JP2002091041A - 電子写真用光受容部材および電子写真装置 - Google Patents

電子写真用光受容部材および電子写真装置

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JP2002091041A
JP2002091041A JP2000285571A JP2000285571A JP2002091041A JP 2002091041 A JP2002091041 A JP 2002091041A JP 2000285571 A JP2000285571 A JP 2000285571A JP 2000285571 A JP2000285571 A JP 2000285571A JP 2002091041 A JP2002091041 A JP 2002091041A
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layer
atoms
electrophotographic
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JP2000285571A
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English (en)
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Makoto Aoki
誠 青木
Nobufumi Tsuchida
伸史 土田
Satoshi Furushima
聡 古島
Hiroaki Niino
博明 新納
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Original Assignee
Canon Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】a−Si系光受容層を有する電子写真用光受容
部材において、特にデジタル用露光光源を用いた際に十
分な帯電能および感度を実現し、残留電位および光メモ
リーを低減し、高いドット再現性を実現する。 【解決手段】少なくとも、基体101と、ハロゲン原子
を含有するアモルファスシリコン(a−Si,X)系の
光導電層103と、表面層104とが積層されてなる電
子写真用光受容部材において、ハロゲン原子の含有量
を、基体側から表面側に向けて減少させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光(ここでは広義の
光であって、紫外線、可視光線、赤外線、X線、γ線な
どを意味する)の様な電磁波に対して感受性のある光受
容部材に関する。
【0002】
【従来の技術】像形成分野において、光受容部材におけ
る光受容層を形成する光導電材料としては、高感度で、
SN比[光電流(Ip)/暗電流(Id)]が高く、照
射する電磁波のスペクトル特性に適合した吸収スペクト
ルを有すること、光応答性が早く、所望の暗抵抗値を有
すること、使用時において人体に対して無害であること
等の特性が要求される。特に、事務機としてオフィスで
使用される電子写真装置内に組み込まれる光受容部材の
場合には、上記の使用時における無公害性は重要な点で
ある。
【0003】この様な点に優れた性質を示す光導電材料
にアモルファスシリコン(a−Siとも表記する)、特
に水素化アモルファスシリコン(a−Si:Hとも表記
する)があり、例えば、特公昭60−35059号公報
には電子写真用光受容部材としての応用が記載されてい
る。
【0004】このような光受容部材は、一般的には、導
電性基体を50℃〜350℃に加熱し、この基体上に真
空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング
法、熱CVD法、光CVD法、プラズマCVD法等の成
膜法によりa−Siからなる光導電層を形成する。なか
でもプラズマCVD法、すなわち、原料ガスを高周波あ
るいはマイクロ波グロー放電によって分解し、基体上に
a−Si堆積膜を形成する方法が好適なものとして実用
に付されている。
【0005】また、特開平5−134441号公報に
は、電子写真用光受容部材の形成方法において、光導電
層の全層に炭素、水素、フッ素、酸素等を含有させ、光
導電層の堆積速度を基体側で速く、表面側で遅くするよ
うにし、フッ素原子等を膜厚方向に不均一に分布させる
ことで、画質を向上させる技術が開示されている。
【0006】更に、特公平2−13299号公報には、
電子写真用光導電部材において、その中央部で水素濃度
が極大に、ハロゲン濃度が極小になり、その端部におい
て水素濃度が極小になり、ハロゲン濃度が極大になるよ
うにし、使用環境の影響を受けず高画質な画像が得られ
る技術が開示されている。
【0007】しかしながら、ハロゲン原子を含有するア
モルファスシリコン(a−Si,Xとも記載する)系の
光導電層に関する上記公報の内容を含む従来技術におい
て、ハロゲン原子含有量を基体側から表面側に向けて減
少させることや、その分布形状を指数関数的にすること
等は、詳細には検討されてこなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】いずれにせよ、以上で
述べた様な技術の進展により、電子写真用光受容部材の
電気的、光学的、光導電的特性及び使用環境特性が向上
し、それに伴って画像品質も向上してきた。
【0009】しかしながら、電子写真装置への高画質、
高速化、高耐久化の要求は急速に高まっており、電子写
真用光受容部材においては電気的特性や光導電特性の更
なる向上とともに、帯電能、感度を維持しつつあらゆる
環境下で大幅に性能を延ばすことが求められている。
【0010】このような状況下において、前述した従来
技術により上記課題についてある程度の特性向上が可能
になってはきたが、更なる帯電能や画像品質の向上に関
しては未だ充分とはいえない。特にアモルファスシリコ
ン系光受容部材の更なる高画質化への課題として、帯電
能および感度の向上や、周囲温度の変化による電子写真
特性の変動あるいはゴーストに代表される光メモリーを
低減することがいっそう求められるようになってきた。
【0011】したがって、電子写真用光受容部材を設計
する際に、上記したような問題が解決されるように電子
写真用光受容部材の層構成、各層の化学的組成など総合
的な観点からの改良を図るとともに、a−Si材料その
ものの一段の特性改良を図ることが必要とされている。
【0012】一方、オフィスや一般家庭へのコンピュー
ターの普及が進み、電子写真装置も従来の複写機として
だけでなく、ファクシミリやプリンターの役目を担うた
めにデジタル化することが求められるようになってき
た。また、オフィス等におけるドキュメントの多様化、
高品位化が進む中でデジタル複写機の画質に対する要求
はますます高まってきている。
【0013】ところで、デジタル露光光源として用いら
れる半導体レーザーやLEDは、発光強度や価格の点か
ら赤色可視光領域から近赤外領域までの比較的長波長の
ものが主流である。そのため、従来のハロゲン光を用い
たアナログ機には見られなかった特性上の課題について
改善することが求められるようになった。即ち、ハロゲ
ン光に比べて光受容部材への光の侵入深さが大きく、光
が及ぼす影響が大きくなることにより、デジタル機に特
有の課題が浮上することとなった。特に、周囲の温度変
化による帯電能、感度(明部位での電位)等の電子写真特
性の変動や、ゴーストに代表される光メモリー、デジタ
ルに固有のドット再現性などが注目されるようになって
きた。
【0014】また、電子写真装置が高速化するにつれ帯
電能への要求はますます高まっている。そこで、高い帯
電能を維持しつつ、感度やゴースト、ドット再現性な
ど、上記に挙げた電子写真諸特性を更に向上させ、高次
元で両立させなければならないという問題もあった。
【0015】本発明は、a−Siで構成された光受容層
を有する電子写真用光受容部材における諸問題を解決す
ることを目的とするものである。
【0016】すなわち、本発明の主たる目的は、特にデ
ジタル用露光光源を用いた際に充分な帯電能を確保する
とともに感度を向上し、特性の温度変化の低減およびメ
モリ光メモリーの低減、ドット再現性の向上を全て高次
元で両立して画像品質を飛躍的に向上させた、シリコン
原子を母体とした非単結晶材料で構成された光受容層を
有する光受容部材、及びそれを用いた電子写真装置を提
供することにある。
【0017】特に、電気的、光学的、光導電的特性が使
用環境にほとんど依存することなく実質的に常時安定し
ており、耐光疲労に優れ、繰り返し使用に際しては劣化
現象を起こさず耐久性、耐湿性に優れ、残留電位がほと
んど観測されず、更に画像品質の良好な、シリコン原子
を母体とした非単結晶材料で構成された光受容層を有す
る光受容部材、およびそれを最適に機能させうる電子写
真装置を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明によれば、少なくとも、基体と、ハロゲン原子
を含有するアモルファスシリコン(a−Si,X)系の
光導電層と、表面層とが積層されてなる電子写真用光受
容部材において、該ハロゲン原子の含有量は、基体側か
ら表面側に向けて減少していることを特徴とする電子写
真用光受容部材が提供される。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明者らは、光導電層のキャリ
アの挙動に着目し、キャリアの生成、走行、局在準位へ
のトラップなどを調べ鋭意検討した結果、a−Si系の
材料にハロゲン原子を極微量添加し、その添加量を光導
電層の厚さ方向において表面側に漸減させることで、上
記の課題を解決できることを見出した。
【0020】すなわち、a−Si,X系の光導電層を有
する光受容部材において、その層構造を特定化するよう
に設計されて作製された光受容部材は、デジタル複写機
用の光受容部材として著しく優れた特性を示すばかりで
なく、如何なる環境下での使用においても常に最適な性
能を発揮でき、従来の光受容部材と比べ優れていること
を見いだした。
【0021】本発明者らは、デジタル露光系を用いた場
合に固有の、温度による電子写真特性変動、光メモリ
ー、ドットの再現性(解像度)等について、様々な堆積
条件によって作製した光受容部材を用いて検討を行い、
光導電層中に微量のハロゲン元素を添加し、このハロゲ
ン元素の含有パターンを、基体側から表面側へ漸減する
ように適切に制御することにより、デジタル露光系を用
いた電子写真プロセスにおいて良好な電子写真特性を発
揮する光受容部材が得られることを見いだし本発明を完
成するに至った。
【0022】具体的には、本発明の電子写真用光受容部
材を用いれば、波長550nm以上700nm以下の光
を潜像形成用光源として使用でき、この様な光源として
は、レーザー及びLED等を例示することができる。
【0023】特に、ハロゲン元素の含有パターンを、表
面層に向かって指数関数的に漸減させた場合に、本発明
の効果が最大限に得られることが分かった。
【0024】具体的には、ハロゲン原子の単位体積当り
の原子数CX(原子数/cm3)が、下記の関係式(1)
で近似できる指数関数分布に従うことが好ましい; log(CX) = at + b (1) 但し、tは光導電層および表面層の界面からの距離(μ
m)であり、aは0.2以下の正の実数であり、bは1
5より大きく19より小さい実数である。また、関係式
(1)で近似できるとは、位置tにおける単位体積当り
のハロゲン原子数CXが、好ましくは相関係数0.5以
上、より好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.7
以上、最も好ましくは0.8以上で、関係式(1)を満
足することを意味する。
【0025】なお、ハロゲン原子の単位体積当りの原子
数CXは、2次イオン質量分析法(SIMS)等によっ
て測定することができる。
【0026】また、アモルファスシリコン(a−Si)
系とは、Siを母体とする非単結晶材料を意味してお
り、a−Si:Hは水素化アモルファスシリコンを示し
ている。また、必要に応じては、a−Si:Hにハロゲ
ン原子を添加することもでき、この場合は、a−Si:
H,X(Xはハロゲン原子を示す)とも記載する。
【0027】上記の様な光導電層により、高速なプロセ
ススピードにおいて露光光源の波長が短波長から長波長
にわたって十分な帯電能を確保するとともに感度を向上
し、残留電位および光メモリーを低減し、ドット再現性
を高次元で成立し、画像品質の飛躍的な向上を実現でき
る。
【0028】以上の理由は明らかではないが、以下の様
に推察している。
【0029】ハロゲン元素は水素と同様に、a−Siの
未結合手(ダングリングボンド)を終端して、バンドギ
ャップ中の準位を低減する働きを持っている。しかしハ
ロゲンは水素に比べて原子半径が大きく、また電気陰性
度が大きいという特徴を持っているため、電気特性に種
々の影響をもたらす。特に、ハロゲン元素を適度に添加
しながら注意深く膜堆積を行うことで、様々な特性の改
善が実現されることも一般に知られている。その特性改
善の一つとして、本発明者らはハロゲン元素の微量添加
が、キャリアの走行性を向上させる効果をもつことを見
出した。
【0030】ところで、光受容部材での光生成キャリア
の挙動について考えると、従来のアナログ露光系では光
生成キャリアは極狭い範囲に限定され、電解によってド
リフトするキャリアは1種類であるために特性向上をさ
せやすかった。一方、デジタル露光系では光生成キャリ
アの生成が広範囲に及ぶため、電子と正孔が電界によっ
て混在してドリフトし、その挙動もより複雑化し、最適
化も困難になる。例えば正帯電の場合、正孔に対する特
性向上に加え、電子に対する特性向上を同時に行わなけ
ればならない。この際、例えば伝導型制御元素(例えば
周期律表第13族元素など)によって物性(例えば走行
性)を制御しようとすると、どちらか一方のキャリアの
みの特性向上が主眼となってしまうことが多く、電子と
正孔の両者の走行性向上は実質的に難しかった。
【0031】そこで、このハロゲン微量添加による効果
を利用し、デジタル露光系のように光の影響が広範囲に
及ぶような状況において、電子と正孔の両者に対する特
性を向上させるように設計を行った。
【0032】具体的には、まず光生成キャリアが最も大
量に発生する光導電層の最上部(表面層側)において
は、キャリア生成効率を最大にする必要がある一方、キ
ャリアの走行性はさほど要求されない。このような要求
に対してはハロゲンの添加効果は少なく、あまり添加す
るとむしろ逆効果になることもある。
【0033】次に光が到達する、ある程度深い領域に関
しては、キャリア生成効率と走行性とのバランスを取る
必要がある。このような領域では、ある程度ハロゲンを
添加して走行性を向上させるようにした方が望ましい。
また、ハロゲン原子の分布に関しては、急激な濃度変化
をさせるとキャリアの走行に不連続が生じたり、最悪の
場合にはクラック、剥離などが生じることがあり好まし
くない。よって、ハロゲンの添加は連続的に変化させた
方が望ましく、基体側から表面側へと徐々に漸減してい
る必要がある。
【0034】また、光が到達しない深い領域(基体側)
に関しては、キャリアは1種類(正帯電なら正孔のみ)
であるため、伝導型制御元素(正帯電なら周期律表第1
3族元素)を添加してキャリアの走行性を最大限に引き
出せばよいが、あまり伝導型制御元素を添加しすぎると
帯電能の低下、感度のムラ増大、帯電能の温度変動に伴
う変化(所謂温度特性)が大きくなってしまうことがあ
り好ましくない。この場合にはハロゲン元素を表面側に
比べて高濃度に添加することで上記のような問題がなく
走行性を改善させることが可能となる。加えて、ハロゲ
ン添加は帯電能の向上にも寄与することが出来る。この
帯電能向上は暗減衰が小さくなるためであると考えてい
る。
【0035】このように、ハロゲン元素を適度に添加
し、且つ基体側から表面側に漸減するように添加するこ
とで、デジタル露光系を用いた電子写真装置において、
キャリアの生成と走行のバランスが取れ、しかも電子と
正孔の両者に対する特性を同時に良好にすることが可能
となる。このようにキャリアの生成および走行を最適化
することによって、これまで非常に難しかった、高帯電
能とメモリ、感度、ドット再現性などの特性向上の同時
実現が可能となった。
【0036】更に、このハロゲン元素の分布形態を最適
化し、ハロゲン元素の含有パターンを指数関数的に分布
させた場合、本発明の効果が最大限に得られるが、この
理由については、キャリア生成効率、キャリアのモビリ
ティー(走行性)、バンド構成、抵抗値等が最適な状態
となるためであると考えている。
【0037】加えて、本発明では、ハロゲン元素を除く
ベースとなる光導電層のバンドギャップ、アーバックエ
ネルギー、水素含有量、伝導性制御元素の分布形態など
は自由に選択してよい。この事から、例えば露光波長の
違いに対する最適化の手法など、従来の技術において確
立されている特性向上の方法と適切に組み合わせること
で、更に特性向上が期待できる。
【0038】本発明は上記構成によって、帯電能および
感度の向上と温度特性ならびに光メモリーの低減、ドッ
ト再現性の向上とを高い次元で両立させ、前記した従来
技術における諸問題の全てを解決することができ、極め
て優れた電気的、光学的、光導電的特性、画像品質、耐
久性および使用環境性を示す光受容部材を得ることがで
きる。
【0039】以下、図面に従って本発明の電子写真用光
受容部材について詳細に説明する。
【0040】図1は、本発明の電子写真用光受容部材の
層構成を説明するための模式的構成図である。
【0041】図1(a)に示す電子写真用光受容部材1
00は、光受容部材用としての基体101の上に、光受
容層102が設けられている。この光受容層102は、
a−Si:H,X等の光導電性を有する光導電層103
と、a−SiC:H,X等の表面層104とで構成され
ている。
【0042】図1(b)に示す電子写真用光受容部材1
00は、光受容部材用としての基体101の上に、光受
容層102が設けられている。この光受容層102は、
a−Si:H,X等の光導電性を有する光導電層103
と、a−SiC:H,X等の表面層104とで構成され
ている。また、光導電層103は、基体101側から順
に第1の層領域111と第2の層領域112とからな
る。この場合、例えば、第1の層領域ではバンドギャッ
プが小さく、第2の層領域ではバンドギャップが大きく
なるように作製する等が可能である。この様にすること
により、更にデジタル露光系に最適化することもでき
る。
【0043】図1(c)に示す電子写真用光受容部材1
00は、光受容部材用としての基体101の上に、a−
Si系電荷注入阻止層105を設け、基体側からの電荷
注入を防止した例である。その上には、a−SiH,X
等からなり光導電性を有する光導電層103と、a−S
i系表面層104とが積層されている。
【0044】<基体>本発明において使用される基体と
しては、導電性でも電気絶縁性でも構わない。導電性基
体としては、Al、Cr、Mo、Au、In、Nb、T
e、V、Ti、Pt、Pd、Fc等の金属、およびこれ
らの合金、例えばステンレス等を挙げることができる。
【0045】また、電気絶縁性基体としては、ポリエス
テル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースア
セテート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチ
レン、ポリアミド等の合成樹脂のフィルムまたはシー
ト、ガラス、セラミック等を挙げることができる。これ
らの電気絶縁性基体の少なくとも光受容層を形成する側
の表面は、導電処理され使用される。
【0046】基体の形状は平滑表面または凹凸表面の円
筒状または無端ベルト状であることができ、その厚さ
は、所望通りの光受容部材を形成し得るように適宜決定
するが、光受容部材としての可撓性が要求される場合に
は、基体としての機能が充分発揮できる範囲内で可能な
限り薄くすることができる。しかしながら、基体は製造
上および取り扱い上、機械的強度等の点から通常は10
μm以上とされる。
【0047】<光導電層>基体上に形成され、光受容層
の一部を構成する光導電層は真空堆積膜形成方法によっ
て、所望性が得られるように適宜成膜パラメーターの数
値条件が設定されて作製される。具体的には、例えばグ
ロー放電法(低周波CVD法、高周波CVD法またはマ
イクロ波CVD法等の交流放電CVD法、あるいは直流
放電CVD法等)、スパッタリング法、真空蒸着法、イ
オンプレーティング法、光CVD法、熱CVD法などの
数々の薄膜堆積法によって形成することができる。これ
らの薄膜堆積法は、製造条件、設備資本投資下の負荷程
度、製造規模、作製される電子写真用光受容部材に所望
される特性等の要因によって適宜選択されて採用される
が、所望の特性を有する電子写真用光受容部材を製造す
るに当たっての条件の制御が比較的容易であることか
ら、高周波グロー放電法、特にRF帯の電源周波数を用
いた高周波グロー放電法が好適である。
【0048】グロー放電法によって光導電層を形成する
には、基本的にはシリコン原子(Si)を供給し得るS
i供給用の原料ガスと、ハロゲン原子(X)を供給し得
るX供給用の原料ガスと、必要に応じて水素原子(H)
を供給し得るH供給用の原料ガスとを、内部を減圧でき
る反応容器内に所望のガス状態で導入して、反応容器内
にグロー放電を生起させ、あらかじめ所定の位置に設置
されてある所定の基体上にa−Si:H,Xからなる層
を形成すればよい。
【0049】光導電層中のハロゲン原子、更に必要に応
じて添加される水素原子は、シリコン原子の未結合手を
補償し、層品質の向上、特に光導電性および電荷保持特
性を向上させる。
【0050】ハロゲン元素の分布形状は、基体側から表
面側へと漸減するように分布させる必要がある。この事
により、キャリア生成と走行のバランスが取れた好適な
特性向上が可能となる。ここでいう漸減とは、連続的に
滑らかに減少させる状態を指し、このような滑らかな変
化が本発明の効果を効率的に得るために好ましい。
【0051】特に、分布形状が指数関数的に変化させ、
縦軸にハロゲン元素の単位堆積当りの原子数CX(原子
数/cm3)、横軸に表面層の界面からの光導電層の膜
厚t(μm)をとったとき、下記の関係式(1) log(CX) = at + b (1) (式中、aは0.2以下の正の実数であり、bは15よ
り大きく19より小さい実数である。)で表される直線
に近似できるようにすることが望ましい。このような分
布形状とすることで、キャリア生成と走行性のバランス
が最適な状態となり、本発明の効果が最も良好に得られ
る。
【0052】図2に、ハロゲン原子の分布形状が指数関
数分布に近時できるように作製した光受容部材の二次イ
オン質量分析(SIMS)による分析結果を示したが、
このように直線として近似できるような分布形態になっ
ていることが望ましい。
【0053】なお、図2の各測定点の相関係数は0.9
であった。
【0054】関係式(1)において、係数aの範囲とし
ては、0より大きく、0.2以下であることが望まし
い。a=0、すなわち全く変化せず一定の濃度で分布し
ている場合、キャリア生成と走行が適切なバランスにな
らないことがあり、本発明の効果は得られにくくなる。
一方、0.2より大きくすると、膜の物性変化が急激と
なり過ぎる場合があり、クラックや膜剥がれが生じるこ
とがあるため好ましくない場合がある。
【0055】係数bの範囲としては、15より大きく、
19より小さいことが望ましい。15以下とすると、ハ
ロゲン元素の添加効果が薄れてしまい、ハロゲン元素を
添加しない場合と同等の結果しか得られない場合があ
る。一方、19以上とするとハロゲン元素の濃度が多く
なりすぎ、特に上部の光が関与する領域においては逆に
キャリア生成効率をそこなってしまうことがあり、好ま
しくない場合がある。
【0056】また、光導電層に含有させるハロゲン原子
は、フッ素原子および塩素原子のいずれか、又は両者の
混合物であることが望ましい。これらの原子は、原子半
径、電気陰性度の点で、光導電層の特性を向上する効果
が大きいため、好ましい。
【0057】水素原子の含有量は、特に制限はないが、
シリコン原子と水素原子の和に対して10〜40原子%
とされるのが望ましい。また、その分布形状に関して
も、露光系の波長に合わせて含有量を変化させるなど、
適宜調整することが望ましい。
【0058】Si供給用ガスとなり得る物質としては、
SiH4、Si26、Si38、Si410等のガス状態
の、またはガス化し得る水素化ケイ素(シラン類)が有
効に使用されるものとして挙げられ、更に層作製時の取
り扱い易さ、Si供給効率の良さ等の点でSiH4、S
26が好ましいものとして挙げられる。なお、各ガス
は単独種のみでなく所定の混合比で複数種混合しても差
し支えない。
【0059】そして、膜の物性の制御性、ガスの供給の
利便性などを考慮し、これらのガスに更に、H2、He
及び水素原子を含むケイ素化合物から選ばれる1種以上
のガスを所望量混合して層形成することも出来る。
【0060】ハロゲン原子供給用の原料ガスとして有効
なのは、たとえばハロゲンガス、ハロゲン化物、ハロゲ
ンをふくむハロゲン間化合物、ハロゲンで置換されたシ
ラン誘導体等のガス状物、またはガス化し得るハロゲン
化合物が好ましく挙げられる。また、さらにはシリコン
原子とハロゲン原子とを構成要素とするガス状物、また
はガス化し得るハロゲン原子を含む水素化ケイ素化合物
も有効なものとして挙げることができる。具体的には、
フッ素ガス(F2)、BrF、ClF、ClF3、BrF
3、BrF5、IF3、IF7等のハロゲン間化合物を挙げ
ることができる。ハロゲン原子を含むケイ素化合物、い
わゆるハロゲン原子で置換されたシラン誘導体として
は、具体的には、たとえばSiF4、Si26等のフッ
化ケイ素が好ましいものとして挙げることができる。
【0061】光導電層中に含有されるハロゲン元素の量
を制御するには、例えば、基体の温度、ハロゲン元素を
含有させるために使用される原料物質の反応容器内へ導
入する量、放電空間の圧力、放電電力等を制御すればよ
い。
【0062】加えて、光導電層には伝導性を制御する原
子を光導電層の層厚方向に負均一な分布状態で含有する
ことが好ましい。これは、光導電層のキャリアの走行性
を調整し、また或は補償して走行性を高次でバランスさ
せることにより、帯電能の向上、光メモリー低減、感度
の向上のために有効である。
【0063】伝導性を制御する原子の含有量は、特に制
限されないが、一般には0.05〜5原子ppmとする
のが望ましい。また、光の到達する範囲においては、伝
導性を制御する原子を実質的に含有しないように制御を
行う(積極的な添加を行わない)とすることも出来る。
【0064】この伝導性制御原子は、膜厚方向に連続的
に、又は段階的に変化する領域を含んでいてもよく、一
定の領域を含んでいてもよい。
【0065】伝導性を制御する原子としては、半導体分
野における、いわゆる不純物を挙げることができ、p型
伝導性を与える周期律表第13族に属する原子(第13
族原子とも略記する)、又はn型伝導特性を与える周期
津表第15族に属する原子(第15族原子とも略記す
る)を用いることができる。
【0066】第13族原子としては、具体的には、ホウ
素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、
インジウム(In)、タリウム(Tl)等があり、特に
B、Al、Gaが好適である。
【0067】第13族原子を構造的に導入するには、層
形成の際に、第13族原子導入用の原料物質をガス状態
で反応容器中に、光導電層を形成するための他のガスと
ともに導入してやればよい。第13族原子導入用の原料
物質となり得るものとしては、常温常圧でガス状のまた
は、少なくとも層形成条件下で容易にガス化しうるもの
が採用されるのが望ましい。
【0068】そのような第13族原子導入用の原料物質
としては具体的には、ホウ素原子導入用としては、B2
6、B410、B59、B511、B610、B612
61 4等の水素化ホウ素、BF3、BCl3、BBr3
のハロゲン化ホウ素等が挙げられる。この他、AlCl
3、GaCl3、Ga(CH33、InCl3、TlCl3
等も挙げることができる。
【0069】第15族原子として、具体的には、窒素
(N)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(S
b)、ビスマス(Bi)等があり、特にP、As、Sb
が好適である。
【0070】第15族原子を構造的に導入するには、層
形成の際に、第15族原子導入用の原料物質をガス状態
で反応容器中に、光導電層103を形成するための他の
ガスとともに導入してやればよい。第15族原子導入用
の原料物質となり得るものとしては、常温常圧でガス状
物、または、少なくとも層形成条件下で容易にガス化し
うるものが採用されるのが望ましい。
【0071】第15族原子導入用の原料物質として有効
に使用されるのは、リン原子導入用としては、PH3
24等の水素化リン、PH4I、PF3、PF5、PC
5、PBr3、PBr5、PI3等のハロゲン化リンが挙
げられる。この他、AsH3、AsF3、AsCl3、A
sBr3、AsF5、SbH3、SbF3、SbF5、Sb
Cl3、SbCl5、BiH3、BiCl3、BiBr3
も第15族原子導入用の出発物質の有効なものとして挙
げることができる。
【0072】また、これらの伝導性を制御する原子導入
用の原料物質を必要に応じてH2および/またはHeに
より希釈して使用してもよい。
【0073】光導電層の層厚は所望の電子写真特性が得
られること及び経済的効果等の点から適宜所望にしたが
って決定され、好ましくは20〜50μm、より好まし
くは23〜45μm、最適には25〜40μmとされる
のが望ましい。層厚が20μmより薄くなると、帯電能
や感度等の電子写真特性が実用上不充分となり、50μ
mより厚くなると、光導電層の作製時間が長くなって製
造コストが高くなる。
【0074】所望の膜特性を有する光導電層を形成する
には、Si供給用、ハロゲン添加用等のガスと希釈ガス
との混合比、反応容器内のガス圧、放電電力ならびに基
体温度を適宜設定することが望ましい。
【0075】希釈ガスとして使用するH2および/また
はHeの流量は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選
択されるが、Si供給用ガスに対し、通常の場合3〜3
0倍、好ましくは4〜15倍、最適には5〜10倍の範
囲に制御することが望ましい。反応容器内のガス圧も同
様に層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、
通常の場合1×10-2〜1×103Pa、好ましくは5
×10-2〜5×102Pa、最適には1×10-1〜2×
102Paとするのが好ましい。
【0076】放電電力もまた同様に層設計にしたがって
適宜最適範囲が選択されるが、Si供給用のガスの流量
に対する放電電力の比を、0.5〜8、好ましくは2〜
6の範囲に設定することが望ましい。
【0077】さらに、基体の温度は、層設計にしたがっ
て適宜最適範囲が選択されるが、好ましくは200〜3
50℃、より好ましくは210〜330℃、最適には2
20〜300℃とするのが望ましい。
【0078】光導電層を形成するための基体温度、ガス
圧の望ましい数値範囲として前記した範囲が挙げられる
が、条件は通常は独立的に別々に決められるものではな
く、所望の特性を有する光受容部材を形成すべく相互的
かつ有機的関連性に基づいて最適値を決めるのが望まし
い。
【0079】<表面層>本発明においては、上述のよう
にして基体上に形成された光導電層の上に、更に表面層
を形成する。この表面層は自由表面を有し、主に耐湿
性、連続繰り返し使用特性、電気的耐圧性、使用環境特
性、耐久性において本発明の目的を達成するために設け
られる。
【0080】表面層の材料は、硬度、化学的安定性、耐
磨耗性などが要求される特性を満たしていれば如何なる
ものでもよいが、光導電層を形成する非晶質材料がシリ
コン原子を有しているので、積層界面において化学的な
安定性の確保をするためにアモルファスシリコン系の材
料を用いることが最も好ましい。また、耐湿性、耐磨耗
性に優れるアモルファスカーボン形の材料を用いること
も可能である。あるいはこれらを適宜組み合わせて積層
して用いても良い。
【0081】アモルファスシリコン系の材料は、例え
ば、水素原子(H)および/またはハロゲン原子(X)
を含有し、更に炭素原子を含有するアモルファスシリコ
ン(a−SiC:H,Xとも表記する)、水素原子
(H)および/またはハロゲン原子(X)を含有し、更
に酸素原子を含有するアモルファスシリコン(a−Si
O:H,Xとも表記する)、水素原子(H)および/ま
たはハロゲン原子(X)を含有し、更に窒素原子を含有
するアモルファスシリコン(a−SiN:H,Xとも表
記する)、水素原子(H)および/またはハロゲン原子
(X)を含有し、更に炭素原子、酸素原子および窒素原
子の少なくとも1つを含有するアモルファスシリコン
(a−SiCON:H,Xとも表記する)等の材料が好
適に用いられる。
【0082】表面層は真空堆積膜形成方法によって、所
望特性が得られるように適宜成膜パラメーターの数値条
件が設定されて作製される。具体的には、例えばグロー
放電法(低周波CVD法、高周波CVD法またはマイク
ロ波CVD法等の交流放電CVD法、あるいは直流放電
CVD法等)、スパッタリング法、真空蒸着法、イオン
プレーティング法、光CVD法、熱CVD法などの数々
の薄膜堆積法によって形成することができる。これらの
薄膜堆積法は、製造条件、設備資本投資下の負荷程度、
製造規模、作製される電子写真用光受容部材に所望され
る特性等の要因によって適宜選択されて採用されるが、
光受容部材の生産性から光導電層と同等の堆積法による
ことが好ましい。
【0083】例えば、グロー放電法によってa−Si
C:H,Xよりなる表面層を形成するには、基本的には
シリコン原子(Si)を供給し得るSi供給用の原料ガ
スと、炭素原子(C)を供給し得るC供給用の原料ガス
と、水素原子(H)を供給し得るH供給用の原料ガス及
び/又はハロゲン原子(X)を供給し得るX供給用の原
料ガスを、内部を減圧にし得る反応容器内に所望のガス
状態で導入して、反応容器内にグロー放電を生起させ、
あらかじめ所定の位置に設置された光導電層を形成した
基体上にa−SiC:H,Xからなる層を形成すればよ
い。
【0084】表面層の材質としてはアモルファス材料な
らば何れでも好適に使用できるが、炭素、窒素、酸素よ
り選ばれた元素を少なくとも1つ含むシリコン原子との
化合物が好ましく、特にa−SiCを主成分としたもの
が好ましい。
【0085】表面層をa−SiCを主成分として構成す
る場合の炭素量は、シリコン原子と炭素原子の和に対し
て30原子%から90原子%の範囲が好ましい。
【0086】また、表面層中に水素原子および/または
ハロゲン原子が含有されることが好ましいが、これらの
原子はシリコン原子の未結合手を補償し、層品質の向
上、特に光導電性特性および電荷保持特性を向上させ
る。水素含有量は、構成原子の総量に対して通常の場合
30〜70原子%、好適には35〜65原子%、最適に
は40〜60原子%とするのが望ましい。また、ハロゲ
ン原子の含有量として、通常の場合は0.01〜15原
子%、好適には0.1〜10原子%、最適には0.6〜
4原子%とされるのが望ましい。
【0087】これらの水素原子およびハロゲン原子の含
有量の範囲内で形成される表面層を持った光受容部材
は、実際面に於いて優れた特性を有する。すなわち、表
面層内に存在する欠陥(主にシリコン原子や炭素原子の
ダングリングボンド)は電子写真用光受容部材としての
特性に悪影響を及ぼすことが知られている。例えば自由
表面から電荷の注入による帯電特性の劣化、使用環境、
例えば高い湿度のもとで表面構造が変化することによる
帯電特性の変動、更にコロナ帯電時や光照射時に光導電
層により表面層に電荷が注入され、前記表面層内の欠陥
に電荷がトラップされることにより繰り返し使用時の残
像現象の発生等がこの悪影響として挙げられる。
【0088】しかしながら表面層内の水素原子含有量を
30原子%以上に制御することで表面層内の欠陥が大幅
に減少し、その結果、従来に比べて電気的特性面及び高
速連続使用性において向上を図ることができる。
【0089】一方、表面層中の水素含有量が70原子%
を越えると表面層の硬度が低下する場合がある。従っ
て、表面層中の水素含有量を前記の範囲内に制御するこ
とが所望の電子写真特性を得る上で重要な因子の1つで
ある。表面層中の水素含有量は、原料ガスの流量
(比)、基体温度、放電パワー、ガス圧等によって制御
し得る。
【0090】また、表面層中のハロゲン原子含有量を
0.01原子%以上の範囲に制御することで表面層内の
シリコン原子と炭素原子の結合の発生をより効果的に達
成することが可能となる。さらに、表面層中のハロゲン
原子の働きとして、コロナ等のダメージによるシリコン
原子と炭素原子の結合の切断を効果的に防止することが
できる。
【0091】一方、表面層中のハロゲン原子含有量が1
5原子%を超えると表面層内のシリコン原子と炭素原子
の結合の発生の効果およびコロナ等のダメージによるシ
リコン原子と炭素原子の結合の切断を防止する効果が低
下する場合がある。従って、表面層中のハロゲン原子含
有量を前記範囲内に制御することにより、所望の電子写
真特性を実現できる。表面層中のハロゲン原子含有量
は、水素含有量と同様に原料ガスの流量(比)、基体温
度、放電パワー、ガス圧等によって制御し得る。
【0092】表面層の形成において使用されるシリコン
(Si)供給用ガスとなり得る物質としては、Si
4、Si26、Si38、Si410等のガス状物、ま
たはガス化し得る水素化ケイ素(シラン類)が有効に使
用されるものとして挙げられ、更に層作製時の取り扱い
易さ、Si供給効率の良さ等の点でSiH4、Si26
が好ましいものとして挙げられる。また、これらのSi
供給用の原料ガスを必要に応じてH2、He、Ar、N
e等のガスにより希釈して使用してもよい。
【0093】炭素供給用ガスとなり得る物質としては、
CH4、C22、C26、C38、C410等のガス状態
の、またはガス化し得る炭化水素が有効に使用されるも
のとして挙げられ、更に層作製時の取り扱い易さ、Si
供給効率の良さ等の点でCH4、C22、C26が好ま
しいものとして挙げられる。また、これらのC供給用の
原料ガスを必要に応じてH2、He、Ar、Ne等のガ
スにより希釈して使用してもよい。
【0094】窒素または酸素供給用ガスとなり得る物質
としては、NH3、NO、N2O、NO2、O2、CO、C
2、N2等のガス状物、またはガス化し得る化合物が有
効に使用されるものとして挙げられる。また、これらの
窒素、酸素供給用の原料ガスを必要に応じてH2、H
e、Ar、Ne等のガスにより希釈して使用してもよ
い。
【0095】また、形成される表面層中に導入される水
素原子の導入割合の制御をいっそう容易になるように図
るために、これらのガスに更に水素ガスまたは水素原子
を含むケイ素化合物のガスも所望量混合して層形成する
ことが好ましい。また、各ガスは単独種のみでなく所定
の混合比で複数種混合しても差し支えない。
【0096】ハロゲン原子供給用の原料ガスとして有効
なのは、たとえばハロゲンガス、ハロゲン化物、ハロゲ
ンをふくむハロゲン間化合物、ハロゲンで置換されたシ
ラン誘導体等のガス状のまたはガス化し得るハロゲン化
合物が好ましく挙げられる。また、さらにはシリコン原
子とハロゲン原子とを構成要素とするガス状物、または
ガス化し得るハロゲン原子を含む水素化ケイ素化合物も
有効なものとして挙げることができる。具体的には、フ
ッ素ガス(F2)、BrF、ClF、ClF3、Br
3、BrF5、IF3、IF7等のハロゲン間化合物を挙
げることができる。ハロゲン原子を含むケイ素化合物、
いわゆるハロゲン原子で置換されたシラン誘導体として
は、具体的には、たとえばSiF4、Si26等のフッ
化ケイ素が好ましいものとして挙げることができる。
【0097】表面層中に含有される水素原子および/ま
たはハロゲン原子の量を制御するには、例えば基体の温
度、水素原子および/またはハロゲン原子を含有させる
ために使用される原料物質の反応容器内へ導入する量、
放電電力等を制御すればよい。
【0098】炭素原子、酸素原子および窒素原子の1種
以上は、表面層中に万遍なく均一に含有されても良い
し、表面層の層厚方向に含有量が変化するよう不均一な
分布をもたせた部分があっても良い。
【0099】さらに、表面層には必要に応じて、第13
族原子および第15族原子などの伝導性を制御する原子
を含有させることが好ましい。伝導性を制御する原子
は、表面層中に万遍なく均一に分布した状態で含有され
ても良いし、あるいは層厚方向には不均一な分布状態で
含有している部分があってもよい。
【0100】表面層に含有される伝導性を制御する原子
の含有量としては、好ましくは1×10-3〜1×103
原子ppm、より好ましくは1×10-2〜5×102
子ppm、最適には1×10-1〜102原子ppmとさ
れるのが望ましい。
【0101】表面層の層厚としては、通常0.01〜3
μm、好適には0.05〜2μm、最適には0.1〜1
μmとされるのが望ましいものである。層厚が0.01
μmよりも薄いと光受容部材を使用中に磨耗等の理由に
より表面層が失われる場合があり、3μmを越えると残
留電位の増加等の電子写真特性の低下が発生する場合が
ある。
【0102】表面層は、要求される特性が所望通りに与
えられるように注意深く形成される。即ち、Siと、
C、N及びOからの1種以上と、H及び/又はXとを構
成要素とする物質は、その形成条件によって構造的には
結晶からアモルファスまでの形態を取り、電気物性的に
は導電性から半導体性、絶縁性までの間の性質を、又、
光導電的性質から非光導電的性質までの間の性質を各々
示す。このため、目的に応じた所望の特性を有する表面
層を形成するために、作製条件の選択が厳密になされ
る。
【0103】例えば、表面層を耐圧性の向上を主な目的
として設けるには、使用環境に於いて電気絶縁性的挙動
の顕著な非単結晶材料として作製される。
【0104】又、連続繰り返し使用特性や使用環境特性
の向上を主たる目的として表面層が設けられる場合に
は、上記の電気絶縁性の度合はある程度緩和され、照射
される光に対して有る程度の感度を有する非単結晶材料
として形成される。
【0105】以上の様な表面層を形成するには、基体の
温度、反応容器内のガス圧等を所望にしたがって、適宜
設定する必要がある。
【0106】基体の温度は、層設計にしたがって適宜最
適範囲が選択されるが、通常の場合、好ましくは200
〜350℃、より好ましくは230〜330℃、最適に
は250〜300℃とするのが望ましい。
【0107】反応容器内のガス圧も同様に層設計にした
がって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合、好ま
しくは1×10-2〜2×103Pa、より好ましくは5
×10-1〜5×102Pa、最適には1×101〜1×1
2Paとするのが好ましい。
【0108】表面層を形成するための基体温度、ガス圧
の望ましい数値範囲として前記した範囲が挙げられる
が、条件は通常は独立的に別々に決められるものではな
く、所望の特性を有する光受容部材を形成すべく相互的
かつ有機的関連性に基づいて最適値を決めるのが望まし
い。
【0109】また、表面層および光導電層の間に、炭素
原子、酸素原子および窒素原子の1種以上の含有量が光
導電層に向かって減少するように変化する領域を設けて
も良い。これにより表面層と光導電層の密着性を向上さ
せ、光キャリアの表面への移動がスムーズになるととも
に光導電層と表面層の界面での光の反射による干渉の影
響をより少なくすることができる。
【0110】<電荷注入阻止層>本発明の電子写真用光
受容部材においては、導電性基体と光導電層との間に、
導電性基体側からの電荷の注入を阻止する働きのある電
荷注入阻止層を設けることがいっそう効果的である。す
なわち、電荷注入阻止層は光受容層が一定極性の帯電処
理をその自由表面に受けた際、基体側より光導電層側に
電荷が注入されるのを阻止する機能を有し、逆の極性の
帯電処理を受けた際にはそのような機能は発揮されな
い、いわゆる極性依存性を有している。そのような機能
を付与するために、電荷注入阻止層には、第13族原子
および第15族原子等の伝導性を制御する原子を光導電
層に比べ比較的多く含有させる。
【0111】電荷注入阻止層に含有される伝導性を制御
する原子は、層中に万遍なく均一に分布されても良い
し、あるいは層厚方向には万遍なく含有されてはいる
が、不均一に分布する状態で含有している部分があって
もよい。分布濃度が不均一な場合には、基体側に多く分
布するように含有させるのが好適である。
【0112】しかしながら、いずれの場合にも基体の表
面と平行面内方向においては、均一な分布で万遍なく含
有されることが面内方向における特性の均一化をはかる
点からも必要である。
【0113】第13族原子としては、具体的には、B
(ホウ素)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウ
ム)、In(インジウム)、Ta(タリウム)等があ
り、特にB、Al、Gaが好適である。第15族原子と
しては、具体的には、P(リン)、As(ヒ素)、Sb
(アンチモン)、Bi(ビスマス)等があり、特にP、
Asが好適である。
【0114】電荷注入阻止層中に含有される伝導性を制
御する原子の含有量としては、本発明の目的が効果的に
達成できるように所望にしたがって適宜決定されるが、
好ましくは101〜104原子ppm、より好適には50
〜5×103原子ppm、最適には1×102〜3×10
3原子ppmとされるのが望ましい。
【0115】さらに、電荷注入阻止層には、炭素原子、
窒素原子および酸素原子の少なくとも1種を含有させる
ことによって、電荷注入阻止層に直接接触して設けられ
る他の層との間の密着性の向上をよりいっそう図ること
ができる。
【0116】これらの原子は層中に万遍なく均一に分布
されても良いし、あるいは層厚方向には万遍なく含有さ
れてはいるが、不均一に分布する状態で含有している部
分があってもよい。しかしながら、いずれの場合にも基
体の表面と平行面内方向においては、均一な分布で万遍
なく含有されることが面内方向における特性の均一化を
はかる点からも必要である。
【0117】また、これらの原子の含有量は、本発明の
目的が効果的に達成されるように適宜決定されるが、1
種の場合はその量として、2種以上の場合はその総和と
して、好ましくは1×10-3〜30原子%、より好適に
は5×10-3〜20原子%、最適には1×10-2〜10
原子%とされるのが望ましい。
【0118】また、電荷注入阻止層は水素原子および/
またはハロゲン原子を含有していることが望ましく、こ
れらの原子は層内に存在する未結合手を補償し膜質の向
上に効果を奏する。
【0119】電荷注入阻止層中の水素原子、ハロゲン原
子、または水素原子およびハロゲン原子の和の含有量
は、好適には1〜50原子%、より好適には5〜40原
子%、最適には10〜30原子%とするのが望ましい。
【0120】電荷注入阻止層の層厚は所望の電子写真特
性が得られること、及び経済的効果等の点から好ましく
は0.1〜5μm、より好ましくは0.3〜4μm、最
適には0.5〜3μmとされるのが望ましい。層厚が
0.1μmより薄くなると、基体からの電荷の注入阻止
能が不充分になって充分な帯電能が得られなくなり、5
μmより厚くしても実質的な電子写真特性の向上は期待
できず、作製時間の延長による製造コスト増を招くだけ
である。
【0121】電荷注入阻止層を形成するには、前述の光
導電層を形成する方法と同様の真空堆積法が採用され
る。
【0122】Si供給用のガスと希釈ガスとの混合比、
反応容器内のガス圧、放電電力ならびに基体の温度を適
宜設定することが必要である。希釈ガスであるH2およ
び/またはHeの流量は、層設計にしたがって適宜最適
範囲が選択されるが、Si供給用ガスに対しH2および
/またはHeを、通常の場合0.3〜20倍、好ましく
は0.5〜15倍、最適には1〜10倍の範囲に制御す
ることが望ましい。
【0123】反応容器内のガス圧も同様に層設計にした
がって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合1×1
-2〜1×103Pa、好ましくは5×10-1〜5×1
2Pa、最適には1×10-1〜1×102Paとするの
が望ましい。
【0124】放電電力もまた同様に層設計にしたがって
適宜最適範囲が選択されるが、Si供給用のガスの流量
に対する放電電力の比を、通常の場合0.5〜8、好ま
しくは0.8〜7、最適には1〜6の範囲に設定するこ
とが望ましい。
【0125】更に、基体の温度は、層設計にしたがって
適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合、好ましくは
200〜350℃、より好ましくは230〜330℃、
最適には250〜300℃とするのが望ましい。
【0126】電荷注入阻止層を形成するための希釈ガス
の混合比、ガス圧、放電電力、基体温度の望ましい数値
範囲として前記した範囲が挙げられるが、これらの層作
製ファクターは通常は独立的に別々に決められるもので
はなく、所望の特性を有する表面層を形成すべく相互的
かつ有機的関連性に基づいて各層作製ファクターの最適
値を決めるのが望ましい。
【0127】<その他の層>以上に述べてきた層に加
え、本発明の電子写真用光受容部材においては、光受容
層の基体側に、少なくともアルミニウム原子、シリコン
原子、水素原子およびハロゲン原子が層厚方向に不均一
な分布状態で含有する層領域を有することが望ましい。
【0128】また、基体と、光導電層または電荷注入阻
止層との間の密着性の一層の向上を図る目的で、例え
ば、Si34、SiO2、SiO、あるいはシリコン原
子を母体とし、水素原子および/またはハロゲン原子
と、炭素原子、酸素原子および窒素原子の1種以上とを
含む非晶質材料等で構成される密着層を設けても良い。
更に、基体からの反射光による干渉模様の発生を防止す
るための光吸収層を設けても良い。
【0129】次に、光受容層を形成するための装置およ
び膜形成方法について詳述する。
【0130】図3は電源周波数としてRF帯の高周波プ
ラズマCVD法(RF−PCVDとも略記する)による
光受容部材の製造装置の一例を示す模式的な構成図であ
る。
【0131】この装置は大別すると、堆積装置(310
0)、原料ガスの供給装置(3200)、反応容器(3
111)内を減圧にするための排気装置(図示せず)か
ら構成されている。堆積装置(3100)中の反応容器
(3111)内には円筒状基体(3112)、基体加熱
用ヒーター(3113)、原料ガス導入管(3114)
が設置され、更に高周波マッチングボックス(311
5)が接続されている。
【0132】原料ガス供給装置(3200)は、SiH
4、GeH4、H2、CH4、B26、PH3等の原料ガス
のボンベ(3221〜3226)とバルブ(3231〜
3236,3241〜3246,3251〜3256)
およびマスフローコントローラー(3211〜321
6)から構成され、各原料ガスのボンベはバルブ(32
60)を介して反応容器(3111)内のガス導入管
(3114)に接続されている。
【0133】この装置を用いた堆積膜の形成は、例えば
以下のように行なうことができる。
【0134】まず、反応容器(3111)内に円筒状基
体(3112)を設置し、不図示の排気装置(例えば真
空ポンプ)により反応容器(3111)内を排気する。
続いて、基体加熱用ヒーター(3113)により円筒状
基体(3112)の温度を200℃乃至350℃の所定
の温度に制御する。
【0135】堆積膜形成用の原料ガスを反応容器(31
11)に流入させるには、ガスボンベのバルブ(323
1〜3237)、反応容器のリークバルブ(3117)
が閉じられていることを確認し、又、流入バルブ(32
41〜3246)、流出バルブ(3251〜325
6)、補助バルブ(3260)が開かれていることを確
認して、まずメインバルブ(3118)を開いて反応容
器(3111)およびガス配管内(3116)を排気す
る。
【0136】次に真空計(3119)の読みが約1×1
-4Paになった時点で補助バルブ(3260)、流出
バルブ(3251〜3256)を閉じる。
【0137】その後、ガスボンベ(3221〜322
6)より各ガスをバルブ(3231〜3236)を開い
て導入し、圧力調整器(3261〜3266)により各
ガス圧を2Kg/cm2に調整する。次に、流入バルブ
(3241〜3246)を徐々に開けて、各ガスをマス
フローコントローラー(3211〜3216)内に導入
する。
【0138】以上のようにして成膜の準備が完了した
後、以下の手順で各層の形成を行う。
【0139】円筒状基体(3112)が所定の温度にな
ったところで流出バルブ(3251〜3256)のうち
の必要なものおよび補助バルブ(3260)を徐々に開
き、ガスボンベ(3221〜3266)から所定のガス
をガス導入管(3114)を介して反応容器(311
1)内に導入する。次にマスフローコントローラー(3
211〜3216)によって各原料ガスが所定の流量に
なるように調整する。その際、反応容器(3111)内
の圧力が100Pa以下の所定の圧力になるように真空
計(3119)を見ながらメインバルブ(3118)の
開口を調整する。内圧が安定したところで、周波数1
3.56MHzのRF電源(不図示)を所望の電力に設
定して、高周波マッチングボックス(3115)を通じ
て反応容器(3111)内にRF電力を導入し、グロー
放電を生起させる。この放電エネルギーによって反応容
器内に導入された原料ガスが分解され、円筒状基体(3
112)上に所定のシリコンを主成分とする堆積膜が形
成されるところとなる。所望の膜厚の形成が行われた
後、RF電力の供給を止め、流出バルブを閉じて反応容
器へのガスの流入を止め、堆積膜の形成を終える。
【0140】同様の操作を複数回繰り返すことによっ
て、所望の多層構造の光受容層が形成される。
【0141】それぞれの層を形成する際には必要なガス
以外の流出バルブはすべて閉じられていることは言うま
でもなく、また、それぞれのガスが反応容器(311
1)内、流出バルブ(3251〜3256)から反応容
器(3111)に至る配管内に残留することを避けるた
めに、流出バルブ(3251〜3256)を閉じ、補助
バルブ(3260)を開き、さらにメインバルブ(31
18)を全開にして系内を一旦高真空に排気する操作を
必要に応じて行う。
【0142】また、膜形成の均一化を図るために、層形
成を行なっている間は、基体(3112)を駆動装置
(不図示)によって所定の速度で回転させることも有効
である。
【0143】さらに、上述のガス種およびバルブ操作は
各々の層の作製条件にしたがって変更が加えられること
は言うまでもない。
【0144】堆積膜形成時の基体温度は、特に200℃
以上350℃以下、好ましくは230℃以上330℃以
下、より好ましくは250℃以上310℃以下が望まし
い。
【0145】基体の加熱方法は、真空仕様である発熱体
であればよく、より具体的にはシース状ヒーターの巻き
付けヒーター、板状ヒーター、セラミックヒーター等の
電気抵抗発熱体、ハロゲンランプ、赤外線ランプ等の熱
放射ランプ発熱体、液体、気体等を温媒とし熱交換手段
による発熱体等が挙げられる。加熱手段の表面材質は、
ステンレス、ニッケル、アルミニウム、銅等の金属類、
セラミックス等を使用することができる。
【0146】それ以外にも、反応容器以外に加熱専用の
容器を設け、加熱した後、反応容器内に真空中で基体を
搬送する方法が用いられる。
【0147】
【実験例】以下、実験例により本発明の効果を具体的に
説明する。
【0148】<実験例1>図3に示すRF−PCVD法
による光受容部材の製造装置を用い、直径80mmの鏡
面加工を施したアルミニウムシリンダー(基体)上に、
表1に示す条件で電荷注入阻止層、光導電層および表面
層からなる電子写真用光受容部材を作製した。
【0149】光導電層を作製する際には、SiF4の流
量を変え、基体側から表面側へフッ素の含有量を漸減さ
せた。フッ素含有量の分布形状が、(A)線形分布(実
施例1−1)、(B)指数関数的分布(実施例1−
2)、(C)2次関数分布(実施例1−3)となるよう
に調整し、3種類の電子写真用光受容部材(A)〜
(C)を作製した。その際、光導電層作製開始時と終了
時において、(A)〜(C)のすべての光受容部材にお
いて、SiF4流量が一致するようにし、光導電層の上
端と下端でのフッ素濃度を揃えるように作製した。図4
に、フッ素の分布をLogスケール(a)とLinea
rスケール(b)との両方で表した概念図を示す。
【0150】作製した電子写真用光受容部材の光導電層
を、2次イオン質量分析(SIMS)装置(CAMEC
A社製IMS−4F)によりフッ素原子の含有量の膜厚
方向分布を測定したところ、電子写真用光受容部材
(A)〜(C)において、フッ素原子の分布が図4のよ
うになっていることを確認した。また、(A)〜(C)
の全ての電子写真用光受容部材について、光導電層上端
でのフッ素原子数は3×1016atm/cm3、下端で
7×1017atm/cm3であった。
【0151】作製した光受容部材を電子写真装置(キヤ
ノン製NP−6750をデジタル露光用に改造したも
の)にセットして、電位特性の評価を行った。
【0152】この際、プロセススピードを265mm/
sec、除電光減(波長680nmのLED)の光量を
7lux・sec、帯電器の電流値1000μmAの条
件にて、電子写真装置の現像器位置にセットした表面電
位計(TREK社、Model 344)の電位センサ
ーにより光需要部材の表面電位を測定し、それを帯電能
とした。また、感度は像露光光源(波長655nmの半
導体レーザー)の光量を変化させ、明部位の表面電位の
低下分が所定の電位差(例えば△350V)としたとき
の露光量を感度と定義した。また、メモリ電位は、上述
の条件下において非露光状態での表面電位と、像露光光
源により一旦露光した後に再度帯電させたときの表面電
位との電位差を求め、これをメモリ電位と定義した。
【0153】また、ドット再現性の評価として、ワンド
ット・ワンスペース、ワンドット・ツースペースの編点
模様、ワンライン・ツースペースの縞模様を含むテスト
パターンを印字し、その解像の度合いをルーペで調べ
た。次に、レーザースポット径から得られる面積と、実
際に現像された面積とを算出し、これらの比をドット再
現性と定義した。
【0154】以上の評価結果を表2に示した。
【0155】<比較例1>SiF4の流量を変えず、フ
ッ素含有量が一定となる様に光導電層を形成した以外
は、実験例1の場合と同様にして、電子写真用光受容部
材(D)を作製した。作製した電子写真用光受容部材D
の光導電層について、SIMSによりフッ素原子の含有
量の膜厚方向分布を測定したところ、フッ素濃度が5×
1017atm/cm3であり、一定濃度の形状に分布し
ていた。
【0156】その後、電子写真用光受容部材(D)の性
能を、実験例1と同様に評価し、結果を表2に示した。
【0157】表2においては、電子写真用光受容部材
(D)の結果を基準として、相対的にどれだけ特性が向
上しているかをパーセントで示した。表2から明らかな
ように、電子写真用光受容部材(D)(光導電層中のフ
ッ素含有量一定)と比較して、基体側から表面側へとフ
ッ素の含有量を漸減させた場合、すべての項目において
特性が向上している。特に、指数関数的に変化させたと
き(電子写真用光受容部材(B))、特性が最も向上し
ている。
【0158】
【表1】
【0159】
【表2】
【0160】<実験例2>図3に示すRF−PCVD法
による光受容部材の製造装置を用い、直径80mmの鏡
面加工を施したアルミニウムシリンダー(基体)上に、
表1に示した条件で電荷注入阻止層、光導電層および表
面層からなる電子写真用光受容部材を作製した。その
際、SiF4の流量を可変し、基体側から表面側へ漸減
させ、フッ素原子の単位体積当りの原子数CX(原子数
/cm3)が、下記の関係式(1)で近似できる指数関
数分布となる様にした; log(CX) = at + b (1) 但し、bを15.2と一定にし、aの値を変化させて、
6種類の電子写真用光受容部材を作製した(実施例2−
1〜実施例2−6)。
【0161】作製した個々の光受容部材について、実験
例1と同様の電位特性評価を行った。この時の電子写真
プロセス条件は、除電光光源の波長を550nm、像露
光光源の波長を680nmとした。
【0162】結果を、電子写真用光受容部材Dの結果を
基準としてどれだけ特性が向上したかでパーセントによ
り図5に示した。図5から、関係式(1)における係数
aの値が、0<a≦0.2の範囲にあるとき、特に改良
効果が高いことが分かった。
【0163】<実験例3>図3に示すRF−PCVD法
による光受容部材の製造装置を用い、直径80mmの鏡
面加工を施したアルミニウムシリンダー(基体)上に、
表1に示した条件で電荷注入阻止層、光導電層および表
面層からなる電子写真用光受容部材を作製した。その
際、SiF4の流量を可変し、基体側から表面側へ漸減
させ、フッ素原子の単位体積当りの原子数CX(原子数
/cm3)が、下記の関係式(1)で近似できる指数関
数分布となる様にした; log(CX) = at + b (1) 但し、aを0.07と一定にし、bの値を変化させて、
種類の電子写真用光受容部材を作製した(実施例3−1
〜実施例3−5)。
【0164】作製した個々の光受容部材について、実験
例1と同様の電位特性評価を行った。この時の電子写真
プロセス条件は、除電光光源の波長を700nm、像露
光光源の波長を655nmとした。
【0165】結果を、電子写真用光受容部材Dの結果を
基準としてどれだけ特性が向上したかでパーセントによ
り図6に示した。図6から、関係式(1)における係数
bの値が、15<b<19の範囲にあるとき、特に改良
効果が高いことが分かった。
【0166】<実施例4>図3に示すRF−PCVD法
による光受容部材の製造装置を用い、直径108mmの
鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(基体)上
に、表3に示す条件で電荷注入阻止層、光導電層および
表面層からなる電子写真用光受容部材を作製した。この
時、SiF4の流量変化を制御し、フッ素の分布が指数
関数的な分布となるように調整した。
【0167】作製した電子写真用光受容部材の光導電層
を、実験例1と同様にSIMSにて分析を行ったとこ
ろ、フッ素の分布が指数関数分布になっていることが確
認できた。また、関係式(1)に当てはめると、a=
0.08、b=17.4で近似出来ることを確かめた。
【0168】次に、電子写真装置(キヤノン製GP−6
05)を用いて電位評価、画像評価を行ったところ、帯
電能、感度、メモリ特性、ドット再現性とも、良好な特
性が得られた。
【0169】また、階調性が高く、解像度が高く、良好
な画像が得られ、メモリーに伴うゴースト現象の発生も
認められなかった。また、画像欠陥や画像流れ等の現象
がなく良好な電子写真特性が得られた。
【0170】
【表3】
【0171】<実施例5>図3に示すRF−PCVD法
による光受容部材の製造装置を用い、直径108mmの
鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(基体)上
に、表4に示す条件で電荷注入阻止層、第1および第2
の層領域からなる光導電層、および表面層からなる電子
写真用光受容部材を作製した。この時、ClF3の流量
変化を制御し、フッ素の分布が指数関数的な分布となる
ように調整した。
【0172】作製した電子写真用光受容部材の光導電層
を、実験例1と同様にSIMSにて分析を行ったとこ
ろ、フッ素の分布が指数関数分布になっていることが確
認できた。また、関係式(1)に当てはめると、a=
0.12、b=15.5で近似出来ることを確かめた。
【0173】次に、電子写真装置(キヤノン製GP−6
05)を用いて電位評価、画像評価を行ったところ、帯
電能、感度、メモリ特性、ドット再現性とも、良好な特
性が得られた。
【0174】また、階調性が高く、解像度が高く、良好
な画像が得られ、メモリーに伴うゴースト現象の発生も
認められなかった。また、画像欠陥や画像流れ等の現象
がなく良好な電子写真特性が得られた。
【0175】
【表4】
【0176】<実施例6>図3に示すRF−PCVD法
による光受容部材の製造装置を用い、直径108mmの
鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(基体)上
に、表5に示す条件で電荷注入阻止層、第1および第2
の層領域からなる光導電層、および表面層からなる電子
写真用光受容部材を作製した。この時、SiCl22
流量変化を制御し、塩素の分布が指数関数的な分布とな
るように調整した。
【0177】作製した電子写真用光受容部材の光導電層
を、実験例1と同様にSIMSにて分析を行ったとこ
ろ、塩素の分布が指数関数分布になっていることが確認
できた。また、関係式(1)に当てはめると、a=0.
05、b=17.1で近似出来ることを確かめた。
【0178】次に、電子写真装置を用いて電位評価、画
像評価を行った。キヤノン製複写機GP−605を改造
し、負帯電が可能な構成とし、作製した光受容部材を搭
載して評価を行った。すると、帯電能、感度、メモリ特
性、ドット再現性とも、良好な特性が得られた。
【0179】また、階調性が高く、解像度が高く、良好
な画像が得られ、メモリーに伴うゴースト現象の発生も
認められなかった。また、画像欠陥や画像流れ等の現象
がなく良好な電子写真特性が得られた。
【0180】
【表5】
【0181】<実施例7>図3に示すRF−PCVD法
による光受容部材の製造装置を用い、直径108mmの
鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(基体)上
に、表6に示す条件で電荷注入阻止層、第1および第2
の層領域よりなる光導電層、および表面層からなる電子
写真用光受容部材を作製した。この時、SiF4の流量
変化を制御し、フッ素の分布が指数関数的な分布となる
ように調整した。
【0182】作製した電子写真用光受容部材の光導電層
を、実験例1と同様にSIMSにて分析を行ったとこ
ろ、フッ素の分布が指数関数分布になっていることが確
認できた。また、関係式(1)に当てはめると、a=
0.04、b=16.8で近似出来ることを確かめた。
【0183】次に、電子写真装置(キヤノン製GP−6
05)を用いて電位評価、画像評価を行ったところ、帯
電能、感度、メモリ特性、ドット再現性とも、良好な特
性が得られた。
【0184】また、階調性が高く、解像度が高く、良好
な画像が得られ、メモリーに伴うゴースト現象の発生も
認められなかった。また、画像欠陥や画像流れ等の現象
がなく良好な電子写真特性が得られた。
【0185】
【表6】
【0186】<実施例8>図3に示すRF−PCVD法
による光受容部材の製造装置を用い、直径108mmの
鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(基体)上
に、表7に示す条件で電荷注入阻止層、第1および第2
の層領域からなる光導電層、および表面層からなる電子
写真用光受容部材を作製した。この時、SiCl4の流
量変化を制御し、塩素の分布が指数関数的な分布となる
ように調整した。
【0187】作製した電子写真用光受容部材の光導電層
を、実験例1と同様にSIMSにて分析を行ったとこ
ろ、塩素の分布が指数関数分布になっていることが確認
できた。また、関係式(1)に当てはめると、a=0.
1、b=15.8で近似出来ることを確かめた。
【0188】次に、電子写真装置を用いて電位評価、画
像評価を行った。キヤノン製複写機GP−605を改造
してスピードアップし、プロセススピード(光受容部材
が周辺の帯電器や現像器に対して相対的に移動する速
度)を480mm/secとなるような構成とし、作製
した光受容部材を搭載して評価を行った。すると、帯電
能、感度、メモリ特性、ドット再現性とも、良好な特性
が得られた。
【0189】また、階調性が高く、解像度が高く、良好
な画像が得られ、メモリーに伴うゴースト現象の発生も
認められなかった。また、画像欠陥や画像流れ等の現象
がなく良好な電子写真特性が得られた。
【0190】
【表7】
【0191】
【発明の効果】本発明によれば、基体上に、シリコン原
子を母体としハロゲン原子を含有する非単結晶材料で構
成された光導電層、表面を保護するための表面層を順次
積層してなり、光導電層に含有されるハロゲン原子が、
基体側から表面側へと漸減するような構成を取ること
で、デジタル露光系を用いた電子写真装置において良好
な特性を発揮するような光需要部材を提供できる。また
このような光受容部材、及びデジタル露光系から構成さ
れる電子写真装置は、コントラストが高く、ゴーストが
なく、ドット再現性に優れ、如何なる環境下においても
極めて優れた電位特性、画像特性を有する。
【0192】従って、本発明の電子写真用光受容部材及
び電子写真装置は、前述のごとき特定の構成としたこと
により、a−Siで構成された従来の電子写真用光受容
部材、及びそれを用いた電子写真装置における諸問題を
解決することができ、優れた電気的特性、光学的特性、
光導電特性、画像特性、耐久性、及び使用環境特性を示
す。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真用光受容部材の例を説明する
ための模式的断面図である。
【図2】本発明の電子写真用光受容部材におけるハロゲ
ン原子の含有量の分布形態例を説明するための図であ
る。
【図3】本発明の電子写真用光受容部材の製造装置の一
例を示す模式的説明図である。
【図4】本発明の電子写真用光受容部材におけるハロゲ
ン原子の含有量の分布形態例を、Logスケール及び線
形スケールで表した図である。
【図5】aの値と、帯電能、感度、メモリ特性およびド
ット再現性との関係を示す図である。
【図6】bの値と、帯電能、感度、メモリ特性およびド
ット再現性との関係を示す図である。
【符号の説明】
100 電子写真用光受容部材 101 基体 102 光受容層 103 光導電層 104 表面層 105 電荷注入阻止層 111 第1の層領域 112 第2の層領域 3100 堆積装置 3111 反応容器 3112 円筒状基体 3113 基体加熱用ヒーター 3114 原料ガス導入管 3115 マッチングボックス 3116 原料ガス配管 3117 反応容器リークバルブ 3118 メイン排気バルブ 3119 真空計 3200 原料ガス供給装置 3211 マスフローコントローラー 3212 マスフローコントローラー 3213 マスフローコントローラー 3214 マスフローコントローラー 3215 マスフローコントローラー 3216 マスフローコントローラー 3221 原料ガスボンベ 3222 原料ガスボンベ 3223 原料ガスボンベ 3224 原料ガスボンベ 3225 原料ガスボンベ 3226 原料ガスボンベ 3231 原料ガスボンベバルブ 3232 原料ガスボンベバルブ 3233 原料ガスボンベバルブ 3234 原料ガスボンベバルブ 3235 原料ガスボンベバルブ 3236 原料ガスボンベバルブ 3241 ガス流入バルブ 3242 ガス流入バルブ 3243 ガス流入バルブ 3244 ガス流入バルブ 3245 ガス流入バルブ 3246 ガス流入バルブ 3251 ガス流出バルブ 3252 ガス流出バルブ 3253 ガス流出バルブ 3254 ガス流出バルブ 3255 ガス流出バルブ 3256 ガス流出バルブ 3260 補助バルブ 3261 圧力調整器 3262 圧力調整器 3263 圧力調整器 3264 圧力調整器 3265 圧力調整器 3266 圧力調整器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 古島 聡 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 新納 博明 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 Fターム(参考) 2H068 DA24 DA35 FA18 FC05 2H076 AB05 AB42 DA37

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも、基体と、ハロゲン原子を含
    有するアモルファスシリコン(a−Si,X)系の光導
    電層と、表面層とが積層されてなる電子写真用光受容部
    材において、該ハロゲン原子の含有量は、基体側から表
    面側に向けて減少していることを特徴とする電子写真用
    光受容部材。
  2. 【請求項2】 前記光導電層中において、ハロゲン原子
    の単位体積当りの原子数CX(原子数/cm3)は、下記
    の関係式(1)で近似できる指数関数分布に従うことを
    特徴とする請求項1記載の電子写真用光受容部材。 log(CX) = at + b (1) (式中、tは光導電層および表面層の界面からの距離
    (μm)であり、aは0.2以下の正の実数であり、b
    は15より大きく19より小さい実数である。)
  3. 【請求項3】 前記光導電層が含有するハロゲン原子
    は、フッ素原子および/または塩素原子であることを特
    徴とする請求項1又は2記載の電子写真用光受容部材。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至3いずれかに記載の電子写
    真用光受容部材と、波長550nm以上700nm以下
    の潜像形成用光源とを含んでなることを特徴とする電子
    写真装置。
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