JP2002096111A - 溶接部の延性に優れたMo含有高Cr高Niオーステナイト系ステンレス鋼管の製造方法 - Google Patents
溶接部の延性に優れたMo含有高Cr高Niオーステナイト系ステンレス鋼管の製造方法Info
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Abstract
高Niオーステナイト系ステンレス鋼について、溶接部
の延性を改善した溶接管および溶接部の延性改善方法を
提供する。 【構成】 質量%で、C:0.08%以下、Si:4.
0%以下、Mn:1.5%以下、P:0.05%以下、
S:0.005%以下、Cr:20〜30%、Ni:1
5〜45%、Mo:2〜10%、N:0.01〜0.3
%を含有し、さらに必要に応じて、Al:0.01〜
4.0%,Cu:0.01〜4.0%,La+Ce:
0.3%以下,B:0.05%以下のうち1種または2
種を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなるス
テンレス鋼管の製造工程において、造管溶接時に生成し
たシグマ相が消失するようなめ付け溶接を行うこと、望
ましくは、A=(溶接ビード/母材の材厚で定義される
ビード深さAの値が0.1以上となることを特徴とす
る、溶接部の延性に優れたMo含有高Cr高Niオース
テナイト系ステンレス鋼管およびその製造方法。
Description
焼却炉の熱交換器などの、主に耐食性、耐高温腐食性を
必要とされる用途に使用される高合金オーステナイトス
テンレス鋼の溶接管およびその製造方法に関する。
および産業廃棄物を対象とした焼却処理設備の熱交チュ
ーブなどの用途には、304系、316系のステンレス
鋼以上の高耐熱性、高耐食性が要求されるため、質量%
でCr濃度20%以上、Ni濃度15%以上、Mo濃度
2%以上のMo含有高Cr高Niオーステナイト系ステ
ンレス鋼が使用される。特に最近、エネルギー変換の高
効率化を目的として、焼却処理設備の熱交換器の使用温
度がより高温側へシフトする傾向にあり、より耐食性に
優れた高合金鋼が使用される傾向にある。
プとしてはプレート型やチューブ型等があるが、メンテ
ナンスが比較的容易なチューブ型熱交換器が一般的であ
る。熱交換器に用いられるステンレス鋼管の種類として
は鋳物やシームレス管等があるが、これらの管と比較し
て、溶接管はより低コストで製造できるというメリット
がある。
含有高Cr高Niオーステナイト系ステンレス鋼を用い
て溶接造管を行った場合、造管ビード部の延性が低下す
ることがあり、そのため拡管や偏平など、加工を要する
用途や内圧のかかる用途への適用が限定されていた。
を改善した、Mo含有高Cr高Niオーステナイト系ス
テンレス鋼管およびその製造方法を提供することを目的
とする。
C:0.08%以下、Si:4.0%以下、Mn:1.
5%以下、P:0.05%以下、S:0.005%以下
Cr:20〜30%、Ni:15〜45%、Mo: 2
〜10%N:0.01〜0.3%を含有し、さらに必要
に応じて、Al:0.01〜4.0%,Cu:0.01
〜4.0%,La+Ce:0.3%以下,B:0.05
%以下のうち1種または2種を含み、残部がFeおよび
不可避的不純物からなるステンレス鋼管の製造工程にお
いて、造管溶接時に生成したシグマ相が消失するように
なめ付け溶接を施すことよって達成できる。シグマ相を
消失させるに十分な具体的条件としては、A=(溶接ビ
ード深さ/母材の板厚)で定義されるビード深さ比Aの
値が0.1以上となるようにすると良い。
5%以上、Mo濃度2%以上のMo含有高Cr高Niオ
ーステナイト系ステンレス鋼の溶接管においては、偏平
や拡管などの非常に厳しい加工を加えると、溶接ビード
部中央部より割れが発生することがある。本発明者らの
研究によれば、溶接入熱が大きい場合には溶接ビード中
央部、すなわち溶接の最終凝固部にシグマ相が生成する
ため、非常に厳しい加工、例えば、密着するまでの偏平
や1.5倍以上の拡管などの際、シグマ相を起点として
延性的な割れが発生することがわかった。
は、溶接部の最終凝固部に発生するシグマ相の一部もし
くは全部を消失させる必要がある。シグマ相を消失させ
る方法について鋭意検討を行った結果、造管後、造管ビ
ード部になめ付け溶接(以下、化粧溶接と称す)を行う
ことにより、最終凝固部のシグマ相の一部もしくは全部
が再度溶解し、再凝固する際に消失することがわかっ
た。さらに、母材の板厚と化粧溶接ビード深さの比をA
=(化粧溶接ビード深さ/母材の板厚)と定義すると、
Aの値が0.1以上であれば、シグマ相の一部もしくは
全部が消失し、溶接部の延性が改善されることを明らか
にし、本発明に至った。
溶接法を用いてもよい。化粧溶接の方法はTIG溶接が
一般的であるが、MIG溶接、プラズマ溶接およびレー
ザー溶接など、他の溶接方法においても同様な効果を得
ることが出来る。また、化粧溶接は、造管時の溶接作業
直後に同一ラインで行うのが最も効率的であるが、造管
を行ったのちの、焼鈍後、酸洗後、もしくは製品材に対
して行っても同様な効果が得られる。さらに、化粧溶接
はなめ付けが一般的であるが、溶接芯線を使用した場合
でも同様の効果が得られる。この溶接方法を適用する合
金元素の成分範囲および作用について次に説明する。
ト相の安定化に有効である。反面、高温で粒界にCr炭
化物を生成してその近傍にCr欠乏層を形成し、粒界侵
食の原因となる。これらを考慮して、C含有量は0.0
8質量%以下とした。
テンレス鋼表面に濃化して、耐食性または耐熱性に優れ
た皮膜を形成するため、その添加量は多い方が好まし
い。しかし、Si含有量が4.0質量%を超えると高温
域でのシグマ脆化感受性の増大や熱間加工性の低下を招
くため、Si含有量は4.0質量%以下とするのがよ
い。
ステナイト形成元素である。しかし、Mnの過剰添加は
環境によっては皮膜中に濃化し、耐食性または耐熱性に
悪影響を及ぼす場合があり、上限を1.5質量%とし
た。
の粒界に偏析し、溶融塩による腐食や粒界侵食を促進さ
せる。したがって、その含有量は低いほど好ましく、本
発明においてはその値を0.05質量%以下とした。
ーステナイト粒界に偏析して鋼の熱間加工性や溶接高温
割れ性を低下させる。これらを考慮すると、Mo含有高
Cr高Niオーステナイト系ステンレス鋼においてはS
含有量を0.005質量%以下に抑える必要がある。
り、海水環境、高温腐食環境では20質量%以上の含有
量を確保する必要がある。しかし、Cr含有量が30質
量%を超えると鋼の加工性が低下するとともに、シグマ
脆化感受性が著しく増大する。また、オーステナイト相
を維持するうえで高価なNiを多量に添加する必要が生
じる。したがって、Cr含有量は20〜30質量%とし
た。
却炉熱交換器などの過酷な環境においては十分な耐食
性、耐SCC性および耐高温腐食性が得られない。しか
し、多量の添加はコスト上昇を招くので、Niの上限は
45質量%とした。
改善するために添加される。高温強度が要求される部位
には、0.01質量%以上の添加が必要である。一方、
Nを過剰に添加すると耐高温酸化性や熱間加工性を低下
させることがあるので、上限を0.3質量%以下とし
た。
耐食性、耐高温腐食性を著しく改善する。しかし、多量
の添加は高温域でのシグマ脆化感受性を増大させ、コス
トアップにつながるため、Mo含有量の上限は10質量
%とした。
にAl2O3皮膜を生成させることにより、耐高温腐食
環境を改善する。従って、必要に応じて0.01〜4.
0質量%の範囲内で添加することができる。
性を大幅に改善する。従って、用途に応じて0.01〜
4.0質量%の範囲内で添加することが出来る。
Cr高Niオーステナイト系ステンレスの弱点である熱
間加工性を改善する元素であり、必要に応じてLa+C
e:0.3質量%以下,B:0.05質量%以下の添加
する事が出来る。なお、La、Ceの添加方法について
は純La、Ceを投入しても構わないが、ミッシュメタ
ルとして他のREM金属と同時に添加しても同様の効果
が得られるため、特に規定しない。
る耐食性、耐熱性および耐高温腐食性に悪影響を及ぼす
鋼中不純物元素に対して、その影響を低減させる元素の
添加、高温強度などの機械的特性が必要になる部位など
で、高温強度を高める目的で添加される元素の添加につ
いては制限されない。例えば、鋼中のSを固定するCa
は0.05質量%、鋼中のCやNを固定するTi,V,
Zr,Nb,Hf,Ta,W,Reなどは0.5質量%
を上限として添加することができる。
1のS−1〜6のMo含有高Cr高Niオーステナイト
系ステンレス鋼はいずれも本発明方法の成分の範疇に含
まれる。S−7、8は本発明の範囲に含まれない比較鋼
である。これらの鋼を溶製し、圧延、焼鈍を繰り返して
板厚2.5mmのステンレス冷延鋼帯を作製した後、管
サイズに合わせてスリットした。造管速度を1.8m/
minに固定し、造管速度1m/min当たりの入熱量
180〜300kwの条件でTIG溶接により外径4
8.6mmに造管した後、溶接ビード部中央にTIGな
め付けによる化粧溶接を行った。化粧溶接後の造管材の
偏平試験を行い、溶接ビード部に割れが発生した時点で
偏平試験を終了し、偏平高さを測定した。A=(化粧溶
接ビード深さ/母材の板厚)で定義される化粧溶接ビー
ド深さの比Aは、化粧溶接後に溶接部の断面を王水エッ
チング後、顕微鏡観察により測定した。なお、焼鈍の影
響を検討するため、S−3鋼では、化粧溶接後に112
0℃×均熱1.5分の条件で焼鈍を行った後、酸洗でス
ケール除去してから偏平試験を行い評価した。それらの
結果を図1および表2に示す。
す。本発明の範囲であるAの値が0.1以上であれば、
シグマ相の一部もしくは全部が消失し、偏平高さが15
mm以下に改善された。それに対し、Aの値が0.1未
満である場合、偏平高さは母材と同程度であった。ま
た、造管まま材および焼鈍・酸洗後いずれの材料におい
ても、溶接部の延性に関しては同じ傾向であった。表2
には、鋼成分を種々変化させて化粧溶接条件と延性の関
係を検討した結果を示す。S−1〜6は本発明の成分範
囲の鋼である。S−1〜6のいずれも、本発明の範囲の
造管速度であれば偏平高さが15mm以下であり、良好
な延性が期待できるといえる。一方、S−7は本発明の
成分範囲よりもCr,Niが低く外れるものである。こ
れらの成分が低い場合は、本発明の方法によらなくても
十分な延性が確保できる。その反面、上述したように、
高温強度や耐食性に劣るため、海水環境や焼却炉環境な
どの過酷な環境への適用は困難である。S−8は本発明
の成分範囲よりもMoおよびSiが多く添加されている
鋼である。このようなシグマ脆化感受性が高い合金は、
本発明の造管方法を用いてもシグマ相を抑制できず、延
性は改善されない。
r高Niオーステナイト系ステンレス鋼について、板厚
4.5mmのステンレス鋼帯を作製し、管サイズに合わ
せてスリットした。造管速度を1.2m/minに固定
し、造管速度1m/min当たりの入熱量180〜30
0kwの条件で、TIG溶接により外径76.3mmに
造管した後、溶接ビード部中央にTIGなめ付けによる
化粧溶接を行った。実施例1と同様の方法で化粧溶接後
の造管材の偏平試験を行い、化粧溶接ビード深さの比A
を測定した。その結果を表3に示す。
るように、板厚および外径が変化した場合においても、
Aの値が0.1以上であれば、シグマ相の一部もしくは
全部が消失し、偏平高さが20mm以下に改善された。
それに対し、Aの値が0.1未満である場合、偏平高さ
は造管まま材と同程度であった。
ナイト系ステンレス鋼管は、海水環境や焼却炉の高温腐
食環境など、316レベルのステンレス鋼では耐食性・
耐熱性・耐高温腐食性などの点で使用できない環境にお
いて、熱交換器などの用途で使用する。溶接造管材は、
鋳造材やシームレス鋼管などと比較して、同程度の性能
ながら安価に製造できるという利点がある。本発明によ
り、拡管や偏平、曲げなどの加工の自由度が向上し、よ
り複雑な加工を要する部位において、Mo含有高Cr高
Niオーステナイト系ステンレス鋼の造管材への適用が
可能となる。
材の板厚)で定義される溶接ビード深さの比Aと、溶接
部の偏平高さとの関係を表すグラフである。
Claims (3)
- 【請求項1】 質量%で、 C:0.08%以下、 Si:4.0%以下、 Mn:1.5%以下、 P:0.05%以下、 S:0.005%以下、 Cr:20〜30%、 Ni:15〜45%、 Mo: 2〜10% N:0.01〜0.3%を含有し、残部がFeおよび不
可避的不純物からなるステンレス鋼管の製造工程におい
て、造管溶接時に生成したシグマ相が消失するようにな
め付け溶接を施すことを特徴とする、溶接部の延性に優
れたMo含有高Cr高Niオーステナイト系ステンレス
鋼管の製造方法。 - 【請求項2】 請求鋼1の成分に加え、Al:0.01
〜4.0%,Cu:0.01〜4.0%,La+Ce:
0.3%以下,B:0.05%以下のうち1種または2
種以上を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からな
るステンレス鋼管の製造工程において、造管溶接時に生
成したシグマ相が消失するようになめ付け溶接を施すこ
とを特徴とする、溶接部の延性に優れたMo含有高Cr
高Niオーステナイト系ステンレス鋼管の製造方法。 - 【請求項3】 A=(溶接ビード深さ/母材の板厚)で
定義されるビード深さ比Aの値が0.1以上となるよう
になめ付け溶接を施すことを特徴とする、請求項1また
は2に記載のMo含有高Cr高Niオーステナイト系ス
テンレス鋼管の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000282816A JP2002096111A (ja) | 2000-09-19 | 2000-09-19 | 溶接部の延性に優れたMo含有高Cr高Niオーステナイト系ステンレス鋼管の製造方法 |
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JP2000282816A JP2002096111A (ja) | 2000-09-19 | 2000-09-19 | 溶接部の延性に優れたMo含有高Cr高Niオーステナイト系ステンレス鋼管の製造方法 |
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