JP2000226643A - 低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼板およびその製造方法ならびに溶接鋼管 - Google Patents

低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼板およびその製造方法ならびに溶接鋼管

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JP2000226643A
JP2000226643A JP33895899A JP33895899A JP2000226643A JP 2000226643 A JP2000226643 A JP 2000226643A JP 33895899 A JP33895899 A JP 33895899A JP 33895899 A JP33895899 A JP 33895899A JP 2000226643 A JP2000226643 A JP 2000226643A
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Tomohiko Omura
朋彦 大村
Takahiro Kushida
隆弘 櫛田
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Nippon Steel Corp
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Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】成形性と耐食性に優れた低炭素マルテンサイト
系ステンレス熱延鋼板およびその製造方法ならびに溶接
鋼管を提供する。 【解決手段】C:0.05%以下、Cr:10〜15%、Mo:0〜3
%、Al:0〜0.1%、Ti:0〜0.75%、Ni:1〜8%からな
る化学組成を有し、YSが110ksi以下で、オーステナイト
相の体制割合γ(%)が1%以上で、かつ下記の式ま
たは式を満たす熱延鋼板(tは熱延鋼板板厚(m
m))。 t≦10の時:γ≧2×Mo ・・・・・・・・・ t>10の時:γ≧2×Mo+(t−10) ・・・ および、上記化学組成を有する鋼板に、600℃以上、
下記の式で求められる温度T℃以下の温度域で5分以
上加熱保持する熱延鋼板の製造方法。 T=900−50×Mo・・・・・・

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ラインパイプや油
井管または油井化工機用配管に用いられる溶接鋼管の素
材に用いて好適な成形性と耐食性に優れる低炭素マルテ
ンサイト系ステンレス熱延鋼板およびその製造方法なら
びにその熱延鋼板から製造された溶接鋼管に関する。
【0002】
【従来の技術】低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼
は、油井用材料として近年開発が進められている鋼種で
ある。この低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼は、2
相ステンレス鋼に比べてCrなどの高価な元素の含有量
が少ないために安価であり、炭酸ガスのみや、炭酸ガス
と微量の硫化水素ガスとの混合ガスを含む湿潤環境中で
用いられ、良好な耐食性を示す。また、炭素含有量が低
いために、溶接性が良好で、ガス・タングステン・アー
ク溶接法(以下、GTAW法という)やガスメタル・ア
ーク溶接法(以下、GMAW法という)による周溶接継
ぎ手を前提としたラインパイプ用として適している。
【0003】上記の低炭素マルテンサイト系ステンレス
鋼からなる鋼管は、従来、主として継目無鋼管として製
造されてきたが、近年、継目無鋼管では製造が困難な肉
厚が10mm以下の薄肉管の需要が高まっている。
【0004】低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼から
なる溶接管は、従来、あまり実用化例がない。しかし特
開平4−191319号公報および特開平4−1913
20号公報には素材帯鋼を管状に成形して突き合わせ部
を電縫溶接法(以下、ERW法という)によって造管溶
接する方法が提案されている。また、小径管ではGTA
W法あるいはプラズマ溶接法(以下、PAW法という)
による突き合わせ造管溶接も検討されている。
【0005】さらに、近年開発が進められている新溶接
法としてレーザ溶接造管法がある。この方法を小径管の
製造に適用した発明として、特開昭63−278688
号公報にはオーステナイト系ステンレス鋼、同63−2
78689号公報にはフェライト系ステンレス鋼、およ
び同63−278690号公報には含Mo高合金鋼をそ
れぞれ溶接管の素材鋼とた事例が開示されている。これ
らの事例では、レーザ溶接造管後、溶接シーム部に対し
て後熱処理を施せば溶接金属の機械的性質が回復し、良
好な性能が得られるとされている。
【0006】またさらに、最近では、大出力のレーザ熱
源を用いた突き合わせ造管溶接法も開発されいる。特開
平9−164425には突き合わせレーザ溶接造管を行
い、その後溶接部近傍に適正な後熱処理を施すことによ
り良好な耐食性を得る方法が提案されている。
【0007】しかし、これらのいずれの発明において
も、耐食性および成形性のいずれをも十分満足する熱延
鋼板および溶接鋼管は得られない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】低炭素マルテンサイト
系ステンレス鋼の熱延鋼板を素材とし、これを管状に成
形して造管溶接する際、成形性の不良が重要な問題とし
て近年明らかとなってきている。強度が高い薄肉鋼板を
用いて管状に成形する場合、管の長手方向の圧縮応力に
起因する座屈現象と推定される「縁波欠陥」が突き合わ
せ端面に発生し、良好な突き合わせ溶接ができない。ま
た、肉厚10mm以上の厚肉鋼板を用いた場合は、成形
そのものが非常に困難で、成形ロールなどの設備への機
械的な負担が大きくなる。
【0009】この現象は、NiやMoなどの合金元素の
マルテンサイト組織中の固溶強化と、熱延コイル中の歪
みの残留により、鋼板が高強度化されることが主たる原
因と考えられている。特に、熱延ままでは降伏応力(Y
S)が110ksi(758MPa)を超えることが多
く、通常の焼鈍や焼戻しでは低合金鋼のように容易には
軟化せず、明確な対策がないまま造管溶接が行われてい
るのが現状である。
【0010】また、現状では、ラインパイプとして要求
される強度は80ksi級(YSが80〜95ksi
(551〜654MPa))が主流であり、いたずらに
高強度である必要はない。これは、強度が高いと湿潤硫
化水素環境中での耐硫化物応力割れ性(以下、硫化物応
力腐食割れ性をSSC性という。)などの耐食性や、靭
性などの機械的性質などが低下する場合が多いためであ
る。
【0011】本発明の目的は、高強度化を抑制し、溶接
管用の素材として用いて好適な成形性と耐食性に優れた
低炭素マルテンサイト系ステンレス熱延鋼板およびその
製造方法ならびに熱延鋼板から製造された溶接鋼管を提
供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、下記
(1)、(2)および(3)に記載の成形性と耐食性に
優れた低炭素マルテンサイト系ステンレス熱延鋼板およ
びその製造方法ならびにこれを素材とする溶接鋼管にあ
る。
【0013】(1)質量%で、C:0.05%以下、S
i:1%以下、Mn:5%以下、P:0.04%以下、
S:0.01%以下、Cr:10〜15%、Mo:0〜
3%、Al:0〜0.1%、Ti:0〜0.75%、N
i:1〜8%、残部はFeおよび不純物からなる化学組
成を有し、降伏応力(YS)が110ksi(758M
Pa)以下、オーステナイト相の体積割合をγ(%)と
表示したとき、γは1%以上で、かつ、下記の式また
は式を満たす熱延鋼板。
【0014】t≦10の時 γ≧2×Mo ・・・・・・・・・・ t>10の時 γ≧2×Mo+(t−10) ・・・ ここで、tは鋼板の板厚(mm)、Moは鋼中のMo含
有量(質量%)である。
【0015】(2)質量%で、C:0.05%以下、S
i:1%以下、Mn:5%以下、P:0.04%以下、
S:0.01%以下、Cr:10〜15%、Mo:0〜
3%、Al:0〜0.1%、Ti:0〜0.75%、N
i:1〜8%、残部はFeおよび不純物からなる化学組
成を有する鋼板に、600℃以上、下記の式で求めら
れる温度T℃以下の温度域で5分以上加熱保持する熱処
理を施す熱延鋼板の製造方法。
【0016】T=900−50×Mo・・・・・・ ここで、Moは鋼中のMo含有量(質量%)とする。
【0017】(3)(1)に記載の熱延鋼板を管状に成
形した後、その突き合わせ部が溶接法により接合されて
いる溶接鋼管。
【0018】本発明者らは、低炭素マルテンサイト系ス
テンレス鋼の成形性に及ぼす要因について鋭意実験研究
を行い、次のことを知見し本発明を完成させた。
【0019】母相であるマルテンサイト組織中に所定量
のオーステナイト相を析出させることが、高強度化の抑
制と成形性の改善に極めて有効である。その理由は、オ
ーステナイトは軟質相で、加工性が良好なためであり、
特にYSが110ksi(758MPa)以下の鋼板で
は加工性改善効果が大きいからである。しかも、このオ
ーステナイト相は、CrやMoの含有率を増加させた場
合に析出する軟質のフェライト相とは異なり、SSCに
対する感受性が低く、靭性などの機械的性質も良好で、
素材の性能を低下させない。
【0020】成形性を充分に改善するのに必要なオース
テナイト相の体積割合は、湿潤硫化水素環境中の耐SS
C性の改善を目的として添加されるMo量に大きく依存
する。すなわち、Mo含有量の多い素材ほどMoの固溶
強化により成形性の劣化が起こるため、それに見合う量
のオーステナイト相を析出させる必要がある。また、肉
厚が大きいほど良好な成形性が求められ、より多くのオ
ーステナイト相を析出させる必要がある。
【0021】具体的には、低炭素マルテンサイト系ステ
ンレス鋼では、Ac1変態点以下で焼鈍や焼戻しが施され
る低合金鋼とは異なり、Ac1変態点以上の二相域で積極
的に焼鈍や焼戻し処理を施せば、多量のオーステナイト
相を析出させることができ、成形性が向上することが確
認された。
【0022】なお、熱処理温度が高すぎると、オーステ
ナイト相が再焼入れされ、かえってオーステナイト相の
析出量が少なくなる。しかし、前記の式で計算される
T℃以下であれば、前記の式または式を満足するオ
ーステナイト相の析出量が確保できる。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の各要件について詳
しく説明する。なお、各成分の含有量の%は質量%を意
味する。
【0024】(1)化学組成 C:C含有量が0.05%を超えると、溶接時に熱影響
部(以下、HAZという。)において著しい硬化を起こ
し、耐SSC性が低下する。このため、C含有量は0.
05%以下とした。望ましくは、0.03%以下がよ
い。Cは、周溶接性の観点からは低ければ低いほど望ま
しい。
【0025】Si:Siは、添加しなくてもよいが、A
lなどの他の脱酸剤を用いない場合には、鋼の脱酸用に
0.05%以上含有させるのがよい。しかし、1%を超
え含有させると、結晶粒界の強度を弱め、耐SSC性を
低下させる。このため、添加する場合のSi含有量の上
限は、1%とするのがよい。
【0026】Mn:Mnは、添加しなくてもよいが、鋼
の熱間加工性を向上させるために0.05%以上含有さ
せるのが好ましい。Mnには、このほか、母材中のフェ
ライト相の析出を抑制し、マルテンサイト相の割合を高
める効果がある。しかし、5%を超えて含有させると、
結晶粒界の強度を弱めたり、硫化水素環境中で活性溶解
しやすくなり、耐SSC性を低下させる。このため、添
加する場合のMn含有量の上限は、5.0%とするのが
よい。
【0027】P:Pは、鋼中に不可避不純物として存在
し、粒界に偏析して耐SSC性を劣化させる。特に、そ
の含有量が0.04%を超えると、耐SSC性の劣化が
著しくなる。このため、P含有量は0.04%以下とし
た。なお、耐SSC性を高めるためには、Pの含有量は
できるだけ低くすることが望ましい。
【0028】S:Sは、Pと同様に、鋼中に不可避不純
物として存在し、粒界に偏析する一方、硫化物系の介在
物を多量に生成することによって耐SSC性を低下させ
る。特に、その含有量が0.01%を超えると、耐SS
C性の低下が著しくなる。このため、S含有量は0.0
1%以下とした。なお、耐SSC性を高めるためには、
Sの含有量はできるだけ低くすることが望ましい。
【0029】Cr:Crは、炭酸ガスに対する耐食性を
高める元素である。この効果を得るためには10%以上
が必要である。一方、15%を超える過剰のCrは、素
材コストの上昇を招いて経済性が損なわれる。また、フ
ェライト相の析出を助長し、母相中の有効Cr量を低
め、かつフェライト自身が軟質であるためにSSCの起
点となる。このため、Cr含有量は10〜15%とし
た。望ましくは、11〜14%である。
【0030】Al:Alは、添加しなくてもよいが、他
の脱酸剤を用いない場合には、少なくとも0.005%
程度含有させるのがよい。しかし、0.1%を超えて含
有させると、粗大なAl系介在物が多くなって耐SSC
性が低下する。このため、添加する場合のAl含有量の
上限を0.1%とした。なお、本明細書でいうAlと
は、いわゆるsol.Al(酸可溶Al)のことであ
る。
【0031】Ti:Tiは、添加しなくてもよいが、添
加すれば鋼中の不純物であるNをTiNとして固定する
効果がある。添加する場合は、0.01%以上が望まし
い。TiはNを固定し、さらに炭化物となってCをトラ
ップし、溶接後のHAZの硬化を抑制する。しかし、
0.75%を超えて含有させると、加工性を低下させた
り、Tiの炭窒化物自身がSSCの起点となる。このた
め、添加する場合のTi含有量の上限は0.75%がよ
い。
【0032】Ni:Niは、Mnと同様に、フェライト
相の析出を抑制し、マルテンサイト相の割合を高める効
果があるが、そのためには1%以上含有させる必要があ
る。しかし、8%を超えて含有させると、固溶強化によ
り成形性を低下させることがある。このため、Ni含有
量は1〜8%とした。
【0033】Mo:Moは、添加しなくてもよいが、添
加すれば耐孔食性を高め、湿潤硫化水素環境中での耐S
SC性を高める効果がある。添加する場合は、含有量を
1%以上とするのが望ましい。しかし、3%を超えて含
有させると、フェライト相の析出を助長し、母相中の有
効Mo量を低め、かつフェライト相自身が軟質相である
ためにSSCの起点となるほか、素材のコスト上昇を招
いて経済性を損う。このため、添加する場合のMo含有
量の上限は、3%がよい。
【0034】(2)金属組織 上記の化学組成を有する鋼板が良好な成形性を有するた
めには、YSが110ksi以下である必要性がある。
しかし、YSが110ksi以下でも成形性は、鋼中の
Mo含有量によって大きく左右されるだけでなく、鋼板
の板厚によっても左右される。このため、所望の成形性
を確保するためには、鋼中のMo含有量をMo(質量
%)、鋼板の板厚をt(mm)、オーステナイト相の体
積割合γ(%)としたとき、γは1%以上で、前記の
式または式を満たす必要がある。
【0035】これは、オーステナイト相が上記に規定す
る量だけ析出していないと、所望の成形性が確保でき
ず、溶接造管の際に良好な管状成形ができなくなるため
である。具体的には、強度の高い薄肉材(t≦10m
m)の場合には、成形時に熱延鋼板の突き合わせ部に前
述の縁波が生じ、正常な突き合わせ溶接ができない。ま
た、厚肉材(t>10mm)の場合には、一般に使用さ
れている成形装置では成形装置自体が破損するなどする
ために成形できない。
【0036】また、板厚に関係なくオーステナイト相の
体積割合γ(%)が1%未満では、縁波が生じやすく成
形性が劣るので、1%以上が必要である。
【0037】なお、上記のオーステナイト相の体積割合
γ(%)とは、次の方法によって求められる値である。
【0038】オーステナイト量の測定には、X線回折法
を用いる。その測定において、線源をCo−Kαとする
X線回折法により、鋼板の断面でマルテンサイト相の
{211}回折線とオーステナイト相の{220}回折
線の強度比を測定する。3断面で測定し、その測定値を
平均し、マルテンサイト相とオーステナイト相の合計値
に対するオーステナイト相の比率を求め体積割合とす
る。ただし、マルテンサイト相とオーステナイト相で
は、回折線の強度が異なり、装置により特性に誤差があ
るため、所定の相比に混合された市販の標準試料を用い
て強度補正をおこなうのがよい。
【0039】(3)熱処理 前記の式または式を満たす量のオーステナイト相を
析出させる製造法としては、上記の化学組成を有する熱
延鋼板に、600℃以上、前記の式で求められる温度
T℃以下の温度域で5分以上加熱保持する熱処理を施す
方法がある。加熱温度が600℃未満であると、温度が
低すぎるために、所望の量のオーステナイト相が析出し
ない。逆にT℃を超えると、析出したオーステナイト相
がその後の冷却によってマルテンサイト相に変態し、強
度が上昇し、成形性が低下する。
【0040】なお、加熱温度の上限を下記の式で求め
られる値T(℃)としたのは、Mo含有量が多いほど焼
きが入りやすく、加熱温度の上限がMo含有量によって
変化するからである。
【0041】また、保持時間が5分未満であると、均一
な熱処理ができず、オーステナイト相が十分に析出しな
い場合がある。なお、保持時間にその上限はなく、30
〜60分程度の焼戻し処理に相当する熱処理から、20
〜30時間の焼鈍など、目的に応じて施せばよい。
【0042】加熱は、特に一定の温度で保持して行う必
要はなく、上記の温度範囲内であれば、連続的または段
階的に変化させてもかまわない。また、熱処理後の冷却
方法についても特に制限はなく、水冷、油冷、空冷、放
冷など、所望の強度が得られる冷却方法を採用すればよ
い。ただし、コストの観点からは、炉冷または放冷とす
るのが好ましい。
【0043】上記の熱処理は、熱延後にオフラインで施
してよいし、熱延後、巻き取り過程で連続的にコイルの
保有熱を利用して上記の温度域で5分以上保持すること
でおこなってもよい。また、炭化物や金属間化合物を固
溶させる目的で、900℃以上の温度で保持後水冷する
溶体化熱処理を実施した後、焼戻しの熱処理として上記
の熱処理を施してもよい。要するに、本発明で定める熱
処理を施す前の鋼板の熱処理履歴は問わない。
【0044】また更に、900℃以上の温度で保持後、
炉冷などの方法で徐冷して、徐冷中に上記の温度域で5
分以上保持する焼きならし熱処理であってもよい。結果
的に、上記の温度域で5分以上保持すればよい。それに
よって、上記の式または式を満たす量のオーステナ
イト相を析出させることができる。
【0045】上記の本発明になるマルテンサイト系ステ
ンレス熱延鋼板は、特に溶接管の素材として好適であ
る。溶接管の製造方法については、特に制限はなく、溶
接部の性能の保証される溶接方法であればいかなる方法
でもよい。例えば、GTAW法に代表されるアーク溶接
法を用いてもよいし、造管コストを低減する観点からは
ERW法を用いてもよい。また、溶接部の品質確保と低
コストの高速溶接を実現する方法として、レーザ溶接法
を用いてもよい。
【0046】いずれの方法でも、熱延鋼板を成形ロール
群などの成形装置により管状に成形し、鋼板の両エッヂ
部をスクイズロールなどの手段で突き合わせ、この突き
合わせ部を接合する手法を採る。造管速度向上のため、
電縫溶接法で用いられている局部加熱可能な管状の誘導
加熱コイルまたはコンタクトチップを用いた高周波加熱
手段により予熱してから造管溶接を行ってもよい。
【0047】また、溶接後に溶接部の組織回復を目的と
して後熱処理を施してもよい。その方法は、高周波加熱
手段により溶接部近傍を局部加熱する方法であってもよ
いし、造管溶接した管全体をバッチ式の炉や連続式の炉
で熱処理する方法であってもよい。
【0048】
【実施例】表1に示す化学組成を有する20種類のマル
テンサイト系ステンレス鋼からなる鋼片を準備した。
【0049】
【表1】
【0050】これらの素材を、1250℃に加熱後、熱
間圧延して表2および表3に示す種々の板厚(6.5〜
15.0mm)の熱延鋼板にした。これらの鋼板に表
2,3に示す種々の条件で熱処理を施し、得られた鋼板
のオーステナイト相の体積割合γ(%)を調べた。その
後、これらの鋼板を溶接管とし、成形性を調べた。な
お、オーステナイト相の体積割合γ(%)は、前述した
方法によって求めた。
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】また、得られた溶接鋼管の軸長方向から、
厚さ2mm、幅10mm、長さ75mmの応力腐食試験
片を採取し、下記条件でSSC試験に供し、その耐食
性、すなわち耐SSC性を調べた。
【0054】歪み制御方法:定歪み法、 付加応力:素材鋼のYSの値、 試験溶液:0.001〜0.01MPaのH2Sを含むCO2飽和5%
NaCl水溶液、 pH :3.5〜4.5(酢酸−酢酸ナトリウム添加
により調整)、 浸漬時間:336時間。
【0055】ただし、硫化水素の分圧が高く、pHが低
いほど腐食環境としては厳しく、必要とされる耐SSC
性は、素材のMo含有量によって異なる。このため、鋼
中のMo含有量が0.7%未満のものは下記(a)、
0.7〜1.2%未満のものは(b)、1.2〜2%未
満ものは(c)、2%以上のものは(d)でそれぞれ試
験した。
【0056】 (a)0.01atmH2S−pH4.5、 (b)0.01atmH2S−pH4、 (c)0.1 atmH2S−pH4、 (d)0.1 atmH2S−pH3.5。
【0057】なお、上記のMo含有量に応じた(a)〜
(d)の各条件は、マルテンサイト系ステンレス鋼の耐
SSC性の良否判定に通常用いられている条件である。
【0058】成形性の評価は、成形時に縁波の発生や、
未溶着部の発生が認められなかったものを良好「○」、
認められたものを不芳「×」とした。耐食性の評価は、
割れの発生が認められなかったものを耐SSC性が良好
「○」、認められたものを耐SSC性が不芳「×」とし
た。
【0059】これらの結果を、表2と表3に併せて示し
た。表2と表3から明らかなように、本発明で規定する
化学組成を有するマルテンサイト系ステンレス鋼を素材
とし、かつ本発明で規定する熱処理条件で製造された本
発明例の熱延鋼板(試番1〜28)は、オーステナイト
相の体積割合γが本発明で規定する量を満し、かつYS
が110ksi以下であり、溶接造管時における成形性
が良好で、かつ耐SSC性も良好であった。
【0060】これに対し、化学組成は本発明で規定する
範囲内であるが、熱処理条件が、600℃以上、下記の
式で求められる温度T℃以下の温度域で5分以上加熱
保持する熱延鋼板(試番29〜40)のうち、試番29
〜34の熱延鋼板は、高強度化の抑制が不十分で、YS
が110ksi超であったのに加えて、一部のものはオ
ーステナイト相の析出量が不十分であったために、耐食
性および溶接造管時における成形性ともよくなかった。 T=900−50×Mo・・・・・・ ここで、Moは鋼中のMo含有量(質量%)とする。
【0061】また、試番35〜40は、高強度化の抑制
が十分で、YSが110ksi未満であったために耐食
性は良好であったが、いずれもオーステナイト相の析出
量が不十分であったために、溶接造管時における成形性
がよくなかった。
【0062】さらに、熱処理条件は上記に示す良好な範
囲内であるが、化学組成が本発明で規定する範囲を外れ
る比較例の鋼板(試番41〜52)は、YSとオーステ
ナイト相の体積割合γは本発明で規定する条件を満たす
ものの、素材鋼自体の成形性または耐食性が劣るため
に、いずれも溶接造管時における成形性または耐SSC
性のいずれか一方がよくなかった。
【0063】
【発明の効果】本発明のマルテンサイト系ステンレス熱
延鋼板は、成形性と耐食性に優れるので、これを用いて
溶接鋼管を製造すると、溶接部品質が良好で、しかも耐
食性に優れた溶接鋼管を高歩留まりで製造できる。ま
た、既存の溶接管設備では、成形装置が破損するなどの
理由から製造できなかった厚肉の溶接鋼管の製造が可能
である。また、熱延鋼板の製造方法は、熱延後の鋼板に
所定の熱処理を施すだけなので、安価に製造することが
できる。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】質量%で、C:0.05%以下、Si:1
    %以下、Mn:5%以下、P:0.04%以下、S:
    0.01%以下、Cr:10〜15%、Mo:0〜3
    %、Al:0〜0.1%、Ti:0〜0.75%、N
    i:1〜8%、残部はFeおよび不純物からなる化学組
    成を有し、降伏応力(YS)が110ksi(758M
    Pa)以下、オーステナイト相の体積割合をγ(%)と
    表示したとき、γは1%以上で、かつ、下記の式また
    は式を満たす低炭素マルテンサイト系ステンレス熱延
    鋼板。 t≦10の時 γ≧2×Mo ・・・・・・・・・・ t>10の時 γ≧2×Mo+(t−10) ・・・ ここで、tは鋼板の板厚(mm)、Moは鋼中のMo含
    有量(質量%)である。
  2. 【請求項2】質量%で、C:0.05%以下、Si:1
    %以下、Mn:5%以下、P:0.04%以下、S:
    0.01%以下、Cr:10〜15%、Mo:0〜3
    %、Al:0〜0.1%、Ti:0〜0.75%、N
    i:1〜8%、残部はFeおよび不純物からなる化学組
    成を有する鋼板に、600℃以上、下記の式で求めら
    れる温度T℃以下の温度域で5分以上加熱保持する熱処
    理を施す低炭素マルテンサイト系ステンレス熱延鋼板の
    製造方法。 T=900−50×Mo・・・・・・ ここで、Moは鋼中のMo含有量(質量%)とする。
  3. 【請求項3】請求項1に記載の低炭素マルテンサイト系
    ステンレス熱延鋼板を管状に成形した後、その突き合わ
    せ部が溶接法により接合されている低炭素マルテンサイ
    ト系ステンレス溶接鋼管。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2002097553A (ja) * 2000-09-20 2002-04-02 Nippon Steel Corp 耐火性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼材
CN101748344B (zh) * 2008-12-09 2011-11-23 山东远大模具材料有限公司 铁路轨道焊接钢及制造工艺

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