JP2002069023A - ビスフェノールの製造方法 - Google Patents

ビスフェノールの製造方法

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reaction
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Kouichi Hayashi
功一 早志
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 フェノール類とケトンとから、効率よくビス
フェノールを製造する。 【解決手段】 スルホン酸基の一部がメルカプトアルキ
ルピリジンで部分的に変性されたスルホン酸型陽イオン
交換樹脂が充填されている流通式反応器に、フェノール
類とケトンを含む原料流体を導入してビスフェノールを
生成させるに際し、反応器から流出する反応生成液の温
度が70℃以上、ビスフェノールの生成速度が70g/
L−触媒・時間以上、生成したビスフェノール1kg当
りの乾燥触媒原単位が2g以下となるように、原料流体
の温度、組成及び容積速度を制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はスルホン酸基の一部
がメルカプトアルキルピリジン類で変性されているスル
ホン酸型陽イオン交換樹脂を触媒として、フェノール類
とケトンを反応させてビスフェノールを製造する方法の
改良に関するものである。本発明によれば長時間に亘
り、高い触媒活性を維持しつつビスフェノールを製造す
ることができる。
【0002】
【従来の技術】フェノール類とケトンを反応させてビス
フェノールを製造することは公知である。最も大規模に
行われているのは、フェノールとアセトンからのビスフ
ェノールAの製造である。この反応の触媒としては種々
のものが提案されているが、スルホン酸型陽イオン交換
樹脂をアミノチオール化合物で変性したものが最も好ま
しいと考えられている。変性に用いるアミノチオール化
合物として最も一般的なのは2−アミノエタンチオール
であるが、メルカプトアルキルピリジン類も好適な変性
剤であることが知られている。
【0003】アミノチオール化合物で変性したスルホン
酸型陽イオン交換樹脂を触媒とするビスフェノールの製
造方法としては、懸濁床方式と固定床方式とが提案され
ているが、工業的には固定床方式が好ましいと考えられ
る。この反応方式によるときは、フェノール類とケトン
を含む原料流体を触媒が充填されている反応器に連続的
に導入してビスフェノールを生成させる。反応器から流
出した反応生成液は、蒸留して副生した水及び未反応の
ケトンを留去したのち、通常は晶析により生成したビス
フェノールを回収する。未反応のフェノール類、副生物
及び残留したビスフェノールなどを含む残留液は、原料
流体の一部として反応器に循環される。また反応生成液
から留出させたケトンは蒸留して同伴している水を除去
したのち、原料流体の一部として反応器に循環される。
このケトンの脱水蒸留の負荷を低減させるため、通常は
原料流体中にケトンに対して化学量論量よりも大過剰の
フェノール類を存在させて、ケトンの反応率ができるだ
け高くなるようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ビスフェノールの製造
に際しては、触媒費用を低減させるため、ビスフェノー
ルの触媒原単位(=生産されたビスフェノール1kg当
りの触媒の消費量)をできるだけ低くすることが求めら
れている。また反応器の生産性を高くするため、反応器
に充填されている触媒1リットル当りのビスフェノール
の生産速度を大きくすることも求められている。更にビ
スフェノールを安定して生産するため、触媒の失活速度
を小さくすることも求められている。本発明はこのよう
な要求を満足させるビスフェノールの製造方法を提供し
ようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明では、スルホン酸
基の一部がメルカプトアルキルピリジン類で変性されて
いるスルホン酸型陽イオン交換樹脂が触媒として充填さ
れている流通式反応器に、フェノール類とケトンを含む
原料流体を導入し、反応器から流出する反応生成液の温
度が70℃以上、ビスフェノールの生成速度が70g/
L−触媒・時間以上、生成したビスフェノール1kg当
りの乾燥触媒原単位が2g以下となるように、原料流体
の温度、組成及び容積速度を制御する。このようにする
ことにより、低い触媒原単位かつ高い生産性で、長時間
に亘り安定してビスフェノールを生産することができ
る。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明では、触媒として、メルカ
プトアルキルピリジン類で部分的に変性されたスルホン
酸型陽イオン交換樹脂を用いる。この変性スルホン酸型
陽イオン交換樹脂を触媒として、ケトンとフェノール類
とからビスフェノールを製造することは、特公昭63−
14690号公報に記載されている。また特公昭64−
8607号公報に記載されているように、メルカプトア
ルキルピリジン類そのものの代りに、これとケトンとの
反応物であるチオアセタールで変性されたスルホン酸型
陽イオン交換樹脂を用いることもできる。本明細書にお
いてメルカプトアルキルピリジン類で変性されたスルホ
ン酸型陽イオン交換樹脂とは、両者のいずれをも意味す
るものである。
【0007】メルカプトアルキルピリジン類としては、
通常はピリジンにメルカプト低級アルキル基が結合した
ものを用いるが、ピリジンの代わりにピコリンなどにメ
ルカプトアルキル基が結合したものを用いることもでき
る。ピリジン環上でのメルカプトアルキル基の結合位置
は通常は4位であるが、他の位置であってもよい。また
メルカプトアルキル基の炭素鎖の長さは通常は2〜4炭
素原子である。
【0008】スルホン酸型陽イオン交換樹脂としては、
最も一般的なスチレン−ジビニルベンゼン共重合体を、
発煙硫酸などのスルホン化剤でスルホン化したものを用
いればよい。樹脂はゲル型でもポーラス型でもよい。所
望ならばフェノール−ホルムアルデヒド樹脂のスルホン
化物を用いることもできる。スルホン酸型陽イオン交換
樹脂の交換容量は通常0.5〜6meq/gであるが、
変換容量の大きいものを用いるのが好ましい。通常はこ
のスルホン酸基の2〜40%をメルカプトアルキルピリ
ジン類で変性する。スルホン酸基の5〜30%、特に1
0〜20%を変性するのが好ましい。変性率が小さいと
変性の効果の発現が不十分であり、逆に変性率が大きす
ぎると触媒活性が低下する。変性は常法に従い、メルカ
プトアルキルピリジン類がスルホン酸型陽イオン交換樹
脂と均一に接触して、スルホン酸型陽イオン交換樹脂が
全体として均一に変性されるようにするのが好ましい。
【0009】反応原料のフェノール類としては、通常は
フェノールを用いるのが、o−クレゾール、m−クレゾ
ール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、
o−t−ブチルフェノール、2,6−キシレノール、
2,6−ジ−t−ブチルフェノール、o−フェニルフェ
ノールなど、この反応の原料として用い得ることが知ら
れている置換フェノールを用いることもできる。ケトン
としては通常はアセトンを用いるが、エチルメチルケト
ン、イソブチルメチルケトン、アセトフェノン、シクロ
ヘキサノン、1,3−ジクロロアセトンなど他のケトン
を用いることもできる。反応に供するケトンとフェノー
ル類との比率は、通常はケトン1モルに対してフェノー
ル類3〜30モル、好ましくは5〜25モルである。
【0010】本発明では上述のメルカプトアルキルピリ
ジン類で変性したスルホン酸型陽イオン交換樹脂を充填
した固定床流通式反応器に、ケトンとフェノール類とを
上述の比率で含有する原料流体を連続的に供給して、ビ
スフェノールを生成させる。この反応は発熱反応である
が、反応は通常は断熱反応として行われる。従って反応
器から流出する反応生成液の温度は、反応器へ導入され
る原料流体の温度と、反応による発熱量により決定され
る。本発明では、反応器から流出する反応生成液の温度
が70℃以上となるように、反応器に導入する原料流体
の温度及び反応器での発熱量を制御することが必要であ
る。アミノチオール化合物で変性されたスルホン酸型陽
イオン交換樹脂を触媒として、フェノール類とケトンか
らビスフェノールを生成させる反応は、広範囲の温度、
例えば30〜120℃で行い得るとされているが、低温
では反応速度が低く、かつ生成したビスフェノールがフ
ェノールとの付加体として析出するおそれがある。また
高温では触媒が失活し易い。従って触媒の失活を抑制し
つつ長時間に亘り安定してビスフェノールを生成させる
には、一般に60℃程度の比較的低温で反応を行わせる
のが好ましいと考えられている。例えば最も一般的な変
性剤である2−アミノエタンチオールで変性したスルホ
ン酸型陽イオン交換樹脂は、60℃前後が最適反応温度
であり、65℃程度になると明らかに失活速度が大きく
なる。これに対し、本発明で触媒として用いるメルカプ
トアルキルピリジン類で変性したスルホン酸型陽イオン
交換樹脂は、60℃程度の温度よりも70℃以上での方
が、失活速度が小さいという特異な性質を有している。
本発明ではこの特異な性質を利用して、反応器から流出
する反応生成液の温度が70℃以上となる温度で反応を
行わせることにより、触媒の失活を抑制しつつ、高い反
応速度でビスフェノールを生産することができる。な
お、この触媒も、反応温度が高過ぎると失活が促進され
るようになるので、反応器から流出する反応生成液の温
度が70〜90℃、特に70〜85℃となる温度で反応
を行うのが好ましい。本発明の好ましい一態様では、こ
の温度範囲内で反応当初は低温で反応させ、触媒が失活
するにつれて徐々に反応器に導入する原料流体の温度を
上昇させ、もって反応速度が反応の全期間を通じてほぼ
一定に保たれるようにする。
【0011】本発明で用いる触媒は高活性であり、かつ
上述のように反応速度の大きい高温で反応させるので、
反応器の容積効率を高くすることができる。本発明では
反応器に充填されている触媒1リットル当りのビスフェ
ノールの生産速度が、70g/時間以上、好ましくは1
00g/時間以上で反応を行わせることができる。しか
も本発明では、この生産速度を比較的小さな容積速度で
達成することができる。なお、ここにいう容積速度と
は、反応器に充填されている触媒単位容積当りに1時間
に反応器に導入される原料流体の容積であり、本発明で
はこの値は通常5hr-1以下であり、好ましくは2hr
-1以下である。一定のビスフェノール生産速度をより小
さな容積速度で達成できれば、それだけ後続する工程に
おいて処理すべき反応生成液量が減少するので好まし
い。
【0012】なお、本発明においては、ビスフェノール
の高い生産速度を小さな容積速度で達成できることに加
えて、ケトンの反応率(ケトンの反応率とは、反応器に
導入された原料流体中のケトンのうち、反応により消費
された割合を意味する)を高くし、もって反応生成液か
ら未反応ケトンを回収して循環する蒸留系の負荷を低減
させることができる。本発明では通常はケトンの反応率
が70%以上となるように原料流体の組成を制御して反
応を行わせるが、80%以上、特に85%以上となるよ
うに反応を行わせるのも容易である。所望ならばケトン
の反応率が90%以上となるように反応を行わせること
も困難ではない。
【0013】本発明で用いる触媒は、反応器から流出す
る反応生成液の温度が70℃以上となる条件下で反応を
行わせると、失活速度が極めて小さいので、前述の70
g/L−触媒・時間以上、好ましくは100g/L−触
媒・時間以上の生産速度で、少なくとも5×103 時間
以上、通常は1×104 時間以上という極めて長時間に
亘り、触媒を入れ替えずに反応を行わせることができ
る。従って本発明では、反応器に充填された触媒が失活
して廃棄されるまでの間における、触媒単位量当りのビ
スフェノールの生産量は極めて大きく、ビスフェノール
の製造原価に占める触媒費用は著しく小さい。本発明に
おけるビスフェノール1kg当りの乾燥触媒基準の触媒
消費量(=乾燥触媒原単位)は2g以下であり、1g以
下とすることもできる。
【0014】本発明で用いる触媒と公知例の代表的な触
媒との、反応温度と失活速度との関係についての実験例
のいくつかを以下に記す。なお、スルホン酸型陽イオン
交換樹脂としては、スチレン−ジビニルベンゼン架橋共
重合体のスルホン化物(ダイヤイオンSK104H、三
菱化学株式会社製品、ダイヤイオンは三菱化学株式会社
の登録商標)を用いた。
【0015】実験例1 定温反応 スルホン酸基の22%が4−(2−メルカプトエチル)
ピリジンで変性された触媒(=触媒1)、又はスルホン
酸基の10%が2−アミノエタンチオールで変性された
触媒(=触媒2)を反応器に充填し、これにフェノール
とアセトンから成る原料流体(フェノール:アセトン=
13:1(モル比))をSV2hr-1で連続的に流通さ
せながら、500時間にわたってビスフェノールAの生
成反応を行わせた。反応開始直後のアセトンの反応率、
並びに500時間経過後のアセトンの反応率及びビスフ
ェノールAの選択率を表−1に示す。また反応開始直後
のアセトンの反応率に対する500時間経過後のアセト
ンの反応率の比を活性維持率として同じく表−1に示し
た。
【0016】
【表1】
【0017】実験例2 断熱反応 触媒として触媒2又はスルホン酸基の17%が4−(2
−メルカプトエチル)ピリジンで変性された触媒(触媒
3)を用い、反応器として断熱反応器を用い、かつ原料
流体をSV=3hr-1で反応器に導入した以外は、実験
例1と全く同様にして反応を行った。結果を表−2に示
す。
【0018】
【表2】
【0019】表−1及び表−2から明らかなように、従
来の代表的な変性剤である2−アミノエタンチオールで
変性された触媒に比して、本発明で用いる4−(2−メ
ルカプトエチル)ピリジンで変性された触媒は、70℃
以上の高温下での方が活性低下が小さいという優れた特
徴を有している。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4G069 AA02 AA08 BA24A BA24B BE13A BE13B BE21A BE21B BE22A BE22B BE37A BE37B CB25 DA05 EA02Y FA01 4H006 AA02 AC23 BA72 BC10 BC18 DA64 FC52 FE13 4H039 CA19 CD10 CD40

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 スルホン酸基の一部がメルカプトアルキ
    ルピリジン類で変性されているスルホン酸型陽イオン交
    換樹脂が触媒として充填されている流通式反応器に、フ
    ェノール類とケトンを含む原料流体を導入してビスフェ
    ノールを生成させるに際し、反応器から流出する反応生
    成液の温度が70℃以上、ビスフェノールの生成速度が
    70g/L−触媒・時間以上、生成したビスフェノール
    1kg当りの乾燥触媒原単位が2g以下となるように、
    原料流体の温度、組成及び容積速度を制御することを特
    徴とするビスフェノールの製造方法。
  2. 【請求項2】 ビスフェノールの生成速度が100g/
    L−触媒・時間以上となるように原料流体の温度、組成
    及び容積速度を制御することを特徴とする請求項1記載
    のビスフェノールの製造方法。
  3. 【請求項3】 ビスフェノール1kg当りの乾燥触媒原
    単位が1g以下となるように原料流体の温度、組成及び
    容積速度を制御することを特徴とする請求項1又は2記
    載のビスフェノールの製造方法。
  4. 【請求項4】 原料流体中のケトンの反応率が80%以
    上となるように原料流体の温度、組成及び容積速度を制
    御することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに
    記載のビスフェノールの製造方法。
  5. 【請求項5】 原料流体中のケトンの反応率が90%以
    上となるように原料流体の温度、組成及び容積速度を制
    御することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに
    記載のビスフェノールの製造方法。
  6. 【請求項6】 反応を断熱反応で行うことを特徴とする
    請求項1ないし5のいずれかに記載のビスフェノールの
    製造方法。
  7. 【請求項7】 反応器に充填した触媒を5×103 時間
    以上に亘り反応に用いることを特徴とする請求項1ない
    し6のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
  8. 【請求項8】 反応器に充填した触媒を1×104 時間
    以上に亘り反応に用いることを特徴とする請求項1ない
    し6のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
  9. 【請求項9】 触媒が、スルホン酸基の5〜30%が2
    −メルカプトエチルピリジンで変性されているスルホン
    酸型陽イオン交換樹脂であることを特徴とする請求項1
    ないし8のいずれかに記載のビスフェノールの製造方
    法。
  10. 【請求項10】 原料流体を反応器に容積速度5hr-1
    以下で導入することを特徴とする請求項1ないし9のい
    ずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
  11. 【請求項11】 反応器にフェノールとアセトンを含む
    原料流体を導入してビスフェノールAを生成させること
    を特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載のビ
    スフェノールの製造方法。
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