JP2002061501A - 内燃機関の複リンク機構 - Google Patents
内燃機関の複リンク機構Info
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Abstract
ダ17と強く接触すると、摩擦損失の増加や騒音の発生
等を招くおそれがある。 【解決手段】 ピストン11のピストンピン14に連結
するアッパーリンク21と、このアッパーリンク21と
クランクシャフト13のクランクピン16とに連結する
ロアリンク22と、を備える。ピストン上死点が上、下
死点が下となり、クランクシャフト13が時計方向Pに
回転するクランク軸方向視で、ピストンピン中心60を
ピストン中心線41よりも右側に配置し、ピストン往復
動作に伴う両リンク21,22のリンク連結中心63の
軌跡を、ピストンピン往復線43よりも左側に配置す
る。
Description
機関に関し、特に、ピストンピンとクランクピンとを複
数のリンクで連結した複リンク機構に関する。
造として、実開平7−8544号公報に記載されている
構造を図10〜12に示す。この例では、機関と同期し
て回転するクランクシャフト3のクランクピン6と、シ
リンダ7内を往復移動するピストン1のピストンピン4
とが、一本のコンロッド(リンク)2により機械的に連
携された単リンク式の構造となっている。
死点が上、下死点が下となり、クランクシャフト3が時
計方向に回転するクランク軸方向視で、コンロッド2と
連結するピストンピン中心4aが、ピストン1の冠面中
心を通ってシリンダ7の軸方向に延びるピストン中心線
7aよりも左側にオフセットして配置されている。ま
た、同じくクランク軸方向視で、コンロッド2と連結す
るクランクピン中心6aが、ピストンピン中心4aを通
ってシリンダ7の軸方向に延びるピストンピン往復線4
bに対し、主にピストン上昇行程では左側に、主にピス
トン下降行程では右側に位置する構造となっている。
として、燃焼室からの作用荷重F1が実質的に冠面中心
に作用するとともに、コンロッド2からの作用荷重F
2、つまりピストンピン中心4aとクランクピン中心6
aとを結ぶコンロッド中心線5に沿う作用荷重F2がピ
ストンピン中心4aに作用する。これらの荷重F1,F
2に応じて、ピストン1には、回転運動方向(ピストン
首振り方向)の力F3と、並進運動方向の力F4とが作
用する。この結果、ピストン1が傾いて、シリンダ7に
強く接触するピストン1の一部分にスラスト力F5が作
用する。
作に伴って、作用荷重F1の向きやコンロッド中心線5
の傾きが変化するために、スラスト力F5が作用する位
置及び方向が変化する。上記従来例の構造の場合、図1
2に示すように、上記の力F3,F4の向き,方向が概
略4つのパターンに分類される。図12のパターン3,
4の場合、スラスト力F5の作用位置が、ピストンピン
中心4aよりも上側になる。つまり、ピストン1の上端
部でシリンダ7と強く接触することとなる。
の上部に設けられるピストンランド部は、多数のリング
列を保持する関係で、ピストン1の下部に設けられるス
カート部よりも剛性が高く設定されている。従って、上
記のパターン3,4のようにピストンランド部にスラス
ト力F5が作用する場合、パターン1,2のようにピス
トンスカート部にスラスト力F5が作用する場合に比し
て、局部面圧が大きくなり、潤滑油膜の形成が悪化した
り、接触荷重の増加により摩擦損失が大きくなるおそれ
がある。また、比較的高い剛性のピストンランド部にス
ラスト力F5が作用している場合、面圧が高くなり易い
ことに加え、スラスト力F5の方向が入れ替わる際の衝
突エネルギーが大きく、騒音を生じ易い。
ランド部の外周面と、シリンダ7の内壁面との間には、
所定のクリアランスが設定されている。つまり、ピスト
ンランド部やシリンダ7は温度変化に応じて熱膨張又は
縮小する(例えばランド部やシリンダが同一の材料で形
成されている場合、全周でほぼ均等に直径が拡大又は縮
小する)ため、上記のクリアランスが最も小さくなる温
度条件のとき(一般的にはピストンとシリンダの温度差
が最大となる機関最高出力時)にも、ある程度のクリア
ランスが残されるように設定されている。
な状態が起こり得る構成の場合、ピストンランド部とシ
リンダとが強く接触することがあり、このときのスラス
ト荷重F5やピストン,シリンダの弾性変形等を考慮
し、その分更にクリアランスを大きく設定する必要があ
る。このように、ランド部とシリンダ間のクリアランス
が大きくなると、クレビスボリュームが増大し、ここに
未燃のガスが溜まり易くなり、常用運転条件等における
排気性能が悪化するという問題がある。
起因するため、上記従来例のような単リンク式の構造の
みならず、例えばピストンピンとクランクピンとを2本
以上のリンクで連係した複リンク機構であっても、上記
のようなパターン3,4の状態が起こり得る限り、同様
の問題が発生する。この発明は、このような従来の問題
点に着目してなされたものである。
機関と連動して回転するクランクシャフトのクランクピ
ンと、シリンダ内を昇降するピストンのピストンピン
と、を2本以上のリンクで連結した複リンク機構であっ
て、一端が上記ピストンピンに連結される第1リンク
と、この第1リンクの他端に連結される第2リンクと、
を有する内燃機関の複リンク機構において、ピストン上
死点が上、ピストン下死点が下となり、クランクシャフ
トが時計方向に回転するクランク軸方向視で、上記第1
リンクと連結するピストンピン中心が、ピストン冠面の
中心を通ってシリンダの軸方向に延びるピストン中心線
よりも右側に配置される一方、ピストン往復動作に伴う
上記第1リンクと第2リンクとのリンク連結中心の軌跡
が、上記ピストンピン中心を通ってシリンダの軸方向に
延びるピストンピン往復線よりも左側に配置されること
を特徴としている。
ンとシリンダとは、ほぼ常に相対的に剛性の低いピスト
ン下部(典型的にはスカート部)で強く接触し、相対的
に剛性の高いピストン上部(典型的にはランド部)で強
く接触する可能性がほとんどない。このため、ピストン
ランド部に強いスラスト荷重が作用する可能性が低く、
潤滑油膜形成の悪化が抑制され、ピストン,シリンダ間
の摩擦損失を低減できる。また、ピストンとシリンダと
の衝突エネルギーが小さくなり、この衝突に起因する騒
音の発生を十分に低減できる。
ク軸方向視で、ピストン重心が上記ピストンピン往復線
よりも左側に配置されることを特徴としている。
ストン冠面中心と同様、ピストン往復動作に伴う上下方
向の慣性荷重が作用するピストン重心も、ピストンピン
往復線の左側に位置することとなる。このような構成と
することにより、ピストン重心がピストン中心線上に存
在しない場合であっても、上述したように、ピストン上
部(ランド部)に大きなスラスト荷重が作用することを
確実に回避することが可能となり、上記請求項1と同様
の作用効果が得られる。つまり、ピストン重心が必ずし
もピストン中心線上に存在しなくてよい点において、ピ
ストン形状の自由度の向上を図ることができる。
合には、ピストンピン回りの慣性モーメントも極めて小
さいため、燃焼室からの荷重等によってピストンが(慣
性力に反して瞬間的に)容易に回転してしまい、ピスト
ン下部がシリンダに接触した後に、2次的(次の段階と
して)に反対側のピストン上部がシリンダに接触するお
それがある。このような2次的な接触によるスラスト荷
重は、従来例のようにピストンランド部が最初にシリン
ダと接触する場合のスラスト荷重に比べて小さいもの
の、やはり摩擦損失や騒音の増加を招くおそれがある。
ように、上記ピストンピン中心と、ピストンピン直交方
向のピストン下端部との上下方向距離をLとし クラン
クシャフトの回転方向を正とし、上記ピストンピン往復
線と、上記ピストンピン中心と上記リンク連結中心とを
結ぶ線と、のなす角度の中で、ピストン往復動作に伴う
最小値をθとし、上記ピストンピン往復線に対する上記
ピストン中心線のオフセット量をOfとした場合、0≦
Of≦L×tanθ が成り立つように構成する。
ピン回りの慣性モーメントが極めて小さくても、ピスト
ン下部(スカート部)がシリンダに接触した後に、2次
的にピストン上部(ランド部)がシリンダに接触するこ
とを回避でき、このような2次的なピストンランド部と
シリンダとの接触による摩擦損失および騒音の発生をよ
り確実に回避できる。つまり、請求項3に係る発明は、
ピストンが軽量で高回転型の内燃機関に特に有効であ
る。
場合には、ピストン重心に作用する上下方向の慣性荷重
も極めて小さくなり、この慣性荷重の影響は非常に小さ
い。したがって、ピストン重心がピストンピン往復線か
らかなりオフセットしていても、このような請求項3に
係る発明の効果をほぼ確実に得ることができる。
ン回りの慣性モーメントがある程度大きい場合、機関回
転数がある程度高い状態では、ピストンは(瞬時に)容
易に回転し難いが、機関の回転速度が低い状態では、ピ
ストンスカート部がシリンダに接触した後にピストンが
(相対的に遅い回転速度で)首振り回動し、2次的にピ
ストンランド部がシリンダに接触するおそれがある。
ように、上記ピストンピン往復線に対するピストン重心
のオフセット量をOgとした場合、0≦Og≦L×ta
nθが成り立つように構成する。
線上になく、かつ、ピストン質量が無視できない程度に
大きい場合であっても、作用荷重が反転するピストン上
死点や下死点等で、ピストンが首振り回動することによ
り2次的にピストンランド部がシリンダに衝突すること
を有効に回避でき、これに起因する摩擦損失や騒音をよ
り確実に抑制することができる。
ンに作用する慣性荷重が無視できるレベルにある場合に
は、上記のオフセット量Ogによらず、請求項3の効果
を得ることができる。言い換えると、請求項4に係る発
明によれば、ピストン質量や機関回転数によらず、シリ
ンダとピストンランド部との2次的な接触を確実に抑制
することができる。
けられるスカート部とシリンダとの間のクリアランス
が、ピストン上部に設けられるランド部とシリンダとの
間のクリアランスよりも大きく設定されていることを特
徴としている。
リュームを有効に低減でき、排気中の未燃の燃焼ガス量
の低減化を図ることができる。
を変化させるために、上記複リンク機構の姿勢を変化さ
せる可変圧縮比機構を備えた内燃機関であって、少なく
とも機関負荷が最大になるリンク配置の時に、上記ピス
トンピン中心がピストン中心線よりも右側に配置される
一方、上記リンク連結中心がピストンピン往復線よりも
左側に配置されることを特徴としている。
関においても、少なくとも機関負荷が最大となるリンク
配置、つまりピストンに作用する燃焼荷重が最大となる
リンク配置の時に、上述した請求項1〜5の作用効果、
つまり、摩擦損失や騒音を低減する等の効果を得ること
ができる。
いる。同図に示すクランク軸方向視で、ピストンピン中
心J1が、ピストン中心線に対して所定量Ofだけ右側
にオフセットしている。また、ピストン往復動作に伴う
第1リンクと第2リンクとのリンク連結中心J2の軌跡
が、ピストンピン中心J1を通ってシリンダの軸方向に
延びるピストンピン往復線よりも左側に配置されてい
る。
例を模式的に示している。同図に示すように、燃焼荷重
Foは、実質的にピストン冠面円の中心に作用し、この
ピストン冠面の中心を通るピストン中心線に対し、ピス
トンピン中心は所定量Ofだけ右側にオフセットしてい
る。また、ピストン往復動作に伴う上下方向の慣性力F
gがピストン重心に作用し、このピストン重心はピスト
ンピン往復線に対して所定量Ogだけ左側にオフセット
している。なお、θxは、ピストンピン往復線と、ピス
トンピン中心とリンク連結中心とを結ぶ線とのなす角度
である。
きい場合、上述したように、ピストン下部がシリンダに
衝突した後に、ピストンが首振り方向に回転し、2次的
にピストン上部が反対側のシリンダに強く当たるおそれ
があり、これを回避するための条件について以下に説明
する。
Fgよりも大きい場合(Fo−Fg>0)、ピストンの
右下端部がシリンダと強く接触するため、2次的にピス
トンの左上端部がシリンダと当たらないようにするため
には、ピストンピン中心回りに右回りのモーメントを作
用させれば良い。つまり、右回りを正とすると、次式
(1)を成立させれば良い。
りも小さい場合(Fg−Fo>0)、ピストンの左下端
部がシリンダと接触する形となるので、ピストンピン中
心回りに左回りのモーメントを作用させれば良い。従っ
て右回りを正とすると、次式(2)を成立させれば良
い。
ンドが反対側のシリンダに当たらないようにするために
は、理論的には上記の(1),(2)の双方を満たす必
要がある。つまり、次式を満たす必要がある。
摩擦損失や騒音等は、ピストンに作用する燃焼荷重や慣
性力の大きい上死点,下死点において特に大きくなる。
このため、ピストン行程中でも上死点、下死点でピスト
ントップランドが2次的に反対側のシリンダに当たらな
いようにすることが、摩擦損失および騒音の低減化の上
で効果的である。
おいては、この燃焼荷重Foがピストン重心に作用する
慣性力Fgよりも大きいので、(1)式が適用される。
この(1)式を変形して、
o)tanθx・L ここで、燃焼荷重Foが慣性力Fgよりもはるかに大き
いので、Fg≫Fo→(Fg/Fo)≒0とし、上死点
におけるθxをαとすると、次式が得られる。
すると、圧縮上死点における2次的なピストンランド部
とシリンダとの接触を回避するためには、次式(3)が
成立すれば良い。
ては、荷重Foが慣性力Fgよりも十分に小さくなるた
め、(2)式において、Fo→0、上死点におけるθx
→α、下死点におけるθx→β、とすると、次式が得ら
れる。
最小値をθとすると、tanθは必ずtanα、tan
β以下(上、下死点でθ=α、βとなる時は同等)とな
るので、(3)、(4)、(5)式より、α、βをθと
すると、
うにOfとOgを設定することにより、ピストン重心が
ピストン中心線上になく、かつ、ピストン質量(慣性
力)が無視できない場合でも、少なくともピストン上死
点及び下死点で、2次的にピストンランド部がシリンダ
に衝突することを回避でき、これに起因する摩擦損失や
騒音等を確実に回避することができる。
れば、ピストンがほぼ常に比較的剛性の低いピストン下
部でシリンダと接触することとなり、比較的剛性の高い
ピストン上部とシリンダとの接触をほぼ確実に回避する
ことができる。この結果、シリンダとピストンとの局部
面圧を小さく維持でき、潤滑油膜の形成を良好にし、接
触荷重を減少させ、摩擦損失の増加を抑制できる。ま
た、スラスト荷重が比較的低い剛性のピストン下部に作
用するため、スラスト荷重の方向が入れ替わる際の衝突
エネルギーが小さく、騒音の発生を十分に抑制できる。
ダとが強く接触するおそれがないので、請求項5に係る
発明のように、ランド部とシリンダとの間のクリアラン
スを十分小さくできる。このため、クリアランス減少分
だけクレビスボリュームを抑制でき、常用運転条件等に
おける排気性能の向上を図ることができる。
形態を図面に基づいて詳細に説明する。
いる。なお、これらの図4〜6は、ピストン11の上死
点が上、下死点が下となり、ピストン11が垂直方向に
往復動し、かつ、クランクシャフト13が時計方向Pに
回転するクランク軸方向視に対応している。
転するクランクシャフト13のクランクピン16と、シ
リンダ17内を往復移動するピストン11のピストンピ
ン14とは、複数のリンクを有する複リンク機構により
機械的に連携されている。
14に回転可能に連結されるロッド状のアッパーリンク
21と、このアッパーリンク21の下端とピストンピン
14とに回転可能に連結されるロアリンク22と、によ
り構成されている。ロアリンク22は、後からクランク
ピン16に組み付けられるように、ボルト22cにより
締結される一対の半割部材22a,22bで構成されて
いる。
1,22の姿勢を変化させることにより、燃焼室の圧縮
比を変化させる可変圧縮比機構が設けられている。この
可変圧縮比機構は、クランクシャフト13と略平行に延
びる制御軸24と、この制御軸24に偏心して設けら
れ、制御軸24と一体的に回転する偏心カム25と、こ
の偏心カム25とロアリンク22とに相対回転可能に連
結された制御リンク23と、を有している。この制御リ
ンク23は、後から偏心カム25へ組み付けれるよう
に、ボルト23cにより締結される一対の半割部材23
a,23bで構成されている。
13aは、シリンダブロック31とメインベアリングキ
ャップ32との間に回転可能に支持されている。このメ
インベアリングキャップ32は一対のボルト33,34
によりシリンダブロック31へ締結固定されている。ま
た、制御軸24は、メインベアリングキャップ32とサ
ブベアリングキャップ35との間に回転可能に支持され
ている。このサブベアリングキャップ35は、一対のボ
ルト34,36によりメインベアリングキャップ32へ
締結固定されている。つまりボルト34が共用化されて
いる。
ールユニット及びアクチュエータにより機関運転状態に
応じて所定の制御範囲内で回動制御される。制御軸24
の回動位置が変化すると、ロアリンク22がクランクピ
ン16の中心を支点として揺動し、複リンク機構の姿勢
が変化する。これにより、ピストン11のストローク
(ピストン上死点位置や下死点位置)が変化し、機関燃
焼室の圧縮比が変化するようになっている。
視で、アッパーリンク21と連結するピストンピン14
の中心(軸心)60が、ピストン11の冠面の中心を通
ってシリンダ17の軸方向に延びるピストン中心線41
よりも右側にオフセットして配置され、かつ、ピストン
の往復動作に伴うアッパーリンク21とロアリンク22
とのリンク連結中心63の軌跡が、ピストンピン中心6
0を通ってシリンダ17の軸方向に延びるピストンピン
往復線43よりも左側に配置されている。
心、62はロアリンク22と制御リンク23との連結中
心、64は偏心カム25の中心を示している。
各タイミングにおけるリンク挙動、ピストン11に作用
する荷重及びその方向を図5に示す。
首振り運動パターンが、実質的に図6に示す2つのパタ
ーンに限定される。すなわち、ピストンピン中心60と
リンク連結中心63とを結ぶアッパーリンク中心線45
が、ピストン中心線41に対し、常に上側が右側に傾斜
する姿勢に限定される。従って、図1〜3を用いて上述
したように、燃焼室からの荷重Foの作用方向によら
ず、ピストン11は、その下方に設けられるスカート部
11aの下端部でシリンダ17の内壁面と接触すること
になる。
1へ作用するスラスト荷重Fsは、常に、比較的剛性の
低いスカート部11aの下端部に作用することとなるた
め、ピストン11の上部に設けられる比較的剛性の高い
ランド部11aにスラスト荷重が作用する場合に比し
て、局部面圧を小さく維持でき、潤滑油膜の形成を良好
にし、局部接触荷重を減少させて、摩擦損失の増加を抑
制できる。また、比較的低い剛性のスカート部11aに
スラスト荷重Fsが作用することから、スラスト荷重の
方向が入れ替わる際の衝突エネルギーも小さくなり、騒
音の発生を効果的に抑制できる。
リンダ17とが強く接触するおそれがない分、ランド部
11aとシリンダ17との間のクリアランスを小さくで
きる。従って、このクリアランスの減少分だけ、クレビ
スボリュームを抑制でき、排気性能の向上を図ることが
できる。
ク軸方向視で、ピストンピン中心60がピストン中心線
41に対して本実施例とは逆の左側にオフセットしてい
る場合、図7に示すようなピストン首振り運動パターン
になるため、ピストン11のランド部11aにスラスト
荷重Fsが作用する形となり、本実施例の作用効果は得
られない。
制御軸24を回動制御することによりリンク配置を変化
させて、燃焼室内の圧縮比を可変制御する可変圧縮比機
構を用いた構成の場合、少なくとも所定のリンク配置、
好ましくは機関負荷が最大となるリンク配置のときに、
上述した条件、つまりクランク軸方向視でピストンピン
中心60がピストン中心線41よりも右側にオフセット
し、リンク連結中心63の軌跡がピストンピン往復線4
3よりも左側に配置されるように設定する。このような
設定を実現するために、例えば、制御リンク23の揺動
中心となる偏心カム25の中心64の位置を適宜に設定
する。
なるリンク配置のとき、つまりピストンに作用する燃焼
荷重等が最大となるリンク配置のときに、上述したよう
に潤滑油膜形成の悪化,ピストンとシリンダとの摩擦損
失,及び騒音の発生等が効果的に抑制される。逆に言え
ば、このような摩擦損失や騒音等が最も問題となるリン
ク配置以外の場合のピストン行程,リンク配置の自由度
を高めることができる。
上下方向の慣性力がピストン11の重心(図2,3のF
gに相当)に作用する。この慣性力は、ピストン11が
十分に軽量な場合や機関回転数が十分低い場合等には無
視できるが、ピストン11の重量や機関回転数等によっ
ては無視できない場合もある。
で、上下方向の慣性力が作用するピストン11の重心
を、ピストンピン中心線42よりも左側に配置する。こ
の場合、ピストンの往復動作に伴う慣性力がピストン1
1へ及ぼす回転力の方向が、燃焼室からの荷重Foやピ
ストンピン中心60に作用する荷重Ftに起因する回転
方向モーメントMと同方向となる。従って、上述した場
合と同様、ピストン11が常に下端部でシリンダ17と
接触する形となる。加えて、ピストン重心を、ピストン
ピン中心線42よりも左側の範囲でピストン中心線41
からずれている位置にも設定することが可能なため、ピ
ストン形状等の自由度を向上できる効果がある。
方向視でピストンピン往復線43に対するピストン中心
線41のオフセット量Ofについて説明する。ピストン
ピン中心60とピストンピン直交方向(図8の左右方
向)のピストン10の下端部との垂直方向距離をLと
し、ピストンピン往復線43とアッパーリンク中心線4
5とのなす角度をαとし、ピストン往復動作に伴う角度
αの最小値をθとするとき、以下の関係を満たすように
構成する。
のピストンピン往復線43に対するオフセット量をOg
とすると、以下の関係を満たすように構成する。
ーメントMを、ピストンピン回りの回転慣性力を無視し
て考えると、燃焼荷重による垂直作用荷重をFo、シリ
ンダ17からピストン11へ作用するスラスト力をF
s、このスラスト力Fsが実質的に作用するスカート接
触圧力中心位置とピストンピン中心60との間の上下方
向距離を下向きを正としてxとすれば、
11の横方向慣性力を無視すれば、
れる。
α×x がゼロとなるときに、モーメントがバランスし
て、ピストンの首振り方向の回転モーメントがゼロとな
る。
と、xがスカート下端Lより大きい値のときにモーメン
トがバランスすることになる。つまりモーメントがバラ
ンスすることがないために、不釣り合いモーメントで回
転加速度を受けて回転しようとする。回転慣性力を無視
すれば、図8の(b)に示すように、ピストン11の左
上端部がシリンダ17に接触し、この部分に作用するス
ラスト力Frでモーメントがバランスする事態が起こり
得る。
ン回りの慣性モーメントが十分に大きい場合には、上記
のピストン11の首振り回転を止める方向に作用するピ
ストンの回転慣性力が作用荷重に対して十分大きいため
に、ピストンの回転が追従せず、Of>tanα×xで
あっても反対側のピストン左上端がシリンダに接触する
前に、クランクシャフトの回転、つまり時間の経過に伴
って例えば角度αが大きくなり、回転加速度が小さくな
る。従って、上述したような反対側のピストン上端部が
シリンダと接触することは起こらない。
うに、作用する荷重に比して回転慣性力が十分に小さい
場合、Of>tanα×xの場合にピストンが2次的に
首振り回転して反対側のピストン上端部がシリンダと接
触する場合も考えられる。
θと、オフセット量Ofと、上下方向距離Lとを、
ンの下端部にスラスト荷重Fsが作用する状態でモーメ
ントが釣り合うこととなり、作用する荷重Foに比較し
て回転慣性力が十分に小さいピストンを用いた場合で
も、ピストンが首振り回転して逆側のピストン上端部が
シリンダと接触する事態を確実に回避できる。
トン11の上部に設けられるランド部11aとシリンダ
17との間のクリアランスΔD1に比して、ピストン1
1の下部に設けられるスカート部11bとシリンダ17
との間のクリアランスを大きく設定する。
に示す2つのパターンに限定されるため、シリンダ17
とピストン11とは、必ず剛性の比較的低いスカート下
部側で強く接触,衝突することとなる。従って、衝突エ
ネルギーも小さくなり、ある程度スカート部11bのク
リアランスが大きくても騒音を生じるおそれはないの
で、このような構成としても静粛な機関を実現できる。
また、相対的にランド部11aとシリンダ17とのクリ
アランスΔD1を小さくできるので、クレビスボリュー
ムを低減でき、排気性能を向上できる。さらに、このよ
うな構成としても、機関の高出力運転時にピストンが熱
膨張した場合でも、スカート部11bの両側がシリンダ
17に接触して不要な圧力を発生するおそれがなく、摩
擦損失の増加を招くこともない。
図。
構を示す断面対応図。
明図。
す説明図。
説明図。
示す説明図。
Claims (6)
- 【請求項1】 機関と連動して回転するクランクシャフ
トのクランクピンと、シリンダ内を昇降するピストンの
ピストンピンと、を2本以上のリンクで連結した複リン
ク機構であって、一端が上記ピストンピンに連結される
第1リンクと、この第1リンクの他端に連結される第2
リンクと、を有する内燃機関の複リンク機構において、 ピストン上死点が上、ピストン下死点が下となり、クラ
ンクシャフトが時計方向に回転するクランク軸方向視
で、 上記第1リンクと連結するピストンピン中心が、ピスト
ン冠面の中心を通ってシリンダの軸方向に延びるピスト
ン中心線よりも右側に配置される一方、ピストン往復動
作に伴う上記第1リンクと第2リンクとのリンク連結中
心の軌跡が、上記ピストンピン中心を通ってシリンダの
軸方向に延びるピストンピン往復線よりも左側に配置さ
れることを特徴とする内燃機関の複リンク機構。 - 【請求項2】 上記クランク軸方向視で、ピストン重心
が上記ピストンピン往復線よりも左側に配置されること
を特徴とする請求項1に記載の内燃機関の複リンク機
構。 - 【請求項3】 上記ピストンピン中心と、ピストンピン
直交方向のピストン下端部との上下方向距離をLとし クランクシャフトの回転方向を正とし、 上記ピストンピン往復線と、上記ピストンピン中心と上
記リンク連結中心とを結ぶ線と、のなす角度の中で、ピ
ストン往復動作に伴う最小値をθとし、 上記ピストンピン往復線に対する上記ピストン中心線の
オフセット量をOfとした場合、 0≦Of≦L×tanθ が成り立つことを特徴とする請求項1又は2に記載の内
燃機関の複リンク機構。 - 【請求項4】 上記ピストンピン往復線に対するピスト
ン重心のオフセット量をOgとした場合、 0≦Og≦L×tanθ が成り立つことを特徴とする請求項3に記載の内燃機関
の複リンク機構。 - 【請求項5】 ピストン下部に設けられるスカート部と
シリンダとの間のクリアランスが、ピストン上部に設け
られるランド部とシリンダとの間のクリアランスよりも
大きく設定されていることを特徴とする請求項1〜4の
いずれかに記載の内燃機関の複リンク機構。 - 【請求項6】 燃焼室内の圧縮比を変化させるために、
上記複リンク機構の姿勢を変化させる可変圧縮比機構を
備えた内燃機関であって、 少なくとも機関負荷が最大になるリンク配置の時に、上
記ピストンピン中心がピストン中心線よりも右側に配置
される一方、上記リンク連結中心がピストンピン往復線
よりも左側に配置されることを特徴とする請求項1〜5
のいずれかに記載の内燃機関の複リンク機構。
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