JP2002061178A - 中堀工法における突起付き既製杭の埋設方法及び基礎杭構造 - Google Patents

中堀工法における突起付き既製杭の埋設方法及び基礎杭構造

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Abstract

(57)【要約】 【課題】中掘工法で、根固め部内に既製杭の突起部を位
置させ、先端支持力及び支圧力により引抜力を向上させ
ると共に、杭穴軸部で周面摩擦力を高める。 【解決手段】スパイラルロッド11を正回転させ、掘削
ヘッド13で杭穴軸部31を、下杭2の突起部4の径と
同等以上の径D11で掘削しつつ、下杭2を下降する
(a)。所定深度掘削後、既製杭1(上下杭8、2)を
その高さで保持し、掘削ヘッド13から水を吐出し練付
棒23で杭穴壁を均しながら昇降する(b)。次に、逆
回転させて、杭穴拡底部32を掘削し、根固め液を注入
し、根固め層を形成する(c)。正回転させて、杭穴軸
部31の杭周固定液注入区間に、杭周固定液を注入し、
杭周固定液層を形成する(d)。保持していた既製杭1
を沈設し、突起部4を根固め層内に位置させ、既製杭1
の内外を杭周固定液で満たす(e)。スパイラルロッド
11を引き上げ、基礎杭構造が完了する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、杭穴を掘削しつ
つ既製杭を埋設する中掘工法における突起付きの既製杭
の埋設方法及び基礎杭構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、突起付きの既製杭(例えば節杭
等)の施工に関しては、所定の杭穴を掘削完了し、セメ
ントミルク等を充填した後に、その杭を埋設する、いわ
ゆるプレボーリング工法が採用されている。
【0003】一方、中掘工法においては、円筒状の既製
杭(ストレート杭)を用いたものしか施工されておら
ず、既製杭の外周面に突起を有する杭の施工は行われて
いなかった。更に、中掘拡大根固め工法においても、同
様に外周面に突起を有する既製杭を使用することはな
く、ストレート杭しか実施されていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前記従来の技術が採用
していた背景として、節杭を埋設する工法は、比較的軟
弱な地盤での周面摩擦力による支持力を目的とした工法
であり、中掘工法は、既製杭の下端を支持地盤に到達さ
せて支持させることを目的とし、周面摩擦力は先端支持
力に比較して小さく、一般に両工法は全く別の工法とし
て取り扱われていた。
【0005】また、中掘工法によって既製杭を沈設する
には、既製杭の中空部内に掘削手段の取付けられたスパ
イラルロッドを挿通させ、掘削と同時に既製杭を順次埋
設していた。従って、中掘工法に突起付き既製杭を使用
した場合、ほぼ突起部外径の寸法で杭穴を掘削していか
なければならない。従って、既製杭の突起部外径の寸法
で杭穴の掘削を行うと、突起付き既製杭の突起部は所定
間隔ごとに配置されているため、突起と突起との間のス
トレート部分で外径が小さくなるので、杭穴壁と突起付
き既製杭との間に大きな間隙が生じることになる。その
ため、突起部分の外周壁と杭穴壁との間でしか周面摩擦
力が生じないので、既製杭の周面支持力が低下し、地震
時等に過大に発生する曲げモーメントに耐えることがで
きず、また総体的な基礎杭構造としての支持力の低下を
招くことになる問題点があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】然るにこの発明では、下
端部に突起を有する既製杭を使用し、突起の外径より大
径の杭穴を掘削し、突起が前記根固め部内に位置するよ
うに、既製杭を埋設して基礎杭構造を構築するので、前
記問題点を解決した。
【0007】即ち、この発明は、中空の既製杭の中空部
を挿通した掘削ロッドで、杭穴を掘削しつつ既製杭を埋
設する中堀工法において、前記既製杭を少なくとも下端
部に突起を有する構造とし、前記突起の外径より大径の
杭穴を中間深さまで掘削しつつ前記既製杭を埋設し、前
記既製杭を中間位置に保持して、所定杭穴を掘削した後
に、または杭穴を掘削しながら、前記杭穴の下端部に、
セメントミルク等を注入して所定高さの根固め部を形成
し、前記既製杭を下降して、前記突起が前記根固め部内
に位置するように、既製杭を埋設することを特徴とする
中堀工法における突起付き既製杭の埋設方法である。
【0008】また、前記において、既製杭を杭穴の中間
位置に保持して、前記杭穴の下端部にセメントミルク等
を注入して根固め部を形成した後、前記杭穴の根固め部
の上方にセメントミルク等を注入して、杭周固定液部を
形成し、その後、既製杭を下降して、根固め部の上方の
既製杭の中空部及び既製杭と杭穴壁との間の間隙に、前
記杭周固定液部の杭周固定液を充填することを特徴とす
る中堀工法における突起付き既製杭の埋設方法である。
【0009】また、前記において、杭穴の下端部の径を
軸部より大きく形成し拡底部として、該拡底部にセメン
トミルク等を注入して根固め部を形成することを特徴と
する中堀工法における突起付き既製杭の埋設方法であ
る。
【0010】また、前記において、既製杭を所定位置に
埋設した状態で、杭周固定液が杭穴の根固め部の上縁か
ら既製杭の杭頭付近まで充填される体積量の杭周固定液
部を形成する中堀工法における突起付き既製杭の埋設方
法である。
【0011】また、前記において、杭穴内へのセメント
ミルク等の注入は、掘削ロッドの下端部に設けた吐出口
から、あるいは地上から掘削ロッドとは別体の注入管を
既製杭と杭穴壁との間の間隙に挿入して行う中堀工法に
おける突起付き既製杭の埋設方法である。
【0012】また、この発明は、杭穴を掘削しつつ既製
杭を埋設する中掘工法により構築した基礎杭構造におい
て、前記既製杭を少なくとも下端部に突起を有する下杭
と、突起付き又は円筒状の上杭とを連結して形成し、前
記杭穴を前記突起の外径より大径の杭穴軸部を掘削する
と共に、前記杭穴の底部にセメントミルク等を注入して
根固め部を形成し、前記既製杭を、前記下杭の少なくと
も1つの突起が前記根固め部内に位置するように、埋設
したことを特徴とする基礎杭構造である。
【0013】また、この発明は、杭穴を掘削しつつ既製
杭を埋設する中掘工法により構築した基礎杭構造におい
て、前記既製杭を上杭と下杭とから構成し、該下杭を、
下部軸部に1つ又は複数の突起を形成し、最上に位置す
る突起に連続して前記下部軸部より大径の上部軸部を形
成して構成し、前記上杭を円筒状に形成して構成し、前
記杭穴を、前記突起の外径より大径の杭穴軸部を掘削
し、前記杭穴の底部にセメントミルク等を注入して根固
め部を形成して構成し、前記既製杭を、前記下杭の突起
の内少なくとも1つが前記根固め部内に位置するよう
に、埋設したことを特徴とする基礎杭構造である。
【0014】また、前記において、杭穴軸部の内壁を均
すと共に、前記杭穴の軸部内壁と既製杭との間の間隙
内、及び前記既製杭の中空部内に杭周固定液を充填した
ことを特徴とする基礎杭構造である。
【0015】前記各発明における突起付きの既製杭と
は、いわゆる節杭の他、突起の形状は環状リブ、螺旋状
リブ、縦横又は斜め方向のリブ状、部分的な凸状など、
表面に突起物が形成されれば可能である。
【0016】また、前記におけるセメントミルク等と
は、セメントミルクに限らず類似の水硬性材料のいずれ
も含む意味である。また、セメントミルク等の注入と
は、セメントミルクを注入するのみ場合の他、セメント
ミルク等を注入して掘削泥土と撹拌混合してソイルセメ
ントとする場合、セメントミルクを注入して掘削泥土と
置換する場合、及びこれらの組合せの場合をも指す。
【0017】
【発明の実施の形態】1.既製杭の構成 この実施例に使用する既製杭1は、節部(環状リブ)を
下端部に形成した下杭2と、下杭2の上方に連結される
1つ又は複数の上杭8とから構成される(図2
(a))。
【0018】下杭2は、所定外径Dの下部軸部3の外
周に2つの環状リブ(外径D)4、4が形成され、上
側の環状リブ4に連続して、外径Dの上部軸部5が連
設された構造である。「環状リブ外径D」>「上部軸
部の外径D」>「下部軸部の外径D」となっている
(図2(a))。
【0019】上杭8は、前記下杭2の上部軸部5の外径
と同じ外径Dで形成され、下杭2と連結可能となって
いる(図2(a))。
【0020】2.掘削ロッドの構成
【0021】掘削ロッドは、スパイラルロッド11の下
端部に掘削ヘッド13を連結した構成である(図1
(a)、図6(a))。
【0022】掘削ヘッド13は、スパイラルロッド11
の下端と連結できる連結部15を有するヘッド本体14
と該ヘッド本体14に揺動可能に2本の掘削アーム2
0、20を取付けて構成する。掘削アーム20は、先端
に掘削刃21を有し、3段階に掘削径が可変できる構造
となっている。即ち、第1段階として、杭中空部内に挿
通時のニュートラル状態(図6(a))、第2段階とし
て、スパイラルロッド11を正回転して杭穴軸部31を
掘削する通常掘削状態(図6(b))、第3段階とし
て、スパイラルロッド11を逆回転して杭穴拡底部32
を掘削する拡底掘削状態(図6(c))、と可変できる
ように形成されている。前記における「ニュートラル状
態」とは、掘削アーム20、20が下方に垂れた状態を
いう。
【0023】また、掘削アーム20には、第2段階で、
杭穴軸部31を掘削しながら、掘削した杭穴壁を均すこ
とができるように、練付棒23が連結されている。
【0024】また、前記ヘッド本体14には、セメント
ミルクなどの吐出口18、19が形成され、該吐出口1
8、19はスパイラルロッド11内の送水パイプ(図示
していない)に連通している。またヘッド本体14の下
端には固定掘削刃28、28が下方に向けて突設されて
いる。
【0025】3.既製杭の埋設方法
【0026】(1) スパイラルロッド11の先端に掘
削ヘッド13を取付け、スパイラルロッド11を下杭
(突起付き杭)2の中空部6に挿通する。次に、クレー
ン等でスパイラルロッド11が挿通された下杭2を杭埋
設地点まで運び、杭打機に取付ける。取りつけ作業は、
杭打ち機に取り付けられているアースオーガーにスパイ
ラルロッド11を接続し、排土ホッパー下部の杭支持装
置に突起付き杭の上部杭端板に取付けられた杭頭治具を
把持させる(図示していない)。
【0027】(2) 次に、スパイラルロッド11を正
回転(時計回り)させ、掘削ヘッド13の吐出口(先
端)19から空気を吐出しつつ、掘削土に空気を混ぜた
状態で、掘削土をスパイラルロッド11を介して排土ホ
ッパー内へ揚土しつつ、杭穴軸部31を掘削する。
【0028】このとき、掘削径は下杭2の突起部径D
と同等又は若干大きめの径D11で掘削する。こうし
て、掘削を進めながら下杭2(突起付き杭)を挿入する
(図1(a))。
【0029】(3) 下杭2を所定深さ(上端部が地上
に突出した状態)まで下降した段階で、下杭2を保持
し、下杭2の上端に、下杭2と同様にスパイラルロッド
11が挿通された上杭8を連結する。
【0030】(4) 次に、所定深度掘削後、下杭2
(突起付き杭)をその高さで保持した状態で、掘削ヘッ
ド13から吐出している圧縮空気を水に切替え、掘削ヘ
ッド13の掘削アーム20に取付けられた練付棒23、
23によって掘削土を杭穴壁に練り付けながら杭穴壁を
均しながらスパイラルロッド11(掘削ヘッド13)の
昇降を繰り返し、さらに杭穴軸部31を掘削する(図1
(b))。前記における所定深度とは、杭穴拡底部32
上端から杭周固定液を注入する区間の最上位置である。
【0031】(5) 次に、支持層付近まで杭穴軸部を
形成した後(図1鎖線図示31a)、スパイラルロッド
11を逆回転(反時計回り)させて、掘削ヘッド13を
拡底掘削状態にし、杭穴軸部31の下端部(31a)を
拡大すると共に掘削した軸部31aの下方を杭穴底33
まで拡大して、杭穴拡底部32を形成する(図1(b)
鎖線図示32、33)。尚、このとき、支持層の所定位
置(形成予定の杭穴の穴底33付近)まで杭穴軸部31
の径で掘削を行い、その後スパイラルロッド11を逆回
転させて、杭穴軸部31の下端部を拡大して、杭穴拡底
部32を形成することもできる(図示していない)。
【0032】(6) 所定の杭穴拡底部(長さ・外径)
32の掘削を完了後、掘削ヘッド13の吐出口19より
杭穴拡底部32内に所定固化強度の根固め液(セメント
ミルク)を注入し、杭穴拡底部32内に残存する礫等と
撹拌混合し、杭穴拡底部32内にソイルセメント層(根
固め部)を形成する(図1(c))。このとき、ソイル
セメント層の形成方法としては、品質のバラツキが少な
い良質のソイルセメント層を形成するために、以下のよ
うにすることが望ましい。
【0033】即ち、杭穴掘削完了後、掘削ヘッド13を
杭穴拡底部32の最下部(穴底33付近)に保持した状
態で掘削ヘッド13で撹拌しながら、掘削ヘッド13下
端の吐出口19から全セメントミルク量の約3分の1の
セメントミルクを吐出する。続いて、掘削ヘッド13で
撹拌しながら、スパイラルロッド11を杭穴拡底部32
上端32a付近まで上昇させながら全セメントミルク量
の3分の1を吐出する。次に、掘削ヘッド13を杭穴拡
底部32内で複数回昇降させながら、残りのセメントミ
ルクの3分の1を吐出して、撹拌及び混合を行いスパイ
ラルロッド11を引上げて杭穴拡底部32内にソイルセ
メント層を形成する(第1の方法)。
【0034】また、他の望ましいセメントミルクの注入
方法(第2の方法)は、先ず、掘削ヘッド13の吐出口
19を杭穴拡底部32の最下位置(穴底33付近)のほ
ぼ中央に設置し、撹拌しつつ吐出口19からセメントミ
ルクを吐出しながら、杭穴拡底部32内を上下2往復さ
せて、杭穴拡底部32上端32aで注入を完了させる。
【0035】また、他の望ましいセメントミルクの注入
方法(第3の方法)として、杭穴拡底部32の最下位置
(穴底33付近)で掘削ヘッド13の吐出口19からセ
メントミルクを注入して、杭穴拡底部32内の掘削泥土
を押し上げて、注入したセメントミルクと置換してセメ
ントミルク層を形成することもできる。
【0036】(7) 杭穴拡底部32内にソイルセメン
ト層(又はセメントミルク層)を形成後、スパイラルロ
ッド11を正回転させて掘削ヘッド13を通常掘削状態
に戻し、杭穴軸部31の杭周固定液注入区間に、掘削ヘ
ッド13の吐出口19から所定固化強度の杭周固定液
(セメントミルク)を吐出注入し、掘削泥土と撹拌・混
合し、杭周固定液層(ソイルセメント)を形成する。
【0037】このとき充填する杭周固定液は、既製杭1
(上杭8、下杭2)を杭穴30内に沈設完了した際に、
杭穴充填物(ソイルセメントなど)が既製杭1により押
し上げられた状態で、杭周固定液が沈設後の杭頭付近ま
で満たされる量を注入する。
【0038】ここで、杭穴軸部31に位置する部分(下
杭2上部軸部5及び上杭8)は突起部外径Dよりも小
さい外径Dの円筒杭であるため、杭穴壁と既製杭1と
の間の間隙39内を杭周固定液が上昇し易い。
【0039】また、杭穴軸部31に位置する既製杭1と
杭穴壁との間の間隙を利用して杭周固定液が上昇し易い
ように、下杭軸部径及び上杭外径を適宜選択して、この
間隙を調整することができる。
【0040】また、杭穴軸部31において、杭周固定液
が上昇し易い形状・寸法、あるいは既製杭1埋設後にト
レミー管41等を使用する場合(図5(a))には、杭
穴軸部31に位置する既製杭1の形状・寸法は問わな
い。
【0041】(8) その後、掘削ヘッド13をニュー
トラル状態にして、スパイラルロッド11に回転を与え
ず、所定深度に保持していた既製杭1の中空部6、9内
に、スパイラルロッド11、掘削ヘッド13を収納す
る。既製杭1を加圧し、杭穴拡底部32内に下杭2の環
状リブ(突起)4、4が2つ納まる深さまで、沈設する
(図1(e))。尚、ここで、環状リブ(突起)4の2
つを杭穴拡底部32内に収容したので望ましいが、少な
くとも1つの環状リブ(突起)4が杭穴拡底部32内に
位置すれば可能である。
【0042】また、既製杭1の沈設により、ソイルセメ
ント層及び杭周固定液層から押し上げられたソイルセメ
ントが既製杭1の上杭8の中空部6上端から溢れ、既製
杭1外壁と杭穴壁との間隙39の上端からもセメントミ
ルクが溢れる。これにより、既製杭1の外壁と杭穴壁の
外壁との間の間隙39にセメントミルクが充填されるこ
とが確認できる。
【0043】(9) 既製杭1の埋設が完了した後に、
スパイラルロッド11(掘削ヘッド13)を引き上げ、
施工完了とする。セメントミルクが固化した後、この発
明の基礎杭構造36が完了する(図2(b))。
【0044】
【実施例1】図面に基づきこの発明の実施例を以下に示
す。
【0045】(1) 施工に関して、以下の仕様で実施
する。
【0046】掘削長 :21.5m 拡底部長さ : 2.5m 拡底部径 : 1.1m 杭頭位置 :現状地盤から−1m 杭先端位置 :21m 杭長 :20m(下杭10m+上杭10m)
【0047】(2) 既製杭1は、突起付きの下杭2と
ストレート状の上杭8とからなる(図2(a))。下杭
2は、中空部6を有し、小径の下部軸部3と大径の上部
軸部5とからなり環状リブ(突起)4、4を形成してあ
る。下部軸部3の下端3aから上方に距離L(500
mm)、L(1500mm)の位置に環状リブ(突
起)4、4が2つ設けられており、上部軸部5は下部軸
部3の最上の環状リブ4の上面から連続して形成されて
いる。
【0048】下杭2の寸法は、 下部軸部3の径D(600mm) 上部軸部5の径D(700mm) 環状リブ4の径D(750mm) 杭内径D01(420mm) で形成されている(図2(a))。
【0049】上杭8は、上部軸部5の外径Dと同径の
中空部9を有する円筒杭(杭外径D =700mm、杭
内径D02=500mm)から構成される(図2
(a))。上杭8の内径(D02)と下杭2の内径(D
01)とは、上記のように一致させていないが、一致さ
せることもできる(図示していない)。
【0050】(2) また、掘削ロッドは、螺旋翼(外
径380mm)12の取付けられたスパイラルロッド1
1を使用する。このスパイラルロッド11の先端には3
段階可変型の掘削ヘッド13が取付けられている。掘削
ヘッド13は、上端部にスパイラルロッド11との連結
部15を有するヘッド本体14と、揺動自在の掘削アー
ム20、20とからなる(図6)。
【0051】前記ヘッド本体14の下端には固定掘削刃
28、28が取り付けてある。前記ヘッド本体14は、
下端部を幅広とし、水平膨出部16、16が形成されて
いる。また、側面視では、上端部が最も幅広で、中間部
から下端部に掛けて徐々に幅を狭く形成し、最下端が最
も狭くなるように形成されている。
【0052】また、前記ヘッド本体14の上端部に、掘
削土を上方に排土できるように傾斜した排土翼17、1
7を突設する。また、ヘッド本体14内に、スパイラル
ロッド11の中空部に連通する中空部が形成され、前記
ヘッド本体14の中間部(水平膨出部16の上方)及び
下端面に、吐出口18、19を夫々設ける。前記吐出口
18、19は、ヘッド本体14内に設けたヘッド弁(図
示していない)を地上から操作することにより、夫々独
立に吐出口18、19の開閉と開口量とを調節できるよ
うになっている。
【0053】前記ヘッド本体14に揺動軸22、22を
設け、先端部に掘削刃21、21を有する掘削アーム2
0、20の基端部を夫々軸止する。また、掘削アーム2
0は、中間部及び先端部がヘッド本体14側に凸となる
ように屈曲形成されている。前記掘削アーム20の一側
面に「く」字状に屈曲した棒状の練付棒23を取付け
る。
【0054】また、前記ヘッド本体14に、スパイラル
ロッド11の正回転により揺動する掘削アーム20の揺
動角度を規制するストッパー24、24(図6(a)
(b))を、また、スパイラルロッド11の逆回転によ
り揺動する掘削アーム20、20の揺動角度を規制する
ストッパー25、25を(図6(a)(c))、夫々設
ける。また、スパイラルロッド11の逆回転(拡大掘削
状態)により揺動する掘削アーム20の揺動角度を保持
するため、互いに係合する係合部26、27を、ヘッド
本体14及び掘削アーム20に夫々設ける(図6(a)
(c))。
【0055】(3) 先ず、先端に掘削ヘッド13が取
り付けたスパイラルロッド11を、下杭2の中空部6内
に挿通させ、杭打機にセットし、杭芯位置にてスパイラ
ルロッド11を正回転させて杭穴29の杭穴軸部30
(掘削径D11=780mm)を掘削しながら下杭2を
埋設する(図1(a)、図6(b))。
【0056】掘削の際、掘削土は、掘削ヘッド13の排
土翼17、17からスパイラルロッド11の螺旋翼12
に上げられ、螺旋翼12を介して地上に移送される。こ
の際、掘削ヘッド13の先端の吐出口19から圧縮空気
を吐出すれば、掘削刃21、28の周辺に空気が吹き付
けられ、掘削が補助される。同時に掘削ヘッド13の掘
削アーム20、20に取付けられた練付棒23によって
掘削土を杭穴軸部31壁に押し付け、杭穴壁が大まかに
均される。
【0057】また、この際、掘削刃21、28の周辺に
圧縮空気が吹き付けられるので、掘削効率が良いと共
に、空気を混入した掘削土をスパイラルロッド11で揚
土するので、スパイラルロッド11の螺旋翼12の表面
に、掘削土が付着して揚土不能に陥ることを防止でき
る。
【0058】こうして、掘削を進めながら下杭2を挿入
する。このスパイラルロッド11による揚土作用と、練
付棒23による押圧作用を併用することによって、下杭
2の中空部6よりも格段に大きい径の杭穴30を掘削す
ることができる。
【0059】また、この際、必要に応じて、適時掘削ヘ
ッド13の吐出口19から吐出する圧縮空気に代えて水
を吐出することによって、掘削土を効率的に杭穴壁への
練り付けることができる。従って、吐出口18、19か
らの吐出物を圧縮空気又は水とを適宜切り替えながら掘
削をすることにより、掘削土の揚土と杭穴壁の練付けと
を効率良く進めることができる。
【0060】(4) 下杭2の埋設を進め、現状地盤3
4より深さ約1m上方に下杭2の上部を残した状態で、
継ぎ足用のスパイラルロッド11を挿通した上杭8を、
下杭2上端に接続し、上杭2内のスパイラルロッド11
を、掘削に使用中のスパイラルロッド11に介装して継
ぎ足す。
【0061】(5) 続いて、同様に、杭穴軸部31の
掘削及び既製杭1(下杭2と上杭8との接続した状態)
の沈設を続行し、下杭2の下端3aが杭周固定液注入区
間の上部(この場合、現状地盤34から深さ約12m)
に至ったところで、既製杭1をその位置で保持した状態
で、掘削ヘッド13の吐出口18、19から吐出してい
る圧縮空気を水に切り替え、スパイラルロッド11を正
回転して、練付棒23で掘削土を杭穴壁へ練り付けなが
ら、杭穴軸部31の掘削のみ先行させる。
【0062】(6) 現状地盤34から深さ19mの位
置まで杭周固定液注入区間を形成した後(図2
(b))、スパイラルロッド11を逆回転させて掘削ヘ
ッド13を拡底掘削状態にし(図6(c))、杭穴拡底
部32を形成する。
【0063】杭穴拡底部32を形成した後、該杭穴拡底
部32内に根固め液(固化強度約20N/mmのセメ
ントミルク)を約2.4m注入し、杭穴拡底部32内
に残存する礫等と撹拌・混合し、ソイルセメント化(固
化強度約20N/mm以上)して、拡底根固め部を形
成する。
【0064】(7) 続いて、スパイラルロッド11を
正回転に戻し、掘削ヘッド13を通常掘削状態とし、杭
周固定液注入区間内(杭穴拡底部32の上方)に杭周固
定液(固化強度約20/mmのセメントミルク)を
1.5m注入し、掘削土と撹拌・混合し、固化強度約
2N/mmのソイルセメントを生成する。
【0065】(8) スパイラルロッド11を引き上
げ、既製杭1の中空部6(中空部9)内に掘削ヘッド1
3を収納した後、既製杭1を加圧し、下杭2の下部軸部
3の最上の環状リブ4が杭穴拡底部32内に位置するよ
うに埋設する(図1(e))。このとき、下部軸部3の
最上の環状リブ4から拡底部上面までL11(=500
mm)の間隔を設け、また下部軸部3の下端3aから拡
底部32の底面33までL 12(=500mm)の間隔
を設ける(図2(b))。
【0066】(9) 既製杭1からスパイラルロッド1
1(含む掘削ヘッド13)を地上まで引き上げ、根固め
液及び杭周固定液が固化した後、この発明の基礎杭構造
36を構成する(図2(b))。
【0067】基礎杭構造36は、従来の円筒杭のみ使用
していた中掘工法で構築した基礎杭構造と比較して、杭
径を同等とした場合、約2倍の鉛直荷重及び引抜き力に
耐えることができる。
【0068】また、杭穴軸部31において、既製杭1の
外面と杭穴内壁との間にソイルセメントが充填されてい
るため、従来の前記中掘工法と同等以上の曲げモーメン
トに耐えることができる。
【0069】(10)他の実施例
【0070】前記実施例において、杭周固定液は、掘削
ヘッド13の吐出口18、19から杭穴30内に吐出し
たが、吐出口18、19からの吐出に代えて、あるいは
吐出口18、19からの吐出に加えて、既製杭1を所定
位置(環状リブ4、4を杭穴拡底部32内に位置させた
状態)まで下降させた後、杭穴30の穴壁と既製杭1と
の間隙39にトレミー管41を挿入して、間隙39内に
杭周固定液を充填することもできる(図5(a))。
【0071】また、前記実施例において、杭穴拡底部3
2内にのみ環状リブ4、4が配置されるように、下杭2
の下端部に環状リブ4、4を形成した既製杭1を構成し
たが、下杭2の上部及び上杭8に環状リブ43、43を
全長に亘り形成して既製杭1とし、杭穴軸部31にも、
環状リブ43、43が位置するように、既製杭1を埋設
して基礎杭構造36を構成することもできる(図4
(c))。この場合、杭穴軸部31においても環状リブ
43、43による摩擦力が働き、さらに基礎杭構造36
全体として支持力を向上させることができる。尚、この
実施例では、杭穴内に充填された杭周固定液が上昇し易
いように、環状リブ43の外径を環状リブ4よりも小径
とすることが望ましい。
【0072】また、環状リブ4は、縦方向に溝(切欠
部)39を設けて、杭周固定液が上昇し易いようにして
もよい(図3)。この場合、溝39に代えて、環状リブ
4に縦方向の貫通孔を形成することもできる(図示して
いない)。
【0073】また、前記実施例において、突起として、
環状リブ4を形成したが、既製杭1の軸部外周に突起物
が形成されれば、突起物の構造は任意である。また、突
起物は、1つの既製杭(上杭8又は下杭2)で、異なる
構造の突起物を、複数箇所に形成することもできる(い
ずれも図示していない)。
【0074】また、前記実施例において、下杭2は上部
軸部5の外径を、環状リブ4を形成した下部軸部3の外
径より大きく形成したが、同一の外径とすることもでき
る(図4(a))。この場合、上杭8の外径も同一とな
る。
【0075】また、上杭8の下端部を下杭の軸部外径D
と同一とし、上杭8の中間部及び上部の外径Dと大
径に形成することもできる(図4(b))。この場合、
<D<D とすることが望ましい。
【0076】また、前記実施例において、既製杭1は上
杭8と下杭2とを接合した構造としたが、構築予定の基
礎杭構造36の深さ等に応じて、単一の杭から構成する
こともできる(図示していない)。
【0077】また、前記実施例において、既製杭1は上
下のみ開放した構造としたが、杭穴軸部31に位置する
既製杭1(上杭8、下杭2)の杭壁に中空部6、9と挿
通する貫通孔38、38を設けることもできる(図5
(b))。この場合、既製杭1の中空部6、9から上昇
してきた杭周固定液が、既製杭1の外壁と杭穴壁との間
隙39に、より確実に充填される。とりわけ、杭穴軸部
31に対応させて、既製杭1に多数環状リブを形成した
場合(図4(c))に特に有効である。また、この場
合、貫通孔38、38を介して、中空部6、9の杭周固
定液と、間隙39の杭周固定液とを一体化できる。
【0078】また、前記実施例において、杭穴30の下
端部に杭穴拡底部32を形成したが、根固め液を注入し
て根固め液部が形成できれば、杭穴30の下端部を杭穴
軸部31と同じ径D11で掘削することもできる(図示
していない)。
【0079】
【発明の効果】この発明は、突起付き既製杭の突起の外
径より大径の杭穴を掘削するので、中掘工法により、突
起付きの既製杭を埋設でき、杭穴の根固め部内に既製杭
の突起が位置するので、突起付き既製杭の先端面からだ
けでなく、杭穴根固め部内に位置する突起による支圧力
が付加され、根固め部内での支持力を増強することがで
き、また引抜き力については突起の上面から斜め上方に
支圧力が働くため、従来工法に比べ、格段に引抜き力を
向上できる。
【0080】また、杭穴の根固め部の上方に杭周固定液
部を形成し、既製杭を下降して、根固め部の上方の既製
杭の中空部及び既製杭と杭穴壁との間の間隙に、杭周固
定液を充填するので、少なくとも杭頭部付近まで杭周固
定液が満たされているため、突起部間の間隙、杭外周面
と杭穴内壁の間隙を埋めることができ、さらに杭周面か
らの周面摩擦力が得られる効果がある。
【0081】杭穴内へのセメントミルクの充填を、掘削
ロッドの下端部に設けた吐出口から行えば掘削の一連の
作業の中で施工できるので、施工効率が良いが、掘削ロ
ッドによるものに換え、あるいは掘削ロッドの充填に加
えて、別体の注入管を既製杭と杭穴壁との間の間隙に挿
入して行えば、確実に充填できる効果がある。
【0082】従って、基礎杭構造全体として、従来の中
掘工法に比べて高鉛直荷重及び高曲げモーメントに耐え
ることができ、総体的な支持力を大幅に向上させること
ができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(e)は、この発明の実施例の施工方
法を説明する縦断面図である。
【図2】(a)はこの発明の実施例に使用する既製杭の
正面図、(b)は構築した基礎杭構造の縦断面図であ
る。
【図3】他の既製杭の実施例の正面図である。
【図4】(a)〜(c)は、他の既製杭により施工した
基礎杭構造の正面図である。
【図5】(a)(b)は、同じく他の施工方法を説明す
る正面図である。
【図6】この発明の実施例に使用する掘削ヘッドの正面
図で、(a)はニュートラル状態、(b)は軸部掘削状
態、(c)は拡底部掘削状態である。
【符号の説明】
1 既製杭 2 下杭 3 下部軸部 3a 下部軸部下端(下杭の下端) 4、43 環状リブ(突起) 5 上部軸部 6 中空部 8 上杭 9 中空部 11 スパイラルロッド 12 螺旋翼 13 掘削ヘッド 14 ヘッド本体 18 吐出口(中間部) 19 吐出口(下端部) 20 掘削アーム 21 掘削刃 22 揺動軸 23 練付棒 30 杭穴 31 杭穴軸部 32 杭穴拡底部 32a 杭穴拡底部の上端 33 杭穴底 34 現状地盤 36 基礎杭構造 39 間隙(既製杭外壁と杭穴内壁との間) 41 トレミー管

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 中空の既製杭の中空部を挿通した掘削ロ
    ッドで、杭穴を掘削しつつ既製杭を埋設する中堀工法に
    おいて、前記既製杭を少なくとも下端部に突起を有する
    構造とし、前記突起の外径より大径の杭穴を中間深さま
    で掘削しつつ前記既製杭を埋設し、前記既製杭を中間位
    置に保持して、所定杭穴を掘削した後に、または杭穴を
    掘削しながら、前記杭穴の下端部に、セメントミルク等
    を注入して所定高さの根固め部を形成し、前記既製杭を
    下降して、前記突起が前記根固め部内に位置するよう
    に、既製杭を埋設することを特徴とする中堀工法におけ
    る突起付き既製杭の埋設方法。
  2. 【請求項2】 既製杭を杭穴の中間位置に保持して、前
    記杭穴の下端部にセメントミルク等を注入して根固め部
    を形成した後、前記杭穴の根固め部の上方にセメントミ
    ルク等を注入して、杭周固定液部を形成し、その後、既
    製杭を下降して、根固め部の上方の既製杭の中空部及び
    既製杭と杭穴壁との間の間隙に、前記杭周固定液部の杭
    周固定液を充填することを特徴とする請求項1記載の中
    堀工法における突起付き既製杭の埋設方法。
  3. 【請求項3】 杭穴の下端部の径を軸部より大きく形成
    し拡底部として、該拡底部にセメントミルク等を注入し
    て根固め部を形成することを特徴とする請求項1又は2
    記載の中堀工法における突起付き既製杭の埋設方法。
  4. 【請求項4】 既製杭を所定位置に埋設した状態で、杭
    周固定液が杭穴の根固め部の上縁から既製杭の杭頭付近
    まで充填される体積量の杭周固定液部を形成する請求項
    1又は2記載の中堀工法における突起付き既製杭の埋設
    方法。
  5. 【請求項5】 杭穴内へのセメントミルク等の注入は、
    掘削ロッドの下端部に設けた吐出口から、あるいは地上
    から掘削ロッドとは別体の注入管を既製杭と杭穴壁との
    間の間隙に挿入して行う請求項1又は2記載の中堀工法
    における突起付き既製杭の埋設方法。
  6. 【請求項6】 杭穴を掘削しつつ既製杭を埋設する中掘
    工法により構築した基礎杭構造において、前記既製杭を
    少なくとも下端部に突起を有する下杭と、突起付き又は
    円筒状の上杭とを連結して形成し、前記杭穴を前記突起
    の外径より大径の杭穴軸部を掘削すると共に、前記杭穴
    の底部にセメントミルク等を注入して根固め部を形成
    し、前記既製杭を、前記下杭の少なくとも1つの突起が
    前記根固め部内に位置するように、埋設したことを特徴
    とする基礎杭構造。
  7. 【請求項7】 杭穴を掘削しつつ既製杭を埋設する中掘
    工法により構築した基礎杭構造において、前記既製杭を
    上杭と下杭とから構成し、該下杭を、下部軸部に1つ又
    は複数の突起を形成し、最上に位置する突起に連続して
    前記下部軸部より大径の上部軸部を形成して構成し、前
    記上杭を円筒状に形成して構成し、前記杭穴を、前記突
    起の外径より大径の杭穴軸部を掘削し、前記杭穴の底部
    にセメントミルク等を注入して根固め部を形成して構成
    し、前記既製杭を、前記下杭の突起の内少なくとも1つ
    が前記根固め部内に位置するように、埋設したことを特
    徴とする基礎杭構造。
  8. 【請求項8】 杭穴軸部の内壁を均すと共に、前記杭穴
    の軸部内壁と既製杭との間の間隙内、及び前記既製杭の
    中空部内に杭周固定液を充填したことを特徴とする請求
    項6又は7記載の基礎杭構造。
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