JP2002090067A - 熱処理装置 - Google Patents

熱処理装置

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JP2002090067A
JP2002090067A JP2001155619A JP2001155619A JP2002090067A JP 2002090067 A JP2002090067 A JP 2002090067A JP 2001155619 A JP2001155619 A JP 2001155619A JP 2001155619 A JP2001155619 A JP 2001155619A JP 2002090067 A JP2002090067 A JP 2002090067A
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heat treatment
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treatment apparatus
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JP2001155619A
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Yuji Tsutsui
裕二 筒井
Hiroyuki Naka
裕之 中
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Panasonic Holdings Corp
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Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 電子部品およびデバイス等の製品を被処理物
として熱処理する熱処理装置であって、製品の品質およ
び歩留まりに影響を与えることなく、入熱エネルギーの
利用効率がより向上した熱処理装置を提供する。 【解決手段】 複数の熱処理室を含んで成り、熱処理室
内で被処理物が搬送されて熱処理される熱処理装置にお
いて、熱処理室内の温度が相互に異なる、少なくとも1
組の隣接する2つの熱処理室を断熱構造部材19を介し
て接続することにより、熱処理室(例えばマッフル10
及び冷却マッフル13)間の熱伝導を抑制して熱処理装
置で生じる熱損失を小さくし、したがって、被処理物の
品質および歩留まりに影響を与えることなく、所定の熱
処理を実施するのに必要な入熱エネルギーを大幅に減少
させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、製品原料、中間品
または最終製品を熱処理するための熱処理装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】プラズマ・ディスプレイ・パネル、太陽
電池パネルおよび抵抗チップ等の各種デバイスおよび電
子部品を最終製品とする種々の製品の製造過程におい
て、様々の熱処理、例えば加熱および冷却処理等が利用
されている。熱処理により達成される作用は数多く知ら
れている。具体的には、乾燥、脱水、焼成、反応促進、
表面改質、封着、排気、およびアニール等が知られてい
る。
【0003】熱処理装置が加熱炉である場合、当該熱処
理装置は、一般的に、被処理物の搬送方向に沿って複数
の熱処理室を有する。各熱処理室はその内部に被処理物
が熱処理される空間、即ち熱処理ゾーンを有する。加熱
炉は一般に、被処理物を加熱昇温させる昇温ゾーン(昇
温室)、昇温した被処理物の温度を一定に維持する恒温
ゾーン(恒温室)、および被処理物を冷却降温させる降
温ゾーン(降温室)を熱処理ゾーンとして有する。被処
理物は、各ゾーンを上述の順で通過する間に所定の熱処
理に付される。通常、昇温ゾーンでは熱が加えられ、恒
温ゾーンでは放熱量に見合う分だけ熱が加えられ、降温
ゾーンでは熱が奪われる。
【0004】したがって、被処理物に熱が加えられる昇
温ゾーンおよび恒温ゾーンは、加熱ゾーンと称されるこ
ともある。被処理物から熱を奪う降温ゾーンは、冷却ゾ
ーンと称されることもある。降温ゾーンはまた、当該ゾ
ーンに入ってから当該ゾーンを出るまでの間に下がる被
処理物の温度(降温速度)に応じて、徐冷ゾーンまたは
急冷ゾーンと称されることもある。一般に、徐冷ゾーン
とは、ゾーン内に入ってきた被処理物の温度を例えば数
℃/分〜数十℃/分の割合で下げるゾーンをいう。急冷
ゾーンとは、ゾーン内に入ってきた被処理物の温度を例
えば数百℃/分以上の割合で下げるゾーンをいう。
【0005】加熱ゾーンおよび冷却ゾーンの寸法は、被
処理物の処理量に基づき、加熱に必要な時間、冷却速
度、および取り出し温度等の熱処理条件ならびに熱処理
装置の設置スペース等に応じて決定される。
【0006】複数の熱処理室を有する熱処理装置におい
ては、各熱処理室において所定の熱処理が確実に行われ
るように、熱処理室内の温度(即ち、熱処理ゾーンの温
度)を所定の温度状態に保つ必要がある。そのため、熱
処理室内は、適当な加熱または冷却手段、および温度モ
ニタによって温度管理される。
【0007】複数の熱処理室を有する熱処理装置には、
各熱処理室内の熱処理ゾーンで被処理物を間欠的に移動
させる熱処理装置と、被処理物を連続的に移動させる熱
処理装置がある。被処理物が間欠的に移動させられる熱
処理装置の一例は、例えば日本国特許公開第11−14
2061号公報に記載されている。
【0008】当該公報に記載の熱処理装置は、各熱処理
ゾーンが隣接する他の熱処理ゾーンから熱的に影響を受
けることがないように、各熱処理ゾーンが他の熱処理ゾ
ーンから遮蔽されることにより、各熱処理ゾーンの熱的
な独立性を確保している。具体的には、この熱処理装置
は、加熱ゾーン間の境界部分に平板状のシャッタを有す
るシャッタ装置と、シャッタを挟むように設けられた一
対の断熱壁を有する。シャッタは各加熱ゾーンを相互に
遮蔽する遮蔽位置、または搬送されるワークとの干渉を
避ける退避位置に位置決めされる。即ち、シャッタはワ
ークが加熱ゾーン間を移動するときに退避位置に位置さ
せられ、ワークが加熱ゾーンに搬入されると遮蔽位置に
位置させられる。加熱ゾーンに搬入されたワークは、加
熱ゾーンで停止又は往復移動して、所定の温度となるよ
うに熱処理される。
【0009】この熱処理装置においては、シャッタが各
加熱区分を相互に遮蔽するとともに、加熱ゾーン間の境
界部分に設けられた断熱壁自身と断熱壁相互間に形成さ
れる空気層が断熱作用を奏する。これにより、各加熱区
分が隣接する他の加熱ゾーンから受ける熱的な影響が可
及的に低減させられる。断熱壁の間に形成される空気層
はまた、高温側の加熱ゾーンから低温側の加熱ゾーンに
対する直接的な伝熱を妨げる。したがって、この熱処理
装置によれば、ワークを間欠送りしてシャッタを閉じた
後、各加熱区分の温度を所定温度に速やかに制御でき
る。即ち、この熱処理装置は、可動シャッタと断熱壁に
よって各熱処理ゾーンの独立性を確保している。それに
より、被処理物の品質が確保されるとともに、熱処理装
置全体の長さを短くできるという利点がもたらされる。
【0010】次に、被処理物が連続的に移動させられる
熱処理装置について説明する。複数の熱処理室を有し、
被処理物が連続的に移動させられる熱処理装置の1つと
して、適当な加熱手段または冷却手段で加熱または冷却
された、マッフルと呼ばれるトンネル状構造を有する熱
処理室内で、被処理物を搬送しつつ、被処理物を間接的
に熱処理する装置がある。被処理物の搬送は、メッシュ
ベルトコンベアまたはローラハース等の搬送手段を用い
て実施される。この種の熱処理装置はしばしばマッフル
炉またはマッフル構造型加熱炉と呼ばれる。マッフル炉
において、熱処理ゾーンはマッフルの壁で画定され、こ
の熱処理ゾーンは、マッフルの外側に配置した加熱手段
等によって所定温度に維持された熱処理雰囲気である。
【0011】「熱処理雰囲気」とは、被処理物が配置さ
れる空間をいい、当該空間に配置された被処理物に熱を
加えること又は被処理物から熱を奪うことは、当該空間
に含まれるガス、加熱装置、冷却装置、および/または
当該空間を画定する壁によってなされる。「熱処理雰囲
気」は単に「雰囲気」ともいう。熱処理雰囲気に含まれ
るガスは「雰囲気ガス」ともいう。
【0012】マッフル炉においては、被処理物はこの熱
処理雰囲気内で搬送されて、マッフルを構成する壁の内
側面を介して間接加熱または間接冷却されることによ
り、所望のように熱処理される。マッフル炉において
は、熱処理ゾーンに加熱手段等が存在しないため、例え
ば、ヒータ形状に起因する熱処理ゾーンでの加熱ムラな
らびに加熱制御の変動が緩和される。即ち、熱処理ゾー
ンはより均一な熱処理雰囲気であるから、被処理物を所
望の温度プロファイルにて安定的に熱処理することがで
きる。
【0013】マッフルは一般に金属製筒状構造体であ
る。マッフルとしては、例えば筒状に一体加工されたも
のが用いられる。あるいは、断熱性のブロック板で四方
を囲むことによって、方形の筒状体のマッフルを形成す
ることができる。
【0014】マッフル炉の基本的構成の一例を図13に
示す。図示するマッフル炉(100)は、被処理物の搬送
方向に沿って、被処理物を加熱昇温させる加熱ゾーン
(加熱室)と、被処理物を冷却降温させる冷却ゾーン
(冷却室)とを有する。被処理物は各ゾーンを順次連続
的に通過し、この間に所定の熱処理が被処理物に施され
る。
【0015】図13に示すマッフル炉をさらに詳しく説
明する。加熱ゾーンを形成する加熱マッフル(2)は金
属材料から成り、その外壁面は電気ヒータモジュール
(1)で囲まれている。加熱マッフル(2)は電気ヒー
タモジュール(1)で加熱され、所望の熱処理に応じて
所定温度に維持されている。冷却ゾーンを形成する冷却
マッフル(8)もまた金属材料から成る。冷却マッフル
(8)の外壁面には冷却水管(7)が配置され、冷却マ
ッフル(8)内は冷却水管(7)内を通る冷却水によっ
て、所定温度に維持されている。ヒータモジュール
(1)を含むマッフル全体は、壁(または外パネル)
(110)によって囲繞されている。
【0016】加熱マッフル(2)内では、搬送体である
メッシュベルト(3)が連続的に一方向へ移動する。熱
処理する被処理物(4)はこのメッシュベルト(3)に
載せられて搬入部(5)から搬出部(6)に向かって移
動する。図示した態様では、メッシュベルトは装置の設
置面(図13に示すX−Y平面)に平行に配置されてX
方向に移動している。
【0017】メッシュベルト以外の搬送体としては、多
数の円柱状ローラを、その長手方向が搬送方向に対して
垂直に、かつ装置の設置面(図13に示すX−Y平面)
と平行になるように(即ち、図13のY方向に沿って)
並べて形成した搬送体がある。そのような搬送体は一般
に「ローラーハース」と呼ばれる。ローラハースを用い
る場合、被処理物はローラの回転駆動により搬送され
る。
【0018】被処理物(4)は、所定温度に維持された
加熱マッフル(2)内を通過している間に加熱される。
メッシュベルト(3)と被処理物(4)は加熱マッフル
(2)内を通過した後、冷却マッフル(8)内を通過す
る。冷却マッフル(8)内を通過する被処理物(4)
は、冷却水管(7)内を通過する冷却水によって間接的
に冷却される。
【0019】次に、マッフルとマッフルとが接続されて
いる部分、即ち、マッフル接続部分周辺を説明する。図
14は、加熱ヒータ(9)が周囲に配置された加熱マッ
フル(10)と、冷却水管(11)が表面に耐熱セメント
(12)等で接着された冷却マッフル(13)との接続部分
を模式的に断面図にて示している。加熱マッフル(10)
と冷却マッフル(13)とは、接続部(図示した態様にお
いてはフランジ)(16)でボルト/ナット(18)により
機械的に接続されている。接続部(16)の間には、不燃
性の材料(例えば、石綿または不燃カーボン系材料)か
ら成るシール材(17)が挟み込まれている。シール材
は、各マッフル(10、13)内の熱処理ゾーン(14a,14
b)に含まれる雰囲気ガスが、接続部分から各マッフル
(10、13)の外部雰囲気(15)へ漏出するのを防止する
ために使用される。かかるマッフル炉においては、被処
理物(25)が連続的に送られるため、各加熱ゾーンの独
立性はほとんどない。
【0020】このようなマッフル炉においては、加熱ヒ
ータ(9)によって供給される熱エネルギーのうち、被
処理物の加熱処理に利用される熱エネルギーの割合、即
ち有効熱効率が極めて小さいという問題がある。ここ
で、有効熱効率とは、加熱ヒータ(9)によって熱処理
装置に投入したエネルギーのうち、被処理物の加熱処理
に利用される熱エネルギーの割合をいう。有効熱効率が
小さい熱処理装置において、加熱ヒータ(9)により供
給される熱エネルギーの大部分は、実際の熱処理に使用
されない無駄なエネルギーであり、熱損失と呼べる。
【0021】例えば、被処理物が電子部品または電子デ
バイス等の製品であり、これを加熱して焼結する場合、
被処理物の熱容量は一般に極めて小さいにもかかわら
ず、有効熱効率は5%以下である。これは、製品の品質
および歩留まりを維持するために、均一かつ安定した大
きな熱処理雰囲気の中で熱処理が実施されることによ
る。
【0022】有効熱効率が低いほど、熱処理装置に供給
すべき熱エネルギーの量は大きくなる。このことは、熱
処理装置のランニングコストを高くし、ひいては製品の
コストを上昇させる原因となる。そこで、熱処理装置に
供給されるエネルギーを減少させること(即ち省エネル
ギー化)によるコストダウンが望まれている。特に熱エ
ネルギーを多量に消費する熱処理装置のような生産設備
の省エネルギー化は、企業の生産活動と地球環境との共
生という視点からも、近年、より強く望まれている。
【0023】有効熱効率は、熱処理室内の温度差が大き
い2つの熱処理室が隣接して含まれる熱処理装置におい
て小さくなる傾向にある。即ち、熱損失は、図13に示
す熱処理装置の場合、加熱マッフル(10)と冷却マッフ
ル(13)との接続部分において最も多く生じる。以下
に、熱処理装置が図13に示すような加熱マッフルと冷
却マッフルを備えたマッフル炉であり、これを用いて被
処理物を加熱するときに熱損失が生じる理由を、加熱マ
ッフルに供給された熱がたどる伝熱経路と併せて説明す
る。
【0024】マッフルの周囲に配置された加熱手段から
供給された熱の一部は、マッフルを囲繞する炉壁が介在
する伝熱経路を経由する。この伝熱経路をたどる熱は炉
壁の外側表面から炉外に放出される。放出される熱は被
処理物に伝わらないものであるから、すべて熱損失とな
る。
【0025】別の伝熱経路としては、冷却マッフルの外
側に位置する冷却水管を流れる水がある。冷却水管を流
れる水から炉外に放出される熱には、加熱マッフル内で
加熱された被処理物および搬送体から放出される熱が含
まれる。具体的には、搬送体等から放出される熱は、最
終的に、冷却マッフル内の雰囲気ガスに伝達されて冷却
マッフルの壁に伝達され、あるいは搬送体と冷却マッフ
ルとの接触又は搬送体と冷却マッフルの壁との間で生じ
る熱放射により冷却マッフルの壁に伝達され、それから
冷却マッフルの外側に位置する冷却水管を流れる水に伝
達されて水の温度を上昇させ、それにより炉外に放出さ
れることとなる。
【0026】さらに別の伝熱経路として、雰囲気ガスを
媒体とする経路がある。この経路を通って熱が放出され
るとは、雰囲気ガスの給排気により熱が炉外へ持ち出さ
れることを意味する。このようにして放出される熱はす
べて熱損失となる。雰囲気ガスにより持ち出される熱の
量は熱処理方法に応じて変化する。例えば、有機溶媒等
を蒸発させる乾燥処理を熱処理として実施する場合に
は、雰囲気ガスの給排気量が大きくなるため、それに伴
って持ち出される熱の量も増加する。一方、熱処理する
際に蒸発する溶媒の量が僅かである場合(例えば、セラ
ミックを焼成する場合)には、雰囲気ガスの給排気量が
少なくてすみ、したがって炉外へ持ち出される熱の量
は、炉壁および冷却水を経由して放出される熱の量と比
較して非常に小さい。
【0027】マッフル炉のような熱処理装置に供給され
た入熱エネルギー(100%とする)のうち、前記の各
伝熱経路を経て放出される熱エネルギーの割合は、熱処
理装置の種類および操作条件(例えば、温度条件、熱処
理ゾーンの雰囲気ガスの給排気量、被処理物の搬送速
度、被処理物の種類等)によって変化する。例えば、電
子部品の製造工場において一般に用いられるマッフル構
造型加熱炉の場合、炉壁面から放出される熱エネルギー
は入熱エネルギーの30〜20%程度であり、冷却水に
よって炉外へ放出される熱は入熱エネルギーの70〜8
0%程度である。また、雰囲気ガスによって持ち出され
る熱は雰囲気ガスの排出条件によって変化し入熱エネル
ギーの数%〜数十%となる。なお、各伝熱経路を経て放
出される熱の割合は、入熱エネルギー、熱処理室内の温
度、被処理物の温度ならびに冷却水管を流れる水の温度
および流量等から算出できる。
【0028】冷却水によって炉外へ放出される熱の占め
る割合が大きい理由として、搬送体から放出される熱量
が大きいことが挙げられる。通常、搬送体は、加熱ゾー
ンにおいて被処理物の周囲の温度を一定とするために、
雰囲気ガスの温度と同じ温度となるように加熱される。
一般に、搬送体は、熱処理空間にて被処理物を搬送する
のに適した高い耐熱強度を有するように構成される。そ
の結果、搬送体の寸法は大きくなる傾向にあり、それに
伴って、搬送体の熱容量は必然的に大きくなる。熱容量
が大きくなると、昇温に必要なエネルギーはより大きく
なる。したがって、搬送体を冷却すると、それに蓄積さ
れていた大量の熱エネルギーが放出されることとなる。
搬送体は熱処理装置において被処理物を所望の温度の雰
囲気へ搬送するために欠くことのできないものである。
しかし、搬送体から放出される熱エネルギーは、被処理
物の周囲の温度を一定にすることのみを目的として供給
されたものであるから、熱損失になってしまう。この熱
損失は、通常、入熱エネルギーの20〜30%程度を占
める。
【0029】
【発明が解決しようとする課題】このように、熱損失が
生じる原因およびその量は、ある程度明らかにされてい
る。しかし、その検討は必ずしも十分ではなく、例え
ば、冷却水によって炉外へ放出される熱のうち、被処理
物に伝えられた熱が冷却ゾーンにて放出されると仮定し
た場合に被処理物から放出される熱、および搬送体から
放出される熱をそれぞれ差し引いた残りの約30〜50
%に相当する熱の伝熱経路の詳細な検討はなされていな
い。
【0030】本発明はかかる実情に鑑みてなされたもの
であり、熱損失が生じる原因と、各原因による熱損失の
割合とをより詳細に求めることによって、熱処理装置の
構造上の問題点を解明し、有効熱効率がより向上した熱
処理装置を提供することを課題とする。
【0031】
【課題を解決するための手段】本発明者らは熱損失につ
いてさらに詳細に検討した結果、上記のマッフル炉にお
いて、冷却水管を流れる水を介して放出される熱のう
ち、入熱エネルギーの約25〜45%に相当する熱が加
熱ゾーンを画定するマッフルの壁から冷却ゾーンを画定
するマッフルの壁への熱伝導に由来するものであること
を見出した。そして、この熱伝導を有効に抑制する手段
を熱処理装置に設けることによって、熱損失が従来のも
のよりも小さい本発明の熱処理装置を完成させるに至っ
た。
【0032】さらに、本発明者らは、入熱エネルギーの
約5〜20%に相当する熱が、加熱マッフル内の雰囲気
と冷却マッフル内の雰囲気との間の対流伝熱、および加
熱マッフルの壁の内側面から冷却ゾーンへの輻射伝熱に
由来するものであることを見出した。そして、この対流
伝熱および輻射伝熱を有効に抑制する手段を、マッフル
間の熱伝導を抑制する前記手段とともに熱処理装置に設
けることによって、熱損失をより小さくした熱処理装置
を完成させるに至った。
【0033】図12に、本発明者らが新たに得た知見に
基づいて作成した従来の電気加熱式マッフル炉の熱勘定
図の一例を示す。図12は、被処理物を焼成する熱処理
であって、溶媒の蒸発を殆ど伴わず、雰囲気ガスの給排
気量が小さい熱処理を実施した場合の熱勘定図に相当す
る。なお、図示した熱勘定図は一例にすぎず、放出され
る熱の割合は、熱処理の種類および炉の操作条件等によ
って異なる。
【0034】本明細書を通じて「熱処理」とは、被処理
物の昇温、恒温、降温またはこれらの組み合わせの処理
であって、被処理物の温度を上げる、下げる、または一
定に保つこと、あるいはこれらのいずれかの組み合わせ
の処理であってもよく、そのために被処理物に熱を加え
ること、またはそれから熱を奪うこと、あるいはこれら
の種々の組み合わせ(場合により断熱することを含んで
もよい)のいずれの処理であってもよいことに留意すべ
きである。この熱処理によって、被処理物の少なくとも
1つの特性(例えば、水分保有率、重量、電気抵抗、透
過率、形成膜厚またはその均一性、内部応力またはひず
み、強度、組成等)が所定のように変化する。
【0035】例えば、被処理物に熱を加える処理(即
ち、加熱処理)には、被処理物の温度を所定の温度に所
定時間で上げる処理、被処理物の温度を所定温度で所定
時間維持する処理および被処理物を所定の温度変化条件
にさらす処理等が含まれる。被処理物から熱を奪う処理
(即ち、冷却処理)には、熱を加えない方法、すなわち
自然冷却による方法、あるいは、動力により冷風を吹き
付けたり、所定の温度に制御可能な熱を吸収する面また
は放熱する面等を利用した強制冷却による方法により、
被処理物の温度を低下させる処理が含まれる。さらに、
冷却処理には、前述の徐冷が含まれる。被処理物を徐冷
する場合、被処理物は、急激な温度低下を防止するため
に、ヒータ等によって被処理物の温度よりも低い温度に
加熱された熱処理ゾーンにて冷却処理に付されることが
ある。このように加熱された熱処理ゾーンで実施される
熱処理であっても、被処理物の温度を低下させる処理で
あれば、当該処理は冷却処理であることに留意すべきで
ある。
【0036】以下に、本発明の熱処理装置、即ち、マッ
フルの壁間で生じる熱伝導を有効に抑制する手段が設け
られた熱処理装置を説明する。
【0037】本発明は、第1の要旨において、複数のマ
ッフルを熱処理室として含んで成り、マッフル内で被処
理物が搬送されて熱処理される熱処理装置であって、マ
ッフル内の温度が相互に異なる、少なくとも1組の隣接
する2つのマッフルが断熱構造部材を介して接続されて
おり、断熱構造部材は被処理物が通過するトンネル構造
を有している熱処理装置を提供する。
【0038】マッフル内の温度は一般にマッフル内の雰
囲気ガスの温度である。マッフル内の温度が異なる2つ
のマッフル間では熱伝導が生じる。本発明の熱処理装置
は、そのような熱伝導が生じる2つのマッフルの間に断
熱構造部材を介在させることによって、マッフル間の熱
伝導に由来する熱損失を小さくしたものである。
【0039】断熱構造部材とは、マッフル間の熱伝導を
小さくし得るように構成された部材をいう。断熱構造部
材は、マッフルとマッフルとの間での被処理物の搬送が
妨げられることのないようにトンネル構造を有し、その
内部を被処理物が通過するようになっている。
【0040】断熱構造部材が「トンネル構造」を有する
とは、断熱構造部材が開放された入口部および出口部を
有する空洞部を有し、入口部から搬入された被処理物が
出口部から排出される構造を有することをいう。即ち、
トンネル構造を有する断熱構造部材は、被処理物の搬送
方向に沿って貫通した空洞部を有する。この空洞部を被
処理物の搬送方向に対して垂直な方向に切断したときに
形成されるいずれの切断面も、完全に閉じた面を形成せ
ず、開いた部分を必ず有する。したがって、断熱構造部
材を熱処理室であるマッフルとマッフルの間に配置した
場合、断熱構造部材のトンネル構造は熱処理室間を連絡
する通路を提供することとなる。そのようなトンネル構
造は、壁で空洞部を画定することによって形成される。
【0041】本発明で用いられる断熱構造部材はまた、
被処理物の搬送方向において実質的な長さ(寸法)を有
するものである。即ち、断熱構造部材は、板状またはシ
ート状でない。
【0042】マッフル間の熱伝導を小さくし得るために
設けられる断熱構造部材は、具体的には以下のようにし
て構成される。
【0043】(1)断熱構造部材の壁を、マッフルを構
成する材料よりも小さい熱伝導率を有する材料で構成す
る。熱伝導率の小さい材料を用いることにより、加熱マ
ッフルから冷却マッフルに向かって熱が伝わることを有
効に抑制できる。
【0044】(2)断熱構造部材を、その壁の厚さが一
定でない、即ち部分的に小さくなるように構成する。壁
に厚さの小さい部分を存在させ、熱の伝わる方向(例え
ば、加熱マッフルから冷却マッフルに向かう方向)に対
して垂直な断面(以下、この面を熱伝導断面という)の
面積を小さくすれば、その断面において、加熱マッフル
から冷却マッフルに向かって熱が伝わることを有効に防
止できる。厚さが部分的に小さい壁は、凹部(例えば溝
部)を有する壁である。
【0045】(3)断熱構造部材の少なくとも一部を薄
板で構成する。即ち、断熱構造部材の壁の少なくとも一
部を薄板とする。ここで、「薄板」とは、マッフルの壁
の厚さよりも小さい厚さを有する板状物をいう。この断
熱構造部材は、上記(2)と同様、少なくとも一部を熱
伝導断面積が小さい板状物で構成したものであり、マッ
フル間の熱伝導を有効に抑制する。
【0046】断熱構造部材は、上記(1)〜(3)の構
成の少なくとも2つを組合せたものであってよい。好ま
しくは、断熱構造部材は、断熱構造部材が無い場合と比
較して、熱処理装置に供給される熱エネルギーを10%
以上減少させるように構成される。
【0047】本発明の熱処理装置においては、防熱板状
部材が、断熱構造部材のトンネル構造の両端部の少なく
とも一方に、被処理物の通過を妨げることなく設けられ
ていることが好ましい。
【0048】防熱板状部材とは、それにより隔てられる
空間と空間との間でそれが設けられない場合に生じる対
流伝熱を防止するとともに、一方の空間から他方の空間
への輻射伝熱を防止する面を与える板状物をいう。
【0049】また、防熱板状部材は、表面からの熱輻射
による熱損失を小さくするために、例えば鏡面のような
熱反射率の大きい表面を有するものであることが好まし
い。
【0050】防熱板状部材は、断熱構造部材の両端部の
少なくとも一方に設けられる。それにより、断熱構造部
材が有する空洞部の一部とマッフル内の熱処理ゾーン
は、断熱構造部材の両端部にて、防熱板状部材によって
隔てられることとなる。断熱構造部材の両端部は、各マ
ッフルの断熱構造部材と接する側の端部ともいえる。し
たがって、断熱構造部材の両端部の少なくとも一方に防
熱板状部材が設けられた態様には、防熱板状部材が断熱
構造部材とマッフルとの間に挟まれた態様、および防熱
板状部材がマッフルの端部にて、マッフルの内壁面に例
えば溶接または接着等により取り付けられた態様が含ま
れる。また、防熱板状部材は、伝熱を防止する面が伝熱
の方向(一般には被処理物の搬送方向)と角度をなすよ
うに(即ち平行とならないように)設けられる。好まし
くは、防熱板状部材の伝熱防止面は、伝熱の方向と直交
する。
【0051】別法として、防熱板状部材は、断熱構造部
材のトンネル構造の内部、即ち断熱構造部材の空洞部の
内部に設けてもよい。その場合、防熱板状部材は、断熱
構造部材の内壁面に溶接または接着等により取り付けら
れる。あるいは、断熱構造部材を2つのパーツで構成
し、2つのパーツ間に防熱板状部材を挟んでもよい。
【0052】防熱板状部材は、被処理物の通過を妨げる
ことなく設けられる。具体的には、防熱板状部材に開口
部または切り欠きを設け、被処理物および場合により搬
送体が当該開口部および切り欠きを通過し得るようにす
れば、被処理物の通過は妨げられない。
【0053】防熱板状部材を用いることにより、加熱ゾ
ーンと冷却ゾーンの雰囲気間で生じる対流伝熱および加
熱マッフルの壁の内側面からの輻射伝熱が有効に抑制さ
れる。したがって、防熱板状部材を断熱構造部材と組み
合わせて使用することにより、熱処理装置における熱損
失をより小さくし得る。
【0054】防熱板状部材と組み合わせる断熱構造部材
は、上記(1)〜(3)のいずれか1つの構成、または
(1)〜(3)のうち少なくとも2つを組み合わせた構
成を有する断熱構造部材である。
【0055】以上において、本発明の第1の要旨とし
て、熱処理室としてマッフルを含む熱処理装置を説明し
たが、本発明はマッフルでない熱処理室を複数含む熱処
理装置にも適用できる。そのような熱処理装置は、例え
ば、加熱手段または冷却手段が熱処理室内に設けられ、
被処理物が直接的に加熱または冷却されるようなもので
ある。
【0056】即ち、本発明は第2の要旨において、複数
の熱処理室を含んで成り、熱処理室内で被処理物が搬送
されて熱処理される熱処理装置であって、熱処理室内の
温度が相互に異なる、少なくとも1組の隣接する2つの
熱処理室が断熱構造部材を介して接続されており、断熱
構造部材は被処理物が通過するトンネル構造を有してい
る熱処理装置を提供する。第2の要旨において提供され
る熱処理装置は、上記第1の要旨において提供される熱
処理装置を含む。換言すれば、第1の要旨において提供
される熱処理装置は、第2の要旨において提供される熱
処理装置において、熱処理室内の温度が相互に異なる、
少なくとも1組の隣接する2つの熱処理室がマッフルで
あり、当該2つのマッフルが断熱構造部材を介して接続
されたものに相当する。
【0057】この熱処理装置において、断熱構造部材
は、2つの熱処理室を画定する壁の間に挿入されて、熱
処理室間で生じる熱伝導を有効に抑制する。断熱構造部
材の具体的な構成は、マッフル間の断熱構造部材に関し
て先に説明したものと同様であり、熱処理室の壁の材料
および厚さ等に応じて選択される。
【0058】第2の要旨において提供される熱処理装置
においても、防熱板状部材と断熱構造部材を組合せて使
用することが好ましい。その場合にも、熱処理装置にお
ける熱損失はより小さくなる。
【0059】以上において説明した本発明の熱処理装置
において、断熱構造部材は、接続部分で熱伝導が生じる
2つの隣接する熱処理室間(マッフル炉の場合はマッフ
ル間)に配置される。したがって、断熱構造部材は、一
方の熱処理室内の温度(一般には熱処理室内の雰囲気ガ
スの温度)が他方のそれよりも高い高温熱処理室−低温
熱処理室間(マッフル炉の場合は高温マッフル−低温マ
ッフル間)に配置される。
【0060】熱処理室内の温度差が大きいほど、熱伝導
による熱損失がより大きくなり、これを減少させること
が望まれる。したがって、2つの隣接する熱処理室間の
熱処理室内の温度差が大きいほど、それらの間に断熱構
造部材を配置することがより好ましく、より大きな効果
(即ち熱損失の減少)が得られる。断熱構造部材が配置
される熱処理室の組合せは、例えば、一方の熱処理内が
ヒータ等によって加熱され、熱処理室内の温度が400
℃以上である加熱室または徐冷室であり、他方の熱処理
室が冷却水等の冷媒によって冷却され、熱処理室内の温
度が室温程度である冷却室(急冷室)である。
【0061】2つの隣接する熱処理室は、ともにヒータ
等によって加熱される場合でも、一方の熱処理室内の温
度が他方のそれよりも数十度℃(例えば20℃)以上高
くなるように設定されることがある。そのような2つの
隣接する熱処理室の組合せとして、例えば、低温で加熱
する加熱室と高温で加熱する加熱室との組合せがある。
断熱構造部材は、そのような2つの隣接する熱処理室間
に配置してもよい。
【0062】防熱板状部材を使用する場合、防熱板状部
材は、熱処理室内の温度が高い熱処理室(加熱室)と接
する側の断熱構造部材の端部に設けることが好ましい。
高温の熱処理室の近くに防熱板状部材を設けると、熱損
失をより小さくできる。
【0063】
【発明の実施の形態】本発明の第1の要旨に係る熱処理
装置は、複数のマッフルを熱処理室として含んで成り、
マッフル内で被処理物が搬送されて熱処理される熱処理
装置である。そのような熱処理装置としては、例えば、
すべての熱処理室がマッフルであるもの、および一部の
熱処理室のみがマッフルであるものがある。熱処理装置
は、熱処理の種類に応じて1もしくは複数の加熱ゾーン
および/または1もしくは複数の冷却ゾーンを含む。熱
処理装置には、加熱ゾーンとして、昇温ゾーンのほか、
必要に応じて恒温ゾーンを含む。
【0064】加熱ゾーンおよび冷却ゾーンは、被処理物
が所望のように熱処理されるようにいずれかの組合せで
配置することができる。例えば、被処理物を昇温した
後、降温してから熱処理装置外へ搬送するように、被処
理物の進行方向に沿って、1またはそれ以上の加熱ゾー
ンおよび1またはそれ以上の冷却ゾーンをこの順に配置
してよい。あるいは、1またはそれ以上の加熱ゾーンと
1またはそれ以上の冷却ゾーンを交互に配置してもよ
い。あるいは、被処理物が、昇温ゾーン、恒温ゾーンお
よび降温ゾーンをこの順に通過するように、昇温するた
めの加熱ゾーン、温度を維持するための加熱ゾーン、お
よび冷却ゾーンの3種類の熱処理ゾーンをこの順に配置
してもよい。その他、従来のマッフル炉で採用されてい
た熱処理ゾーンのいずれの配置をも適用できる。
【0065】本発明の第1の要旨に係る熱処理装置にお
いては、接続部分において大きな熱伝導が生じる2つの
隣接するマッフル間(例えばマッフル内の温度差が80
0℃以上である隣接するマッフル間)に断熱構造部材が
設けられる。断熱構造部材の好ましい態様を図面を参照
して説明する。
【0066】図1は、加熱マッフルと冷却マッフルとの
間に設けられた、マッフルを構成する材料の熱伝導率よ
りも小さい熱伝導率を有する材料から成る壁で構成され
た断熱構造部材の一例を示す。図1は、図14と同様、
加熱マッフル(10)と冷却マッフル(13)の接続部分を
模式的に示したものであり、図1において、図14で使
用された符号と同じ符号は、図14においてそれらが表
す要素と同じ要素を表している。
【0067】図示した態様において、被処理物は各マッ
フル内を図1のx−y平面と平行な面上をx方向に進行
する。y方向は本図の紙面に対して鉛直な方向に相当す
る。加熱マッフル(10)および冷却マッフル(13)は、
被処理物が進行できるように、x方向に延びる貫通した
空洞部を熱処理ゾーン(14a,14b)として有してい
る。図示した態様において、加熱マッフル(10)は、熱
処理ゾーン(14a)の延びる方向(図ではx方向)に垂
直な断面(以下、特に断りのない限り空洞部に関して単
に「断面」というときはこの断面を指すものとする)が
例えば弓形または矩形であるトンネル構造を有してお
り、冷却マッフル(13)は熱処理ゾーン(14b)の断面
が例えば弓形または矩形であるトンネル構造を有してい
る。加熱マッフル(10)の熱処理ゾーン(14a)の断面
積は冷却マッフル(13)の熱処理ゾーン(14b)のそれ
よりも大きい。
【0068】加熱マッフル(10)および冷却マッフル
(13)にはそれぞれ加熱ヒータ(9)および冷却水管
(11)が、x−y平面に平行な2つの外壁面に設けられ
ている。被処理物は加熱マッフル(10)で加熱されて高
温(例えば、800℃)となり、続いて冷却マッフル
(13)で室温と同程度の温度にまで冷却される。したが
って、冷却マッフル(13)内は急冷ゾーンに相当する。
【0069】断熱構造部材(19)の壁を構成する材料
は、加熱マッフル(10)および冷却マッフル(13)を構
成する材料の熱伝導率よりも小さい熱伝導率を有するよ
う、加熱マッフル(10)および冷却マッフル(13)を構
成する材料に応じて選択される。
【0070】一般的なマッフル炉において、マッフル
は、ステンレスまたはインコネル等の金属材料で構成さ
れる。したがって、断熱構造部材は、それらの熱伝導率
よりも小さい熱伝導率を有する材料、具体的には、セラ
ミック、シリカおよび煉瓦等から選択される無機材料、
またはこれらの無機材料から成る多孔質材料(例えば中
空体またはガラスビーズを焼結したもの)から成る壁で
構成することが好ましい。
【0071】断熱構造部材(19)もまた、その内部を被
処理物が進行できるよう、x方向に延びる貫通した空洞
部(190)を備えたトンネル構造を有している。図示し
た態様においては、断熱構造部材(19)の空洞部(19
0)は、冷却マッフル(13)の熱処理ゾーン(14b)の
断面と一致するように形成され、冷却マッフル(13)の
内壁面と断熱構造部材(19)の内壁面とが面一となるよ
うに配置されている。そのため、断熱構造部材(19)の
端面の一部(19d)は加熱ゾーンに露出されている。加
熱ゾーンに露出している部分(19d)は、加熱マッフル
(10)内の雰囲気ガスが冷却マッフル(13)へ移動する
ことを阻止する。また、断熱構造部材(19)は、x−y
平面に平行な壁のうち、一方(図1においては上方の
壁)が他方よりも厚くなっている。
【0072】断熱構造部材(19)は、各マッフルとの接
続のために、その端部に接続部としてフランジ(19a)
を有する。マッフル接続部(16)と断熱構造部材接続部
(19a)は、ボルト/ナット(18)により機械的に接続
されている。マッフルと断熱構造部材の接続部(16,19
a)の間には、不燃性の材料(例えば、石綿、不燃カー
ボン系材料)から成るシール材(17)が挟み込まれてい
る。これは、各マッフル(10、13)の内側にある雰囲気
ガスをマッフルと断熱構造部材の接続部分から漏出させ
ないために用いられる。
【0073】図1に示す断熱構造部材は熱伝導率の小さ
い材料を用いて構成する断熱構造部材の一例にすぎな
い。別の例を図2に示す。図2において、図1で使用さ
れた符号と同じ符号は、図1においてそれらが表す要素
と同じ要素を表す。また、図2には、図1では示してい
ない搬送体(メッシュベルト)(24)および被処理物
(25)を併せて示している。
【0074】熱伝導率の小さい材料から成る断熱構造部
材は、熱処理および熱処理装置全体の機械的強度等に悪
影響を及ぼさず、また、マッフル間の熱伝導を有効に抑
制し得る限りにおいて、いずれの形状および寸法を有し
てよい。断熱構造部材は、マッフルの寸法、隣接する熱
処理室内の温度(雰囲気ガスの温度)の差、およびマッ
フル間で生じる熱伝導を抑制すべき度合い等を考慮して
設計すればよい。例えば、空洞部の断面は矩形のほか、
円形、半円形または弓形であってよい。一般に、断熱構
造部材の長さ(被処理物の進行方向における長さ)が大
きいほど、また、断熱構造部材の壁が薄いほど、マッフ
ル間の熱伝導をより抑制でき、したがって熱損失をより
減少させることができる。
【0075】好ましい断熱構造部材の一例として、空洞
部の断面の形状が半円形(またはアーケード型)であ
り、長さが100〜300mmであり、壁の厚さが10〜
30mmである断熱構造部材が挙げられる。尤も、これは
一例にすぎず、断熱構造部材の形状および寸法は被処理
物の種類等に応じて適宜選択される。
【0076】図3は、マッフル間に配置された、断熱構
造部材を構成する壁の厚さが一定でない断熱構造部材の
一例である。図3において図1で使用された符号と同じ
符号は、図1においてそれらが表す要素と同じ要素を表
している。
【0077】図3に示す断熱構造部材は、図1に示す断
熱構造部材のx−y平面に平行な壁の外側表面に、y方
向に延びる溝状の凹部(20a)を有するものである。そ
の結果、凹部(20a)においては壁の厚さが小さくなっ
て、熱伝導断面積が小さくなっているため、熱が伝わり
にくい。
【0078】凹部の形状、凹部の深さ、凹部の数および
凹部の方向等は、熱処理および熱処理装置全体の機械的
強度等に悪影響を及ぼさず、また、マッフル間の熱伝導
を有効に抑制し得る限りにおいて、特定の形状、深さ、
数および方向等に限定されない。例えば、溝状の凹部は
図3のような楔形状でなく、矩形のものであってもよ
い。溝状の凹部はy方向ではなく、x方向に延びていて
もよい。一般に、凹部の深さが深いほど、また、凹部の
数が多いほど、マッフル間の熱伝導をより抑制でき、し
たがって熱損失を減少させることができる。
【0079】凹部は、断熱構造部材の壁の任意の場所に
あってよい。例えば、断熱構造部材が、矩形または正方
形の断面の空洞部を有する方形の管状体である場合に
は、構造部材を形成するする4面の壁のうち、少なくと
も1面の壁に少なくとも1つの凹部があればよい。凹部
は、好ましくは加熱マッフル(高温マッフル)に近い側
に設けられる。凹部は、断熱構造部材の壁の外側表面に
加えて、内側表面にあってもよい。あるいは、凹部は断
熱構造部材の壁の内側表面のみにあってよく、または外
側表面および内側表面の両方にあってよい。
【0080】凹部は、例えば、断熱構造部材を構成する
壁を切削等して形成することができる。あるいは、凹部
を有するように成形した壁を用いてもよい。
【0081】凹部は、好ましくは、その幅が30〜50
mm程度であり、深さが5〜15mm程度である楔形状の断
面を有する溝状であって、空洞部の断面の周方向に延び
る(即ち、空洞部を囲む)溝状である。そのような凹部
は、好ましくは、1つの断熱構造部材につき2〜5個形
成される。
【0082】溝状の凹部を有する断熱構造部材の壁は、
厚さが一定でない断熱構造部材の壁の一態様である。厚
さが一定でない断熱構造部材の壁としては他に、例えば
図4に示すように、壁の外側表面および/または内側表
面に小さなくぼみ(20b)を複数個設けた壁がある。
【0083】厚さが一定でない壁は、マッフルを構成す
る材料よりも小さい熱伝導率を有する材料で形成するこ
とが好ましい。このような壁を用いて断熱構造部材を構
成すれば、マッフルとマッフルとの間で生じる熱伝導を
より有効に抑制することができる。
【0084】図5および図6は、加熱マッフル(10)と
冷却マッフル(13)との間に配置された、全体が薄板で
構成された断熱構造部材の一例である。図5および図6
において、図1および図2で使用された符号と同じ符号
は、図1および図2においてそれらが表す要素と同じ要
素を表している。この態様の断熱構造部材は、壁の熱伝
導断面積が全体にわたって小さく、それによりマッフル
間の熱伝導を有効に抑制する。
【0085】図5において、断熱構造部材(21)は全体
が薄板で構成され、x方向に延びる貫通した空洞部(21
0)を有している。空洞部(210)の断面は矩形である。
断熱構造部材(21)には、薄板を折り曲げて形成したフ
ランジ(21a)が設けられている。このフランジ(21
a)の折曲げ角度を調節することにより、空洞部(21
0)の両端の断面を、それぞれ加熱マッフル(10)と冷
却マッフル(13)の熱処理ゾーン(14a,14b)の断面
に一致させている。
【0086】図6においては、薄板から成る断熱構造部
材(21)を、接続部材(22)を使用してマッフル接続部
(16)に接続している。断熱構造部材(21)は、適当な
手段(例えば、耐熱接着剤、カシメ、または溶接等)に
より、接続部材(22)に固定する。接続部材(22)は、
例えば、マッフルを構成する材料と同じ材料(例えばス
テンレス等)から成る。
【0087】少なくとも一部が薄板から成る断熱構造部
材の形状寸法および材料等は、熱処理および熱処理装置
全体の機械的強度等に悪影響を及ぼさず、また、マッフ
ル間の熱伝導を有効に抑制し得る限りにおいて、特定の
ものに限定されない。但し、断熱構造部材において、薄
板で構成された部分の機械的強度は小さくなる傾向にあ
り、薄板を用いる場合には特にその点を考慮する必要が
ある。
【0088】薄板の厚さは、マッフルを構成する壁の厚
さよりも小さい。マッフルを構成する壁の厚さが一定で
ない場合、薄板の厚さはマッフルの壁の最も小さい厚さ
よりも小さくすることが好ましい。薄板の厚さが小さい
ほど、マッフルとマッフルの間で伝導する熱エネルギー
をより小さくすることができる。薄板の厚さは、好まし
くは、マッフルの壁の厚さの1/2〜1/50、より好
ましくは1/10〜1/20である。
【0089】薄板は熱伝導断面積が十分に小さく、その
ことがマッフル間で伝導する熱エネルギーを小さくする
から、薄板を構成する材料の熱伝導率がマッフルとマッ
フルの間で生じる熱伝導に及ぼす影響は小さい。したが
って、薄板を構成する材料は特定の材料に限定されな
い。薄板は、例えば、マッフルを構成する材料と同じ材
料で構成してもよく、具体的には、薄板は、ステンレス
鋼またはインコネルで構成してよい。薄板は、熱伝導率
の小さい材料、例えば、セラミック、カーボンもしくは
石英ガラスで構成してもよい。薄板は、前記材料で構成
したメッシュ材であって、圧力差が無いときにガスを実
質的に透過させない濾過用メッシュ材であってよい。あ
るいは、薄板は、メッシュ材を金属箔で被覆したもの又
は複数のメッシュ材を重ねたものであってもよい。熱処
理温度が低い場合または熱による機械的強度の低下等が
生じない場合には、耐熱性樹脂で薄板を構成してもよ
い。
【0090】薄板は断熱構造部材の一部のみを構成して
よい。例えば、断熱構造部材の一部を薄板とし、その他
の部分を、熱伝導率の小さい材料から成る厚い壁で構成
して、熱処理装置の機械的強度を確保するようにしても
よい。例えば、断熱構造部材が矩形または正方形の断面
の空洞部を有する方形体である場合、向かい合う1組の
壁を薄板で構成し、他の1組の壁を熱伝導率の小さい材
料からなる厚い(例えばマッフルの壁と同じ厚さまたは
それよりも大きい厚さを有する)壁としてもよい。
【0091】一般に、熱処理中、加熱によりマッフルの
延び及び熱変形が発生して、マッフルの接続部分に応力
が集中し、その結果、マッフル間で隙間が生じてマッフ
ル内の雰囲気ガスが漏出することがある。同様のこと
は、マッフルとマッフルの間に上記断熱構造部材を設け
た場合、マッフルと断熱構造部材との接続部分において
も生じやすい。マッフル内の雰囲気ガスが漏出すると、
例えばガスが腐食性であれば装置に錆が生じる、あるい
はガスが有毒であれば人体に悪影響を及ぼすという不都
合が生じる。かかる不都合は、断熱構造部材を容易に変
形し得る構造とすることで回避できる。即ち、変形可能
な断熱構造部材を一種の応力吸収材として作用させるこ
とにより、マッフルに延び等が生じても、接続部分に応
力が集中することを緩和できる。
【0092】具体的には、断熱構造部材を図7に示すよ
うな構造とすることが好ましい。図7は、全体を薄板で
構成した断熱構造部材であって、変形可能なものの一例
を示す。図7において、図5で使用された符号と同じ符
号は、図5においてそれらが表す要素と同じ要素を表し
ている。
【0093】図7に示す断熱構造部材(21)は、複数の
曲げ部(23)を形成した薄板を用いて、曲げ部(23)の
リブ(23a)が被処理物の進行方向に対して垂直となる
ように構成したものである。この曲げ部(23)は、マッ
フルの延びおよび/または熱変形等が生じた場合に直ち
に変形して、マッフルと断熱構造部材との接続部分に応
力が集中することを防止する。曲げ部のリブは、図示す
るように被処理物の進行方向に対して垂直な方向に延び
ていることが好ましいが、被処理物の進行方向に対して
平行でない方向であればいずれの方向に延びていてよ
い。曲げ部は、リブが断熱構造部材の内壁面に形成され
るように形成してよい。曲げ部のリブは、その頂部が尖
っていない湾曲したものであってよい。
【0094】変形可能な断熱構造部材の別の態様の一例
を図8に示す。図8において、図1で使用された符号と
同じ符号は、図1においてそれらが表す要素と同じ要素
を表している。図8に示す断熱構造部材(19)は、図1
と同様、マッフルを構成する材料よりも小さい熱伝導率
を有する材料で構成したものである。図示した断熱構造
部材(19)は、鉤手部(19b)が凹部(19c)内で摺動
することにより伸縮して、マッフル部で生じたx方向の
延びを吸収する。
【0095】容易に変形可能なこの断熱構造部材は、マ
ッフルとマッフルの間の接続部分で生じ得る雰囲気ガス
の漏出を有効に防止する手段としても有用である。即
ち、容易に変形可能な断熱構造部材は、マッフル間の熱
伝導を抑制する部材としてだけではなく、マッフルの接
続部分のシーリングをより向上させるための接続構造部
材として、マッフルとマッフルの間に配置させてよい。
【0096】次に、断熱構造部材に加えて防熱板状部材
を含む熱処理装置について説明する。図9は、防熱板状
部材を含む熱処理装置の一例を示し、図6に示す熱処理
装置に防熱板状部材を配置したものに相当する。図9に
おいて、図6で使用された符号と同じ符号は、図6にお
いてそれらが表す要素と同じ要素を表している。図10
(A)は、被処理物の進行方向から見た防熱板状部材の
正面図である。
【0097】防熱板状部材(26)は、加熱マッフル接続
部(30)と断熱構造部材の接続部材(22)の間に、シー
ル材(17)とともに挟み込まれ、ボルト/ナット(18)
で固定されている。防熱板状部材(26)は、図10
(A)に示すように、矩形であって、被処理物(25)と
搬送体(24)が通過するのに必要な大きさの開口部(2
9)を有する。図9に示す装置においては、防熱板状部
材(26)の4辺がそれぞれ、加熱マッフル接続部(30)
と断熱構造部材の接続部材(22)の間で挟持されてい
る。
【0098】図9において、防熱板状部材(26)は、被
処理物が通過するのに必要な開口部を除いて、加熱マッ
フルの端部を遮蔽している。防熱板状部材(26)を設け
ることによって、加熱マッフル(10)の熱処理ゾーン
(14a)から冷却マッフル(13)の熱処理ゾーン(14
b)へ雰囲気ガスが流れ込むこと、ならびに加熱マッフ
ル(10)の内壁面から冷却マッフル(13)内に輻射熱
(図中の白抜き矢印に相当)が伝わることが有効に防止
される。
【0099】防熱板状部材の別の態様を図10(B)お
よび(C)に示す。図10(B)に示す防熱板状部材
は、矩形の板状部材である。この防熱板状部材は、被処
理物(25)および搬送体(24)が通過する間隙部(2
9’)が形成されるように、z方向の長さが熱処理ゾー
ンの断面(破線で表示)のz方向の長さよりも小さい。
【0100】図10(C)に示す防熱板状部材は、被処
理物(25)と搬送体(24)が通過するのに必要な大きさ
の切り欠き(29”)が形成された矩形の板状部材であ
る。この防熱板状部材もまた、z方向の長さが熱処理ゾ
ーン(または断熱構造部材の空洞部)の断面(破線で表
示)のz方向の長さよりも小さい。
【0101】図10(B)および(C)に示す防熱板状
部材は、例えば、加熱ゾーンの断熱構造部材と接する側
の端部が遮蔽されるように、加熱マッフルの内壁面に取
り付けられる。図10(B)および(C)に示す防熱板
状部材はまた、図9に示すようにマッフルと断熱構造部
材との間で挟持させてもよい。その場合、防熱板状部材
が挟持されないマッフル−断熱構造部材間の接続部分に
防熱板状部材の厚さに相当する間隙が生じることがあ
る。そのような間隙が生じる接続部分には、例えば、防
熱板状部材と同じ厚さを有する板状部材を挟んで、雰囲
気ガスが漏れないようにする必要がある。あるいは、断
熱構造部材の一部の寸法を他の部分の寸法と異なるよう
にすることによって、間隙が生じないようにしてよい。
【0102】図10(A)〜(C)に示す防熱板状部材
は、それぞれ例示にすぎず、他の形状を有してよい。
【0103】防熱板状部材は、熱処理および熱処理装置
全体の機械的強度等に悪影響を及ぼさない限りにおい
て、いずれの材料で形成されてよい。防熱板状部材は、
例えば、ステンレス鋼板等の金属板、または圧力差が無
いときにガスを実質的に通過させないフィルター状のメ
ッシュ材であることが好ましい。さらに、防熱板状部材
は、それ自身による輻射伝熱を小さくするために、表面
放射率の小さいものであることが好ましい。表面放射率
を小さくする方法としては、例えば、防熱板状部材の表
面を研磨処理する方法が挙げられる。
【0104】以上、本発明の第1の要旨に係る熱処理装
置を、加熱マッフルと冷却マッフルの接続部分を例に挙
げて説明した。本発明の熱処理装置は、一方のマッフル
内の温度が他方のマッフル内の温度よりも高い、1組の
隣接する2つのマッフルの間、即ち高温マッフル−低温
マッフル間に断熱構造部材が設けられた熱処理装置であ
る。上記において説明した加熱マッフル−冷却マッフル
の組合せは、高温マッフル−低温マッフルの組合せの1
つである。高温マッフル−低温マッフルの別の組合せ
は、例えば、一方のマッフル内の温度が他方のそれより
も50℃以上高い加熱マッフル−加熱マッフルであり、
それらの間に断熱構造部材が設けられた熱処理装置も本
発明に含まれる。断熱構造部材はまた、1つの熱処理装
置において複数設けられていてよい。
【0105】本発明は、マッフル炉だけでなく、複数の
熱処理室を有するその他の熱処理装置にも適用される。
本発明はまた、バッチ式加熱炉等にも適用できる。いず
れの態様の熱処理装置においても、断熱構造部材の材
料、形状および寸法等(例えば、断熱構部材の壁の材料
の熱伝導率、および断熱構造部材の壁の一部を薄板で構
成する場合の薄板の厚さ等)は、熱処理室の壁の材料や
厚さ等に応じて選択するとよい。マッフル炉以外の熱処
理装置においても、図10(A)〜(C)に示すような
防熱板状部材を適宜設けてよい。
【0106】本発明の熱処理装置において、被処理物の
搬送装置は図示したようなメッシュベルトに限定され
ず、ローラーハース等のその他の搬送装置であってよ
い。被処理物は、これらの搬送装置によって連続的に又
は間欠的に熱処理室内で搬送される。さらに、本発明の
熱処理装置には、上記において説明しなかったその他の
部材または要素であって、熱処理装置において常套的に
用いられているもの(例えば給排気装置等)を必要に応
じて設けることができる。
【0107】本発明は、搬送方式、加熱方式、および/
または用途の如何を問わず、複数の熱処理室を有する熱
処理装置に好ましく適用できる。本発明の熱処理装置
は、具体的には、プラズマ・ディスプレイ・パネル、太
陽電池パネルおよび抵抗チップ等の各種デバイスおよび
電子部品を最終製品とする種々の製品の製造過程におい
て熱処理を実施するために使用できる。
【0108】
【実施例】本発明を実施例により具体的に説明する。な
お、以下において「上」または「下」というときは、被
処理物の搬送面および搬送方向が地表面に対して水平で
ある場合の、鉛直方向における「上」および「下」をい
い、単に「長さ」というときは、被処理物の進行方向と
平行な方向の長さをいうものとする。また、「幅」と
は、被処理物の搬送面と平行であり被処理物の進行方向
に対して垂直な方向をいう。
【0109】(実施例1)1つの加熱マッフルと1つの
冷却マッフルとから成る熱処理装置であって、熱伝導率
の小さい材料から成る壁で形成された断熱構造部材を、
図2に示すように加熱マッフルと冷却マッフルとの間に
設けた熱処理装置を作製した。
【0110】本実施例における加熱マッフル(10)、冷
却マッフル(13)、メッシュベルト(24)、被処理物
(25)および断熱構造部材(19)の材料および形状寸法
は次のとおりである。
【0111】1)加熱マッフル ・材料:インコネル600(熱伝導率14.8W/m・
K(常温)); ・壁の厚さ:10mm; ・マッフルの形状:上側壁が弓なりである半円形の断面
を有する管状体であって、端面に接続部としてフランジ
を溶接により一体化したもの; ・マッフルの幅×最大高さ×長さ:1000mm×250
mm×7000mm; ・熱処理ゾーンの断面:幅980mm×最大高さ225mm
の半円形; 2)冷却マッフル ・材料:SUS304(熱伝導率16.5W/m・K
(常温)); ・壁の厚さ:7mm; ・マッフルの形状:矩形の断面を有する管状体であっ
て、端面に接続部としてフランジを溶接により一体化し
たもの; ・マッフルの幅×高さ×長さ:1000mm×60mm×2
000mm; ・熱処理ゾーンの断面:幅986mm×高さ46mmの矩形 3)メッシュベルト ・材料:SUS316; ・幅×厚さ:940mm×10mm 4)被処理物 ・PDP用ガラス基板; ・幅×厚さ×長さ:600mm×5mm×900mm 5)断熱構造部材 ・材料:シリカ系耐熱材料(日本マイクロサーム社製、
商品名:マイクロサーム、熱伝導率:0.05W/m・
K(常温)); ・形状:断面が矩形の空洞部を有する矩形の管状体; ・幅×高さ×長さ:1086mm×350mm×100mm; ・上側壁の厚さ:70mm、下側壁の厚さ:50mm、側方
の壁の厚さ:20mm; ・空洞部の断面:幅986mm×高さ46mmの矩形
【0112】上記の加熱マッフルと断熱構造部材の間、
および冷却マッフルと断熱構造部材の間は、図示するよ
うに、マッフルを構成する壁と、断熱構造部材を構成す
る壁との間にカーボン製シール材(17)を挟み、ボルト
/ナット(18)を用いてマッフルのフランジ部(16)と
断熱構造部材(19)を固定して接続した。
【0113】(実施例2)薄板から成る断熱構造部材を
図6に示すように加熱マッフルと冷却マッフルとの間に
設けて熱処理装置を作製した。実施例2の熱処理装置に
おける加熱マッフルおよび冷却マッフルは、実施例1の
それらと同じである。
【0114】本実施例では、薄板として厚さ1.0mmの
ステンレス鋼板を用意し、これを用いて、空洞部の断面
形状が矩形である長さ100mmの断熱構造部材(21)を
構成した。また、断熱構造部材とマッフルとを接続する
ために、ステンレス鋼から成る接続部材(22)を使用し
た。断熱構造部材(21)を構成する薄板は溶接により接
続部材(22)に固定した。
【0115】(実施例3)実施例2の熱処理装置におい
て、図9に示すように、さらに防熱板状部材(26)を加
熱マッフル接続部(30)と断熱構造部材の接続部材(2
2)との間に配置した熱処理装置を作製した。実施例3
の熱処理装置における加熱マッフル、冷却マッフルおよ
び断熱構造部材等は実施例2のそれらと同一である。防
熱板状部材(26)として、厚さ1.0mm、表面放射率
0.01のステンレス鋼板を使用した。防熱板状部材に
は、図10(A)に示すように、メッシュベルト(24)
および被処理物(25)が通過できるように、高さ25m
m、幅980mmの開口部(29)を設けた。
【0116】(比較例)比較のために、断熱構造部材お
よび防熱板状部材のいずれをも使用せず、図14に示す
従来の熱処理装置のように、加熱マッフル(10)と冷却
マッフル(13)とをシール材(17)を介して接続した熱
処理装置を作製した。
【0117】実施例1〜3および比較例の熱処理装置に
おいて、加熱ゾーンを加熱するヒータブロックの温度設
定を全て850℃とし、冷却ゾーンを冷却する冷却水量
を5m/minとし、メッシュベルトの搬送スピードを
100mm/minとして、加熱炉に供給される全消費電力
量を測定した。各マッフル構造型加熱炉に供給された電
力消費量を比較のために図11に示す。
【0118】従来のようにマッフル同士を接続した場合
(比較例)、炉全体が消費する電力は40kWであっ
た。比較例の熱処理装置の消費電力40kWを基準10
0として比較すると、本発明品に相当する実施例1〜3
の熱処理装置の消費電力は、比較例のそれよりも15〜
25%程度低下した。実施例3のように防熱板状部材と
断熱構造部材を組み合わせると、ヒータ電力消費量を最
も多く(25%)削減することができた。このことか
ら、防熱板状部材と断熱構造部材の組合せが、消費電力
の低下に最も効果的であることが判る。
【0119】
【発明の効果】本発明の熱処理装置によってもたらされ
る効果は次のとおりである。本発明の熱処理装置は、2
つの隣接する熱処理室(例えばマッフル)間に断熱構造
部材、および適宜、防熱板状部材を配置することを特徴
とするものである。この特徴により、熱処理装置(例え
ばマッフル構造型加熱炉等)での熱損失量を小さくする
ことができるから、熱処理装置で消費されるトータルの
熱エネルギーを削減できる。したがって、本発明によれ
ば、熱処理後の製品の品質および歩留まりに影響を与え
ることなく、省エネルギー化が図れるとともに、製品を
安価なランニングコストで製造することが可能となる。
【0120】さらに、上記断熱構造部材および防熱板状
部材は、モータ等を用いて機械的に動かす(例えば上下
動させる)部材を含まない。したがって、本発明の熱処
理装置は、隣接する2つの熱処理室のうち、一方の熱処
理室内の温度がモータ等による機械的な動きを困難にす
るほど高い場合でも、上記の効果を良好に奏する。
【0121】さらにまた、上記断熱構造部材および防熱
板状部材は、熱処理室内の雰囲気ガスを熱処理室の外部
に漏出させることなく、2つの隣接する熱処理室間の伝
熱を抑制し得る。したがって、本発明の熱処理装置によ
れば、熱処理室内の雰囲気ガスを乱すことなく、有効熱
効率をより高くして安定的に被処理物を熱処理すること
が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 加熱マッフルと冷却マッフルとの間に断熱構
造部材を配置した本発明の熱処理装置の一例を部分的に
模式的に示す断面図である。
【図2】 加熱マッフルと冷却マッフルとの間に断熱構
造部材を配置した本発明の熱処理装置の別の一例を部分
的に模式的に示す断面図である。
【図3】 加熱マッフルと冷却マッフルとの間に断熱構
造部材を配置した本発明の熱処理装置の更に別の一例を
模式的に部分的に示す断面図である。
【図4】 凹部を有する断熱構造部材の壁の一例を模式
的に示す斜視図である。
【図5】 加熱マッフルと冷却マッフルとの間に薄板か
ら成る断熱構造部材を配置した本発明の熱処理装置の更
に別の一例を部分的に模式的に示す断面図である。
【図6】 加熱マッフルと冷却マッフルとの間に別の薄
板から成る断熱構造部材を配置した本発明の熱処理装置
の更に別の一例を部分的に模式的に示す断面図である。
【図7】 加熱マッフルと冷却マッフルとの間に変形可
能な断熱構造部材を配置した本発明の熱処理装置の更に
別の一例を部分的に模式的に示す断面図である。
【図8】 加熱マッフルと冷却マッフルとの間に別の変
形可能な断熱構造部材を配置した本発明の熱処理装置の
更に別の一例を部分的に模式的に示す断面図である。
【図9】 加熱マッフルと冷却マッフルとの間に断熱構
造部材を、加熱マッフルと断熱構造部材との間に防熱板
状部材を配置した本発明の熱処理装置の更に別の一例を
部分的に模式的に示す断面図である。
【図10】 (A)〜(C)はそれぞれ防熱板状部材の
一例を模式的に示す、被処理物の進行方向から見た模式
的正面図である。
【図11】 本発明の熱処理装置と従来の熱処理装置の
電力消費量を比較したグラフである。
【図12】 従来のマッフル構造型加熱炉の熱勘定図の
一例である。
【図13】 従来のマッフル構造型加熱炉の斜視図であ
る。
【図14】 従来のマッフル構造型加熱炉のマッフルの
接続部分を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1...電気ヒータモジュール、2...加熱マッフル、
3...メッシュベルト、4...被処理物、5...被処理物
搬入部(ローダー)、6...被処理物搬出部(アンロー
ダー)、7...冷却水管、8...冷却マッフル、11
0...壁、9...加熱ヒータ、10...加熱マッフル、1
1...冷却水管、12...耐熱セメント、13...冷却マ
ッフル、14a,14b...熱処理ゾーン、15...マッ
フル外部雰囲気、16...マッフル接続部、17...シー
ル材、18...ボルト/ナット、19...断熱構造部材、
19a...断熱構造部材接続部(フランジ)、19b...
鉤手部、19c...凹部、19d...端面、190...空
洞部、20a...凹部、20b...くぼみ、21...断熱
構造部材、21a...フランジ、210...空洞部、2
2...接続部材、23...曲げ部、23a...リブ、2
4...メッシュベルトコンベア(搬送体)、25...被処
理物、26...防熱板状部材、29...防熱板状部材の開
口部、29’...間隙部、29”...切り欠き、30...
加熱マッフル接続部。

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数の熱処理室を含んで成り、熱処理室
    内で被処理物が搬送されて熱処理される熱処理装置であ
    って、熱処理室内の温度が相互に異なる、少なくとも1
    組の隣接する2つの熱処理室が断熱構造部材を介して接
    続されており、断熱構造部材は被処理物が通過するトン
    ネル構造を有している熱処理装置。
  2. 【請求項2】 熱処理室内の温度が相互に異なる、少な
    くとも1組の隣接する2つの熱処理室が、マッフルであ
    る請求項1に記載の熱処理装置。
  3. 【請求項3】 断熱構造部材の壁を構成する材料が熱処
    理室の壁を構成する材料よりも小さい熱伝導率を有する
    材料である請求項1または請求項2に記載の熱処理装
    置。
  4. 【請求項4】 断熱構造部材の壁の厚さが一定でない請
    求項1〜3のいずれか1項に記載の熱処理装置。
  5. 【請求項5】 断熱構造部材の壁が溝部を有するもので
    ある請求項4に記載の熱処理装置。
  6. 【請求項6】 断熱構造部材の壁の少なくとも一部が薄
    板から成る請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱処理
    装置。
  7. 【請求項7】 断熱構造部材が変形可能である請求項1
    〜6のいずれか1項に記載の熱処理装置。
  8. 【請求項8】 防熱板状部材が、断熱構造部材の両端部
    の少なくとも一方に、被処理物の通過を妨げることなく
    設けられている請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱
    処理装置。
  9. 【請求項9】 防熱板状部材が、搬送体と被処理物が通
    過し得る開口部を有するものである、請求項8に記載の
    熱処理装置。
  10. 【請求項10】 熱処理室内の温度が相互に異なる、少
    なくとも1組の隣接する2つの熱処理室の一方の熱処理
    室内の温度が、他方の熱処理室内の温度よりも50℃以
    上高い請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱処理装
    置。
  11. 【請求項11】 熱処理室内の温度が相互に異なる、少
    なくとも1組の隣接する2つの熱処理室の一方の熱処理
    室が加熱室であり、他方が冷却室である、請求項10に
    記載の熱処理装置。
  12. 【請求項12】 加熱室が加熱マッフルであり、冷却室
    が冷却マッフルである請求項11に記載の熱処理装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2002101780A1 (fr) * 2001-05-30 2002-12-19 Matsushita Electric Industrial Co., Ltd. Procede de fabrication d'affichages a decharge gazeuse, support de table et son procede de fabrication
CN107642983A (zh) * 2017-10-26 2018-01-30 钦州学院 一种高效马弗炉

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