で10%未満の残留オース
テナイト相と残部が焼戻マルテンサイトより成る金属組
織を有し、600℃における耐力が常温での耐力に対し
て2/3以上であることを特徴とする耐火性に優れたマ
ルテンサイト系ステンレス鋼材。 A=[Mo]−4.41[Ni]+22.94≧0 ・・・(1) - 【請求項3】 質量%で、 C :0.02%以下、 Si:0.50%以下、 Mn:1.5%以下、 P :0.030%以下、 S :0.0050%以下、 Cr:10.0〜15.0%、 Ni:0.5〜6.0%、 Mo:0.3〜3.0%、 N :0.03%以下、 Al:0.15%以下、 Ti:0.003〜0.050% を含有し、さらに Ca:0.0005〜0.005%、 B :0.0005〜0.0050% の1種または2種を含有し、NiとMoの含有量が下記
(1)式の関係を満たし、残部がFeおよび不可避的不
純物からなり、体積分率で10%未満の残留オーステナ
イト相と残部が焼戻マルテンサイトより成る金属組織を
有し、600℃における耐力が常温での耐力に対して2
/3以上であることを特徴とする耐火性に優れたマルテ
ンサイト系ステンレス鋼材。 A=[Mo]−4.41[Ni]+22.94≧0 ・・・(1) - 【請求項4】 質量%で、 C :0.02%以下、 Si:0.50%以下、 Mn:1.5%以下、 P :0.030%以下、 S :0.0050%以下、 Cr:10.0〜15.0%、 Ni:0.5〜6.0%、 Mo:0.3〜3.0%、 N :0.03%以下、 Al:0.15%以下、 Ti:0.003〜0.050% を含有し、さらに Cu:3.0%以下、 W :1.0%以下、 Sn:1.0%以下、 Nb:0.05%以下、 V :0.1%以下 の1種または2種以上を含有し、さらに Ca:0.0005〜0.005%、 B :0.0005〜0.0050% の1種または2種を含有し、NiとMoの含有量が下記
(1)式の関係を満たし、残部がFeおよび不可避的不
純物からなり、体積分率で10%未満の残留オーステナ
イト相と残部が焼戻マルテンサイトより成る金属組織を
有し、600℃における耐力が常温での耐力に対して2
/3以上であることを特徴とする耐火性に優れたマルテ
ンサイト系ステンレス鋼材。 A=[Mo]−4.41[Ni]+22.94≧0 ・・・(1)
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